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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】タービン排気室
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/30 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
F01D25/30 A
F01D25/30 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019147279
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028476
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】三井 博明
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071445(JP,A)
【文献】特開2013-174160(JP,A)
【文献】特開2006-329148(JP,A)
【文献】特開2018-115581(JP,A)
【文献】特許第5606373(JP,B2)
【文献】特許第5606473(JP,B2)
【文献】特開2019-120152(JP,A)
【文献】特開2017-061898(JP,A)
【文献】特開2015-194085(JP,A)
【文献】特開2006-307738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータを備える軸流タービンの最終段のタービン段落から流出した作動流体が通過するタービン排気室であって、
外側に凸状に湾曲した円弧状の壁部を有する第1のケーシング部および前記第1のケーシング部と接続された筒状の第2のケーシング部を備えるケーシングと、
前記ケーシング内における最終段のタービン段落の下流側に設けられ、筒状のガイドおよび前記ガイドの内側に設けられた筒状のコーンを有し、最終段のタービン段落を通過した作動流体を径方向外側に向かって排出する環状ディフューザと
を備え、
前記タービンロータの中心軸に垂直な断面で、かつ前記第1のケーシング部と前記第2のケーシング部の2つの接合点のそれぞれと、前記タービンロータの中心軸とを結ぶ2本の仮想直線を含む前記第1のケーシング部側の領域において、
周方向に形成され、前記ガイドの出口端を含んで構成される前記環状ディフューザの出口の通路面積をS1とし、
前記ガイドの出口端と、当該出口端から径方向の前記第1のケーシング部の内面との間の幅を有して周方向に形成される通路の通路面積をS2としたとき、
S1に対するS2の割合(S2/S1)が0.8以上1.6以下であり、かつ
前記ガイドの出口端における接線の前記タービンロータの中心軸方向に対する角度が45度以上120度以下であり、
前記ガイドの出口端と前記第1のケーシング部の内面との間に形成される前記通路よりも作動流体の流れ方向の下流側において、前記ガイドの前記環状ディフューザ側とは異なる前記ガイドの外側に前記通路を通過した作動流体が流動可能な空間が形成されていることを特徴とするタービン排気室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービン排気室に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などで用いられる蒸気タービンの熱効率の向上は、エネルギ資源の有効利用や、二酸化炭素(CO)排出量の削減につながる重要な課題となっている。そのためには、様々な内部損失を低減することが必要である。
【0003】
蒸気タービンの内部損失には、翼の形状に起因するプロファイル損失、蒸気の二次流れ損失、蒸気の漏洩損失、蒸気の湿り損失などに基づくタービン翼列損失、蒸気弁やクロスオーバー管に代表される翼列以外の通路における通路部損失、タービン段落の最終段の下流におけるタービン排気損失などがある。
【0004】
これら損失の中で、タービン排気損失は、全内部損失の10~20%を占める。タービン排気損失は、具体的には、タービン段落の最終段出口から復水器入口までの間で発生する損失である。タービン排気損失は、リービング損失、フード損失、ターンナップ損失などにさらに分類される。
【0005】
このうち、フード損失は、排気室内の圧力損失である。フード損失は、排気室の形式、形状、サイズに依存する。
【0006】
一般に、圧力損失は、蒸気の流速の二乗に比例して大きくなる。そのため、フード損失を低減するためには、排気室内の流速を低減する必要がある。これには、排気室の大型化が効果的である。しかしながら、製造コストや建屋サイズの観点から、排気室のサイズは小さい方が望ましい。そこで、排気室内にディフューザ構造を設けて、排気室の大型化を抑制しつつ蒸気の流速を低減する方法が検討されている。
【0007】
図6は、従来の下方排気型の排気室を備えた複流排気型(ダブルフロー型)の低圧タービン200の鉛直方向の子午断面を示す図である。
【0008】
図6に示すように、最終段のタービン段落の動翼210を通過した蒸気は、スチームガイド220とベアリングコーン221とで構成される環状ディフューザ222に導かれる。拡大流路である環状ディフューザ222に導かれた蒸気は、減速されて静圧が回復する。そして、環状ディフューザに導かれた蒸気は、径方向外側に導かれ、外部ケーシング230で囲まれた空間223に放出される。
【0009】
なお、径方向とは、タービンロータ中心軸方向(以下、軸方向という。)に垂直な方向である。径方向外側とは、径方向で、かつタービンロータ中心軸から離れる側をいう。
【0010】
空間223に放出された蒸気は、外部ケーシング230などによって流れが転向され、最終的に蒸気タービンの下方に設置された復水器に導かれる。
【0011】
このような低圧タービン200において、排気室内での圧力損失(静圧損失)を低減するためには、環状ディフューザ222で流れを減速させ、十分に静圧を回復させることが重要である。
【0012】
このような従来の低圧タービン200の排気室では、フード損失を低減するために、スチームガイド220の入口における流れの剥離を抑制することに重点が置かれていた。また、従来の排気室では、スチームガイド220の下流端の径方向外側に向かう広がりを周方向に不均一とすることでフード損失の低減を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2010-216321号公報
【文献】特開2018-115581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記したように、従来の低圧タービン200の排気室では、環状ディフューザ222内における圧力損失を低減することが主に検討されている。
【0015】
ここで、図6に示すように、環状ディフューザ222の出口224は、スチームガイド220の出口端220aと、この出口端220aから軸方向の外部ケーシング230における側壁231の内面231aとの間の幅を有して周方向に亘って形成される通路で構成される。なお、周方向とは、タービンロータ中心軸を中心する周方向を意味する。
【0016】
また、上半側の空間223において、環状ディフューザ222の出口224を流出した蒸気の流れは、図6に示すように、径方向から軸方向にほぼ90度転向される。そして、転向された蒸気は、通路225を通過する。
【0017】
この通路225は、スチームガイド220の出口端220aと、この出口端220aから径方向外側の外部ケーシング230における上壁232の内面232aとの間の幅を有して周方向に形成される通路である。
【0018】
ここで、スチームガイド220の出口端220aにおける接線は、軸方向に対して角度αを有している。なお、この接線は、図6に示すように、出口端220aにおけるスチームガイド220の内面(環状ディフューザ222側の面)での接線である。
【0019】
環状ディフューザ222の出口224において、十分に静圧が回復されていても、出口224の通路面積よりも通路225の通路面積が小さい場合には、流れは加速される。これによって圧力損失が増加する。
【0020】
また、出口224の通路面積よりも通路225の通路面積が大きい場合には、軸方向へ転向された流れは、径方向外側に偏る。そして、径方向外側に高速領域が形成され、この高速領域よりも内周側に低速領域が形成される。これによって、図6に示すように、通路225を通過したが流れが通路225側に逆流する流れ場が形成される。この逆流240によって、復水器側に向かって蒸気がスムーズに流れにくくなる。そして、圧力損失が増加してフード損失は増加する。
【0021】
また、角度αが小さい場合に、軸方向へ転向された流れの径方向外側への偏流が顕著になり、逆流240による圧力損失が増加する。
【0022】
本発明が解決しようとする課題は、環状ディフューザよりも下流における流れの圧力損失を低減することができるタービン排気室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
実施形態のタービン排気室は、タービンロータを備える軸流タービンの最終段のタービン段落から流出した作動流体が通過する。タービン排気室は、外側に凸状に湾曲した円弧状の壁部を有する第1のケーシング部および前記第1のケーシング部と接続された筒状の第2のケーシング部を備えるケーシングと、前記ケーシング内における最終段のタービン段落の下流側に設けられ、筒状のガイドおよび前記ガイドの内側に設けられた筒状のコーンを有し、最終段のタービン段落を通過した作動流体を径方向外側に向かって排出する環状ディフューザとを備える。
【0024】
前記タービンロータの中心軸に垂直な断面で、かつ前記第1のケーシング部と前記第2のケーシング部の2つの接合点のそれぞれと、前記タービンロータの中心軸とを結ぶ2本の仮想直線を含む前記第1のケーシング部側の領域において、周方向に形成され、前記ガイドの出口端を含んで構成される前記環状ディフューザの出口の通路面積をS1とし、前記ガイドの出口端と、当該出口端から径方向の前記第1のケーシング部の内面との間の幅を有して周方向に形成される通路の通路面積をS2としたとき、S1に対するS2の割合(S2/S1)が0.8以上1.6以下であり、かつ前記ガイドの出口端における接線の前記タービンロータの中心軸方向に対する角度が45度以上120度以下であり、前記ガイドの出口端と前記第1のケーシング部の内面との間に形成される前記通路よりも作動流体の流れ方向の下流側において、前記ガイドの前記環状ディフューザ側とは異なる前記ガイドの外側に前記通路を通過した作動流体が流動可能な空間が形成されている

【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態の排気室を備える蒸気タービンの鉛直方向の子午断面を示す図である。
図2】実施の形態の排気室の鉛直方向の子午断面を示す図である。
図3図2のA-A断面を示す断面図である。
図4】スチームガイドの出口端における接線の軸方向に対する角度とフード損失との関係を示した図である。
図5】環状通路および環状ディフューザの出口における通路面積の比(S2/S1)とフード損失との関係を示した図である。
図6】従来の下方排気型の排気室を備えた複流排気型の低圧タービンの鉛直方向の子午断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、実施の形態の排気室30を備える蒸気タービン1の鉛直方向の子午断面を示す図である。なお、ここでは、軸流タービンとして蒸気タービンを例示する。また、蒸気タービンとして、下方排気型の排気室を備えた複流排気型の低圧タービンを例示して説明する。そのため、以下の実施の形態では、作動流体は蒸気である。
【0028】
図1に示すように、蒸気タービン1において、外部ケーシング10内には、内部ケーシング11が備えられている。内部ケーシング11内には、タービンロータ12が貫設されている。このタービンロータ12には、周方向に亘って径方向外側に突出するロータディスク13が形成されている。このロータディスク13は、軸方向(タービンロータ中心軸方向)に複数段形成されている。
【0029】
タービンロータ12のロータディスク13には、周方向に複数の動翼14が植設され、動翼翼列を構成している。この動翼翼列は、軸方向に複数段備えられている。タービンロータ12は、ロータ軸受15によって回転可能に支持されている。
【0030】
内部ケーシング11の内側には、ダイアフラム外輪16とダイアフラム内輪17とが設けられている。ダイアフラム外輪16とダイアフラム内輪17との間には、周方向に複数の静翼18が配設され、静翼翼列を構成している。
【0031】
この静翼翼列は、軸方向に動翼翼列と交互になるように配置されている。静翼翼列と、この静翼翼列の直下流の動翼翼列とで一つのタービン段落を構成する。なお、ここでは、最終段のタービン段落(以下、最終タービン段落という。)に設けられた動翼を最終段動翼14aとして示している。最終タービン段落は、排気室30に流入する前に通過する最終のタービン段落である。
【0032】
蒸気タービン1の中央には、クロスオーバー管19からの蒸気が導入される吸気室20を備えている。この吸気室20から左右のタービン段落に蒸気を分配して導入する。
【0033】
次に、最終タービン段落を通過した蒸気が流入する排気室30について説明する。この排気室30は、タービン排気室として機能する。
【0034】
図2は、実施の形態の排気室30の鉛直方向の子午断面を示す図である。図3は、図2のA-A断面を示す断面図である。この図3は、タービンロータ中心軸O(以下、中心軸Oという。)に垂直な排気室30の断面をスチームガイド60の下流側から見たときの断面図である。なお、図3では、便宜上、構成の一部を省略して示している。
【0035】
排気室30は、図2に示すように、排気室30の外郭を構成するケーシング40を備える。なお、ここでは、ケーシング40は、図1に示した蒸気タービン1の外部ケーシング10としても機能している。そこで、以下、ケーシング40を外部ケーシング10として説明する。
【0036】
排気室30の外郭を構成する外部ケーシング10は、図3に示す断面において、外側に凸状に湾曲した円弧状の壁部を有する円弧状ケーシング部41と、この円弧状ケーシング部41と接続された筒状ケーシング部42を備える。なお、円弧状ケーシング部41は、第1のケーシング部として機能し、筒状ケーシング部42は、第2のケーシング部として機能する。
【0037】
ここでは、円弧状ケーシング部41は、上に凸状に湾曲する円弧状の壁部を有する。また、筒状ケーシング部42は、円弧状ケーシング部41の下方に接続されている。
【0038】
なお、図3に示す断面において、円弧状ケーシング部41の形状は、中心軸Oを中心とした円弧に限られない。円弧状ケーシング部41は、図3に示すように、一部が直線状となっていてもよい。
【0039】
ここで、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接続部を図3に示す断面において接続点43、44とする。なお、接続点43、44は接合点として機能する。
【0040】
円弧状ケーシング部41の断面形状は、外側に凸状に湾曲した円弧形状である。円弧状ケーシング部41は、この断面形状が中心軸Oに沿った方向(紙面に垂直な方向)に延設された形体である。
【0041】
筒状ケーシング部42は、径方向の端部が開口した筒体である。図3に示す断面において、筒状ケーシング部42の2つの側壁42a、42bは、例えば、鉛直方向に直線状に伸びている。筒状ケーシング部42は、図3に示す断面形状が中心軸Oに沿った方向(紙面に垂直な方向)に延設された形体である。筒状ケーシング部42を構成する筒体は、円弧状ケーシング部41側の面およびこの円弧状ケーシング部41側の面に対向する面が開口された直方体や立方体などの箱体である。
【0042】
なお、円弧状ケーシング部41および筒状ケーシング部42の軸方向の両端は、壁部によって閉じられている。
【0043】
ここで、図3に示す断面において、接続点43と中心軸Oとを結ぶ仮想直線を仮想直線L1といい、接続点44と中心軸Oとを結ぶ仮想直線を仮想直線L2という。
【0044】
なお、接続点43および接続点44とは、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接合部の内面側(外部ケーシング10の内面側)の端点である。
【0045】
図3に示すように、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接続点43、44は、例えば、中心軸Oを通る水平直線よりも円弧状ケーシング部41側に位置している。ここでは、接続点43、44は、中心軸Oを通る水平直線よりも上方側に位置している。
【0046】
そのため、図3に示す断面において、仮想直線L1および仮想直線L2は、中心軸Oから円弧状ケーシング部41側に傾いて伸びている。すなわち、仮想直線L1は、中心軸Oから接続点43側(図3において左側)に延びる水平直線を中心軸Oを中心に時計回りに所定の角度回転させた直線である。仮想直線L2は、中心軸Oから接続点44側(図3において右側)に延びる水平直線を中心軸Oを中心に反時計回りに所定の角度回転させた直線である。
【0047】
ここで、仮想直線L1および仮想直線L2を含む円弧状ケーシング部41側の領域を便宜上、円弧状ケーシング部側領域という。
【0048】
排気室30は、図2に示すように、最終タービン段落を通過した蒸気が流入する環状ディフューザ50と、環状ディフューザ50から排出された蒸気を排気室30の出口31に導く排気通路80とを備える。なお、排気室30の出口31は、例えば、開口としても、複数の開口部を有する平板部材で構成されてもよい。
【0049】
なお、排気室30の出口31の下流側には、例えば、復水器(図示しない)が備えられる。ここで示した実施の形態では、排気室30の出口31の下方に、例えば、復水器(図示しない)が備えられる。
【0050】
環状ディフューザ50は、最終タービン段落を通過した蒸気を径方向外側に向かって排出する。環状ディフューザ50は、筒状のスチームガイド60およびこのスチームガイド60の内側に設けられた筒状のベアリングコーン70によって形成された環状の通路である。すなわち、環状ディフューザ50は、スチームガイド60とベアリングコーン70との間に形成される環状の流路である。なお、スチームガイド60は、ガイドとして機能し、ベアリングコーン70は、コーンとして機能する。
【0051】
ベアリングコーン70の上流端70aは、最終段動翼14aが植設されたロータディスク13よりも若干下流側に位置する。ベアリングコーン70は、下流に行くに伴って径方向外側に湾曲する。すなわち、ベアリングコーン70は、下流側に向けてラッパ状に拡開する拡大筒状に構成されている。ベアリングコーン70の下流端70bは、外部ケーシング10の下流壁45に接している。なお、ベアリングコーン70の内部には、例えば、ロータ軸受15などが配置されている。
【0052】
ここで、スチームガイド60、ベアリングコーン70は、上下に2つ割り構造で構成されている。スチームガイド60、ベアリングコーン70は、例えば、中心軸Oを含む水平面で上下に2分割されている。
【0053】
例えば、上半側スチームガイドおよび下半側スチームガイドによって筒状のスチームガイド60が構成される。同様に、上半側ベアリングコーンおよび下半側ベアリングコーンによって筒状のベアリングコーン70が構成される。
【0054】
なお、上半側スチームガイドおよび下半側スチームガイドは、例えば、同じ形状で構成される。上半側ベアリングコーンおよび下半側ベアリングコーンは、例えば、同じ形状で構成される。
【0055】
スチームガイド60の上流端60aは、最終段動翼14aを包囲するダイアフラム外輪16の下流端16aに接続されている。スチームガイド60は、下流に行くに伴って径方向外側に湾曲する。
【0056】
すなわち、スチームガイド60は、下流側に向けてラッパ状に拡開する拡大筒状に構成されている。換言すると、スチームガイド60は、タービン排気方向でかつ軸方向に行くに伴い、径方向外側に広がりながらラッパ状に拡大する。
【0057】
スチームガイド60の出口端60bにおける接線Mの軸方向に対する角度θは、45度以上に設定される。ここで、角度θを具体的に説明する。出口端60bの内周側(環状ディフューザ50としての通路側)の端部を内周端部60cとする。
【0058】
また、内周端部60cから下流壁45側へ延びる水平線をNとし、内周端部60cにおける接線をMとする。なお、換言すると、水平線Nは、軸方向に延びる線である。この場合、角度θは、水平線Nから接線Mまでの反時計回りの角度である。
【0059】
スチームガイド60の出口端60bは、例えば、周方向に亘って角度θを有して形成されている。
【0060】
ここで、図3に示すように、円弧状ケーシング部側領域において、スチームガイド60の出口端60bと、この出口端60bから径方向の外部ケーシング10の内面46との間の幅W1を有して周方向に形成される通路を通路90とする。なお、図3では、通路90は、一点鎖線の斜線で示されている。
【0061】
通路90は、図3に示すように、スチームガイド60の出口端60bと外部ケーシング10の内面46との間に周方向に形成される略環状の通路の一部で構成される。
【0062】
なお、円弧状ケーシング部側領域において、図3に示すように、円弧状ケーシング部41の一部が直線状となっている場合、幅W1は、周方向位置によって異なることがある。
【0063】
ここで、角度θを45度以上に設定することで、円弧状ケーシング部側領域において、環状ディフューザ50を通過した後の通路90側への流れの転向は、スムーズに行われる。これによって、排気通路80における圧力損失(フード損失)を低減することができる。
【0064】
また、角度θを周方向に亘って45度以上に設定することで、円弧状ケーシング部側領域の他の領域においても、環状ディフューザ50を通過した後の通路90側への流れの転向は、スムーズに行われる。なお、円弧状ケーシング部側領域の他の領域とは、仮想直線L1および仮想直線L2よりも下方の領域である。
【0065】
ここで、角度θを45度より大きく設定することは、環状ディフューザ50の出口から流出する際、軸方向の速度成分を小さくする。これによって、環状ディフューザ50を通過した後の通路90側への流れの転向をよりスムーズに行うことができる。この観点から、角度θは、70度以上に設定されることがより好ましい。
【0066】
角度θが90度を越えるときには、スチームガイド60の出口端60b側は、外部ケーシング10の下流壁45側とは逆側に反り返る。スチームガイド60において角度θが90度を越える部位では、スチームガイド60に流れを完全に沿わせることは難しい。しかしながら、スチームガイド60の出口端60bの形状は、環状ディフューザ50の出口51から通路90への流れに沿った形状である。そのため、角度θが90度を越えることは、圧力損失を増大する要因とはならない。
【0067】
しかしながら、製作上の観点から、角度θの上限を120度程度とすることが好ましい。なお、角度θを120度を超える範囲に設定しても、さらなる圧力損失を低減する効果は得られない。
【0068】
そこで、角度θは、45度以上120度以下に設定されることが好ましい。また、角度θは、60度以上100度以下に設定されることがより好ましい。さらに、角度θは、70度以上90度以下に設定されることがさらに好ましい。
【0069】
ここで、円弧状ケーシング部側領域において、周方向に形成される環状ディフューザ50の出口51の通路面積をS1とし、通路90の通路面積をS2とする。
【0070】
環状ディフューザ50の出口51は、例えば、図2に示すように、スチームガイド60の出口端60bの内周端部60cと、この内周端部60cから軸方向の外部ケーシング10の下流壁45の内面45aとの間の幅W2を有して周方向に亘って形成される通路で構成される。すなわち、出口51における通路の形状は、円筒側面の形状となる。
【0071】
ここで、図2においては、環状ディフューザ50の出口51が、スチームガイド60の内周端部60cと、下流壁45の内面45aとの間に形成される一例を示している。例えば、ベアリングコーン70の下流端70bがスチームガイド60の内周端部60cと同一水平面上まで延設されている場合には、環状ディフューザ50の出口51は、内周端部60cと、ベアリングコーン70の下流端70bの内面(環状ディフューザ50としての通路側)との間に形成される。
【0072】
この場合、環状ディフューザ50の出口51は、内周端部60cと、この内周端部60cから軸方向のベアリングコーン70の下流端70bの内面との間の幅W2を有して周方向に亘って形成される通路で構成される。
【0073】
上記した通路面積S1は、周方向に形成される出口51のうち、円弧状ケーシング部側領域に位置する出口51の通路面積である。なお、図3に示す断面において、仮想直線L1とスチームガイド60の出口端60bとが交わる点をPとし、仮想直線L2とスチームガイド60の出口端60bとが交わる点をQとしたとき、円弧PQ(円弧状ケーシング部41側の円弧)が円弧状ケーシング部側領域における出口51となる。
【0074】
円弧状ケーシング部側領域において、通路90および環状ディフューザ50の出口51は、通路面積S1に対する通路面積S2の割合(S2/S1)が0.8以上1.6以下になるように設定されている。
【0075】
ここで、円弧状ケーシング部側領域において、出口51から流出して通路90側へ転向された蒸気は、径方向外側に偏って流れる。すなわち、通路90側へ向かう流れの主流は、円弧状ケーシング部41の内面46側に偏る。この偏流によって、径方向外側の蒸気流量が多くなる。
【0076】
そのため、S2/S1が1.0未満であっても0.8以上であれば、絞りの作用は働かず、転向した流れは、通路90において著しく加速されることはない。これによって、S2/S1が1未満であっても0.8以上の場合、加速によって生じる圧力損失を抑制できる。
【0077】
一方、S2/S1が0.8を下回ると、出口51から通路90への通路面積の減少が大きく、転向した流れが加速される。そのため、圧力損失が増加してフード損失は増加する。
【0078】
このことから、S2/S1の下限値は、0.8以上に設定されている。
【0079】
S2/S1が1.0以上の場合、出口51から通路90への通路面積の減少はない。しかしながら、S2/S1が1.6を超えると、径方向外側に偏って流れる、通路90側へ転向された蒸気の流れ場において、内周側(径方向内側)に低速領域が形成される。
【0080】
これによって、前述した図6に示した逆流240を形成する流れ場と同様に、通路90を通過した流れが通路90側に逆流する流れ場が形成される。この逆流によって、復水器側に向かって蒸気がスムーズに流れにくくなる。これよって、圧力損失が増加してフード損失は増加する。
【0081】
このことから、S2/S1の上限値は、1.6以下に設定されている。
【0082】
したがって、S2/S1は、0.8以上1.6以下に設定されている。ここで、フード損失をより減少させる観点から、この範囲内でもS2/S1は、1.0以上1.2以下に設定されることがより好ましい。
【0083】
ここで、蒸気タービン1および排気室30にける蒸気の流れについて、図1図3を参照して説明する。
【0084】
図1に示すように、クロスオーバー管19を経て蒸気タービン1内の吸気室20に流入した蒸気は、左右のタービン段落に分岐して流れる。そして、各タービン段落の静翼18、動翼14を備える蒸気流路を膨張仕事をしながら通過し、タービンロータ12を回転させる。最終タービン段落を通過した蒸気は、環状ディフューザ50内に流入する。
【0085】
図2および図3に示すように、環状ディフューザ50内に流入した蒸気は、その流れ方向が径方向外側に転向されながら出口51に向かって流れる。この際、蒸気の流れは、減速され、静圧が回復される。そして、蒸気は、径方向外側に向かって出口51から排気通路80内に流出する。
【0086】
ここで、スチームガイド60の出口端60bにおける接線Mの軸方向に対する角度θは、前述した範囲に設定されている。そのため、出口51を流出した作動流体は、スムーズに通路90側へ転向される。これによって、通路90側へ転向される際の圧力損失は、低減される。
【0087】
例えば、円弧状ケーシング部側領域において、出口51から流出した作動流体は、その流れ方向が通路90側へ転向されるとともに、下方に転向される。そして、流れ方向が下方に転向された作動流体は、排気室30の出口31に向かって流れる。
【0088】
ここで、円弧状ケーシング部側領域において、通路90および環状ディフューザ50の出口51における通路面積の比(S2/S1)は、前述した範囲に設定されている。そのため、流れが加速されることなく、スムーズに流れる。これによって、作動流体が排気通路80を流れる際に生じる圧力損失を抑制できる。さらに、通路90を通過した流れの通路90側への逆流は生じない。
【0089】
一方、下半側の出口51から流出した作動流体は、その流れ方向が下方に転向される。そして、流れ方向が下方に転向された作動流体は、排気室30の出口31に向かって流れる。
【0090】
排気室30の出口31から排出された作動流体は、例えば、復水器(図示しない)内に流入する。
【0091】
(フード損失の評価)
図4は、スチームガイド60の出口端60bにおける接線Mの軸方向に対する角度θとフード損失との関係を示した図である。図4において、横軸は角度θであり、縦軸はフード損失を示す。なお、図4に示された結果は、通路90および環状ディフューザ50の出口51における通路面積の比(S2/S1)を1.0として数値解析によって得られた。
【0092】
ここで、円弧状ケーシング部側領域において、環状ディフューザ50の出口51よりも下流において生じるフード損失が、性能上の観点から許容できる最大値となる点を閾値としている。
【0093】
図4に示すように、フード損失は、角度θの増加に伴って小さくなる。そして、フード損失は、角度θが45度以上で閾値以下となる。フード損失は、角度θが70度以上でほぼ一定となる。そして、フード損失は、角度θが120度でもその一定の値が維持されている。
【0094】
図4に示された結果から、フード損失は、角度θが45度以上において閾値以下の小さな値に抑えられていることがわかる。また、その小さな値は、角度θが120度においても維持されていることがわかる。
【0095】
次に、図5は、通路90および環状ディフューザ50の出口51における通路面積の比(S2/S1)とフード損失との関係を示した図である。図5において、横軸はS2/S1であり、縦軸はフード損失を示す。なお、図5に示された結果は、スチームガイド60の出口端60bにおける接線Mの軸方向に対する角度θを70度として数値解析によって得られた。なお、閾値の定義は、図4における閾値の定義と同じである。
【0096】
図5に示すように、フード損失は、S2/S1の増加に伴って、S2/S1が1.1まで減少し、S2/S1が1.1を超えると緩やかに増加する。フード損失は、S2/S1が0.8以上1.6以下で閾値以下となる。フード損失は、S2/S1が1.0以上1.2以下で小さい値を示している。
【0097】
図4に示された結果から、フード損失は、S2/S1が0.8以上1.6以下の範囲で閾値以下の小さな値に抑えられていることがわかる。
【0098】
(その他の実施の形態)
上記した実施の形態では、図3の断面に示すように、仮想直線L1および仮想直線L2が中心軸Oから円弧状ケーシング部41側に傾いて伸びる一例を示した。すなわち、上記した実施の形態では、接続点43、44が中心軸Oを通る水平直線よりも上方側に位置する一例を示した。そして、上記した実施の形態では、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接続点43、44が中心軸Oを通る水平直線よりも円弧状ケーシング部41側に位置する一例を示した。
【0099】
しかしながら、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接続点43、44の位置は、この構成に限られるものではない。
【0100】
例えば、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接続点43、44は、中心軸Oを通る水平直線上にあってもよい。この場合、図3に示す断面において、接続点43と中心軸Oとを結ぶ仮想直線L1および接続点44と中心軸Oとを結ぶ仮想直線L2は、それぞれ中心軸Oを通る同一直線上にある。
【0101】
また、接続点43、44は、中心軸Oを通る水平直線よりも下方側に位置してもよい。この場合、図3に示す断面において、円弧状ケーシング部41と筒状ケーシング部42との接続点43、44は、中心軸Oを通る水平直線よりも筒状ケーシング部42側に位置している。
【0102】
この場合、図3に示す断面において、仮想直線L1および仮想直線L2は、中心軸Oから筒状ケーシング部42側に傾いて伸びている。すなわち、仮想直線L1は、中心軸Oから接続点43側(図3において左側)に延びる水平直線を中心軸Oを中心に反時計回りに所定の角度回転させた直線となる。仮想直線L2は、中心軸Oから接続点44側(図3において右側)に延びる水平直線を中心軸Oを中心に時計回りに所定の角度回転させた直線となる。
【0103】
上記した他の実施の形態においても、円弧状ケーシング部側領域において、前述した通路面積S1に対する通路面積S2の割合(S2/S1)の関係を満たすように構成されている。さらに、スチームガイド60の出口端60bは、前述した角度θを満たすように構成されている。
【0104】
なお、上記した実施の形態では、蒸気タービン1として、下方排気型の排気室を備えた複流排気型の低圧タービンを例示して説明したが、本実施の形態は、例えば、単流形の低圧タービンに適用することもできる。また、実施の形態の排気室30は、低圧の蒸気タービンの排気室に限らず、高圧または中圧の蒸気タービンの排気室に適用することができる。
【0105】
以上説明した実施形態によれば、環状ディフューザよりも下流における流れの圧力損失を低減することが可能となる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
10…外部ケーシング、11…内部ケーシング、12…タービンロータ、13…ロータディスク、14…動翼、14a…最終段動翼、15…ロータ軸受、16…ダイアフラム外輪、16a…下流端、17…ダイアフラム内輪、18…静翼、19…クロスオーバー管、20…吸気室、30…排気室、31、51…出口、40…ケーシング、41…円弧状ケーシング部、42…筒状ケーシング部、42a、42b…側壁、43、44…接続点、45…下流壁、45a、46…内面、50…環状ディフューザ、60…スチームガイド、60a、70a…上流端、60b…出口端、60c…内周端部、70…ベアリングコーン、70b…下流端、80…排気通路、90…環状通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6