(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20230515BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20230515BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20230515BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20230515BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230515BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2019159799
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
(72)【発明者】
【氏名】高田 典子
(72)【発明者】
【氏名】半田 優介
(72)【発明者】
【氏名】北村 英夫
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176027(JP,A)
【文献】特開2005-016819(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192381(WO,A1)
【文献】特開2017-122515(JP,A)
【文献】特開2012-207874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/62
B01D 53/74-43/85
B01D 53/96
B01J 19/00-19/04
C02F 1/20- 1/26
C01B 32/50
F28D 7/16
F28F 13/02
F28F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収部排出ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記吸収液から放散された前記二酸化炭素を含む再生部排出ガスとを排出する再生部とを備え、
前記再生部は、
前記吸収部から排出された前記吸収液を収容する容器と、
前記容器内に設けられ
、第1端から第2端へと延びる形状を有する加熱部と、
前記容器内の前記吸収液が通過する1つ以上の開口部を有し、前記容器内において前記加熱部の上方に設けられた仕切り板と
、
前記加熱部の前記第2端に対向する位置に設けられ、前記仕切り板と結合されており、前記容器内を前記第1端側から前記第2端側へと流れる前記吸収液の流れの向きを変える邪魔板とを備え、
前記容器は、前記吸収部から排出された前記吸収液を前記容器内に供給する吸収液供給口と、前記仕切り板の前記開口部を通過した前記吸収液を前記容器外に排出する吸収液排出口と、前記容器外にガスを排出するガス排出口とを備え、
前記再生部は、前記仕切り板が前記吸収液の液面下にある状態で前記吸収液を前記加熱部により加熱することで、
前記吸収液が上昇流により前記液面に向かう流れが前記容器内で形成されるが前記仕切り板により前記流れが変化し、かつ、前記容器内で前記吸収液供給口から前記吸収液排出口に向かう前記吸収液の流れが形成され、かつ、前記容器内で前記吸収液が前記第1端から前記第2端側へと渦巻き状に流れて、前記容器内の前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ
、
前記容器は、前記二酸化炭素を放散し、かつ前記仕切り板の前記開口部を通過した前記吸収液を、前記吸収液排出口から排出し、前記吸収液から放散された前記二酸化炭素を、前記ガス排出口から排出する、
二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記仕切り板は、前記1つ以上の開口部を有する領域の開口率が10~90%となるように構成されている、請求項
1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記仕切り板は、前記加熱部から離れる方向に凸型に湾曲した形状を有する、請求項1
または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記再生部はさらに、前記第1端と前記第2端との間の位置に設けられ、前記容器内を前記第1端側から前記第2端側へと流れる前記吸収液の流れの向きを変える1枚以上の
更なる邪魔板を備える、請求項1から
3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記再生部は、前記加熱部として、同じ方向に延びる形状を有する複数の加熱部を備える、請求項1から
4のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記再生部はさらに、前記複数の加熱部間に設けられ、前記吸収液が通過する1つ以上の開口部を有する仕切り板を備える、請求項
5に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収部排出ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記吸収液から放散された前記二酸化炭素を含む再生部排出ガスとを排出する再生部と、
を備える二酸化炭素回収システムの運転方法であって、
前記再生部は、
前記吸収部から排出された前記吸収液を収容する容器と、
前記容器内に設けられ
、第1端から第2端へと延びる形状を有する加熱部と、
前記容器内の前記吸収液が通過する1つ以上の開口部を有し、前記容器内において前記加熱部の上方に設けられた仕切り板と
、
前記加熱部の前記第2端に対向する位置に設けられ、前記仕切り板と結合されており、前記容器内を前記第1端側から前記第2端側へと流れる前記吸収液の流れの向きを変える邪魔板とを備え、
前記容器は、前記吸収部から排出された前記吸収液を前記容器内に供給する吸収液供給口と、前記仕切り板の前記開口部を通過した前記吸収液を前記容器外に排出する吸収液排出口と、前記容器外にガスを排出するガス排出口とを備え、
前記吸収部から排出された前記吸収液を
、前記吸収液供給口から前記容器内に収容し、
前記仕切り板が前記吸収液の液面下にある状態で前記吸収液を前記加熱部により加熱することで、
前記吸収液が上昇流により前記液面に向かう流れが前記容器内で形成されるが前記仕切り板により前記流れが変化し、かつ、前記容器内で前記吸収液供給口から前記吸収液排出口に向かう前記吸収液の流れが形成され、かつ、前記容器内で前記吸収液が前記第1端から前記第2端側へと渦巻き状に流れて、前記容器内の前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ
、
前記二酸化炭素を放散し、かつ前記仕切り板の前記開口部を通過した前記吸収液を、前記吸収液排出口から排出し、前記吸収液から放散された前記二酸化炭素を、前記ガス排出口から排出する、
ことを含む二酸化炭素回収システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する有効な対策として、二酸化炭素回収貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)技術が注目されている。例えば、火力発電所や製鉄所などで発生するプロセス排ガス(処理対象ガス)中の二酸化炭素を、吸収液により回収する二酸化炭素回収システムが検討されている。
一般に、二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収部と、吸収部から排出された吸収液を加熱することで、吸収液から二酸化炭素を放出させて吸収液を再生する再生部とを備えている。再生部は、吸収液の加熱に必要な熱量に応じて、種々の加熱手段を用いて構成することが可能である。例えば、リボイラーを用いて蒸気により吸収液を加熱することや、電気ヒーターを用いてジュール熱により吸収液を加熱することが考えられる。
【0003】
再生部は、充填物などを有する塔として構成される場合と、塔以外の形態で構成される場合とがある。前者の再生部は例えば、再生部を簡便に構成したい場合に採用される。一方、後者の再生部は例えば、吸収液の処理量、処理条件、処理スペースなどの制限がある場合に採用される。後者の再生部は、吸収液を貯留する容器(例えば、フラッシュドラムや気液分離タンク)内に加熱部を挿入することで実現可能である。しかし、後者の再生部は、吸収液を容器内に連続的に供給しながら吸収液を加熱して二酸化炭素を放出させるため、容器内の吸収液に液温度に偏在化が発生して、吸収液の加熱効率が悪化することや二酸化炭素の回収性能が低下することが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、吸収液の加熱効率に優れた再生部を実現可能な二酸化炭素回収システムおよびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収部排出ガスとを排出する吸収部と、前記吸収部から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記吸収液から放散された前記二酸化炭素を含む再生部排出ガスとを排出する再生部とを備える。前記再生部は、前記吸収部から排出された前記吸収液を収容する容器と、前記容器内に設けられた加熱部と、前記容器内の前記吸収液が通過する1つ以上の開口部を有し、前記容器内において前記加熱部の上方に設けられた仕切り板とを備える。前記再生部は、前記仕切り板が前記吸収液の液面下にある状態で前記吸収液を前記加熱部により加熱することで、前記容器内の前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の再生部の構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態およびその変形例の仕切り板の形状を示す平面図である。
【
図4】第2実施形態の再生部の構成を示す断面図である。
【
図5】第3実施形態の再生部の構成を示す断面図である。
【
図6】第4実施形態の再生部の構成を示す断面図である。
【
図7】第4実施形態の変形例の再生部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1から
図7において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0010】
本実施形態の二酸化炭素回収システムは、
図1に示すように、プロセス排ガスライン1と、吸収部2と、リッチ液ポンプ3と、再生熱交換器4と、再生部5と、リーン液ポンプ6と、リーン液冷却器7と、ガス冷却器8と、制御部9とを備えている。
【0011】
図1は、吸収部2や再生部5の設置面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、吸収部2や再生部5の設置面に垂直なZ方向とを示している。本明細書においては、例えば吸収部2や再生部5の構成を説明する際に、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。なお、-Z方向は、重力方向と一致していても一致していなくてもよい。
【0012】
プロセス排ガスライン1は、燃焼排ガスなどのプロセス排ガスを吸収部2内に供給する流路である。プロセス排ガスは例えば、火力発電所、製鉄所、清掃工場、工場設備などから二酸化炭素回収システムに供給される。プロセス排ガスは、二酸化炭素回収システムにより処理される処理対象ガスの例である。
【0013】
吸収部2は例えば、向流型気液接触装置により構成されている吸収塔である。吸収部2は、プロセス排ガスを導入するためのガス導入口を吸収部2の下部に備え、吸収液(リーン液)を導入するための吸収液導入口を吸収部2の上部に備えている。吸収液の例は、1種類以上のアミンを含有するアミン系水溶液である。アミンの例は、モノエタノールアミン(monoethanolamine)や、ジエタノールアミン(diethanolamine)である。
【0014】
吸収部2は、プロセス排ガスと吸収液とを気液接触させて、プロセス排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる。その結果、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が、吸収部2の底部に溜まる。このリッチ液は、吸収部2の底部に設けられた吸収液排出口から外部に排出される。一方、二酸化炭素が除去されたプロセス排ガスを含有する吸収部排出ガスは、吸収部2の頂部に設けられたガス排出口から外部に排出される。本実施形態の吸収部2は、気液接触を効率よく進めるために、充填物またはトレイが1段以上配置された構造を有している。
【0015】
吸収部2の吸収液排出口から排出された吸収液(リッチ液)は、リッチ液ポンプ3により、再生熱交換器4を介して再生部5へ移送される。この際、吸収部2から再生部5へ向かう吸収液は、再生熱交換器4における熱交換により加熱される。
【0016】
再生部5は、吸収部2から導入された吸収液を加熱することで、吸収液から大部分の二酸化炭素を蒸気と共に放散させて、吸収液から二酸化炭素を分離する。再生部5の加熱部は、吸収液を直接加熱するか、油などの媒体を介して間接的に吸収液を加熱する。加熱部が電気ヒーターの場合には、電気ヒーターとしてフランジヒーターを用いることが好ましい。電気ヒーターとして、代わりにネジ込みヒーターや筒型ヒーターを用いてもよいし、コイル形状の投げ込みヒーターを用いてもよい。また、加熱部のエネルギー源は、電気以外でもよく、例えば高温蒸気でもよい。本実施形態の再生部5のさらなる詳細については後述する。
【0017】
再生部5は、二酸化炭素や蒸気を放散した吸収液(リーン液)と、吸収液から放散された二酸化炭素や蒸気を含有する再生部排出ガスとを外部に排出する。例えば、このリーン液は、再生部5の底部に設けられた吸収液排出口から排出され、再生部排出ガスは、再生部5の頂部に設けられたガス排出口から排出される。
【0018】
再生部5の吸収液排出口から排出された吸収液(リーン液)は、リーン液ポンプ6により、再生熱交換器4とリーン液冷却器7とを介して吸収部2へ戻される。この際、再生部5から吸収部2へ向かう吸収液は、再生熱交換器4における熱交換とリーン液冷却器7における冷却により所定の温度に調整される。一方、再生部5のガス排出口から排出された再生部排出ガスは、ガス冷却器8により任意の温度まで冷却される。
【0019】
制御部9は、二酸化炭素回収システムの種々の動作を制御する。制御部9の例は、プロセッサ、電気回路、コンピュータなどである。制御部9は例えば、リッチ液ポンプ3やリーン液ポンプ6の回転数や、リーン液冷却器7やガス冷却器8の冷却動作や、再生部5の加熱部の加熱動作などを制御する。
【0020】
図2は、第1実施形態の再生部5の構成を示す断面図である。
図2(a)は、再生部5のXZ断面を示している。
図2(b)は、再生部5のYZ断面を示しており、
図2(a)の線Aにおける断面を示している。
【0021】
本実施形態の再生部5は、
図2(a)や
図2(b)に示すように、容器11と、電気ヒーター12と、邪魔板13と、仕切り板14とを備えている。電気ヒーター12は、加熱部の例である。容器11は、吸収液供給口11aと、吸収液排出口11bと、ガス排出口11cとを備えている。電気ヒーター12は、複数のU字管12aと、これらのU字管12aが取り付けられた土台部12bとを備えている。本実施形態の再生部5は、フラッシュドラム、フラッシュタンク、気液分離タンクなどと似た構造を有している。
【0022】
容器11は、吸収部2から吸収液供給口11aを介して供給された吸収液(リッチ液)を収容する。符号Sは、容器11内に収容された吸収液の液面を示す。再生部5は、容器11内の吸収液を電気ヒーター12により加熱することで、吸収液から二酸化炭素(および蒸気。以下同様)を放散させる。符号Gは、吸収液から放散された二酸化炭素を含む気泡を示している。二酸化炭素を放散した吸収液(リーン液)は、吸収液排出口11bから外部に排出される。一方、吸収液から放散された二酸化炭素を含む再生部排出ガスは、ガス排出口11cから外部に排出される。本実施形態の再生部5は、吸収液供給口11aおよび吸収液排出口11bを容器11の底部に備え、ガス排出口11cを容器11の頂部に備えている。
【0023】
電気ヒーター12は、容器11内に挿入されており、X方向に延びる棒状の形状を有している。具体的には、電気ヒーター12を構成する複数のU字管12aが、容器11内に設置されている。
図2(a)と
図2(b)は、容器11内の吸収液に浸かり、吸収液の液面Sの下に位置するU字管12aを示している。本実施形態の再生部5は、容器11内の吸収液に浸かった電気ヒーター12を動作させることで、容器11内の吸収液をU字管12aにより加熱する。
【0024】
本実施形態の電気ヒーター12は、-X方向にある第1端(左端)から+X方向にある第2端(右端)へと延びる形状を有している。本実施形態では、吸収液供給口11aが、電気ヒーター12の第1端付近に設けられており、吸収液排出口11bが、電気ヒーター12の第2端付近に設けられている。電気ヒーター12の第1端では、複数のU字管12aが土台部12bに取り付けられている。一方、電気ヒーター12の第2端は、容器11内の邪魔板13と対向している。
【0025】
本実施形態の電気ヒーター12は、容器11内の吸収液をジュール熱により直接または間接的に加熱する。前者の場合には例えば、ジュール熱を発生するコイルなどの部材がU字管12a内に配置されている。後者の場合には例えば、ジュール熱により加熱された油や蒸気などの媒体がU字管12a内を通過する。
【0026】
邪魔板13は、容器11内において電気ヒーター12の側方(+X方向)に設置されている。仕切り板14は、容器11内において電気ヒーター12の上方(+Z方向)に設置されている。邪魔板13と仕切り板14は、同じ素材で形成されていてもよいし、異なる素材で形成されていてもよい。邪魔板13は縦向きに設置されており、仕切り板14は横向きに設置されている。本実施形態の邪魔板13と仕切り板14は、互いに結合されており、かつ容器11に接している。その結果、容器11内の空間は、邪魔板13と仕切り板14により、吸収液供給口11a側の第1空間と、吸収液排出口11bおよびガス排出口11c側の第2空間とに仕切られている。
【0027】
ただし、仕切り板14は、容器11内の吸収液や気泡Gが通過する1つ以上の開口部を有している。よって、吸収液供給口11aから容器11内に流入した吸収液は、仕切り板14の開口部を介して吸収液排出口11bに到達することができる。また、第1空間内で発生した気泡Gは、仕切り板14の開口部を介して第2空間に移動することができ、ガス排出口11cに到達することができる。ただし、気泡Gの一部は、第1空間ではなく第2空間で発生してもよい。なお、本実施形態の邪魔板13は、容器11内の吸収液や気泡Gが通過する開口部を有していない。
【0028】
図3は、第1実施形態およびその変形例の仕切り板14の形状を示す平面図である。
【0029】
図3(a)は、本実施形態の仕切り板14を示している。この仕切り板14は、複数の開口部P1が設けられた領域R1と、これらの開口部P1が設けられていない領域R2とを有している。この仕切り板14は例えば、板にパンチ穴をあけることで作製される。この仕切り板14は、吸収液供給口11aの真上に領域R2が位置するように配置されることが望ましい。また、領域R2は、開口部P1を有しない代わりに、領域R1より低い開口率で開口部P1を有していてもよい。
【0030】
図3(b)は、本実施形態の変形例の仕切り板14を示している。この仕切り板14は、複数の開口部P2が設けられた領域R3と、これらの開口部P2が設けられていない領域R4とを有している。この仕切り板14は、網状に加工された板となっている。この仕切り板14は、吸収液供給口11aの真上に領域R4が位置するように配置されることが望ましい。また、領域R4は、開口部P2を有しない代わりに、領域R3より低い開口率で開口部P2を有していてもよい。
【0031】
以下、
図2(a)および
図2(b)を再び参照し、再生部5の構成をさらに説明する。
【0032】
本実施形態の再生部5は、仕切り板14や邪魔板13が吸収液の液面S下にある状態で動作する。
図2(a)と
図2(b)は、電気ヒーター12の上端と吸収液の液面Sとの間に位置する仕切り板14を示している。再生部5は、仕切り板14や邪魔板13が吸収液の液面S下にある状態で吸収液を電気ヒーター12により加熱することで、容器11内の吸収液から二酸化炭素を放散させる。以下、再生部5の動作のさらなる詳細を説明する。
【0033】
吸収液供給口11aから容器11内に流入した吸収液(リッチ液)は、電気ヒーター12の加熱に伴う上昇流により液面Sに向かって上方に流れるが、仕切り板14によりその流れが変化する。その結果、吸収液は、電気ヒーター12の外周や容器11の内周に沿って流れる。また、容器11は吸収液供給口11aの反対側に吸収液排出口11bを有しているため、容器11内ではさらに、吸収液供給口11aから吸収液排出口11bに向かう吸収液の流れが形成される。この両者の流れが合成され、吸収液が、
図2(a)や
図2(b)に示すように、容器11内を吸収液供給口11aから吸収液排出口11bに向かって渦巻き状に流れる(符号F1参照)。すなわち、吸収液は、電気ヒーター12の第1端(左端)側から第2端(右端)側へと渦巻き状に流れる。その結果、吸収液は電気ヒーター12により均等に加熱される。
【0034】
符号F1のように流れる吸収液は、邪魔板13の付近に到達する。邪魔板13は、吸収液の流れを阻害する作用を有し、吸収液の流れの向きを別の向きに変える。具体的には、邪魔板13の付近に到達した吸収液の向きは、上向きに変化したり、電気ヒーター12に戻る向きに変化したりする。この邪魔板13の効果により、電気ヒーター12の付近で吸収液をさらに均一に加熱させることが可能となる。邪魔板13は、吸収液の流れをせき止める「せき」として機能する。
【0035】
一方、吸収液が電気ヒーター12により加熱される過程で発生する気泡Gは、仕切り板14の開口部を通過する。これにより、電気ヒーター12と吸収液との接触面に気泡Gが留まることや、電気ヒーター12による吸収液の加熱を気泡Gが阻害することを抑制することが可能となる。本実施形態の電気ヒーター12は、容器11内で仕切り板14と邪魔板13により囲まれているため、電気ヒーター12の周囲では吸収液が均一に加熱されながら流れ、吸収液から発生した気泡Gは液面Sからガス排出口11cへと抜けていく。同様に、二酸化炭素を放散した吸収液(リーン液)は、仕切り板14の開口部を通って吸収液排出口11bに向かい(符号F2参照)、吸収液排出口11bから外部に排出される。
【0036】
本実施形態の仕切り板14は、吸収液や気泡Gが通過する1つ以上の開口部を有すると共に、仕切り板14まで上昇してきた吸収液を電気ヒーター12へと戻す作用を有することが望ましい。そのため、本実施形態の仕切り板14は、これらの開口部を有する領域の開口率が10~90%(例えば30~50%)となるように構成されていることが望ましい。このような領域の例は、
図3(a)の領域R1や、
図3(b)の領域R3である。領域R1の開口率や、領域R3の開口率は、10~90%であることが望ましい。
図2(a)および
図2(b)に示す仕切り板14の当該領域の開口率は、例えば40%である。
【0037】
仕切り板14の開口部の形状は、どのような形状としてもよい。開口部の形状の例は、円形、四角形、網目形状などである。
図3(a)の領域R1は、開口部P1を均一な密度で有していても、不均一な密度で有していてもよい。同様に、
図3(b)の領域R3は、開口部P2を均一な密度で有していても、不均一な密度で有していてもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態の再生部5は、1つ以上の開口部を有する仕切り板14を電気ヒーター12の上方に備えている。さらに、本実施形態の再生部5は、仕切り板14が吸収液の液面S下にある状態で吸収液を電気ヒーター12により加熱することで、容器11内の吸収液から二酸化炭素を放散させる。これにより、再生部5内に供給された吸収液を均一かつ効率的に加熱することが可能となる。よって、本実施形態によれば、吸収液の加熱効率に優れた再生部5を実現することができ、二酸化炭素回収システムにおける二酸化炭素の回収性能を向上させることができる。
【0039】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の再生部5の構成を示す断面図である。第2実施形態の再生部5は、
図1の二酸化炭素回収システムに設けられている。
図4(a)は、再生部5のXZ断面を示している。
図4(b)は、再生部5のYZ断面を示しており、
図4(a)の線Bにおける断面を示している。
【0040】
本実施形態の再生部5は、第1実施形態の再生部5と同様に、容器11と、電気ヒーター12と、邪魔板13と、仕切り板14とを備えている。ただし、本実施形態の仕切り板14は、
図4(b)に示すように、電気ヒーター12から離れる方向に凸型に湾曲した形状を有しており、すなわち、+Z方向に凸型に湾曲した形状を有している。本実施形態によれば、仕切り板14が湾曲していることで、吸収液が電気ヒーター12の周囲に沿って流れやすくなり、吸収液をより均一かつ効率的に加熱することが可能となる。
【0041】
なお、仕切り板14の曲率や形状は、電気ヒーター12の形状、配置、サイズや容器11のサイズなどに応じて、最適な曲率や形状を任意に選択可能である。仕切り板14のYZ断面の形状の例は、半円形、半楕円形、弓なり形などである。
【0042】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の再生部5の構成を示す断面図である。第3実施形態の再生部5は、
図1の二酸化炭素回収システムに設けられている。
【0043】
本実施形態の再生部5は、第1実施形態の再生部5と同様に、容器11と、電気ヒーター12と、邪魔板13と、仕切り板14とを備えており、さらには1枚以上の邪魔板15を備えている。
【0044】
邪魔板15は、容器11内において仕切り板14の下に設置されており、電気ヒーター12の第1端(左端)と第2端(右端)との間の位置に設置されている。邪魔板15は、邪魔板13や仕切り板14と同じ素材で形成されていても、異なる素材で形成されていてもよい。邪魔板15は、邪魔板13と同様に縦向きに設置されている。また、本実施形態の邪魔板15は、邪魔板13と同様に、容器11内の吸収液や気泡Gが通過する開口部を有していない。
【0045】
邪魔板15は、電気ヒーター12の周囲の吸収液の流れを制限している。そのため、電気ヒータ12の付近の吸収液は、
図5の符号F1で示すように、電気ヒーター12に対して蛇行したように流れる。これにより、電気ヒーター12と吸収液との接触時間を長くすることができ、十分に吸収液を加熱して二酸化炭素を放散させることができる。
【0046】
各邪魔板15は、吸収液の流れを阻害する作用を有し、吸収液の流れの向きを別の向きに変える。具体的には、各邪魔板15の付近に到達した吸収液の向きは、上向きや下向きに変化したり、-X方向に戻る向きに変化したりする。各邪魔板15は、吸収液の流れをせき止める「せき」として機能する。
【0047】
なお、邪魔板15は、吸収液の流れを変えることができるればよく、邪魔板15の形状や配置場所や配置数は、
図5に示すものに限られない。
【0048】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態の再生部5の構成を示す断面図である。第4実施形態の再生部5は、
図1の二酸化炭素回収システムに設けられている。
図6(a)は、再生部5のXZ断面を示している。
図6(b)は、再生部5のYZ断面を示しており、
図6(a)の線Cにおける断面を示している。
図6(c)は、再生部5のYZ断面を示しており、
図6(a)の線Dにおける断面を示している。
【0049】
本実施形態の再生部5は、第1実施形態の再生部5と同様に、容器11と、邪魔板13と、仕切り板14とを備えている。第1実施形態の再生部5が、1つの電気ヒーター12を備えているのに対し、本実施形態の再生部5は、複数(ここでは2つ)の電気ヒーター12を備えている。
【0050】
本実施形態の各電気ヒーター12は、第1実施形態の電気ヒーター12と同様に、複数のU字管12aと、これらのU字管12aが取り付けられた土台部12bとを備え、X方向に延びる棒状の形状を有している。本実施形態の2つの電気ヒーター12は、同じ方向に延びており、
図6(b)や
図6(c)に示すように横方向に互いに並んでいる。
【0051】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、吸収液の上昇流と+X方向への流れとが合成され、各電気ヒーター12を中心とした渦巻き状の流れが形成される。これにより、吸収液を2つの電気ヒーター12により均一かつ効率的に加熱することが可能となり、二酸化炭素回収システムにおける二酸化炭素の回収性能を向上させることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態の再生部5は、3つ以上の電気ヒーター12を備えていてもよいし、これらの電気ヒーター12のうちの任意の2つは、互いに横方向に並んでいても縦方向に並んでいてもよい。また、本実施形態の再生部5は、容器11に複数の吸収液供給口11aを備えていてもよい。
【0053】
図7は、第4実施形態の変形例の再生部5の構成を示す断面図である。
【0054】
本変形例の再生部5は、縦方向に並んだ2つの電気ヒーター12を備えており、これらの電気ヒーター12の間に仕切り板16を備えている。仕切り板16は、仕切り板14と同様の形状を有しており、吸収液や気泡Gが通過する1つ以上の開口部を有している。これにより、仕切り板16の下の空間と、仕切り板14と仕切り板16との間の空間とに、渦巻き状の流れを生じさせることができる。なお、本変形例の再生部5は、3つ以上の電気ヒーター12と、2枚以上の仕切り板16とを備えていてもよい。
【0055】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0056】
1:プロセス排ガスライン、2:吸収部、3:リッチ液ポンプ、
4:再生熱交換器、5:再生部、6:リーン液ポンプ、
7:リーン液冷却器、8:ガス冷却器、9:制御部、
11:容器、11a:吸収液供給口、11b:吸収液排出口、11c:ガス排出口、
12:電気ヒーター、12a:U字管、12b:土台部、
13:邪魔板、14:仕切り板、15:邪魔板、16:仕切り板