(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】複数の電線を加工するための機器及び方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/02 20060101AFI20230515BHJP
H01R 43/28 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01B13/02 B
H01R43/28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019003334
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506058451
【氏名又は名称】コマックス ホルディング アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KOMAX HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ストーブリ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ブーヒャ
(72)【発明者】
【氏名】ビート ズーター
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186834(JP,A)
【文献】特開2014-235908(JP,A)
【文献】特開2001-122525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/02
H01R 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を加工するための機器であって、
複数の電線の先端を加工領域の区間を通って案内するように構成された供給装置と、
前記加工領域の前記区間に配置され、前記電線の後端を保持するように構成された固定された保持装置と、
直線状のガイド方向に沿って固定されておらず、前記電線の先端を保持するように構成された非固定の保持装置であって、前記固定された保持装置及び/または前記非固定の保持装置が、前記電線の前記保持された端部を撚り合わせるようにそれぞれ構成された非固定の保持装置と、
制御可能な駆動部によって前記直線状のガイド方向に沿って固定されておらず、結束セグメントを備え、前記非固定の保持装置から独立しており、前記結束セグメントが、前記電線の先端の結束領域を束ねるように構成された非固定の結束装置と、
前記非固定の結束装置の前記駆動部と接続され、前記非固定の結束装置の前記結束セグメントと前記非固定の保持装置との間の距離が、設定された距
離となるように前記駆動部を制御するように構成されたコントローラと、
を有する機器。
【請求項2】
前記非固定の結束装置の前記結束セグメントと前記非固定の保持装置との間の距離を測定するように構成された距離測定装置をさらに有し、
前記コントローラが前記距離測定装置とさらに接続された、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記加工領域に配置され、前記電線の後端の結束領域を束ねるように構成された固定された結束装置をさらに有する、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
前記設定された距
離は、前記電線の先端の前記結束領域の位置を
示すものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の機器。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電線の先端の第1の交差位置までの距離から前記電線の先端の前記結束領域の前記位置を判定するようにさらに構成された、請求項4に記載の機器。
【請求項6】
前記距離測定装置は、磁歪式位置測定システム、磁気式位置測定システムまたは光学式位置測定システムである、請求項
2に記載の機器。
【請求項7】
前記距離測定装置は、位置インジケータと経路センサ装置とを有し、前記位置インジケータが前記非固定の保持装置のリニアガイドに配置され
た、請求項
2に記載の機器。
【請求項8】
前記非固定の結束装置及び前記固定された結束装置の一方または両方が、結束バインダで前記電線を巻き付けるように構成され
た、請求項1から7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項9】
前記非固定の結束装置と前記固定された結束装置の一方または両方が、前記駆動部から独立した位置決め装置をそれぞれ有し、
前記位置決め装置が、各結束装置の結束セグメントを、結束すべき前記電線の端部に対して位置決めするように構成された、請求項1から8のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記非固定の保持装置は、保持装置のリニアガイドに沿って移動させることが可能であり、前記非固定の結束装置は、結束装置のリニアガイドに沿って移動させることが可能であり、
前記保持装置のリニアガイドと前記結束装置のリニアガイドとが、互いに独立しており、互いに平行に移動する、請求項1から9のいずれか1項に記載の機器。
【請求項11】
前記非固定の結束装置と前記固定された結束装置の一方または両方がそれぞれセン
サを有し、
前記センサは、前記電線の前記第1の交差位置を検出す
るように構成された、請求項
5に記載の機器。
【請求項12】
前記非固定の結束装置と前記固定された結束装置の一方または両方がそれぞれセンサを有し、
前記センサは、前記結束バインダの存在を検出する及び/または前記結束バインダの位置を検出するように構成された、請求項8に記載の機器。
【請求項13】
前記コントローラが、前記電線の前記第1の交差位置を示す前記センサの検出結果を用いて前記駆動部を制御するように構成された、請求項
11に記載の機器。
【請求項14】
前記センサは、光学ラインセンサを有し、
前記電線の前記第1の交差位置は、前記光学ラインセンサの位置に対応し、前記光学ラインセンサの隣接する画像点の信号強度の差が所定のしきい値を超える位置と見なされる、請求項11に記載の機器。
【請求項15】
前記センサは、照明手段を備える光学センサ及びデジタルカメラを有する、請求項11に記載の機器。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか1項に記載の機器を用いて複数の電線を加工するための方法であって、
非固定の保持装置で前記電線の先端を保持し、固定された保持装置で前記電線の後端を加工領域の区間で保持し、
前記電線の先端で前記電線を前記後端に対して撚り合わせ、及び/または前記電線の後端で前記電線を前記先端に対して撚り合わせ、
前記撚り合わせが完了した後または撚り合わせている間に、前記非固定の結束装置の結束セグメントと前記非固定の保持装置との間の距離が、設定された距
離となるように駆動部を制御し、
前記非固定の結束装置で前記電線の先端の結束領域を束ね、及び/または前記固定された結束装置で前記電線の後端の結束領域を束ねる、方法。
【請求項17】
結束バインダの存在または前記結束バインダの位置を検出し、
前記
結束バインダの存在または前記結束バインダの位置の検出結果から品質基準が満たされるかを判定し、
前記判定に応じて信号を出力する、請求項11から
15のいずれか1項に記載の機器を使用する請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記電線の先端の第1の交差位置に対する前記距離を設定することをさらに含む、請求項
16または
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複数の電線を加工するための機器及びその機器を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の用途では、複数の電線が並んで束状で―当初は巻かれていない、またはその全長で巻かれていない複数のワイヤを備えるケーブルを意味する―案内され、ケーブル加工装置で自動的に組み立てられて撚り合わされる。組立てには、一般的に、個々のワイヤの少なくとも一方の端部を切断すること、被覆を剥がすこと、及び/またはコンタクト、グロメット等を取り付けることが含まれる。通常、ツイストワイヤ、特にツイストワイヤペアにはコネクタハウジング等が取り付けられる。
【0003】
そのような従来のケーブル加工装置において、複数のワイヤは、上記機器の様々な作業領域に沿って案内される。通常、ワイヤ束の一方の端部は、引張動作の方向へ案内されるワイヤ束の先端と、ワイヤ束の後端とを定義できるように、これらの作業領域を通して引かれる。
【0004】
ワイヤを撚り合わせることは、信号伝送上の理由、例えばワイヤペアに結合されるコモンモード干渉を低減するために望ましく、あるいはさらなる加工のためにワイヤの単なる受け渡しを目的として実行されることもある。撚り合わされた複数のワイヤは、互いに巻かれているため、巻かれていない(すなわち、撚り合わされていない、または軽く撚り合わされている)状態の同じワイヤよりも短くなる。
【0005】
特許文献1は、ツイスト機能を有するケーブル加工装置を示している。この最新の背景技術では、2本のワイヤが同時に引かれて移動させられて組み立てられる。ワイヤの先端は、まずけん引方向へ運ばれ、続いてツイスト装置へ搬送される。ツイスト装置は、ツイストプロセスの期間でワイヤの後端を固定された位置で保持する固定された保持モジュールと、ケーブルのガイド方向へ移動させることが可能であり、各ワイヤの先端を把持して互いに巻く(撚り合わせる)ことができるツイストヘッドとを有する。ツイストヘッドは、ツイストプロセスの期間でワイヤが短縮することに起因して、固定された保持モジュールの方向におけるガイド方向に沿って位置が調整され、そこでは、引く力の測定値が基準変数となる。
【0006】
特許文献2は、ツイスト機能を備えた他のケーブル加工装置について記載している。ここでは、2本のワイヤが連続して取り込まれ、組み立てられて再び引き出される。その後、ワイヤはまとめてツイスト装置へ搬送される。ツイスト装置は、各ワイヤをその先端で撚り合わせるツイストヘッドと、各ワイヤをその後端で撚り合わせるツイストヘッドとを有する。ツイストヘッドの一方は、ツイストプロセスの期間で生じるワイヤの短縮を補うためにガイド方向に沿って位置が調整される。
【0007】
ツイストワイヤの撚りがほどける(撚りが戻る)のを防止するため、ツイストワイヤを適切な位置で固定することが知られている。一般的に、ツイストワイヤには粘着テープが巻き付けられている。特許文献3は、所定の領域に粘着テープを巻き付けることで撚り合わされたワイヤペアの端部を束ねる結束ヘッドを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1032095号明細書
【文献】欧州特許第2777053号明細書
【文献】独国実用新案第202015001990号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結束領域を束ねる公知の結束ヘッドをワイヤの先端に配置する場合、各ツイストワイヤは異なる長さで製造されるはずであるため、一般的に、該結束ヘッドはガイド方向に沿って移動させることができる。粘着テープを取り付けるべき位置は、結束ヘッドに対して十分な精度で決定できなければならない。しかしながら、例えばワイヤの先端に関するツイストヘッドの位置の調整動作は、長さを調整する方法ではなく、力を調整する方法で行われるため、類似するツイストワイヤの例では、ガイド方向におけるワイヤの先端の正確な長さ及び位置が互いに同一とはならない。
【0010】
ワイヤの先端用の結束ヘッドがワイヤの先端用のツイストヘッドに搭載されて一緒に移動する場合、このユニットの質量は比較的大きくなる。さらに、ケーブル加工装置がワイヤのツイストのみ行い、結束ヘッドを用いない運用の場合も、この大きな質量を移動させる必要がある。
【0011】
本開示の目的は、例えば非固定の結束ヘッド等の非固定の結束装置の正確な位置決めを簡単に行うことができる、複数の電線を加工するための機器または方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示によれば、請求項1による複数の電線を加工する機器が示される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本機器は、複数のワイヤの先端を加工領域の区間を通って案内するように構成された供給装置を有する。
【0014】
複数のワイヤは、通常、2本のワイヤを有するが、2本よりも多くのワイヤを有していてもよい。本明細書で用いる加工領域は、複数のワイヤ、特に複数のワイヤの端部に機械的処理を行うことができる領域を有する。処理には、例えば、各ワイヤを保持すること、各ワイヤを取り出して搬送すること、各ワイヤ及びワイヤの端部を切断すること、各ワイヤ及びワイヤの端部の被覆を剥がすこと、各ワイヤ及びワイヤの端部に、例えばコンタクトまたはグロメットを取り付けることを含む。
【0015】
本機器は、上記加工領域の区間に配置され、各ワイヤの後端を保持するように構成された固定された保持装置と、直線状のガイド方向に沿って固定されていない、各ワイヤの先端を保持するように構成された保持装置とをさらに有する。
【0016】
直線状のガイド方向は、通常、案内されるワイヤの端部が移動する方向に対応する。一般的に、非固定の保持装置は、該非固定の保持装置によって保持される、複数のワイヤに属するワイヤの先端を直線状のガイド方向に沿って引き出すように構成される。
【0017】
固定された保持装置は、該固定された保持装置によって保持されたワイヤの端部を撚り合わせるように構成される。それに加えてまたはその代わりに、非固定の保持装置は、該非固定の保持装置によって保持されたワイヤの端部を撚り合わせるように構成される。
【0018】
本明細書で用いるツイストは、通常、互いに巻くことができるように、各ワイヤの端部をそれらの延長軸の周りで互いに撚り合わせるプロセスを表す。特に、ワイヤの端部を撚り合わせることは、ワイヤの端部の周辺で互いに巻くことを、該ワイヤの延長軸を越えて継続し、一般的には各ワイヤの他方の端部まで継続することを含む。
【0019】
本機器は、非固定の結束装置をさらに有する。非固定の結束装置は、制御可能な駆動部によって非固定の保持装置から独立して移動させることができる。非固定の結束装置は結束セグメントを有し、結束セグメントは各ワイヤの先端の結束領域を束ねるように構成される。
【0020】
本明細書で用いる結束は、例えばツイストワイヤの撚りを固定し、特に撚り合わせることで隙間(void)を作らない、あるいは隙間が目立たないように結束領域を処理することを含む。例えば、結束時に結束領域内には固定要素が取り付けられる。通常、固定要素は粘着テープであり、粘着テープは結束領域においてワイヤに巻き付けられている。結束は、結束装置の結束セグメントを用いて行うことができる。
【0021】
本機器は、非固定の結束装置の駆動部と接続されたコントローラをさらに有する。コントローラは、固定された結束装置の結束セグメントと非固定の保持装置との間の距離が、設定された距離または設定可能な距離となるように駆動部を制御するように構成される。
【0022】
本明細書で開示される機器では、結束プロセスを実行することで、非固定の結束装置の結束セグメントを、ワイヤの先端の結束領域に十分な精度で位置させることができる。非固定の結束装置は、非固定の保持装置とは独立して移動させることができる。非固定の結束装置全体は、非固定の結束装置を用いる場合にのみ駆動される必要がある。
【0023】
本明細書において開示される技術の他の実施形態は従属請求項で示されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、本機器はさらに距離測定装置を有する。距離測定装置は、非固定の結束装置の結束セグメントと非固定の保持装置との間の距離を測定するように構成される。加えて、コントローラには距離測定装置がさらに接続されている。
【0025】
距離測定装置は、例えば間接的に配置された距離測定装置、例えば規定点に取り付けられ、該規定点から非固定の保持装置までの距離を測定する第1の距離センサと、同じ点または異なる規定点に取り付けられ、この規定点から非固定の結束装置、特に非固定の結束装置の結束セグメントまでの距離を測定する第2の距離センサとを有していてもよい。
【0026】
距離測定装置の例としては、磁歪式位置測定システム、磁気式位置測定システムまたは光学式位置測定システムが含まれる。距離測定装置の他の例としては、位置インジケータ、経路センサ装置が含まれ、位置インジケータは非固定の保持装置のリニアガイドに配置される。非固定の保持装置のリニアガイドの一例はガイドキャリッジである。
【0027】
距離測定装置は、一般的に、測定した距離をコントローラへ供給するように構成され、コントローラは、一般的に、測定された距離を用いて、測定された距離が設定された距離または設定可能な距離となるように非固定の保持装置の駆動部を制御するように構成される。これによって、結束ヘッドの結束セグメントを所望の位置または非固定の保持装置から所望の距離に十分な精度で移動させることができる。通常、設定された距離または設定可能な距離は、各ワイヤの先端の結束領域の位置を規定するものである。
【0028】
いくつかの実施形態において、本機器はさらに固定された結束装置を有する。固定された結束装置は、本機器の加工領域内に配置され、各ワイヤの後端の結束領域を束ねるように構成される。通常、固定された結束装置は非固定の結束装置と同様にまたは同一に構成される。
【0029】
いくつかの実施形態において、コントローラは、さらにワイヤの先端の第1の交差位置までの距離からワイヤの先端の結束領域の位置を判定するように構成される。ワイヤの第1の交差位置は、ワイヤが、対象となる各端部から最初に隣接して撚り合わされた状態を形成し、かつ互いに交差する位置である。ワイヤの先端の第1の交差位置はコントローラに設定することが可能であり、コントローラはその値からワイヤの先端の結束領域の位置を判定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、非固定の結束装置、固定された結束装置または非固定の結束装置及び固定された結束装置の両方は、各結束領域においてワイヤに結束バインダを巻き付けるように構成される。特に、結束バインダは粘着テープとして設計されていてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、非固定の結束装置、固定された結束装置または非固定の結束装置及び固定された結束装置の両方は、駆動部から独立した位置決め装置を有するように構成される。各位置決め装置は、結束すべき各ワイヤの端部を基準として、各結束装置の結束セグメントを位置決めするように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態において、非固定の保持装置は、保持装置のリニアガイドに沿って移動させることが可能であり、非固定の結束装置は、結束装置のリニアガイドに沿って移動させることが可能である。保持装置のリニアガイド及び結束装置のリニアガイドは、互いに独立しており、かつ互いに平行に移動する。
【0033】
いくつかの実施形態において、非固定の結束装置、固定された結束装置または非固定の結束装置及び固定された結束装置の両方は、それぞれセンサ、特に光学センサを有する。各センサは、ワイヤの関連する第1の交差位置を検出できるように構成される。それに加えてまたはその代わりに、各センサは、結束バインダの存在を検出するように構成される。それに加えてまたはその代わりに、各センサは、ワイヤの規定位置に対する結束バインダの位置、一般的には関連するワイヤの端部に対する結束バインダの位置を検出するように構成される。これによって、ワイヤの結束平面性(bundled planarity)の品質をさらに向上させることができる。
【0034】
通常、コントローラは、センサからの検出結果を用いて駆動部を制御するように構成される。例えば、検出結果は対象となる各ワイヤの端部からの第1の交差位置を示している。これによって、結束されたワイヤの結束領域に対する結束セグメントの位置決めをさらに向上させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、センサは光学ラインセンサを有する。各ワイヤの第1の交差位置は、対象となる各ワイヤの端部から、光学ラインセンサの隣接する画像点の信号強度の差が所定のしきい値を超える、光学ラインセンサの位置に対応する位置と見なされる。
【0036】
代わりの実施形態において、センサは照明手段を備える光学センサ及びデジタルカメラを有する。
【0037】
本明細書で開示される複数の電線を加工する方法には、本明細書で開示された機器が使用される。本方法は、非固定の保持装置で各ワイヤの先端を保持すること、固定された保持装置で各ワイヤの後端を加工領域の上記区間内で保持すること、各ワイヤの先端を後端に対して撚り合わせること、及び/または各ワイヤの後端を先端に対して撚り合わせることを含む。本方法は、撚り合わせが完了した後、または撚り合わせの期間で、非固定の結束装置の結束セグメントと非固定の保持装置との間の距離が、設定された距離または設定可能な距離となるような駆動部の制御を備える。本方法は、非固定の結束装置を用いて各ワイヤの先端の結束領域を束ねること、及び/または固定された結束装置を用いて各ワイヤの後端の結束領域を束ねることをさらに含む。
【0038】
本方法を用いることで、撚り合わされた複数のワイヤの結束を自動化できる。例えば、ユーザインターフェースを介して距離を設定できる。一般的に、本方法は、ワイヤの先端の第1の交差位置に対する距離を設定することをさらに含む。これによれば、対象となるワイヤの端部の第1の交差位置に対する位置として、この距離を設定できる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本方法は、結束バインダの存在または結束バインダの位置を検出すること、検出結果から品質基準を満たすかを判定すること、及び判定に応じた信号を出力することをさらに含む。
【0040】
本明細書において使用する品質基準には、例えば、結束領域のうちの1つまたは各結束領域に、例えば粘着テープである結束バインダが存在するか否か、あるいは結束バインダの位置が、設定された距離または設定可能な距離に対して許容の範囲内であるかを含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本明細書で用いる用語を明確にするためのツイストワイヤペアを示している。
【
図2】
図2は、明確化のための他の態様の
図1で示したワイヤペアの一領域を示している。
【
図3】
図3は、本明細書で開示する各態様を説明するための、非固定の結束装置を持たない複数の電線を加工する機器の上面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による
図3で示した機器と同様の機器の上面図である。
【
図5】
図5は、
図4で示した機器の部分態様を斜視図で示している。
【
図6】
図6は、
図4で示した機器の他の部分態様を斜視図で示している。
【
図7】
図7は、位置調整システムを含む、
図4で示した機器用のコントローラのブロック図である。
【
図9】
図9は、他の位置における、
図4で示した機器の結束装置の他の側面図である。
【
図10】
図10は、距離測定のための、
図4で示した機器に配置される光学センサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本開示のいくつかの実施形態について添付の図面に基づいてより詳細に説明する。
【0043】
図1は、第1の電線11と第2の電線12のツイストワイヤペア10を示している。ワイヤペア10の2本のワイヤ11、12の数は、説明的であり、限定されるものではなく、2本よりも多くのワイヤ11、12を備えていてもよい。
【0044】
ワイヤペア10の端部16は、先端として定義され、
図3~
図10を参照して説明される複数の電線11、12を加工する機器100の加工領域を通って案内される。ワイヤペアの他方の端部17は後端として定義される。
【0045】
後端17では、第1のコンタクト13及び第2のコンタクト14がワイヤ11及び12に取り付けられる。端部16と端部17との間の領域は撚り合わされている。すなわち、ワイヤ11、12が互いに巻かれている。
【0046】
先端16では、結束バインダ、例えば粘着テープが結束領域15に取り付けられる。同様に、後端17における結束領域18には、結束バインダ、例えば粘着テープが取り付けられる。結束領域15、18における結束バインダは、ワイヤ11、12の撚りがほどけるのを防止する。
図1におけるワイヤ11、12は結束バインダによって束ねられている。
【0047】
ワイヤ11、12は、先端16から第1の交差ポイントP2に至って初めて重なり合って交差する。同様に、ワイヤ11、12は、後端17から第1の交差ポイントP1に至って初めて重なり合って交差する。結束領域16、18は、第1の交差ポイントP2またはP1から所定の距離の周辺に位置している。
【0048】
説明のために、ワイヤペア10の部分領域が
図2で再び示されている。ワイヤ11、12の後端の撚り合わされていない端部は長さa1を有する。距離a3は、第1の交差ポイントP1から結束領域18における結束バインダの先頭に到達するまでである。撚り合わされた領域におけるワイヤ11、12の2つの同一形状の交点間の距離はピッチ長a2として設定される。
【0049】
図3において、説明のために、非固定の結束装置を持たない複数の電線11、12を加工する機器100が示されている。
【0050】
図3において、ワイヤ11、12の先端は加工領域101へ案内され、そこからガイドレール105の機械軸に沿って案内される。加工モジュール103、104、105、106は、加工領域101においてワイヤ11、12に対する処理を実行できる。
【0051】
ワイヤ11、12の先端は、切断ヘッド102によって被覆が剥がされ、第1のスイベルユニット107によって加工モジュール103、104の一方へ連続して供給される。ここで、例えばグロメット及びコンタクトをワイヤの端部に取り付けてもよい。
【0052】
次に、第1のスイベルユニット107は、ワイヤ11、12を機械軸の方向へ戻す。そこで、ワイヤ11、12は、抽出キャリッジ109によって把持できるまで案内される。ワイヤ11、12は、規定された直線状のガイド方向において、所望のワイヤ長に応じて抽出キャリッジによりガイドレール105に沿って引き出される。
【0053】
続いて、ワイヤ11、12は、第2のスイベルユニット108によって把持され、切断ヘッド102によって切断されて被覆が剥がされる。ワイヤの後端は、第2のスイベルユニット108によって加工モジュール105、106の他方へ供給されて完全に組み立てられる。すなわち、例えばグロメット及びコンタクトが取り付けられる。
【0054】
搬送モジュール111は、ワイヤ11、12の後端を引き取り、スイベル動作に続いて固定された保持装置110へ搬送する。搬送モジュール112は、ワイヤ11、12の先端を非固定の保持装置120へ搬送する。
【0055】
固定された保持装置110、非固定の保持装置120または保持装置110、120の両方は、それらによって保持されたワイヤ11、12の端部を撚り合わせるように設計されている。例えば、非固定の保持装置120は、機械軸の周りで回転可能であり、それによってツイストプロセスを実行するツイストヘッドを有する。非固定の保持装置120は、ワイヤ11、12の短縮を補うために、ツイストプロセスの期間で固定された保持装置110の方向へ移動させられる。
【0056】
図4において、
図3で示した機器100が示されており、非固定の結束装置125がさらに設けられている。
図4で示すように、加工領域101には固定された結束装置115を任意で設けてもよい。結束装置115、125は、例えば特許文献3で知られているように、結束ヘッドとして設計され、結束領域115、125を結束バインダ、例えば粘着テープで巻き付ける結束セグメント116及び126を有する。固定された結束装置115は、隣接するアセンブリのすぐ近くでそれぞれ位置決めできるように、例えば、非固定の結束装置125と同一である。
【0057】
結束ヘッド115、125は、保持装置110、120から独立して、さらなるリニアガイド上を非固定の保持装置120の移動方向と平行に移動することができる。
【0058】
図5は、案内装置105の個々の結束装置、すなわち結束ヘッド115、125を斜視図で示している。
図5において、非固定の結束装置125は、歯付きベルト128を介してサーボモータ127と接続されている。サーボモータ127及び歯付きベルト128は、駆動部の非限定的な一例を構成しており、非固定の結束装置を案内装置105に沿って広い範囲に亘って移動させることができる。固定された結束装置115は、サーボモータ117及びスピンドル118によって構成された駆動部を介して狭い範囲内で移動させてもよい。
【0059】
図5において、距離測定装置129は、非固定の結束装置125と固定的に結合され、非固定の結束装置125の結束セグメント126と非固定の保持装置120との間の距離を直接的または間接的に示す距離信号をコントローラへ出力できるように構成される。
【0060】
図6は、例えば位置センサ129aと位置インジケータ129bとで構成された距離測定装置129を詳細斜視図で示している。位置インジケータ129bは、非固定の保持装置120のキャリッジと結合されている。
【0061】
図7は、駆動部127、128を制御するように構成されたコントローラ200のブロック図を示している。コントローラ200は、距離測定装置129を用いて実現される、非固定の保持装置120に対する非固定の結束装置125の位置調整システムをガイドする。
【0062】
図7において、所望の距離201と距離測定装置129からの信号202とが互いに減算され、その差がPIコントローラ204に供給される。PIコントローラ204は、この偏差を予備制御信号206として出力する。非固定の結束装置125の瞬間的な移動205、すなわち短縮を補うために調整される位置が予備制御信号206に加算され、得られた信号が非固定の結束装置125を位置決めするための制御信号208として出力される。
【0063】
同様に、固定された結束装置115を用いる場合、コントローラ200は、結束セグメント116をワイヤ11、12の後端17へ位置させるために、固定された結束装置115の駆動部117、118で固定された結束装置115を微細に位置決めするための制御信号を生成できる。
【0064】
本明細書において開示される方法を実行するコントローラ200は、例えば本明細書において開示される機器のマシンコントローラに含まれる。マシンコントローラは、プロセスパラメータから予想されるツイストワイヤの形状、具体的には、撚り合わされていないワイヤの端部の長さa1(
図2参照)、交差ポイントP1、P2の位置等を算出できる。これらの値から、結束装置115、125が移動する相対位置を判定できる。プロセスパラメータの例には、所望のケーブル長、ピッチ長、ケーブル断面及び使用される把持装置におけるケーブルの間隔が含まれる。
【0065】
ワイヤ11、12が組み立てられ、引き出され、撚り合わされている間、結束装置115、125はケーブル軸の外側へ移動させられる。結束装置115、125は、撚り合わせが完了する前に、結束バインダを所望の位置に取り付けることができるように、ワイヤ11、12の軸方向で位置決めされる。それによって、非固定の結束装置125は、管理された方法の下で、非固定の保持装置120の移動に応じて位置が調整される。
【0066】
ツイストプロセスが完了した後、各結束装置115、125は、それぞれの結束領域15、18に亘って移動させることができる。そのため、各結束装置115、125は、サーボモータ301とスピンドル302とで構成された駆動部を用いて
図8で示す位置と
図9で示す位置との間で調整できる、
図8及び
図9で示すような平行四辺形リンク機構(parallelogram linkage)300で懸垂される。代わりに、空気圧アクチュエータまたはその他の機械的解決手段等の他のアクチュエータを調整に用いてもよい。この構成では、実行中のツイストプロセスを害することなく結束装置115、125を位置決めすることができる。結束装置は、結束バインダを結束領域15、18まで移動させる。
【0067】
不適切に結束されたワイヤ11、12を検出するために光学センサを設けてもよい。例えば、不適切に結束されたワイヤペア10を自動的に選別するために、光学センサの評価が用いられる。光学センサを用いてワイヤ11、12の他のパラメータ、例えば被覆が正しく剥がされているか、またはグロメット及び/またはコンタクトが正しく取り付けられているかを検出してもよい。
【0068】
図10において、非固定の結束装置125が詳細斜視図で示されているが、以下の構成は固定された結束装置115にも有効である。
図10で分かるように、結束プロセスが正しく行われたかを検査できる光学センサ130が設けられている。特に、センサ130は、結束バインダの有無を検出してもよく、または第1の交差ポイントP2及びP1に対する結束バインダの位置を検出してもよい。それは、取り付けられた結束バインダの位置を品質値として監視することが可能になる。コントローラ200に供給される各交差ポイントP1、P2の位置の値は、適応性のある方法で、各結束領域15、18の位置を調整できるようにする。
【0069】
センサ130は、一般的に、各結束装置115、125に直接取り付けられて、それらと一緒に移動させられる。例えば、センサ130は、一般的にワイヤ軸に沿って結束領域15、18及び第1の交差ポイントP1、P2に亘って移動させることができる。ここで、分析のために、この領域のライン毎の輝度画像(シャドウ画像)を取得してもよい。ワイヤ軸に沿って移動させることができる、照明が可能なデジタルカメラをセンサ130として用いてもよく、その画像は、例えば画像評価ソフトウェアを用いて分析される。
【0070】
光学センサ130を品質監視で用いる場合、結束装置115、125は、ワイヤ11、12の軸に沿って測定に必要な動作を実行する。測定されたデータはマシンコントローラに転送されて評価される。
【0071】
結束プロセスを完了するために、結束装置115、125を旋回させてワイヤ11、12軸の外側の位置へ戻し、完成したケーブルが排出される。品質監視を利用する場合、完成したケーブルは、検出された品質に相当する、対応する保管場所、例えば保管トレイへ入れてもよい。