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特許7278864神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20210101AFI20230515BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61B5/05 ZDM
A61N1/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019091281
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020185136
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】貝阿彌 隆
(72)【発明者】
【氏名】根木 潤
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0064362(US,A1)
【文献】特開平09-117453(JP,A)
【文献】特開2010-088802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
A61B 5/375-5/383
A61B 5/388-5/395
A61B 10/00
A61N 1/36-1/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激を与える電極部が装着された被検者が前記電気刺激を感じた場合に応答する応答部と、
前記電極部に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し、段階ごとの応答の状況から前記被検者が前記電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記電極部に段階的に増加する刺激電流を供給する場合には既定の上昇間隔にしたがって段階的に前記刺激電流を増加させ、前記電極部に段階的に減少する前記刺激電流を供給する場合には既定の下降間隔にしたがって段階的に前記刺激電流を減少させ、
前記電極部に前記刺激電流の供給を応答が確認できなくなるまで繰り返し行って前記応答が確認できる最小の刺激電流である最小電流値を求めるセッション処理を行い、
前記最小電流値が既定の有効電流範囲内となるセッション数が既定の有効セッション数以上ある場合には、前記既定の有効電流範囲内の前記最小電流値を基に前記感覚閾値を求める、神経刺激測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
既定のセッション数として実行される最大のセッション数を上限として前記セッション処理を繰り返し行う、請求項に記載の神経刺激測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記既定の有効電流範囲内の前記最小電流値が前記既定の有効セッション数以上ある場合には、以降のセッションの実施を停止する、請求項またはに記載の神経刺激測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記既定の有効電流範囲内の前記最小電流値が前記既定の有効セッション数以上ない場合には、測定不能であるとする、請求項からのいずれかに記載の神経刺激測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記既定の上昇間隔、前記既定の下降間隔、前記既定のセッション数、前記既定の有効セッション数、および前記既定の有効電流範囲を記憶する記憶部を有する、請求項に記載の神経刺激測定装置。
【請求項6】
さらに、入力部を有し、
前記記憶部に記憶させる前記既定の上昇間隔、前記既定の下降間隔、前記既定のセッション数、前記既定の有効セッション数、および前記既定の有効電流範囲は、前記入力部から入力される、請求項に記載の神経刺激測定装置。
【請求項7】
さらに、表示部を有し、
前記制御部が求めた前記感覚閾値、または前記測定不能である旨は、前記表示部によって表示される、請求項に記載の神経刺激測定装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記感覚閾値を、前記既定の有効電流範囲内のすべての前記最小電流値の最小値または最大値とするか、前記既定の有効電流範囲内のすべての前記最小電流値の平均値または中央値とする、請求項のいずれかに記載の神経刺激測定装置。
【請求項9】
さらに、スタートスイッチを有し、
前記制御部は、前記スタートスイッチが押されることによって、前記電極部への前記刺激電流の供給から前記感覚閾値を求めるまでの一連の処理を自動的に行う、請求項1~のいずれかに記載の神経刺激測定装置。
【請求項10】
応答部が、電気刺激を与える電極部が装着された被検者が前記電気刺激を感じた場合に応答する段階と、
制御部が、前記電極部に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し、段階ごとの応答の状況から前記被検者が前記電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める段階であって、
前記制御部が、前記電極部に段階的に増加する刺激電流を供給する場合には既定の上昇間隔にしたがって段階的に前記刺激電流を増加させ、前記電極部に段階的に減少する前記刺激電流を供給する場合には既定の下降間隔にしたがって段階的に前記刺激電流を減少させ、
前記電極部に前記刺激電流の供給を応答が確認できなくなるまで繰り返し行って前記応答が確認できる最小の刺激電流である最小電流値を求めるセッション処理を行い、
前記最小電流値が既定の有効電流範囲内となるセッション数が既定の有効セッション数以上ある場合には、前記既定の有効電流範囲内の前記最小電流値を基に前記感覚閾値を求める段階と、を有する
神経刺激測定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
応答部が、電気刺激を与える電極部が装着された被検者が前記電気刺激を感じた場合に応答する段階と、
制御部が、前記電極部に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し、段階ごとの応答の状況から前記被検者が前記電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める段階であって、
前記制御部が、前記電極部に段階的に増加する刺激電流を供給する場合には既定の上昇間隔にしたがって段階的に前記刺激電流を増加させ、前記電極部に段階的に減少する前記刺激電流を供給する場合には既定の下降間隔にしたがって段階的に前記刺激電流を減少させ、
前記電極部に前記刺激電流の供給を応答が確認できなくなるまで繰り返し行って前記応答が確認できる最小の刺激電流である最小電流値を求めるセッション処理を行い、
前記最小電流値が既定の有効電流範囲内となるセッション数が既定の有効セッション数以上ある場合には、前記既定の有効電流範囲内の前記最小電流値を基に前記感覚閾値を求める段階と、
を実行させるための、神経刺激測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者に貼り付けた電極に、手動で設定した電流値の電流を流して、被検者に電気刺激を与え、被検者が電気刺激を感じる電流値を測定する、痛覚神経刺激装置がある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-88802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の痛覚神経刺激装置では、電気刺激を与えるための電流を、検査者が手動で変化させ、被検者が電気刺激を感じる最小の電流値を探っていかなければならないため、検査者の手間が多くなる。また、電気刺激を与えるタイミングが検査者によって異なるため、測定結果が検査者に依存される。したがって、従来の痛覚神経刺激装置では、測定が煩雑であるばかりでなく、再現性のある測定結果を得にくい。
【0005】
本発明は、上記のような従来の痛覚神経刺激装置の不具合を解消するために成されたものであり、簡素な構成で再現性のある測定結果を得ることができる、神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の神経刺激測定装置は、電気刺激を与える電極部が装着された被検者が電気刺激を感じた場合に応答する応答部と、電極部に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し、段階ごとの応答の状況から被検者が電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める制御部と、を有する。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の神経刺激測定方法は、応答部が、電気刺激を与える電極部が装着された被検者が電気刺激を感じた場合に応答する段階と、制御部が、電極部に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し、段階ごとの応答の状況から被検者が電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める段階と、を含む。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の神経刺激測定プログラムは、コンピュータに、応答部が、電気刺激を与える電極部が装着された被検者が電気刺激を感じた場合に応答する段階と、制御部が、電極部に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し、段階ごとの応答の状況から被検者が電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める段階と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムによれば、簡素な構成で再現性のある測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の神経刺激測定装置の測定時における外観図である。
図2】本実施形態の神経刺激測定装置の制御系のブロック図である。
図3】本実施形態の神経刺激測定装置の制御部の構成図である。
図4】本実施形態の神経刺激測定装置の動作フローチャートである。
図5】本実施形態の神経刺激測定装置の動作フローチャートである。
図6】本実施形態の神経刺激測定装置の動作フローチャートである。
図7】本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様1の説明図である。
図8】本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様2の説明図である。
図9】本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様3の説明図である。
図10】本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムの実施形態を説明する。
<神経刺激測定装置の構成>
図1は、本実施形態の神経刺激測定装置の測定時における外観図である。神経刺激測定装置100は、応答部120および本体部150を有する。なお、本体部150は、測定時に使用する電極部110と着脱可能に構成される。
【0012】
測定時に本体部150に接続される電極部110は、被検者の手の甲、足の甲など、電気刺激を感じやすい部分に装着される。電極部110は、コード115を介して本体部150に接続される。電極部110は、本体部150から供給される刺激電流によって、被検者に電気刺激を与える。
【0013】
応答部120は、被検者が電気刺激を感じた場合に応答するために用いられる。応答部120は、コード125を介して本体部150に接続される。応答部120は応答ボタン122を備える。応答ボタン122は被検者が電気刺激を感じた場合に被検者によって押される。応答ボタン122が押された場合、本体部150が、刺激電流による被検者の応答を確認する。
【0014】
本体部150は、スタートスイッチ152、表示部154、および入力部156を有する。スタートスイッチ152は、神経刺激測定装置100による測定を開始する場合に押されるスイッチである。スタートスイッチ152が押されることによって電極部110への刺激電流の供給から感覚閾値(被検者が電気刺激を感じる刺激電流:詳細は後述する)を求めるまでの一連の処理が自動的に行われる。なお、本実施形態では、スタートスイッチ152を本体部150の一部に設けているが、後述する表示部154内に表示させ、表示されているスタートスイッチ152を押すようにしても良い。
【0015】
表示部154は、本体部150が求めた上記の感覚閾値、または測定不能である旨を表示する。表示内容の詳細は後述する。本実施形態では、表示部154は、一般的に用いられているLCDディスプレイ、または有機ELディスプレイを用いる。
【0016】
入力部156は、本体部150内に設けられている記憶部に、たとえば、刺激電流の初期電流値、段階的に増加する刺激電流の既定の上昇間隔、段階的に減少する刺激電流の既定の下降間隔、応答待ち時間、既定のセッション数、既定の有効セッション数、および既定の有効電流範囲など、測定に必要な諸量を入力するために用いられる。なお、既定の有効セッション数とは、感覚閾値を求める際に必要となるセッションの数である。入力部156を設けると、測定に必要な諸量を操作者が自由に設定することができる。なお、本実施形態では、入力部156を本体部150の一部に設けているが、外部のコンピュータと接続可能な入力ポートを入力部156としても良い。この場合、測定に必要な諸量の入力は、外部のコンピュータから入力ポートを介して行われる。なお、これら測定に必要な諸量の詳細は後述する。
【0017】
図2は、本実施形態の神経刺激測定装置の制御系のブロック図である。神経刺激測定装置100は、応答部120、および本体部150を有し、本体部150は、スタートスイッチ152、表示部154、入力部156、および制御部160を有する。制御部160は記憶部165を有する。
【0018】
応答部120、本体部150、スタートスイッチ152、表示部154、および入力部156の構成は、上記の通りである。
【0019】
制御部160は、電極部110に段階的に増加または減少する刺激電流を供給し段階ごとの応答部120による応答の状況から、被検者が電気刺激を感じる刺激電流である感覚閾値を求める。また、制御部160は、電極部110に段階的に増加する刺激電流を供給する場合には、記憶部165に記憶されている既定の上昇間隔にしたがって段階的に刺激電流を増加させ、電極部110に段階的に減少する刺激電流を供給する場合には、記憶部165に記憶されている既定の下降間隔にしたがって段階的に刺激電流を減少させる。制御部160の詳しい動作は、図4以降の図面に基づいて後述する。
【0020】
記憶部165は、入力部156から入力される、たとえば、刺激電流の初期電流値、段階的に増加する刺激電流の上昇間隔、段階的に減少する刺激電流の下降間隔、応答待ち時間、既定のセッション数、既定の有効セッション数、および既定の有効電流範囲など、測定に必要な諸量を記憶する。また、記憶部165は、制御部160が求めた、セッション処理ごとの最小電流値および感覚閾値を記憶する。
【0021】
図3は本実施形態の神経刺激測定装置の制御部の構成図である。制御部160は、神経刺激測定のための一連の処理を行うCPU162、CPU162による一連の処理の結果を一時的に記憶するRAM164、測定に必要な諸量を記憶する記憶部165、CPU162が神経刺激測定のために実行する、神経刺激測定プログラムを記憶するROM166、外部のコンピュータとの間で通信を行う外部I/F(外部インターフェース)168を有する。図3の構成を有する制御部160は、コンピュータとして機能する。
<神経刺激測定装置の動作>
図4から図6は、本実施形態の神経刺激測定装置の動作フローチャートである。これらの動作フローチャートを用いて神経刺激測定装置100の動作を詳細に説明する。なお、図4から図6の動作フローチャートは、本実施形態の神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムの手順を示すものでもある。
【0022】
図4図6の動作フローチャートは、スタートスイッチ152(図1および図2参照)が押されることにより、処理が開始される。
【0023】
スタートスイッチ152が押されて処理が開始されると、制御部160は、記憶部165から初期電流値を読み出す(S100)。
【0024】
制御部160は、これから行う処理が初回のセッション処理であるか否かを判断する(S110)。初回のセッション処理であれば(S110:YES)、制御部160は、入力した初期電流値を初回の刺激電流値、すなわち初期刺激電流値として設定する(S120)。本実施形態では、初期刺激電流値を0.5mAとしている。しかし、初期刺激電流値の設定はこの電流値に限られない。制御部160は、次に初回のセッション処理を行う(S140)。
【0025】
セッション処理は、図5の動作フローチャートの処理にしたがって実行される。制御部160は、図4の動作フローチャートのS120のステップで設定された刺激電流値を設定する(S200)。初回のセッション処理の場合、制御部160は、刺激電流値として初期刺激電流値を設定することになる。刺激電流値の設定が終了したら、次に、制御部160は刺激処理を行う(S210)。
【0026】
刺激処理(S210)は、図6の動作フローチャートの処理にしたがって実行される。制御部160は、刺激処理が開始されると、一定の時間(任意の時間たとえば2sec)待って(S300)、電極部110(図1および図2参照)に刺激電流を供給する(S310)。初回のセッション処理の場合、制御部160は、初期刺激電流値の刺激電流を電極部110に供給することになる。刺激電流は電極部110から被検者に供給される。被検者は、電気刺激を感じたら応答部120の応答ボタン122を押して応答する。
【0027】
制御部160は、既定の時間内に応答があるか否かを判断する(S320)。本実施形態では、既定の時間、すなわち応答待ち時間を2secとしている。しかし、応答待ち時間はこの時間に限られない。
【0028】
既定の時間内に応答があれば(S320:YES)、制御部160は応答ありと判定する(S330)。一方、既定の時間内に応答がなければ(S320:NO)、制御部160は刺激電流の供給を既定回数繰り返したか否かを判断する(S340)。S340のステップの処理を行うのは、1回の応答の確認だけで、応答なしと判断してしまうのは、測定の信頼性を確保する上では好ましくないからである。
【0029】
制御部160は刺激電流の供給を既定回数繰り返していなければ(S340:NO)、被検者からの応答があるか、刺激電流の供給を既定回数繰り返すまで、S310およびS320のステップの処理を行う。刺激電流の供給を既定回数繰り返したら(S340:YES)、制御部160は、応答なしと判定する(S350)。
【0030】
図6の動作フローチャートの刺激処理が終了し、応答あり、応答なしのいずれかの判定がされたら、図5の動作フローチャートのS220のステップに進む。
【0031】
次に、制御部160は、図6の動作フローチャートの刺激処理の結果から、被検者の応答があるか否かを判断する(S220)。被検者の応答があれば(S220:YES)、制御部160は、記憶部165に記憶されている、段階的に減少する刺激電流の下降間隔を参照して、次回の刺激電流値を設定する(S230)。本実施形態では、刺激電流の下降間隔を0.05mAとしている。しかし、刺激電流の下降間隔はこの電流値に限られない。この場合、初期刺激電流値が0.5mA、刺激電流の下降間隔が0.05mAであるので、次回の刺激電流は0.45mAに設定される。
【0032】
制御部160は、設定した次回の刺激電流値で、図6の動作フローチャートの刺激処理を行う(S240)。この場合、制御部160は、0.45mAの刺激電流を電極部110に供給して、被検者の応答の有無を確認することになる。
【0033】
図6の動作フローチャートの刺激処理が終了し、応答あり、応答なしのいずれかの判定がされたら、図5の動作フローチャートのS250のステップに進む。
【0034】
次に、制御部160は、図6の動作フローチャートの刺激処理の結果から、被検者の応答があるか否かを判断する(S250)。被検者の応答があれば(S250:YES)、制御部160は、記憶部165に記憶されている、段階的に減少する刺激電流の下降間隔を参照して、次回の刺激電流値を設定する(S230)。この場合、前回の刺激電流値が0.45mA、刺激電流の下降間隔が0.05mAであるので、次回の刺激電流は0.45mAに設定される。S230およびS240のステップの処理は、図6の動作フローチャートの刺激処理の結果において、被検者の応答がなくなるまで繰り返される。
【0035】
制御部160がS230およびS240のステップの処理を繰り返し行い、被検者の応答がなければ(S250:NO)、制御部160は、被検者の応答がなくなった直前の最小の刺激電流である最小電流値を記憶部165に記憶させる(S260)。
【0036】
S220のステップの処理に戻って、被検者の応答がなければ(S220:NO)、制御部160は、記憶部165に記憶されている、段階的に増加する刺激電流の上昇間隔を参照して、次回の刺激電流値を設定する(S270)。本実施形態では、刺激電流の上昇間隔を0.1mAとしている。しかし、刺激電流の上昇間隔はこの電流値に限られない。この場合、初期刺激電流値が0.5mA、刺激電流の上昇間隔が0.1mAであるので、次回の刺激電流は0.6mAに設定される。
【0037】
制御部160は、設定した次回の刺激電流値で、図6の動作フローチャートの刺激処理を行う(S210)。この場合、制御部160は、0.6mAの刺激電流を電極部110に供給して、被検者の応答の有無を確認する。図6の動作フローチャートの刺激処理を行うS210とS240のステップ処理は、S210のステップの処理においては被検者の応答があるまで、S240のステップの処理においては被検者の応答がなくなるまで、それぞれ繰り返される。
【0038】
以上の処理によって図4の動作フローチャートのS140のステップのセッション処理、つまり、電極部110に刺激電流の供給を応答が確認できなくなるまで繰り返し行い応答が確認できる最小の刺激電流である最小電流値を求める1セッションのセッション処理が終了する。
【0039】
次に、制御部160は、記憶部165に記憶されている既定の有効電流範囲と既定の有効セッション数とを参照するとともに、以上のセッション処理において記憶した最小電流値を参照し、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があるか否かを判断する(S150)。ここで、有効電流範囲とは、各セッションで求めた最小電流値が相互に関連する範囲であり、有効セッション数とは、有効電流範囲内の最小電流値の数である。たとえば、有効電流範囲が0.1mA、有効セッション数が3であったとすると、S160のステップでは、有効電流範囲の0.1mA以内に3セッション以上の最小電流値があるか否かを判断する。
【0040】
有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値がなければ(S150:NO)、制御部160は、記憶部165に記憶されている既定のセッション数を参照して、既定回数のセッション処理が終了したか否かを判断する(S160)。
【0041】
既定回数のセッション処理が終了していなければ(S160:NO)、S110のステップの処理に戻って、制御部160は、次に行う処理が初回のセッション処理であるか否かを判断する(S110)。この場合、次に行う処理は初回のセッション処理ではないので(S110:NO)、制御部160は、記憶部165に記憶されている、段階的に増加する刺激電流の上昇間隔を参照して、次回のセッションの刺激電流値を設定する(S130)。
【0042】
たとえば、初回のセッション処理のS260のステップの処理において(図5参照)、最小電流値として、0.25mAが記憶されていたとする。本実施形態では、刺激電流の上昇間隔を0.1mAとしているので、この場合、制御部160は、次回のセッションの刺激電流値として0.35mAを設定する。
【0043】
制御部160は、次にS130のステップの処理で設定された刺激電流値を用いて次のセッション処理を行う(S140)。このセッション処理は、図5および図6の動作フローチャートの処理にしたがって実行される。制御部160は、S130からS150のステップの処理を、既定回数のセッション処理が終了するまで繰り返す。
【0044】
一方、既定回数のセッション処理が終了したら(S160:YES)、既定回数のセッション処理を繰り返しても、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値がなかったのであるから、制御部160は感覚閾値が測定不能である旨を、表示部154に表示させる(S170)。なお、被検者の負担が大きくなるものの、既定回数のセッション処理で打ち切るのではなく、感覚閾値が算出できるまで処理を継続する構成にすることも可能である。すなわち、上述のS160及びS170の処理を行わず、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値がなければ(S150:NO)、感覚閾値が算出できるまで一連の処理(S130、140、S150、S180)を繰り返してもよい。
【0045】
S150のステップの処理に戻って、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があれば(S150:YES)、制御部160は、各セッションの最小電流値の中で有効電流範囲に入る最小電流値を基に感覚閾値を求めて表示部154に表示させる(S180)。なお、制御部160は、感覚閾値を、有効セッション数において有効電流範囲に入るすべての最小電流値の内の最小値または最大値とするか、すべての最小電流値の平均値または中央値とする。本実施形態では、有効セッション数において有効電流範囲に入るすべての最小電流値の内の最小値を感覚閾値としている。
【0046】
以上が、神経刺激測定装置100、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムの一連の動作である。次に、具体的な数値を例示して、神経刺激測定装置100、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムの一連の具体的な動作を、処理態様1~処理態様4に分けて説明する。
<処理態様1>
図7は、本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様1の説明図である。処理態様1では、記憶部165に、初期電流値として0.5mA、既定のセッション数として3、既定の有効セッション数として3、既定の有効電流範囲として0.1mA、応答待ち時間として2sec、上昇間隔として0.1mA、下降間隔として0.05mAを記憶させている。
【0047】
制御部160は、最初のセッション、セッション1の処理(図5および図6の動作フローチャート)を実行する。制御部160は、まず、初期電流値の0.5mAを初期刺激電流値として設定し、この初期刺激電流値の刺激電流を電極部110に供給する。被検者が電気刺激を感じると応答部120の応答ボタン122が押される。これにより制御部160は応答の確認ができる。処理態様1の場合では、刺激電流の供給から応答の確認ができるまでの時間、すなわち応答時間が0.52secであり、応答待ち時間2sec以内に応答を確認できているので、制御部160は応答ありと判定する。つまり、被検者は0.5mAの刺激電流を感じることができたと判定する。
【0048】
次に、制御部160は、刺激電流の下降間隔を参照して、次回の刺激電流値を設定する。下降間隔は0.05mAであるので、次回の刺激電流値は0.5-0.05=0.45mAである。制御部160は、この刺激電流値の刺激電流を電極部110に供給する。このときの応答時間は0.65secであるので、制御部160は応答ありと判定する。つまり、被検者は0.45mAの刺激電流を感じることができたと判定する。
【0049】
制御部160は、以上と同様の処理を、刺激電流値を0.40mA、0.35mA、0.30mA、0.25mA、0.2mAと、0.05mAずつ減少させながら、被検者の応答の状況を確認する。処理態様1の場合では、刺激電流値を0.20mAとしたときに、制御部160は応答なしと判定している。つまり、被検者は0.20mAの刺激電流を感じることができなかったと判定する。これにより、制御部160は、被検者が0.25mAの刺激電流は感じることができたが、0.20mAの刺激電流は感じることができなかったということがわかる。制御部160は、セッション1の最小電流値として0.25mAを記憶部165に記憶させる。
【0050】
次に、制御部160は、セッション2の処理を実行する。セッション2の処理を開始するにあたり、制御部160は、刺激電流の上昇間隔を参照して、セッション2の初回の刺激電流値を設定する。上昇間隔は0.10mAであるので、初回の刺激電流値は0.25+0.10=0.35mAとなる。このように、セッション2の処理をセッション1の初期電流値の0.5mAから開始しないように工夫しているので、測定時間の短縮化が図れる。
【0051】
制御部160は、セッション1と同様の処理を、刺激電流値0.35mAから開始し、刺激電流値を0.30mA、0.25mAと、0.05mAずつ減少させながら、被検者の応答の状況を確認する。セッション2の場合では、刺激電流値を0.25mAとしたときに、制御部160は応答なしと判定している。つまり、セッション2では被検者は0.25mAの刺激電流を感じることができなかったと判定する。これにより、制御部160は、被検者が0.30mAの刺激電流を感じることができたが、0.25mAの刺激電流は感じることができなかったということがわかる。制御部160は、セッション2の最小電流値として0.30mAを記憶部165に記憶させる。
【0052】
次に、制御部160は、セッション3の処理を実行する。セッション3の処理はセッション2の処理と同じである。制御部160は、セッション3の初回の刺激電流値を0.30+0.10=0.40mAに設定し、セッション1と同様の処理を、刺激電流値0.40mAから開始し、刺激電流値を0.35mA、0.30mAと、0.05mAずつ減少させながら、被検者の応答の状況を確認する。セッション3の処理では、刺激電流値を0.30mAとしたときに、制御部160は応答なしと判定している。つまり、セッション3では被検者は0.30mAの刺激電流を感じることができなかったと判定する。これにより、制御部160は、被検者が0.35mAの刺激電流は感じることができたが、0.30mAの刺激電流は感じることができなかったということがわかる。制御部160は、セッション3の最小電流値として0.35mAを記憶部165に記憶させる。
【0053】
処理態様1の場合、既定のセッション数として3が設定されているので、制御部160はセッション3までの処理で、最小電流値の測定を終了する。セッション1~3までの処理で、セッション1の0.25mA、セッション2の0.30mA、セッション3の0.35mAという3つの最小電流値が測定される。
【0054】
次に、制御部160は、記憶部165に記憶されている既定の有効電流範囲と既定の有効セッション数とを参照するとともに、以上のセッション1~3の処理において記憶した最小電流値を参照し、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があるか否かを判断する。
【0055】
処理態様1の場合、有効電流範囲は0.1mA、有効セッション数は3、記憶した3つの最小電流値は0.25mA、0.30mA、0.35mAであり、セッション1~3の3つの最小電流値のすべてが有効電流範囲の0.1mA以内に入っている。つまり、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があるので、制御部160は、セッション1~3の最小電流値の内の最小の刺激電流を感覚閾値として表示部154に表示させる。処理態様1の場合、セッション1~3の最小電流値の内の最小の0.25mAが感覚閾値として表示部154に表示されることになる。なお、制御部160は、感覚閾値を、既定の有効セッション数において有効電流範囲内にあるすべての最小電流値の内の最大値(上記の場合は0.35mA)とするか、すべての最小電流値の平均値(上記の場合は0.30mA)または中央値(上記の場合は0.30mA)としてもよい。
<処理態様2>
図8は、本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様2の説明図である。処理態様2では、処理態様1と同じく、記憶部165に、初期電流値として0.5mA、既定のセッション数として3、既定の有効セッション数として3、既定の有効電流範囲として0.1mA、応答待ち時間として2sec、上昇間隔として0.1mA、下降間隔として0.05mAを記憶させている。
【0056】
処理態様2は、処理態様1と同様の手順でセッション1~3の処理をする。すなわち、処理態様2の場合、既定のセッション数として3が設定されているので、制御部160はセッション3までの処理で、最小電流値の測定をする。セッション1~3までの処理で、セッション1の0.25mA、セッション2の0.30mA、セッション3の0.40mAという3つの最小電流値が測定される。
【0057】
次に、処理態様1と同じく、制御部160は、記憶部165に記憶されている既定の有効電流範囲と既定の有効セッション数とを参照するとともに、以上のセッション1~3の処理において記憶した最小電流値を参照し、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があるか否かを判断する。
【0058】
処理態様2の場合、有効電流範囲は0.1mA、有効セッション数は3、記憶した3つの最小電流値は0.25mA、0.30mA、0.40mAであり、セッション1~3の3つの最小電流値の内の2つしか有効電流範囲の0.1mA以内に入っていない、つまり、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値がないので、制御部160は、感覚閾値が測定不能である旨を、表示部154に表示させる。
<処理態様3>
図9は、本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様3の説明図である。処理態様3では、記憶部165に、初期電流値として0.5mA、既定のセッション数として3、既定の有効セッション数として2、既定の有効電流範囲として0.1mA、応答待ち時間として2sec、上昇間隔として0.1mA、下降間隔として0.05mAを記憶させている。
【0059】
処理態様3は、処理態様1と同様の手順でセッション1~3の処理をする。すなわち、処理態様3の場合、既定のセッション数として3が設定されているので、制御部160はセッション3までの処理で、最小電流値の測定を終了する。セッション1~3までの処理で、セッション1の0.25mA、セッション2の0.40mA、セッション3の0.40mAという3つの最小電流値が測定される。
【0060】
次に、処理態様1と同じく、制御部160は、記憶部165に記憶されている既定の有効電流範囲と既定の有効セッション数とを参照するとともに、以上のセッション1~3に処理において記憶した最小電流値を参照し、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があるか否かを判断する。
【0061】
処理態様3の場合、有効電流範囲は0.1mA、有効セッション数は2、記憶した3つの最小電流値は0.25mA、0.40mA、0.40mAであり、セッション1~3の3つの最小電流値の内の2つの最小電流値(セッション2と3)が有効電流範囲の0.1mA以内に入っている、つまり、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小電流値があるので、制御部160は、セッション2、3の最小電流値の内の最小の0.40mAを感覚閾値として表示部154に表示させる。
<処理態様4>
図10は、本実施形態の神経刺激測定装置の処理態様4の説明図である。処理態様4では、処理形態3と同じく、記憶部165に、初期電流値として0.5mA、既定のセッション数として3、既定の有効セッション数として2、既定の有効電流範囲として0.1mA、応答待ち時間として2sec、上昇間隔として0.1mA、下降間隔として0.05mAを記憶させている。
【0062】
処理態様4は、セッション処理を繰り返し、有効電流範囲内に有効セッション数以上の最小の刺激電流値があると判断されたときには、既定のセッション数のセッション処理が完了していなくとも、その時点で制御部160の測定が終了する。このため、処理態様4では、処理態様1~3に比較して測定時間が短くなる場合がある。
【0063】
処理態様4は、処理態様1と同様の手順でセッション1の処理をする。すなわち、制御部160は、まず、初期電流値の0.5mAを初期刺激電流値として設定し、下降間隔として0.05mAずつ刺激電流値を減少させながら最小電流値を測定する。この測定で、セッション1の最小電流値として、0.25mAが測定される。
【0064】
次にセッション2の処理をする。すなわち、制御部160は、次回の刺激電流値として0.35mAを初期刺激電流値として設定し、下降間隔として0.05mAずつ刺激電流値を低下させながら最小電流値を測定する。この測定で、セッション2の最小電流値として、0.30mAが測定される。
【0065】
次に、制御部160は、記憶部165に記憶されている既定の有効セッション数が2であるので、セッション1とセッション2で測定された最小電流値が有効電流範囲の0.1mA以内であるか否かを判断する。セッション1とセッション2で測定された最小電流値は、0.25mAと0.30mAであり、これらの最小電流値は有効電流範囲の0.1mA以内であるので、制御部160は、セッション3の測定処理は行わずに、有効電流範囲内の最小電流値の内で最小の0.25mAを感覚閾値として表示部154に表示させる。このように、有効電流範囲内の最小電流値が有効セッション数以上ある場合に、以降のセッションの実施を停止すると、検査時間が短く終わる。
【0066】
以上に説明した、本実施形態の神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムによれば、スタートスイッチ152を押すだけで、制御部160が自動的に感覚閾値を測定するので、検査者の手間がかからなくなる。また、電気刺激を与えるタイミングが検査者に依らないので、再現性のある測定結果を得ることができる。
【0067】
以上、本発明の神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムを、実施形態を例示して説明した。しかし、本発明の神経刺激測定装置、神経刺激測定方法および神経刺激測定プログラムの技術的範囲は、以上の実施形態の記載に限定されるものではなく、当業者がこの技術的範囲内において改変できるあらゆる実施形態が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
100 神経刺激測定装置、
110 電極部、
115 コード、
120 応答部、
122 応答ボタン、
125 コード、
150 本体部、
152 スタートスイッチ、
154 表示部、
156 入力部、
160 制御部、
162 CPU、
164 RAM、
165 記憶部、
166 ROM、
168 外部I/F。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10