(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】太陽電池セルの製造方法および割断用太陽電池セル
(51)【国際特許分類】
H01L 31/18 20060101AFI20230515BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20230515BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20230515BHJP
【FI】
H01L31/04 460
H01L31/04 266
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2019061114
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 俊行
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0179858(US,A1)
【文献】特開2015-198142(JP,A)
【文献】特開2015-191962(JP,A)
【文献】特開2005-050925(JP,A)
【文献】特開2003-101053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に溝部を形成するステップと、
前記溝部が形成された前記半導体基板の上に透明導電膜層を形成するステップと、
前記透明導電膜層の上に集電極を形成する
ことによって割断用太陽電池セルを製造するステップと、
前記溝部に沿って
前記割断用太陽電池セルを割断するステップと、を備え、
前記溝部は側面と底面を有し、
前記溝部の
前記側面の少なくとも一部には、前記透明導電膜層の未成膜領域が形成され、
前記溝部の前記底面にも前記透明導電膜層が形成され、
前記割断するステップによって、前記半導体基板、前記透明導電膜層および前記集電極を備える
第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルを製造
し、
前記溝部は、前記割断用太陽電池セルにおいて前記第1の太陽電池セルと前記第2の太陽電池セルの境界に配置される、
太陽電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記透明導電膜層を形成するステップの前に、前記溝部が形成された前記半導体基板の前記表面に非晶質半導体層を形成するステップをさらに備え、
前記溝部の底面にも前記非晶質半導体層が形成される、
請求項
1に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記溝部の側面の少なくとも一部にも前記非晶質半導体層が形成される、
請求項
2に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記非晶質半導体層を形成するステップの前に、前記半導体基板の前記表面と、前記溝部とにテクスチャを形成するステップをさらに備える、
請求項
2または3に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記溝部の底面に割断溝を形成するステップと、
前記割断溝に沿って割断するステップと、
をさらに備える請求項1から
4のいずれか1項に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項6】
前記表面が第1面であり、前記半導体基板における前記第1面と反対を向いた第2面に割断溝を形成するステップと、
前記割断溝に沿って割断するステップと、
をさらに備える請求項1から
4のいずれか1項に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項7】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に配置される溝部と、
前記半導体基板の表面と前記溝部の底面とに少なくとも配置される非晶質半導体層と、
前記半導体基板の表面と前記溝部の底面とにおいて、前記非晶質半導体層に重ねて配置される透明導電膜層と、
前記透明導電膜層の上に配置される集電極と、を備え、
前記溝部は側面と底面を有し、
前記溝部の
前記側面の少なくとも一部には、前記透明導電膜層の未成膜領域が配置され、
前記溝部の前記底面にも前記透明導電膜層が形成され、
前記溝部を挟んだ両側には前記半導体基板、前記非晶質半導体層、前記透明導電膜層、前記集電極が備えら
れ、
前記溝部に沿って割断することによって、第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルを製造可能であり、
前記溝部は、前記第1の太陽電池セルと前記第2の太陽電池セルの境界に配置される、
割断用太陽電池セル。
【請求項8】
前記溝部の側面の少なくとも一部にも前記非晶質半導体層が配置される、
請求項
7に記載の割断用太陽電池セル。
【請求項9】
前記半導体基板は、前記溝部の底面にテクスチャ構造を有する、請求項
7または8に記載の割断用太陽電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池セルの製造技術、特に割断可能な割断用太陽電池セルから太陽電池セルを製造するための太陽電池セルの製造方法および割断用太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルにおける短絡の発生を防止するために、半導体層および透明電極層を成膜後に絶縁領域が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
割断用太陽電池セルを割断することによって、複数の太陽電池セルが取得される。その際、割断される部分に生じるダメージの影響で発電の出力が低下する。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、割断による発電の出力の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の太陽電池セルの製造方法は、半導体基板の表面に溝部を形成するステップと、溝部が形成された半導体基板の上に透明導電膜層を形成するステップと、透明導電膜層の上に集電極を形成することによって割断用太陽電池セルを製造するステップと、溝部に沿って割断用太陽電池セルを割断するステップと、を備える。溝部は側面と底面を有し、溝部の側面の少なくとも一部には、透明導電膜層の未成膜領域が形成され、溝部の底面にも透明導電膜層が形成され、割断するステップによって、半導体基板、透明導電膜層および集電極を備える第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルを製造し、溝部は、割断用太陽電池セルにおいて第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルの境界に配置される。
【0007】
本開示の別の態様は、割断用太陽電池セルである。この割断用太陽電池セルは、半導体基板と、半導体基板の表面に配置される溝部と、半導体基板の表面と溝部の底面とに少なくとも配置される非晶質半導体層と、半導体基板の表面と溝部の底面とにおいて、非晶質半導体層に重ねて配置される透明導電膜層と、透明導電膜層の上に配置される集電極と、を備える。溝部は側面と底面を有し、溝部の側面の少なくとも一部には、透明導電膜層の未成膜領域が配置され、溝部の底面にも透明導電膜層が形成され、溝部を挟んだ両側には半導体基板、非晶質半導体層、透明導電膜層、集電極が備えられ、溝部に沿って割断することによって、第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルを製造可能であり、溝部は、第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルの境界に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、割断による発電の出力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る割断用太陽電池セルの構造を示す上面図である。
【
図2】
図2(a)-(f)は、
図1の割断用太陽電池セルの製造方法を示す図である。
【
図3】
図3(a)-(c)は、
図1の太陽電池セルの製造方法を示す図である。
【
図4】
図4(a)-(c)は、
図1の太陽電池セルを含む太陽電池モジュールの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を具体的に説明する前に、概要を述べる。本実施例は、1つの太陽電池セルを複数に割断する技術に関する。ここでは、割断前の1つの太陽電池セルを「割断用太陽電池セル」と呼び、割断後の複数の太陽電池セルのそれぞれを「太陽電池セル」と呼ぶ。これまで、結晶シリコン、アモルファスシリコン層、TCO(透明電極層)を有する割断用太陽電池セルは、レーザアブレーションあるいはメカニカルスクライブで切れ込みが入れられることによって形成された加工溝において割断される。しかしながら、結晶シリコンおよびアモルファスシリコン層よりもTCOにおいてキャリアが移動しやすいので、割断用太陽電池セルを割断すると割断部分でのダメージの影響により、発電の出力が低下する。
【0011】
一方、マスク等でTCOの未成膜領域を形成すると、ダメージをうけた割断部分へのキャリアの移動が抑制され、発電の出力の低下が抑制される。しかしながら、TCOの未成膜領域を形成するためには、TCOの成膜時にマスクをしたり、成膜後にエッチングペーストやレーザによる除去を実行したりすることが必要になる。マスクを使用する場合、マスク幅を小さくすることができず、未成膜領域が大きくなることによって有効発電面積が減少するので、発電の出力が低下する。一方、レーザやエッチングペーストは熱や薬剤の影響で結晶シリコン、アモルファスシリコン層にダメージが加わり、発電の出力が低下する。
【0012】
本実施例では、シリコンヘテロ接合セルである割断用太陽電池セルの製造工程において、レーザアブレーションあるいはブレードダイシング等により半導体基板に溝部が形成される。また、溝部が形成された半導体基板をセル化することによって、溝部の側面にTCOの未成膜領域が形成される。さらに、未成膜領域の近傍に、レーザアブレーションあるいはブレードダイシング等により割断溝を形成することによって、割断用太陽電池セルに対して複数の太陽電池セルへの割断がなされる。以下の説明において、「平行」、「直交」は、完全な平行、直交だけではなく、誤差の範囲で平行、直交からずれている場合も含む。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。以下では、(1)製造手順、(2)太陽電池モジュールの構造の順に説明する。
【0013】
(1)製造手順
図1は、割断用太陽電池セル1000の構造を示す上面図である。
図1に示すように、x軸、y軸、z軸を含む直交座標系が規定される。x軸、y軸は、割断用太陽電池セル1000の平面内において互いに直交する。z軸は、x軸およびy軸に垂直であり、割断用太陽電池セル1000の厚み方向に延びる。また、x軸、y軸、z軸のそれぞれの正の方向は、
図1における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。割断用太陽電池セル1000を形成する2つの主表面であって、かつx-y平面に平行な2つの主表面のうち、z軸の正方向側に配置される主平面が受光面であり、z軸の負方向側に配置される主平面が裏面である。以下では、z軸の正方向側を「受光面側」と呼び、z軸の負方向側を「裏面側」と呼ぶこともある。
【0014】
そのため、
図1は、受光面側からの割断用太陽電池セル1000の構造を示す。割断用太陽電池セル1000は、例えば、正方形の四隅を角面に面取りした形状を有する。割断用太陽電池セル1000のy軸方向の中央部分には、x軸方向に延びる割断線12が配置される。割断線12は、割断用太陽電池セル1000の割断が予定される線である。ここでは、割断用太陽電池セル1000を割断線12に沿って割断することによって、第1太陽電池セル10aと第2太陽電池セル10bが形成される。第1太陽電池セル10aと第2太陽電池セル10bは太陽電池セル10と総称され、太陽電池セル10は、y軸方向よりもx軸方向に長い矩形状を有する。このような太陽電池セル10はハーフカットセルとも呼ばれる。
図1に示された割断用太陽電池セル1000の形状、割断線12の配置、太陽電池セル10の形状および数は、一例であり、これに限定されない。
【0015】
図2(a)-(f)は、割断用太陽電池セル1000の製造方法を示す。これらは、
図1のA-A’線に沿った方向の部分断面図に相当する。
図2(a)において、アズスライスシリコンウエハであるn型半導体基板100が用意される。n型半導体基板100は、例えば、単結晶や多結晶の構造を有するシリコン基板またはゲルマニウム基板等により形成されており、裏面側に第1面102を有し、受光面側に第2面104を有する。つまり、第1面102と第2面104は互いに反対側を向く。ここで、第1面102は、後述の処理においてpnヘテロ接合となる予定の方向である。
【0016】
図2(b)において、ブレードダイシングあるいはレーザアブレーションによってn型半導体基板100の第1面102に溝部150が形成される。第1面102に配置される溝部150は、底面152と側面154とを含む。底面152は、第1面102あるいは第2面104に略平行な面であり、側面154は、第1面102と底面152とをつなぐ面である。ここで、第1面102と側面154とがなす角度θは90度以下にされる。つまり、溝部150は、アリ溝の形状の断面を有する。溝部150の幅は、例えば、0.01~2mm、好ましくは0.02~1mm、さらに好ましくは0.05~0.5mmである。溝部150の幅が狭いほど、後述の処理において成膜がなされにくくなる。一方、溝部150の幅が広いほど、出力ロスが大きくなる。溝部150の深さは、例えば、0.01~0.1mm、好ましくは0.02~0.04mmである。溝部150の深さが浅いほど、後述の処理によって、未成膜領域が狭くなる。一方、溝部150の深さが深いほど、後述の処理において成膜がなされにくくなるとともに、セル化プロセス中に割れやすくなる。
【0017】
図2(c)において、n型半導体基板100に溝部150を形成した後に、洗浄、異方性エッチングにより、n型半導体基板100の第1面102と第2面104と、溝部150とにテクスチャ106が形成される。溝部150においては特に底面152にテクスチャ106が形成される。溝部150にテクスチャ106を形成する理由は、溝部150に進入した光の閉じ込め効果を高めるためである。
【0018】
図2(d)において、テクスチャ106を形成した後に、溝部150が形成された第1面102の裏面側にp型パッシベーション層116がプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。その際、溝部150の底面152および側面154にもp型パッシベーション層116が形成される。これにより、n型半導体基板100の第1面102と、溝部150の底面152と側面154には、p型パッシベーション層116が重ねて配置される。p型パッシベーション層116は、真性非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とを含み、これらのうちの真性非晶質半導体層が第1面102側に配置される。真性非晶質半導体層とp型非晶質半導体層は、例えば、シリコンあるいはゲルマニウム等により形成される。そのため、p型パッシベーション層116はp型の半導体材料を有するといえる。つまり、pn接合面が形成される側に溝部150が配置される。
【0019】
また、第2面104の受光面側にn側パッシベーション層126がプラズマCVD法により形成される。これにより、n型半導体基板100の第2面104の受光面側には、n側パッシベーション層126が配置される。n側パッシベーション層126は、真性非晶質半導体層とn型非晶質半導体層とを含み、これらのうちの真性非晶質半導体層が第2面104側に配置される。真性非晶質半導体層とn型非晶質半導体層も、例えば、シリコンあるいはゲルマニウム等により形成される。そのため、n側パッシベーション層126は、n型の半導体材料を有するといえる。
【0020】
図2(e)において、溝部150が形成されたp型パッシベーション層116の裏面側にp側透明導電膜層114がPVD(Physical Vapor Deposition)法により形成される。p側透明導電膜層114は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性の導電性膜であり、前述のTCOに相当する。一般的に、CVD法は表面マイグレーションにより対象物の形状に追随しやすいが、PVD法は対象物の形状に追随しにくい。そのため、p型パッシベーション層116は溝部150の底面152と側面154にも形成されるが、p側透明導電膜層114は、溝部150の底面152に形成され、側面154に形成されない。p側透明導電膜層114が形成されない側面154は、p側透明導電膜層114の未成膜領域160であるといえる。未成膜領域160では、p型パッシベーション層116のみが成膜される。つまり、p側透明導電膜層114を形成する前にn型半導体基板100に溝部150を形成することは、n型半導体基板100の形状によりマスクを形成することに相当する。このようなn型半導体基板100の形状によるマスクによって、未成膜領域160が形成される。さらに、p側透明導電膜層114の裏面側には、印刷プロセス等によりp側集電極(図示せず)が設けられる。p側集電極は、例えば銀電極である。
【0021】
また、n側パッシベーション層126の受光面側にn側透明導電膜層124がPVD法により形成される。n側透明導電膜層124も、ITO等の透光性の導電性膜であり、前述のTCOに相当する。さらに、n側透明導電膜層124の受光面側には、印刷プロセス等によりn側集電極(図示せず)が設けられる。n側集電極は、例えば銀電極である。p側透明導電膜層114あるいはn側透明導電膜層124の厚みは、例えば、1nm~1μm、好ましくは50nm~150nmであり、n型半導体基板100の厚みは、例えば、50μm~500μm、好ましくは100μm~200μmである。
【0022】
図2(b)において形成される溝部150が狭かったり、深かったりする場合、割断用太陽電池セル1000の構造は、
図2(e)の代わりに
図2(f)になる。図示のごとく、p型パッシベーション層116は、溝部150の側面154に形成されない。そのため、未成膜領域160には、p側透明導電膜層114、p型パッシベーション層116とが配置されない。
【0023】
以下では、割断用太陽電池セル1000が
図2(e)の構造を有することを前提として、割断用太陽電池セル1000を割断する処理を説明する。
図3(a)-(c)は、太陽電池セル10の製造方法を示す。割断は、
図3(a)-(c)のいずれかによってなされる。
図3(a)において、n側集電極およびp側集電極が形成された後、割断用太陽電池セル1000の第2面104側に、ブレードダイシングあるいはレーザアブレーションによって、割断溝200が形成される。溝部150が配置される面とは反対側の面からダイシング加工がなされるので、位置がずれても側面154へのダメージが生じない。割断溝200の幅は、例えば0.001~1mm、好ましくは0.001~0.5mm、さらに好ましくは0.001~0.1mmである。特に、割断溝200の幅は溝部150の幅よりも狭くされる。割断溝200の幅が狭いほど外観の悪化が小さくなる。一方、割断溝200の幅が広いほど出力ロスが大きくなる。そのため、割断溝200の幅は狭いほうが好ましい。
【0024】
割断溝200の深さは、例えば、0.01~0.1mm、好ましくは0.02~0.04mmである。割断溝200の深さが深いほど割断しやすくなる。走査回数を増やすことによって、適度な深さにされればよい。溝部150と割断溝200の深さの合計は、n型半導体基板100の厚み全体の40%~80%、好ましくは50%~70%にされる。さらに、割断溝200に含まれる割断線12に沿って割断用太陽電池セル1000が割断されることによって、第1太陽電池セル10aと第2太陽電池セル10bが製造される。
【0025】
図3(b)において、n側集電極およびp側集電極が形成された後、溝部150の底面152に、ブレードダイシングあるいはレーザアブレーションによって、割断溝200が形成される。溝部150に対してダイシング加工がなされるので、受光面からの外観が維持される。割断溝200のサイズは、
図3(a)と同一でよい。割断溝200に含まれる割断線12に沿って割断用太陽電池セル1000が割断されることによって、第1太陽電池セル10aと第2太陽電池セル10bが製造される。
【0026】
図3(c)において、n側集電極およびp側集電極が形成された後、TLS(Thermal Laser Separation)によって、割断線12に沿って割断用太陽電池セル1000が割断されて、第1太陽電池セル10aと第2太陽電池セル10bが製造される。
【0027】
(2)太陽電池モジュールの構造
図4(a)-(c)は、太陽電池セル10を含む太陽電池モジュール50の構造を示す。
図4(a)は、太陽電池モジュール50の受光面側からの平面図である。太陽電池モジュール50では、太陽電池パネル60の周囲を囲むようにフレームが取り付けられる。太陽電池パネル60は、太陽電池セル10と総称される第11太陽電池セル10aa、・・・、第44太陽電池セル10dd、ストリング間配線材22、ストリング端配線材24、セル間配線材26を含む。
【0028】
各太陽電池セル10は、これまで説明した割断用太陽電池セル1000の割断により生成される。また、各太陽電池セル10の受光面および裏面には、互いに平行にx軸方向に延びる複数のフィンガー電極と、複数のフィンガー電極に直交するようにy軸方向に延びる複数、例えば2本のバスバー電極とが備えられる。バスバー電極は、複数のフィンガー電極のそれぞれを接続する。また、バスバー電極およびフィンガー電極は、前述のp側集電極およびn側集電極に相当する。
【0029】
複数の太陽電池セル10は、x-y平面上にマトリクス状に配列される。ここでは、一例として、x軸方向に4つの太陽電池セル10が並べられ、y軸方向に4つの太陽電池セル10が並べられる。x軸方向に並べられる太陽電池セル10の数と、y軸方向に並べられる太陽電池セル10の数は、これに限定されない。y軸方向に並んで配置される4つの太陽電池セル10は、セル間配線材26によって直列に接続され、1つの太陽電池ストリング20を形成する。例えば、第11太陽電池セル10aa、第12太陽電池セル10ab、第13太陽電池セル10ac、第14太陽電池セル10adが接続されることによって、第1太陽電池ストリング20aが形成される。他の太陽電池ストリング20、例えば、第2太陽電池ストリング20bから第4太陽電池ストリング20dも同様に形成される。その結果、4つの太陽電池ストリング20がx軸方向に平行に並べられる。
【0030】
太陽電池ストリング20を形成するために、セル間配線材26は、隣接した太陽電池セル10のうちの一方の受光面側のバスバー電極と、他方の裏面側のバスバー電極とを接続する。例えば、第11太陽電池セル10aaと第12太陽電池セル10abとを接続するための2つのセル間配線材26は、第11太陽電池セル10aaの受光面側のバスバー電極と第12太陽電池セル10abの裏面側のバスバー電極とを電気的に接続する。
【0031】
複数のストリング間配線材22のそれぞれは、x軸方向に延びて、互いに隣接する2つの太陽電池ストリング20に電気的に接続される。例えば、複数の太陽電池セル10よりもy軸の正方向に配置されるストリング間配線材22は、第2太陽電池ストリング20bにおける第21太陽電池セル10baと、第3太陽電池ストリング20cにおける第31太陽電池セル10caとを接続する。他のストリング間配線材22も同様である。その結果、複数の太陽電池ストリング20は直列に接続される。直列に接続された複数の太陽電池ストリング20の両端の太陽電池セル10、例えば、第11太陽電池セル10aaと第41太陽電池セル10daには、ストリング端配線材24が接続される。ストリング端配線材24は、図示しない端子ボックスに接続される。
【0032】
図4(b)は、太陽電池モジュール50の断面図であり、
図4(a)のB-B’断面図である。太陽電池モジュール50における太陽電池パネル60は、太陽電池セル10と総称される第11太陽電池セル10aa、第12太陽電池セル10ab、第13太陽電池セル10ac、セル間配線材26、保護部材40と総称される第1保護部材40a、第2保護部材40b、封止部材42と総称される第1封止部材42a、第2封止部材42bを含む。
図4(a)の上側が受光面側に相当し、下側が裏面側に相当する。
【0033】
第1保護部材40aは、太陽電池パネル60の受光面側に配置されており、太陽電池パネル60の表面を保護する。第1保護部材40aには、透光性および遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等が使用され、矩形板状に形成される。ここでは、一例としてガラスが使用されるとする。第1封止部材42aは、第1保護部材40aの裏面側に積層される。第1封止部材42aは、第1保護部材40aと太陽電池セル10との間に配置されて、これらを接着する。第1封止部材42aとして、例えば、ポリオレフィン、EVA、PVB(ポリビニルブチラール)、ポリイミド等の樹脂フィルムのような熱可塑性樹脂が使用される。熱硬化性樹脂が使用されてもよい。第1封止部材42aは、透光性を有するとともに、第1保護部材40aにおけるx-y平面と略同一寸法の面を有する矩形状のシート材によって形成される。
【0034】
第2封止部材42bは、第1封止部材42aの裏面側に積層される。第2封止部材42bは、第1封止部材42aとの間で、複数の太陽電池セル10、セル間配線材26等を封止する。第2封止部材42bには、第1封止部材42aと同様のものを用いることができる。また、ラミネート・キュア工程における加熱によって、第2封止部材42bは第1封止部材42aと一体化されていてもよい。
【0035】
第2保護部材40bは、第2封止部材42bの裏面側に積層される。第2保護部材40bは、バックシートとして太陽電池パネル60の裏面側を保護する。第2保護部材40bとしては、例えば、PET等の樹脂フィルムが使用される。第2保護部材40bとして、Al箔を樹脂フィルムで挟んだ構造を有する積層フィルムなどが使用されてもよい。
【0036】
図4(c)は、太陽電池モジュール50の裏面側からの平面図である。太陽電池モジュール50における太陽電池パネル60には、箱形形状の端子ボックス30が取り付けられる。端子ボックス30には、第1ケーブル32a、第2ケーブル32bが電気的に接続される。第1ケーブル32a、第2ケーブル32bは、太陽電池モジュール50において発電した電力を外部に出力する。
【0037】
本実施例によれば、n型半導体基板100に溝部150を形成してからp側透明導電膜層114を成膜するので、n型半導体基板100の形状によりマスク効果を得ることができる。また、n型半導体基板100の形状によりマスク効果が得られるので、未成膜領域160を形成できる。また、側面154の少なくとも一部には未成膜領域160が形成されるので、割断による発電の出力の低下を抑制できる。また、溝部150の底面152にもp側透明導電膜層114が形成されるので、p側透明導電膜層114の面積の減少を抑制できる。
【0038】
また、第1面102と溝部150の底面152とにp型パッシベーション層116が形成されるので、パッシベーション層を確保できる。また、側面154にもp型パッシベーション層116が形成されるので、パッシベーション層を確保できる。また、n型半導体基板100の第1面102と、溝部150とにテクスチャ106を形成するので、太陽電池セル10に入射した光を有効に利用できる。また、太陽電池セル10に入射した光が有効に利用されるので、発電効率を向上できる。また、溝部150にテクスチャ106を形成するので、光の閉じ込め効果を高めることができる。また、光の閉じ込め効果が高まるので、出力を向上できる。
【0039】
また、溝部150の底面152に形成した割断溝200に沿って割断するので、受光面から割断溝200を見えなくできる。また、受光面から割断溝200が見えなくなるので、受光面側からの外観を悪化させないように割断できる。また、溝部150に割断溝200を加工するので、加工の位置精度を向上できる。また、n型半導体基板100における第1面102と反対を向いた第2面104に形成した割断溝200に沿って割断するので、側面154へのダメージを抑制できる。また、受光面側に割断溝200を設けるので、割断溝200とpn接合部分との距離を長くできる。また、割断溝200とpn接合部分との距離が長くなるので、加工の影響を低減できる。
【0040】
本実施例の概要は、次の通りである。本開示のある態様の太陽電池セル10の製造方法は、n型半導体基板100の第1面102に溝部150を形成するステップと、溝部150が形成されたn型半導体基板100の第1面102にp側透明導電膜層114を形成するステップとを備える。溝部150の側面154の少なくとも一部には、p側透明導電膜層114の未成膜領域160が形成される。
【0041】
溝部150の底面152にもp側透明導電膜層114が形成される。
【0042】
p側透明導電膜層114を形成するステップの前に、溝部150が形成されたn型半導体基板100の第1面102にp型パッシベーション層116を形成するステップをさらに備えてもよい。溝部150の底面152にもp型パッシベーション層116が形成される。
【0043】
溝部150の側面154の少なくとも一部にもp型パッシベーション層116が形成される。
【0044】
p型パッシベーション層116を形成するステップの前に、n型半導体基板100の第1面102と、溝部150とにテクスチャ106を形成するステップをさらに備える。
【0045】
溝部150の底面152に割断溝200を形成するステップと、割断溝200に沿って割断するステップと、をさらに備える。
【0046】
n型半導体基板100における第1面102と反対を向いた第2面104に割断溝200を形成するステップと、割断溝200に沿って割断するステップと、をさらに備える。
【0047】
本開示の別の態様は、割断用太陽電池セル1000である。この割断用太陽電池セル1000は、n型半導体基板100と、n型半導体基板100の第1面102に配置される溝部150と、n型半導体基板100の第1面102と溝部150の底面152とに少なくとも配置されるp型パッシベーション層116と、n型半導体基板100の第1面102と溝部150の底面152とにおいて、p型パッシベーション層116に重ねて配置されるp側透明導電膜層114とを備える。溝部150の側面154の少なくとも一部には、p側透明導電膜層114の未成膜領域160が配置される。
【0048】
溝部150の側面154の少なくとも一部にもp型パッシベーション層116が配置される。
【0049】
n型半導体基板100は、溝部150の底面152にテクスチャ構造を有する。
【0050】
以上、本開示について実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0051】
10 太陽電池セル、 12 割断線、 20 太陽電池ストリング、 22 ストリング間配線材、 24 ストリング端配線材、 26 セル間配線材、 30 端子ボックス、 32 ケーブル、 40 保護部材、 42 封止部材、 50 太陽電池モジュール、 60 太陽電池パネル、 100 n型半導体基板、 102 第1面(表面)、 104 第2面、 106 テクスチャ、 114 p側透明導電膜層、 116 p型パッシベーション層(非晶質半導体層)、 124 n側透明導電膜層、 126 n側パッシベーション層、 150 溝部、 152 底面、 154 側面、 160 未成膜領域、 200 割断溝、 1000 割断用太陽電池セル。