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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】注射可能な懸濁液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/57 20060101AFI20230515BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230515BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230515BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230515BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230515BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230515BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K31/57
A61K9/10
A61K47/14
A61K47/28
A61K47/44
A61P25/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019530057
(86)(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018050453
(87)【国際公開番号】W WO2018127601
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】1750008-3
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519196690
【氏名又は名称】アサリナ ファーマ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブリサンダー,マグナス
(72)【発明者】
【氏名】ホルヴァート,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】ノリンド,ビョルン
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517269(JP,A)
【文献】特表2002-506034(JP,A)
【文献】特表2008-538748(JP,A)
【文献】特開平02-286625(JP,A)
【文献】特開2015-110637(JP,A)
【文献】国際公開第2015/196113(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/57
A61K 9/10
A61K 47/14
A61K 47/28
A61K 47/44
A61P 25/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25Gまたはそれより細い注射針から注射可能である、物理的に安定で注射可能な滅菌医薬懸濁液であって、以下の成分
- 滅菌、結晶性、非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、
- アシルグリセロールの混合物、および
- コレステロール
を含み、前記懸濁液が、前記成分を24時間以内に無菌状態で混合することにより調製される、前記懸濁液。
【請求項2】
前記注射針が27Gまたはそれより細い注射針である、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項3】
前記3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの濃度が10mg/mL以上である、請求項1または2に記載の懸濁液。
【請求項4】
前記懸濁液が、前記懸濁液を再懸濁せずに、完全またはほぼ完全な用量回収率で少なくとも12か月貯蔵後も注射可能なままである、請求項1~3のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項5】
前記アシルグリセロールの混合物が中鎖アシルグリセロールである、請求項1~4のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項6】
前記中鎖アシルグリセロールが中鎖トリグリセリド(MCT)である、請求項5に記載の懸濁液。
【請求項7】
前記アシルグリセロールの混合物がゴマ油である、請求項1~5のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項8】
前記アシルグリセロールの混合物が、ゴマ油と中鎖アシルグリセロールとの混合物を表す、請求項1~のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項9】
前記コレステロール量が0.1~2.5%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項10】
ヒトの非経口使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の懸濁液を含む、27Gまたはそれより細い注射針を備えた予充填シリンジ。
【請求項12】
結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を製造する方法であって、
(i)3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを、少なくとも45℃の温度で、少なくとも0.1%(v/v)の水分量を有するテトロヒドロフラン溶液に溶解する工程と、
(ii)10℃以下の温度を維持しながら、工程(i)の溶液を液体ヘプタンに添加し、前記溶液混合物を撹拌して、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの沈殿物を得る工程と、次いで
(iii)工程(ii)で得られた沈殿した結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを濾過および乾燥する工程と
を含み、
前記結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子の任意の微粉化の工程が省略される、
前記方法。
【請求項13】
工程(iii)で得られた結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を粉砕および篩い分けする追加の工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記テトロヒドロフラン溶液が0.5%~1.5%(v/v)の水分量を有する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
水分を含む前記テトラヒドロフラン溶液が約50℃の温度を維持する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液体ヘプタンが-10℃~-20℃の温度を維持する、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
25Gまたはそれより細い注射針から注射可能である、物理的に安定で注射可能な滅菌医薬懸濁液であって、以下の成分
- 滅菌、結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、
- アシルグリセロールの混合物、および
- コレステロール
を含み、前記懸濁液が、前記成分を24時間以内に無菌状態で混合することにより調製され、
前記結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、請求項12~16のいずれか一項に従って製造される、前記懸濁液。
【請求項18】
請求項12~16のいずれか一項に従って製造された結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、アシルグリセロールの混合物、およびコレステロールを含む、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能な滅菌懸濁液を製造する方法であって、
- 結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子をγ照射により滅菌し、
- アシルグリセロールの混合物をコレステロールと混合し、コレステロールをアシルグリセロールの混合物に完全に溶解するまで撹拌し、
- アシルグリセロールの混合物/コレステロール混合物を濾過し、滅菌容器に無菌で入れ、前記滅菌した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を添加し、24時間以下混合し、
- 得られた懸濁液を滅菌シリンジバレルに無菌充填する、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、アシルグリセロールの混合物およびコレステロールを含む、物理的に安定で、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能な無菌懸濁液、このような懸濁液に適した結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを調製する方法、ならびにこのような懸濁液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、プレグナンファミリーのステロイドであり、性/ストレスステロイド誘発状態を含む、いくつかのCNS障害の治療に適応したGABA受容体活性のモジュレーターである(国際公開第99/45931号)。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、化学的に安定であり、多くの治療上許容される溶媒に難溶性であり、これは、患者への化合物の投与を困難にする。さらに、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、急速に代謝されるので、持続性または徐放性プロファイルでの投与を提供することが非常に望ましい。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンを含む製剤を使用することにより、サルに投与された(Grantら、JPET326:354-362、2008)。さらに、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む製剤は、国際公開第2011/087441号に開示されている。さらに、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンでの探索的臨床試験が公表された(EudraCT No.2012-004081-18)
【0003】
持続性プロファイルは、化合物がある程度可溶性であるビヒクル中の化合物の懸濁液で得ることができる。注射用の結晶性粒子を含むこのような懸濁液の欠点および難点は、結晶性粒子が成長し[(Ostwald ripening、IUPAC、Compendium of Chemical Terminology、第2版、(the “Gold Book”)(1997)]、それにより、物理的に安定でなくなり、このような粒子が注射針を閉塞するので、臨床上好適な注射針からの注射がほぼ不可能なことである。
【0004】
何らかの複雑な特別な技術なしに患者にとって好都合かつ好適な製剤を提供することが、自己投与用の医薬品に最も重要である。さらに、長期貯蔵期間後も有用で安全な製剤を提供するために、医薬品は滅菌かつ安定であることが必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを十分な含有量、例えば、少なくとも10mg/mLで含み、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能で、安定な懸濁液であって、前記ステロイドが、十分にその治療効果を発揮することができる、前記懸濁液を提供することは、本発明の目的として非常に望ましい。さらに、長期貯蔵期間後も有用な懸濁液を提供するために、懸濁液が安定なままであることは非常に望ましい。
【0006】
さらに、滅菌であり、したがってヒトの非経口使用に適した懸濁液を提供することは、本発明の目的として非常に望ましい。
【0007】
国際公開第2011/087441号に記載の提示された技術的処方には、この明細書に記載されている懸濁液を製造する方法が、(例えば、25Gまたはそれより細い)有用な注射針からの注射に対して最適化されない(実施例78)か、または懸濁液を数日間撹拌しなくてはならないため、注射用医薬製剤として最適化されない(実施例77)という欠点がある。数日間の撹拌は、ヒトの使用のための滅菌非経口製剤を製造する無菌方法として、業界基準および医薬品適正製造基準に従って許容されない。注射用医薬製剤はオートクレーブ処理、イオン化放射により滅菌されるものとし、または本発明の場合のように、これらのいずれも不可能な場合、製剤成分は最初に滅菌され、無菌状態で混合されるものとする(EMA「医薬品、原薬、添加剤および一次容器の滅菌に関するガイドライン」(Ema/CHMP/CVMP/QWP/BWP/850374/2015)。
【0008】
したがって、医薬品中の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、製造時に適切な物性および無菌性を有し、十分な時間、例えば、12か月以上物理的に安定なままであることは重要である。さらに、懸濁液は、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能でなくてはならない。
【0009】
本発明では、驚くべきことに、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを粒子に結晶化したときの大きな多形態の塊の問題、および経時的な結晶成長の問題が、このような粒子を製造する際の微粉化の工程を省略し、それにより結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、アシルグリセロールの混合物およびコレステロールを含む、医薬品に必要な貯蔵寿命にわたって25Gまたはそれより細い注射針から注射可能である、物理的に安定で注射可能な滅菌医薬懸濁液を提供することにより解決される。
【0010】
本発明を詳細に説明する前に、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるので、本明細書で利用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的で用いられるに過ぎず、限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む本発明の懸濁液中の結晶性粒子の光学顕微鏡写真を示す図であり、前記粒子は、粉砕および篩い分け(砕塊)されている。
図1b】一区切りが10μmであるサイズ目盛りを示す図である。いずれの写真(1aおよび1b)も同じ倍率で撮影されている。さらなる詳細を実施例7に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象も含むことが留意される。
【0013】
用語「懸濁液」は、室温で液体である連続相中の固体分散液を意味することが意図される。
【0014】
用語「医薬」は、本発明の懸濁液の文脈において、懸濁液が、意図される疾患の治療に使用できる形態であることを意味することが意図される。これはとりわけ、懸濁液が医療安全要件を満たさなければならないことを含み、非経口使用のための製剤については、製剤が滅菌であり、厳密な無菌状態で製造される必要があり、不可能な場合、最終的に滅菌される必要があることを意味する。
【0015】
用語「注射可能な」は、この文脈において、注射針を用いて分注でき、注射針の何らかの閉塞を引き起こさず、意図されるほぼ全用量が注射針から送達され得る懸濁液中の製剤、すなわち、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを意味することが意図される。
【0016】
用語「結晶性」は、非共有相互作用により結合した分子の高次配列を意味することが意図される。結晶化度のレベルまたは程度は少なくとも60%以上であり、100%は、すべての物質が結晶性であることを表す。結晶化度の定量は、Saleki-Gerhardt Aら、Int J Pharm.1994;101:237~247に記載されているようにX線粉末回折法または水蒸気吸着測定法により測定できる。
【0017】
用語「無菌」は、滅菌製剤を得る方法の状態を意味することが意図される。
【0018】
用語「滅菌」は、欧州薬局方(例えば、欧州薬局方2.6.1)および他の領域における対応する地域薬局方(例えば、米国薬局方、USP)により規定された試験で、本発明の懸濁液が、細菌もしくは菌類の成長、または細菌内毒素成分を示さないことを意味することが意図される。
【0019】
用語「非微粉化」は、この文脈において、結晶性物質が、何らかの微粉化またはナノミル粉砕に曝されていないことを意味することが意図される。本発明による粉砕および篩い分け工程は、微粉化の工程とみなされるべきではない。
【0020】
用語「粒子」は、「結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子」の文脈において、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの別個の結晶を意味することが意図される。
【0021】
語句「粉砕および篩い分け」は、凝集した粒子の塊(3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの結晶性粒子の凝集物)を破砕することが意図された砕塊手順である。粉砕は、例えば、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を、粉砕孔スクリーンを備えたQuadro Comilミル粉砕装置に通すことにより行われ得る。篩い分けは、例えば(粉砕後)、粉砕した粒子を、篩い分け丸孔スクリーンを備えたQuadro Comilミル粉砕装置に通すことにより行われ得る。
【0022】
用語「塊」は、本発明の文脈において、典型的には弱い静電力により結合した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの結晶性粒子の凝集物を意味することが意図される。
【0023】
用語「予充填シリンジ」は、注射針を組み付けることができる医療用シリンジ、または注射針を予め備えたシリンジであって、1回量以上の最終医薬組成物、例えば、本発明の懸濁液を予め充填して患者に供給され得る、前記シリンジを意味することが意図される。
【0024】
用語「注射針」は、医薬投与の文脈における注射針を意味することが意図され、直径25Gまたはそれより細い、例えば、直径26G、27G、28G、29Gまたは30Gの標準的な注射針を含む。Gはゲージを表し、注射針の内径および外径を規定するために用いられる尺度である。これを例示するために、通常の25Gの注射針は、約0.260mmの公称内径を有する。
【0025】
用語「アシルグリセロール」および「アシルグリセロールの混合物」は、グリセロールにエステル化された脂肪酸のすべての種類および組み合わせを含むことが意図される。アシルグリセロールの混合物は、例えば、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールの様々な混合物からなり得る。アシルグリセロールの混合物の一例は、中鎖アシルグリセロールにより代表される。
【0026】
中鎖アシルグリセロールの一例としては、中鎖トリグリセリド(MCT)がある。MCTは典型的には主にカプリル酸(オクタン酸、C16)およびカプリン酸(デカン酸、C1020)を含む飽和脂肪酸トリグリセリドの混合物を表し、そこで8個の炭素原子(オクタン酸)および10個の炭素原子(デカン酸)を有する脂肪酸の合算した合計の割合は少なくとも95%である。中鎖トリグリセリドは、例えば、脂肪酸の分別、再エステル化および精製を含む方法で、ココヤシの胚乳の硬く乾燥した画分から、またはギニアアブラヤシの乾燥した胚乳から抽出された油から得ることができる。
【0027】
アシルグリセロールの混合物は植物油によっても代表され得る。したがって、これはゴマ油、落花生油、オリーブ油およびヒマシ油またはこれらの混合物からなる群から選択される植物油であり得る。
【0028】
アシルグリセロールの混合物は、植物油と中鎖アシルグリセロールとの混合物をさらに含み得る。
【0029】
本発明の懸濁液は、当業者に公知の追加の添加剤、例えば、抗酸化剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、芳香剤または増粘化剤を含み得る。
【0030】
「室温」は、18℃~25℃の温度を示す。
【0031】
本発明の文脈において「物理的に安定な」は、懸濁液を再懸濁せずに(または最低限の再懸濁で)、投与された用量のほぼ完全または完全な回収率で、少なくとも12か月貯蔵後、懸濁液が25Gまたはそれより細い注射針から注射可能なままであることを意味することが意図される。
【0032】
本発明の懸濁液は、好ましくは、医薬的使用のために治療有効量でそれを必要とする患者に投与される。典型的には、懸濁液は、皮下、筋肉内、皮内または腹腔内など非経口注射により提供される。治療的使用は、典型的には、中枢神経系の状態、例えば、それだけに限定されないが、気分障害の予防または治療のためのものである。当業者に従来用いられ、よく知られている、好適なアジュバント、担体、希釈剤およびビヒクルと共に、選択された経路に適した化学形態の有効な薬剤を含む、懸濁液の処方は、通常の薬理学的手法に従って適合または調整され得る。
【0033】
本発明の一態様において、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子およびアシルグリセロールの混合物を含む、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能である、物理的に安定な注射可能な滅菌医薬懸濁液が提供される。
【0034】
本発明の一態様において、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能である、物理的に安定で注射可能な滅菌医薬懸濁液であって、以下の成分:
- 滅菌結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、
- アシルグリセロールの混合物、および
- コレステロール
を含み、
前記懸濁液が、前記成分を24時間以内に無菌状態で混合することにより調製される、前記懸濁液を提供する。
【0035】
無菌状態での混合は、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12時間またはそれより短時間、例えば、6時間以下行われ得る。
【0036】
この態様の一実施形態において、前記懸濁液はヒトの臨床非経口使用のためのものである。
【0037】
この態様の一実施形態において、前記注射針は27Gまたはそれより細い。
【0038】
この態様の一実施形態において、前記3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの濃度は10mg/mL以上、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25mg/mL以上である。
【0039】
この態様の一実施形態において、前記3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの濃度は25mg/mL以上、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70または75mg/mL以上である。
【0040】
この態様の一実施形態において、前記懸濁液は、懸濁液を再懸濁せず、ほぼ完全な用量回収率で注射可能である。
【0041】
語句「懸濁液を再懸濁せずに」は、懸濁液が、最低限の再懸濁後、または懸濁液を再懸濁せずに、完全またはほぼ完全な用量回収率で注射可能であることを含む。
【0042】
この態様の一実施形態において、前記結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを表す。
【0043】
この態様の一実施形態において、前記結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子は、貯蔵中実質的な凝集なしに安定なままである。
【0044】
この態様の一実施形態において、前記懸濁液は、懸濁液を慎重に再懸濁せずに、完全またはほぼ完全な用量回収率で注射可能なままである。好ましくは、懸濁液は、懸濁液を再懸濁せずに、ほぼ完全な用量回収率で少なくとも12か月貯蔵後注射可能なままである。好ましくは、懸濁液は、12か月超、例えば、18、24、30または36か月以上貯蔵後も注射可能なままである。
【0045】
この態様の一実施形態において、前記懸濁液は、懸濁液を再懸濁せずに、完全またはほぼ完全な用量回収率で、少なくとも12か月貯蔵後注射可能なままである。
【0046】
この態様の一実施形態において、前記コレステロール量は、典型的には0.1%~5%、例えば、0.1%~2.5%、0.5%~2%、0.5%~1.5%または約1%である。
【0047】
この態様の一実施形態において、前記アシルグリセロールの混合物は、中鎖アシルグリセロールにより代表される。好ましくは、前記中鎖アシルグリセロールは、中鎖トリグリセリド(MCT)である。
【0048】
この態様の一実施形態において、前記アシルグリセロールの混合物はゴマ油により代表される。
【0049】
この態様の一実施形態において、前記アシルグリセロールの混合物は、ゴマ油と中鎖アシルグリセロールとの混合物を表す。
【0050】
この態様の一実施形態において、成分
- 滅菌結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、
- アシルグリセロールの混合物、および
- コレステロール
が、滅菌懸濁液を製造するのに許容される時間内に無菌状態で混合され、調製される懸濁液が提供される。好ましくは、前記成分は、24時間以内に無菌状態で混合され、ヒトの非経口使用のために、臨床基準に従って滅菌である懸濁液が製造される。
【0051】
無菌状態での混合は、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12時間またはそれより短時間、例えば、6時間以下行われ得る。
【0052】
この態様の一実施形態において、本発明による注射可能な懸濁液を含む、27Gまたはそれより細い注射針を備えた予充填シリンジが提供される。
【0053】
本発明の一態様において、ヒトの臨床非経口使用のための本発明による注射可能な懸濁液が提供される。
【0054】
本発明による懸濁液は、以下に示すように製造され得る:
適切な量で好ましくは本開示に記載されるように製造した結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を低密度ポリエチレン(LDPE)袋に分注し、密封して、この袋をγ照射により滅菌する;
アシルグリセロールの混合物、好ましくはMCTをコレステロールと混合し、コレステロールを油に完全に溶解するまで撹拌する;
MCT/コレステロールの混合物を、2つの0.22μmフィルターから濾過し、適切な量のこの滅菌濾過したMCT/コレステロールを、無菌室内の滅菌ステンレス鋼調合容器に無菌で入れる;
LDPE袋を容器に合わせ、γ照射した結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を容器に無菌添加する;次いで、粉末の効率的な湿潤化および効率的な混合のために、γ照射した結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子をMCT/コレステロールと撹拌機で混合し、これを最大24時間以下継続する;静かに撹拌しながら、懸濁液を滅菌シリンジバレル(予充填シリンジ)に無菌充填し、その後、プランジャー(ストッパー)を挿入する。
【0055】
本発明の一態様において、結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、アシルグリセロールの混合物、およびコレステロールを含む、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能な滅菌懸濁液を製造する方法であって、
- 結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子をγ照射により滅菌し、
- アシルグリセロールの混合物、好ましくはMCTをコレステロールと混合し、コレステロールをアシルグリセロールの混合物に完全に溶解するまで撹拌し、
- アシルグリセロールの混合物/コレステロール混合物を濾過し、滅菌容器に無菌で入れ、前記滅菌した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を添加し、24時間以下混合し、
- 得られた懸濁液を滅菌シリンジバレルに無菌充填する、
前記方法が提供される。
【0056】
前記結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子の滅菌が、粒子を低密度ポリエチレン袋に分注し、その後γ照射により滅菌することにより行われ得る。
【0057】
前記滅菌容器は、滅菌ステンレス鋼調合容器であり得る。
【0058】
濾過したアシルグリセロールの混合物/コレステロール混合物と前記滅菌3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子との混合は、24時間以下、例えば、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12時間、またはそれより短時間、例えば、6時間以下行われる。
【0059】
結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子は、本開示に記載されるように任意の微粉化の工程を省略する方法で好ましくは製造される。
【0060】
本発明の一態様において、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を製造する方法であって、
(i)3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを、少なくとも45℃の温度で、少なくとも0.1%(v/v)の水分量を有する有機溶媒溶液に溶解する工程と、
(ii)10℃以下の温度を維持しながら、工程(i)の溶液を液体アルカンに添加し、前記溶液混合物を撹拌して、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの沈殿物を得る工程と、次いで
(iii)工程(ii)で得られた沈殿した結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを濾過および乾燥する工程と
を含み、
前記結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子の任意の微粉化の工程が省略される、
前記方法が提供される。
【0061】
この態様の一実施形態において、前記有機溶媒溶液はテトロヒドロフラン溶液である。
【0062】
この態様の一実施形態において、前記方法は、工程(iii)で得られた結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を粉砕および篩い分けする追加の工程を含む。これは、前記粒子の塊の形成を最小限に抑えるために行われ得る。
【0063】
この態様の一実施形態において、前記テトロヒドロフラン溶液は、0.5%~1.5%(v/v)の水分量を有する。
【0064】
この態様の一実施形態において、水分を含む前記テトラヒドロフラン溶液は約50℃の温度を維持する。
【0065】
この態様の一実施形態において、前記液体アルカンは-10℃~-20℃の温度を維持する。
【0066】
この態様の一実施形態において、前記液体アルカンは液体ヘプタンである。
【0067】
この態様の一実施形態において、この態様による方法により得ることができる結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子が提供される。
【0068】
本発明の一態様において、25Gまたはそれより細い注射針から注射可能である、物理的に安定で注射可能な滅菌医薬懸濁液であって、以下の成分
- 滅菌結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子、
- アシルグリセロールの混合物、および
- コレステロール
を含み、
前記懸濁液が、前記成分を24時間以内に無菌状態で混合することにより調製され、
前記結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子が、上に示された方法態様に従って製造される、前記懸濁液が提供される。
【0069】
本発明の一態様において、本発明の懸濁液を含み、前記懸濁液が、本発明の方法により得ることができる結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン粒子を含む、27G注射針を備えた予充填シリンジが提供される。
【0070】
本発明の一態様において、治療での使用のための本発明の懸濁液が提供される。
【0071】
以下、本発明をいくつかの例示的な非限定的実施例により説明する。
【0072】
実施例1
本発明の結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む懸濁液の注射可能性および安定性の試験
実施例8に記載されるように製造した結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む、大スケール(1.9L MCT)で撹拌することにより製造した実施例6の組成の懸濁液の注射可能性および安定性を、懸濁液をG25、G27またはG30の注射針を備えたシリンジから排出することにより評価した。閉塞が確認されるたびに、注射針を新しい針と交換し、評価した懸濁液総グラムあたりの閉塞回数(s/g)を記録した。通常、手動圧を使用して懸濁液を押し出した。シリンジ:Luer-Lockプラスチックシリンジ3mL(National Scientific Company.Rockwood、TN、USA)。最初に懸濁液を直接シリンジに吸引するか、または18G×2″の注射針(Terumo、ベルギー)を使用した。試験した注射針はG25×5/8、G27×1/2およびG30×1/2(Henke Sass Wolf、Tuttlingen、ドイツ)であった。製造後の注射可能性を以下の表1に示す。様々な貯蔵条件下での12か月貯蔵後の注射可能性を以下の表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
(粉砕および篩い分け後実施例7に従って)小スケールで製造した同様の懸濁液でも良好な注射可能性が得られ、懸濁液2.8gではG27の注射針で停止0回であることが示された。
【0075】
【表2】
【0076】
周囲条件は非制御の室温を表す。循環条件において、温度は24時間に1回、冷蔵(約+2℃)と周囲(約+20℃)との間を循環させた。冷蔵条件は+2~+8℃である。
【0077】
表1および2の結果は、結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む本発明の懸濁液が、12か月貯蔵後も様々な貯蔵条件下で安定かつ少なくともG27の注射針で注射可能であることを示す。
【0078】
実施例2
結晶性微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む国際公開第2011/087441号に記載の比較懸濁液(B)との、結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む懸濁液(A)の注射可能性の比較試験
本発明の懸濁液(A)の注射可能性を、同じ調合方法および組成(1.9Lスケールで無菌製造した、1%添加溶解したコレステロールを含む滅菌濾過したMCT中の照射した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン40mg/mL)であるが、懸濁液の調製前にAと同様に対応する一次粒子のサイズに到達するように、結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを微粉化した懸濁液(B)の注射可能性と比較した。懸濁液Bは、国際公開第2011/087441号の実施例78に示される懸濁液を表す。同様の懸濁液を探索的臨床試験(EudraCT No.2012-004081-18)で使用したが、より大きい直径の注射針を使用して、注射針の閉塞を回避した。
【0079】
本発明の懸濁液(A)は、実施例7に記載のものと同様の方法であるが、その後の砕塊(粉砕および篩い分け)の工程なしで製造された3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンに基づくものであった。結晶性物質は、粉末の体積分布(D50)における平均粒径が約8μmであった。これは、従来の手順を用いてマルバーンマスターサイザー3000での水系の光散乱により測定した。フラウンホーファー計算モデルを評価に使用した。
【0080】
比較懸濁液調製物(B)については、従来法で結晶化され(実施例9に示すように調製)、したがって最大0.5×0.5mmの大きさの大きなフレーク状の結晶を含む白色粉末の形態の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを、Micron Technologies Ltd.(Datford、UK)製の流体エネルギージェットミルを用いて窒素ガス下で微粉化した。上記で測定した微粉化粉末の体積分布(D50)における平均粒径は7~8μmであった。
【0081】
比較懸濁液Bの注射可能性を、実施例1に記載されるように試験すると、25Gの注射針では停止1回/試験した懸濁液g、27Gの注射針では試験したグラムあたりの停止12回となった(表3参照)。以下の表3によれば、上記の非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンから製造した懸濁液Aの注射可能性は、粉砕および篩い分けによりさらに最適化された結晶性物質なしでも、劇的に改善された。
【0082】
【表3】
【0083】
結果は、粒径が小さかったにもかかわらず、国際公開第2011/087441号に記載の結晶性微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンでは、注射に使用可能な懸濁液とならず、さらに粉砕および篩い分けされ得る、最適化された粒子特性を有する結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの製造に、微粉化を取り入れない方法を適用すると、驚くべきことに注射可能性が顕著に改善され、使用可能な懸濁液が提供されることを示している。
【0084】
実施例3
予充填シリンジ中の結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを40mg/mLで含む懸濁液の安定性および注射可能性
実施例8に記載のものと同様の方法で製造した結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む、大スケール(1.9L MCT)で撹拌することにより製造した実施例6の懸濁液を、27Gの注射針を備えたシリンジに充填し、ストッパー(Hypack SCF Becton & Dickinson and Company)で栓をした。充填重量は、約0.95g/mLの濃度を有する懸濁液で0.5gであった。
【0085】
シリンジを、5℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RH各々で最大12か月間水平に貯蔵した。シリンジが空になったときに27Gの注射針から回収した原薬の総量を、各排出日および貯蔵条件で、5つのシリンジに対して1シリンジあたりの活性化合物mgとして、ガスクロマトグラフィーにより測定した。シリンジを直接貯蔵場所から取り出し、排出およびアッセイ前に再懸濁、混合または振とうしなかった。結果を表4に示す。シリンジを同様の内容の同様の条件で垂直に貯蔵したとき、同様の結果が得られた。
【0086】
【表4】
【0087】
したがって、シリンジ中での懸濁液の12か月貯蔵(5℃、25℃および40℃)後および25℃で36か月貯蔵後も、懸濁液を使用前に再懸濁する努力なしに、良好な精度で、27Gの注射針から意図された用量を排出できた。したがって、驚くべきことに、注射可能性に影響を与え得る明白な粒径の変化(または他の変化)が12か月貯蔵後も懸濁液で見られなかった。十分に再懸濁したシリンジでも同様の回収結果が得られた。結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの一次粒径は、貯蔵中変化しなかった。
【0088】
実施例4
結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを異なる濃度で含む懸濁液の注射可能性の試験
懸濁液を、MCT中の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン各10、25、40、75、150、200および300mg/mLの濃度で調製した。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン(実施例8に示すように調製した)を、磁気撹拌棒を備えた15mLバイアルに秤量し、1%添加溶解したコレステロールを含むMCT油を添加した。懸濁液を1000rpmで1時間撹拌した。懸濁液はすべて流体であったが、300mg/mL懸濁液は粘性が高かった。懸濁液の注射可能性を10、75および200mg/mL懸濁液に対して27Gの注射針で試験し、懸濁液2.6~3gを試験したとき、いずれの懸濁液でも停止ゼロ(0)回であった。
【0089】
実施例5
予充填シリンジでの、1%添加したコレステロールを含むまたは含まないゴマ油、MCTまたはこれらの混合物の油相中の結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む懸濁液の注射可能性の試験
5つの60mLガラス管に、実施例8に示すように調製した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン500±1mgを秤量した。この管に、1%添加溶解したコレステロールを含むもしくは含まないゴマ油、1%添加溶解したコレステロールを含むもしくは含まないMCT、または1%添加溶解したコレステロールを含むもしくは含まない20%(w/w)ゴマ油および80%(w/w)MCTの混合物を添加した。油を添加した直後、すべての管をしばらく振とうして粗懸濁液を製造した。次いで、これらを50rpmで23時間過度に回転し、微細な懸濁液を製造した。懸濁液を27Gの注射針を備えた予充填シリンジに充填し(約0.4mL)、ストッパー(Hypack SCF Becton & Dickinson and Company)で栓をした。針を下に向けて立たせた7週間の周囲貯蔵(非制御の室温)後、停止または注射針中の何らかの閉塞なしに、各懸濁液に対して1シリンジ中の懸濁液すべてを容易に完全に排出できた。
【0090】
実施例6
結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む注射可能な懸濁を調製する方法
まっすぐで長い磁気撹拌棒を備えた100mLフラスコ中で、実施例8に従って調製した結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン2446.1mgを、1%(w/w)添加溶解したコレステロールを含むMCT58.09g(Captex 355 EP/NF,ABITEC corp、Janesville、WI、USA)に懸濁し(3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの濃度が約40mg/mLになる)、800rpmで撹拌して、顕著な渦を形成した。30分後、懸濁液は明らかに均一であった。3時間後、フラスコ下部に視認できる粒子が存在せず、平均粒径(D50)は約7.6μmであった。
【0091】
懸濁液の製造方法を1.9Lの製造スケールまでさらにスケールアップした場合も、同様の結果(D50=7.7μm)が得られた。
【0092】
マルバーンマスターサイザー3000での従来の方法を用いた光散乱により粒径分布を測定した。懸濁液試料を、循環するシリコーン油に添加した。評価にはフラウンホーファー計算モデルを使用した。D50は、ISO指針13320-1に記載されているように体積分布の各パーセンタイルでの粒径(μm)を表す。
【0093】
実施例7
粉砕および篩い分けされた、最適化された粒子特性を有する結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを製造する方法
THF溶液(5.2L、17mL/gの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンg)中の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン(307g)を公称5L反応器に添加し、ジャケット温度を50℃に設定し、透明な溶液が得られるまで、混合物を撹拌した。次いで、水道水(48g)を溶液に添加した。したがって、THF中の水分量は0.9%(v/v)であった。
【0094】
ヘプタン(15.4L)を急速に撹拌しながら制御されたジャケット温度で50L反応器に充填した。ヘプタンの内部温度が-14℃に到達したとき、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの温THF溶液を5分間にわたって添加し、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを急速に結晶化させた。添加終了後、得られたスラリーの温度は-8℃であった。
【0095】
その後、50L反応器のジャケット温度を5℃に設定し、スラリーを1時間48分撹拌した。スラリー(温度5℃)を25μmのメッシュサイズのナイロンフィルタークロスで濾過した。濾過時間:15分。濾過ケーキをヘプタン5Lずつで2回洗浄した(周囲温度)。濾過ケーキから室温で5時間空気を引くことにより、最初に生成物を乾燥した。1時間後、金属製スプーンを用いて物質を微細化した。空気乾燥後、物質をさらに真空オーブン中で終夜乾燥した(40℃、小さい空気抜きで真空、14時間)。収率:249.0g(81%)。
【0096】
次のステップにおいて、この物質(結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン)を2つの工程でさらに粉砕および篩い分け(砕塊)した:
【0097】
粉砕工程
上記で得た物質(226.5g)を、1.0mmの粉砕孔スクリーンおよび四角いインペラーを備えたQuadro Comilミル粉砕装置に通すことにより粉砕した。インペラー速度を主に1000~1600rpmに設定し、定期的に4500rpmまでしばらく上昇させ、スクリーンをクリアにした。物質をスクリーンに40分で通した。収率:191.3g(84%)
【0098】
篩い分け工程
上記粉砕工程からの物質(171.1g)を、610μmの円形孔スクリーンおよび円形インペラーを備えたQuadro Comilミル粉砕装置に通すことにより篩い分けした。インペラー速度を主に1000~1400rpmに設定した。物質をスクリーンに25分で通した。収率:132.9g(78%)。500μmのステンレス鋼スクリーンフィルター(試験篩、S/N02007758、Retsch、ドイツ)での懸濁液試料の濾過により、砕塊方法の効果を実証した。
【0099】
粉砕および篩い分け(砕塊)の有効性を実証するための試験懸濁液を以下のように調製した:16mL試験管において、MCT3.8gを、粉砕工程前および篩い分け工程後各々の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン160mgに添加した。これらの懸濁液を50rpmで24時間過度に回転した。得られた懸濁液を0.5mmのステンレス鋼フィルタースクリーンで濾過すると、粉砕工程前の懸濁液試料ではスクリーン上に塊がいくつか残留していたが、篩い分け工程後の試料では塊がないことが実証された。図1aは本発明の試験懸濁液中の結晶性粒子の光学顕微鏡写真を示す。図1bは、一区切りが10μmであるサイズ目盛りを示す。いずれの写真(1aおよび1b)も同じ倍率で撮影されている。
【0100】
実施例8
さらに粉砕および篩い分けされる、最適化された粒子特性を有する、結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを製造する大スケール法
3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン(7.55kg)およびTHF(132L)を800L反応器に不活性雰囲気下で導入した。混合物を65℃に昇温し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。精製水(1.07kg、THF中0.8%(v/v)の水)を添加し、得られた溶液を新しい清潔なバレル(バレルは、約45℃の温水道水で保温した)に移した。次いで、反応器を洗浄し、n-ヘプタン(400L)を反応器に導入した。反応器中のTiが-12℃に到達したとき、THF溶液をバレルから反応器に導入した(導入に17分かかった)。得られたスラリーを濾過し、n-ヘプタン(20L)で洗浄し、48時間空気乾燥した。収率:6.8kg(90%)。物質を1.0mmの粉砕孔スクリーンおよび四角いインペラーを備えたQuadro Comilミル粉砕装置に通し、次いで、610μmの円形孔スクリーンおよび円形インペラーを備えたQuadro Comilミル粉砕装置に通す(篩い分けする)ことにより、さらに粉砕および篩い分け(「砕塊」)して、5.5kgの最終生成物を得た。
【0101】
実施例9
精製を伴う結晶性微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを製造するための大スケール法
粗3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン(14.8kg)およびTHF(72L)を800L反応器に不活性雰囲気下で導入した。混合物を65℃に昇温し、Ti=60℃~70℃を維持しながら、n-ヘプタン(120L)を混合物に導入した。混合物をこの温度で30分間撹拌した後、Tjを20℃に設定し、混合物を3時間撹拌した。スラリーを濾過し、物質を約6時間空気乾燥した。生成物を同様の方法でさらに2回再結晶化し、2回目の再結晶化ではTHF65Lおよびn-ヘプタン110L、3回目ではTHF60Lおよびn-ヘプタン100Lを使用した。最後の再結晶化後、空気乾燥前に、生成物をフィルター上でn-ヘプタン30Lを用いて洗浄した。収率:7.56kg(51%)。所望の粒径(粉末の体積分布(D50)における粒径約7.8μm)が得られるまで、生成物を、Micron Technologies Ltd.(Dartford、UK)製の流体エネルギージェットミルを使用して窒素ガス下で微粉化した。この実施例に示すように製造した物質を、実施例2に記載されるように、比較試験に、例えば、比較懸濁液調製物(B)に使用した。
【0102】
実施例10
国際公開第2011/087441号に記載の比較懸濁液(D)との本発明による結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む懸濁液(C)の注射可能性の比較試験
懸濁液CとD両方を、同じ調合方法および組成(20mLスケールで製造した、1%添加溶解したコレステロールを含むゴマ油中の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン10mg/mL)を用いて小スケールで、従来のテフロン(登録商標)被覆撹拌棒を使用する約500rpmの磁気撹拌機で、室温にて、数日間製造した。懸濁液CおよびDの注射可能性を、実施例1に記載されるように19時間撹拌後、6日間撹拌後および9日間撹拌後決定した。懸濁液Dは、国際公開第2011/087441号の実施例77に示すような懸濁液を表す。
【0103】
本発明の懸濁液(C)は、実施例8に記載されるように調製した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンに基づくものであった。
【0104】
比較懸濁液調製物(D)については、最大0.5×0.5mmの大きさの大きなフレーク状の結晶を含む白色粉末の形態の従来法で結晶化された(例えば、実施例9に従って)3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用した。
【0105】
比較懸濁液Dの注射可能性を実施例1に記載されるように試験すると、19時間撹拌後、25Gの注射針で試験した懸濁液gあたりの停止48回、6日間撹拌後、27Gの注射針で試験した懸濁液gあたりの停止3.8回となった(表4参照)。以下の表4によれば、上記の本発明に従って製造された結晶性非微粉化3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンから製造した懸濁液Cの注射可能性は、懸濁液Dの結果と比較して、19時間撹拌後劇的に改善され、G27の注射針で停止0回であり、6日間撹拌後も、懸濁液D中の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの推定される一次粒径は、19時間撹拌した懸濁液Cのものと同様であった。9日間撹拌後、両方の懸濁液はG27の注射針で停止0回であった。
【0106】
【表5】
【0107】
結果は、製造(撹拌)時間が許容限度内(19時間)である場合、国際公開第2011/087441号の実施例77に記載される従来法で結晶化した3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの懸濁液の調製では、注射に使用可能な懸濁液にならないことを示している。国際公開第2011/087441号に記載の懸濁液については、注射可能性がほぼ許容範囲である懸濁液を製造するのに、数日間の製造時間が必要とされる。非経口使用の医薬懸濁液に対する滅菌の絶対的需要を考慮すると、このような長期の製造時間は、現行の医薬品適正製造基準に従って許容範囲とはみなされない。本発明によれば、最適化された特性を有する結晶性3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用することにより、驚くべきことに、注射可能性が顕著に改善され、非経口使用の医薬懸濁液に対して許容される処理時間で使用可能な懸濁液が提供される。
図1a
図1b