(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】発信機及び消火栓装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230515BHJP
A62C 35/20 20060101ALI20230515BHJP
H01H 13/14 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G08B17/00 H
A62C35/20
H01H13/14 B
(21)【出願番号】P 2019021963
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【氏名又は名称】高田 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博二
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-216262(JP,A)
【文献】特開2005-216674(JP,A)
【文献】特開2018-120340(JP,A)
【文献】登録実用新案第3188944(JP,U)
【文献】特開平04-085699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G08B17/00
H01H13/00-13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信信号を出力する発信機であって、
画像を切り換え表示可能であると共に押圧することで移動可能な表示パネルと、
前記表示パネルの移動によって作動し前記発信信号を出力可能な操作スイッチと、
を備え
、
前記表示パネルの表面に、前記表示パネルの画像を切り替え可能なタッチパネルが設置されていることを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記表示パネルの前面に保護部材が設置されており、前記保護部材を移動させることで前記保護部材または前記表示パネルによって前記操作スイッチを作動するように配設した請求項
1に記載された発信機。
【請求項3】
前記タッチパネルの前面に保護部材が配設され、前記保護部材の背面側に前記タッチパネルを押圧可能なスタイラスパッドが配設されている請求項
1に記載された発信機。
【請求項4】
前記表示パネル、またはタッチパネルを挟んで前記表示パネルの前面に配設した保護部材の背面には、前記表示パネルの移動に抵抗する弾性部材が設置され、
前記表示パネルを所定値以上の力で押した場合に前記弾性部材の付勢力に抗して前記表示パネルを移動させて前記操作スイッチを作動する請求項1から
3のいずれか1項に記載された発信機。
【請求項5】
前記表示パネルの前面側に表示灯が設置されている請求項1から
4のいずれか1項に記載された発信機。
【請求項6】
前記表示灯は前記表示パネルより照度が高く設定されている請求項
5に記載された発信機。
【請求項7】
前記表示パネルを移動した位置に保持するラッチ部材が設置され、前記操作スイッチは一定時間以上押圧された場合に前記発信信号を出力する請求項1から
6のいずれか1項に記載された発信機。
【請求項8】
前記表示パネルは、20N以上80N以下の力で押すことで移動する請求項1から
7のいずれか1項に記載された発信機。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載された前記発信機を備えており、前記発信信号は火災信号であることを特徴とする消火栓装置。
【請求項10】
発信信号を出力する発信機であって、
画像を切り換え表示可能であると共に押圧することで移動可能な表示パネルと、
前記表示パネルの移動によって作動し前記発信信号を出力可能な操作スイッチと、
を備え
、
前記表示パネルを移動した位置に保持するラッチ部材が設置され、前記操作スイッチは一定時間以上押圧された場合に前記発信信号を出力することを特徴とする発信機。
【請求項11】
画像を切り換え表示可能であると共に押圧することで移動可能な表示パネルと、前記表示パネルの移動によって作動し前記発信信号を出力可能な操作スイッチと、を有し、発信信号を出力する発信機を備えており、
前記発信信号は火災信号であることを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災信号等の各種の発信信号を出力する発信機と、この発信機を備えた屋内消火栓装置等の消火栓装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内等に設置された消火栓装置として、例えば特許文献1に記載された消火栓装置が提案されている。この消火栓装置100は、
図7に示すように、収納箱101の扉102内に消火用ホースが収納され、その上部の通報パネル103には、発信機104、常時点灯する赤色表示灯105、警報用の音響孔106が設けられている。また、通報パネル103に図示しない応答ランプが設置されていてもよい。
【0003】
そして、建物の管理者や利用者等は、火災発生の際、消火活動のために、発信機104のスイッチボタンを押す。発信機104のスイッチONによって火災信号が監視室の火災受信機に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が火災受信機から送られて応答ランプを点灯し、音響孔106から火災警報が出されるようにしている。また、発信機104のONによって消火用水を消火用ホースに供給するための消火用ポンプを起動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発信機104は火災信号に基づく火災警報の発信、応答ランプの点灯、消火用ポンプの起動後に別の仕事をすることはない。また、建物の管理者や利用者等は、火災発生時に発信機104の作動を行って消火栓装置100の扉102を開けた後、消火活動のためにどのような操作や作業をしたらよいかわからない場合が多かった。そのため、消火活動のために消火栓装置100を迅速且つスムーズに使用することができない場合が多く、消火栓装置100の利用率は高くなかった。
また、発信機104を火災以外の用途で警報の発信や情報の報知等のために使用する場合でも、発信機104の作動操作に続く他の作業のガイドが十分表示されていない場合が多かった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、火災やその他の事象等が発生した際に、発信機の作動操作とその後の作業のガイド等をスムーズに行えるようにした発信機及びこの発信機を用いた消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による発信機は、発信信号を出力する発信機であって、画像を切り換え表示可能であると共に押圧することで移動可能な表示パネルと、表示パネルの移動によって作動し発信信号を出力可能な操作スイッチと、を備えたことを特徴とする。
本発明による発信機では、例えば押しボタンや押圧指示等の画像が表示された表示パネルを押圧することで、表示パネルが背面側に移動して操作スイッチを押すことができ、これによって発信信号を出力することができる。発信信号を受けた受信機によって、例えば警報や応答信号を発信したり、消火用ポンプ等の作動機器を起動したりすることができる。更に、発信信号によって表示パネルの画像の切り換え等を指示できる。
【0008】
また、表示パネルの表面に、表示パネルの画像を切り替え可能なタッチパネルが設置されていることが好ましい。
表示パネルを押圧する際、タッチパネルを作動することで、表示パネルの画像を切り換えてその後の作業のガイドを表示できる。
【0009】
また、表示パネルの前面に保護部材が設置されており、保護部材を移動させることで保護部材または表示パネルによって操作スイッチを作動するように配設してもよい。
保護部材を押圧することで、保護部材と表示パネルを一体に移動させることができて、保護部材または表示パネルによって操作スイッチを作動することができる。
【0010】
また、タッチパネルの前面に保護部材が配設され、保護部材の背面側にタッチパネルを押圧可能なスタイラスパッドが配設されていてもよい。
保護部材を介して表示パネルを押圧する際、スタイラスパッドがタッチパネルに接触して作動することができるため、表示パネルの画像を切り替えることができる。しかも、保護部材の押圧によって保護部材と表示パネルを移動させて操作スイッチを作動することができる。
【0011】
また、表示パネル、またはタッチパネルを挟んで表示パネルの前面に配設した保護部材の背面には表示パネルの移動に抵抗する弾性部材が設置され、表示パネルを所定値以上の力で押した場合に弾性部材の付勢力に抗して表示パネルを移動させて操作スイッチを作動するようにしてもよい。
表示パネルまたは保護部材を押圧する際、例えば20N等の所定値に満たない力で押圧した場合には、弾性部材の付勢力によって表示パネル及び保護部材は操作スイッチを作動できず、誤作動を防ぐことができる。そして、所定値以上の力で押すことで、タッチパネルと操作スイッチを作動することができ、表示パネルの表示画像の切り換えと操作スイッチからの発信信号の出力との両方を行うことができる。
【0012】
また、表示パネルの前面側に表示灯が設置されていてもよい。
表示灯を設置することで、使用者は発信機の表示パネルの位置を容易に視認できる。
【0013】
また、表示灯は表示パネルより照度が高く設定されていることが好ましい。
表示灯の照度が表示パネルの照度より高いことで、表示灯の位置を容易に認識できる。
【0014】
また、表示パネルを移動した位置に保持するラッチ部材が設置され、操作スイッチは一定時間以上押圧された場合に発信信号を出力するように設定してもよい。
表示パネルが移動して操作スイッチを作動した状態で、ラッチ部材によって表示パネルを保持することで操作スイッチは一定時間以上連続して押圧されて発信信号を出力することができる。
また、表示パネルは、20N以上80N以下の力で押すことで移動するようにしてもよい。
【0015】
本発明に係る消火栓装置は、上述したいずれかに記載された発信機を備えており、発信信号は火災信号であることを特徴とする。
本発明による消火栓装置では、発信機の例えば押しボタンや押圧指示等の画像が表示された表示パネルを押圧することで、表示パネルが移動して操作スイッチを押すことができ、これによって火災信号を出力することができる。火災信号を受けた受信機によって、例えば火災警報や応答信号を発信したり、消火用ポンプを起動したりすることができる。更に、火災信号によって表示パネルの画像の切り換え等を指示できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発信機及び消火栓装置によれば、手動等で押圧された表示パネルが移動することで操作スイッチが作動して発信信号を出力することができ、しかも表示パネルには画像として例えば押しボタンを表示したり作業方法を表示したりすることができるため、使用者の作業をガイドすることができる。
しかも、本発明による発信機は表示パネルを押すことで、発信信号の出力と表示パネルの画像の切り換えを行うことができるため、構成と操作が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態による消火栓装置の発信機の斜視図である。
【
図3】発信機の液晶表示パネルを示す図であり、(a)は押しボタンの画像を示す図、(b)は消火の作動手順の画像を示す図である。
【
図4】第二実施形態による消火栓装置の発信機の断面図である。
【
図5】第三実施形態による消火栓装置の発信機を示すものであり、(a)は発信機の断面図、(b)はスタイラスパッドの正面図である。
【
図6】第四実施形態による消火栓装置の発信機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による消火栓装置に設けた発信機について添付図面により説明する。
まず、第一実施形態による消火栓装置1の発信機2を
図1から
図3に基づいて説明する。本実施形態による消火栓装置1は、例えばビル等の建物や自動車専用トンネル内の壁面に設置された屋内消火栓であり、火災の際に消火するために用いられる。消火栓装置1は消火用ホースを収納した消火栓収納箱(図示せず)の上側または横側に隣接して発信機収納箱3を備えている。
【0019】
発信機収納箱3は発信機2を収納した第1筐体であり、発信機収納箱3の前側の壁面5に形成された開口5aの周囲には例えば略四角形枠状に形成された表示灯6が装着されている。表示灯6は防災機器としての発信機2の設置位置を示すものである。表示灯6の下側には、発信機2を押したことを表示するために点灯または点滅する応答ランプ4が設置されている。なお、応答ランプ4は液晶表示パネル7内に画像として表示して点灯または点滅させてもよい。
【0020】
表示灯6は例えば全周に亘ってLED等の光源を内蔵した略角筒形状を有しており、壁面5の開口5aの背面側(後側)に装着された断面略L字状の装着枠6aと、その背面側に延びていて略四角形状の開口を縮径させるように傾斜面状に形成された傾斜面部6bと、傾斜面部6bの更に背面側に設けられた略四角形状の開口筒部6cとで一体形成されている。傾斜面部6bは例えばその内側と背面側に向かって縮径するように傾斜している。
なお、表示灯6は略四角形筒状に限定されることなく、正面視略円形や楕円形等のリング状やその他の適宜形状の筒形状を形成することができる。
【0021】
表示灯6の背面側には開口筒部6cに対向して、表示パネルとしての液晶表示パネル7が設置され、液晶表示パネル7の背面側には液晶表示パネル7を支持する支持枠体8が設置されている。液晶表示パネル7は例えば略四角形板状に形成され、その前面にはタッチパネル10が積層して被着されている。液晶表示パネル7は押しボタン12の画像を表示でき、更に画像を切り換えることで例えば消火活動の手順(使用方法)を示すガイダンス、アニメーション、時刻や文字等の画像を任意に表示することができる。
タッチパネル10は表示灯6より突出しない位置、表示灯6から背面側に後退した位置に設置されている。これにより、ビル管理者等の使用者が誤ってタッチパネル10に接触したり押したりして誤作動することを防止できる。
【0022】
液晶表示パネル7の背面に設けられた支持枠体8は例えば四角形板状の底面8aと四辺の側面8bとで形成された枠体形状であり、平面視略四角形状で断面略コの字状に形成されている。そして、液晶表示パネル7と支持枠体8の底面8aとの間には弾性部材として例えばコイルスプリング13が設置されている。コイルスプリング13は例えば液晶表示パネル7と底面8aとの各角部に装着されている。
【0023】
また、支持枠体8の底面8aの中央には、発信信号として火災信号を出力するための発信機2の操作スイッチ14が設置されている。液晶表示パネル7に表示された押しボタン12の画像を押すことで、液晶表示パネル7がコイルスプリング13の付勢力に抗して移動(変位)して操作スイッチ14の先端部14aが押され、スイッチONする。
これによって、操作スイッチ14から火災信号が発信され、図示しない監視室の火災受信機で受信される。火災受信機では火災信号を受信すると、火災警報が出され、応答信号が発信されて消火栓装置1の応答ランプ4が点灯または点滅され、更に、消火用水を消火用ホースに供給する消火用ポンプを起動する。
【0024】
なお、液晶表示パネル7のタッチパネル10を使用者が指等で押す際に、所定の範囲の押圧力、例えば20N(ニュートン)以上、80N以下の力で押すことでコイルスプリング13の付勢力に抗して圧縮させて、液晶表示パネル7を底面8a側に移動させて操作スイッチ14を作動することができる。液晶表示パネル7を押す力が20Nより小さい場合には液晶表示パネル7は十分移動せず、操作スイッチ14を作動させない。そのため、誤ってタッチパネル10を押した場合でも誤作動を防ぐことができる。液晶表示パネル7を押す力が80Nを超えると操作スイッチ14等を損傷する恐れがある。
なお、タッチパネル10及び液晶表示パネル7を押して操作スイッチ14を作動させた後、操作スイッチ14から離間させてもON状態を維持してもよいし、OFFに切り換えてもよい。
【0025】
また、液晶表示パネル7の表面に接着されたタッチパネル10は、静電容量方式または抵抗膜方式等で構成されている。液晶表示パネル7の表示画面には、通常、
図3(a)に示すように押しボタン12が表示されており、火災発生時に使用者が押しボタン12の部分を20N以上の力で押すことで液晶表示パネル7を移動させることができる。
そして、液晶表示パネル7上の押しボタン12を押すことでタッチパネル10が作動(ON)し、例えば
図3(b)に示すように、表示画面が消火栓装置1における消火用ホースの使用方法(使用ガイド)の表示に切り替わる。
【0026】
なお、消火用ホースの使用方法は消火栓装置1の種類に応じて異なる表示にすることができる。また、火災発生時以外の状態において、液晶表示パネル7の表示画面にはアニメーションや使用説明や時刻等を表示してもよく、この場合、画像の一部に火災報知機の押しボタン12の画像を表示しておくことが好ましい。
また、液晶表示パネル7にアニメーションや時刻等の押しボタン12以外の画像を表示した場合、表示灯6の周囲にセンサーを設置しておくことが好ましい。そして、火災発生時等に、使用者が液晶表示パネル7の前に立ったことをセンサーで検出して、
図3(a)に示す押しボタン12の画像に切り換えるようにしてもよい。
【0027】
本実施形態による消火栓装置1の発信機2は上述した構成を備えており、次にその使用方法を説明する。
非火災時において、例えば発信機2の液晶表示パネル7には、
図1及び
図3(a)に示す火災報知器の押しボタン12の画像が表示されている。そして、火災発生時に、ビル管理者や利用者等の使用者が火災の報知や消火等のためにタッチパネル10及び液晶表示パネル7の押しボタン12を押すと、液晶表示パネル7がコイルスプリング13の付勢力に抗して支持枠体8側に移動して操作スイッチ14を押す。
すると、操作スイッチ14が作動して火災信号が発信され、監視室の火災受信機で受信される。火災受信機で火災信号を受信すると、火災警報が出力される。また、応答信号が発信されて消火栓装置1の応答ランプ4が点灯または点滅されて警報が表示される。更に、火災受信機では、消火用水を消火用ホースに供給する消火用ポンプを起動する。
【0028】
また、使用者が液晶表示パネル7の表面に被着されたタッチパネル10を押すことで、液晶表示パネル7の画像が押しボタン12から
図3(b)に示す消火栓装置1の使用方法を示す画像に切り換わる。すると、使用者は液晶表示パネル7の使用ガイドに示す消火用ホースの使用方法に沿って消火作業を行うことができる。即ち、消火栓装置1の扉を開けて消火用ホースを引き出し、開閉レバーを操作して消火用ホースから放水を開始することができる。そのため、発信機2のタッチパネル10及び液晶表示パネル7を押した使用者は、その後の消火作業の手順に迷うことがない。
【0029】
上述したように本実施形態による消火栓装置1の発信機2によれば、表面にタッチパネル10を設けた液晶表示パネル7を押すことで、タッチパネル10を作動して液晶表示パネル7の画像を押しボタン12から消火用ホースの使用方法に切り換えると共に、液晶表示パネル7を移動させて操作スイッチ14を作動し火災信号を発信できる。また、操作スイッチ14の作動によって、火災警報、消火栓装置1の応答ランプ4の点灯または点滅、消火用水供給用の消火用ポンプの起動を行うことができる。
【0030】
また、タッチパネル10及び液晶表示パネル7は表示灯6の装着枠6a及び消火栓装置1の壁面5より背面側に引っ込められているため、誤ってタッチパネル10を押すことを防止できる。しかも、誤ってタッチパネル10を押したとしても、使用者が20N以上の力で押さないと液晶表示パネル7を移動できないため、いたずらや誤操作による誤作動を防止できる。
また、表示灯6は液晶表示パネル7より照度が大きく明るいため、消火栓装置1における発信機2の位置を使用者が容易に確認できる。
【0031】
なお、本発明による消火栓装置1は上述の第一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0032】
図4は本発明の第二実施形態による消火栓装置1Aを示すものである。
本第二実施形態による消火栓装置1Aの発信機2Aでは、発信機2Aを収納した発信機収納箱3の前側の壁面5に開口5aが形成され、その背面側に開口5aより拡径された透明な板状の強化ガラス16が保護部材として配設されている。強化ガラス16の背面には液晶表示パネル7が積層されて固着されている。液晶表示パネル7は強化ガラス16より縦横方向の寸法が小さく、液晶表示パネル7の周囲に強化ガラス16の周縁部が突出して形成されている。本実施形態では、液晶表示パネル7の前面にタッチパネル10は装着されていない。
液晶表示パネル7の背面側には支持板17が配設され、支持板17の周縁部には強化ガラス16との間にコイルスプリング13が装着されている。支持板17の液晶表示パネル7を外れた領域には操作スイッチ14が設置されており、強化ガラス16及び液晶表示パネル7が背面側に移動した際に、操作スイッチ14は強化ガラス16によって押圧されて作動する。
【0033】
本第二実施形態による発信機2Aでは、液晶表示パネル7の表示画面には常態において
図3(a)に示す火災報知機の押しボタン12の画像が表示されている。或いは、表示画面の一部に押しボタン12が表示され、他の部分にはアニメーションや文字、時刻等の適宜の画像が表示されていてもよい。しかも、液晶表示パネル7の押しボタン12は強化ガラス16を通して目視確認できる。
また、使用者が強化ガラス16を通して液晶表示パネル7の押しボタン12を例えば20N以上の力で押圧すると、強化ガラス16と液晶表示パネル7はコイルスプリング13の付勢力に抗して背面側に移動し、操作スイッチ14を押圧する。これによって、第一実施形態と同様に、操作スイッチ14から火災信号を発信できる。火災信号が監視室の火災受信機で受信されると、火災警報、消火栓装置1Aの応答ランプ4の点灯、消火用水供給用の消火用ポンプの起動を行うことができる。
【0034】
また、火災受信機で火災信号を受信することで、液晶表示パネル7の表示画像を押しボタン12から他の画像、例えば消火用ホースの使用方法の画像に切り換える信号を出力するように設定してもよい。この場合には、操作スイッチ14によって液晶表示パネル7の表示画像の切り換え操作も行えることになる。
【0035】
次に、
図5によって、本発明の第三実施形態による消火栓装置1Bを説明する。
本第三実施形態による消火栓装置1Bの発信機2Bは、第二実施形態による発信機2Aと基本的に共通する構成を有している。
本第三実施形態による発信機2Bでは、液晶表示パネル7の前面、即ち強化ガラス16側にタッチパネル10が積層されている。また、強化ガラス16の背面側、即ち液晶表示パネル7側に透明なスタイラスパッド(タッチペン)19が固着されている。スタイラスパッド19はタッチパネル10と対向して配設されている。スタイラスパッド19は基板となるシート20のタッチパネル10側の面に複数のパッド21が所定間隔で配列されている。なお、パッド21の数は任意であり、例えば1個だけ設置してもよい。
【0036】
強化ガラス16、スタイラスパッド19、タッチパネル10、液晶表示パネル7は一体に保持されている。しかも、スタイラスパッド19のパッド21とタッチパネル10との間にはわずかな間隙が設定されており、この隙間に緩衝材を埋設してもよい。強化ガラス16を押すことで、スタイラスパッド19のパッド21がタッチパネル10に接触してタッチパネル10を作動する。これによって、液晶表示パネル7の表示画面が押しボタン12の画像から別の画像、例えば消火栓装置1Bの使用方法を示す画像に切り換わる。
また、液晶表示パネル7の周縁部の外側には、強化ガラス16と支持板17との間にコイルスプリング13が装着され、更に支持板17上に操作スイッチ14が設置されている。この点は第二実施形態による発信機2Aと共通している。
【0037】
本第三実施形態による消火栓装置1Bの発信機2Bでは、常態において液晶表示パネル7の表示画面に例えば押しボタン12の画像が表示されており、使用者はタッチパネル10、スタイラスパッド19及び強化ガラス16を通して目視確認できる。そして、火災発生時に使用者が強化ガラス16を介して液晶表示パネル7の押しボタン12を例えば20N以上の力で押圧すると、スタイラスパッド19のパッド21がタッチパネル10に接触して作動する。これによって、液晶表示パネル7の表示画面は例えば押しボタン12の画像から消火栓装置1Bの使用方法の画像に切り換わる。
【0038】
しかも、押しボタン12を例えば20N以上の力で押圧することで、強化ガラス16とスタイラスパッド19とタッチパネル10と液晶表示パネル7はコイルスプリング13の付勢力に抗して背面側に一体に移動し、強化ガラス16で操作スイッチ14を押圧し作動する。これによって、上述の他の実施形態と同様に、操作スイッチ14から火災信号を発信できる。また、火災信号が監視室の火災受信機で受信されると、火災警報、消火栓装置1Bの応答ランプ4の点灯、消火用水供給用の消火用ポンプの起動を行うことができる。
また、使用者は、液晶表示パネル7の使用方法の画像に示す消火用ホースの使用手順に沿って消火作業を行うことができる。
【0039】
次に、
図6によって、本発明の第四実施形態による消火栓装置1Cを説明する。
本第四実施形態による消火栓装置1Cの発信機2Cは、上述した第三実施形態による発信機2Bと基本的に共通する構成を有している。
そして、本実施形態による発信機2Cでは、操作スイッチ14は一定時間以上継続して押されている場合に作動して火災信号を出力できるものとする。そのため、支持板17に押圧された強化ガラス16を係止させるためのラッチ部材23が設置されている。ラッチ部材23は、支持板17から起立する起立部24と、起立部24の先端に形成されたラッチ部25とが一体形成された略フック状の部材である。
【0040】
ラッチ部25は、強化ガラス16の移動時にその周縁部で押されて弾性変形するテーパ状の当接面25aと、強化ガラス16の周縁部を係止させる係止部25bとで形成されている。しかも、ラッチ部材23には強化ガラス16を通過させる際に弾性変形した起立部24を直立位置に復帰させるばね部材26が係止されている。強化ガラス16はラッチ部材23で係止された状態で、操作スイッチ14を連続して押しているためスイッチONして作動される。
【0041】
従って、火災発生時に、使用者が発信機2Cにおける強化ガラス16及び押しボタン12が表示された液晶表示パネル7を20N以上の力で押すと、スタイラスパッド19のパッド21がタッチパネル10に接触してスイッチONする。これによって、液晶表示パネル7の表示画面が例えば押しボタン12の画像から消火栓装置1Cの使用方法の画像に切り換わる。
しかも、強化ガラス16とスタイラスパッド19とタッチパネル10と液晶表示パネル7はコイルスプリング13の付勢力に抗して背面側に移動し、強化ガラス16で操作スイッチ14を押圧する。
【0042】
強化ガラス16で操作スイッチ14を押す位置で、強化ガラス16はその周縁部がラッチ部材23の当接面25aを押して弾性変形させ、操作スイッチ14を押した位置で強化ガラス16がラッチ部25によって係止される。
操作スイッチ14は強化ガラス16で一定時間以上押されるとスイッチONとされ、上述の他の実施形態と同様に、操作スイッチ14から火災信号を発信できる。火災信号が監視室の火災受信機で受信されると、火災警報が出力され、消火栓装置1Aの応答ランプ4が点灯され、消火用水供給用の消火用ポンプの起動が継続して行われる。使用者は、液晶表示パネル7の消火用ホースの使用方法の手順に沿って消火作業を行うことができる
そして、ラッチ部材23を変形させて強化ガラス16とラッチ部材23の係止を外すと、コイルスプリング13の付勢力によって、強化ガラス16、スタイラスパッド19、タッチパネル10、液晶表示パネル7が一体に元の位置に復帰する。
【0043】
本第四実施形態による発信機2Cによれば、火災発生時に強化ガラス16を押圧することで、強化ガラス16がラッチ部材23で係止されている間は操作スイッチ14が長押し状態に保持される。そのため、操作スイッチ14から出力される火災信号によって、連続して火災警報の発信、消火栓装置1Cの応答ランプ4の点灯、消火用ポンプの起動が継続して行われる。使用者等が誤って強化ガラス16を一時的に押した場合には操作スイッチ14は作動しないため、誤作動を防止できる。
【0044】
なお、上述した第一実施形態において、壁面5の開口5aの周囲に表示灯6を設置する場合、表示灯6は略四角形枠状や円形等のリング状に限定されることなく、半円形等、適宜の形枠状でもよく、或いは略直線状や円弧状などの線状、ドット状等で形成してもよい。表示灯6はその近傍位置に発信機2、2A、2B、2Cを設置したことを使用者が認識できればよい。
また、上述した各実施形態による発信機2、2A、2B、2Cにおいて、液晶表示パネル7の前面には少なくともタッチパネル10と強化ガラス16の一方または両方が設置されているが、タッチパネル10と強化ガラス16のいずれをも設置しなくてもよい。この場合、液晶表示パネル7を直接、指等で押圧し移動させることができる。
また、液晶表示パネル7の表示画面に押しボタン12の画像を表示するようにしたが、押しボタン12に代えて押すという文字やマークや指の絵等で表示してもよい。
【0045】
なお、第二実施形態から第四実施形態による発信機2A、2B、2Cでは液晶表示パネル7が背面側に移動した際、液晶表示パネル7を外れた強化ガラス16によって操作スイッチ14を押圧して作動するようにしたが、これに代えて液晶表示パネル7で操作スイッチ14を押圧して作動するように支持板17に配設してもよい。
また、第四実施形態による発信機2Cでは、液晶表示パネル7が背面側に移動した際、液晶表示パネル7を外れた位置の強化ガラス16で操作スイッチ14を作動してラッチ部材23で保持するようにしたが、これに代えて、液晶表示パネル7の周縁部をラッチ部材23で保持するようにしてもよい。
【0046】
また、表示灯6は第一実施形態による発信機2に限定されることなく、他の実施形態等においても壁面5の開口5aに設置することができる。これによって、使用者は発信機2、2A、2B、2Cの設置位置を容易に認識できる。
また、液晶表示パネル7は表示パネルに含まれるが、表示パネルとして液晶表示パネル7に限定されることなく有機ELパネル等、適宜のものを採用できる。
なお、発信機2、2A、2B、2Cに設けられる電話ジャックについては筐体内や発信機近傍に別途備えてもよい。或いは、電話ジャックを無くして、受話器を用いないマイクとスピーカによるハンズフリー電話の機能を備えて、タッチパネルの操作により非常電話の信号を受信機に送信するなどして対応してもよい。
【0047】
上述した各実施形態による発信機2、2A、2B、2Cは、消火栓装置1、1A、1B、1Cに適用したものについて説明したが、本発明による発信機2、2A、2B、2Cは消火栓装置1、1A、1B、1Cに装着したものに限定されない。例えば、火災以外の種類の警報装置やインターフォン、処理装置等にも適用できる。本発明の発信機をインターフォンに適用する場合には、カメラを設置したりセンサーやスピーカやマイク等を追加して設置したりしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B、1C 消火栓装置
2、2A、2B、2C 発信機
6 表示灯
7 液晶表示パネル
8 支持枠体
10 タッチパネル
12 押しボタン
13 コイルスプリング
14 操作スイッチ
17 支持板
19 スタイラスパッド
21 パッド
23 ラッチ部材