(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20230515BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230515BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230515BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20230515BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/39
A61Q1/14
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019097774
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石井 さやか
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2019-014709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/86
A61K 8/34
A61K 8/39
A61Q 1/14
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分C、下記成分D
、下記成分E
、および下記成分Fを含有し、
前記成分Aと前記成分Cとの質量比(成分A/成分C)が0.8~3.5である、皮膚化粧料であって、
前記皮膚化粧料100質量%中の前記成分Bの含有量は、0.03質量%以上
、0.2質量%以下であり、
前記皮膚化粧料100質量%中の前記成分Aの含有量は、2.0質量%以上、5.0質量%以下であり、
前記皮膚化粧料100質量%中の前記成分Cの含有量は、0.5質量%以上、3.0質量%以下であり、
前記皮膚化粧料100質量%中の前記成分Dの含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以下であ
り、
前記皮膚化粧料100質量%中の前記成分Fの含有量は、3.0質量%以上、15.0質量%以下である、皮膚化粧料。
成分A:ポリグリセリン脂肪酸エステル
成分B:シメン-5-オール
成分C:ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル
成分D:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
成分E:水
成分F:ジプロピレングリコール
【請求項2】
炭化水素油、シリコーン油、エステル油、および植物油の合計含有量が、0.1質量%以下である、請求項
1に記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
全界面活性剤の合計含有量が、10.0質量%以下である、請求項1
または2に記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
前記成分A、前記成分C、および前記成分D以外のノニオン界面活性剤の合計含有量が、1.0質量%以下である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレンジング化粧料として、洗浄成分であるノニオン界面活性剤を含有する皮膚化粧料が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、油脂汚れに対するクレンジング力に優れ、かつ使用後のべたつきの少ないクレンジング化粧料として、(A)水70~95重量%、(B)多価アルコール、(C)ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、(D)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、(E)ポリビニルピロリドン、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、コハク酸ジエトキシエチル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールからなる群から選ばれる1種以上を含有してなるクレンジング化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、洗浄成分であるノニオン界面活性剤と、殺菌成分であるシメン-5-オールとを混合して、殺菌効果を有する新たな皮膚化粧料の開発を試みたところ、当該皮膚化粧料では、低温にてシメン-5-オールが析出するという新規な課題が生じることを見出した。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、低温においてもシメン-5-オールの析出を抑制可能な皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、成分A(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、成分B(シメン-5-オール)、成分C(ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル)、成分D(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル)、および成分E(水)を含有し、かつ、上記成分Aと上記成分Cとの質量比が特定の値である皮膚化粧料であれば、成分Bの析出を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の皮膚化粧料は、以下の発明を包含する。
【0009】
(1)下記成分A、下記成分B、下記成分C、下記成分D、および下記成分Eを含有し、上記成分Aと上記成分Cとの質量比(成分A/成分C)が0.8~3.5である、皮膚化粧料。
成分A:ポリグリセリン脂肪酸エステル
成分B:シメン-5-オール
成分C:ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル
成分D:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
成分E:水。
【0010】
(2)さらに下記成分Fを含む、(1)に記載の皮膚化粧料。
成分F:ジプロピレングリコール。
【0011】
(3)炭化水素油、シリコーン油、エステル油、および植物油の合計含有量が、0.1質量%以下である、(1)または(2)に記載の皮膚化粧料。
【0012】
(4)全界面活性剤の合計含有量が、10.0質量%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【0013】
(5)上記成分A、上記成分C、および上記成分D以外のノニオン界面活性剤の合計含有量が、1.0質量%以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温においてもシメン-5-オールの析出を抑制可能な皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0016】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、皮膚化粧料全体の質量を100質量%とした値である。
【0017】
本発明の皮膚化粧料は、ポリグリセリン脂肪酸エステル;シメン-5-オール(換言すれば、イソプロピルメチルフェノール);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル;並びに、水を少なくとも含有する。本明細書においては、上記「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を「成分A」;上記「シメン-5-オール」を「成分B」;上記「ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル」を「成分C」;上記「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル」を「成分D」;上記「水」を「成分E」と称する場合がある。なお、本発明の皮膚化粧料では、成分Aと成分Cとの質量比(成分A/成分C)が0.8~3.5である。
【0018】
本発明の皮膚化粧料は、さらにジプロピレングリコールを含有していてもよい。本明細書においては、上記「ジプロピレングリコール」を「成分F」と称する場合がある。
【0019】
本発明の皮膚化粧料は、さらに上述した成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eおよび成分F以外の成分を含有していてもよい。本明細書では、当該成分を「任意成分」と称する場合がある。
【0020】
〔1.各成分〕
以下、本発明の皮膚化粧料に含まれる、各成分について説明する。
【0021】
[成分A:ポリグリセリン脂肪酸エステル]
成分Aは、ノニオン界面活性剤に分類されるものであって、皮膚化粧料において、洗浄剤成分として機能するものである。また、難溶性成分を可溶化させる成分としても機能する。
【0022】
成分Aとしては、例えば、モノステアリン酸ジグリセリル、モノカプリル酸トリグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリンモノ脂肪酸エステル;ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリンジ脂肪酸エステル;トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリントリ脂肪酸エステルが挙げられる。中でも、モノカプリル酸トリグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリルが好ましく、モノカプリル酸トリグリセリル及びモノラウリン酸デカグリセリルの併用が特に好ましい。
【0023】
成分AのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、特に限定されないが、例えば皮膚化粧料のクレンジング力及び製剤安定性を向上させる観点から、その下限値は、好ましくは9.0以上であり、より好ましくは10.0以上であり、さらに好ましくは13.0以上であり、その上限値は、好ましくは17.0以下であり、より好ましくは15.5以下である。本明細書において、上記HLBはグリフィン法により求めることができる。複数の成分Aを用いる場合のHLBは、各成分AのHLBの加重平均にて求めることができる。
【0024】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分Aの含有量は、クレンジング力や可溶化力の向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2.0質量%以上であり、皮膚化粧料の安定性、安全性、べたつき低減等の観点から、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以下である。なお、上述した成分Aの含有量は、本発明の皮膚化粧料中に含まれる全ての成分Aの合計量である。
【0025】
[成分B:シメン-5-オール]
成分Bは、殺菌剤に分類されるものであって、皮膚化粧料において、アクネケアなどを目的とした殺菌成分として機能するものである。
【0026】
成分B、シメン-5-オールである。
【0027】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分Bの含有量は、十分な殺菌効果を得る観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、製剤安定性等の観点から、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。なお、上述した成分Bの含有量は、本発明の皮膚化粧料中に含まれる全ての成分Bの合計量である。
【0028】
[成分C:ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル]
成分Cは、ノニオン界面活性剤に分類されるものであって、皮膚化粧料において、洗浄剤成分として機能するものである。また、難溶性成分を可溶化させる成分としても機能する。
【0029】
成分Cとしては、例えば、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル等が挙げられる。
【0030】
成分CのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、特に限定されないが、例えば皮膚化粧料のクレンジング力を向上させる観点から、その下限値は、好ましくは9.0以上であり、より好ましくは10.0以上であり、さらに好ましくは12.0以上であり、その上限値は、好ましくは17.0以下であり、より好ましくは15.5以下である。本明細書において、上記HLBはグリフィン法により求めることができる。複数の成分Cを用いる場合のHLBは、各成分CのHLBの加重平均にて求めることができる。
【0031】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分Cの含有量は、クレンジング力や可溶化力の向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、皮膚化粧料の安定性、安全性、べたつき低減等の観点から、好ましくは7.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下である。なお、上述した成分Cの含有量は、本発明の皮膚化粧料中に含まれる全ての成分Cの合計量である。
【0032】
[成分D:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル]
成分Dは、ノニオン界面活性剤に分類されるものであって、皮膚化粧料において、難溶性成分を可溶化させる成分であり、成分Bの析出抑制に寄与する成分として機能する。
【0033】
成分DのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、特に限定されないが、例えば可溶化力を向上させる観点から、その下限値は、好ましくは9.0以上であり、より好ましくは10.0以上であり、その上限値は、好ましくは17.0以下であり、より好ましくは15.5以下である。本明細書において、上記HLBはグリフィン法により求めることができる。複数の成分Dを用いる場合のHLBは、各成分DのHLBの加重平均にて求めることができる。
【0034】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分Dの含有量は、可溶化力の向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、皮膚化粧料の安定性、安全性、べたつき低減等の観点から、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。なお、上述した成分Dの含有量は、本発明の皮膚化粧料中に含まれる全ての成分Dの合計量である。
【0035】
[成分E:水]
成分Eは、水である。成分Eは特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分Eの含有量は、例えば、60.0~95.0質量%が好ましく、より好ましくは70.0~90.0質量%である。皮膚化粧料の用途に応じて、本発明の皮膚化粧料中の成分Eの量を設定すればよい。
【0036】
[成分F:ジプロピレングリコール(DPG)]
成分Fは、皮膚化粧料(より具体的に、成分A)の安定性をより一層向上させるためのものである。皮膚化粧料に成分Fを配合すると、(i)成分Aと水性溶媒との親和性が向上し、および/または、(ii)成分Aの親水基部分に溶媒和する水性成分が多くなり、ミセルの曲率が大きくなると推定される。そして、その結果、皮膚化粧料の安定性が向上すると推定される。
【0037】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分Fの含有量は、皮膚化粧料の安定性の観点から、好ましくは0.8質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは25.0質量%以下であり、より好ましくは20.0質量%以下であり、さらに好ましくは15.0質量%以下である。
【0038】
[成分Aと成分Cとの質量比(成分A/成分C)]
本発明の皮膚化粧料では、成分Aと成分Cとの質量比(成分A/成分C)が0.8~3.5であり、より好ましくは1.0~2.5である。上記範囲であれば、低温においても成分Bの析出を抑制することができる。
【0039】
[任意成分]
本発明の皮膚化粧料は、上記成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eおよび成分F以外の任意成分を含んでいてもよい。当該任意成分としては、界面活性剤(例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤);低級アルコール;多価アルコール;紫外線吸収剤;粉体;酸化防止剤;防腐剤(例えば、フェノキシエタノール);香料;着色剤;キレート剤;清涼剤;増粘剤;ビタミン類;中和剤;アミノ酸;美白剤;抗炎症剤;消臭剤;動植物抽出物;金属イオン封鎖剤を挙げることができる。
【0040】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の全界面活性剤の合計含有量(具体的に、成分A、成分C、成分D、および、これら以外の界面活性剤の合計含有量)は、使用後の肌のべたつきをより一層抑制する観点から、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。
【0041】
本発明の皮膚化粧料100質量%中の成分A、成分Cおよび成分D以外のノニオン界面活性剤の合計含有量は、製剤安定性をより一層向上する観点や使用後の肌のべたつきをより一層抑制する観点から、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0042】
製剤安定性をより一層向上する観点や使用後の肌のぬるつきをより一層抑制する観点から、本発明の皮膚化粧料は、油性成分(例えば、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、および植物油)を含まないか、極少量しか含まないことが好ましい。本発明の皮膚化粧料100質量%中の炭化水素油、シリコーン油、エステル油、および植物油の合計含有量は、好ましくは0.1質量%以下である。
【0043】
上述したように、本発明の皮膚化粧料は、防腐剤としてフェノキシエタノールを含んでいてもよい。フェノキシエタノールは、シメン-5-オールの析出を悪化させる成分の一つである。本発明であれば、皮膚化粧料にフェノキシエタノールが含まれている場合であっても、シメン-5-オールの析出を抑制することができる。なお、本発明の皮膚化粧料100質量%中のフェノキシエタノールの含有量は、0.05~3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0044】
本発明の化粧料は、上記任意成分として、皮膚化粧料のクレンジング力を向上させる観点から、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(例えば、PPG-14ジグリセリル:オキシプロピレンの平均付加モル数=14)を含有することができる。
【0045】
本発明の化粧料100質量%中のポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、保存安定性の観点から、好ましくは8.0質量%以下であり、より好ましくは6.0質量%以下であり、さらに好ましくは4.0質量%以下である。
【0046】
本発明の化粧料は、上記任意成分として、皮膚化粧料の安定性を向上させる観点から、ミリストイルグルタミン酸塩(例えば、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム)を含有することができる。ミリストイルグルタミン酸塩がミセルの界面(親水基部分)に配向して静電反発が大きくなることによって、ミセルの曲率が大きくなり、その結果、皮膚化粧料の安定性が向上すると推定される。
【0047】
本発明の皮膚化粧料100質量%中のミリストイルグルタミン酸塩の含有量は、皮膚化粧料の安定性の観点から、好ましくは0.06質量%以上であり、より好ましくは0.09質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
【0048】
〔2.剤型、製造方法および用途〕
本発明の皮膚化粧料の剤型としては、特に限定されないが、例えば、化粧水(ローション)、ジェル、ナチュラルスプレー、ロールオン、シート(ペーパー)などの種々の剤型が挙げられる。中でも、化粧水(ローション)がより好ましい。
【0049】
本発明の皮膚化粧料は、例えば、クレンジング化粧料、保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア用化粧料、アンチエージング化粧料(例えば、しわ抑制、たるみ抑制等を目的とする)等のスキンケア化粧料;スカルプケア化粧料(例えば、保湿、皮脂抑制等を目的とする);デオドラント化粧料;日焼け止め化粧料;シェービング化粧料;ボディ用洗浄料などであってもよい。中でも、本発明の皮膚化粧料は、クレンジング化粧料であることがより好ましい。本発明の皮膚化粧料は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【0050】
本発明の皮膚化粧料を適用する部位としては、特に限定されず、顔(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中、頭皮などが挙げられる。
【0051】
本発明の皮膚化粧料は、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばパドルミキサーを用いて攪拌することにより製造することができる。
【0052】
本発明の皮膚化粧料がクレンジング化粧料である場合、当該クレンジング化粧料は、メイク除去後に洗い流す使用方法でも、メイク除去後に洗い流さない使用方法(例えば、拭き取りなど)でも、共に好ましく用いることができる。上記クレンジング化粧料の使用方法は、特に限定されず、例えば、公知のクレンジング化粧料の使用方法が挙げられる。具体的には、例えば、上記クレンジング化粧料を手にとり直接皮膚上のメイクになじませてメイクを除去する方法;上記クレンジング化粧料をコットン等の布(織布、不織布など)に染み込ませて、その布により皮膚上のメイクを拭き取る方法などが挙げられる。さらに、上記クレンジング化粧料を予めシート基材に染み込ませたシート製品を作製しておき、当該シート製品によりメイクを拭き取る方法も挙げられる。メイクを除去した後の皮膚は、洗い流してもよいし、洗い流さなくてもよい。即ち、本発明の皮膚化粧料は、洗い流すクレンジング化粧料であってもよいし、洗い流さないクレンジング化粧料であってもよい。中でも、本発明の皮膚化粧料は、洗い流さずに使用するクレンジング化粧料(特に、拭き取り用のクレンジング化粧料)であることが好ましい。
【0053】
本発明の皮膚化粧料がクレンジング化粧料である場合、上記クレンジング化粧料を、シート基材に含浸することにより、クレンジング用のシート製品が得られる。即ち、上記シート製品は、上記シート基材と、上記シート基材に含浸された上記クレンジング化粧料とを少なくとも含む。上記シート製品は、上記シート基材および上記クレンジング化粧料以外の構成成分を含んでいてもよい。
【0054】
上記シート基材は、特に限定されず、上記クレンジング化粧料を含浸可能なシート状の支持体であってもよい。上記シート基材としては、織布または不織布が好ましい。上記シート基材は、積層体(即ち、積層シート)であってもよく、例えば、織布の積層体、不織布の積層体、または織布と不織布との積層体などであってもよい。上記シート基材は、使用感、および加工のし易さ等の観点から、不織布を含むシート基材であることが好ましく、より好ましくは不織布である。上記不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。
【0055】
上記織布、または不織布を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維、半天然繊維などが挙げられる。上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンターなどが挙げられる。上記合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)などが挙げられる。上記半天然繊維としては、レーヨン、アセテートなどが挙げられる。上記繊維は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、2種以上の上記繊維からなる混紡繊維を用いてもよい。
【0056】
上記シート基材の目付は、特に限定されないが、ふき心地の観点から、20~100g/m2が好ましく、より好ましくは25~80g/m2である。
【0057】
上記シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知の製造方法により製造することができる。また、上記シート基材としては市販品を用いることもできる。
【0058】
上記シート製品における、上記シート基材に対する含浸された上記クレンジング化粧料の質量割合は、特に限定されないが、上記シート基材1.0質量部に対して、上記クレンジング化粧料が1.0~10.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.5~7.0質量部である。
【0059】
上記シート製品の形状は、シート状である。これにより、皮膚(肌)を拭く使用形態での使用性に優れ、かつ、携帯性にも優れる。シートの平面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形(例えば、正方形、長方形等)、三角形等の多角形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形;キャラクターの形状などが挙げられる。中でも、生産性、使用性、および梱包性の観点からは、四角形が好ましい。本発明のシート製品には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部などの成型が施されていてもよい。上記シート製品のシートの片面の表面積は、特に限定されないが、使用性、携帯性、および包装性などの観点から、100~3000cm2が好ましく、より好ましくは150~1000cm2である。
【0060】
上記シート製品の使用方法は、特に限定されないが、当該シート製品により皮膚上のメイクを拭き取る方法が挙げられる。上記シート製品は、皮膚上を拭いて使用する、拭き取り用シート製品であることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例における配合量および含有量は、純分に換算した量(質量%)である。また、各実施例または比較例で調製した皮膚化粧料の全質量を100質量%とする。
【0062】
〔実施例1~9、比較例1~2〕
表1の組成にしたがって、常法にて各成分を混合および攪拌して、実施例1~9および比較例1~2の皮膚化粧料を調製した。
【0063】
表1に記載の主な成分の詳細は、以下の通りである。
・カプリル酸ポリグリセリル-3:Evonik Nutrition & Care GmbH社製、商品名「TEGO(R) Cosmo P 813」、HLB:11.1
・ラウリン酸ポリグリセリル-10:日光ケミカルズ社製、商品名「NIKKOL Decaglyn 1-L」、モノラウリン酸ポリグリセリル、HLB:17.1
・ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル:PEG-6(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ、HLB:14.5
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油:青木油脂工業社製、商品名「ブラウノン RCW-50」
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル:日光ケミカルズ社製、商品名「NIKKOL SG-DTD630」
・PPG-14ジグリセリル:坂本薬品工業社製、商品名「SY-DP14T」、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル
・N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム:味の素社製、商品名「アミソフトMS-11」
実施例1~3および比較例1~2では、成分Aと成分Cとの質量比(成分A/成分C)が、各々、3.2であった。一方、実施例4~9では、成分Aと成分Cとの質量比(成分A/成分C)が、各々、1.1であった。
【0064】
〔評価項目〕
作製した皮膚化粧料を50mLのガラス瓶(スクリュー管)に入れ、25℃の条件下または-3℃の条件下にて、1日間静置した。上記静置直後の皮膚化粧料入りガラス瓶を黒い背景の前に置き、外観を目視にて観察した(後述する表1の評価の欄の「安定性(25℃)」および「安定性(-3℃)」を参照)。
【0065】
また、作製直後の皮膚化粧料入りガラス瓶を黒い背景の前に置き、外観を目視にて観察した(後述する表1の評価の欄の「安定性(直後)」を参照)。
【0066】
観察結果を、以下の基準に従って評価した。
○:無色澄明である。
×:白濁である。
【0067】
【0068】
〔結果〕
実施例1~9と、比較例1~2との比較から、成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有し、かつ、成分Aと成分Cとの質量比(成分A/成分C)が0.8~3.5である皮膚化粧料であれば、常温のみならず低温においてもシメン-5-オールの析出を抑制できることが判る。
【0069】
〔処方例〕
〔処方例1:クレンジングローション〕
シメン-5-オール 0.1質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1質量%
ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル 2.0質量%
カプリル酸ポリグリセリル-3 0.8質量%
ラウリン酸ポリグリセリル-10 1.4質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%
ジプロピレングリコール 10.0質量%
ミリストイルグルタミン酸Na 0.2質量%
精製水 残部
N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩
0.05質量%
クエン酸 0.02質量%
クエン酸三ナトリウム 0.24質量%
エデト酸二ナトリウム 0.1質量%
グリセリン 5.0質量%
トリメチルグリシン 1.0質量%
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 0.1質量%
エタノール 5.0質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01質量%
合計 100.0質量%。
【0070】
〔処方例2:クレンジングローション〕
シメン-5-オール 0.1質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1質量%
ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル 2.0質量%
カプリル酸ポリグリセリル-3 0.8質量%
ラウリン酸ポリグリセリル-10 1.4質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
0.2質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%
ジプロピレングリコール 10.0質量%
ミリストイルグルタミン酸Na 0.2質量%
精製水 残部
N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩
0.05質量%
クエン酸 0.02質量%
クエン酸三ナトリウム 0.24質量%
エデト酸二ナトリウム 0.1質量%
グリセリン 5.0質量%
合計 100.0質量%。
【0071】
〔処方例3:クレンジングシート〕
<クレンジング化粧料>
シメン-5-オール 0.05質量%
ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル 1.0質量%
カプリル酸ポリグリセリル-3 1.2質量%
ラウリン酸ポリグリセリル-10 2.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%
パラオキシ安息香酸エステル 0.5質量%
ジプロピレングリコール 10.0質量%
ミリストイルグルタミン酸Na 0.1質量%
精製水 残部
クエン酸 0.02質量%
クエン酸三ナトリウム 0.2質量%
エデト酸二ナトリウム 0.1質量%
グリセリン 5.0質量%
エタノール 5.0質量%
香料 0.2質量%
合計 100.0質量%
<シート基材>
不織布(パルプ50%、レーヨン50%) 100.0質量%
シート基材1.0質量部に対して、クレンジング化粧料を4.0質量部含浸させた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、皮膚化粧料として広く利用することができ、例えばクレンジング化粧料として利用することができる。