(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】鋳型用添加剤
(51)【国際特許分類】
B22C 1/00 20060101AFI20230515BHJP
B22C 1/22 20060101ALI20230515BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230515BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B22C1/00 G
B22C1/22 B
C08K5/13
C08L61/06
(21)【出願番号】P 2018225734
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】神澤 智史
(72)【発明者】
【氏名】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】東 美喜子
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-099149(JP,A)
【文献】特開2018-118311(JP,A)
【文献】特開2018-140438(JP,A)
【文献】特開平08-174136(JP,A)
【文献】特公昭47-015215(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型用添加剤であって、
前記鋳型用添加剤の鋳型がフェノール樹脂を有する粘結剤を用いた鋳型である、鋳型用添加剤。
【化1】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【請求項2】
フェノール樹脂と、下記一般式(1)で表される芳香族アルコールとを含有する、鋳型造型用粘結剤組成物。
【化2】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【請求項3】
フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤と、下記一般式(1)で表される芳香族アルコールとを含有する、鋳型造型用硬化剤組成物。
【化3】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【請求項4】
耐火性粒子、フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる鋳型造型用硬化剤組成物を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法であって、
更に、下記一般式(1)で表される芳香族アルコールを添加する添加工程を有する、鋳型の製造方法。
【化4】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【請求項5】
フェノール樹脂を有する粘結剤を用いた鋳型の表層部に下記一般式(1)で表される芳香族アルコールを付与する処理工程を有する、鋳型の処理方法。
【化5】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【請求項6】
下記一般式(2)で表されるモノマーユニットを有する重合体を含有する鋳型造型用粘結剤組成物
であって、
前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの量が、前記鋳型造型用粘結剤組成物中のフェノール化合物のモノマー量及び前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニットの量の合計量1molに対して0.2mol以上である、鋳型造型用粘結剤組成物。
【化6】
(一般式(2)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【請求項7】
耐火性粒子、請求項6に記載の鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型用臭気低減剤であって、
前記鋳型用臭気低減剤の鋳型がフェノール樹脂を有する粘結剤を用いた鋳型である、鋳型用臭気低減剤。
【化7】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、1である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は高い耐熱性を持つことから鋳型用の粘結剤として広く用いられており、自硬性では、フェノール樹脂にアルカリを添加し水溶液としたエステル硬化型のフェノール樹脂や、イソシアネートで硬化させるフェノールウレタン法に用いられるフェノール樹脂、加熱硬化型ではシェルモールド法に用いられるフェノール樹脂の一種である固形のノボラックやレゾールが用いられている。また、ガス硬化型では、炭酸ガスを用いて硬化させる水溶性フェノール樹脂やアミンガスを用いて硬化させるコールドボックス用のフェノール樹脂がある。
【0003】
これらのフェノール樹脂の中でも、水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、エステル化合物を硬化剤として用いた鋳型造型法は、高い耐熱性を有し、粘結剤中に鋳物品質を低下させるような硫黄、リン等の元素を含まないため、品質の高い鋳物を製造することができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フェノール樹脂を鋳型の粘結剤として用いると、鋳造時に比較的強い臭気を伴う熱分解ガスが発生し、作業環境を悪化させる場合がある。
【0006】
本発明は、フェノール樹脂を粘結剤として用いた場合でも鋳造時の臭気低減がなされ、ひいては作業環境の悪化を抑制することができる鋳型用添加剤、鋳型造型用粘結剤組成物、及び鋳型造型用硬化剤組成物、並びに鋳型の製造方法、並びに鋳型の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋳型用添加剤は、下記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する。
【0008】
【化1】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、0以上、3以下である。ただし、m及びnは同時に0ではない。)
【0009】
本発明の鋳型造型用粘結剤組成物は、フェノール樹脂と、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールとを含有する。
【0010】
また、本発明の鋳型造型用粘結剤組成物は、下記一般式(2)で表されるモノマーユニットを有する重合体を含有する。
【0011】
【化2】
(一般式(2)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、0以上3以下である。但し、m及びnは同時に0ではない。)
【0012】
本発明の鋳型造型用硬化剤組成物は、フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤と、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールとを含有する。
【0013】
本発明の鋳型の製造方法は、耐火性粒子、フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる鋳型造型用硬化剤組成物を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法であって、更に、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを添加する添加工程を有する。
【0014】
本発明の鋳型の処理方法は、鋳型の表層部等に前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを付与する処理工程を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フェノール樹脂を粘結剤として用いた場合でも鋳造時の臭気低減がなされ、ひいては作業環境の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<鋳型用添加剤>
本実施形態の鋳型用添加剤は、下記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する。
【0017】
【化3】
(一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、0以上、3以下である。ただし、m及びnは同時に0ではない。)
【0018】
本実施形態の鋳型用添加剤によれば、粘結剤にフェノール樹脂が含まれる鋳型を用いた鋳造時の臭気を低減し、ひいては作業環境の悪化を抑制することができる。
【0019】
前記一般式(1)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、0以上、3以下であるが、m及びnは同時に0ではない。鋳造時の臭気低減の観点からm及びnはそれぞれ1が好ましい。このような物質としては4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテルが例示できる。
【0020】
フェノール樹脂としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、水溶性アルカリフェノール樹脂などそれぞれの硬化システムに応じた従来公知のフェノール樹脂が用いられる。また、これらフェノール樹脂は、クレゾールやビスフェノールA等のビスフェノール類など従来公知のフェノール類などと共縮合された樹脂が含まれる。
【0021】
〔その他の成分〕
前記鋳型用添加剤は、本実施形態の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、シランカップリング剤、尿素、界面活性剤、及び溶剤等が挙げられる。例えば、前記鋳型用添加剤が溶剤を含有する場合、前記鋳型用添加剤中の溶剤の含有量は、特に拘らないが、作業性の観点から10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。ただし、鋳造時の臭気低減の観点から、前記芳香族アルコールはフェノール樹脂に対して一定量以上添加する様に用いるのが好ましい。前記鋳型用添加剤中の前記芳香族アルコールの含有量が十分であると、鋳型造型用粘結剤組成物や鋳型造型用組成物に添加する前記鋳型用添加剤の添加量が少量で抑えることができる。そのため、前記鋳型用添加剤組成物中の溶剤の含有量は、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましい。よって、作業性の観点から10~99質量%が好ましく、20~98質量%がより好ましい。前記溶液としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが例示できる。
【0022】
前記鋳型用添加剤は、フェノール樹脂、当該フェノール樹脂を硬化させる硬化剤組成物、及び他の成分を含有する鋳型造型用組成物に添加して用いてもよいし、フェノール樹脂と前記鋳型用添加剤とを有する鋳型造型用粘結剤組成物として用いてもよい。また、前記鋳型用添加剤は溶剤を用いて流動化した状態にて、フェノール樹脂を用いて成型された鋳型に噴霧や塗布などにより付与しても構わない。また、前記鋳型用添加剤は固体の形態のまま、砂等の耐火性骨材と混合しても構わない。あるいは、鋳込み後の使用済鋳型解砕中での添加、若しくは解砕した鋳型の骨材を加熱して付着した有機物を除去する工程(焙焼再生時)の直前においても添加しても構わない。
【0023】
前記鋳型用添加剤中の前記芳香族アルコールの含有量は特に限定されない。当該鋳型用添加剤を使用する際には、鋳造時の臭気低減の観点から、フェノール樹脂を用いて製造する鋳型造型法の場合、前記フェノール樹脂100質量部に対して前記芳香族アルコールが0.1質量部以上となるように添加するのが好ましく、1質量部以上となるように添加するのがより好ましく、2.5質量部以上となるように添加するのが更に好ましい。当該鋳型用添加剤を使用する際、鋳型強度低下抑制の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して前記芳香族アルコールが45質量部以下となるように添加するのが好ましく、35質量部以下となるように添加するのがより好ましく、20質量部以下となるように添加するのが更に好ましい。よって、前記フェノール樹脂100質量部に対して前記芳香族アルコールが0.1~45質量部となるように添加するのが好ましく、1~35質量部となるように添加するのがより好ましく、2.5~20質量部となるように添加するのが更に好ましい。
【0024】
〔鋳型用臭気低減剤〕
更に、前記鋳型用添加剤は、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型用臭気低減剤として用いることができる。
【0025】
<鋳型造型用粘結剤組成物>
〔第1の実施形態〕
本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物(以下、単に粘結剤組成物ともいう)は、フェノール樹脂と、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールとを含有する。
【0026】
本実施形態の粘結剤組成物によれば、粘結剤にフェノール樹脂が含まれる鋳型を用いた鋳造時の臭気を低減し、ひいては作業環境の悪化を抑制することができる。
【0027】
[フェノール樹脂]
前記フェノール樹脂は、エステル化合物で硬化可能な樹脂であり、一般にはアルカリ条件下でフェノール化合物とアルデヒド化合物とを重縮合させることによって得られるものである。このうちフェノール化合物としては、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、クレゾール、3,5-キシレノール、レゾルシン、カテコール、ノニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール、その他の置換フェノールを含めたフェノール類や、カシューナット殻液のような各種のフェノール化合物の混合物等を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等を1種又は2種以上混合して使用することができる。これらの化合物は必要に応じて水溶液として用いることができる。また、これらに、尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のアルデヒド化合物と縮合が可能なモノマーや、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価の脂肪族アルコールや、水溶性高分子のポリアクリル酸塩や、セルロース誘導体高分子、ポリビニルアルコール、リグニン誘導体などを混合しても差し支えない。
【0028】
前記フェノール樹脂の固形分質量(105℃で3時間乾燥後の固形質量)は、鋳型強度を向上させる観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。前記フェノール樹脂の固形分質量は、鋳型強度を向上させる観点から、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。また、前記フェノール樹脂の固形分質量は、鋳型強度を向上させる観点から、30~80質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。
【0029】
[芳香族アルコール]
本実施形態の粘結剤組成物に含有される芳香族アルコールは、前記鋳型用添加剤に含有される芳香族アルコールと同様である。
【0030】
前記粘結剤組成物中の前記芳香族アルコールの含有量は、鋳造時の臭気低減の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が更に好ましい。一方、鋳型強度低下抑制の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して45質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。よって、前記フェノール樹脂100質量部に対して0.1~45質量部が好ましく、1~35質量部がより好ましく、2.5~20質量部が更に好ましい。
【0031】
[その他の成分]
前記粘結剤組成物は、本実施形態の効果を阻害しない程度に水、シランカップリング剤、尿素、界面活性剤、アルコール類等の添加剤が含まれていてもよい。なお、前記粘結剤組成物中にシランカップリング剤が含まれていると、得られる鋳型の最終強度をより向上させることができるため好ましい。前記シランカップリング剤の例としては、γ-(2-アミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。前記粘結剤組成物中の前記シランカップリング剤の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、0.1~5質量%が好ましく、0.3~1質量%がより好ましい。
【0032】
〔第2の実施形態〕
本実施形態の粘結剤組成物は、下記一般式(2)で表されるモノマーユニットを有する重合体を含有する。
【0033】
【化4】
一般式(2)中、m及びnはそれぞれフェニル基に結合している水酸基の数を示し、鋳造時の臭気低減の観点から、それぞれ0以上であり、1以上が好ましく、同様の観点から、3以下であり、2以下が好ましい。また、前記一般式(2)中のm及びnは、同様の観点から、それぞれ0~3であり(但し、m及びnは同時に0ではない)、1又は2がより好ましい。
【0034】
本実施形態2の粘結剤組成物によれば、フェノール樹脂を粘結剤として用いた場合に鋳造時の臭気を低減し、ひいては作業環境の悪化を抑制することができる。
【0035】
前記一般式(2)で表されるモノマーユニットは、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールより誘導されるモノマーユニットである。
【0036】
前記重合体は、前記一般式(2)で表されるモノマーユニットのみからなる重合体でもよく、本実施形態の効果を損なわない範囲で前記一般式(2)で表される以外のモノマーユニットを有していてもよい。本明細書において、前記一般式(2)で表されるモノマーユニットのみからなる重合体を単独系重合体とも称し、本実施形態の効果を損なわない範囲で前記一般式(2)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニットを有する重合体を共重合体系重合体とも称する。
【0037】
前記一般式(2)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニットは、フェノール化合物から誘導されるモノマーユニットが好ましい。当該フェノール化合物としては、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、クレゾール、3,5-キシレノール、レゾルシン、カテコール、ノニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール、その他の置換フェノールを含めたフェノール類が例示できる。
【0038】
[重合体の製造方法]
前記重合体は公知の手法を用いて製造することができる。一例としては、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含むフェノール類と、アルデヒド化合物とをアルカリ条件下で反応させることによって重合体を得る方法が挙げられる。
【0039】
前記共重合体系重合体を製造する場合、鋳造時の臭気低減の観点から、前記フェノール化合物と、当該フェノール化合物1molに対して0.1mol以上、好ましくは0.2mol以上の前記一般式(1)で表される芳香族アルコールと、アルデヒド化合物とをアルカリ条件下で反応させるのが好ましい。一方、鋳型強度低下抑制の観点から、前記フェノール化合物と、当該フェノール化合物1molに対して50mol以下、好ましくは40mol以下の前記一般式(1)で表される芳香族アルコールと、アルデヒド化合物とをアルカリ条件下で反応させるのが好ましい。
【0040】
前記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、これらに、尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のアルデヒド化合物と縮合が可能なモノマーや、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価の脂肪族アルコール化合物や、水溶性高分子のポリアクリル酸塩や、セルロース誘導体高分子、ポリビニルアルコール、リグニン誘導体などを混合しても差し支えない。
【0041】
前記一般式(1)で表される芳香族アルコールと前記アルデヒド化合物とをアルカリ条件下で重縮合させる場合に用いられるアルカリ触媒としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる1種以上アルカリ金属の水酸化物が挙げられるが、特に水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0042】
前記共重合体系重合体の重量平均分子量(Mw)は、鋳型強度を向上させる観点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましい。また、前記重合体の重量平均分子量(Mw)は、鋳型強度を向上させる観点から、400~5000が好ましく、500~4000がより好ましい。本明細書において、重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定する。
【0043】
前記単独系重合体は、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールと、水酸化アルカリ水溶液を前記一般式(1)で表される芳香族アルコールに対して1倍mol以下で混合させ中和反応させ、適宜濃度調整した後、アルデヒドを加え、過熱して重縮合反応を行うことにより得ることができる。前記単独系重合体の製造に用いることができるアルデヒドは前記共重合体系重合体の製造で用いることができるアルデヒドと同様である。
【0044】
前記単独系重合体の重量平均分子量は、鋳型強度を向上させる観点から、300以上、より好ましくは400以上であり、流動性等の取扱いの簡便性の観点から10000以下が好ましく、より好ましくは2000以下である。また、前記単独系重合体の重量平均分子量は、鋳型強度を向上させる観点から、300~10000が好ましく、400~2000がより好ましい。
【0045】
〔重合体の構造の確認〕
本発明の重合体が一般式(2)で表されるモノマーユニットを有することは、重量平均分子量を一定値以下(例えば、10000以下)に分画された分析用試料をMALDI―TOF/MSで分析することにより確認することができる。
【0046】
前記粘結剤組成物は、既知のフェノール樹脂を含有していてもよい。当該既知のフェノール樹脂としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、水溶性アルカリフェノール樹脂などそれぞれの硬化システムに応じた従来公知のフェノール樹脂が用いられる。また、これらフェノール樹脂は、クレゾールやビスフェノールA等のビスフェノール類などと共縮合された樹脂が含まれる。これらの中でも水溶性アルカリフェノール樹脂が好ましい。
【0047】
前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの量は、鋳造時の臭気低減の観点から、前記粘結剤組成物中のフェノール化合物のモノマー量及び前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニットの量の合計量1molに対して0.1mol以上が好ましく、0.2mol以上がより好ましく、鋳型強度低下抑制の観点から、50mol以下が好ましく、40mol以下がより好ましい。よって、前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの量は、前記粘結剤組成物中のフェノール化合物のモノマー量及び前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニットの量の合計量1molに対して0.1~50molが好ましく、0.2~40molがより好ましい。
【0048】
前記粘結剤組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含むフェノール類が含有されていてもよい。
【0049】
前記粘結剤組成物中の前記フェノール類の含有量は特に拘らず、適宜調整することができる。一例としては、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールの量及び前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの量の合計が、鋳造時の臭気低減の観点から前記粘結剤組成物中のフェノール化合物のモノマー量及び前記重合体中の前記一般式(2)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニットの量の合計量1molに対して0.1mol以上が好ましく、0.2mol以上がより好ましく、鋳型強度低下抑制の観点から、50mol以下が好ましく、40mol以下がより好ましい。よって、前記粘結剤組成物中のフェノール化合物のモノマー量及び前記重合体中のモノマーユニットの量の合計量1molに対して0.1~50molが好ましく、0.2~40molがより好ましい。
【0050】
前記鋳型造型用粘結剤組成物に前記フェノール類を含有させる方法としては、別異に添加する方法や前記一般式(2)で表されるモノマーユニットを有する重合体を合成する際に過剰に用いることで未反応物として含ませることができる。
【0051】
〔その他成分〕
前記鋳型造型用粘結剤組成物は、本実施形態の効果を阻害しない程度に水、シランカップリング剤、尿素、界面活性剤、アルコール類等の添加剤が含まれていても良い。なお、前記鋳型造型用粘結剤組成物中にシランカップリング剤が含まれていると、得られる鋳型の最終強度をより向上させることができるため好ましい。用いられるシランカップリング剤の種類や量は前記と同様である。
【0052】
前記粘結剤組成物は、1種又は2種以上のそれぞれの成分を混合装置を用いて機械的に混練することで得ることができる。
【0053】
<鋳型造型用硬化剤組成物>
本実施形態の鋳型造型用硬化剤組成物(以下、単に硬化剤組成物ともいう)は、前記フェノール樹脂を含有する粘結剤組成物を硬化させる硬化剤と、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールとを含有する。
【0054】
本実施形態の硬化剤組成物によれば、粘結剤に前記フェノール樹脂が含まれる鋳型を用いた鋳造時の臭気を低減し、ひいては作業環境の悪化を抑制することができる。
【0055】
〔硬化剤〕
前記硬化剤は前記フェノール樹脂を含有する粘結剤組成物を硬化させるものであれば特に限定なく用いることができるが、鋳型強度を向上させる観点からエステル化合物が好ましい。
【0056】
前記エステル化合物は、前記フェノール樹脂の硬化剤として使用できる従来公知のエステル化合物である。当該エステル化合物としては、ラクトン類或いは炭素数1~10の一価又はアルコールと炭素数1~10の有機カルボン酸より導かれる有機エステル化合物の単独もしくは混合物が挙げられる。前記エステル化合物の具体例としては、プロピオンラクトン、ε-カプロラクトン、ギ酸エチル、エチレングリコールモノアセテートが挙げられるが、これらの中でもプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、トリアセチン、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等を用いるのが好ましい。また分岐エステル化合物としては、2-エチルコハク酸ジメチル、2-メチルグルタル酸ジメチル、2-メチルアジピン酸ジメチル、2-エチルヘキサン酸メチル、2-エチルヘキサン酸エチル、2-メチルセバシン酸ジメチル、2-エチルアゼライン酸ジメチル、2-エチルグルタル酸ジエチル、2-(n-プロピル)グルタル酸ジメチル、2-(n-ブチル)コハク酸ジエチル、2-(n-ブチル)コハク酸ジメチル、2-メチルピメリン酸ジエチル、2-メチルスベリン酸ジメチルや、これらの混合物等が例示できる。なかでも、フェノール樹脂の硬化時間をより適切な範囲に調整できることから、2-エチルコハク酸ジメチル、2-メチルグルタル酸ジメチル、2-メチルアジピン酸ジメチルが好ましい。
【0057】
〔芳香族アルコール〕
本実施形態の硬化剤組成物に含有される芳香族アルコールは、前記鋳型用添加剤に含有される芳香族アルコールと同様である。
【0058】
前記硬化剤組成物中の前記芳香族アルコールの含有量は特に限定されないが、鋳造時の臭気低減の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して前記芳香族アルコールが0.1質量部以上となるように含有するのが好ましく、1質量部以上となるように含有するのがより好ましく、2.5質量部以上となるように含有するのが更に好ましい。一方、鋳型強度低下抑制の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して前記芳香族アルコールが45質量部以下となるように含有するのが好ましく、35質量部以下となるように含有するのがより好ましく、20質量部以下となるように含有するのが更に好ましい。よって、前記フェノール樹脂100質量部に対して前記芳香族アルコールが0.1~45質量部となるように含有するのが好ましく、1~35質量部となるように含有するのがより好ましく、2.5~20質量部となるように含有するのが更に好ましい。
【0059】
〔その他の成分〕
前記硬化剤組成物には、本実施形態の効果を阻害しない程度に香料や界面活性剤等の添加剤が含有されてもよい。
【0060】
<鋳型の表面処理方法>
本発明の鋳型の処理方法は、鋳型の表層に前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを付与する処理工程を有する。
【0061】
本実施形態の鋳型の処理方法によれば、粘結剤にフェノール樹脂が含まれる鋳型を用いた鋳造時の臭気を低減することができる。
【0062】
〔処理工程〕
前記処理工程で鋳型の表層に前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを付与する方法は特に限定されないが、前記鋳型の表面に適度な粘度に調整した前記鋳型用添加剤を噴霧する方法、及び前記鋳型の表面に前記鋳型用添加剤を塗布する方法、鋳型を鋳型用添加剤含有の液状組成物に浸漬させる方法等が例示できる。
【0063】
なお、本発明は、広くフェノール樹脂の鋳造時の臭気を低減できるため、フェノール樹脂を用い、エステル化合物で硬化させる鋳型造型法以外にも、シェルモールド法、コールドボックス法などでフェノール樹脂を鋳型用粘結剤に使用している鋳型造型法においても用いる事ができる。
【0064】
<鋳型の製造方法>
〔第1の実施形態〕
本実施形態の鋳型の製造方法は、耐火性粒子、前記フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる鋳型造型用硬化剤組成物を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法であって、更に、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを添加する添加工程を有する。
【0065】
本第1の実施形態の鋳型の製造方法によれば、粘結剤に前記フェノール樹脂が含まれる鋳型を用いた鋳造時の臭気を低減することができる。
【0066】
本実施形態の鋳型の製造方法において、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを添加する添加工程を有する以外は従来の鋳型の製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。
【0067】
[混合工程]
(耐火性粒子)
本実施形態の鋳型の製造方法で使用可能な耐火性粒子としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収して再生処理した再生砂も使用できるが、経済性の観点、及び当該鋳型の製造方法の効果発現の観点から再生砂が好ましい。なお、耐火性粒子は、単独で使用又は2種以上を併用することができる。
【0068】
前記混合工程において、各原料を混合する方法としては、公知一般の手法を用いることが出来、例えば、バッチミキサーにより各原料を添加して混練する方法や、連続ミキサーに各原料を供給して混練する方法が挙げられる。
【0069】
前記鋳型の製造方法における前記耐火性粒子と前記粘結剤組成物と前記硬化剤との比率は適宜設定できるが、鋳型強度を向上させる観点から、前記耐火性粒子10000質量部に対して、前記粘結剤組成物が50質量部以上が好ましく、500質量部以下がより好ましい。鋳型の最終強度を向上させる観点から、前記耐火性粒子10000質量部に対して、前記硬化剤が10質量部以上が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
【0070】
[硬化工程]
前記硬化工程において、当該鋳型用組成物を硬化させる方法としては、上述した硬化法を含めて公知一般の手法を用いることが出来る。
【0071】
[添加工程]
前記添加工程は、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを添加する工程である。当該芳香族アルコールは、前記鋳型用添加剤に含有される芳香族アルコールと同様である。
【0072】
前記添加工程において前記芳香族アルコールを添加する方法は特に限定されない。例えば、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型造型用粘結剤組成物を用いて添加する方法、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型造型用硬化剤組成物を用いて添加する方法、及び前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型造型用粘結剤組成物と前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型造型用硬化剤組成物とを用いて添加する方法、並びに前記鋳型用添加剤を添加する方法、並びに耐火性粒子に前記芳香族アルコールを添加しておく方法等が例示できる。これらの中でも、鋳型硬化性能の観点から、鋳型用添加剤を混合時に添加する方法、及び耐火性粒子に前記芳香族アルコールを添加しておく方法が好ましい。
【0073】
前記鋳型用添加剤を添加する方法は特に限定されないが、前記混合工程で前記鋳型用添加剤を添加する方法、及び前記硬化工程で前記鋳型用組成物を硬化させて得られた鋳型の表層部に付与する方法が例示できる。前記混合工程で前記鋳型用添加剤を添加する場合は混合工程中に一括添加してもよいし、分割添加してもよいし、連続添加してもよい。前記硬化工程で前記鋳型用組成物を硬化させて得られた鋳型の表層部に添加する方法は特に限定されないが、当該鋳型の表層部に前記鋳型用添加剤を噴霧したり、塗布したり、浸漬させる方法が例示できる。前記硬化工程で前記鋳型用組成物を硬化させて得られた鋳型の表層部に付与する方法によって前記芳香族アルコールを添加する場合、前記芳香族アルコールは前記硬化工程で前記鋳型用組成物を硬化させて得られた鋳型に含まれていても含まれていなくても構わない。作業性の観点から前記芳香族アルコールは前記硬化工程で前記鋳型用組成物を硬化させて得られた鋳型に含有させて用いる方法が好ましい。
【0074】
前記耐火性粒子に前記芳香族アルコールを添加する方法は特に限定されないが、前記鋳型用添加剤を前記耐火性粒子に添加する方法等が例示できる。前記鋳型用添加剤を前記耐火性粒子に添加する方法としては前記鋳型用添加剤を前記耐火性粒子に噴霧する方法等が例示できる。
【0075】
前記芳香族アルコールの添加量は、鋳造時の臭気低減の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が更に好ましい。前記芳香族アルコールの添加方法が、前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型造型用粘結剤組成物を用いて添加する方法、及び前記一般式(1)で表される芳香族アルコールを含有する鋳型造型用硬化剤組成物を用いて添加する方法等の前記芳香族アルコールが鋳型用組成物に含まれる態様の場合は、鋳型強度低下抑制の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して45質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。前記芳香族アルコールの添加方法が、前記硬化工程で前記鋳型用組成物を硬化させて得られた鋳型の表層部に付与する方法や鋳込み後の使用済鋳型解砕中での添加、若しくは解砕した鋳型の骨材を加熱して付着した有機物を除去する工程(焙焼再生時)の直前の場合は、鋳型強度に影響をなさないので特に限定はないが、費用対効果の観点から、前記フェノール樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、45質量部以下が更に好ましい。
【0076】
〔その他工程〕
本発明の鋳型の製造方法においては、更に、混合工程と硬化工程の間に所望の形状に成型する工程を行うことが好ましい。この工程は本願の鋳型組成物を所望の型枠に詰める充填工程や上記混合物を積層させる工程や一度成型した形状から硬化前に掻き取る掻き型法などを用いて造型すること工程を挙げることができる。
【0077】
〔第2の実施形態〕
本実施形態の鋳型の製造方法は、耐火性粒子、前記一般式(2)で表されるモノマーユニットを有する重合体を含有する鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する。本実施形態の鋳型の製造方法において、従来の鋳型の製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。
【0078】
本実施形態の鋳型の製造方法によれば、粘結剤組成物に前記フェノール樹脂が含まれる鋳型を用いた鋳造時の臭気を低減することができる。
【0079】
[混合工程]
(耐火性粒子、及び硬化剤)
本実施形態の鋳型の製造方法の混合工程に係る耐火性粒子及び硬化剤は、第1の実施形態の鋳型の製造方法の混合工程に係る耐火性粒子及び硬化剤と同様である。
【0080】
前記混合工程において、各原料を混合する方法としては、第1の実施形態の鋳型の製造方法の混合工程と同様、公知一般の手法を用いることが出来る。
【0081】
前記混合工程において、前記鋳型造型用粘結剤組成物の添加量は、鋳造時の臭気低減の観点から、鋳型造型用組成物中の前記重合体の前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの量が鋳型用組成物中の各種モノマーユニット1molに対して0.1mol以上になるような範囲で重合体と混合するのが好ましく、0.2mol以上になるように添加するのがより好ましく、鋳型強度低下抑制の観点から、50mol以下になるように添加するのが好ましく、40mol以下になるように添加するのがより好ましい。よって、鋳型造型用組成物中の前記重合体の前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの量が鋳型用組成物中の各種モノマーユニット1molに対して0.1~50molになるような範囲で重合体と混合するのが好ましく、0.2~40molになるような範囲で重合体を混合するのがより好ましい。
【0082】
前記鋳型の製造方法における前記耐火性粒子と前記粘結剤組成物と前記硬化剤との比率は適宜設定できるが、鋳型強度を向上させる観点から、前記耐火性粒子10000質量部に対して、前記粘結剤組成物が50質量部以上が好ましく、500質量部以下がより好ましい。鋳型の最終強度を向上させる観点から、前記耐火性粒子10000質量部に対して、前記硬化剤が10質量部以上が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
【0083】
〔硬化工程〕
前記硬化工程において、当該鋳型用組成物を硬化させる方法としては、公知一般の手法を用いることが出来る。
【0084】
〔その他工程〕
本発明の第2の実施形態においても、第1の実施態更において示した混合工程と硬化工程の間に所望の形状に成型する工程を行うことが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。
【0086】
<合成例>
〔水溶性フェノール樹脂組成物A〕
フェノール7molと、50質量%水酸化カリウム水溶液(フェノールと4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルの合計に対して0.40倍mol)と、50質量%水酸化ナトリウム水溶液(フェノールと4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルの合計に対して0.40倍mol)とを混合した水溶液に、反応終了後の溶液中の樹脂(固形分)の含有量が50質量%になるまで水を添加し、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルを3mol添加。80℃まで昇温後92質量%パラホルムアルデヒド(フェノールと4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルの合計10molに対して2.00倍mol)を加え、80℃で重縮合反応を行った。次いでγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを反応溶液100質量部に対して0.5質量部添加して、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルから誘導されたモノマーユニットとフェノールから誘導されたモノマーユニットのmol比(4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルから誘導されたモノマーユニットのmol:フェノールから誘導されたモノマーユニットのmol)が3:7の水溶性フェノール樹脂A(重量平均分子量3000)を含有する水溶性フェノール樹脂組成物Aを得た。
【0087】
〔水溶性フェノール樹脂組成物B〕
フェノール3mol、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル7molを用いた以外は前記水溶性フェノール樹脂組成物Aと同じ条件にて、誘導されたモノマーユニットのmol比(4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルから誘導されたモノマーユニットのmol:フェノールから誘導されたモノマーユニットのmol)が7:3の水溶性フェノール樹脂B(重量平均分子量2300)を含有する水溶性フェノール樹脂組成物Bを得た。
【0088】
〔4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル樹脂組成物C〕
4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルを10molと、50質量%水酸化カリウム水溶液(4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルの合計に対して0.40倍mol)と、50質量%水酸化ナトリウム水溶液(4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルの合計に対して0.40倍mol)とを混合し、反応終了後の溶液中の樹脂(固形分)の含有量が50質量%になるまで水を添加し80℃まで昇温。92質量%パラホルムアルデヒド(4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル10molに対して2.00倍mol)を加え、90℃で重縮合反応を行った。反応後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを反応溶液100質量部に対して0.5質量部添加して、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル樹脂C(重量平均分子量1700)を含有する4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル樹脂組成物Cを得た。
【0089】
〔水溶性フェノール樹脂組成物D〕
フェノール10molと、50質量%水酸化カリウム水溶液(フェノールに対して0.40倍mol)と、50質量%水酸化ナトリウム水溶液(フェノールに対して0.40倍mol)とを混合した水溶液に、反応終了後の溶液中の樹脂(固形分)の含有量が50質量%になるまで水を添加して、92質量%パラホルムアルデヒド(フェノールに対して2.00倍mol)を加え、80℃で重縮合反応を行い、水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量が2000に達するまで反応を継続した。次いで、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを反応溶液100質量部に対して0.5質量部添加して、水溶性フェノール樹脂D(重量平均分子量2000)を含む水溶性フェノール樹脂組成物Dを得た。
【0090】
<評価方法>
〔樹脂の重量平均分子量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリエチレン換算にて重量平均分子量を測定した。
[測定条件]
・東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフSC-8020シリーズ・ビルドアップシステム
・カラム:G2000HXL+G4000HXL
・検出器:UV 285nm
・キャリヤ:テトラヒドロフラン1mL/分
・カラム温度:38℃
【0091】
〔樹脂の固形分質量〕
シャーレに樹脂組成物2g、及び水1gを添加し、混合した後、105℃に加熱した電気炉で4時間加熱処理した。当該加熱処理後の質量g/2g×100の値を固形分とした。
【0092】
〔樹脂の構造確認〕
前記水溶性フェノール樹脂組成物A、前記水溶性フェノール樹脂組成物B、及び4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル樹脂組成物Cがそれぞれ前記一般式(2)で表されるモノマーユニットを有することを以下の手法により確認した。
【0093】
[測定サンプルの調製]
前記水溶性フェノール樹脂組成物A、前記水溶性フェノール樹脂組成物B、及びビフェノール樹脂組成物Cそれぞれについて下記条件にてゲル透析膜を用いて重量平均分子量1000~8000の範囲の分画成分(測定サンプル)を得た。
・装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
・SEC分離カラム:(α(ガードカラム)、α-M 2本(分析カラム)直列)
・検量:重量平均分子量500~800万までの分子量オーダーの異なる6種の標準ポリスチレンを用いて設定
【0094】
[樹脂の重量平均分子量の測定]
構造確認用の前記測定サンプルの重量平均分子量を、MALDI―TOF/MSにて下記条件で解析した。
・装置:ultrafleXtreme(ブルカー・ダルトニクス社製)
・マトリクス:2,5-ジヒドロキシベンゼン酸を適宜用いた。
・条件:リフレクタモードはPositive、測定範囲Mw0-3000、レーザー強度98%
・検出器:形式はリニアモード、イオン検出はポジティブモード
【0095】
[前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの存在確認]
前記測定により得られた各測定サンプルの重量平均分子量の、それぞれの原料モノマーとの差異より、重合体中に前記一般式(2)で表されるモノマーユニットの存在が確認でき、いずれも一般式(2)中のmとnの合計が2で表される重合体であった。
【0096】
〔臭気の官能評価〕
[評価砂の調製]
耐火性粒子(山川産業株式会社製珪砂(フリーマントル新砂))100質量部に対し、表1及び表2に記載の配合を添加混練して、実施例1~8、及び比較例1、2に係る各評価砂(鋳型造型用砂組成物)を得た。なお、表1及び表2中の硬化剤はトリアセチンである。
【0097】
[評価方法]
φ45×36の磁性坩堝に評価砂を50.0g入れ磁性蓋で蓋をし、評価砂が入った坩堝を500℃に加熱した光洋サーモシステム株式会社製の小型電気炉KBF794N1の中に入れ、表示温度が500℃到達後10分間加熱した。電気炉から坩堝を取出し、2分以内に坩堝と蓋の隙間から出ている臭気を嗅ぐことにより蓋開放前の臭気の評価をした(官能評価法1)。その後、坩堝取出し2分後に蓋を開放し、坩堝取出し後5分後までに坩堝内の評価砂から漂う臭いを嗅いで評価を行った(官能評価法2)。その後、取出し5分後に坩堝を反転させて評価砂を取り出し後に評価砂から漂う臭いの評価を行った(官能評価法3)。官能評価1~3それぞれについてパネラー5名によって臭気の強さを感覚で相対比較して5段階で評価し、当該評価の平均値を出して評価結果とした。評価基準を以下に示す。
・評価1:極端に強く感じる
・評価2:非常に強く感じる
・評価3:強く感じる
・評価4:やや強く感じる
・評価5:かすかに感じる
【0098】
実施例1~8、比較例1、2の官能評価法1に係る各評価結果を表1又は表2に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
〔鋳込み試験評価〕
実施例2及び比較例1につき、以下に示す鋳型模型を用いた鋳込み試験評価を行った。
【0102】
〔鋳込み試験評価方法〕
新砂フリーマントルで作製した縦34cm×横24cm×高さ15cmの鋳型(重量30kg)の空洞部に1370℃の溶融金属を6kg流し込み、流し込んだ後、直ぐに90cm×90cm×90cmの一面が欠けた箱型ステンレスカバーを被せた。70分後にステンレスカバー上部の塞いであった小穴を開放し、内部に溜まった発生ガスの臭気を嗅いで、前記評価基準によって官能評価1~3について評価した。評価結果を表3に示す。
【0103】