(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】塗布具付容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230515BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20230515BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230515BHJP
B65D 51/32 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A45D34/04 515A
A45D34/04 510D
A45D34/00 510A
B65D83/00 J
B65D51/32 100
(21)【出願番号】P 2019239692
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 友梨
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-084267(JP,A)
【文献】特開2018-122869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/00 - 34/06
B65D 83/00
B65D 51/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器体と、
前記容器体の口部に着脱可能に装着されるキャップと、
前記キャップに支持され、該キャップを前記口部に装着した状態で前記容器体の内部に配置される塗布具と、を備え、
前記口部の内側には、前記塗布具に摺動可能な環状のしごき片が設けられており、
前記塗布具は、前記キャップに支持される軸部と、軸部の先端側に位置する中空の塗布体とを有し、
前記塗布具を前記容器体から抜き出す過程で、前記軸部に対して前記塗布体がスライドする、または、前記キャップに対して前記塗布具がスライドすることによって、前記塗布体の先端に付着した内容物が該塗布体の先端開口か
ら内部空間に吸い上げられるように構成されていることを特徴とする塗布具付容器。
【請求項2】
前記塗布具は、前記キャップの内側に固定保持されるとともに前記軸部と一体に連なる基部を有し、
前記塗布体は、前記軸部に対してスライド可能に構成されている、請求項1に記載の塗布具付容器。
【請求項3】
前記軸部の外周面と前記塗布体の内周面との間に、前記軸部に対する前記塗布体のスライド範囲を規制する規制部が設けられている、請求項2に記載の塗布具付容器。
【請求項4】
前記軸部の外周面に、前記塗布具を前記容器体から抜き出すことにより前記軸部に対してスライドした前記塗布体の戻りを適度に規制する戻り規制部が設けられている、請求項2又は3に記載の塗布具付容器。
【請求項5】
前記塗布具は、前記キャップの内側で該キャップに対してスライド可能に構成されるとともに前記軸部と一体に連なる基部を有し、
前記キャップの内側に、前記塗布具のスライドによって容積が変化するキャップ内空間が区画形成されており、
前記キャップ内空間は、前記軸部に形成された連通路を介して前記先端開口に連通している、請求項1に記載の塗布具付容器。
【請求項6】
前記基部の外周面と前記キャップの内周面との間に、前記キャップに対する前記塗布具のスライド範囲を規制する規制部が設けられている、請求項5に記載の塗布具付容器。
【請求項7】
前記キャップの内周面に、前記塗布具を前記容器体から抜き出すことにより前記キャップに対してスライドした前記塗布具の戻りを適度に規制する戻り規制部が設けられている、請求項5又は6に記載の塗布具付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体に収容された内容物を、対象物に塗布するための塗布具を備えた塗布具付容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗布具付容器として、内容物を収容した容器体と、容器体の口部に装着されるキャップと、当該キャップに固定され、該キャップを口部に装着した状態で容器体内に配置される塗布具と、を備えた構成が知られている。このような塗布具付容器は、容器体の内部に塗布具を挿入してブラシ等の塗布体に内容物を付着させることで、当該塗布体に付着した内容物を対象物に塗布することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような塗布具付容器では、塗布具に余分な内容物が付着すると、塗布具を使って内容物を塗布する際に内容物が垂れ落ちたり手に付着したりする虞があった。そこで、容器体の口部の内側に筒状の塗布量調整部材を設け、余分な内容物を除去する技術が提案されている。この塗布量調整部材には、径方向内側に突出した環状のしごき片が設けられており、このしごき片の内側に塗布具が挿通され、その外周面にしごき片の内周部が摺接されている。このような塗布量調整部材を備えた塗布具付容器によれば、塗布具を容器体の口部から抜き出す際に、塗布具の外周面に付着した余分な内容物をしごき片によってかき落とすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなしごき片は、塗布具の外周面に摺接するものの塗布具の先端には接触しないため、塗布具の先端に付着した余分な内容物を除去することは困難である。そのため、塗布具の使用時に、塗布具先端に付着した余分な内容物が垂れ落ちたり手に付着したりする虞があった。
【0006】
それゆえ、本発明は、塗布具の使用時における液垂れをより確実に抑制することが可能な塗布具付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の塗布具付容器は、内容物を収容する容器体と、
前記容器体の口部に着脱可能に装着されるキャップと、
前記キャップに支持され、該キャップを前記口部に装着した状態で前記容器体の内部に配置される塗布具と、を備え、
前記口部の内側には、前記塗布具に摺動可能な環状のしごき片が設けられており、
前記塗布具は、前記キャップに支持される軸部と、軸部の先端側に位置する中空の塗布体とを有し、
前記塗布具を前記容器体から抜き出す過程で、前記軸部に対して前記塗布体がスライドする、または、前記キャップに対して前記塗布具がスライドすることによって、前記塗布体の先端に付着した内容物が該塗布体の先端開口から内部空間に吸い上げられるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明の塗布具付容器にあっては、前記塗布具は、前記キャップの内側に固定保持されるとともに前記軸部と一体に連なる基部を有し、
前記塗布体は、前記軸部に対してスライド可能に構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の塗布具付容器にあっては、前記軸部の外周面と前記塗布体の内周面との間に、前記軸部に対する前記塗布体のスライド範囲を規制する規制部が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の塗布具付容器にあっては、前記軸部の外周面に、前記塗布具を前記容器体から抜き出すことにより前記軸部に対してスライドした前記塗布体の戻りを適度に規制する戻り規制部が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の塗布具付容器にあっては、前記塗布具は、前記キャップの内側で該キャップに対してスライド可能に構成されるとともに前記軸部と一体に連なる基部を有し、
前記キャップの内側に、前記塗布具のスライドによって容積が変化するキャップ内空間が区画形成されており、
前記キャップ内空間は、前記軸部に形成された連通路を介して前記先端開口に連通していることが好ましい。
【0012】
また、本発明の塗布具付容器にあっては、前記基部の外周面と前記キャップの内周面との間に、前記キャップに対する前記塗布具のスライド範囲を規制する規制部が設けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の塗布具付容器にあっては、前記キャップの内周面に、前記塗布具を前記容器体から抜き出すことにより前記キャップに対してスライドした前記塗布具の戻りを適度に規制する戻り規制部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗布具の使用時における液垂れをより確実に抑制することが可能な塗布具付容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る塗布具付容器の、側面視での断面図である。
【
図2】
図1の塗布具付容器において、容器体から塗布具を引き上げる過程を示す断面図である。
【
図3】
図2に示す状態からさらに塗布具を引き上げた状態を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す塗布具付容器の部分拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る塗布具付容器の、側面視での断面図である。
【
図6】
図5の塗布具付容器において、容器体から塗布具を引き上げる過程を示す断面図である。
【
図7】
図6に示す状態からさらに塗布具を引き上げた状態を示す断面図である。
【
図8】
図7に示す塗布具付容器の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施形態をより具体的に例示説明する。
【0017】
図1~4に示すように、本実施形態に係る塗布具付容器1は、容器体10、キャップ20及び塗布具30を有している。容器体10は、口部11と、口部11の下方に連なる胴部12と、胴部12の下端を閉塞する底部13とを備えたボトル形状となっている。口部11は円筒状となっており、その外周面には雄ねじ11aが一体に設けられている。容器体10の内部は内容物を収容する収容空間Sとなっている。本実施形態では、収容空間Sに内容物としてマスカラが収容される。
【0018】
なお、容器体10に収容される内容物は、上記したマスカラに限らず、例えばマニキュアなどの他の液状の化粧料など、塗布具30により塗布することができるものであれば、種々のものを採用することができる。また、容器体10は、口部11を有していれば、ボトル状に限らず、その形状は種々変更可能である。
【0019】
容器体10の口部11には、塗布量調整部材40が装着されている。塗布量調整部材40は、口部11の上面に載置される円環状のフランジ部41と、フランジ部41の内周縁部から下方に延びる円筒状の筒壁42と、筒壁42の下方に連なり径方向内側に向けて傾斜する環状のしごき片43とを有する。これにより、口部11の内側には、塗布具30の外周面に摺動可能な環状のしごき片43が設けられる。なお、塗布具30の外周面に摺動可能な環状の構成であれば、しごき片43の形状は適宜変更可能である。
【0020】
キャップ20は、頂壁部21と周壁部22とを有する有頂円筒状に形成されている。なお、本例のキャップ20は二重構造となっており、キャップ20の外殻を構成する外蓋部材20aと、外蓋部材20aの内側に接着等により固定、もしくは一体成形された内蓋部材20bとを有する。
【0021】
周壁部22の内周面(内蓋部材20bの内周面)には雌ねじ22aが一体に設けられ、雌ねじ22aが口部11の雄ねじ11aにねじ結合することで、キャップ20は口部11に着脱自在に装着される。口部11にキャップ20が装着されることで、口部11は閉塞される。
【0022】
塗布具30は、キャップ20に支持され、キャップ20を口部11に装着した
図1の閉塞状態において容器体10の内部(収容空間S)に配置される。塗布具30は、キャップ20の内側に固定保持される基部31と、基部31から延びる棒状の軸部32と、軸部32の先端部側に位置する中空の塗布体33とを有する。塗布体33は、軸部32に対して軸方向(軸線Oに沿う方向)に所定の範囲内でスライド可能に構成されている。
【0023】
基部31は、キャップ20の周壁部22の内周面に嵌合保持される円筒状の嵌合筒部31aと、嵌合筒部31aの下端部を閉塞する底壁31bとを有する。嵌合筒部31aは、キャップ20内で雌ねじ22aよりも上方に位置する。
【0024】
軸部32は略円柱状であり、その一端は底壁31bの中央部分に一体に連なっている。軸部32の他端(下端)側には、軸部32の上側部分よりも小径の塗布体支持部32aが設けられている。塗布体支持部32aの外周面には、係合凹部32b(規制部)が形成されている(
図4参照)。
【0025】
図1、4に示すように、塗布体33は、塗布体支持部32aの外周側に配置されて該塗布体支持部32aに支持される円筒状のスライド周壁33aと、スライド周壁33aの外周面に一体に設けられたブラシ部33bと、を有する。また、塗布体33は、スライド周壁33aの下端開口である先端開口33cと、当該先端開口33cに連なる内部空間33d(スライド周壁33aの内側の空間)とを有する。また、スライド周壁33aの内周面には、軸部32の係合凹部32bに配置される係合凸部33e(規制部)が設けられている。なお、スライド周壁33aの内周面に係合凹部を設けて、塗布体支持部32aの外周面に係合凸部を設けてもよい。また、塗布体支持部32aの外周面と、スライド周壁33aの内周面との一方側に凹部を設けるとともに、他方側に当該凹部に係合する凸部を設けること等により、軸部32に対する塗布体33の回転を抑制するようにしてもよい。また、上記係合凹部32bと係合凸部33eとを周方向の一部のみに設けることにより、係合凹部32bと係合凸部33eとを利用して軸部32に対する塗布体33の回転を抑制してもよい。なお、軸部32に対して塗布体33が回転可能であってもよい。
【0026】
図1に示すキャップ20の閉塞状態において、塗布体33は軸部32に対して最も上側となる上端位置に配置される。本例では、塗布体33の上端位置において、軸部32の段差部32dに塗布体33の上端部が当接する。また、塗布体33の上端位置において、軸部32の下端面32cが塗布体33の先端開口33cを覆うように配置されている。すなわち、塗布体33の上端位置において、軸部32の塗布体支持部32aが塗布体33の内部空間33dの全体を満たしている。なお、塗布体33の上端位置において、軸部32の下端面32cは、塗布体33の先端開口33cと同一の軸方向位置にあってもよいし、先端開口33cよりも上方又は下方に位置していてもよい。
【0027】
図2、3、4は、容器体10から塗布具30を上方に引き上げる様子を示している。本例では、
図1に示す閉塞状態から、キャップ20を螺脱方向に回転させて口部11から取り外すことにより、塗布具30をキャップ20と共に上方に引き上げて容器体10から抜き出すことができる。
【0028】
図2に示すように、塗布具30を引き上げる過程(しごき片43が塗布具30の塗布体33に摺動する前の段階)において、塗布具30の先端には余分な内容物Lが付着している。当該余分な内容物Lは、塗布体33の先端開口33cを覆うように付着している。
【0029】
図2に示す状態から、さらに塗布具30を引き上げ、
図3、4に示すようにしごき片43が塗布具30の塗布体33に摺動すると、塗布体33は軸部32に対して、キャップ20から離間する方向(
図3、4における下方)にスライドする。これにより、余分な内容物Lが内部空間33dに収容され、表面張力等により内部空間33dに保持(貯留)される。なお、
図3、4に示すように軸部32に設けた係合凹部32bの下端部に係合凸部33eが係合することにより、塗布体33のキャップ20から離間する方向のスライドが停止される。このように、塗布具30を容器体10から抜き出す過程において塗布体33が軸部32に対してスライドする軸方向の距離(可動範囲)は、軸部32に設けた係合凹部32bと、塗布体33の内周面に設けた係合凸部33eとの関係によって決定される。
図3、4は、塗布体33が上端位置から最も離れた下端位置にある状態(スライド状態)を示している。
【0030】
また、塗布具30を容器体10から抜き出す過程において、しごき片43が塗布具30の塗布体33に摺動することにより、ブラシ部33bに付着した余分な内容物は当該しごき片43によってかき落とされる。そして、塗布具30を容器体10から抜き出すことにより、ブラシ部33bに適切に付着した内容物を対象物に塗布することができる。
【0031】
また、内容物を塗布した後は、塗布具30を容器体10に差し込む際にしごき片43が塗布体33に摺動することにより、塗布体33は下端位置から
図1に示す上端位置までスライドする。この時、塗布体33の内部空間33dに保持された余分な内容物Lは、軸部32によって先端開口33cから押し出されて、容器体10の収容空間Sに戻る。すなわち、塗布具30を容器体10に差し込むだけで、塗布具30は再び使用可能(先端開口33cから余分な内容物Lを内部空間33dに吸い上げ可能)な状態となる。
【0032】
以上のように、本実施形態の塗布具付容器1にあっては、内容物を収容する容器体10と、容器体10の口部11に着脱可能に装着されるキャップ20と、キャップ20に支持され、キャップ20を口部11に装着した状態で容器体10の内部に配置される塗布具30と、を備え、口部11の内側には、塗布具30に摺動可能な環状のしごき片43が設けられており、塗布具30は、キャップ20に支持される軸部32と、軸部32の先端側に位置する中空の塗布体33とを有し、塗布具30を容器体10から抜き出す過程で、軸部32に対して塗布体33がスライドすることによって塗布体33の先端に付着した内容物Lが塗布体33の先端開口33cから内部空間33dに吸い上げられるように構成されている。このような構成とすることで、容器体10から塗布具30を抜き出す過程において、塗布具30の先端に付着した余分な内容物Lを塗布具30の内部空間33dに保持することができる。そのため、塗布具30の使用時に、塗布具30先端に付着した余分な内容物Lが垂れ落ちたり手に付着したりすることを抑制することができる。
【0033】
したがって、本実施形態の塗布具付容器1によれば、塗布具30の使用時における液垂れをより確実に抑制することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の塗布具付容器1によれば、例えば、容器体10から塗布具30を抜き出した後に塗布具30の先端に付着した余分な内容物Lを容器体10の口部11に擦り付けてかき落とすといった作業が不要となる。その結果、塗布具30を擦り付けることに起因して容器体10の口部11が汚れてしまうといったことを防止することもできる。
【0035】
また、本実施形態の塗布具付容器1にあっては、軸部32の外周面と塗布体33の内周面との間に、軸部32に対する塗布体33のスライド範囲を規制する規制部(係合凹部32b及び係合凸部33e)が設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、軸部32に対する塗布体33のスライドによる内容物Lの吸い上げ量を適切に設定することができ、また、規制部が外部に露出しないようにすることができる。
【0036】
また、本実施形態の塗布具付容器1にあっては、軸部32の外周面に、塗布具30を容器体10から抜き出すことにより軸部32に対してスライドした(スライド状態の)塗布体33の戻り(キャップ20に近接する方向のスライド)を適度に規制する戻り規制部が設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、ブラシ部33bで内容物を対象物に塗布する際に、塗布体33がキャップ20側にスライドして余分な内容物Lが内部空間33dから押し出されてしまうことを防止することができる。その結果、塗布具30を使用する際の液垂れを、より確実に抑制することができる。本例では、
図4に示すように、塗布体支持部32aの外周面の上端部に設けられた縦リブ32eが、戻り規制部を構成している。すなわち、縦リブ32eがスライド状態の塗布体33に係合することにより、軸部32に対する塗布体33の上方へのスライドが適度に規制される。なお、塗布具30を容器体10に差し込むことにより、塗布体33は下端位置にあるスライド状態から
図1に示す上端位置までスライドして戻り、その際に塗布体33の内周面は縦リブ32e上に乗り上げる。
【0037】
なお、塗布具付容器1を構成する容器体10、キャップ20及び塗布具30は全て合成樹脂製とすることができるが、これに限られず、例えば容器体10はガラス製等としてもよい。また、塗布体33、塗布量調整部材40は、例えばゴムまたはエラストマ等の軟材質で形成されていることが好ましい。
【0038】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図5~8に示す塗布具付容器2は、キャップ20に対して塗布具30が軸方向にスライドするように構成されている。また、キャップ20の内側には、キャップ20に対する塗布具30のスライドにより容積が変化するキャップ内空間Cが設けられている。キャップ内空間Cは、キャップ20と塗布具30の基部31によって区画形成されている。キャップ内空間Cは、塗布具30の軸部32を貫通する連通路Pを介して塗布体33の内部空間33d及び先端開口33cに連通している。なお、本例の塗布体33は、上記実施形態のように軸部32に対してスライドしない。すなわち、本例の塗布体33は軸部32及び基部31に対して軸方向に移動しないように構成されている。
【0040】
図5、8に示すように、キャップ20は、頂壁部21の下面から垂下する円筒状のガイド壁21aを有する。また、キャップ20の周壁部22の内周面には、雌ねじ22aよりも上方に位置するストッパー凸部22bが設けられている。なお、ストッパー凸部22bの上方には、ストッパー凸部22bよりも径方向内側への突出量の小さい乗り越え凸部22c(戻り規制部)が設けられている。
【0041】
塗布具30の基部31は、キャップ20に対して所定の範囲内で軸方向にスライド可能に支持される。基部31は、キャップ20の周壁部22の内周面に沿って配置される円筒状のスライド筒部31cを有する。スライド筒部31cの内周面は、ガイド壁21aの外周面に沿って配置される。スライド筒部31cの上端部近傍には、径方向外側に向けて斜めに延びる環状の摺動片31dが設けられている。なお、摺動片31dは、例えばゴムまたはエラストマ等の軟材質で形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、キャップ20と基部31との間の気密性(シール性)を高めることができる。
【0042】
また、スライド筒部31cの外周面には、キャップ20のストッパー凸部22bに係合することでキャップ20に対する塗布具30のスライドを停止させる突起部31eが設けられている。突起部31eは、キャップ20に対する塗布具30のスライド過程で乗り越え凸部22cに接触するものの、当該乗り越え凸部22cを乗り越えることができる。
【0043】
なお、
図5に示す状態において塗布量調整部材40のフランジ部41に当接する基部31の下面(底壁31bの下面)は、例えばゴムまたはエラストマ等の軟材質で形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、キャップ20の閉塞状態における容器体10の収容空間Sの気密性(シール性)を高めることができる。
【0044】
なお、本例の塗布具30は、軟材質の部分(摺動片31d、底壁31bの下面、及び塗布体33等)と通常の合成樹脂からなる部分とを二色成形等により一体成形した部材とすることができるが、これに限られず、例えば軟材質の部分と通常の合成樹脂製の部分とを別々に成形して組み合わせてもよい。また、塗布具30は、軟材質を含まない合成樹脂製の部材としてもよい。
【0045】
図6、7、8は、容器体10から塗布具30を上方に引き上げる様子を示している。本例では、
図5に示す閉塞状態から、キャップ20を螺脱方向に回転させて口部11から取り外すことにより、塗布具30をキャップ20と共に上方に引き上げることができる。
【0046】
図6に示すように、塗布具30を引き上げる過程(しごき片43が塗布具30の塗布体33に摺動する前の段階)において、塗布体33の先端には余分な内容物Lが付着している。当該余分な内容物Lは、塗布体33の先端開口33cを覆うように付着している。
【0047】
図6に示す状態から、さらに塗布具30を引き上げる過程で、
図7、8に示すようにしごき片43が塗布体33に摺動すると、塗布具30は、キャップ20から離間する方向(
図7、8における下方)に軸方向にスライドする。これにより、キャップ内空間Cの容積が拡大して、当該キャップ内空間C、連通路P、塗布体33の内部空間33dには負圧が生じ、先端開口33cから余分な内容物Lが内部空間33dに吸い上げられて内部空間33dに保持される。なお、
図7、8に示すように突起部31eがキャップ20のストッパー凸部22bに係合することでキャップ20に対する塗布具30のスライドが停止する。また、
図5、6に示す状態から
図7、8に示す状態に向けて塗布具30がキャップ20に対してスライドする過程で、突起部31eは乗り越え凸部22cを乗り越える。なお、
図5、6は、塗布具30がキャップ20に最も近接した上端位置にある状態を示しており、
図7、8は、塗布具30がキャップ20から最も離れた下端位置にある状態(スライド状態)を示している。
図5、6に示すように、本例では、塗布具30が上端位置にある状態において、スライド筒部31cの上端がキャップ20の頂壁部21の下面に当接しているが、ガイド壁21aの下端が31bの上面に当接するようにしてもよい。
【0048】
図7、8に示す状態からさらにキャップ20を引き上げて塗布具30を容器体10から抜き出すことにより、ブラシ部33bに適切に付着した内容物を対象物に塗布することができる。なお、塗布具30を容器体10から抜き出す過程において、しごき片43が塗布具30の塗布体33外周面(ブラシ部33b)に摺動することにより、ブラシ部33bに付着した余分な内容物は当該しごき片43によってかき落とされる。
【0049】
また、
図7、8に示すように塗布具30が下端位置にある状態では、突起部31eと乗り越え凸部22cとの係合により、塗布具30がキャップ20に近接する方向に移動することが適度に規制される。これにより、ブラシ部33bで内容物を対象物に塗布する際に、塗布具30がキャップ20に近接して余分な内容物Lが内部空間33dから押し出されてしまうことを防止することができる。その結果、塗布具30を使用する際の液垂れを、より確実に抑制することができる。
【0050】
また、内容物を塗布した後は、塗布具30を容器体10に差し込む際にしごき片43が塗布体33に摺動することにより、塗布具30は
図7、8に示す下端位置から
図5に示す上端位置までスライドする。この時、突起部31eは乗り越え凸部22cを乗り越える。また、塗布具30のキャップ20に近接する方向へのスライドに伴い、キャップ内空間Cの容積が縮小することにより、塗布具30の内部空間33dに保持された余分な内容物Lは、塗布体33の先端開口33cから押し出されて容器体10の収容空間Sに戻る。すなわち、塗布具30を容器体10に差し込むだけで、塗布具30は再び使用可能(先端開口33cから余分な内容物Lを内部空間33dに吸い上げ可能)な状態となる。
【0051】
以上のように、本実施形態の塗布具付容器2にあっては、内容物を収容する容器体10と、容器体10の口部11に着脱可能に装着されるキャップ20と、キャップ20に支持され、キャップ20を口部11に装着した状態で容器体10の内部に配置される塗布具30と、を備え、口部11の内側には、塗布具30に摺動可能な環状のしごき片43が設けられており、塗布具30は、キャップ20に支持される軸部32と、軸部32の先端側に位置する中空の塗布体33とを有し、塗布具30を容器体10から抜き出す過程で、キャップ20に対して塗布具30がスライドすることによって塗布体33の内部空間33dが負圧となり、塗布体33の先端に付着した内容物Lが塗布体33の先端開口33cから内部空間33dに吸い上げられるように構成されている。このような構成とすることで、容器体10から塗布具30を抜き出す過程において、塗布具30の先端に付着した余分な内容物Lを塗布具30の内部空間33dに吸い上げて保持することができる。そのため、塗布具30の使用時に、塗布具30先端に付着した余分な内容物Lが垂れ落ちたり手に付着したりすることを抑制することができる。
【0052】
したがって、本実施形態の塗布具付容器2によれば、塗布具30の使用時における液垂れをより確実に抑制することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態の塗布具付容器2にあっては、塗布具30が、キャップ20の内側でキャップ20に対してスライド可能に構成されるとともに軸部32と一体に連なる基部31を有し、キャップ20の内側に、塗布具30のスライドによって容積が変化するキャップ内空間Cが区画形成されており、キャップ内空間Cは、軸部32に形成された連通路Pを介して先端開口33cに連通していることが好ましい。このような構成とすることで、キャップ20に対する塗布具30のスライドを利用して効果的に塗布具30の先端に付着した余分な内容物Lを内部空間33dに吸い上げることができる。
【0054】
また、本実施形態の塗布具付容器2にあっては、基部31の外周面とキャップ20の内周面との間に、キャップ20に対する塗布具30のスライド範囲を規制する規制部(突起部31e及びストッパー凸部22b)が設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、キャップ20に対する塗布具30のスライドによる内容物Lの吸い上げ量を適切に設定することができ、また、規制部が外部に露出しないようにすることができる。
【0055】
また、本実施形態の塗布具付容器2にあっては、キャップ20の内周面に、塗布具30を容器体10から抜き出すことによりキャップ20に対してスライドした(スライド状態の)塗布具30の戻りを適度に規制する戻り規制部(乗り越え凸部22c)が設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、塗布具30のブラシ部33bで内容物を対象物に塗布する際に、塗布具30がキャップ20側にスライドして余分な内容物Lが内部空間33dから押し出されてしまうことを防止することができる。その結果、塗布具30を使用する際の液垂れを、より確実に抑制することができる。
【0056】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々
変更可能であることはいうまでもない。例えば、キャップ20に対して塗布具30がスライド可能であるとともに、軸部32に対して塗布体33がスライド可能であってもよい。また、キャップ20は、雄ねじ11aと雌ねじ22aのねじ結合に限らず、アンダーカット係合や嵌合等によって、口部11に着脱自在に装着される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、2:塗布具付容器
10:容器体
11:口部
11a:雄ねじ
12:胴部
13:底部
20:キャップ
20a:外蓋部材
20b:内蓋部材
21:頂壁部
21a:ガイド壁
22:周壁部
22a:雌ねじ
22b:ストッパー凸部(規制部)
22c:乗り越え凸部(戻り規制部)
30:塗布具
31:基部
31a:嵌合筒部
31b:底壁
31c:スライド筒部
31d:摺動片
31e:突起部(規制部)
32:軸部
32a:塗布体支持部
32b:係合凹部(規制部)
32c:軸部の下端面
32d:段差部
32e:縦リブ(戻り規制部)
33:塗布体
33a:スライド周壁
33b:ブラシ部
33c:先端開口
33d:内部空間
33e:係合凸部(規制部)
40:塗布量調整部材
41:フランジ部
42:筒壁
43:しごき片
C:キャップ内空間
P:連通路
O:軸線
S:収容空間