(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】シート綴じ処理装置及びこれを用いた画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B42B 5/00 20060101AFI20230515BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B42B5/00
B65H37/04 Z
(21)【出願番号】P 2018187155
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅也
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140881(JP,A)
【文献】特開2014-028691(JP,A)
【文献】特開2015-199235(JP,A)
【文献】特開2016-026972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 2/00- 9/06
B42C 1/00-99/00
G03G 15/00
B41J 29/00
B65H 37/00-37/06
B65H 41/00
B65H 45/00-47/00
B31F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部から搬送され
たシート
が排出される排出口と、
前記
排出口から
排出されたシートを載置しシート束を形成する載置部と、
前記搬送方向と異なる方向から挿入され
たシート束をセット可能な手差しセット部と、
前記載置部に
形成されたシート束
または前記手差しセット部に
セットされたシート束を加圧して綴じる加圧部材と、
前記加圧部材に加圧力を付与する駆動部と、
前記載置部に形成されたシート束を綴じる場合には、前記手差しセット部
にセットされたシート束を綴じる場合よりも
前記加圧部材に付与する加圧力を大きくするよう前記駆動部を制御する制御手段と、
を備えたシート綴じ処理装置。
【請求項2】
前記駆動部はモータで構成され、前記モータの回転を前記加圧部材の運動に変換するカム部材を備える請求項1に記載のシート綴じ処理装置。
【請求項3】
前記加圧部材を付勢する前記カム部材のカム面は、前記加圧部材のシート束への加圧力を漸次に増大させるよう螺旋形状を有することを特徴とする請求項2に記載のシート綴じ処理装置。
【請求項4】
前記モータの電流値を検出する電流値検出回路を備え、
前記制御手段は、前記カム部材の動作で
前記加圧部材が加圧力を増大するにつれて前記モータの電流値が増大していくとき、
前記手差しセット部
にセットされたシート束
に対し、前記電流値が第1所定値に到達すると前記モータの駆動を停止させ、
前記載置部に形成されたシート束
に対し、前記第1所定値より大きい第2所定値に到達すると前記モータの駆動を停止させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート綴じ処理装置。
【請求項5】
前記手差しセット部は、前記載置部と異なる位置に設けられる請求項1乃至4の何れか一項に記載のシート綴じ処理装置。
【請求項6】
前記加圧部材は、前記載置部と前記手差しセット部との間を移動可能な移動部材を備える請求項5に記載のシート綴じ処理装置。
【請求項7】
前記手差しセット部と前記載置部を兼用する請求項1乃至4の何れか一項に記載のシート綴じ処理装置。
【請求項8】
シート上に画像形成する画像形成ユニットと、
前記画像形成ユニットから送られたシートを束状に集積して綴じ処理する後処理ユニットと、
から構成され、
前記後処理ユニットは請求項1乃至4の何れか一項に記載のシート綴じ処理装置であることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを綴じ処理するシート綴じ機構に係わり、複数のシートを加圧部材で圧着して結束する加圧綴じ機構の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の綴じ装置は、部揃え集積したシート束をステープル針で綴じ処理する綴じ機構と、シート束をプレス機構で加圧してシート相互を変形させて結束する針なし綴じ機構が知られている。後者の針なし綴じ機構は金属などの綴じ具を使用することがなく、簡単に剥がすことができる特徴が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、画像形成装置から送られたシートを束状に集積して、上下一対の加圧部材で圧着して結束する機構が開示されている。同文献には凹凸面を有する固定側の加圧部材と、この凹凸面と係合する凹凸面を有する可動側加圧部材をカムなどの運動伝達機構でモータ連結して駆動する機構が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、揺動可能に軸支持した加圧レバー(同文献における上歯型部材60A)をモータ(ステッピングモータ)に連結した駆動カムで固定部材(下歯型部材)に押圧する機構が開示されている。この場合にシートを押圧する押圧力は、約100Kgfとする実施形態が説明されている。
【0005】
また、特許文献3には画像形成装置から送られたシートをスタックトレイに部揃え集積した後に、筺体ケーシングにシート束を挿入するスリット状の溝を有するステージを設けこのステージにオペレータが挿入セットしたシート束をケーシング内部のステープラ装置で綴じ処理する装置が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、スタックトレイに載置されたシートとマニュアルセットされたシートを、1台の移動可能なステープラで綴じ処理する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-47940号公報
【文献】特開2010-274623号公報
【文献】特開2005-096392号公報
【文献】特開2015-016970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように画像形成装置で画像形成したシートを後処理装置で部揃え集積して綴じ処理した後にスタックトレイに収納する後処理機構は広く知られている。そして、処理トレイに集積したシート束を圧着綴じ処理機構で圧着綴じ処理する装置も知られている。
【0009】
また、綴じ処理装置の外筐ケーシングにスリット状の手差しセット台を設けて、スタックトレイに排出されたシート束をオペレータがセット台にセットして綴じ処理する装置も特許文献3などに提案されている。
【0010】
通常、針無バインド機構による綴じ処理は、後処理装置内で部揃え集積して綴じ処理した後にスタックトレイに収納するため、搬送中に綴じた束がばらけることが無いように高い加圧力で綴じる必要がある。
【0011】
他方、上述の圧着綴じ処理機構によって手差しセットされたシートを綴じる場合はシート搬送を必要としないため、後処理装置内で綴じ処理する場合に比して過剰な加圧力を必要としない。しかし後処理装置内と同じ加圧力で綴じ処理を行うと、綴じ装置の耐久性を確保するための堅牢な構成が必要となり、装置の大型化、高コスト化の一因となってしまう。
【0012】
本発明者は、圧着綴じ処理機構でシートを綴じ処理する際に、綴じ処理後の搬送を伴うシートであるか、搬送を伴わないシートであるかによって、必要とされる加圧力に違いがある点に着目した。
【0013】
本発明は、通常の搬送を伴う圧着綴じ処理と、手差しでの圧着綴じ処理とが可能なシート綴じ処理装置において、シートジャムの発生および圧着綴じ処理機構にかかる負荷を抑制できるシート綴じ処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係るシート綴じ処理装置は、シートを所定の搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部から搬送されたシートが排出される排出口と、前記排出口から排出されたシートを載置しシート束を形成する載置部と、前記搬送方向と異なる方向から挿入されたシート束をセット可能な手差しセット部と、前記載置部に形成されたシート束または前記手差しセット部にセットされたシート束を加圧して綴じる加圧部材と、前記加圧部材に加圧力を付与する駆動部と、前記載置部に形成されたシート束を綴じる場合には、前記手差しセット部にセットされたシート束を綴じる場合よりも加圧部材に付与する加圧力を大きくするよう前記駆動部を制御する制御手段と、を備える。
【0015】
或る実施形態では、前記駆動部はモータで構成されて、前記モータの回転を前記加圧部材の運動に変換するカム部材を備える。
【0016】
この場合の前記加圧部材を付勢する前記カム部材のカム面は、前記加圧部材のシート束への加圧力を漸次に増大させるよう螺旋形状を有するのが好適である。これにより、シート束の厚さが異なっていても、ほぼ同じ加圧力で付勢することができる。
【0017】
さらに、前記モータの電流値を検知する電流値検出回路を備えて、前記制御手段は前記カムの動作で加圧部材が加圧力を増大するにつれて前記モータの電流値が増大していくとき、前記載置部に載置された前記手差しセット部からセットされたシート束である場合は前記電流値が第1所定値に到達すると前記モータの駆動を停止させ、シート束が前記排出口から排出されたシート束である場合は前記第1所定値より大きい第2所定値に到達すると前記モータの駆動を停止させる。
【0018】
そして、かかるシート綴じ処理装置は、シート上に画像形成する画像形成ユニットを備える画像形成システムにおいて、前記画像形成ユニットから送られたシートを綴じ処理する後処理ユニットとして用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、搬送部から処理トレイに搬入されたシートを圧着綴じ処理するときには、装置外部から手差し挿入されるシートを圧着綴じ処理するときよりも大きな加圧力で圧着綴じ処理することで強固な綴じとなって、装置内でのシートのジャムの発生を低減できる。また、手差し挿入されたシートに対して圧着綴じ処理するときには、小さな加圧力で圧着綴じ処理して使い分けるために圧着綴じ処理装置の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】後処理装置および画像形成装置の側面全体図を示す。
【
図7】圧着綴じ装置の移動状態を説明する図を示す。
【
図12】処理トレイ上でのコーナ綴じおよびマルチ綴じの動作フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図示の好適な実施の形態に従って本発明を詳述する。本発明は後述する画像形成システムなどにおいて画像形成され部揃え集積されたシート束を綴じ処理するシート束綴じ処理機構に関する。
図1に示す画像形成システムは画像形成ユニットAと、画像読取ユニットCと、後処理ユニットBとで構成される。かかる構成で、原稿画像を画像読取ユニットCで読み取り、その画像データに基づいて画像形成ユニットAでシート上に画像を形成する。そして画像形成されたシートを、後処理ユニットB(シート綴じ処理装置;以下同様)で部揃え集積して綴じ処理を施し、下流側のスタックトレイ25に収納する。
【0022】
後処理ユニットBは、画像形成ユニットAのハウジングに形成された排紙空間(スタックトレイ空間)15にユニットとして内蔵され、排出口16に送られた画像形成シートを処理トレイ24上に部揃え集積して、綴じ処理した後に下流側に配置したスタックトレイ25に収納するシート綴じ処理装置である。
【0023】
[シート綴じ処理装置(後処理ユニット)]
後処理ユニットBは
図2にその斜視構成を、
図3にその断面構成を示すように、装置ハウジング20と、このハウジングに配置されたシート搬入経路22と、その経路の排紙口23の下流側に配置された処理トレイ24と、さらにその下流側に配置されたスタックトレイ25で構成されている。処理トレイ24はシート束が載置される載置部であり、排紙口23から送られてくるシートを部揃え集積することでシート束にする。
【0024】
処理トレイ24にはシートを搬入するシート搬入手段36と、搬入シートを束状に集積するシート規制手段40と整合手段45が配置されている。これと共に処理トレイ24にはシート束を圧着綴じする圧着綴じ装置26が配置されている。以下各構成について詳述する。
【0025】
[装置ハウジング]
装置ハウジング20は、装置フレーム20aと、外装ケーシング20bで構成され、この外装ケーシング20bのフロント側には後述する手差しセット部29と、マニュアル操作釦30(図示のものは表示ランプを内蔵したスイッチ)が装備される。
【0026】
[搬送部]
上述の装置ハウジング20には、
図3に示すように搬入口21と排紙口23を有するシートの搬送部22が配置され、図示のものは水平方向からシートを受け取って略水平方向に搬送して排紙口23から搬出するように構成されている。この搬送部22は適宜のペーパーガイド(板)22aで形成され、シートを搬送するフィーダ機構が内蔵されている。このフィーダ機構は、経路長に応じて所定間隔の搬送ローラ対で構成され、図示のものは搬入口21の近傍に搬入ローラ対31が、排紙口23の近傍に排紙ローラ対32が配置されている。また搬送部22にはシートの先端及び/又は後端を検出するシートセンサSe1が配置されている。
【0027】
[処理トレイ]
図3および
図4に従って説明すると、搬送部22の排紙口23には、その下流側に段差dを形成して処理トレイ24が配置されている。この処理トレイ24は排紙口23から送られたシートを上方に積み重ねて束状に集積するため、シートの少なくとも一部を支持する紙載面24aを備えている。図示のものは後述するスタックトレイ25でシート先端側を支持し、シート後端側を処理トレイ24で支持する構造(ブリッジ支持構造)を採用している。これによってトレイ寸法を小型化している。
【0028】
上記処理トレイ24は排紙口23から送られたシートを束状に集積して、所定姿勢に整合したのちに綴じ処理を施し、処理後のシート束を下流側のスタックトレイ25に搬出するように構成されている。このため処理トレイ24には、「シート搬入機構33」と、「シート整合機構45」と、「圧着綴じ装置26」と、「シート束搬出機構60」が組込まれている。
【0029】
[シート搬入機構(シート搬入手段)]
上述の排紙口23には段差dを形成して処理トレイ24が配置されている。この処理トレイ24上にシートを正しい姿勢で円滑に搬送するシート搬入手段36が必要となる。図示のシート搬入手段36(摩擦回転体)は、昇降するパドル回転体で構成され、排紙口23からシート後端がトレイ上に搬出した段階でパドル回転体がシートを排紙反対方向(
図3で右方向)に移送して後述するシート端規制手段40に突き当て整合(位置決め)する。
【0030】
[掻き込み回転体(掻き込み搬送手段)]
上述の排紙口23に配置されたシート搬入手段36(パドル回転体)でシートを処理トレイ24の所定位置に搬送する場合に、カールしたシート、スキューしたシートなどの影響でシート先端を下流側の規制ストッパ40に案内する掻き込み搬送手段33が必要となる。
【0031】
[サイド整合]
処理トレイ24には、搬入されたシートを所定の位置(処理位置)に位置決めするシート整合機構46が配置されている。シート整合機構46は前述の「規制ストッパ40」とともに、排紙直交方向(シートサイド方向)を幅寄せ整合する。サイド整合部材46は、シートを処理トレイ24上にセンター基準で整合する。そしてセンター基準で束状に整合されたシート束を綴じ処理に応じて、マルチ綴じのときには整合姿勢で綴じ位置Ma1、Ma2に圧着綴じ装置26で綴じ処理する。左右コーナ綴じのときには左右方向に所定量シート束をオフセットさせて綴じ位置Cp1、Cp2に、圧着綴じ装置26で綴じ処理する。
【0032】
[シート束搬出機構]
図5に示すシート束搬出機構(シート束搬出手段60)について説明する。上述の処理トレイ24には圧着綴じ装置26で綴じ処理したシート束を下流側のスタックトレイ25に搬出するシート束搬出機構が配置されている。
図5で処理トレイ24には、シートセンタSxに第1のシート後端規制部材41Aが、その左右に距離を隔てて第2、第3のシート後端規制部材41B,41Cが配置されている。そしてこの規制部材41に係止したシート束を圧着綴じ装置26で綴じ処理した後に下流側のスタックトレイ25に搬出するように構成されている。
【0033】
このため処理トレイ24には紙載面24aに沿ってシート束搬出手段60が配置されている。図示のシート束搬出手段60は第1搬送部材60Aと第2搬送部材60Bで構成され、処理トレイ上の第1の区間L1を第1搬送部材60Aで、第2の区間L2を第2搬送部材60Bでリレー搬送する。このように第1、第2搬送部材60A,60Bでシートを引継ぎ搬送することによって、各搬送部材の機構を異なる構造とすることができる。そしてシート後端規制手段40と、ほぼ同一の始点からシート束を搬送する部材は、揺るぎの少ない部材(長尺支持部材)で構成し、搬送終点でスタックトレイ25にシート束を落下させる部材は、小型(ループ軌跡を走行するため)である必要がある。
【0034】
第1搬送部材60Aは、断面チャンネル形状の折曲げ片で形成された第1搬出部材61で構成され、この部材にはシート束の後端面を係止する係止面61aと、この面に係止したシートの上面を押圧する紙面押圧部材62(弾性フィルム部材;マイラー片)が設けられている。この第1搬送部材60Aは、図示のようにチャンネル形状の折曲げ片で構成されているため、後述するキャリア部材65a(ベルト)に固定したとき、揺るぐことが少なくベルトと一体的に走行してシート束の後端を搬送方向に移動(繰り出す)する。そしてこの第1搬送部材60Aは、後述するように湾曲したループ軌跡を走行することなく、ほぼ直線状の軌跡でストロークStr1を往復動する。
【0035】
第2搬送部材60Bは、爪形状の第2搬出部材63で構成され、シート束の後端面を係止する係止面63aと、シート束の上面を押圧する紙面押圧部材64が設けられている。この紙面押圧部材64は、第2搬出部材63に揺動可能に軸支持されていると共に紙面押圧面64aが設けられ、この紙面押圧面はシート束の上面を押圧するように付勢スプリング64bで付勢されている。
【0036】
また、紙面押圧面64aは、図示のように走行方向に傾斜した傾斜面で構成され、
図5(b)矢視方向に移動すると挟み角γでシートの後端と係合する。このとき紙面押圧面64aは付勢スプリング64bに抗して矢印方向に上向き(同図反時計方向)変形する。すると
図5(c)に示すように紙面押圧面64aは付勢スプリング64bの作用でシート束の上面を紙載面側に押圧する。
【0037】
上述のように構成された第1搬出部材61は、第1キャリア部材65aで、第2搬出部材63は、第2キャリア部材65bで、紙載面24aの基端部から出口端部に往復動する。このため、紙載面24aには、搬送ストロークを隔てた位置に駆動プーリ66a、66bと従動プーリ66cが配置されている。図示66d,66eはアイドルプーリである。
【0038】
そして駆動プーリ66aと従動プーリ66c間に第1キャリア部材65a(図示のものは歯付ベルト)が架け渡してあり、駆動プーリ66bと従動プーリ66cとの間に第2キャリア部材65b(歯付ベルト)がアイドルプーリ66d、66eを介して架け渡してある。駆動プーリ66a、66bには、駆動モータM4が連結してあり、モータの回転は第1キャリア部材65aには低速で、第2キャリア部材65bには高速で駆動が伝達されるように第1駆動プーリ65aは小径に、第2駆動プーリ65bは大径に形成されている。
【0039】
つまり共通の駆動モータM4に、第1搬送部材60Aは低速で、第2搬送部材60Bは高速で走行するように減速機構(ベルト-プーリ、歯車連結など)を介して連結されている。
【0040】
[綴じ処理方法(綴じ位置)]
上述したように搬送部22の搬入口21に送られたシートは処理トレイ24上に部揃え集積され、シート端規制部材40とサイド整合部材46で予め設定された位置と姿勢で位置決め(整合)される。そこでこのシート束に綴じ処理を施し、下流側のスタックトレイ25に搬出する。
【0041】
[圧着綴じ装置移動機構]
図4および
図7に示すように圧着綴じ装置26は、「マルチ綴位置Ma1,Ma2」と、シートコーナを綴じ処理する「コーナ綴位置Cp1,Cp2」と、マニュアルセットしたシートを綴じ処理する「マニュアル綴位置Mp」を移動可能に構成される。この移動機構は特開2015-016970号公報等に開示されるような所謂レール機構を用いた従来技術であるため説明を省略する。また、レール機構以外にもモータ等のアクチュエータによって圧着綴じ装置26を回転させることで綴じ角度を変える構成等、種々の移動方法を採用することが可能である。
【0042】
また、
図2に示すように、搬送部22からシートを搬入して部揃え集積した後に綴じ処理する一連の後処理動作とは別に、装置外部(システム外)で作成したシートを綴じ処理する(以下「マニュアルステープル処理」という)ための構成を備える。
【0043】
このため、外装ケーシング20bに外部からシート束をセットする手差セット部29が配置され、シート束をセットする手差セット面(マニュアルセット面)29aをケーシングに成形し(
図2参照)、前述の圧着綴じ装置26を、処理トレイ24のシート搬入エリアArから手差しエリアFrに位置移動可能に構成している。
【0044】
図6は各綴じ処理位置を示しており、圧着綴じ装置26でシートの複数箇所を綴じ処理する「マルチ綴位置Ma1,Ma2」と、シートコーナを綴じ処理する「コーナ綴位置Cp1,Cp2」と、マニュアルセットしたシートを綴じ処理する「マニュアル綴位置Mp」が設定されている。
【0045】
[圧着綴じ装置]
図8から
図10を用いて圧着綴じ装置26について説明する。圧着綴じ装置26は束状に集積された複数のシート束Sを互いに噛み合うように加圧変形させて綴じ合わせる。このため圧着綴じ装置26は、複数のシート束Sをクランプして変形させるクランプ機構で構成される。
【0046】
束状のシート束Sを表裏方向から挟圧する一対の加圧面131、141と、この加圧面を備えた一対の加圧部材130、140と、加圧部材の一方の加圧面をシートから離れた待機位置Wp(非加圧位置;以下同様)からシートを加圧する加圧位置Apに移動させる駆動機構(駆動手段)PMで構成される。
図1のクランプ機構は固定側の加圧面131を有する固定側加圧部材130と、可動側の加圧面141を有する可動側加圧部材140と、この可動側加圧面をシート束Sから離れた待機位置Wp(
図9(a))からシート束Sを加圧する加圧位置Ap(
図9(b))に移動する駆動機構PMで構成される。
【0047】
固定側加圧部材130(以下「固定部材」と云う)と可動側加圧部材140(以下「可動部材」と云う)とは、固定部材130の加圧面131(以下「固定面」と云う)の上に支持したシート束Sを可動部材140の加圧面141(以下「可動面」と云う)でクランプするように構成されている。このため可動部材140は支軸142を中心に揺動可能に軸支され、支軸142は固定部材130に固定されている。この支軸142は固定部材130に限らずユニットフレーム146など他の部材に固定しても良い。
【0048】
また固定部材130はユニットフレーム146に一体的に固定されている。そして固定面131と可動面141とは、支軸142を中心に可動部材140が揺動運動する動作で、シート束Sをクランプする加圧状態(加圧位置Ap;
図9(b)参照)と、シート束Sから離れた(離間した)非加圧状態(待機位置Wp;
図9(a)参照)の間で位置移動する。
【0049】
図8に示す装置は、固定部材130が断面コ字状の枠部材で形成され、その側壁130a、130bの間に可動部材140が支軸142で揺動可能に支持されている。このように可動部材140は固定部材130の側壁130a、130bに案内され支軸142を中心に揺動運動する。そして可動部材140には待機位置側に付勢する復帰スプリング143が配置されている。この復帰スプリング143はユニットフレーム146(または固定部材130)との間に配置する。
【0050】
上記固定面131と可動面141とは、少なくとも一方は凹凸面(突起条溝)で構成され加圧したシート束Sを変形させる(
図9(a’)参照)。図示のものは固定面131と可動面141のそれぞれが凹凸面で形成され、その形状は凸部と凹部が互いに噛合するようにしてある。各凹凸面の形状は、加圧したときにシート束Sに損傷を与えない形状(特にエッジ形状)に配慮し、同時に重なり合うシート同士が噛み合うように変形する最適の形状に構成する。そしてこの凹凸面で挟圧されたシート束Sにはギャザ状(波形状)の変形が残り、重なり合うシート同士が結束される。
【0051】
上述の可動部材140の駆動機構について説明する。固定部材130に揺動可能に支持された可動部材140は、支軸142を境に先端部に可動面141が、基端部にカムフォロア144(以下「フォロアコロ」と云う)から構成されている。先端部の可動面141とフォロアコロ144とは、支軸142を介して梃子の作用(倍力機構)が働くレバー長さに形成してある。
【0052】
また、固定部材130の基端部にはカム部材133(図示のものは円筒カム)が配置されている。カム部材133はカム軸132に支持され、カム軸132は固定部材130に回転可能に軸支されていると共に、カム部材133とフォロアコロ144とは互いに係合する位置関係で配置されている。また、カム軸132には伝動手段135を介してモータDCの回転が伝達され、モータDCの正逆転でカム部材133が正逆転するように連結されている。
【0053】
図8で示すようにモータDCは、ユニットフレーム146にマウントされ、その駆動軸136の回転は、伝動手段135を構成する伝動歯車G2、G3、G4、G5でカム軸132に回転を伝達する。カム軸132に連結された歯車G1でカム部材133は
図1反時計方向に回転する。図示のものはモータDCの正逆転でカム部材133は所定角度範囲で反時計方向回転(CCW)と時計方向回転(CW)を繰り返すように構成されている。そしてカム部材133のカム面133aは、支軸142を中心にフォロアコロ144及び、これと一体の可動部材140を揺動運動させる。
【0054】
図8に駆動機構ではモータDCを反時計方向に回転すると、可動部材140は支軸142を中心に反時計方向に揺動し、可動面141は待機位置Wpから加圧位置Apに移動する(
図9(c)図示状態)。また、カム面133aには非係合部Cps(
図9(a)に示す)が形成してあり、この位置で可動部材140はカム面133aの作用を受けることなく復帰スプリング143の作用で待機位置Wpに付勢される。
【0055】
そこでモータDCを時計方向に回転してカム面133aの非係合部cpsとフォロアコロ144が係合する位置で停止する。すると復帰スプリング143のバネ力で可動面141は加圧位置Apから待機位置Wpに移動し、その位置で停止する。
【0056】
カム面133aは
図9(a)に示す「Cps(CamPressStart)」位置では、フォロアコロ144に揺動する力を作用することなく可動面141を待機位置Wpに保持する。また
図9(b)に示す「Cpm」位置では、フォロアコロ144に可動部材140が反時計方向に揺動するような作用力を付与する。このCpm(CamPressMiddle)位置近辺(シート束の厚さによって異なる)で可動面141がシート束Sの加圧を開始する。そして
図9(c)に示す「Cpe(CamPressEnd)」では、その位置はシート束の束厚さによって異なるが最大加圧力をシート束Sに作用し、加圧動作を終了する。その後はカム部材133の時計方向回転によって「Cpe」「Cpm」「Cps」の順に復帰動作する。
【0057】
フォロアコロ144と係合するカム面位置が、「Cps」の状態では可動面141は
図9(a’)に示すように固定面131から距離を隔てて離れた待機位置に位置し、「Cpm」の状態では可動面141は
図9(b’)に示すようにシート束Sの加圧を開始する加圧開始位置に位置し、「Cpe」の状態では可動面141は
図9(c’)に示すようにシート束Sを変形させて加圧を終了する加圧終了位置に位置する。
【0058】
そしてカム面133aは、可動面141がシート束Sを加圧する初期位置(Cpm)から加圧終了位置(Cpe)の間で徐々に加圧力を増大させていく螺旋形状に形成されている。これは固定面131と可動面141との間でシート束Sの厚さが異なっても、ほぼ同じ加圧力を作用させるためである。
【0059】
つまり、シート束Sの束厚さが薄いときにはカムの回転角度を大きく、束厚さが厚いときには回転角度を小さくすることによってシート束Sに付与する加圧力をほぼ均一にする。その角度制御は、例えばモータDCに一定の電圧を付与し、電流値が所定の値に達したらモータへの電力供給を止める定電流制御で行うと良い。なお、本発明にあってカム部材133は、図示の円筒カムに限らず、板カムであっても良い。電流値による綴じ動作の制御については後に説明する。
【0060】
[処理トレイでの綴じ処理]
画像形成装置から排出されたシートが処理トレイ24上に排出されると、シートの整合処理を行い、画像形成装置本体から受けた信号に基づきリア側もしくはフロント側でのコーナ綴じ処理、または複数個所綴じ処理を施す。
【0061】
「マルチ綴じ」
図4および
図7に示すように、マルチ綴じ処理は、処理トレイ24上にシート端規制部材41とサイド整合部材46で位置決めされたシート束(以下「整合シート束」という)の端縁(図示のものは後端縁)を綴じ処理し、間隔を隔てて2箇所を綴じ処理する綴位置Ma1、Ma2が設定されている。後述する圧着綴じ装置26はホームポジションから綴位置Ma1、次いで綴位置Ma2の順に移動してそれぞれ綴じ処理する。なおこのマルチ綴位置Maは、2箇所に限らず、3箇所、或いはそれ以上に綴じ処理する場合がある。
図6(a)はマルチ綴じした状態を示している。
【0062】
[コーナ綴じ]
コーナ綴じ処理は、処理トレイ24に集積された整合シート束の右コーナを綴じ処理する右コーナ綴位置Cp1と、整合シート束の左コーナを綴じ処理する左コーナ綴位置Cp2との左右2箇所に綴位置が設定されている。この場合圧着綴じ装置26を所定角度(約30度~約60度)傾斜させて綴じ処理する。
図6(b)(c)はコーナ綴じした状態を示している。
【0063】
図示の装置仕様はシート束の左右いずれか一方を選択して綴じ処理する場合と、圧着綴じ装置26を所定角度傾斜させて綴じ処理する場合を示した。これに限らず左右いずれか一方のみにコーナ綴じする構成も、圧着綴じ装置26を傾斜させることなくシート端縁と平行に綴じる構成も採用可能である。
【0064】
[手差し綴じ処理]
後処理装置筐体のフロント側には装置筐体の外部からシートを手差し挿入して処理トレイ24にセットする手差しセット部29が設けられている。圧着綴じ装置26は通常の待機位置を、この手差し綴じ処理位置としており、処理トレイ24での綴じ処理完了後は手差し綴じ処理位置に戻ることで、迅速な処理を可能にしている。
【0065】
[綴じ動作制御]
図10は、画像形成システムの制御構成を簡略化して示すブロック図であり、画像形成ユニットAは画像形成装置制御CPU45によって制御され、後処理ユニットBは後処理装置制御CPU50によって制御される。画像形成ユニットAは、モード選定手段48と入力手段47を備え、CPU45は、入力手段47には画像形成システムの使用者によって入力される画像形成条件等に沿ってシートに画像を形成して、後処理ユニットBへ搬送する制御を行なう。このとき、CPU45は、入力される後処理モードや綴じ位置の指定情報は、それぞれ後処理モード信号や綴じ装置位置情報で後処理ユニットBのCPU50へ伝送する。また、CPU45は、後処理ユニットBに搬送する全てのシートに画像を形成したときにはジョブ終了信号をCPU50へ伝送すると共に搬送するシートの枚数とシートの性状を示すシート情報を伝送する。
【0066】
後処理装置制御CPU50は、ROM53に格納されているプログラムを実行して後処理装置の全体の動作を制御するものであるが、ここでは綴じ処理時の加圧制御を行なうための構成のみを示す。CPU50は、I/Oインターフェース55を介してモータDCのモータドライバ51と、モータDCの駆動軸136に配置されるエンコーダEnと、モータDCの電流値を検出する電流値検出回路52と、手差しセット部29へのシート束Sの挿入を検知するシート検知センサ56とが接続されている。
【0067】
図11はCPU50がモータDCの駆動を制御して行う可動面141の移動ストロークの説明図であり、(a)は可動面141が待機位置に位置する状態を、(b)は可動面141が加圧動作を開始した状態を、(c)は可動面141がシート束Sと係合する状態を、(d)は可動面141がシートを加圧する初期状態を、(e)は可動面141がシート束Sを所定圧力で加圧し、可動面141が動きを止めた状態、つまり所定の電圧でモータDCを駆動し、電流値が所定値に達した状態を、それぞれ示している。
【0068】
[可動面のストローク]
モータDCには予め設定した電圧が印加されることで、
図11(a)(b)に示すように可動面141は待機位置Wpからシート束Sと係合する加圧位置Apに移動する。その最大ストロークdsは待機位置Wpに位置する可動面141と固定面131との間隔に設定されている。また、可動面141が第1設定速度v1から第2設定速度v2に減速するタイミングは予め設定(設計値)しておく。
【0069】
そのタイミングは、シート束の最大束厚さ位置(
図11(a);dy)に可動面141が到達するとき、速度v1から速度v2に減速されるように設定する。このタイミングは、CPU50は、エンコーダEnからのエンコードパルスカウントによって減速動作を実行する。よって、可動面141は速度v2で
図11(b)の状態から
図11(c)の状態へと移動する。なお、
図11(a)においてdxは(ds-dy)で、可動面141が許容最大束厚さ位置に移動する移動量を示し、dδは綴じ処理可能な許容最小束厚さ位置を示している。
【0070】
そして、可動面141は、
図11(d)の状態からさらに移動して、シート束Sを徐々に加圧して変形させる。しかし、可動面141はシート束Sと当接することでその移動が遅くなり、なおもこのモータDCに所定の電圧が印加され続けるとシート束Sは所定の形状に変形し可動面141は停止することになる。したがって、CPU50は、モータDCへの負荷で電流値が上昇し所定の電流値に達したことを電流値検出回路52によって検出したとき、CPU50はモータDCの駆動を所定時間停止させる。よって、可動面141はこの間シート束Sを所定の形状に変形させた状態で停止することになって、シート束Sに所定の加圧力を付与した状態を維持する。そして、CPU50は、可動面141が設定された加圧時間でシート束Sを加圧すると、その加圧時間の経過後にモータDCを逆方向に回転させて、可動面141を加圧位置Apから待機位置Wpに移動させる。
【0071】
[圧着綴じ圧の調整]
前述したように、モータDCの駆動により可動面141を移動させるカム部材133のカム面133aの作動点が初期位置(Cpm)から加圧終了位置(Cpe)に回動する間、可動面141によるシート束Sを加圧する加圧力は徐々に増大するように螺旋形状となっている。したがって、初期位置(Cpm)から加圧終了位置(Cpe)の間のどの位置でカム部材133の回動を停止させるか、すなわちモータDCを停止させるかによってシート束Sへの圧着綴じ圧を調整することができる。
【0072】
したがって、CPU50がモータDCの駆動を停止させるときの電流値検出回路52による検出電流値を高く設定すれば圧着綴じ圧は大きくなるし、逆に検出電流値を低く設定すれば圧着綴じ圧は小さくなる。
【0073】
通常、処理トレイ24内で綴じ処理を行う場合には、処理したシート束を装置の外部に排出する必要がある。この場合に、十分な締結力で綴じられていないとシート束Sの結束が解けて搬送ジャムを生じるおそれがあるため、シート束搬送およびスタックトレイ25への落下に耐える締結力を得られるよう加圧力を大きく設定する必要がある。これに対し、手差しセット部29へ挿入されるシート束Sは操作者が手に掴んだ状態で綴じ処理されるため、束搬送に耐えるほどの締結力で加圧する必要はない。
【0074】
また、圧着綴じによる綴じ処理は紙繊維同士の絡まりを強くさせるには、シートの圧着綴じ部分を加湿することが知られている(特許6171514号参照)。これはシートが保有する水分量によって大きな影響を受け、水分量の低いシートのほうが、水分量の多いシートよりも紙繊維同士の絡まりが弱く締結力が低いためである。
【0075】
処理トレイ24内に搬送されてくるシートが、画像形成処理時に通る定着ローラから受け取る熱や機内の熱で乾燥されて、水分量が少なくなる。一方で、手差しセット部29に挿入されるシートは、設置されている環境の湿度の影響を受け、水分量が多くなる。つまり処理トレイ24内に搬送されるシートのほうが、手差しセット部29に挿入されるシートよりも水分量が低く、確実な締結力を得るためには大きな加圧力が必要となる。
【0076】
上述のような理由から、処理トレイ24内に排出されるシートを綴じるときは、装置の外部から手差しセット部29へ挿入され手差し綴じ処理されるシートを綴じるときよりも大きな加圧力を付与する必要が生じる。言い換えれば手差し綴じ処理では処理トレイ24内に排出されたシートを綴じるときほどの大きな加圧力は必要としない。手差し綴じ処理においても処理トレイ24上で綴じるときと同様に大きな加圧力で綴じることができるが、常に高負荷で綴じ処理すると圧着綴じ装置26にかかる機械的なストレスは大きく上がるため、耐久性を維持するためには装置の大型化や高コスト化を免れないが、そこで手差し綴じ処理時の加圧力を下げることにより、装置の大型化や高コスト化を回避し耐久性を向上させる。また、搬送ジャムを低減するという点では、印刷装置がインクジェット方式のものでも、トナー方式のものでも本発明の効果を得ることができ、特にトナー方式の印刷装置ではより顕著な効果を得ることができる。
【0077】
よって、シート搬入手段36から処理トレイ24に搬入されるシート束Sを圧着綴じする場合(以下、「オンライン綴じ」という)と、手差しセット部29に挿入されるシート束を圧着綴じする場合(以下、「オフライン綴じ」という)とで圧着綴じ圧を変えるために、CPU50がモータDCを停止させるときの電流値pは、オフライン綴じのときの電流値qより高くしている。RAM54には電流値pと電流値qが記憶されており、CPU50はオンライン綴じかオフライン綴じかに応じて電流値p又は電流値qを読み出して、電流検出回路52の検出電流値と比較する。また、RAM54には、オンライン綴じの場合もシート束の束厚さ及び/又はシート材質に応じて適切な加圧力とするための各電流値もデータテーブルで記憶しておくことで、シート束の束厚さ及び/又はシート材質に応じて加圧力を調整することができる。
【0078】
[圧着処理動作制御]
図12及び
図13を参照して圧着綴じ動作の流れを説明する。
図12は、オンライン綴じの場合を示しており、この場合、画像形成システムの使用者によって、入力手段47から圧着綴じとその場合の綴じ位置とが指定されると、画像形成ユニットAのCPU45から後処理モード指示信号と綴じ位置情報とが後処理ユニットBに伝送される。これにより、圧着綴じ装置26による綴じ処理ジョブが開始される(St01)。
【0079】
先ず、後処理ユニットBのCPU50は、伝送されてきた綴じ位置情報から綴じ位置を判別する(St02)。そして、コーナ綴じである場合、フロント側若しくはリア側の綴じ位置であるかに応じて、圧着綴じ装置26をフロント側コーナ綴じ位置へ移動(St03)若しくはリア側(St04)のリア側コーナ綴じ位置へ移動する(St04)。
【0080】
そして、処理トレイ24に所定の枚数が排出され、整合されると(St05)、モータDCを駆動させて、圧着綴じ装置26による加圧圧着処理が開始される(St06)。
【0081】
圧着綴じの完了は、圧着綴じ装置26のモータDCにかかる負荷、つまり電流値の上昇を検出することによって判断しており、前述の所定の電流値pに達したところで(St07の「Y」)、モータDCを停止させて加圧動作を完了させる(St08)。そして、所定の加圧時間の経過後、モータDCを逆方向に回転させてカム部材133のカム面133aの作動点が非係合部Cpsに復帰するまでモータDCを逆方向に回転させて、可動部材140をシート束Sから離間させる(St19)。そして、綴じたシート束Sをスタックトレイ25へ排出してジョブ終了となる(St20)。
【0082】
一方、伝送されてきた綴じ位置情報から綴じ位置が2か所綴じであることを判別したときには(St02)、2か所綴じに対応した一方の位置に圧着綴じ装置26を移動させる(St09)。処理トレイ24に所定の枚数が排出され、整合されると(St10)、モータDCを駆動させて、圧着綴じ装置26による加圧圧着処理が開始される(St11)。
【0083】
この圧着綴じの完了も、圧着綴じ装置26のモータDCにかかる負荷、つまり電流値の上昇を検出することによって判断しており、電流値pに達したところで(St12の「Y」)、モータDCを停止させて1か所目の加圧動作を完了させる(St13)。そして、所定の加圧時間の経過後、モータDCを逆方向に回転させてカム部材133のカム面133aの作動点が非係合部Cpsに復帰するまでモータDCを逆方向に回転させて、可動部材140をシート束Sから離間させる(St14)。
【0084】
続いて綴じ処理装置26を2か所目の綴じ位置へ位置移動させて(St15)、圧着綴じ装置26による加圧圧着が開始される(St16)。同じく、電流値が所定値pに達したところで(St17の「Y」)、モータDCを停止させて2か所目の加圧動作を完了させる(St18)。そして、モータDCを逆方向に回転させてカム部材133のカム面133aの作動点が非係合部Cpsに復帰するまでモータDCを逆方向に回転させて、可動部材140をシート束Sから離間させる(St19)。よって、可動部材140が退避位置に離間し、シート束から離れ(St20)、2か所の圧着が終了したシート束Sはスタックトレイ25へ排出してジョブ終了となる(St20)。
【0085】
図13は、オンライン綴じの場合を示しており、この場合には、手差しセット部29にシートが挿入されるとシート検知センサ56のON情報に基づいてジョブがスタートする(St21)。シートが手差し綴じ処理位置にセットされてからマニュアル操作ボタン30(
図2に図示)を押すか又はセット後所定時間経過すると(St22)、モータDCを駆動させて、圧着綴じ装置26による加圧圧着処理が開始される(St23)。
【0086】
圧着綴じの完了は、圧着綴じ装置26のモータDCにかかる負荷、つまり電流値の上昇を検出することによって判断しており、この場合には電流値pより小さい値の電流値qに達したところで(St24の「Y」)、モータDCを停止させて加圧動作を完了させる(St25)。そして、モータDCを逆方向に回転させてカム部材133のカム面133aの作動点が非係合部Cpsに復帰するまでモータDCを逆方向に回転させて、可動部材140をシート束Sから離間させる(St26)。よって、手差し綴じ部から圧着綴じの終了したシート束Sを引き出すことができる。
【0087】
なお、本実施例においては、圧着綴じ装置26の加圧力について、所定値Aに設定された場合は約600KGの加圧力でシートを加圧する。所定値Bに設定された場合には約450KGの加圧力(所定値Aの約75パーセント程度)でシートを加圧する。上述の加圧力は本実施例における綴じ歯の形状等に基づく参考値である。本願発明者の実験によれば所定値Aの75パーセント程度が所定値Bとなるよう設定されるのが望ましい。
【0088】
また、本実施例においては手差しセット部を処理トレイと別の位置に設ける構成で説明したが、公知の手差しセット部と処理トレイを共通の位置とする構成を採用した場合や、あるいは、公知の手差しセット部と処理トレイとにそれぞれ圧着綴じ装置を備える構成を採用した場合であっても、本発明のようにシートの搬送を伴う場合とそうでない場合で加圧力を異ならせることで適切な加圧力を付与することができる。
【符号の説明】
【0089】
A 画像形成ユニット
B 後処理ユニット
DC モータ(駆動部)
22 搬送部
23 排紙口
24 処理トレイ(載置部)
29 手差しセット部
52 電流値検出回路
133 カム部材
133a カム面
140 可動側加圧部材(可動部材)