(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】天井埋込み型空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0007 20190101AFI20230515BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20230515BHJP
F24F 1/0022 20190101ALI20230515BHJP
【FI】
F24F1/0007 321
F24F1/0007 361D
F24F1/0022
(21)【出願番号】P 2018013680
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2021-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌和
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】槙原 進
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-108684(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006467(WO,A1)
【文献】特開2000-9327(JP,A)
【文献】特開2010-138700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00 - 1/0007
F24F 1/0011 - 1/0033
F24F 1/022
F24F 1/028 - 1/0287
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
筒状であり上方かつ外側へ向かって径が大きくなるシュラウドを有し、前記熱交換器に対して内側に設置された送風機と、
前記シュラウドの下方かつ前記送風機の吸込側に設置されたベルマウスと、
前記熱交換器の下部が収容される凹状のドレン溝が形成されたドレンパンと、
を備え、
前記ベルマウスの上方端部と前記シュラウドの吸込側端部との間の第1隙間Aに対する、前記シュラウドの吹出側端部と前記ドレン溝の前記熱交換器に対する内側の側壁との間の第2隙間Bの割合であるB/A
は10以上であ
り、
前記ドレン溝の前記熱交換器に対する内側の前記側壁の上端は、前記ベルマウスの外周側の上面よりも上方に突出している天井埋込み型空気調和機。
【請求項2】
前記ドレン溝は、前記熱交換器に対
する内側の
前記側壁の高さが外側の側壁よりも高い請求項1に記載の天井埋込み型空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井埋込み型空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井埋込み型空気調和機の室内機は、内部において、遠心式送風機が設けられ、下面には、吸込口から上方かつ内側に向かって開口部の径が小さくなるベルマウスが設けられる。また、内部には、冷房運転時に熱交換器の表面で結露し滴下した水を受けるドレンパンが設置される。
【0003】
遠心式送風機は、回転軸と接続される羽根車を有する。羽根車は、上部に設置されて回転軸と接続されるハブ(主板)と、一端側がハブに接続され他端側がシュラウドに接続された複数枚の翼と、翼の他端同士を接続し、ベルマウス側から上方かつ外側へ向かって径が広がるシュラウドを備える。
【0004】
下記の特許文献1では、シュラウドの吸込側の端部内において、シュラウドとベルマウスが所定の隙間(L1)を保つように、シュラウドが相対回転可能に設置されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シュラウドの吸込側の端部の内側には、ベルマウスの上方端部が収容されて、シュラウドとベルマウスの間に隙間が設けられている。
ドレンパンには、ドレン水を受けるドレン溝を形成するため、熱交換器に対して内側と外側のそれぞれに対向するように二つの側壁(壁部)が設けられる。ドレン溝の熱交換器に対し内側に設置される内周壁部の上方には、シュラウドの吹出側の端部が位置し、ドレン溝とシュラウドの間に隙間が設けられている。
【0007】
したがって、シュラウドの吸込側には、ベルマウスとの間に隙間が設けられ、シュラウドの吹出側には、ドレン溝の内周壁部との間に隙間が設けられる。
【0008】
発明者によると、送風機によって吸い込まれた空気が、シュラウドに対し翼側を通過せず、翼側を迂回(バイパス)してベルマウスとシュラウドの間の隙間を通過すると、騒音の原因になることが分かった。また、送風機から吹き出された空気が、シュラウドとドレン溝の内周壁部との間の隙間から入り込み、シュラウドの下側において空気が淀んだり気流の剥離が生じたりする場合も、騒音の原因になることが分かった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、送風機によって吸い込まれた空気又は吹き出された空気によって生じる騒音を低減することが可能な天井埋込み型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の天井埋込み型空気調和機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る天井埋込み型空気調和機は、熱交換器と、筒状であり上方かつ外側へ向かって径が大きくなるシュラウドを有し、前記熱交換器に対して内側に設置された送風機と、前記シュラウドの下方かつ前記送風機の吸込側に設置されたベルマウスと、前記熱交換器の下部が収容される凹状のドレン溝が形成されたドレンパンとを備え、前記ベルマウスの上方端部と前記シュラウドの吸込側端部との間の第1隙間Aに対する、前記シュラウドの吹出側端部と前記ドレン溝の前記熱交換器に対する内側の側壁との間の第2隙間Bの割合であるB/Aは10以上であり、前記ドレン溝の前記熱交換器に対する内側の前記側壁の上端は、前記ベルマウスの外周側の上面よりも上方に突出している。
【0011】
この構成によれば、ベルマウスの上方端部とシュラウドの吸込側端部との間の第1隙間Aに対する、シュラウドの吹出側端部とドレン溝の熱交換器に対する内側の側壁の上方端部との間の第2隙間Bの割合が3<B/A<10である場合に比べて、騒音が低減される。
【0012】
上記発明において、前記ドレン溝は、前記熱交換器に対する内側の前記側壁の高さが外側の側壁よりも高くてもよい。
【0013】
この構成によれば、シュラウドの吹出し側の端部とドレン溝の内側の側壁の上方端部との距離を短くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送風機によって吸い込まれた空気又は吹き出された空気によって生じる騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天井埋込み型空気調和機の室内ユニットを示す下面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るドレンパンを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る天井埋込み型空気調和機の室内ユニットを示す部分拡大縦断面図である。
【
図5】音圧レベル(dB)と、ベルマウスの上方端部とシュラウドの吸込側端部との間の第1隙間Aに対する、シュラウドの吹出側端部とドレン溝の内周壁部との間の第2隙間Bの割合(B/A)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る天井埋込み型空気調和機について、図面を参照して説明する。
天井埋込み型空気調和機(以下「空気調和機」という。)は、室内ユニット1と、室外ユニット(図示せず。)と、室内ユニット1及び室外ユニットとを結ぶ冷媒配管(図示せず。)などを備える。
室内ユニット1は、ケース本体2が天井に埋込まれて設置される。ケース本体2の内部には、
図2に示すように、熱交換器7、ドレンパン10、モータ5、送風機6、ベルマウス12等が内蔵され、このケース本体2の下部には天井面に露出する天井パネル8が装着される。
図1は、室内ユニット1を室内側から見た、すなわち室内ユニット1の下面から見た下面図であり、
図2は、
図1のII-II線で切断した縦断面図である。
【0017】
送風機6は、遠心式送風機であり、回転軸21と接続される羽根車22を有する。羽根車22は、上部に設置されて回転軸21と接続されるハブ(主板)23と、一端側がハブ23に接続され他端側がシュラウド25に接続された複数枚の翼24と、翼24の他端同士を接続し、ベルマウス12側から上方かつ外側へ向かって径が広がるシュラウド25を備える。
【0018】
シュラウド25は、筒状であり、下部の半径より上部の半径が大きく、下部から上部にかけて徐々に半径が大きくなる。シュラウド25の吸込み側の端部、すなわち下端部は、ベルマウス12の外周側に位置し、ベルマウス12との間に隙間が設けられている。また、シュラウド25の吹出し側の端部、すなわち上端部は、ドレン溝18の内周壁部18aの上方に位置し、内周壁部18aとの間に隙間が設けられている。
【0019】
ベルマウス12は、筒状部材であり、シュラウド25の下方かつ送風機6の吸込み側に設置されている。ベルマウス12は、下部の半径より上部の半径が小さく、下部から上部にかけて徐々に半径が小さくなる。ベルマウス12の上方端部は、シュラウド25の吸込み側の端部の内部に収容されている。
【0020】
ドレンパン10は、熱交換器7の下部に設けられ、熱交換器7から滴下するドレン水を受ける。ベルマウス12は、ドレンパン10の下部に設けられる。室内ユニット1の下面中央部には吸込み口3が形成され、この吸込み口3に隣接して室内ユニット1の下面外周部に沿って吹出し口4が形成される。吸込み口3には、吸込みグリル11と、吸込みグリル11の上方にフィルタ13とが設置される。
【0021】
空気調和機が運転すると、図示しない室外ユニットからの冷媒が熱交換器7を循環し、モータ5によって送風機6が駆動される。送風機6の駆動によって、室内空気が吸込み口3から吸込みグリル11、フィルタ13を通り、ベルマウス12に案内されて送風機6へ吸入される。そして、吸入された空気は、熱交換器7を通過することで、冷却又は加熱され、その後、吹出し口4から室内へ吹き出される。
【0022】
ドレンパン10は、例えば発泡スチロール製であり、ドレン水が貯留する表面には、防水性の塗料が塗装される。
図3に示すように、ドレンパン10の平面視形状は、ほぼ四角形である。ドレンパン10には、吸込み口3及び吹出し口4に対応して開口部16,17が形成される。ドレンパン10の底部10aは、送風機6を囲むようにして配置された熱交換器7の下部に沿って、熱交換器7が設置された全領域にわたって設けられる。
図3は、ドレンパン10を示す平面図である。
【0023】
図2に示すように、ドレンパン10には、凹状のドレン溝18が形成されており、ドレン水がドレン溝18の内側に溜まる。ドレン溝18は、
図2及び
図3に示すように、熱交換器7に対して内側、すなわち、熱交換器7の入口側に形成される内周壁部18aと、熱交換器7に対して外側、すなわち、熱交換器7の出口側に形成される外周壁部18bとを有する。
図3に示すように、内周壁部18aは、吸込み口3に対応して形成された開口部16に沿って設けられる。外周壁部18bは、吹出し口4に対応して形成された開口部17に沿って設けられる。
【0024】
図2に示すように、ドレン溝18には熱交換器7の下部が収容されており、熱交換器7の下端の高さ位置がドレン溝18の上端よりも低い。これにより、ドレン溝18の外周壁部18bによって、熱交換器7の下部に付着したドレン水の外部への飛散が防止される。
【0025】
図2及び
図3に示すように、ドレンパン10の底部10aには上方に突出した凸部19が形成されている。凸部19の上面に熱交換器7が載置される。凸部19は、熱交換器7との間の隙間が極力形成されないように、熱交換器7の底面に沿って、熱交換器7の底面の形状に対応して形成される。
【0026】
上述したドレンパン10において、底部10aは、
図2に示すように、熱交換器7に対して外側の底部10aのほうが内側の底部10aよりも低い位置に形成されることが望ましい。これにより、ドレンパン10に溜まった水は、熱交換器7に対して内側から外側へ向かって導かれやすくなる。また、室内ユニット1において、送風機6は熱交換器7に対して内側に配置されており、送風機6による風の流れは、熱交換器7に対して内側から外側へ向かうため、ドレンパン10に溜まったドレン水も風力によって熱交換器7に対して内側から外側へ向かって排出されやすくなる。
【0027】
図2に示すように、熱交換器7の下部と凸部19の上面との間には、インシュレーション20が設置されている。これにより、熱交換器7と凸部19の間がインシュレーション20によって塞がれるため、熱交換器7を通過せずに隙間を通過して熱交換器7の内側から外側へ流れる空気を低減できる。また、インシュレーション20は、熱交換器7の下部と凸部19の上面の間に設置されることから、ドレン溝18に収容されている。そのため、熱交換器7から滴下してインシュレーション20に付着したドレン水についても、外部への飛散が防止される。
【0028】
次に、
図4及び
図5を参照して、ベルマウス12の上方端部とシュラウド25の吸込側端部との間の第1隙間Aと、シュラウド25の吹出側端部とドレン溝18の内周壁部18aとの間の第2隙間Bとの関係について説明する。
【0029】
本実施形態において、ベルマウス12の上方端部とシュラウド25の吸込側端部との間の第1隙間Aに対する、シュラウド25の吹出側端部とドレン溝18の内周壁部18aとの間の第2隙間Bの割合は、B/A≦3又は10≦B/Aである。
【0030】
図5は、空気流によって発生する音の音圧レベル(dB)と、B/Aの関係を示すグラフである。発明者によって、B/A≦3又は10≦B/Aである場合、
図5に示すように、3<B/A<10である場合に比べて、音圧レベルが低減するという結果が得られている。また、特に1kHz前後の周波数の音が低減されることが確認されている。
【0031】
B/A≦3とすることによって、ベルマウス12の上方端部とシュラウド25の吸込側端部との間の第1隙間Aが相対的に狭くなる。その結果、送風機6によって吸い込まれた空気が、ベルマウス12とシュラウド25の間の隙間を通過しにくくなり、シュラウド25に対し翼24側をより多く通過するようになる。したがって、3<B/Aである場合に比べて、シュラウド25に対し翼24側を通過せず、翼24側を迂回(バイパス)してベルマウス12とシュラウド25の間の隙間を通過する空気が減少するため、騒音が低減される。
【0032】
B/A≦3とする場合、
図2に示す例のように、内周壁部18aの高さは、外周壁部18bの高さよりも高い。これにより、シュラウド25の吹出し側の端部と内周壁部18aの上方端部との距離を短くすることができる。なお、
図5に示すように、B/A<1である場合、1≦B/A≦3の場合に比べて音圧レベルが高くなることや、ベルマウス12とシュラウド25の振動等による接触を回避することを考慮して、1≦B/Aであることが望ましい。
【0033】
また、10≦B/Aとすることによって、シュラウド25の吹出側端部とドレン溝18の内周壁部18aとの間の第2隙間Bが相対的に広くなる。その結果、送風機6から吹き出された空気が、シュラウド25とドレン溝18の内周壁部18aとの間の隙間から入り込んだとしても、シュラウド25の下側において空気が淀みにくく、また、気流の剥離が生じにくい。そのため、3<B/A<10である場合に比べて、空気がシュラウド25の下側において流通し、気流の剥離も生じにくいことから、騒音が低減される。なお、
図5に示すように、10≦B/A≦20の範囲で音圧レベルが低減されることが得られている。
【0034】
以上、本実施形態によれば、ベルマウス12の上方端部とシュラウド25の吸込側端部との間の第1隙間Aに対する、シュラウド25の吹出側端部とドレン溝18の内周壁部18aとの間の第2隙間Bの割合は、B/A≦3又は10≦B/Aであり、3<B/A<10である場合に比べて、騒音が低減される。
【符号の説明】
【0035】
1 :室内ユニット
2 :ケース本体
3 :吸込み口
4 :吹出し口
5 :モータ
6 :送風機
7 :熱交換器
8 :天井パネル
10 :ドレンパン
10a :底部
11 :吸込みグリル
12 :ベルマウス
13 :フィルタ
16,17 :開口部
18 :ドレン溝
18a :内周壁部
18b :外周壁部
19 :凸部
20 :インシュレーション
21 :回転軸
22 :羽根車
23 :ハブ
24 :翼
25 :シュラウド
A :第1隙間
B :第2隙間