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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】固体撮像素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/57 20230101AFI20230515BHJP
   H04N 25/772 20230101ALI20230515BHJP
   H04N 25/79 20230101ALI20230515BHJP
【FI】
H04N25/57
H04N25/772
H04N25/79
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019546584
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2018032824
(87)【国際公開番号】W WO2019069614
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2017193441
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】山本 孝久
(74)【代理人】
【識別番号】100118290
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 正明
(72)【発明者】
【氏名】松浦 浩二
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118196(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056248(WO,A1)
【文献】特開2010-034616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部を含む複数の単位画素が行列状に配置された画素アレイ部、
前記画素アレイ部の列配列に対応して設けられた垂直信号線を通して単位画素から出力される画素信号をサンプリングし、保持するサンプル&ホールド部、及び、
前記サンプル&ホールド部から出力される前記画素信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部を備え、
前記サンプル&ホールド部は、1本の垂直信号線に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持ち、
前記2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、2個のサンプリング容量を有し、かつ前記2個のサンプリング容量の容量比に応じて前記画素信号を減衰させて出力する、
固体撮像素子。
【請求項2】
第1半導体基板及び第2半導体基板の少なくとも2つの半導体基板が積層された積層構造を有し、
前記画素アレイ部は、前記第1半導体基板に形成され、
前記サンプル&ホールド部は、前記第2半導体基板に形成されている、
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量の入力端間を選択的に短絡する第1のスイッチ部を有する、
請求項1又は2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記2個のサンプリング容量はそれぞれ、複数の単位容量の組み合わせによって構成されている、
請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、独立した制御信号により、垂直信号線と複数の単位容量の各入力端との間を選択的に短絡するスイッチ群から成る第2のスイッチ部を有し、
前記第1のスイッチ部は、隣り合う単位容量の入力端間を選択的に短絡するスイッチ群から成る、
請求項4に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記画素信号は、リセット時に単位画素から出力されるリセット信号、及び、光電変換時に単位画素から出力されるデータ信号を含み、
前記2つのサンプル&ホールド回路の一方は、リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量を有する、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記画素信号は、リセット時に単位画素から出力されるリセット信号、及び、光電変換時に単位画素から出力されるデータ信号を含み、
前記2つのサンプル&ホールド回路の一方は、リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量を有し、
前記リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、前記データ信号をサンプリングするサンプリング容量の前記容量比は、前記第2のスイッチ部のスイッチ群の各スイッチの切替えによって制御可能である、
請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記2つのサンプル&ホールド回路は、
前記リセット信号をサンプリングする第1サンプリング容量と、前記データ信号をサンプリングする第2サンプリング容量と、を有する第1サンプル&ホールド回路と、
前記リセット信号をサンプリングする第3サンプリング容量を有する第2サンプル&ホールド回路と、を有し、
前記第1サンプル&ホールド回路は、前記第1サンプリング容量と前記第2サンプリング容量との前記容量比に応じて前記リセット信号と前記データ信号との差分を減衰させた信号を出力する、
請求項6又は7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記アナログ-デジタル変換部は、前記第1サンプル&ホールド回路の出力信号と、前記第2サンプル&ホールド回路の出力信号との差分を取ることにより、前記第1サンプル&ホールド回路の出力信号に含まれる前記リセット信号の成分を除去する、
請求項に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記2つのサンプル&ホールド回路は、同じ回路構成を有する、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記アナログ-デジタル変換部は、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器から成る、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記アナログ-デジタル変換部は、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器から成る、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
光電変換部を含む複数の単位画素が行列状に配置された画素アレイ部、
前記画素アレイ部の列配列に対応して設けられた垂直信号線を通して単位画素から出力される画素信号をサンプリングし、保持するサンプル&ホールド部、及び、
前記サンプル&ホールド部から出力される画素信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部を備え、
前記サンプル&ホールド部は、1本の垂直信号線に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持ち、
前記2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、2個のサンプリング容量を有し、かつ前記2個のサンプリング容量の容量比に応じて前記画素信号を減衰して出力する、
固体撮像素子を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子において、アナログ-デジタル変換器などを含む読出し回路では、単位画素のリセットレベルのばらつき、暗電流による変動分、飽和信号量の増大などにより、幅広い入力電圧レンジに対応することが求められる。そして、広い入力電圧レンジに対応するためのアナログ回路には、通常、高い電源電圧が必要となる。しかし、電源電圧が高いと、それに伴って消費電力も高くなってしまうため、電源電圧を上げずに広い入力電圧レンジに対応できることが求められる。
【0003】
このような課題、例えば暗電流による入力電圧レンジ圧迫に対し、従来、特開2008-219293号公報に記載の技術が提案されている。特開2008-219293号公報には、遮光画素領域の出力信号と基準値との誤差量を補償するオフセット補償信号を、複数のアナログ-デジタル変換器の各入力側に共通して出力するフィードバック制御部を設け、有効画素領域の出力信号からオフセット補償信号を減算することにより、入力電圧レンジを確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-219293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特開2008-219293号公報に記載の従来技術では、入力電圧レンジを確保するために、フィードバック制御部という新たな回路を読出し回路の外部に追加する必要がある。そのため、新たな回路の追加による回路規模の増大や、追加回路によるノイズ特性の劣化などの懸念点がある。
【0006】
そこで、本開示は、読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応可能な固体撮像素子及び当該固体撮像素子を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の固体撮像素子は、
光電変換部を含む複数の単位画素が行列状に配置された画素アレイ部、
画素アレイ部の列配列に対応して設けられた垂直信号線を通して単位画素から出力される画素信号をサンプリングし、保持するサンプル&ホールド部、及び、
サンプル&ホールド部から出力される画素信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部を備え、
サンプル&ホールド部は、1本の垂直信号線に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持ち、
2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量を少なくとも2個有する。
【0008】
また、上記の目的を達成するための本開示の電子機器は、上記の構成の固体撮像素子を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応することができる。
【0010】
尚、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、これに限定されるものではなく、また付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の固体撮像素子の一例であるCMOSイメージセンサの基本的な構成の概略を示すブロック図である。
図2図2は、単位画素の回路構成の一例を示す回路図である。
図3図3は、CMOSイメージセンサの積層構造の概略を示す分解斜視図である。
図4図4は、実施例1に係るサンプル&ホールド部の1画素列分の回路構成を示す回路図である。
図5図5は、実施例1の場合の垂直信号線の電位の波形、及び、2つのサンプル&ホールド回路の各スイッチ素子のスイッチ制御信号のタイミング関係を示すタイミング波形図である。
図6図6は、リセット信号Vrstをサンプリングするときの動作説明図である。
図7図7は、データ信号Vdataをサンプリングし、リセット信号Vrstをホールドするときの動作説明図である。
図8図8は、データ信号Vdataをホールドするときの動作説明図である。
図9図9は、実施例2に係るサンプル&ホールド部の1画素列分の回路構成及びシングルスロープ型アナログ-デジタル変換器の構成を示す回路図である。
図10図10は、実施例2の場合の垂直信号線の電位の波形、及び、2つのサンプル&ホールド回路の各スイッチ素子のスイッチ制御信号のタイミング関係を示すタイミング波形図である。
図11図11は、実施例3に係るサンプル&ホールド部の1画素列分の回路構成及びデルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器の構成を示す回路図である。
図12図12は、実施例3の場合の垂直信号線の電位の波形、及び、2つのサンプル&ホールド回路の各スイッチ素子のスイッチ制御信号のタイミング関係を示すタイミング波形図である。
図13図13は、本開示に係る技術の適用例を示す図である。
図14図14は、本開示の電子機器の一例である撮像装置の構成を示すブロック図である。
図15図15は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図16図16は、撮像部の設置位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本開示に係る技術は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値などは例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示の固体撮像素子及び電子機器、全般に関する説明
2.本開示の固体撮像素子
2-1.基本的な構成
2-2.単位画素の回路構成
2-3.積層構造
2-4.入力電圧レンジの拡大について
2-5.実施形態に係るサンプル&ホールド部
2-5-1.実施例1(サンプリング容量を2個有する例)
2-5-2.実施例2(サンプリング容量が複数の単位容量の組み合わせから成り、
シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器を用いる例)
2-5-3.実施例3(サンプリング容量が複数の単位容量の組み合わせから成り、
デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器を用いる例)
2-6.実施形態の変形例
2-7.実施形態の応用例
3.本開示に係る技術の適用例
3-1.本開示の電子機器(撮像装置の例)
3-2.移動体への応用例
4.本開示がとることができる構成
【0013】
<本開示の固体撮像素子及び電子機器、全般に関する説明>
本開示の固体撮像素子及び電子機器にあっては、第1半導体基板及び第2半導体基板の少なくとも2つの半導体基板が積層された積層構造を有する構成とすることができる。そして、この積層構造において、画素アレイ部については、第1半導体基板に形成し、サンプル&ホールド部については、第1半導体基板以外の半導体基板に形成することが好ましい。
【0014】
上述した好ましい構成を含む本開示の固体撮像素子及び電子機器にあっては、2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方について、サンプリング容量の入力端間を選択的に短絡する第1のスイッチ部を有する構成とすることができる。また、少なくとも2個のサンプリング容量のそれぞれについて、複数の単位容量の組み合わせから成る構成とすることができる。
【0015】
更に、上述した好ましい構成を含む本開示の固体撮像素子及び電子機器にあっては、2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方について、独立した制御信号により、垂直信号線と複数の単位容量の各入力端との間を選択的に短絡するスイッチ群から成る第2のスイッチ部を有する構成とすることができる。また、第1のスイッチ部について、隣り合う単位容量の入力端間を選択的に短絡するスイッチ群から成る構成とすることができる。
【0016】
更に、上述した好ましい構成を含む本開示の固体撮像素子及び電子機器にあっては、画素信号について、リセット時に単位画素から出力されるリセット信号、及び、光電変換時に単位画素から出力されるデータ信号を含む形態とすることができる。そして、2つのサンプル&ホールド回路の一方について、リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量を有する構成とすることができる。
【0017】
更に、上述した好ましい構成を含む本開示の固体撮像素子及び電子機器にあっては、リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量の容量比について、第2のスイッチ部のスイッチ群の各スイッチの切替えによって制御可能な構成とすることができる。また、2つのサンプル&ホールド回路について、同じ回路構成を有する構成とすることができる。
【0018】
更に、上述した好ましい構成を含む本開示の固体撮像素子及び電子機器にあっては、アナログ-デジタル変換部について、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器から成る、あるいは、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器から成る構成とすることができる。
【0019】
<本開示の固体撮像素子>
[基本的な構成]
まず、本開示の固体撮像素子の基本的な構成について説明する。本実施形態では、固体撮像素子として、X-Yアドレス方式の固体撮像素子の一種であるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを例に挙げて説明する。CMOSイメージセンサは、CMOSプロセスを応用して、又は、部分的に使用して作製されたイメージセンサである。
【0020】
図1は、本開示の固体撮像素子の一例であるCMOSイメージセンサの基本的な構成の概略を示すブロック図である。本例に係るCMOSイメージセンサ1は、光電変換部を含む単位画素(以下、単に「画素」と記述する場合がある)2が行方向及び列方向に、即ち、行列状に2次元配置されて成る画素アレイ部11、及び、当該画素アレイ部11の周辺回路部を有する構成となっている。ここで、行方向とは画素行の単位画素2の配列方向(所謂、水平方向)を言い、列方向とは画素列の単位画素2の配列方向(所謂、垂直方向)を言う。単位画素2は、光電変換を行うことにより、受光した光量に応じた光電荷を生成し、蓄積する。
【0021】
画素アレイ部11の周辺回路部は、例えば、行選択部12、負荷MOS部13、サンプル&ホールド部14、アナログ-デジタル変換部15、メモリ部16、データ処理部17、出力部18、及び、タイミング制御部19等によって構成されている。
【0022】
画素アレイ部11において、行列状の画素配列に対し、画素行毎に画素駆動線31(311~31m)が行方向に沿って配線され、画素列毎に垂直信号線32(321~32n)が列方向に沿って配線されている。画素駆動線31は、単位画素2から信号を読み出す際の駆動を行うための駆動信号を伝送する。図1では、画素駆動線31について1本の配線として図示しているが、1本に限られるものではない。画素駆動線31の一端は、行選択部12の各行に対応した出力端に接続されている。
【0023】
以下に、画素アレイ部11の周辺回路部の各回路部、即ち、行選択部12、負荷MOS部13、サンプル&ホールド部14、アナログ-デジタル変換部15、メモリ部16、データ処理部17、出力部18、及び、タイミング制御部19について説明する。
【0024】
行選択部12は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、画素アレイ部11の各画素2を全画素同時あるいは行単位等で駆動する。すなわち、行選択部12は、当該行選択部12を制御するタイミング制御部19と共に、画素アレイ部11の各画素2を駆動する駆動部を構成している。この行選択部12は、その具体的な構成については図示を省略するが、一般的に、読出し走査系と掃出し走査系の2つの走査系を有する構成となっている。
【0025】
読出し走査系は、単位画素2から画素信号を読み出すために、画素アレイ部11の単位画素2を行単位で順に選択走査する。単位画素2から読み出される画素信号はアナログ信号である。掃出し走査系は、読出し走査系によって読出し走査が行われる読出し行に対して、その読出し走査よりもシャッタスピードの時間分だけ先行して掃出し走査を行う。
【0026】
この掃出し走査系による掃出し走査により、読出し行の単位画素2の光電変換部から不要な電荷が掃き出されることによって当該光電変換部がリセットされる。そして、この掃出し走査系による不要電荷の掃き出す(リセットする)ことにより、所謂、電子シャッタ動作が行われる。ここで、電子シャッタ動作とは、光電変換部の光電荷を捨てて、新たに露光を開始する(光電荷の蓄積を開始する)動作のことを言う。
【0027】
読出し走査系による読出し動作によって読み出される信号は、その直前の読出し動作又は電子シャッタ動作以降に受光した光量に対応するものである。そして、直前の読出し動作による読出しタイミング又は電子シャッタ動作による掃出しタイミングから、今回の読出し動作による読出しタイミングまでの期間が、単位画素2における光電荷の露光期間となる。
【0028】
負荷MOS部13は、画素列毎に垂直信号線32(321~32n)の各々に接続されたMOSトランジスタから成る電流源Iの集合から成り(図2参照)、行選択部12によって選択走査された画素行の各画素2に対し、垂直信号線32の各々を通してバイアス電流を供給する。
【0029】
サンプル&ホールド部14は、垂直信号線32(321~32n)を通して供給される画素信号をサンプリングし、保持(サンプルホールド)する。このサンプル&ホールド部14に対して本開示に係る技術が適用される。本開示に係る技術が適用されるサンプル&ホールド部14は、1本の垂直信号線32に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持つ。そして、2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量を少なくとも2個有する。サンプル&ホールド部14の詳細については後述する。
【0030】
アナログ-デジタル(A/D)変換部15は、垂直信号線32(321~32n)に対応して設けられた複数のアナログ-デジタル変換器の集合から成り、サンプル&ホールド部14から画素列毎に出力されるアナログの画素信号をデジタル信号に変換する。アナログ-デジタル変換器は、周知のアナログ-デジタル変換器とすることができる。具体的には、アナログ-デジタル変換器として、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器、逐次比較型アナログ-デジタル変換器、又は、デルタ-シグマ型(ΔΣ型)アナログ-デジタル変換器を例示することができる。但し、アナログ-デジタル変換器は、これらに限定されるものではない。
【0031】
メモリ部16は、データ処理部17による処理の下に、アナログ-デジタル変換部15でのアナログ-デジタル変換結果を記憶する。
【0032】
データ処理部17は、アナログ-デジタル変換部15から出力されるデジタル信号を処理するデジタル信号処理部であり、アナログ-デジタル変換結果をメモリ部16に対する書込み/読出しの処理を行ったり、当該アナログ-デジタル変換結果に対して種々の処理を行ったりする。
【0033】
出力部18は、データ処理部17での処理後の信号を出力する。タイミング制御部19は、各種のタイミング信号、クロック信号、及び、制御信号等を生成し、これら生成した信号を基に、行選択部12、サンプル&ホールド部14、アナログ-デジタル変換部15、及び、データ処理部17等の駆動制御を行う。
【0034】
[単位画素の回路構成]
図2は、単位画素2の回路構成の一例を示す回路図である。単位画素2は、光電変換部として、例えば、フォトダイオード21を有している。単位画素2は、フォトダイオード21に加えて、転送トランジスタ22、リセットトランジスタ23、増幅トランジスタ24、及び、選択トランジスタ25を有する画素構成となっている。
【0035】
尚、ここでは、転送トランジスタ22、リセットトランジスタ23、増幅トランジスタ24、及び、選択トランジスタ25の4つのトランジスタとして、例えばNチャネルMOSFETを用いている。但し、ここで例示した4つのトランジスタ22~25の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
【0036】
この単位画素2に対して、先述した画素駆動線31(311~31m)として、複数の画素駆動線が同一画素行の各画素2に対して共通に配線されている。これら複数の画素駆動線は、行選択部12の各画素行に対応した出力端に画素行単位で接続されている。行選択部12は、複数の画素駆動線に対して転送信号TRG、リセット信号RST、及び、選択信号SELを適宜出力する。
【0037】
フォトダイオード21は、アノード電極が低電位側電源(例えば、グランド)に接続されており、受光した光をその光量に応じた電荷量の光電荷(ここでは、光電子)に光電変換してその光電荷を蓄積する。フォトダイオード21のカソード電極は、転送トランジスタ22を介して増幅トランジスタ24のゲート電極と電気的に接続されている。ここで、増幅トランジスタ24のゲート電極が電気的に繋がった領域は、フローティングディフュージョン(浮遊拡散領域/不純物拡散領域)FDである。フローティングディフュージョンFDは、電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部である。
【0038】
転送トランジスタ22のゲート電極には、高レベル(例えば、VDDレベル)がアクティブとなる転送信号TRGが行選択部12から与えられる。転送トランジスタ22は、転送信号TRGに応答して導通状態となることで、フォトダイオード21で光電変換され、当該フォトダイオード21に蓄積された光電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。
【0039】
リセットトランジスタ23は、高電位側電源VDDのノードとフローティングディフュージョンFDとの間に接続されている。リセットトランジスタ23のゲート電極には、高レベルがアクティブとなるリセット信号RSTが行選択部12から与えられる。リセットトランジスタ23は、リセット信号RSTに応答して導通状態となり、フローティングディフュージョンFDの電荷を電圧VDDのノードに捨てることによってフローティングディフュージョンFDをリセットする。
【0040】
増幅トランジスタ24は、ゲート電極がフローティングディフュージョンFDに、ドレイン電極が高電位側電源VDDのノードにそれぞれ接続されている。増幅トランジスタ24は、フォトダイオード21での光電変換によって得られる信号を読み出すソースフォロワの入力部となる。すなわち、増幅トランジスタ24は、ソース電極が選択トランジスタ25を介して垂直信号線32に接続される。そして、増幅トランジスタ24と、垂直信号線32の一端に接続される電流源Iとは、フローティングディフュージョンFDの電圧を垂直信号線32の電位に変換するソースフォロワを構成している。
【0041】
選択トランジスタ25は、例えば、ドレイン電極が増幅トランジスタ24のソース電極に、ソース電極が垂直信号線32にそれぞれ接続されている。選択トランジスタ25のゲート電極には、高レベルがアクティブとなる選択信号SELが行選択部12から与えられる。選択トランジスタ25は、選択信号SELに応答して導通状態となることで、単位画素2を選択状態として増幅トランジスタ24から出力される信号を垂直信号線32に伝達する。
【0042】
尚、選択トランジスタ25については、高電位側電源VDDのノードと増幅トランジスタ24のドレイン電極との間に接続する回路構成を採ることもできる。また、本例では、単位画素2の画素回路として、転送トランジスタ22、リセットトランジスタ23、増幅トランジスタ24、及び、選択トランジスタ25から成る、即ち4つのトランジスタ(Tr)から成る4Tr構成を例に挙げたが、これに限られるものではない。例えば、選択トランジスタ25を省略し、増幅トランジスタ24に選択トランジスタ25の機能を持たせる3Tr構成とすることもできるし、必要に応じて、トランジスタの数を増やした5Tr以上の構成とすることもできる。
【0043】
上記の構成の単位画素2からは、リセットトランジスタ23によるフローティングディフュージョンFDのリセット時のリセットレベルであるリセット信号(所謂、P相信号)と、フォトダイオード21での光電変換に基づく信号レベルであるデータ信号(所謂、D相信号)とが順に出力される。すなわち、単位画素2から出力される画素信号は、リセット時のリセット信号及び光電変換時のデータ信号を含んでいる。
【0044】
[積層構造]
上記の構成のCMOSイメージセンサ1は、図3に示すように、第1半導体基板41及び第2半導体基板42の少なくとも2つの半導体基板(チップ)が積層された、所謂、積層構造のイメージセンサとすることができる。また、本例に係るCMOSイメージセンサ1は、配線層が配される側の基板面を表面(正面)とするとき、その反対側の裏面側から照射される光を取り込む裏面照射型の画素構造とすることができる。
【0045】
積層構造のCMOSイメージセンサ1において、裏面照射型の画素構造を有する単位画素2が行列状に配置されて成る画素アレイ部11は、1層目の第1半導体基板41に形成される。また、行選択部12、負荷MOS部13、サンプル&ホールド部14、アナログ-デジタル変換部15、メモリ部16、データ処理部17、出力部18、及び、タイミング制御部19等の回路部分は、2層目の第2半導体基板42に形成される。そして、1層目の第1半導体基板41と2層目の第2半導体基板42とは、ビア(VIA)43を通して電気的に接続される。
【0046】
この積層構造のCMOSイメージセンサ1によれば、第1半導体基板41として画素アレイ部11を形成できるだけの大きさ(面積)のもので済むため、1層目の第1半導体基板41のサイズ(面積)、ひいては、チップ全体のサイズを小さくできる。更に、1層目の第1半導体基板41には単位画素2の作製に適したプロセスを適用でき、2層目の第2半導体基板42には回路部分の作製に適したプロセスを適用できるため、CMOSイメージセンサ1の製造に当たって、プロセスの最適化を図ることができるメリットもある。
【0047】
尚、ここでは、第1半導体基板41及び第2半導体基板42が積層されて成る2層構造の積層構造を例示したが、積層構造としては、2層構造に限られるものではなく、3層以上の構造とすることもできる。そして、3層以上の積層構造の場合、行選択部12、負荷MOS部13、サンプル&ホールド部14、アナログ-デジタル変換部15、メモリ部16、データ処理部17、出力部18、及び、タイミング制御部19等の回路部分については、2層目以降の半導体基板に分散して形成することができる。
【0048】
また、上記の例では、積層構造のCMOSイメージセンサ1に適用した場合を例に挙げて説明したが、本開示に係る技術は、積層構造のCMOSイメージセンサ1への適用に限られるものではない。すなわち、本開示に係る技術は、画素アレイ部11と同じ半導体基板上に、行選択部12、負荷MOS部13、サンプル&ホールド部14、アナログ-デジタル変換部15、メモリ部16、データ処理部17、出力部18、及び、タイミング制御部19等の回路部分を形成した、所謂、平置構造のCMOSイメージセンサにも適用することができる。
【0049】
[入力電圧レンジの拡大について]
上記の構成のCMOSイメージセンサ1において、アナログ-デジタル変換部15などを含む読出し回路では、単位画素2のリセットレベルのばらつき、暗電流による変動分、飽和信号量の増大などにより、幅広い入力電圧レンジに対応することが求められる。また、読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応できることが望ましい。
【0050】
[実施形態に係るサンプル&ホールド部]
そこで、本実施形態では、サンプル&ホールド部14について、1本の垂直信号線32に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持ち、2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方が、サンプリング容量を少なくとも2個有する構成としている。この構成を採ることにより、アナログ-デジタル変換部15などを含む読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応できる。読出し回路の外部に新たな回路を追加しないことで、新たな回路の追加による回路規模の増大や、追加回路によるノイズ特性の劣化などがない。また、電源電圧を高く設定しなくて済むことで、消費電力が増大することもない。
【0051】
以下に、読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応可能とする本実施形態に係るサンプル&ホールド部14の具体的な実施例について説明する。
【0052】
≪実施例1≫
実施例1は、2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方が、サンプリング容量を2つ有する例である。図4に、実施例1に係るサンプル&ホールド部14の1画素列分の回路構成を示す。
【0053】
図4に示すように、実施例1に係るサンプル&ホールド部14は、1本の垂直信号線32に対し、2つのサンプル&ホールド回路141,142を並列に配置した構成となっている。一方のサンプル&ホールド回路141は、データ信号(D相)用サンプル&ホールド回路であり、他方のサンプル&ホールド回路142は、リセット信号(P相)用サンプル&ホールド回路である。
【0054】
(データ信号用サンプル&ホールド回路)
データ信号用サンプル&ホールド回路141は、反転増幅器1411、2つのサンプリング容量Cd_1,Cd_2、及び、5つのスイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2,SWd_2,SWd_3,SWd_4を有している。反転増幅器1411は、非反転(+)入力端が接地されており、その出力端からデータ信号のサンプルホールド出力Vout_DSHを出力する。
【0055】
スイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2は、各入力端が垂直信号線32に接続され、各出力端がサンプリング容量Cd_1,Cd_2の各入力端(一端)に接続されており、スイッチ制御信号smp_d_1,smp_d_2によってオン(閉)/オフ(開)が行われる。すなわち、スイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2は、独立したスイッチ制御信号smp_d_1,smp_d_2による制御の下に、垂直信号線32とサンプリング容量Cd_1,Cd_2の各入力端との間を選択的に短絡するスイッチ部(第2のスイッチ部)を構成している。スイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2の各出力端(他端)は、反転増幅器1411の反転(-)入力端に共通に接続されている。
【0056】
スイッチ素子SWd_2は、スイッチ素子SWd_1_2の出力端(サンプリング容量Cd_2の入力端)と反転増幅器1411の出力端との間に接続されており、スイッチ制御信号hld_dによってオン/オフ制御が行われる。スイッチ素子SWd_3は、反転増幅器1411の反転入力端(サンプリング容量Cd_1,Cd_2の各出力端)と反転増幅器1411の出力端との間に接続されており、スイッチ制御信号smpa_dによってオン/オフ制御が行われる。
【0057】
スイッチ素子SWd_4は、サンプリング容量Cd_1の入力端(スイッチ素子SWd_1_1の出力端)とサンプリング容量Cd_2の入力端(スイッチ素子SWd_1_2の出力端)との間に接続されており、スイッチ制御信号hld_dによってオン/オフ制御が行われる。すなわち、スイッチ素子SWd_4は、スイッチ制御信号hld_dによる制御の下に、サンプリング容量Cd_1,Cd_2の入力端間を選択的に短絡するスイッチ部(第1のスイッチ部)を構成している。
【0058】
(リセット信号用サンプル&ホールド回路)
リセット信号用サンプル&ホールド回路142は、反転増幅器1421、1つのサンプリング容量Cp、及び、3つのスイッチ素子SWp_1,SWp_2,SWp_3を有している。反転増幅器1421は、非反転(+)入力端が接地されており、その出力端からリセット信号のサンプルホールド出力Vout_PSHを出力する。スイッチ素子SWp_1の入力端は、垂直信号線32に接続されており、スイッチ制御信号smp_pによってオン(閉)/オフ(開)制御が行われる。サンプリング容量Cpは、入力端がスイッチ素子SWp_1の出力端に接続され、出力端が反転増幅器1421の反転(-)入力端に接続されている。
【0059】
スイッチ素子SWp_2は、スイッチ素子SWp_1の出力端(サンプリング容量Cpの入力端)と反転増幅器1421の出力端との間に接続されており、スイッチ制御信号hld_pによってオン/オフ制御が行われる。スイッチ素子SWp_3は、反転増幅器1421の反転入力端(サンプリング容量Cpの出力端)と反転増幅器1421の出力端との間に接続されており、スイッチ制御信号smpa_pによってオン/オフ制御が行われる。
【0060】
図5に、垂直信号線32の電位の波形、及び、2つのサンプル&ホールド回路141,142の各スイッチ素子のスイッチ制御信号smp_p,smpa_p,hld_p,smp_d_1,smp_d_2,smpa_d,hld_dのタイミング関係を示している。
【0061】
(回路動作)
次に、図5のタイミング波形図を用いて、実施例1に係るサンプル&ホールド部14の回路動作について説明する。
【0062】
・リセット信号のサンプリング時
時刻t1で、スイッチ制御信号smp_p,smpa_pが高レベルとなることで、リセット信号用サンプル&ホールド回路142において、スイッチ素子SWp_1,SWp_3がオン状態となる。そして、スイッチ制御信号smpa_pが高レベルから低レベルに遷移する時刻t2で、リセット信号Vrstがサンプリングされ、サンプリング容量Cpに蓄積される。
【0063】
このリセット信号のサンプリング時に同時に、スイッチ制御信号smp_d_2,smpa_dが高レベルとなることで、データ信号用サンプル&ホールド回路141において、スイッチ素子SWd_1_2,SWd_3がオン状態となる。そして、スイッチ制御信号smpa_dが高レベルから低レベルに遷移するタイミング(時刻t2)で、データ信号用サンプル&ホールド回路141においても、リセット信号Vrstがサンプリングされ、サンプリング容量Cd_2に蓄積される。
【0064】
すなわち、リセット信号Vrstは、リセット信号用サンプル&ホールド回路142においてサンプルホールドされるとともに、データ信号用サンプル&ホールド回路141のサンプリング容量Cd_2側においてもサンプルホールドされる。リセット信号Vrstをサンプリングするときの動作説明図を図6に示す。図6では、非動作状態にある経路を点線で図示している(図7及び図8においても同様である)。
【0065】
・データ信号のサンプリング&リセット信号のホールド時
次に、スイッチ制御信号smp_p,smp_d_2が高レベルから低レベルへ遷移した後、時刻t3で、スイッチ制御信号smp_d_1,smpa_dが高レベルとなることで、データ信号用サンプル&ホールド回路141において、スイッチ素子SWd_1_1,SWd_3がオン状態となる。そして、スイッチ制御信号smpa_dが高レベルから低レベルに遷移する時刻t4で、データ信号用サンプル&ホールド回路141のサンプリング容量Cd_1側においてデータ信号Vdataのサンプリングが行われる。
【0066】
このデータ信号のサンプリング期間では、スイッチ制御信号hld_pが高レベルとなり、スイッチ素子SWp_2がオン状態になることで、リセット信号用サンプル&ホールド回路142において、サンプリング容量Cpがリセット信号Vrstをホールドし続ける。そして、このサンプリング容量Cpにサンプルホールドされた電荷が、リセット信号のサンプルホールド出力Vout_PSHとして、リセット信号用サンプル&ホールド回路142から出力される。データ信号Vdataをサンプリングし、リセット信号Vrstをホールドするときの動作説明図を図7に示す。
【0067】
・データ信号のホールド及び容量の加重平均時
次に、スイッチ制御信号smp_d_1が高レベルから低レベルへ遷移した後、時刻t5で、スイッチ制御信号hld_dが高レベルになることで、データ信号用サンプル&ホールド回路141において、スイッチ素子SWd_2,SWd_4がオン状態になる。これにより、リセット信号Vrstがサンプリング容量Cd_2にホールドされ、データ信号Vdataがサンプリング容量Cd_1にホールドされるとともに、両サンプリング容量Cd_1,Cd_2の各入力端間が短絡される。
【0068】
このように、データ信号Vdataをサンプルホールドしたサンプリング容量Cd_1、及び、リセット信号Vrstをサンプルホールドしたサンプリング容量Cd_2の各入力端を短絡することにより、サンプリング容量Cd_1とサンプリング容量Cd_2との間で容量の加重平均が行われる。この容量の加重平均によってリセット信号Vrstとデータ信号Vdataとのレベル差(Vrst-Vdata)が、サンプリング容量Cd_2とサンプリング容量Cd_1との容量比で減衰される。そして、データ信号用サンプル&ホールド回路141から、データ信号のサンプルホールド出力Vout_DSHが出力される。リセット信号Vrst及びデータ信号Vdataをホールドするときの動作説明図を図8に示す。
【0069】
上述したように、読出し回路の入口に配置されたサンプル&ホールド部14において、容量の加重平均により受動的に所望の比でリセット信号Vrstとデータ信号Vdataとのレベル差(Vrst-Vdata)について減衰が行われる。これにより、アナログ回路の動作レンジを圧迫することなく、広い電圧範囲の入力信号を受けることができる。しかも、アナログ-デジタル変換部15などを含む読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応できる。
【0070】
≪実施例2≫
実施例2は、サンプリング容量が複数の単位容量の組み合わせから成り、アナログ-デジタル変換器としてシングルスロープ型アナログ-デジタル変換器を用いる例である。図9に、実施例2に係るサンプル&ホールド部の1画素列分の回路構成及びシングルスロープ型アナログ-デジタル変換部の構成を示す。
【0071】
図9において、アナログ-デジタル変換部15は、例えば、垂直信号線32(321~32n)に対応して設けられた複数のアナログ-デジタル変換器151の集合から成る。2つのサンプル&ホールド回路141,142は、スイッチ素子SWp_0,SWd_0に対するスイッチ制御信号sw_p,sw_dによる制御の下に、アナログ-デジタル変換部15の対応するアナログ-デジタル変換器151と選択的に接続される。
【0072】
(シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器)
実施例2では、アナログ-デジタル変換部15の各アナログ-デジタル変換器として、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151を用いている。シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151は、例えば、コンパレータ1511及びカウンタ1512を有する回路構成となっている。シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151では、時間が経過するにつれて電圧値が徐々に変化する、所謂、ランプ(RAMP)波形(スロープ波形)の参照電圧Vrefが用いられる。ランプ波形の参照電圧Vrefは、参照電圧生成部152で生成される。参照電圧生成部152については、例えば、DAC(デジタル-アナログ変換)回路を用いて構成することができる。
【0073】
コンパレータ1511は、単位画素2から読み出される画素信号を比較入力とし、参照電圧生成部152で生成されるランプ波形の参照電圧Vrefを基準入力とし、両者を比較する。そして、コンパレータ1511は、例えば、参照電圧Vrefが画素信号よりも大きいときに出力が第1の状態(例えば、高レベル)になり、参照電圧Vrefが画素信号以下のときに出力が第2の状態(例えば、低レベル)になる。これにより、コンパレータ1511の出力信号は、画素信号のレベルの大きさに対応したパルス幅を持つパルス信号となる。
【0074】
カウンタ1512には、コンパレータ1511に対する参照電圧Vrefの供給開始タイミングと同じタイミングでクロック信号が与えられる。そして、カウンタ1512は、クロック信号に同期してカウント動作を行うことにより、コンパレータ1511の出力パルスのパルス幅の期間、即ち、比較動作の開始から比較動作の終了までの期間を計測する。このカウンタ1512のカウント結果(カウント値)が、アナログの画素信号をデジタル化したデジタル値となる。
【0075】
このように、アナログ-デジタル変換器として、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151を用いたアナログ-デジタル変換部15では、徐々に変化するアナログ値の参照電圧を発生し、参照電圧と信号電圧との大小関係が変化するまでの時間情報からデジタル信号値を得る。
【0076】
(データ信号用サンプル&ホールド回路)
データ信号用サンプル&ホールド回路141において、サンプリング容量Cd_1,Cd_2は、単位容量の組み合わせによって構成されている。具体的には、サンプリング容量Cd_1,Cd_2は、N個(Nは正の整数)の単位容量によって構成されている。ここで、サンプリング容量Cd_1,Cd_2の各容量値の合計値をCsとするとき、単位容量の各々はCs/Nの容量値を持っている。
【0077】
そして、1~NのN個の単位容量のうち、サンプリング容量Cd_1は、1~M(Mは、Nよりも小さい正の整数)のM個の単位容量から成り、サンプリング容量Cd_2は、M+1~Nの(N-M)個の単位容量から成る。これにより、サンプリング容量Cd_1の容量値はCs×M/Nとなり、サンプリング容量Cd_2の容量値はCs×(N-M/N)となる。そして、サンプリング容量Cd_1とサンプリング容量Cd_2との容量比は、M:N-Mとなる。
【0078】
サンプリング容量Cd_1,Cd_2の入力端間を選択的に短絡する第1のスイッチ部としてのスイッチ素子SWd_4は、スイッチ制御信号hld_dによる制御の下に、隣り合う単位容量の入力端間を選択的に短絡するスイッチ群から成る。また、垂直信号線32とサンプリング容量Cd_1,Cd_2の各入力端との間を選択的に短絡する第2のスイッチ部としてのスイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2は、サンプリング容量Cd_1,Cd_2の各単位容量に対応して設けられたスイッチ群から成る。
【0079】
スイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2のスイッチ群の各スイッチは、独立したスイッチ制御信号smp_d(1)~smp_d(M),smp_d(M+1)~smp_d(N)による制御の下に、垂直信号線32とサンプリング容量Cd_1,Cd_2の単位容量の各入力端との間を選択的に短絡する。そして、サンプリング容量Cd_1とサンプリング容量Cd_2との容量比については、スイッチ制御信号smp_d(1)~smp_d(M),smp_d(M+1)~smp_d(N)による制御に基づく、スイッチ素子SWd_1_1,SWd_1_2のスイッチ群の各スイッチの切替えによって制御することができる。
【0080】
反転増幅器1411は、例えば、前段のNチャネルソース接地回路及び後段のPチャネルソースフォロワ回路の組み合わせから成る。そして、反転増幅器1411からは、データ信号のサンプルホールド出力Vout_DSHが出力され、スイッチ制御信号sw_dによる制御の下に、スイッチ素子SWd_0を介してシングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151に選択的に供給される。
【0081】
(リセット信号用サンプル&ホールド回路)
リセット信号用サンプル&ホールド回路142は、基本的に、データ信号用サンプル&ホールド回路141と同じ回路構成を有する。ここで、「同じ回路構成」とは、厳密に同じ回路構成である場合の他、実質的に同じ回路構成である場合も含む意味であり、設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0082】
具体的には、リセット信号用サンプル&ホールド回路142において、サンプリング容量Cpは、データ信号用サンプル&ホールド回路141と同じ数の単位容量の組み合わせによって構成されている。そして、サンプリング容量Cpの容量値をサンプリング容量Cd_1,Cd_2の各容量値の合計値Csとするとき、サンプリング容量Cpの単位容量の各々はCs/Nの容量値を持っている。
【0083】
また、サンプリング容量Cpの入力側には、データ信号用サンプル&ホールド回路141と同様に、スイッチ制御信号hld_pによる制御の下に、隣り合う単位容量の入力端間を選択的に短絡するスイッチ群が設けられている。垂直信号線32とサンプリング容量Cpの入力端との間を選択的に短絡するスイッチ素子SWp_1についても、データ信号用サンプル&ホールド回路141と同様に、サンプリング容量Cpの各単位容量に対応して設けられたN個のスイッチから成るスイッチ群によって構成されている。
【0084】
反転増幅器1421も、反転増幅器1411と同様に、前段のNチャネルソース接地回路及び後段のPチャネルソースフォロワ回路の組み合わせから成る。そして、反転増幅器1421からは、リセット信号のサンプルホールド出力Vout_PSHが出力され、スイッチ制御信号sw_pによる制御の下に、スイッチ素子SWp_0を介してシングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151に選択的に供給される。
【0085】
尚、リセット信号用サンプル&ホールド回路142においては、垂直信号線32とサンプリング容量Cpの単位容量の各入力端との間を選択的に短絡するスイッチ素子SWdのスイッチ群の各スイッチを制御するスイッチ制御信号smp_p(1)~smp_p(N)は同じタイミングで出力される。すなわち、スイッチ制御信号smp_p(1)~smp_p(N)は、垂直信号線32とサンプリング容量Cpの単位容量の各入力端との間を同時に接続する制御を行う。
【0086】
本実施例2では、リセット信号用サンプル&ホールド回路142を、サンプリング容量CpがN個の単位容量から成るデータ信号用サンプル&ホールド回路141と同じ回路構成としたが、必ずしも、データ信号用サンプル&ホールド回路141とリセット信号用サンプル&ホールド回路142とが同じ回路構成である必要はない。但し、データ信号用サンプル&ホールド回路141とリセット信号用サンプル&ホールド回路142とが同じ回路構成を有する方が、データ信号とリセット信号との整合をとる観点から好ましい。
【0087】
図10に、垂直信号線32の電位の波形、及び、2つのサンプル&ホールド回路141,142の各スイッチ素子のスイッチ制御信号smp_p(1)~smp_p(N),smpa_p,hld_p,smp_d(1)~smp_d(M),smp_d(M+1)~smp_d(N),smpa_d,hld_d,sw_p,sw_dのタイミング関係を示す。
【0088】
(回路動作)
次に、図10のタイミング波形図を用いて、実施例2に係るサンプル&ホールド部14の回路動作について説明する。
【0089】
・リセット信号のサンプリング時
時刻t11で、スイッチ制御信号smp_p(1)~smp_p(N),smpa_pが高レベルとなることで、リセット信号用サンプル&ホールド回路142において、スイッチ素子SWp_1のN個のスイッチ及びスイッチ素子SWp_3がオン状態となる。そして、スイッチ制御信号smpa_pが高レベルから低レベルに遷移する時刻t12で、リセット信号Vrstがサンプリングされ、サンプリング容量Cpに蓄積される。
【0090】
このリセット信号のサンプリング時に同時に、スイッチ制御信号smp_d(M+1)~smp_d(N),smpa_dが高レベルとなることで、データ信号用サンプル&ホールド回路141において、スイッチ素子SWd_1_2のM+1~Nの各スイッチ及びスイッチ素子SWd_3がオン状態となる。そして、スイッチ制御信号smpa_dが高レベルから低レベルに遷移するタイミング(時刻t12)で、データ信号用サンプル&ホールド回路141においても、リセット信号Vrstがサンプリングされ、サンプリング容量Cd_2のM+1~Nの各単位容量に蓄積される。
【0091】
すなわち、リセット信号Vrstは、リセット信号用サンプル&ホールド回路142においてサンプルホールドされるとともに、データ信号用サンプル&ホールド回路141のサンプリング容量Cd_2側においてもサンプルホールドされる。
【0092】
・データ信号のサンプリング&リセット信号のホールド時
次に、スイッチ制御信号smp_p(1)~smp_p(N),smp_d(M+1)~smp_d(N)が高レベルから低レベルへ遷移した後、時刻t13で、スイッチ制御信号smp_d(1)~smp_d(M),smpa_dが高レベルとなる。これにより、データ信号用サンプル&ホールド回路141において、スイッチ素子SWd_1_1の1~Mの各スイッチ及びスイッチ素子SWd_3がオン状態となり、データ信号のサンプリングが開始され、スイッチ制御信号smpa_dが高レベルから低レベルに遷移する時刻t14で、サンプリング容量Cd_1の1~Mの各単位容量に蓄積される。
【0093】
このデータ信号のサンプリング期間では、スイッチ制御信号hld_pが高レベルとなることで、リセット信号用サンプル&ホールド回路142において、サンプリング容量Cpがリセット信号Vrstをホールドし続ける。
【0094】
・データ信号のホールド及び容量の加重平均時
次に、スイッチ素子SWd_1_1の1~Mの各スイッチ、及び、スイッチ素子SWd_1_2のM+1~Nの各スイッチのオフ状態において、時刻t15で、スイッチ制御信号hld_dが高レベルになることで、データ信号用サンプル&ホールド回路141において、スイッチ素子SWd_4の各スイッチがオン状態になる。これにより、サンプリング容量Cd_1の1~Mの単位容量、及び、サンプリング容量Cd_2のM+1~Nの単位容量の各入力端が短絡され、サンプリング容量Cd_1とサンプリング容量Cd_2との間で容量の加重平均が行われる。
【0095】
このとき、サンプリング容量Cd_1及びサンプリング容量Cd_2に蓄積された電荷の合計Qdshは、サンプリング容量Cd_1,Cd_2の各容量値の合計値をCsとすると、
dsh=Cs×(N-M)/N×Vrst+Cs×M/N×Vdata
となる。従って、データ信号用サンプル&ホールド回路141から出力されるデータ信号のサンプルホールド出力Vout_DSHは、
out_DSH=Qdsh/Cs
=(N-M)/N×Vrst+M/N×Vdata
=Vrst-(Vrst-Vdata)×M/N
となる。
【0096】
・アナログ-デジタル変換時
リセット信号用サンプル&ホールド回路142のサンプルホールド出力Vout_PSHは、時刻t15-t16の期間において、スイッチ制御信号sw_pの制御によるスイッチ素子SWp_0のオン区間に、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151に供給され、アナログ-デジタル変換が行われる。データ信号用サンプル&ホールド回路141のサンプルホールド出力Vout_DSHは、時刻t16-t17の期間において、スイッチ制御信号sw_dの制御によるスイッチ素子SWd_0のオン区間に、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器151に供給され、アナログ-デジタル変換が行われる。
【0097】
サンプルホールド出力Vout_PSH及びサンプルホールド出力Vout_DSHの各アナログ-デジタル変換結果は、後段のデータ処理部17において、差分がとられることによって、CDS(Correlated Double Sampling:相関二重サンプリング)と呼ばれるノイズ除去のための処理が行われる。その差分Vout_PSH-Vout_DSHは、
out_PSH-Vout_DSH=(Vrst-Vdata)×M/N
となる。このことから、リセット信号Vrstとデータ信号Vdataとの差分(Vrst-Vdata)がM/N倍に減衰されていることがわかる。
【0098】
サンプルホールド出力Vout_PSH及びサンプルホールド出力Vout_DSHに対するアナログ-デジタル変換処理について、上記の例では、1つのアナログ-デジタル変換器151を、スイッチ制御信号sw_p,sw_dによる制御の下に切り替えて使用するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、サンプルホールド出力Vout_PSH及びサンプルホールド出力Vout_DSHのそれぞれに対して1つのアナログ-デジタル変換器151を設けてもよい。
【0099】
上述したように、読出し回路の入口に配置されたサンプル&ホールド部14において、容量の加重平均により受動的に所望の比でリセット信号Vrstとデータ信号Vdataとのレベル差(Vrst-Vdata)について減衰が行われる。これにより、アナログ回路の動作レンジを圧迫することなく、広い電圧範囲の入力信号を受けることができる。この減衰演算は容量の加重平均により受動的に行われることから、入力信号の電圧範囲については制限が緩く、減衰後の信号(Vrst-Vdata)×M/Nが回路の動作点を満たしていれば、例えばN=2,M=1(実施例1)のときは、本開示に係る技術を用いない場合に比べて2倍の大きさの信号を受けることができる。
【0100】
また、垂直信号線32への入力信号の大きさと、垂直信号線32の入力でみたアナログ-デジタル変換のフルスケール及び1LSBサイズとの関係は、サンプル&ホールドした後にアナログ的もしくはロジック的手段により、N/M倍することによって辻褄をあわせることができる。例えば、サンプル&ホールド部14で容量の加重平均によって信号を1/2倍した際は、サンプル&ホールド後にアナログ的もしくはロジック的手段によって信号を2倍する。
【0101】
≪実施例3≫
実施例3は、サンプリング容量が複数の単位容量の組み合わせから成り、アナログ-デジタル変換器としてデルタ-シグマ型(ΔΣ型)アナログ-デジタル変換器を用いる例である。図11に、実施例3に係るサンプル&ホールド部の1画素列分の回路構成及びアナログ-デジタル変換部の構成を示す。
【0102】
実施例3では、アナログ-デジタル変換部15の各アナログ-デジタル変換器として、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153を用いている。デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153は、例えば、第1積分器1531、第2積分器1532、量子化器1533、及び、デシメーションフィルタ1534を有する構成となっている。
【0103】
デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153において、第1積分器1531は、積分容量C11から構成されている。第1積分器1531の入力ノードには、第1デジタル-アナログ変換器1535が接続されている。第1デジタル-アナログ変換器1535は、第2積分器1532及び量子化器1533を介したデジタル信号に応じて第1積分器1531への電流をオン/オフ制御する。
【0104】
第2積分器1532は、電圧を電流に変換するGmセル及び積分容量C12から構成されている。第2積分器1532の入力ノードには、第2デジタル-アナログ変換器1536が接続されている。第2デジタル-アナログ変換器1536は、第2積分器1532の出力を、量子化器1533で量子化した結果に応じて、第2積分器1532への電流をオン/オフ制御する。
【0105】
尚、ここで例示したデルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153の構成は一例であって、この構成に限られるものではない。
【0106】
実施例3に係るサンプル&ホールド部14において、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153以外の構成、具体的には、データ信号用サンプル&ホールド回路141及びリセット信号用サンプル&ホールド回路142の回路構成は、実施例2の場合と基本的に同じである。
【0107】
図12に、垂直信号線32の電位の波形、及び、2つのサンプル&ホールド回路141,142の各スイッチ素子のスイッチ制御信号smp_p(1)~smp_p(N),smpa_p,hld_p,smp_d(1)~smp_d(M),smp_d(M+1)~smp_d(N),smpa_d,hld_dのタイミング関係を示す。
【0108】
図11において、データ信号用サンプル&ホールド回路141の出力端と、リセット信号用サンプル&ホールド回路142の出力端との間には、抵抗素子143が接続されている。これにより、図12のタイミング波形図におけるホールド期間t25-t26、即ち、スイッチ制御信号hld_p,hld_dが共に高レベルの期間)に、抵抗素子143に流れる電流Irは、抵抗素子143の抵抗値をRとすると、
r=(Vrst-Vdata)/R
となる。この電流Irは、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153の第1積分器1531へと入力される。
【0109】
このとき、抵抗素子143に流れる電流Irは、画素信号のリセット信号Vrstとデータ信号Vdataとの差分(Vrst-Vdata)に比例することから、当該電流Irがデルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153に入力される段階でCDSが行われていることになる。ここで、反転増幅器1421における後段のPチャネルソースフォロワ回路の電流源の電流Iv2iは、抵抗素子143に流れる成分Irと、Pチャネルソースフォロワ回路に流れる成分Iv2i-Irに分岐するため、安定に回路動作を行うためには、電流Iv2iは、抵抗素子143に流れる電流の最大値Irよりも大きくしておくことが必要である。
【0110】
デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器153では、量子化器1533での前の量子化値を、第2デジタル-アナログ変換器1536及び第1デジタル-アナログ変換器1535を通して、第2積分器1532及び第1積分器1531にフィードバックする動作が行われる。
【0111】
このように、前の量子化値を第1デジタル-アナログ変換器1535及び第2デジタル-アナログ変換器1536にフィードバックしながら積分器を2回通すことによって2次のノイズシェーピング特性を得ることができる。そして、量子化器1533の後段のデシメーションフィルタ1534によって高域ノイズを除去することにより、精度の高いアナログ-デジタル変換出力を得ることができる。
【0112】
(実施形態の変形例)
上記の実施形態では、単位画素2が行列状に配置されて成るCMOSイメージセンサに適用した場合を例に挙げて説明したが、本開示に係る技術は、CMOSイメージセンサへの適用に限られるものではない。すなわち、本開示に係る技術は、単位画素2が行列状に2次元配置されて成るX-Yアドレス方式の固体撮像素子全般に対して適用可能である。
【0113】
また、本開示に係る技術は、可視光の入射光量の分布を検知して画像として撮像する固体撮像素子への適用に限らず、赤外線やX線、あるいは粒子等の入射量の分布を画像として撮像する固体撮像素子全般に対して適用可能である。
【0114】
(実施形態の応用例)
以上説明した本実施形態に係るCMOSイメージセンサ1は、例えば図13に示すように、可視光、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々な装置に使用することができる。様々な装置の具体例について以下に列挙する。
【0115】
・デジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用途に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の分野で用いる装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、テレビジョン受像機、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電の分野で用いる装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの分野で用いる装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの分野で用いる装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の分野で用いる装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの分野で用いる装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の分野で用いる装置
【0116】
<本開示に係る技術の適用例>
本開示に係る技術は、様々な製品に適用することができる。以下に、より具体的な適用例について説明する。
【0117】
[本開示の電子機器]
ここでは、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置や、携帯電話機などの撮像機能を有する携帯端末装置や、画像読取部に固体撮像素子を用いる複写機などの電子機器に適用する場合について説明する。
【0118】
図14は、本開示の電子機器の一例である撮像装置の構成を示すブロック図である。図14に示すように、本例に係る撮像装置50は、レンズ群等を含む撮像光学系51、撮像部52、DSP回路53、フレームメモリ54、表示装置55、記録装置56、操作系57、及び、電源系58等を有している。そして、DSP回路53、フレームメモリ54、表示装置55、記録装置56、操作系57、及び、電源系58がバスライン59を介して相互に接続された構成となっている。
【0119】
撮像光学系51は、被写体からの入射光(像光)を取り込んで撮像部52の撮像面上に結像する。撮像部52は、撮像光学系51によって撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。DSP回路53は、一般的なカメラ信号処理、例えば、ホワイトバランス処理、デモザイク処理、ガンマ補正処理などを行う。
【0120】
フレームメモリ54は、DSP回路53での信号処理の過程で適宜データの格納に用いられる。表示装置55は、液晶表示装置や有機EL(electro luminescence)表示装置等のパネル型表示装置から成り、撮像部52で撮像された動画または静止画を表示する。記録装置56は、撮像部52で撮像された動画または静止画を、可搬型の半導体メモリや、光ディスク、HDD(Hard Disk Drive)等の記録媒体に記録する。
【0121】
操作系57は、ユーザによる操作の下に、本撮像装置50が持つ様々な機能について操作指令を発する。電源系58は、DSP回路53、フレームメモリ54、表示装置55、記録装置56、及び、操作系57の動作電源となる各種の電源を、これら供給対象に対して適宜供給する。
【0122】
このような撮像装置50は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ、更には、スマートフォン、携帯電話機等のモバイル機器向けカメラモジュールに適用される。そして、この撮像装置50において、撮像部52として、読出し回路の外部に新たな回路を追加したり、電源電圧を高く設定したりすることなく、広い入力電圧レンジに対応できる、先述した実施形態に係るCMOSイメージセンサを用いることができる。これにより、新たな回路の追加による回路規模の増大や、追加回路によるノイズ特性の劣化などの懸念のない撮像装置50を実現できる。
【0123】
[移動体への応用例]
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0124】
図15は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図15に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0125】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図15では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0126】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0127】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0128】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0129】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0130】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0131】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0132】
ここで、図16は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0133】
尚、図16には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0134】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0135】
図15に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0136】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0137】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0138】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0139】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0140】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX、LTE(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0141】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0142】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。尚、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0143】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。尚、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0144】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0145】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0146】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0147】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0148】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図15の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0149】
尚、図15に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0150】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部7910,7912,7914,7916,7918や車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930に適用され得る。具体的には、例えば、図1のCMOSイメージセンサ1は、撮像部7410、撮像部7910,7912,7914,7916,7918や車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930に適用することができる。撮像部7910,7912,7914,7916,7918や車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930に本開示に係る技術を適用することにより、新たな回路の追加による回路規模の増大や、追加回路によるノイズ特性の劣化などの懸念のない車両制御システムを構築できる。
【0151】
<本開示がとることができる構成>
尚、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
【0152】
≪A.固体撮像素子≫
[A-1]光電変換部を含む複数の単位画素が行列状に配置された画素アレイ部、
画素アレイ部の列配列に対応して設けられた垂直信号線を通して単位画素から出力される画素信号をサンプリングし、保持するサンプル&ホールド部、及び、
サンプル&ホールド部から出力される画素信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部を備え、
サンプル&ホールド部は、1本の垂直信号線に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持ち、
2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量を少なくとも2個有する、
固体撮像素子。
[A-2]第1半導体基板及び第2半導体基板の少なくとも2つの半導体基板が積層された積層構造を有し、
画素アレイ部は、第1半導体基板に形成され、
サンプル&ホールド部は、第1半導体基板以外の半導体基板に形成されている、
上記[A-1]に記載の固体撮像素子。
[A-3]2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量の入力端間を選択的に短絡する第1のスイッチ部を有する、
上記[A-1]又は上記[A-2]に記載の固体撮像素子。
[A-4]少なくとも2個のサンプリング容量はそれぞれ、複数の単位容量の組み合わせによって構成されている、
上記[A-3]に記載の固体撮像素子。
[A-5]2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、独立した制御信号により、垂直信号線と複数の単位容量の各入力端との間を選択的に短絡するスイッチ群から成る第2のスイッチ部を有し、
第1のスイッチ部は、隣り合う単位容量の入力端間を選択的に短絡するスイッチ群から成る、
上記[A-4]に記載の固体撮像素子。
[A-6]画素信号は、リセット時に単位画素から出力されるリセット信号、及び、光電変換時に単位画素から出力されるデータ信号を含み、
2つのサンプル&ホールド回路の一方は、リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量を有する、
上記[A-3]乃至上記[A-5]のいずれかに記載の固体撮像素子。
[A-7]リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量の容量比は、第2のスイッチ部のスイッチ群の各スイッチの切替えによって制御可能である、
上記[A-6]に記載の固体撮像素子。
[A-8]2つのサンプル&ホールド回路は、同じ回路構成を有する、
上記[A-1]乃至上記[A-7]のいずれかに記載の固体撮像素子。
[A-9]アナログ-デジタル変換部は、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器から成る、
上記[A-1]乃至上記[A-8]のいずれかに記載の固体撮像素子。
[A-10]アナログ-デジタル変換部は、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器から成る、
上記[A-1]乃至上記[A-8]のいずれかに記載の固体撮像素子。
【0153】
≪B.電子機器≫
[B-1]光電変換部を含む複数の単位画素が行列状に配置された画素アレイ部、
画素アレイ部の列配列に対応して設けられた垂直信号線を通して単位画素から出力される画素信号をサンプリングし、保持するサンプル&ホールド部、及び、
サンプル&ホールド部から出力される画素信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部を備え、
サンプル&ホールド部は、1本の垂直信号線に対し、2つのサンプル&ホールド回路を並列に持ち、
2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量を少なくとも2個有する、
固体撮像素子を有する電子機器。
[B-2]第1半導体基板及び第2半導体基板の少なくとも2つの半導体基板が積層された積層構造を有し、
画素アレイ部は、第1半導体基板に形成され、
サンプル&ホールド部は、第1半導体基板以外の半導体基板に形成されている、
上記[B-1]に記載の電子機器。
[B-3]2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、サンプリング容量の入力端間を選択的に短絡する第1のスイッチ部を有する、
上記[B-1]又は上記[B-2]に記載の電子機器。
[B-4]少なくとも2個のサンプリング容量はそれぞれ、複数の単位容量の組み合わせによって構成されている、
上記[B-3]に記載の電子機器。
[B-5]2つのサンプル&ホールド回路の少なくとも一方は、独立した制御信号により、垂直信号線と複数の単位容量の各入力端との間を選択的に短絡するスイッチ群から成る第2のスイッチ部を有し、
第1のスイッチ部は、隣り合う単位容量の入力端間を選択的に短絡するスイッチ群から成る、
上記[B-4]に記載の電子機器。
[B-6]画素信号は、リセット時に単位画素から出力されるリセット信号、及び、光電変換時に単位画素から出力されるデータ信号を含み、
2つのサンプル&ホールド回路の一方は、リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量を有する、
上記[B-3]乃至上記[B-5]のいずれかに記載の電子機器。
[B-7]リセット信号をサンプリングするサンプリング容量、及び、データ信号をサンプリングするサンプリング容量の容量比は、第2のスイッチ部のスイッチ群の各スイッチの切替えによって制御可能である、
上記[B-6]に記載の電子機器。
[B-8]2つのサンプル&ホールド回路は、同じ回路構成を有する、
上記[B-1]乃至上記[B-7]のいずれかに記載の電子機器。
[B-9]アナログ-デジタル変換部は、シングルスロープ型アナログ-デジタル変換器から成る、
上記[B-1]乃至上記[B-8]のいずれかに記載の電子機器。
[B-10]アナログ-デジタル変換部は、デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器から成る、
上記[B-1]乃至上記[B-8]のいずれかに記載の電子機器。
【符号の説明】
【0154】
1・・・CMOSイメージセンサ(固体撮像素子)、2・・・単位画素、11・・・画素アレイ部、12・・・行選択部、13・・・負荷MOS部、14・・・サンプル&ホールド部、15・・・アナログ-デジタル変換部、16・・・メモリ部、17・・・データ処理部、18・・・出力部、19・・・タイミング制御部、21・・・フォトダイオード(光電変換部)、22・・・転送トランジスタ、23・・・リセットトランジスタ、24・・・増幅トランジスタ、25・・・選択トランジスタ、31(311~31m)・・・画素駆動線、32(321~32n)・・・垂直信号線、141・・・データ信号用サンプル&ホールド回路、142・・・リセット信号用サンプル&ホールド回路、151・・・アナログ-デジタル変換器、152・・・参照電圧生成部、153・・・デルタ-シグマ型アナログ-デジタル変換器
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