(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】安定化された抗体タンパク質溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230515BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230515BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230515BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230515BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230515BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230515BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230515BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230515BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230515BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230515BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K39/395 H
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/26
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2019546211
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 GB2018050480
(87)【国際公開番号】W WO2018154319
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-15
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335748(US,A1)
【文献】国際公開第2003/072060(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/013980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)モノクローナル抗体である抗体タンパク質
であって、IgG免疫グロブリンである、前記抗体タンパク質;並びに
(ii)アルギニンと、メチオニンと、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールとの安定化混合物
を含む水性溶液。
【請求項2】
水性溶液中の抗体タンパク質を安定化する方法であって、該溶液に、アルギニンと、メチオニンと、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールとの混合物を添加する工程を含み、該抗体タンパク質がモノクローナル抗体であ
り;かつ該抗体タンパク質がIgG免疫グロブリンである、前記方法。
【請求項3】
水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化するための、アルギニンと、メチオニンと、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールとの混合物の使用であって、該抗体タンパク質がモノクローナル抗体であ
り;かつ該抗体タンパク質がIgG免疫グロブリンである、前記使用。
【請求項4】
前記C3ポリオールが、1,2-プロパンジオールである、請求項1記載の水性溶液。
【請求項5】
前記C3ポリオールが、グリセロールである、請求項1記載の水性溶液。
【請求項6】
前記C3ポリオールが、1,2-プロパンジオールとグリセロールとの混合物である、請求項1記載の水性溶液。
【請求項7】
前記C3ポリオールが、100mM~500mM、例えば、150mM~400mM、又は150mM~200mMの濃度で存在する、請求項1又は4~6のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項8】
前記抗体タンパク質が、治療的抗体タンパク質である、請求項1又は4~7のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項9】
モノクローナル抗体である前記抗体タンパク質が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項1又は4~8のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びイピリムマブから選択される、請求項9記載の水性溶液。
【請求項11】
前記モノクローナル抗体が、リツキシマブである、請求項10記載の水性溶液。
【請求項12】
前記抗体タンパク質が、1mg/mL~300mg/mL、例えば、10mg/mL~300mg/mL、1mg/mL~200mg/mL、又は10mg/mL~200mg/mLの濃度で存在する、請求項1又は4~11のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項13】
前記アルギニンが、5mM~100mM、例えば、20mM~80mM、例えば、60mMの濃度で存在する、請求項1又は4~12のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項14】
前記メチオニンが、2mM~50mM、例えば、10mM~40mM、例えば、30mMの濃度で存在する、請求項1又は4~13のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項15】
前記溶液のpHが、pH 4.0~pH 8.0、例えば、pH 5.0~pH 7.0又はpH 5.0~pH 6.5である、請求項1又は4~14のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項16】
緩衝剤をさらに含む、請求項1又は4~15のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項17】
前記緩衝剤が、ヒスチジン、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及びTRISからなる群から選択される、請求項16記載の水性溶液。
【請求項18】
前記緩衝剤が、0.5mM~50mM、例えば、1mM~20mM、例えば、2mM~5mMの濃度で存在する、請求項16又は17記載の水性溶液。
【請求項19】
非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1又は4~18のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項20】
前記非イオン性界面活性剤が、アルキルグリコシド、例えば、ドデシルマルトシドである;又は
ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20である;又は
好適にはポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル、及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択されるポリエチレングリコールの、アルキルエーテルである;又は
ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー171、又はポロキサマー185である;又は
ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、例えば、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである、請求項19記載の水性溶液。
【請求項21】
前記非イオン性界面活性剤が、10μg/mL~2000μg/mL、例えば、50μg/mL~1000μg/mL、例えば、100μg/mL~500μg/mLの濃度で存在する、請求項19又は請求項20記載の水性溶液。
【請求項22】
非荷電性浸透圧調節剤、例えば、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、PEG300、又はPEG400をさらに含む、請求項1又は4~21のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項23】
前記非荷電性浸透圧調節剤が、50mM~1000mM、例えば、100mM~500mM、例えば、300mMの濃度で存在する、請求項22記載の水性溶液。
【請求項24】
例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリシン、及びヒスチジンからなる群から選択される、荷電性浸透圧調節剤をさらに含む、請求項1又は4~23のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項25】
前記荷電性浸透圧調節剤が、25mM~500mM、例えば、50mM~250mM、例えば、150mMの濃度で存在する、請求項24記載の水性溶液。
【請求項26】
前記水性溶液が、等張である、請求項1又は4~25のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項27】
好適には、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される防腐剤をさらに含む、請求項1又は4~26のいずれか一項記載の水性溶液。
【請求項28】
前記防腐剤が、0.01mM~100mMの濃度で存在する、請求項27記載の水性溶液。
【請求項29】
前記抗体タンパク質を安定化する方法が、貯蔵時の該抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害する方法である;又は
前記抗体タンパク質を安定化する方法が、貯蔵時の該抗体タンパク質の関連種の形成を阻害する方法である;又は
前記抗体タンパク質を安定化する方法が、貯蔵時の該抗体タンパク質の脱アミド化を阻害する方法である;又は
前記抗体タンパク質を安定化する方法が、貯蔵時の該抗体タンパク質の低分子量分解産物の形成を阻害する方法である;又は
前記抗体タンパク質を安定化する方法が、貯蔵時の該抗体タンパク質の水性溶液中での可視粒子の形成を阻害する方法である、請求項2記載の方法。
【請求項30】
貯蔵時の前記抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害するための;又は
貯蔵時の前記抗体タンパク質の関連種の形成を阻害するための;又は
貯蔵時の前記抗体タンパク質の脱アミド化を阻害するための;又は
貯蔵時の前記抗体タンパク質の低分子量分解産物の形成を阻害するための;又は
貯蔵時の前記抗体タンパク質の水性溶液中での可視粒子の形成を阻害するための、請求項3記載の使用。
【請求項31】
前記溶液が、皮下もしくは筋肉内への注射によるか又は静脈内への注射もしくは注入による投与のためのものである、請求項1又は4~28のいずれか一項記載の水性溶液。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
水性溶液として製剤化されたとき、抗体タンパク質は、貯蔵時に構造的分解を起こしやすい。タンパク質分解に関与するプロセスは、物理的なもの(例えば、四次、三次、又は二次構造の喪失、凝集、粒子形成)と化学的なもの(すなわち、共有結合的変化を伴うプロセス、例えば、脱アミド化、アスパラギン酸異性化、酸化、加水分解的クリッピングなど)に分けることができる。分解物(例えば、可溶性凝集種、不溶性凝集種、及び化学修飾変種)の各々は、抗体タンパク質の生物学的活性、毒性、又は免疫原性に影響を及ぼし得る。
【0002】
それゆえ、全ての分解物のレベルは、各々の抗体タンパク質製品に対して設定される厳しい仕様の範囲内で維持されなければならない。分解プロセスの速度は温度に依存し、抗体タンパク質は、通常、低温でより安定である。結果として、市販の抗体製品は、一般に、冷蔵で貯蔵しなければならない。しかしながら、患者が自己投与することができる皮下製品の増加傾向に伴って、少なくとも一定期間、例えば、2週間、例えば、4週間、例えば、12週間又はそれより長い間、コールドチェーンの外で使用することができる抗体タンパク質製品の開発が強く必要とされている。該製品をコールドチェーンの外で貯蔵することができることにより、多くの場合、使用期間中の患者の利便性がかなり改善される。コールドチェーンの外への逸脱が許容されることにより、出荷物流も顕著に改善され得る。
【0003】
本発明は、抗体タンパク質の不安定性の問題、特に、抗体タンパク質の分解の問題に対処する。
【0004】
WO2006/081587A2号(Wyeth)では、ポリペプチド、特に、治療的抗原結合ポリペプチド、例えば、抗体の安定性を維持するための製剤が記載されている。該製剤は、通常、酸化防止剤を、副生成物の形成、例えば、高分子量ポリペプチド凝集物、低分子量ポリペプチド分解断片、及びこれらの混合物の形成を阻害するほど十分な量で含む。記載されている製剤は、浸透圧剤、例えば、マンニトール、及び緩衝剤又はアミノ酸、例えば、ヒスチジンを任意に含む。
【0005】
WO2007/109221A2号(Wyeth)では、製剤中のタンパク質の凝集を低下させる方法であって、メチオニンを、該製剤に、約0.5mM~約145mMの濃度で添加することを含む、方法が記載されており、ここで、該方法は、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較した製剤中のタンパク質の凝集の低下をもたらす。
【0006】
EP2238985A1号(Chugai Seiyaku)は、二量体化が長期貯蔵中に妨げられる、安定でかつ皮下投与に適している抗体含有製剤を提供することを目指している。アルギニン及びメチオニンを含有する抗体含有液体製剤が記載されている。
【0007】
WO03/072060A2号(Immunex Corporation)では、治療有効量のFcドメイン含有ポリペプチド、並びにL-アルギニン及びL-システインからなる群から選択される凝集阻害剤を含む安定な水性医薬製剤が記載されている。
【発明の概要】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、抗体タンパク質の不安定性の問題に対処する。一実施態様において、本発明は、(i)抗体タンパク質;並びに(ii)アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの安定化混合物を含む水性溶液に関する。一実施態様において、本発明は、水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、抗体タンパク質の水性溶液を、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物によって安定化することができるという発見に関する。
【0010】
本明細書で使用される「水性溶液」という用語は、水、好ましくは、蒸留水、脱イオン水、注射用水、滅菌注射用水、又は静菌注射用水中の溶液を指す。本発明の水性溶液は、溶解した抗体タンパク質、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオール、並びに任意に、1以上の添加剤及び/又は賦形剤を含む。該水性溶液は、一部溶解しているか又は溶解していない1以上の成分、例えば、添加剤又は賦形剤を含むこともできる。そのような成分(単数又は複数)の存在は、多相組成物、例えば、懸濁液又はエマルジョンを生じさせる。好ましくは、本発明の水性溶液は、目測で又は光散乱で決定したとき、均一な溶液である。
【0011】
本明細書で使用される「抗体タンパク質」という用語は、抗体、抗体断片、活性部分にコンジュゲートされた抗体、1以上の抗体断片を含む融合タンパク質、例えば、免疫グロブリンFcドメイン、又は前述のもののいずれかの誘導体を指す。誘導体の例としては、コンジュゲートされた誘導体、例えば、別の部分にコンジュゲートされた抗体又は抗体断片が挙げられる。そのような部分としては、化学的に不活性なポリマー、例えば、PEGが挙げられる。好ましい抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、好ましくは、モノクローナル抗体が挙げられる。モノクローナル抗体は、例えば、哺乳動物(例えば、マウス)もしくは鳥類、キメラ、例えば、ヒト/マウスもしくはヒト/霊長類キメラ、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であることができる。好適な抗体としては、免疫グロブリン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、IgM、IgA、例えば、IgA1もしくはIgA2、IgD、IgE、又はIgYを含むIgGが挙げられる。好適な抗体には、単鎖抗体も含まれる。Fc、Fab、Fab2、ScFv断片などを含む抗体断片も含まれる。ナノボディを含む単一ドメイン抗体も包含される。
【0012】
ある実施態様において、抗体は、活性分子、例えば、毒素、又は放射性金属イオン、例えば、99Tc、111Ir、131I、もしくは90Yに結合することができるキレート剤に融合又はコンジュゲートされている。そのような実施態様において、抗体は、通常、例えば、該活性分子を特定の細胞表面タンパク質を提示する細胞に向けるターゲッティング剤として機能する。
【0013】
本明細書に記載されるように製剤化することができる特異的抗体としては、インフリキシマブ(キメラ抗体、抗TNFα)、バシリキシマブ(キメラ抗体、抗IL-2)、アブシキシマブ(キメラ抗体、抗GpIIb/IIIa)、ダクリズマブ(ヒト化抗体、抗IL-2)、ゲムツズマブ(ヒト化抗体、抗CD33)、アレムツズマブ(ヒト化抗体、抗CD52)、エドレコロマブ(マウスIg2a、抗EpCAM)、リツキシマブ(キメラ抗体、抗CD20)、パリビズマブ(ヒト化抗体、抗呼吸器合胞体ウイルス)、トラスツズマブ(ヒト化抗体、抗HER2/neu(erbB2)受容体)、ベバシズマブ(ヒト化抗体、抗VEGF)、セツキシマブ(キメラ抗体、抗EGFR)、エクリズマブ(ヒト化抗体、抗補体系タンパク質C5)、エファリズマブ(ヒト化抗体、抗CD1Ia)、イブリツモマブ(マウス抗体、抗CD20)、ムロモナブ-CD3(マウス抗体、抗T細胞CD3受容体)、ナタリズマブ(ヒト化抗体、抗α4インテグリン)、ニモツズマブ(ヒト化IgGl、抗EGF受容体)、オマリズマブ(ヒト化抗体、抗IgE)、パニツムマブ(ヒト抗体、抗EGFR)、ラニビズマブ(ヒト化抗体、抗VEGF)、1-131トシツモマブ(ヒト化抗体、抗CD20)、オファツムマブ(ヒト抗体、抗CD-20)、セルトリズマブ(ヒト化抗体、抗TNF-α)、ゴリムマブ(ヒト抗体、抗TNFα)、及びデノスマブ(ヒト抗体、抗RANKリガンド)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい抗体としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びイピリムマブが挙げられる。一実施態様において、モノクローナル抗体は、ベバシズマブである。別の実施態様において、モノクローナル抗体は、リツキシマブである。
【0014】
本明細書に記載されるように製剤化することができる他のキメラ抗体としては、バビツキシマブ(抗ホスファチジルセリン)、ブレンツキシマブ(抗CD30)、シルツキシマブ(抗IL-6)、クレノリキシマブ(抗CD4)、ガリキシマブ(抗CD80)、ゴミリキシマブ(抗CD23)、ケリキシマブ(抗CD4)、ルミリキシマブ(抗CD23)、プリリキシマブ(抗CD4)、テネリキシマブ(抗CD40)、バパリキシマブ(抗VAP1)、エクロメキシマブ(抗GD3)、及びパギバキシマブ(抗ブドウ球菌リポタイコ酸)が挙げられる。
【0015】
本明細書に記載されるように製剤化することができる他のヒト化抗体としては、エプラツズマブ(抗CD22)、アフツズマブ(抗CD20)、ビバツズマブメルタンシン(抗CD44)、カンツズマブメルタンシン(抗ムチン)、シタツズマブボガトクス(抗TACSTD1)、ダセツズマブ(抗CD40)、エロツズマブ(抗CD319)、エタラシズマブ(抗αvβ3-インテグリン)、ファルレツズマブ(抗FRα)、イノツズマブオゾガマイシン(抗CD22)、ラベツズマブ(抗癌胎児性抗原)、リンツズマブ(抗CD33)、ミラツズマブ(抗CD74)、ニモツズマブ(抗EGFR)、オポルツズマブモナトクス(抗EpCAM)、ペルツズマブ(抗HER2)、シブロツズマブ(抗FAP)、テカツズマブテトラキセタン(抗α-フェトタンパク質)、チガツズマブ(抗TRAIL-2)、ツコツズマブセルモロイキン(抗EpCAM)、ベルツズマブ(抗CD20)、アセリズマブ(抗CD62L)、アポリズマブ(抗HLA-DRB)、ベンラリズマブ(抗CD125)、セデリズマブ(抗CD4)、エプラツズマブ(抗CD22)、エルリズマブ(抗CD18)、フォントリズマブ(抗インターフェロン-γ)、メポリズマブ(抗IL5)、オクレリズマブ(抗CD20)、パスコリズマブ(抗IL4)、ペキセリズマブ(抗補体成分5)、PRO-140(抗CCR5)、レスリズマブ(抗IL5)、ロンタリズマブ(抗インターフェロン-α)、ロベリズマブ(抗CD11、CD18)、シプリズマブ(抗CD2)、タリズマブ(抗IgE)、テプリズマブ(抗CD3)、トシリズマブ(抗IL6R)、ベドリズマブ(抗α4β7-インテグリン)、ビシリズマブ(抗CD3)、イバリズマブ(抗CD4)、テフィバズマブ(抗クランピング因子A)、タドシズマブ(抗α11bβ3-インテグリン)、バピネオズマブ(抗アミロイド-β)、ソラネズマブ(抗アミロイド-β)、タネズマブ(抗NGF)、ウルトキサズマブ(抗大腸菌(E. coli)志賀様毒素II Bサブユニット)、フェルビズマブ(抗呼吸器合胞体ウイルス)、モタビズマブ(抗呼吸器合胞体ウイルス糖タンパク質F)、及びレブリキズマブ(抗IL13)が挙げられる。
【0016】
本明細書に記載されるように製剤化することができるさらなるヒト抗体としては、アトロリムマブ(抗Rh因子)、フレソリムマブ(抗TGFβ-1、-2、及び-3)、レルデリムマブ(抗TGFβ-2)、メテリムマブ(抗TGFβ-1)、モロリムマブ(抗Rh因子)、イピリムマブ(抗CTLA-4)、トレメリムマブ(抗CTLA-4)、ベルチリムマブ(抗CCL11)、ザノリムマブ(抗CD4)、ブリアキヌマブ(抗IL12、-23)、カナキヌマブ(抗IL1β)、ウステキヌマブ(抗IL12、-23)、アデカツムマブ(抗EpCAM)、ベリムマブ(抗B細胞活性化因子)、シクツムマブ抗IGF-1受容体)、コナツムマブ(抗TRAIL-R2)、フィギツムマブ(抗IGF-1受容体)、イラツムマブ(抗CD30)、レキサツムマブ(抗TRAIL-R2)、ルカツムマブ(抗CD40)、マパツムマブ(抗TRAIL-R4)、ネシツムマブ(抗EGFR)、オララツマブ(抗PDGF-Rα)、プリツムマブ(抗ビメンチン)、ロバツムマブ(抗IGF-1受容体)、ボツムマブ(抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(抗EGFR)、スタムルマブ(抗ミオスタチン)、エフングマブ(抗真菌HSP90)、エキシビビルマブ(抗B型肝炎表面抗原)、フォラビルマブ(抗狂犬病糖タンパク質)、リビビルマブ(抗B型肝炎表面抗原)、ラフィビルマブ(抗狂犬病糖タンパク質)、レガビルマブ(抗サイトメガロウイルス糖タンパク質B)、セビルマブ(抗サイトメガロウイルス)、ツビルマブ(抗B型肝炎ウイルス)、パノバクマブ(抗緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)血清型IATS 011)、ラキシバクマブ(抗炭疽毒素)、ラムシルマブ(抗VEGF-R2)、並びにガンテネルマブ(抗アミロイド-β)が挙げられる。
【0017】
免疫グロブリン分子の断片を含む融合タンパク質も、本発明に従って製剤化することができる。好適な融合タンパク質としては、1以上の免疫グロブリン断片、例えば、Fcドメインに融合された活性タンパク質ドメインを含むタンパク質が挙げられる。そのような融合タンパク質としては、免疫グロブリンFcドメインに融合されている、活性タンパク質ドメイン、例えば、可溶性受容体又は受容体細胞外リガンド結合ドメインを含むモノマー単位を有する二量体タンパク質が挙げられる。2つのFcドメインは、ジスルフィド結合を介して会合して、二量体タンパク質を形成することができる。そのような融合タンパク質としては、エタネルセプト、アバタセプト、及びベラタセプトが挙げられる。
【0018】
抗体(又は1以上の抗体断片)及び化学的に不活性なポリマー、例えば、PEGを含む、コンジュゲートされた誘導体も、本発明に従って製剤化することができる。そのような誘導体としては、セルトリズマブペゴールが挙げられる。
【0019】
抗体タンパク質は、天然源から単離することができるか、又は組換えタンパク質であることができる。
【0020】
ある実施態様において、抗体タンパク質は、実質的に純粋である、すなわち、組成物は、単一の抗体タンパク質を含み、実質量の任意のさらなるタンパク質を全く含まない。好ましい実施態様において、抗体タンパク質は、組成物の全タンパク質含有量の少なくとも99%、好ましくは、少なくとも99.5%、より好ましくは、少なくとも約99.9%を含む。好ましい実施態様において、抗体タンパク質は、医薬組成物と同様に使用するのに十分に純粋である。
【0021】
抗体タンパク質は、好ましくは、治療的抗体タンパク質である。そのような抗体タンパク質は、望ましい治療的又は予防的活性を有し、かつ疾患又は医学的障害の治療、阻害、又は予防に適応される。
【0022】
一実施態様において、抗体タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びイピリムマブである。一実施態様において、抗体タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブである。別の実施態様において、抗体タンパク質は、1以上の免疫グロブリンFc断片に融合された活性タンパク質ドメインを含む融合タンパク質、例えば、エタネルセプト、アバタセプト、又はベラタセプトである。さらなる実施態様において、抗体は、抗体タンパク質の誘導体であり、かつ1以上の抗体又は抗体断片と化学的に不活性なポリマーとを含むコンジュゲートされた誘導体、例えば、セルトリズマブペゴールである。
【0023】
抗体タンパク質は、好適には、約1mg/mL~約300mg/mL、例えば、約10mg/mL~約300mg/mL、約1mg/mL~約200mg/mL、又は約10mg/mL~約200mg/mLの濃度で存在する。
【0024】
本発明の水性溶液は、アルギニン、好適には、L-アルギニンを含む。アルギニンは、遊離塩基の形態で又は塩酸アルギニンなどの塩の形態で、該水性溶液に添加することができる。アルギニンは、(特に、凝集を低下させることに関して)安定化効果を有し、通常、該水性溶液中に、約5mM~約100mM、例えば、約20mM~約80mM、例えば、約60mM又は約80mMの濃度で存在する。
【0025】
本発明の水性溶液は、メチオニン、好適には、L-メチオニンも含む。メチオニンは、遊離塩基の形態で又は塩酸メチオニンなどの塩の形態で、該水性溶液に添加することができる。メチオニンは、(特に、凝集を低下させることに関して)安定化効果を有し、通常、該水性溶液中に、約2mM~約50mM、例えば、約10mM~約40mM、例えば、約30mMの濃度で存在する。
【0026】
通常、本発明の水性溶液のpHは、約pH 4.0~約pH 8.0、例えば、約pH 5.0~約pH 7.0又は約pH 5.0~約pH 6.5である。
【0027】
一実施態様において、本発明の水性溶液は、製剤のpHを安定化するために、緩衝剤をさらに含み、これは、抗体タンパク質安定性を強化するように選択することもできる。アルギニン及びメチオニンは緩衝能を有し得るが、これらは、通常、本水性溶液の好適なpH範囲である約pH 4.0~約pH 8.0のpH範囲では緩衝剤として作用しない。したがって、該水性溶液は、アルギニン又はメチオニン以外である緩衝剤をさらに含むことができる。
【0028】
好適には、緩衝剤は、ヒスチジン、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及びTRISからなる群から選択される。ある実施態様において、緩衝剤は、リン酸塩である。さらなる実施態様において、緩衝剤は、クエン酸塩、例えば、クエン酸三ナトリウムである。
【0029】
一実施態様において、緩衝剤は、組成物のpHに近いpKaを有するように選択され;例えば、ヒスチジンは、好適には、組成物のpHが5.0~7.0の範囲にあるときに緩衝剤として利用される。別の例として、リン酸塩は、好適には、組成物のpHが6.1~8.1の範囲にあるときに緩衝剤として利用される。或いは、別の実施態様において、本発明の溶液は、タンパク質及び1以上の添加剤を含む製剤であって、系が従来の緩衝剤、すなわち、組成物の意図される貯蔵温度範囲、例えば、25℃で、製剤のpHの1単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とする製剤を記載しているWO2008/084237A2号に開示されているようにさらに安定化にされる。この実施態様において、製剤のpHは、該製剤がpHに関して最大の測定可能な安定性を有する値に設定され; 1以上の添加剤(置換緩衝剤)は、プロトンをインスリン化合物と交換することができ、製剤の意図される貯蔵温度範囲で製剤のpHよりも少なくとも1単位大きい又は小さいpKa値を有する。添加剤は、組成物の意図される貯蔵温度範囲(例えば、25℃)で、水性製剤のpHの1~5 pH単位、好ましくは、1~3 pH単位、最も好ましくは、1.5~2.5 pH単位のpKaを有するイオン化可能な基を有することができる。そのような添加剤は、通常、0.5~10mM、例えば、2~5mMの濃度で利用することができる。
【0030】
通常、緩衝剤は、約0.5mM~約50mM、例えば、約1mM~約20mM、例えば、約2mM~約5mMの濃度で存在する。
【0031】
本発明の水性溶液は、界面活性剤を任意に含むことができる。一実施態様において、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、アルキルグリコシド、例えば、ドデシルマルトシド;ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20;例えば、ポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル、及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択されるポリエチレングリコールのアルキルエーテル;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー171、もしくはポロキサマー185;又はポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、例えば、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである。好適には、非イオン性界面活性剤は、約10μg/mL~約2000μg/mL、例えば、約50μg/mL~約1000μg/mL、例えば、約100μg/mL~約500μg/mLの濃度で存在する。
【0032】
本発明の水性溶液は、低張、等張、及び高張水性溶液を含む、広範囲のオスモル濃度に及ぶことができる。好適には、本発明の水性溶液は実質的に等張である。一実施態様において、本発明の水性溶液は等張である。好適には、該水性溶液のオスモル濃度は、投与経路による、例えば、注射時の痛みを最小限に抑えるように選択される。好ましい水性溶液は、約200mOsm/L~約500mOsm/Lの範囲のオスモル濃度を有する。好ましくは、オスモル濃度は、約250mOsm/L~約350mOsm/Lの範囲である。より好ましくは、オスモル濃度は、約300mOsm/Lである。
【0033】
水性溶液の浸透圧は、浸透圧調節剤で調整することができる。浸透圧調節剤は、荷電性であっても非荷電性であってもよい。
【0034】
荷電性浸透圧調節剤の例としては、塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、又はカルシウムイオンと、塩化物、硫酸、炭酸、亜硫酸、硝酸、乳酸、コハク酸、酢酸、又はマレイン酸イオンとの組合せ(特に、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム、特に、塩化ナトリウム)が挙げられる。アミノ酸、例えば、グリシン又はヒスチジンを、この目的で使用することもできる。一実施態様において、荷電性浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリシン、及びヒスチジンからなる群から選択される。アルギニン及びメチオニン(どちらも本発明の水性溶液の必要成分である)は、荷電性浸透圧調節剤として機能することができる。しかしながら、荷電性浸透圧調節剤を「さらに」含む本発明の水性溶液に対する言及は、該溶液に添加されることになる追加のさらなる成分を指すことが意図される。したがって、該水性溶液は、アルギニン又はメチオニン以外である荷電性浸透圧調節剤をさらに含むことができる。そのような荷電性浸透圧調節剤は、通常、約25mM~約500mM、例えば、約50mM~約250mM、例えば、約150mMの濃度で存在する。
【0035】
非荷電性浸透圧調節剤の例としては、糖、糖アルコール及び他のポリオール、例えば、スクロース、トレハロース、マンニトール、ラフィノース、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、もしくはラクチトール、又はポリエチレングリコール、例えば、PEG300もしくはPEG400が挙げられる。一実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、PEG300、又はPEG400である。本発明の水性溶液の必要成分であるC3ポリオールは、非荷電性浸透圧調節剤として機能することができる。しかしながら、非荷電性浸透圧調節剤を「さらに」含む本発明の水性溶液に対する言及は、該溶液に添加されることになる追加のさらなる成分を指すことが意図される。したがって、該水性溶液は、C3ポリオール以外であり、特に、1,2-プロパンジオール及びグリセロール以外である、非荷電性浸透圧調節剤をさらに含むことができる。そのような非荷電性浸透圧調節剤は、通常、約50mM~約1000mM、例えば、約100mM~約500mM、例えば、約300mMの濃度で存在する。
【0036】
本発明の水性溶液は、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムから好適に選択される防腐剤を任意に含むことができる。存在する場合、防腐剤は、約0.01mM~約100mMの濃度のものである。フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベンから選択される防腐剤は、例えば、約10mM~約100mM、例えば、約20mM~約80mM、例えば、約25mM~約50mMの濃度で存在することができる。塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムから選択される防腐剤は、例えば、約0.01mM~約1mM、例えば、約0.05mM~約0.5mM、例えば、約0.05mM~約0.2mMの濃度で存在することができる。
【0037】
本発明者らは、C3ポリオールを、抗体タンパク質、アルギニン、及びメチオニンを含む水性溶液に添加したとき、該抗体タンパク質の安定性が驚くほど強化されることを発見した。理論に束縛されることを望むものではないが、C3ポリオールのさらなる安定化効果は、タンパク質分子間の立体構造をより緊密にして、界面張力を改変し、さらに、反応部位の露出をより少なくするだけでなく、不可逆的凝集事象の可能性もより小さくする、小さいポリオールのタンパク質表面での最適な疎水性及び水素結合相互作用によるものであると考えられる。
【0038】
C3ポリオールは、好適には、1,2-プロパンジオール(プロパン-1,2-ジオール又はプロピレングリコールとしても知られる)及びグリセロール(1,2,3-プロパントリオール、グリセリン、又はグリセリンとしても知られる)から選択される。一実施態様において、C3ポリオールは、1,2-プロパンジオールである。別の実施態様において、C3ポリオールは、グリセロールである。さらなる実施態様において、C3ポリオールは、1,2-プロパンジオールとグリセロールの混合物である。C3ポリオールは、好適には、約100mM~約500mM、例えば、約150mM~約400mM、又は約150mM~約200mMの濃度で存在する。複数のC3ポリオールが該水性溶液中に存在する場合、濃度は、C3ポリオールの総濃度を指す。
【0039】
一実施態様において、アルギニンとメチオニンの比(mM/mM)は、約1:1~約10:1、例えば、約2:1~約6:1である。
【0040】
一実施態様において、アルギニンとC3ポリオールの比(mM/mM)は、約2:1~1:20、例えば、約1:2~約1:10である。
【0041】
一実施態様において、メチオニンとC3ポリオールの比(mM/mM)は、約1:1~1:40、例えば、約1:4~約1:20である。
【0042】
一実施態様において、アルギニン及びメチオニンの組合せ濃度とC3ポリオールの比(mM/mM)は、約4:1~1:20、例えば、約2:1~約1:10である。
【0043】
一実施態様において、抗体タンパク質とアルギニンの比(wt/wt)は、約1:10~約100:1、例えば、約1:1~約40:1である。別の実施態様において、抗体タンパク質とアルギニンの比(wt/wt)は、約1:1~約100:1、例えば、約5:1~約40:1である。
【0044】
一実施態様において、抗体タンパク質とメチオニンの比(wt/wt)は、約1:5~約200:1、例えば、約2:1~約80:1である。別の実施態様において、抗体タンパク質とメチオニンの比(wt/wt)は、約2:1~約200:1、例えば、約10:1~約80:1である。
【0045】
一実施態様において、抗体タンパク質とアルギニン及びメチオニンの組合せ重量の比(wt/wt)は、約1:15~約30:1、例えば、約1:1~約25:1である。別の実施態様において、抗体タンパク質とアルギニン及びメチオニンの組合せ重量の比(wt/wt)は、約1:2~約50:1、例えば、約2:1~約25:1である。
【0046】
一実施態様において、抗体タンパク質とC3ポリオールの比(wt/wt)は、約1:5~約200:1、例えば、約2:1~約50:1である。別の実施態様において、抗体タンパク質とC3ポリオールの比(wt/wt)は、約1:2~約200:1、例えば、約2:1~約50:1である。
【0047】
抗体タンパク質の水性溶液へのアルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の添加は、例えば、実施例1に示されているように、抗体タンパク質の安定性を強化すると考えられる。したがって、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物は、安定化混合物と呼ばれる。
【0048】
抗体タンパク質の「安定性」又は「安定化混合物」は、通常、貯蔵時の抗体タンパク質分解の低下を指す。一実施態様において、「安定性」/「安定化」は、物理的安定性、例えば、四次、三次、もしくは二次構造の喪失、凝集、又は粒子形成を指す。別の実施態様において、「安定性」/「安定化」は、化学的安定性、例えば、共有結合的変化を伴うプロセス、例えば、脱アミド化、アスパラギン酸異性化、酸化、又は加水分解的クリッピングを指す。
【0049】
抗体タンパク質、アルギニン、及びメチオニンを含む水性溶液へのC3ポリオールの添加は、同じ条件の下で同じ長さの時間貯蔵した後、C3ポリオールを欠く同じ溶液と比較して、抗体タンパク質の安定性を強化し、特に、抗体タンパク質凝集の速度を低下させることができると考えられる。
【0050】
したがって、本発明は、水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法を提供する。また提供されるのは、水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用である。本発明の水性溶液との関連において本明細書で上に記載されている実施態様は全て、本発明の方法及び使用に等しく適用される。
【0051】
本発明の方法は、「該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程」を指す。アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールは、該溶液に、一斉に同時に、又は順次かつ任意の順序で添加することができる(すなわち、「工程」は、実際には、複数の工程を含み得る)ことが理解されるべきである。
【0052】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法である。
【0053】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の溶液中での可視粒子の形成を阻害する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法である。
【0054】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の関連種の形成を阻害する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法である。
【0055】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の脱アミド化を阻害する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法である。
【0056】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の水性溶液中での低分子量分解産物の形成を阻害する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法である。
【0057】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0058】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の組成物中での可視粒子の形成を阻害するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0059】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の関連種の形成を阻害するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0060】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の脱アミド化を阻害するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0061】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の水性溶液中での低分子量分解産物の形成を阻害するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0062】
本明細書で使用される「高分子量種」という用語は、親活性抗体タンパク質の分子量の少なくとも約2倍の見掛けの分子量を有する抗体タンパク質内容物の任意の成分を指す。すなわち、高分子量種は、親抗体タンパク質の多量体凝集物である。該多量体凝集物は、かなり変化した立体構造を有する親抗体タンパク質分子を含み得るか、又はそれらは、ネイティブなもしくはネイティブに近い立体構造の親タンパク質ユニットの集合体であり得る。高分子量種の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離/沈降速度、光散乱、動的光散乱、静的光散乱、及びフィールドフローフラクショネーションを含む、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。
【0063】
本明細書で使用される「低分子量分解産物」という用語は、親活性抗体タンパク質の分子量未満の見掛けの分子量を有する抗体タンパク質内容物の任意の成分を指す。すなわち、低分子量分解産物は、親抗体タンパク質の断片である。高分子量種の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離/沈降速度、光散乱、動的光散乱、静的光散乱、及びフィールドフローフラクショネーションを含む、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。
【0064】
本明細書で使用される「関連種」という用語は、親抗体タンパク質の化学的修飾によって形成される抗体タンパク質内容物の任意の成分、例えば、脱アミド化種又は酸化種を指す。関連種は、好適には、陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、又はキャピラリー電気泳動によって検出される。
【0065】
好適には、本発明の水性溶液は、それが、30℃で少なくとも、1、2、又は3カ月間貯蔵した後に、可視粒子を実質的に含まない状態であり続ける程度に十分に安定である。可視粒子は、好適には、2.9.20.欧州薬局方各条(European Pharmacopoeia Monograph)(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて検出される。
【0066】
好適には、本発明の水性溶液は、長期貯蔵したときに関連種の濃度が低い状態であり続ける程度に十分に安定である。
【0067】
一実施態様において、本発明の水性溶液は、30℃で1、2、又は3カ月間貯蔵した後、(全抗体タンパク質の重量で)少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、例えば、少なくとも97%、例えば、少なくとも98%、例えば、少なくとも99%の親抗体タンパク質を保持する。(全抗体タンパク質の重量による)抗体タンパク質のパーセンテージは、サイズ排除クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、又はキャピラリー電気泳動によって決定することができる。
【0068】
一実施態様において、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の存在は、40℃で1カ月間貯蔵した後、高分子量抗体タンパク質種の増加を(全抗体タンパク質の重量で)5%以下に、好適には、3%以下に、より好適には、2%以下に制限する。一実施態様において、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の存在は、2~8℃で最大2年間貯蔵した後、高分子量抗体タンパク質種の増加を(全抗体タンパク質の重量で)5%以下に、好適には、3%以下に、より好適には、2%以下に制限する。高分子量種の定量は、水性溶液中の全抗体タンパク質の重量パーセントとしてのものである。
【0069】
一実施態様において、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の存在は、同じ条件及び時間の長さの下で貯蔵した後、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を欠くが、その他の点では同一である水性溶液と比較して、高分子量抗体タンパク質種の増加を、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%、より好ましくは、少なくとも50%制限する。
【0070】
一実施態様において、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の存在は、抗体タンパク質の水性溶液を可視凝集物を含まない状態に維持し、一方、同じ条件下でかつ同じ長さの時間貯蔵した後、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を欠くが、その他の点では同一である水性溶液中では、可視凝集物の形成が観察される。可視凝集物の定量は、濁度又は他のタイプの光散乱の測定によって行うことができる。
【0071】
好適には、本発明の水性溶液は、40℃で少なくとも1、2、又は3カ月間貯蔵した後、(全タンパク質の重量で)5%以下の高分子量種を含む。一実施態様において、高分子量種の量は、40℃で少なくとも1、2、又は3カ月間貯蔵した後、(全抗体タンパク質の重量で)5%以下、好ましくは、3%以下増加する。高分子量種の定量は、水性溶液中の全抗体タンパク質の重量パーセントとしてのものである。
【0072】
好適には、本発明の水性溶液は、同じ条件及び時間の長さの下で貯蔵した後、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を欠くが、その他の点では同一である水性溶液よりも少なくとも10%低い、好ましくは、少なくとも25%低い、より好ましくは、少なくとも50%低い貯蔵時の高分子量種の増加を示すべきである。
【0073】
一実施態様において、本発明の水性溶液は、それを必要としている対象への治療的抗体タンパク質の投与に好適な医薬組成物である。そのような組成物は、治療的タンパク質を該対象に投与する方法において使用することができる。
【0074】
別の実施態様において、本発明は、治療的抗体タンパク質を、それを必要としている対象に投与する方法を提供する。本方法は、抗体タンパク質、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールを含む水性溶液を投与する工程を含む。好ましくは、該組成物は、静脈内、皮下、又は筋肉内への注射又は注入によって投与される。より好ましくは、該組成物は、皮下注射によって投与される。
【0075】
別の実施態様において、本発明は、それを必要としている対象への投与に好適な包装された医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、抗体タンパク質、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールを含む水性溶液を含む。該医薬組成物は、好ましくは、該溶液を取り出すための針の導入に好適なバイアルに包装される。一実施態様において、該医薬組成物は、ゴム栓を備えたガラスバイアルに包装される。包装された医薬組成物は、使用説明書及び任意に、筋肉内又は皮下投与に好適なシリンジをさらに含むキットとして提供することができる。或いは、包装された医薬組成物は、筋肉内又は皮下投与に好適な使い捨てのプレフィルドシリンジの形態で提供することができる。プレフィルドオートインジェクター装置も筋肉内又は皮下投与に好適であろう。
【0076】
本明細書で使用される「医薬として許容し得る」という用語は、過度の悪影響、例えば、毒性、刺激、及びアレルギー応答を伴わず、かつ妥当なリスク/ベネフィット比を伴う、ヒト又は動物、例えば、哺乳動物の体に対する意図された使用及び投与様式に好適である医薬組成物の成分を指す。
(略語)
【表1】
【実施例】
【0077】
(実施例)
(材料)
アルギニン(Mw 174Da)、メチオニン(Mw 149Da)、1,2-プロパンジオール(Mw 76Da)、グリセロール(Mw 92Da)、マンニトール(Mw 182Da)、NaCl(Mw 58Da)、トレハロース(Mw 342Da)をSigma Aldrichから入手した。
【0078】
(抗体タンパク質の安定性を評価する方法)
(a)視覚的評価
可視粒子を、好適には、2.9.20.欧州薬局方各条(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて検出した。必要とされる装置は、以下のものを含むビューイングステーションからなる:
・垂直位置に保持された適当なサイズの艶消し黒色パネル
・黒色パネルの隣に垂直位置に保持された適当なサイズの反射防止白色パネル
・好適な笠付白色光源及び好適な散光器が装着された調整可能なランプホルダー(各々長さ525mmの2本の13W蛍光管を含むビューイングイルミネーターが好適である)。ビューイングポイントにおける照明の強度は、2000ルクス~3750ルクスに維持される。
【0079】
いかなる接着ラベルも容器から除去し、外側を洗浄し、乾燥させる。気泡が確実に入らないようにしながら、容器を穏やかに旋回又は反転させて、白色パネルの前で約5秒間観察する。この手順を黒色パネルの前で繰り返す。いかなる粒子の存在も記録する。
【0080】
視覚的スコアを次のように順位付ける:
視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない透明な溶液
視覚的スコア2:~5個の非常に小さい粒子
視覚的スコア3:~10から20個の非常に小さい粒子
視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒子
視覚的スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子
【0081】
視覚的スコア4及び5を有する試料中の粒子は、普通光下での随時の視覚的評価で明らかに検出可能であるが、視覚的スコア1~3を有する試料は、通常、同じ評価で透明な溶液に見える。視覚的スコア1~3を有する試料は「合格」とみなされ;視覚的スコア4~5を有する試料は「不合格」とみなされる。
【0082】
(b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
高分子量種の量は、ガードカラムを備えた300×7.8mmのS3000(又は同等の)サイズ排除カラムを用いて測定される。移動相は、リン酸カリウムpH 6.5であり、流速は0.4ml/分であり、注入量は1μlであり、210nm及び280nmで検出される。結果は、%高分子種(HMWS)、すなわち、クロマトグラム上の全てのタンパク質関連ピークの和に対する凝集タンパク質に対応する全てのピーク面積の和として表される。%HMWSの絶対値に関しては、例えば、サイズ排除カラムの反復使用が原因で、時点間のわずかなばらつきが観察されることがある。しかしながら、所与の時点内で、試料は、同じ条件下のカラムを用いて試験されるので、その時点内で得られた値は、試験された水性溶液中のタンパク質の相対的安定性の非常に良い指標となる。
【0083】
(c)陽イオン交換クロマトグラフィークロマトグラフィー(CEX)
関連種の量は、Protein-Pak Hi Res SPカラムを用いて測定される。移動相Aは、20mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)であり;移動相Bは、20mMリン酸ナトリウム+0.5M NaCl(pH 6.0)である。以下の勾配溶出が使用される: 0分-100%A、4分-80%A、10分-55%A、12分-0%A。1.0ml/分の流速;注入量は3μlであり、UV検出は214nmで行われる。結果は、%主ピーク(すなわち、ネイティブタンパク質)、%酸性種、及び%塩基性種として表される。%関連種=%酸性種+%塩基性種。
【0084】
(実施例1)
リツキシマブ(10mg/ml)の安定性に対するアルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの効果を調べた。この効果を、クエン酸三ナトリウム(5mM)及びポリソルベート80(0.7mg/ml)を含有するバックグラウンド溶液中で試験した。試験される全ての製剤(F1~F20)をpH 6.5に調整した。試験された製剤中のさらなる賦形剤を表1に示す。
表1:試験されたリツキシマブの製剤(F1~F20)中のさらなる成分。製剤は全て、リツキシマブ(10mg/ml)、クエン酸三ナトリウム(5mM)、及びポリソルベート80(0.7mg/ml)を含有し、pH 6.5に調整された。
【表2】
【0085】
製剤F1~F20の安定性を40℃で視覚的評価及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって上記のように試験した。結果を表2に示す。アルギニンのみの添加は、視覚的スコアを改善するだけでなく、試験された全ての浸透圧調節剤(グリセロール、1,2-プロパンジオール、スクロース、トレハロース、及び塩化ナトリウム)の存在下、40℃でリツキシマブを貯蔵した後、HMWS形成の速度をわずかに低下させることが示された。メチオニンのみの添加は、視覚的スコアに影響を及ぼさないようであり、非荷電性浸透圧調節剤(グリセロール、1,2-プロパンジオール、スクロース、トレハロース)の存在下でHMWS形成の速度をわずかに低下させたが、塩化ナトリウムの存在下ではそうならなかった。しかしながら、最良の結果(すなわち、視覚的スコア1及び最低速度のHMWS形成)は、アルギニンとメチオニンの両方がC3ポリオールの存在下で添加された場合に達成された。リツキシマブの安定性は、試験された他のどの組成物よりもこれらの組成物(製剤F4及びF8)で良好であった。
表2: SEC及び視覚的評価によって評価された製剤F1~F20中のリツキシマブ(10mg/ml)の安定性。40℃で4~8週間貯蔵した後、HMWSの製剤を評価した。視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない透明な溶液;視覚的スコア2:~5個の非常に小さい粒子;視覚的スコア3:~10から20個の非常に小さい粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒子;視覚的スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子。
【表3】
本明細書及び以下に続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上、別段の解釈を要する場合を除き、「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変化形は、記載された整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数、工程、整数の群、又は工程の群の除外を意味するものではないと理解されるであろう。
【0086】
本発明は、特に、その好ましい実施態様に関して示され、記載されているが、形態及び詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を逸脱することなく、その中で行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。本明細書に記載される実施態様が相互排他的でないこと及び様々な実施態様由来の特徴を本発明に従って全体的に又は部分的に組み合わせ得ることも理解されるべきである。
【0087】
引用された刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッション番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列の両方を含む)は全て、あたかも各々の個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッション番号/データベース配列が引用によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別的に示されるのと同じ程度まで、あらゆる目的のために、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
(i)抗体タンパク質;並びに
(ii)アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの安定化混合物
を含む水性溶液。
(態様2)
水性溶液中の抗体タンパク質を安定化する方法であって、該溶液に、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、前記方法。
(態様3)
水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化するための、アルギニン、メチオニン、及びC3ポリオールの混合物の使用。
(態様4)
前記C3ポリオールが1,2-プロパンジオールである、態様1記載の水性溶液、態様2記載の方法、又は態様3記載の使用。
(態様5)
前記C3ポリオールがグリセロールである、態様1記載の水性溶液、態様2記載の方法、又は態様3記載の使用。
(態様6)
前記C3ポリオールが1,2-プロパンジオールとグリセロールの混合物である、態様1記載の水性溶液、態様2記載の方法、又は態様3記載の使用。
(態様7)
前記C3ポリオールが、約100mM~約500mM、例えば、約150mM~約400mM、又は約150mM~約200mMの濃度で存在する、態様1~6のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様8)
前記抗体タンパク質が治療的抗体タンパク質である、態様1~7のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様9)
前記抗体タンパク質が、抗体、抗体断片、活性部分にコンジュゲートされた抗体、1以上の抗体断片を含む融合タンパク質、又は前述のもののいずれかの誘導体である、態様1~8のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様10)
前記抗体タンパク質がモノクローナル抗体である、態様9記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様11)
前記モノクローナル抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、態様10記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様12)
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びイピリムマブから選択される、態様11記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様13)
前記モノクローナル抗体がリツキシマブである、態様12記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様14)
前記抗体タンパク質が1以上の免疫グロブリンFc断片に融合された活性タンパク質ドメインを含む融合タンパク質である、態様9記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様15)
前記抗体タンパク質が、エタネルセプト、アバタセプト、又はベラタセプトである、態様14記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様16)
前記誘導体が1以上の抗体又は抗体断片と化学的に不活性なポリマーとを含む、コンジュゲートされた誘導体である、態様9記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様17)
前記コンジュゲートされた誘導体がセルトリズマブペゴールである、態様16記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様18)
前記抗体タンパク質が、約1mg/mL~約300mg/mL、例えば、約10mg/mL~約300mg/mL、約1mg/mL~約200mg/mL、又は約10mg/mL~約200mg/mLの濃度で存在する、態様1~17のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様19)
前記アルギニンが、約5mM~約100mM、例えば、約20mM~約80mM、例えば、約60mMの濃度で存在する、態様1~18のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様20)
前記メチオニンが、約2mM~約50mM、例えば、約10mM~約40mM、例えば、約30mMの濃度で存在する、態様1~19のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様21)
前記溶液のpHが、約pH 4.0~約pH 8.0、例えば、約pH 5.0~約pH 7.0又は約pH 5.0~約pH 6.5である、態様1~20のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様22)
緩衝剤をさらに含む、態様1~21のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様23)
前記緩衝剤が、ヒスチジン、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及びTRISからなる群から選択される、態様22記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様24)
前記緩衝剤が、約0.5mM~約50mM、例えば、約1mM~約20mM、例えば、約2mM~約5mMの濃度で存在する、態様22又は23記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様25)
非イオン性界面活性剤をさらに含む、態様1~24のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様26)
前記非イオン性界面活性剤が、アルキルグリコシド、例えば、ドデシルマルトシドである、態様25記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様27)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20である、態様25記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様28)
前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールのアルキルエーテルである、態様25記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様29)
前記ポリエチレングリコールのアルキルエーテルが、ポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル、及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択される、態様28記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様30)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー171、又はポロキサマー185である、態様25記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様31)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、例えば、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである、態様25記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様32)
前記非イオン性界面活性剤が、約10μg/mL~約2000μg/mL、例えば、約50μg/mL~約1000μg/mL、例えば、約100μg/mL~約500μg/mLの濃度で存在する、態様25~31のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様33)
非荷電性浸透圧調節剤、例えば、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、PEG300、又はPEG400をさらに含む、態様1~32のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様34)
前記非荷電性浸透圧調節剤が、50mM~約1000mM、例えば、約100mM~約500mM、例えば、約300mMの濃度で存在する、態様33記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様35)
例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリシン、及びヒスチジンからなる群から選択される、荷電性浸透圧調節剤をさらに含む、態様1~34のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様36)
前記荷電性浸透圧調節剤が、約25mM~約500mM、例えば、約50mM~約250mM、例えば、約150mMの濃度で存在する、態様35記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様37)
前記水性溶液が等張である、態様1~36のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様38)
防腐剤をさらに含む、態様1~37のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様39)
前記防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、態様38記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様40)
前記防腐剤が約0.01mM~約100mMの濃度で存在する、態様38又は39記載の水性溶液、方法、又は使用。
(態様41)
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害する方法である、態様2記載の又は態様4~40のいずれか一項記載の方法。
(態様42)
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の関連種の形成を阻害する方法である、態様2記載の又は態様4~40のいずれか一項記載の方法。
(態様43)
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の脱アミド化を阻害する方法である、態様2記載の又は態様4~40のいずれか一項記載の方法。
(態様44)
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の前記抗体タンパク質の低分子量分解産物の形成を阻害する方法である、態様2記載の又は態様4~40のいずれか一項記載の方法。
(態様45)
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の水性溶液中での可視粒子の形成を阻害する方法である、態様2記載の又は態様4~40のいずれか一項記載の方法。
(態様46)
貯蔵時の前記抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害するための、態様3~40のいずれか一項記載の使用。
(態様47)
貯蔵時の前記抗体タンパク質の関連種の形成を阻害するための、態様3~40のいずれか一項記載の使用。
(態様48)
貯蔵時の前記抗体タンパク質の脱アミド化を阻害するための、態様3~40のいずれか一項記載の使用。
(態様49)
貯蔵時の前記抗体タンパク質の低分子量分解産物の形成を阻害するための、態様3~40のいずれか一項記載の使用。
(態様50)
貯蔵時の前記抗体タンパク質の水性溶液中での可視粒子の形成を阻害するための、態様3~40のいずれか一項記載の使用。
(態様51)
前記溶液が、皮下もしくは筋肉内への注射によるか又は静脈内への注射もしくは注入による投与のためのものである、態様1記載の又は態様4~40のいずれか一項記載の水性溶液。