(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】印刷装置におけるテンション調整方法および印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/188 20060101AFI20230515BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B65H23/188
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2019178699
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】森園 修
(72)【発明者】
【氏名】岸田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】柿本 昌二
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-139641(JP,A)
【文献】特開2008-302536(JP,A)
【文献】特開2013-18602(JP,A)
【文献】特開2017-109872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/188
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印刷媒体を送り出す送り出し部と、
前記印刷媒体を巻き取る巻き取り部と、
前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、
前記送り出し部と前記巻き取り部との間に配設される主ローラと、
前記主ローラより慣性が小さい第1の駆動ローラおよび第1の従動ローラを有しており前記巻き取り部と前記主ローラとの間に配設される第1のニップローラと、
第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラを有しており前記送り出し部と前記主ローラとの間に配設される第2のニップローラと、
前記主ローラと前記第1のニップローラとの間において前記印刷媒体のテンションを検出する第1のテンションセンサと、を備える印刷装置において、
前記印刷部による印刷を行う際において前記印刷媒体を搬送する方向である搬送方向に、前記主ローラ、前記第1の駆動ローラ、および前記第2の駆動ローラの各々を駆動させることにより前記印刷媒体を前記送り出し部から前記巻き取り部へと搬送させる通常搬送工程と、
前記通常搬送工程を停止させた時に前記第1のテンションセンサの出力を検出する第1テンション検出工程と、
前記第1テンション検出工程において検出された出力の値に応じて異なる回復処理を行うことによって前記印刷媒体のテンションを前記通常搬送工程におけるテンションの値に回復させるテンション回復工程と、を備え、
前記テンション回復工程は、
前記第1テンション検出工程において検出された出力が所定の基準値以上である場合、前記第1のニップローラで前記印刷媒体がニップされている状態で、前記第1の駆動ローラを前記搬送方向に駆動させる操作および前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる操作のうち少なくとも一方を実行する第1回復工程と、
前記第1テンション検出工程において検出された出力が前記基準値より小さい場合、前記第1のニップローラによる前記印刷媒体のニップを解除させるニップ解除工程と、前記ニップ解除工程から所定時間経過後に前記第1のニップローラによって前記印刷媒体をニップさせるニップ回復工程と、前記ニップ回復工程の後に前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる駆動工程と、を備える第2回復工程と、
を備えていることを特徴とするテンション調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテンション調整方法において、
前記第2回復工程は、
前記ニップ回復工程の後に前記第1のテンションセンサの出力を検出する第2テンション検出工程を備え、
前記第2テンション検出工程において検出された出力が前記基準値より小さい場合は前記駆動工程を実行することによって前記印刷媒体のテンションを回復させ、前記第2テンション検出工程において検出された出力が前記基準値以上である場合は前記駆動工程の代わりに前記第1回復工程を実行することによって前記印刷媒体のテンションを回復させる
ことを特徴とするテンション調整方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のテンション調整方法において、
前記駆動工程において、前記第2の駆動ローラを逆方向に駆動させることによって前記印刷媒体が逆方向へ搬送された距離を逆搬送距離として記憶する距離記憶工程をさらに行い、
前記テンション回復工程の後、前記逆搬送距離の分、前記印刷媒体を順方向に送り出してから前記通常搬送工程を再開する
ことを特徴とするテンション調整方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のテンション調整方法において、
前記駆動工程において、前記第2の駆動ローラを逆方向に駆動させるとともに前記第1の駆動ローラを順方向に駆動させる
ことを特徴とするテンション調整方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のテンション調整方法において、
前記印刷装置は前記主ローラと前記第2のニップローラとの間において前記印刷媒体のテンションを検出する第2のテンションセンサを備えており、
前記テンション回復工程は、
前記駆動工程の後、前記第2のテンションセンサの出力を検出する第3テンション検出工程を備える
ことを特徴とするテンション調整方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のテンション調整方法において、
前記印刷装置は前記巻き取り部と前記第1のニップローラとの間に配設されるダンサローラを備えており、
前記ニップ解除工程によって前記ニップが解消された状態で、前記巻き取り部と前記主ローラとの間における前記印刷媒体の弛みのうち少なくとも一部を前記ダンサローラで解消する弛み解消工程を備える
ことを特徴とするテンション調整方法。
【請求項7】
長尺状の印刷媒体を送り出す送り出し部と、
前記印刷媒体を巻き取る巻き取り部と、
前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、
前記送り出し部と前記巻き取り部との間に配設される主ローラと、
前記主ローラより慣性が小さい第1の駆動ローラおよび第1の従動ローラを有しており前記巻き取り部と前記主ローラとの間に配設される第1のニップローラと、
第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラを有しており前記送り出し部と前記主ローラとの間に配設される第2のニップローラと、
前記主ローラと前記第1のニップローラとの間において前記印刷媒体のテンションを検出する第1のテンションセンサと、
前記印刷部による印刷を行う際において前記印刷媒体を搬送する方向である搬送方向に、前記主ローラ、前記第1の駆動ローラ、および前記第2の駆動ローラの各々を駆動させることにより前記印刷媒体を前記送り出し部から前記巻き取り部へと搬送させる通常搬送処理を停止させた時に前記第1のテンションセンサの出力を検出し、前記第1のテンションセンサの出力の値に応じて異なる処理を行うことによって前記印刷媒体のテンションを前記通常搬送処理におけるテンションの値に回復させるように前記印刷媒体の搬送を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1のテンションセンサの出力が所定の基準値以上である場合、前記第1のニップローラで前記印刷媒体がニップされている状態で、前記第1の駆動ローラを前記搬送方向に駆動させる操作および前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる操作のうち少なくとも一方を実行する制御を行い、
前記第1のテンションセンサの出力が前記基準値より小さい場合、前記第1のニップローラによる前記印刷媒体のニップを解除し、前記印刷媒体のニップの解除から所定時間経過後に前記第1のニップローラによって前記印刷媒体をニップさせ、前記印刷媒体がニップされている状態で前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる制御を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷装置を例とする印刷装置において、長尺状の紙または長尺状のフィルム等を例とする印刷媒体のテンションを調整する方法および当該方法を用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状の印刷媒体を印刷対象とする印刷装置として、供給部と、印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、回収部と、長尺状の印刷媒体を所定の方向に搬送する搬送装置とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
搬送装置は、長尺の印刷媒体を供給する供給部の下流側に配置され、供給部から印刷用紙を送り出すニップローラを備えた第1の駆動ローラと、この第1の駆動ローラで送られてきた印刷媒体を印刷部に送り込むニップローラを備えた第2の駆動ローラと、印刷媒体を大きな巻付角で巻き回して乾燥させるとともに印刷媒体を送り出す第3の駆動ローラ(ヒートローラとも呼ばれる)と、第3の駆動ローラで乾燥された印刷媒体を回収部に送り出すニップローラを備えた第4の駆動ローラとを備えている。
【0004】
さらに、搬送装置は、所定の位置に配設された複数の搬送ローラを備えている。印刷媒体は、各々の搬送ローラが当接するような所定の軌跡に沿って送られる。すなわち、ニップローラおよび搬送ローラによって、印刷媒体に対して所定の大きさのテンションが付与されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。すなわち従来の構成による印刷装置では、諸事情により印刷媒体の搬送を停止させた後に当該搬送を再開させた場合、印刷媒体が正常に送れなくなる搬送エラーが高い頻度で発生するので印刷効率が低下するという問題が懸念される。また、搬送の停止および再開を行う際に、印刷媒体が破断されるという事態も発生する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、長尺状の印刷媒体に発生する弛みをより好適に解消して印刷媒体のテンションを回復させることを可能とするテンション調整方法、および当該方法を備える印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明者らが検討した結果、上記の事態が発生する原因は次のようなものであることが明らかになった。すなわち従来の構成による印刷装置では、第3の駆動ローラにおいて印刷媒体を乾燥させるため大きな巻付角で巻き回すので、第3の駆動ローラは他の駆動ローラと比べて径が大きく大型であり、慣性も大きい。そのため、印刷装置を停止させた場合、第1の駆動ローラを例とする比較的小型のローラは慣性が小さいので速やかに停止する。一方、慣性が大きい第3の駆動ローラは停止するために時間を要する。
【0009】
印刷装置の停止時にこのような駆動ローラの回転速度差が発生する結果、特に第3の駆動ローラの下流領域において印刷媒体のテンションが低下し、印刷媒体が弛むという事態が高い頻度で発生する。印刷媒体が弛むと印刷品質が低下するため、印刷媒体の弛みを除去してテンションを回復させる必要がある。手動で当該テンションを回復させる操作には時間を要するので、印刷装置の動作効率が低下する。
【0010】
特に、通常の停止手順とは異なる印刷装置の緊急停止の場合、停止時における駆動ローラの回転速度差がより大きくなるので印刷媒体に発生する弛みがより大きくなる。そして大きく弛むことによって印刷媒体が座屈し、さらに座屈した印刷媒体がローラに巻き込まれてしまう場合がある。座屈した印刷媒体がローラに巻き込まれると、印刷装置を停止から復帰させる際に印刷媒体が破断されるという事態が懸念される。印刷媒体が破断した場合、所定の軌跡に沿った長尺状となるように印刷媒体を復帰させるために多大な時間および労力を要することとなる。その結果、印刷装置の動作効率がさらに大きく低下することとなる。
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るテンション調整方法は、長尺状の印刷媒体を送り出す送り出し部と、前記印刷媒体を巻き取る巻き取り部と、前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、前記送り出し部と前記巻き取り部との間に配設される主ローラと、前記主ローラより慣性が小さい第1の駆動ローラおよび第1の従動ローラを有しており前記巻き取り部と前記主ローラとの間に配設される第1のニップローラと、第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラを有しており前記送り出し部と前記主ローラとの間に配設される第2のニップローラと、前記主ローラと前記第1のニップローラとの間において前記印刷媒体のテンションを検出する第1のテンションセンサと、を備える印刷装置において、前記印刷部による印刷を行う際において前記印刷媒体を搬送する方向である搬送方向に、前記主ローラ、前記第1の駆動ローラ、および前記第2の駆動ローラの各々を駆動させることにより前記印刷媒体を前記送り出し部から前記巻き取り部へと搬送させる通常搬送工程と、前記通常搬送工程を停止させた時に前記第1のテンションセンサの出力を検出する第1テンション検出工程と、前記第1テンション検出工程において検出された出力の値に応じて異なる回復処理を行うことによって前記印刷媒体のテンションを前記通常搬送工程におけるテンションの値に回復させるテンション回復工程と、を備え、前記テンション回復工程は、前記第1テンション検出工程において検出された出力が所定の基準値以上である場合、前記第1のニップローラで前記印刷媒体がニップされている状態で、前記第1の駆動ローラを前記搬送方向に駆動させる操作および前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる操作のうち少なくとも一方を実行する第1回復工程と、前記第1テンション検出工程において検出された出力が前記基準値より小さい場合、前記第1のニップローラによる前記印刷媒体のニップを解除させるニップ解除工程と、前記ニップ解除工程から所定時間経過後に前記第1のニップローラによって前記印刷媒体をニップさせるニップ回復工程と、前記ニップ回復工程の後に前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる駆動工程と、を備える第2回復工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明に係るテンション調整方法によれば、通常搬送工程を停止させた後、テンション回復工程によって印刷媒体のテンションを通常搬送工程におけるテンションの値へと自動的に回復させることができるので、印刷装置の作動効率を向上できる。また、テンション回復工程は第1テンション検出工程において検出された出力の値に応じて異なる回復処理を行うことによって印刷媒体のテンションを前記通常搬送工程におけるテンションの値に回復させる。そのため、通常搬送工程を停止させるパターンに応じて適切な回復処理を実行することができる。
【0013】
すなわち、停止時において印刷媒体のテンション低下の程度が小さい場合はニップローラの制御を行わない第1回復工程を行う。そのため、停止時において印刷媒体のテンション低下の程度が小さいにも関わらず処理時間が長い処理を行う結果、印刷装置の稼働効率が無用に低下するという事態を回避できる。一方、停止時において印刷媒体のテンション低下の程度が大きい場合は第2回復工程を行う。第2回復工程はニップローラの解除および再実行の工程を含んでおり、当該工程によって印刷媒体の弛みは分散されて低下する。そのため、停止時において印刷媒体のテンション低下の程度が大きいにも関わらずテンションの回復効率が小さい処理を行う結果、印刷再開後に印刷媒体に搬送エラーが発生するという事態も回避できる。
【0014】
また、上述した発明において、前記第2回復工程は、前記ニップ回復工程の後に前記第1のテンションセンサの出力を検出する第2テンション検出工程を備え、前記第2テンション検出工程において検出された出力が前記基準値より小さい場合は前記駆動工程を実行することによって前記印刷媒体のテンションを回復させ、前記第2テンション検出工程において検出された出力が前記基準値以上である場合は前記駆動工程の代わりに前記第1回復工程を実行することによって前記印刷媒体のテンションを回復させることが好ましい。
【0015】
[作用・効果]本発明に係るテンション調整方法によれば、第2回復工程についても第2テンション検出工程において検出された出力の値に応じて異なる回復処理を行うように制御される。そのため、印刷媒体に発生する弛みの程度に応じて適切な回復処理を実行することができる。
【0016】
また、上述した発明において、前記駆動工程において、前記第2の駆動ローラを逆方向に駆動させることによって前記印刷媒体が逆方向へ搬送された距離を逆搬送距離として記憶する距離記憶工程をさらに行い、前記テンション回復工程の後、前記逆搬送距離の分、前記印刷媒体を順方向に送り出してから前記通常搬送工程を再開することが好ましい。
【0017】
[作用・効果]本発明に係るテンション調整方法によれば、テンション回復工程の後、印刷媒体が逆方向へ搬送された距離の分、印刷媒体を順方向に送り出してから通常搬送工程を再開する。この場合、通常搬送工程を再開する時点における印刷媒体の位置を、通常搬送工程を停止した時点における印刷媒体の位置に一致させることとなる。そのため、通常搬送工程を再開させて印刷処理を行う場合に、印刷すべき情報が当初予定された場所から外れるという事態を回避できる。
【0018】
また、上述した発明において、前記駆動工程において、前記第2の駆動ローラを逆方向に駆動させるとともに前記第1の駆動ローラを順方向に駆動させることが好ましい。
【0019】
[作用・効果]本発明に係るテンション調整方法によれば、駆動工程において、第2の駆動ローラを逆方向に駆動させるとともに第1の駆動ローラを順方向に駆動させる。すなわち印刷媒体を両方向へ引っ張るように搬送させるので、印刷媒体のテンションをより短時間で回復できる。
【0020】
また、上述した発明において、前記印刷装置は前記主ローラと前記第2のニップローラとの間において前記印刷媒体のテンションを検出する第2のテンションセンサを備えており、前記テンション回復工程は、前記駆動工程の後、前記第2のテンションセンサの出力を検出する第3テンション検出工程を備えることが好ましい。
【0021】
[作用・効果]本発明に係るテンション調整方法によれば、第2のテンションセンサにより、主ローラと第2のニップローラとの間における印刷媒体のテンションを検出する。この場合、より広い範囲についてテンションを検知しつつテンション回復工程を実行できる。そのため、主ローラと第2のニップローラとの間における印刷媒体のテンションが回復しきれないことに起因して、通常搬送工程の再開時に印刷媒体の搬送エラーが発生するという事態を回避できる。
【0022】
また、上述した発明において、前記印刷装置は前記巻き取り部と前記第1のニップローラとの間に配設されるダンサローラを備えており、前記ニップ解除工程によって前記ニップが解消された状態で、前記巻き取り部と前記主ローラとの間における前記印刷媒体の弛みのうち少なくとも一部を前記ダンサローラで解消する弛み解消工程を備えることが好ましい。
【0023】
[作用・効果]本発明に係るテンション調整方法によれば、ニップが解消された状態で弛み解消工程を行うことにより、巻き取り部と主ローラとの間における印刷媒体の弛みのうち少なくとも一部をダンサローラで解消する。そのため、第2回復工程において印刷媒体の弛みをより好適に解消することができるので、テンション回復効率を向上できる。
【0024】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係る印刷装置は、長尺状の印刷媒体を送り出す送り出し部と、前記印刷媒体を巻き取る巻き取り部と、前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、前記送り出し部と前記巻き取り部との間に配設される主ローラと、前記主ローラより慣性が小さい第1の駆動ローラおよび第1の従動ローラを有しており前記巻き取り部と前記主ローラとの間に配設される第1のニップローラと、第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラを有しており前記送り出し部と前記主ローラとの間に配設される第2のニップローラと、前記主ローラと前記第1のニップローラとの間において前記印刷媒体のテンションを検出する第1のテンションセンサと、前記印刷部による印刷を行う際において前記印刷媒体を搬送する方向である搬送方向に、前記主ローラ、前記第1の駆動ローラ、および前記第2の駆動ローラの各々を駆動させることにより前記印刷媒体を前記送り出し部から前記巻き取り部へと搬送させる通常搬送処理を停止させた時に前記第1のテンションセンサの出力を検出し、前記第1のテンションセンサの出力の値に応じて異なる処理を行うことによって前記印刷媒体のテンションを前記通常搬送処理におけるテンションの値に回復させるように前記印刷媒体の搬送を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1のテンションセンサの出力が所定の基準値以上である場合、前記第1のニップローラで前記印刷媒体がニップされている状態で、前記第1の駆動ローラを前記搬送方向に駆動させる操作および前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる操作のうち少なくとも一方を実行する制御を行い、前記第1のテンションセンサの出力が前記基準値より小さい場合、前記第1のニップローラによる前記印刷媒体のニップを解除し、前記印刷媒体のニップの解除から所定時間経過後に前記第1のニップローラによって前記印刷媒体をニップさせ、前記印刷媒体がニップされている状態で前記第2の駆動ローラを前記搬送方向とは逆の方向に駆動させる制御を行うものである。
【0025】
当該構成により、通常搬送工程を停止させた後、印刷媒体のテンションを通常搬送工程におけるテンションの値へと自動的に回復させることができるので、印刷装置の作動効率を向上できる。また、制御部は第1テンション検出工程において検出された出力の値に応じて異なる回復処理を行うことによって印刷媒体のテンションを通常搬送工程におけるテンションの値に回復させる。そのため、通常搬送工程を停止させるパターンに応じて適切な回復処理を実行することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るテンション調整方法および印刷装置によれば、通常搬送工程を停止させた後、印刷媒体のテンションを通常搬送工程におけるテンションの値へと自動的に回復させることができる。そのため、印刷装置の作動効率を向上できるとともに、印刷媒体の搬送を停止させた後に当該搬送を再開させた場合において、搬送エラーまたは印刷媒体の破断といった事態が発生することを回避できる。
【0027】
また、制御部は第1テンション検出工程において検出された出力の値に応じて異なる回復処理を行うことによって印刷媒体のテンションを通常搬送工程におけるテンションの値に回復させる。すなわち、通常搬送工程を停止させるパターンに応じて適切な回復処理を実行することができるので、テンションの回復に要する時間を短縮させつつ、印刷媒体の搬送再開時における搬送エラーの発生をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例に係る印刷装置の概略構成を説明する図である。
【
図2】実施例に係るステップS1およびステップS2を説明する図である。(a)は、印刷処理の開始および停止を行う場合における、テンションセンサTP3の出力値の時系列変化を示すタイムチャートであり、(b)は、ステップS1の状態を示す模式図であり、(c)は、ステップS2において緩やかに駆動ローラの回転を停止させた状態を示す模式図であり、(d)は、ステップS2において急激に駆動ローラの回転を停止させた状態を示す模式図である。
【
図3】実施例に係る印刷装置の動作の工程を説明するフローチャートである。
【
図4】実施例に係るステップS4およびステップS5を説明する図である。(a)はステップS4に係る処理を実行する前の状態を示す模式図であり、(b)はステップS4に係る処理を実行している状態を示す模式図であり、(c)はステップS5における状態を示す模式図である。
【
図5】実施例に係るステップS11を説明する図である。(a)はニップを解除する前の状態を示す模式図であり、(b)はニップを解除している状態を示す模式図であり、(c)はダンサローラを作動させている状態を示す模式図である。
【
図6】実施例に係るステップS12を説明する図である。
【
図7】実施例に係るステップS14を説明する図である。(a)はステップS14に係る処理を実行する前の状態を示す模式図であり、(b)はステップS14に係る処理を実行している状態を示す模式図である。
【
図8】実施例に係るステップS14を説明する図である。
【
図9】実施例に係るステップS16を説明する図である。
【
図10】実施例のステップS4の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る印刷装置の全体を示す概略構成図である。本実施例ではインクジェット式の印刷システムを例にとって、本発明に係る印刷装置を説明する。
【0030】
<全体構成の説明>
実施例に係るインクジェット印刷システム1は、インクジェット印刷装置3と、給紙部5と、排紙部7とを備えている。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排出側を下流とすると、給紙部5はインクジェット印刷装置3の上流側に配置され、排紙部7はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0031】
インクジェット印刷装置3は、長尺の連続紙WPに対して印刷を行う。給紙部5は、送り出し機構5aとバッファ機構5bとを備えている。送り出し機構5aは連続紙WPが巻回されている原反ロールと当該原反ロールを装填するボビンとを備えており、水平軸周りに回転可能に保持されている。送り出し機構5aは連続紙WPを巻き出してインクジェット印刷装置3に対して供給する。バッファ機構5bは送り出し機構5aの下流に配設されており、バッファローラ60とダンサローラ61とを備えている。ダンサローラ61が上下へ移動することによって、給紙部5における連続紙WPのテンションを調節できる。なお、送り出し機構5aが本発明における送り出し部に相当する。
【0032】
排紙部7は、巻き取り機構7aとバッファ機構7bとを備えている。巻き取り機構7aは、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る回収用のボビンを備えている。バッファ機構7bは巻き取り機構7aの上流側に配設されており、バッファローラ70とダンサローラ71とを備えている。ダンサローラ71が上下へ移動することによって、排紙部7における連続紙WPのテンションを調節できる。なお、巻き取り機構7aが本発明における巻き取り部に相当する。
【0033】
インクジェット印刷装置3は、給紙部5からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラM1を上流側に備えている。駆動ローラM1によって給紙部5から巻き出された連続紙WPは、回転自在の搬送ローラ11等に沿って下流側の排紙部7に向かって搬送される。
【0034】
駆動ローラM1の下流側には、エッジ位置制御部15が配置されている。エッジ位置制御部15は、連続紙WPが搬送方向J1と直交する方向へ蛇行すると自動で調整し、連続紙WPが正しい位置に搬送されるように制御する。
【0035】
エッジ位置制御部15の下流側には、駆動ローラM2が配置されている。駆動ローラM2の下流側には、ロータリエンコーダ13が取り付けられている搬送ローラ11が配設されている。駆動ローラM2により下流側へ送られた連続紙WPは、当該搬送ローラ11によって搬送方向が変えられて印刷領域PAへと搬送される。
【0036】
印刷領域PAには、連続紙WPの搬送経路に沿って複数個の搬送ローラ11が配置されている。印刷領域PAの上方には印刷部19が配置されている。印刷部19は、一例として4個のインクジェットヘッド19a~19dで構成されている。例えば、最上流のインクジェットヘッド19aは、ブラック(K)のインク滴を吐出し、次のインクジェットヘッド19bは、シアン(C)のインク滴を吐出し、次のインクジェットヘッド19cは、マゼンタ(M)のインク滴を吐出し、次のインクジェットヘッド19dは、イエロー(Y)のインク滴を吐出する。各インクジェットヘッド19a~19dは、搬送方向において所定の間隔だけ離間して配置されている。
【0037】
印刷領域PAにて印刷された連続紙WPは、下流側の搬送ローラ11によって搬送方向が変えられる。その位置には、駆動ローラM3が配置されている。駆動ローラM3は、大きな巻付角で連続紙WPを巻き付け、連続紙WPに当接して連続紙WPのインク滴を乾燥させる。駆動ローラM3はヒータを内蔵しており、ヒートドラムとも呼ばれる。
【0038】
大きな巻付角で連続紙WPが駆動ローラM3に巻き付けられることによって当該ヒータの熱がより効率良く連続紙WPへと伝達されるので、連続紙WPの乾燥効率を向上できる。そのため、駆動ローラM1、M2、およびM4と比べて駆動ローラM3は大径の大型のローラによって構成されている。そして第3の駆動ローラM3は駆動ローラM1、M2、およびM4と比べてイナーシャ(慣性)が大きくなっている。駆動ローラM3は、本発明における主ローラに相当する。
【0039】
駆動ローラM3によって乾燥された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ11によって方向を変えられながら、駆動ローラM4によって排紙部7に送られる。駆動ローラM4の上流側には、検査部23が配置されている。検査部23は、印刷部19によって印刷された連続紙WPを検査する。排紙部7は、検査部23で検査された連続紙WPをロール状に巻き取る。
【0040】
上述した駆動ローラM1と、駆動ローラM2と、駆動ローラM4は、個別に従動ローラNが回転可能に取り付けられている。具体的には駆動ローラM1に従動ローラN1が取り付けられ、駆動ローラM1と従動ローラN1とによりニップローラ25aが構成されている。駆動ローラM2には従動ローラN2が取り付けられ、駆動ローラM2と従動ローラN2とによりニップローラ25bが構成されている。駆動ローラM4には従動ローラN3が取り付けられ、駆動ローラM4と従動ローラN3とによりニップローラ25cが構成されている。従動ローラN1~N3は、一例としてゴムなどの弾性体で構成されている。
【0041】
本実施例において、駆動ローラM3の下流に配設されているニップローラ25cが本発明における第1のニップローラに相当し、駆動ローラM3の上流に配設されているニップローラ25bが本発明における第2のニップローラに相当する。
【0042】
従動ローラN1~N3は、後述する従動ローラ移動部53によって進退移動可能となるように構成されており、当該進退移動によってニップローラ25a~25cによる連続紙WPのニップのオン/オフが制御される。一例として従動ローラN1が駆動ローラM1に近づくように移動することによって、ニップローラ25aは連続紙WPを挟持する。すなわちニップローラ25aによるニップがオンの状態となる。一方、従動ローラN1が駆動ローラM1から離れるように移動することによって、ニップローラ25aによる連続紙WPのニップが解除される。すなわちニップローラ25aによるニップがオフの状態となる。
【0043】
連続紙WPへの搬送力は、ニップローラ25a~25cにおいて、各駆動ローラと各従動ローラとの間に連続紙WPが挟持されることで付与される。従動ローラ25による押圧力は、従動ローラ移動部53によって付与される。ニップローラ25は、例えば、ゴムなどの弾性体で構成されている。
【0044】
駆動ローラM1の下流側であってエッジ位置制御部15の上流側には、テンションセンサTP1が配置されている。また、駆動ローラM2の下流側であって印刷領域PAの上流側には、テンションセンサTP2が配置され、駆動ローラM3の下流側であって駆動ローラM4の上流側には、テンションセンサTP3が配置されている。テンションセンサTP1~TP3は、連続紙WPに付与されている現在のテンションを逐次検出して、テンションの検出値として出力する。
【0045】
上述したインクジェット印刷装置3と、給紙部5と、排紙部7とは、主制御部49によって統括的に制御される。主制御部49は、CPUなどで構成された制御部51を備えている。制御部51は上述した駆動ローラM1~M4の回転を制御しており、駆動ローラM1~M4は順方向および逆方向の両方向に回転可能となるように構成されている。駆動ローラM1~M4が順方向に回転することによって、連続紙WPは搬送方向J1へ搬送される。駆動ローラM1~M4が逆方向に回転することによって、連続紙WPは搬送方向J1とは逆の方向へ搬送可能となる。
【0046】
制御部51による制御は、予めオペレータによって設定される印刷条件に応じた搬送速度になるように行われる。制御部51は、搬送速度や搬送距離を、ロータリエンコーダ13の出力信号に基づいて判断する。印刷条件は、例えば、連続紙WPの搬送速度や、連続紙WPに付与される各部におけるテンションの各目標値などの印刷品質に関わる条件である。
【0047】
インクジェット印刷装置3は、従動ローラ移動部53と報知部55とを備えている。従動ローラ移動部53は一例としてエアシリンダなどによって構成されており、従動ローラ移動部53の動作は制御部51によって制御される。従動ローラ移動部53は従動ローラN1~N3の各々に接続されており、従動ローラ移動部53の動作によって従動ローラN1~N3の各々は駆動ローラM1、M2およびM4に対して進退移動可能となるように構成されている。
【0048】
報知部55は制御部51の制御に従って作動する。報知部55は、自動で実行されるテンション調整工程を行っても連続紙WPのテンションが所望の値まで回復しない場合、連続紙WPが自動処理によって回復していない旨の情報を報知する。報知部55の構成の一例としては、警報音を発生させて報知するブザー、光を発生させて報知するランプ、テンションが自動回復していない旨の情報を表示するディスプレイなどが挙げられる。主制御部49はさらに記憶部57を備えている。記憶部57は、後述する基準値などを予め記憶している。
【0049】
ここで
図2を用いて、実施例に係るインクジェット印刷システム1における、印刷処理の開始および停止に関する概要について説明する。なお、
図2(a)は、印刷処理の開始および停止を行う場合における、テンションセンサTP3の出力値の時系列変化を示す模式図である。
図2(b)~(d)のうち、上の図は駆動ローラM3の上流および下流における構成を模式的に示した図であり、下の図は駆動ローラM3の上流領域Wfおよび下流領域Wbにおける連続紙WPの張力(テンション)の値を模式的に示した図である。
【0050】
なお、本実施例において上流領域Wfは駆動ローラM3とニップローラ25bとの間の領域に相当する。また、本実施例において下流領域Wbは駆動ローラM3とニップローラ25cとの間の領域に相当する。
【0051】
時刻t0においてインクジェット印刷システム1の動作を開始させると、
図2(b)に示すように、制御部51の制御に従ってニップローラ25a~25cが連続紙WPをニップし(挟持し)、さらに駆動ローラM1~M4が順方向に回転する。当該制御により、連続紙WPに対して張力が徐々に加えられる。そして連続紙WPの全体に対して付与される張力が目標値Lnに達すると、所定の時刻t1において連続紙WPの搬送および連続紙WPに対する印刷が開始される。
【0052】
そして、時刻t2においてインクジェット印刷システム1の動作を停止させる。このとき、動作を停止させるパターンによって、駆動ローラM3の下流領域Wbにおけるテンションが低下するパターンが異なる。
【0053】
第1の停止パターンとして緊急性が比較的低い場合、駆動ローラM1~M4を駆動させる各モータの回転速度を徐々に低下させることによって、連続紙WPの搬送および印刷を停止させる。このような比較的緩やかな停止を行う場合、駆動ローラM3におけるイナーシャ(慣性力)と駆動ローラM4におけるイナーシャとの差は比較的小さい。従って
図2(c)に示すように、下流領域Wbにおいて発生する連続紙WPの弛みは比較的小さい。よって、テンションセンサTP3の出力値すなわち下流領域Wbにおけるテンションの値は、
図2(a)の一点鎖線P1で示すように比較的緩やかに低下し、目標値Lnから所定値F1となる。
【0054】
所定値F1は、予め定められた基準値Boより高い値である。基準値Boは、連続紙WPの厚みおよび強度を例とする条件によって定められる値であり、後述するテンション調整処理の内容を分岐させる閾値となる値である。
【0055】
第2の停止パターンとして緊急性が比較的高い場合、駆動ローラM1~M4を駆動させる各モータの回転速度を急激に低下させてゼロにすることによって、連続紙WPの搬送および印刷を停止させる。このような急停止を行う場合、駆動ローラM3におけるイナーシャと駆動ローラM4におけるイナーシャとの差が比較的大きい。すなわち慣性が小さい駆動ローラM1、M2、M4が停止した後であっても駆動ローラM3は慣性によって比較的長い間回転する。
【0056】
その結果、
図2(d)に示すように、下流領域Wbにおける連続紙WPに対して、比較的大きい弛みが発生する。よって、テンションセンサTP3の出力値は、
図2(a)の実線P2で示すように急激に低下し、目標値Lnから所定値F2へと低下する。所定値F2は、基準値Boより低い値である。このように、駆動ローラM1~M4が停止している状態における下流領域Wbのテンション値は、停止パターンによって異なる。
【0057】
駆動ローラM1~M4の回転が停止した後、時刻t3において連続紙WPのテンションを調整させる処理を開始する。当該テンション調整処理によって連続紙WPのテンションは所定値F1(またはF2)から目標値Lnへと回復する。時刻t4においてテンションが目標値Lnに回復した後、時刻t5において連続紙WPの搬送および連続紙WPに対する印刷が再度開始される。
【0058】
<動作の説明>
ここで、実施例に係るインクジェット印刷システム1においてテンションを調整するための動作について
図3および
図4~
図9を適宜参照しつつ説明する。
図3は実施例に係るインクジェット印刷システム1の動作を説明するフローチャートである。
図4は後述するステップS4およびステップS5を説明するための模式図、
図5はステップS11を説明するための模式図、
図6はステップS12を説明するための模式図、
図7および
図8はステップS14を説明するための模式図、
図9はステップS16を説明するための模式図である。さらに詳しくは、
図4(a)はステップS4に係る処理を実行する前の状態を示す模式図であり、(b)はステップS4に係る処理を実行している状態を示す模式図であり、(c)はステップS5における状態を示す模式図である。
図5(a)はステップS11に係るニップ解除前の状態を示す模式図であり、(b)はニップを解除動作実行中の状態を示す模式図であり、(c)はダンサローラを作動させている状態を示す模式図である。
図7(a)はステップS14に係る処理を実行する前の状態を示す模式図であり、(b)はステップS14に係る処理を実行している状態を示す模式図である。
【0059】
ステップS1(印刷処理の開始)
まず、オペレータは図示しない入力部などを操作することによってインクジェット印刷システム1を作動させる。当該操作によってニップローラ25a~25cによる連続紙WPのニップがオンの状態となるとともに駆動ローラM1~M4が回転することによって、連続紙WPは搬送方向J1に沿って給紙部5から排紙部7へと搬送される。そして印刷領域PAにおいて、印刷部19は連続紙WPに対して印刷を行う。
【0060】
ステップS2(印刷処理の停止)
異常の発見などの理由により連続紙WPの搬送を一時的に停止される必要が発生した場合、オペレータは図示しない入力部などを操作することによってインクジェット印刷システム1の動作を停止させる。当該停止操作により、制御部51は駆動ローラM1~M4の各々を回転させる駆動機構(一例として、モータ)の動作を停止させる。その結果、連続紙WPの搬送および印刷が停止する。
【0061】
ステップS3(テンションの検出)
ステップS2における停止処理の操作パターンによって、駆動ローラM3と駆動ローラM4との慣性力の差は異なる。そして慣性力の差に応じて駆動ローラM3の下流領域Wbにおける連続紙WPに発生する弛みの度合いも異なる。そこでテンションセンサTP3によって下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションを検出し、テンションセンサTP3の出力に応じてその後の処理を分岐する(ステップT1)。
【0062】
本実施例では基準値Boを閾値として、テンション調整処理の内容が異なるように構成されている。基準値Boは、一例として連続紙WPに座屈が発生しうる程度に低い張力の値として予め定められ、記憶部57に予め記憶される。基準値Boは、連続紙WPの厚みおよび構成材料などを例とする諸条件に応じて適宜変更可能である。
【0063】
ステップS4(駆動ローラを作動)
テンションセンサTP3の出力が基準値Bo以上である場合、
図2(c)または
図4(a)に示すように、下流領域Wbの連続紙WPに発生する弛みは比較的小さい。そこで下流領域Wbのテンションが基準値Bo以上である場合、ステップS4に移行してテンション調整処理を開始する。
【0064】
ステップS4に係るテンション調整処理では、
図4(b)に示すように、各々のニップローラ25a~25cが連続紙WPを挟持する状態(ニップ状態)を維持しつつ、下流領域Wbの下流に配設されている駆動ローラM4を順方向に回転させる。当該回転によって連続紙WPは下流側へと引っ張られるので、低下していた連続紙WPのテンションは上昇していく。
【0065】
下流領域Wbの連続紙WPに発生する弛みが比較的小さい場合、弛んだ状態の連続紙WPが駆動ローラM4の回転によってニップローラ25cを通過する際に当該連続紙WPに損傷が発生するリスクは非常に小さい。また連続紙WPを搬送方向J1へ搬送させる場合、連続紙WPの搬送可能距離に制限はない。そのため、駆動ローラM4を順方向に回転させることによって、連続紙WPが破損する事態を回避しつつ連続紙WPのテンションを確実に目標値Lnへと回復させることができる(
図4(b)、下図)。ステップS4に係る工程は、本発明における第1回復工程に相当する。
【0066】
ステップS5(印刷処理の再開)
テンションセンサTP3の出力がF1から目標値Lnへと回復した後、印刷処理を再開する。すなわち目標値Lnへと回復したテンションセンサTP3などの出力をトリガーとして、制御部51はステップS1と同様に、駆動ローラM1~M4を順方向へ回転させる(
図4(c))。当該回転制御によって連続紙WPは再び搬送方向J1へ搬送され、印刷部19による印刷が行われる。
【0067】
このように、ステップS3において検出される、テンションセンサTP3の出力値が基準値Bo以上である場合、ステップS3からステップS4に移行し、ステップS4に係る処理によってテンションが調整される。一方、テンションセンサTP3の出力値が基準値Boより小さい場合、ステップS3からステップS11へと移行する。
【0068】
ステップS11(ニップの解除)
テンションセンサTP3の出力が基準値Boより小さい場合、
図2(d)または
図5(a)に示すように、下流領域Wbの連続紙WPに発生する弛みが大きく、当該部分の連続紙WPに座屈が発生することもある。さらにステップS2に係る停止処理を行う際に、大きく弛んでいる連続紙WPの一部が、慣性に起因する駆動ローラM3の回転によって、下流領域Wbの下流側に配設されているニップローラ25cに巻き込まれることがある。弛んでいる連続紙WPがニップローラ25cに巻き込まれている状態で連続紙WPを搬送させると、連続紙WPが破断する事態が懸念される。
【0069】
そこで下流領域Wbのテンションが基準値Bo以上である場合、ステップS11に移行してテンション調整処理を開始する。まず、従動ローラ移動部53は制御部51の制御に従って、ニップローラ25cに設けられている従動ローラN3を移動させる。当該移動制御によって、
図5(b)に示すように従動ローラN3は駆動ローラM4から離れるように移動する。その結果、ニップローラ25cによる連続紙WPのニップ状態が解除される。
【0070】
ニップローラ25cによるニップが解除されることにより、下流領域Wbに蓄積していた連続紙WPの弛みはニップローラ25cによって挟持されていた部分を越えてさらに下流側へと伝達されていく。その結果、
図5(b)に示すように、下流領域Wbにおける連続紙WPの弛みは相対的に小さくなるので、下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションはある程度上昇する。
【0071】
本実施例では、ニップローラ25cによるニップ状態を解除させた後、
図5(c)に示すように、排紙部7のバッファ機構7bに設けられているダンサローラ71を作動させる。すなわち、ダンサローラ71が点線で示される初期位置から実線で示される位置へと上昇することにより、連続紙WPは下流側へと引っ張られる。そのため、ダンサローラ71の作動により、駆動ローラM3の下流側における連続紙WPに発生している弛みの少なくとも一部が解消され、下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションはさらに上昇する。
【0072】
ステップS12(ニップの再実行)
ニップローラ25cによるニップを解除してから所定時間が経過し、下流領域Wbにおける連続紙WPの弛みが小さくなった後、従動ローラ移動部53を制御することによってニップローラ25cによる連続紙WPのニップを再びオンの状態にする。すなわち
図6に示すように、従動ローラ移動部53は制御部51の制御に従って、駆動ローラM4に近づくように従動ローラN3を移動させる。当該駆動制御により、ニップローラ25cは再び連続紙WPを挟持するようになる。すなわちニップローラ25cによるニップが再びオンになった状態となり、駆動ローラM4による連続紙WPの搬送が可能となる。
【0073】
ステップS13(テンションの検出)
ステップS11~S12に係る処理により、下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションが上昇する。そこで、テンションセンサTP3の出力値を再度測定することによって下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションを検出する。そして、テンションセンサTP3の出力に応じてその後の処理を分岐する(ステップT2)。
【0074】
ステップS13において検出されたテンションセンサTP3の出力が基準値Bo以上である場合、
図4(a)に示すように、下流領域Wbの連続紙WPに発生する弛みが比較的小さくなっている。すなわち、連続紙WPがニップローラ25cを通過しても座屈等の発生または連続紙WPの破断といった事態が発生するリスクは非常に小さい。
【0075】
そこで下流領域Wbのテンションが基準値Bo以上である場合、ステップS4に移行してテンション調整処理を開始する。すなわち
図4(b)に示すように、各々のニップローラ25a~25cが連続紙WPを挟持する状態を維持しつつ、下流領域Wbの下流に配設されている駆動ローラM4を順方向に回転させる。当該回転によって連続紙WPは下流側へと引っ張られ、連続紙WPのテンションは目標値Lnへと回復する。その後ステップS5へと移行し、印刷処理を再開する。
【0076】
ステップS14(連続紙の巻き戻し)
一方でステップS13において検出されたテンションセンサTP3の出力が基準値Boより小さい場合、ステップS14へと移行する。この場合、
図7(a)に示すように、ステップS11においてニップ状態を解除してもなお、下流領域Wbにおける連続紙WPは大きく弛んでいる状態となっている。
【0077】
ステップS14に移行すると、
図7(b)に示すように、駆動モータM2を逆方向に回転させることにより、連続紙WPを搬送方向J1とは逆方向へ搬送させる(符号J2を参照)。このとき、ロータリエンコーダ13などを用いて、連続紙WPが逆方向J2へと搬送される距離を測定する。測定された当該距離は、搬送距離V1として記憶部57に記憶される。
【0078】
ニップローラ25cによるニップがオンとなっている状態で連続紙WPを逆方向J2へと搬送することにより、連続紙WPは逆方向J2へと引かれていく。また、下流領域Wbにおける連続紙WPの弛みの一部は、上流領域における連続紙WPへと分散される。従って、下流領域Wbに発生していた連続紙WPの弛みはさらに解消され、連続紙WPのテンションが上昇する。また、連続紙WPは逆方向J2へと搬送されるので、下流領域Wbにおいて弛んだ状態の連続紙WPがニップローラ25cなどに巻き込まれて破損するという事態が発生することを防止できる。
【0079】
本実施例では、連続紙WPを逆方向J2へ搬送させた後、
図8に示すように、給紙部5のバッファ機構5bに設けられているダンサローラ61を作動させる。すなわち、ダンサローラ61が点線で示される初期位置から実線で示される位置へと上昇することにより、連続紙WPは上流側へと引かれる。そのため、ダンサローラ61の作動によって連続紙WPのテンションはさらに上昇する。
【0080】
本実施例では駆動ローラM2を逆回転させて連続紙WPを逆方向J2に搬送させた後、駆動ローラM2の回転を停止させた状態でダンサローラ61を作動させているが、駆動ローラM2を逆回転させつつダンサローラ61を作動させてもよい。ダンサローラ61を作動させてテンションをさらに回復させた後、ステップS15に移行する。
【0081】
ステップS15(テンションの検出)
ステップS14に係る処理により、下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションが上昇する。そこで、テンションセンサTP3の出力値を再度測定することによって下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションを検出する。そして、テンションセンサTP3の出力に応じてその後の処理を分岐する(ステップT3)。
【0082】
ステップS16(連続紙の送り出し)
ステップS15において検出されたテンションセンサTP3の出力が基準値Bo以上である場合、連続紙WPのテンションは改善されていると判断され、ステップS15からステップS16へと移行する。ステップS16に移行すると、制御部51は駆動ローラM1~M4の各々を順方向に回転させるように制御する。当該制御によって、
図9に示すように、連続紙WPは搬送方向J1へと搬送される。
【0083】
本実施例において、ステップS16において連続紙WPが搬送方向J1へと搬送される距離は、ステップS14において記憶されている搬送距離V1となるように、駆動ローラM1~M4の回転が制御される。ステップS14において連続紙WPが逆方向J2へ搬送される距離と、ステップS16において連続紙WPが搬送方向J1へ搬送される距離とを等しくすることにより、連続紙WPの位置は、ステップS2に係る印刷停止処理を実行した時点の位置に復帰することとなる。そのため、ステップS5において印刷処理を再開させた場合に、印刷すべき情報が当初予定された場所から外れるという事態を回避できる。
【0084】
またステップS16において、駆動ローラM1~M4のうち上流側の駆動ローラの回転量と比べて下流側の駆動ローラの回転量の方が大きくなるように、駆動ローラM1~M4の回転量を制御することが好ましい。このように各々の駆動ローラM1~M4の回転量を制御することにより、連続紙WPを搬送方向J1へ送り出す際に連続紙WPは下流側に引っ張る力が付与される。そのため、連続紙WPを送り出しつつ連続紙WPのテンションを目標値Lnへと回復させることができる。
【0085】
テンションセンサTP2またはテンションセンサTP3などの出力値を参照し、連続紙WPのテンションが目標値Lnに回復したことを確認した後、ステップS5へと移行して印刷処理を再開させる。すなわち制御部51はステップS1と同様に、駆動ローラM1~M4を順方向へ回転させる。当該回転制御によって連続紙WPは再び搬送方向J1へ搬送され、印刷部19による印刷が行われる。
【0086】
ステップS17(報知処理)
ステップS15において検出されたテンションセンサTP3の出力が基準値Boより小さい場合、ステップS11以降に係る自動テンション調整処理では十分に連続紙WPのテンションが回復されていない。このような場合、一例として、既に連続紙WPが短手方向にわたって破断されているような事態が発生していると考えられる。そこで、テンションセンサTP3の出力が基準値Boより小さい場合、ステップS15からステップS17へと移行する。
【0087】
ステップS17へ移行することにより、制御部51は報知部55を作動させる。報知部55は、警報音またはランプの点灯などによって、自動によるテンション調整処理では連続紙WPのテンションが回復していない旨をオペレータに報知する。オペレータは報知部55の作動を検知することにより、手動による連続紙WPの調整を行う。一例として、破断されている連続紙WPを除去するとともに新たな連続紙WPを搬送経路に沿って巻回させた後、印刷処理を再開させる。ステップS3において検出されるテンションセンサTP3の出力が基準値Boより小さい場合に行われる、ステップS11以降に係る一連の処理は、本発明における第2回復工程に相当する。
【0088】
<実施例の構成による効果>
従来の印刷装置では、連続紙WPの搬送および印刷を停止させた場合、当該搬送および印刷を再開させる際に、連続紙WPのテンションの低下に起因して搬送エラーが高頻度で発生する。低下した連続紙WPのテンションを手動で回復させる場合、所要時間が長期化するとともにオペレータの負担が増大する。
【0089】
本発明では、連続紙WPの搬送が停止している状態における連続紙WPのテンションの値に応じて、連続紙WPのテンションを目標値Lnへと回復させる工程を変更させる。すなわち比較的緩やかに搬送を停止させる場合、慣性が大きい駆動ローラM3の下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションの低下量は比較的小さく、また連続紙WPに発生する弛みも比較的小さい。このように連続紙WPのテンションが予め定めた基準値Bo以上である場合、従動ローラ移動部53を作動させることなく、駆動ローラM4などを駆動させることによって連続紙WPのテンションを回復させる。
【0090】
すなわち、ニップローラ25cなどによる連続紙WPのニップ状態のオンオフを切り換える操作を必要としないので、テンション回復に要する工程および時間を短縮できる。そして連続紙WPに発生している弛みが小さいので、ニップローラ25cによるニップがオンの状態を維持しつつ連続紙WPを搬送しても、ニップローラ25cに連続紙WPが巻き込まれて破断される事態が発生するリスクも非常に小さい。従って、テンション回復工程をより迅速かつより確実に完了することができる。
【0091】
一方、緊急性が高く比較的急激に搬送を停止させる場合、慣性が大きい駆動ローラM3の下流領域Wbにおける連続紙WPに発生する弛みが比較的大きく、また連続紙WPのテンションの低下量は比較的大きい。このような弛みの大きい状態で連続紙WPを搬送方向J1へ引っ張るように搬送させると、大きく弛んだ連続紙WPがニップローラ25cに巻き込まれて座屈し、破断される問題が懸念される。
【0092】
また、一般的な印刷装置において、連続紙WPを逆方向J2へと搬送できる距離には制限があるので、連続紙WPを逆方向J2へと搬送することによって連続紙WPのテンションを十分に回復させることは困難である。すなわち、給紙部5の送り出し機構5aを例とする、多量の連続紙WPが装填されている構成に対して弛みが伝達されることを防止することを目的として、連続紙WPを逆方向J2へと搬送できる距離には制限が課される。一例として、一般的な印刷装置において逆方向J2へ搬送できる距離の上限は40mm~60mm程度である。
【0093】
そこで連続紙WPのテンションが基準値Boより低い場合、従動ローラ移動部53を作動させ、ニップローラ25cによる連続紙WPのニップ状態を解除する。ニップ状態を一旦解除させることによって、下流領域Wbに蓄積していた連続紙WPの弛みは、下流領域Wbからさらに下流の領域へと分散される。その結果、下流領域Wbにおけるテンションを上昇させることができる。
【0094】
そしてニップ解除後に所定時間が経過してから再度ニップ状態にさせ、連続紙WPを逆方向J2へと搬送させる。連続紙WPを搬送方向J1ではなく逆方向J2へと引っ張るように搬送させるので、弛みが発生している下流領域Wbの連続紙WPがニップローラ25cに巻き込まれて破断するという事態を回避できる。また、ニップを一旦解除していることによって、下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションは既にある程度回復している。そのため、逆方向J2へ搬送させる距離が短い距離に制限されている場合であっても、当該距離の搬送によって、連続紙WPのテンションを目標値Lnへと回復させることが容易となる。
【0095】
このように、駆動ローラM1~M4の駆動を停止させた状態における連続紙WPのテンションの値に応じて、自動でテンションを回復させる工程の内容を変更させることにより、連続紙WPのテンションを回復させる処理をより適切に実行できる。すなわち緩やかに駆動ローラM1~M4を停止しており連続紙WPに発生する弛みの程度が小さい場合、短時間の動作で完了できるテンション調整工程、すなわちステップS4に係るテンション回復過程を実行する。そのため、連続紙WPに発生する弛みが小さいにも関わらず処理時間が長い処理を行う結果、印刷装置の稼働効率が無用に低下するという事態を回避できる。
【0096】
そして急激に駆動ローラM1~M4を停止しており連続紙WPに発生する弛みの程度が大きい場合、稼働時間は長くともテンションの回復効率が大きいテンション調整工程、すなわちステップS11以降に係るテンション回復過程を実行する。そのため、連続紙WPに発生する弛みが大きいにも関わらずテンションの回復効率が小さい処理を行う結果、印刷再開後に連続紙WPに破断が発生する事態や連続紙WPの搬送エラーが発生する事態を回避できる。
【0097】
なお、今回開示された実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲、並びに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0098】
(1)上述した実施例において、ステップS4に係る工程は下流領域Wbより下流側にある駆動ローラM4を順方向に回転駆動させる制御のみによって連続紙WPのテンションを上昇させているが、ステップS4に係る工程はこれに限られない。すなわち
図10に示すように、下流領域Wbより下流側に配設されている駆動ローラM4を順方向に回転駆動させつつ、下流領域Wbより上流側に配設されている駆動ローラM2を逆方向に回転駆動させてもよい。
【0099】
この場合、連続紙WPは搬送方向J1へ引かれるだけでなく逆方向J2へも引かれるので、連続紙WPのテンションをより効率よく上昇させることができる。なお、下流領域Wbより上流側に配設されている駆動ローラM2を逆方向に回転駆動させる制御のみによってステップS4に係る工程を実行してもよい。
【0100】
(2)上述した実施例において、ステップS11においてダンサローラ71を作動させることによって駆動ローラM3より下流側の連続紙WPに発生している弛みを減少させる構成を有しているがこれに限られない。すなわち、インクジェット印刷システム1において、ダンサローラ71を配設しなくともよい。同様に、インクジェット印刷システム1において、ダンサローラ61を配設しなくともよい。
【0101】
(3)上述した実施例において、駆動ローラM3の上流側に配設されているニップローラとして、ニップローラ25bを本発明に係る第2のニップローラに相当するものを示しているが、これに限られない。すなわち、ニップローラ25bの代わりにニップローラ25aを本発明に係る第2のニップローラに相当するものとしてもよい。この場合、ステップS14などにおいて駆動ローラM1を逆方向に回転駆動させることによって、連続紙WPを逆方向J2へ巻き戻してよい。また、ニップローラ25bおよびニップローラ25aの両方を本発明に係る第2のニップローラに相当するものとしてもよい。すなわち、ステップS14などにおいて、駆動ローラM1および駆動ローラM2の両方を逆方向に回転駆動させてもよい。
【0102】
(4)上述した実施例において、駆動ローラM3の下流側に配設されているテンションセンサTP3の出力値を検出し、当該出力値と基準値Boとの比較によってテンション調整処理の内容を異なられている構成を例示しているが、これに限られない。すなわち、駆動ローラM3の上流側に配設されているテンションセンサTP2の出力を計測してもよい。この場合、テンションセンサTP2が本発明における第2のテンションセンサに相当する。
【0103】
このような変形例では、一例としてステップS16において、テンションセンサTP3の出力値を検出することによって下流領域Wbにおける連続紙WPのテンションを測定するだけでなく、テンションセンサTP2の出力値を検出することによって上流領域Wfにおける連続紙WPのテンションをも測定する。そして下流領域Wbおよび上流領域Wfの両方において連続紙WPのテンションが目標値Lnに回復することによって、ステップS5に移行させる。
【0104】
テンションセンサTP2によって上流領域Wfのテンションを測定する場合、下流領域Wbのみのテンションを測定する場合と比べて広い範囲についてテンションを監視するので、連続紙WPの一部に弛みが残った状態で印刷工程を再開するといった事態が発生することをより確実に回避できる。なお、テンションセンサTP2の代わりにテンションセンサTP1を本発明における第2のテンションセンサとして利用してもよい。
【0105】
(5)上述した実施例において、連続紙WPを印刷媒体として用いる構成に限られない。印刷媒体の他の例として、フィルムを例とする長尺状の薄層材料が挙げられる。
【0106】
(6)上述した実施例において、インクジェット印刷システムを本発明に係る印刷装置として例示したが、インクジェット式以外の印刷装置、例えばオフセット印刷機についても本発明に係る構成を適用できる。
【0107】
(7)上述した実施例において、連続紙WPの搬送経路は
図1のような構成に限られない。また、駆動ローラM1~M4、従動ローラN1~N3、搬送ローラ11の形状、数、および配置は、本発明に係る効果を得られる限りにおいて適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0108】
1 …インクジェット印刷システム
3 …インクジェット印刷装置
5 …給紙部
5a …送り出し機構
7 …排紙部
7a …巻き取り機構
11 …搬送ローラ
13 …ロータリエンコーダ
19 …印刷部
19a~19d …インクジェットヘッド
23 …検査部
25a~25c …ニップローラ
TP1~TP3 …テンションセンサ
51 …制御部
53 …従動ローラ移動部
55 …報知部
57 …記憶部
M1 …駆動ローラ
M2 …駆動ローラ
M3 …駆動ローラ(主ローラ)
M4 …駆動ローラ
N1~N3 …従動ローラ