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特許7278957グラスアイオノマー組成物及び無機繊維を含む方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】グラスアイオノマー組成物及び無機繊維を含む方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/71 20200101AFI20230515BHJP
   A61K 6/76 20200101ALI20230515BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20230515BHJP
   A61K 6/889 20200101ALI20230515BHJP
   A61K 6/836 20200101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K6/71
A61K6/76
A61K6/818
A61K6/889
A61K6/836
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019550171
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018020642
(87)【国際公開番号】W WO2018169704
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】62/471,587
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】アグレ,マーク ビー.
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ,ブラッドリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤーンス,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ウィリアム ヴィー.
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/015193(WO,A1)
【文献】特開2001-354509(JP,A)
【文献】特開平05-201824(JP,A)
【文献】米国特許第05861445(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056948(US,A1)
【文献】特表昭55-500593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00- 6/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、
ポリ酸、及び
非酸反応性充填剤
を含む第1ペーストと、
水、及び
酸反応性充填剤
を含む第2ペーストと、
前記第1ペースト及び前記第2ペーストのうちの少なくとも1つの中に存在する結晶性の混合金属酸化物繊維と
を含む硬化性グラスアイオノマー組成物であって、
前記結晶性の混合金属酸化物繊維は、XRD結晶性指数試験法で測定して少なくとも0.05である結晶性指数により特徴付けられる、硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項2】
前記硬化性グラスアイオノマー組成物の重量に対して0重量%~5重量%の量で、樹脂を更に含む、請求項1に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項3】
前記第1ペースト及び前記第2ペーストを合わせた水の量が、前記硬化性グラスアイオノマー組成物の全重量を基準として20重量%未満である、請求項1又は2に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項4】
前記硬化性グラスアイオノマー組成物が、前記組成物の全重量を基準として、前記結晶性の混合金属酸化物繊維を10重量%~15重量%含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項5】
前記結晶性の混合金属酸化物繊維が、アルミノシリケート、又は酸化イットリウムでドープされたジルコニアの繊維である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項6】
前記結晶性の混合金属酸化物繊維が、約10:1の平均アスペクト比を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項7】
前記結晶性の混合金属酸化物繊維が、3μm~25μmの平均直径、及び25μm~1mmの平均長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項8】
前記非酸反応性充填剤が、石英、窒化物、カオリン、ホウケイ酸ガラス、酸化ストロンチウム系ガラス、酸化バリウム系ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニア、又はこれらの組み合わせからなる群、或いは、アルミナ、シリカ、ジルコニア、及びチタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項9】
前記酸反応性充填剤が、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、ヒドロキシアパタイト、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、1.5未満のSi/Al重量パーセント比を有するガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機充填剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項10】
前記酸反応性充填剤が、3μm~10μmの平均粒径を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項11】
前記第1ペーストが錯化剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性グラスアイオノマー組成物を提供すること、
前記第1ペースト及び前記第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに
前記混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、
を含む、硬化組成物の調製方法。
【請求項13】
前記第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び
前記第2ペーストを収容した第2コンパートメント
を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を貯蔵するためのデバイス。
【請求項14】
前記第1コンパートメント及び前記第2コンパートメントが、独立して、静的混合チップを受け入れるためのノズル又はインターフェースを備える、請求項13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来型グラスアイオノマー(Glass Ionomer、GI)組成物は、フルオロアルミノシリケート(fluoroaluminosilicate、FAS)ガラスなどの酸反応性充填剤、カルボン酸基を有する水溶性ポリマーなどのポリ酸、及び水からなる歯科用材料である。ポリ酸中の酸基は、酸反応性充填剤からの金属カチオンと「凝結」反応で反応し、マトリックスを形成することができる。FASガラスが酸反応性充填剤として使用される場合、副産物としてフッ化物イオンが放出される。従来型GI組成物の多くにはまた、凝結反応を遅らせるために酒石酸などの錯化剤が組み込まれている。GI組成物においては、特定の酸反応性充填剤(例えば、組成物及び/又は粒径分布)を選択すること、特定のポリ酸(例えば、アクリル酸、マレイン酸、及び/又はイタコン酸をベースとする組成物並びに酸性基含有量)を選択すること、並びに酸反応性充填剤の充填濃度を選択することによりGI組成物の反応性を改良することができるが、成分の選択により、成分の混合のしやすさ並びに硬化組成物の強度及び審美性が大きく改善されることはなかった。
【0002】
複合材料及び従来型GI組成物の両方を、修復材料として使用することができる。しかし、GI組成物は複合材料と比較して、フッ化物放出、過敏性の低下、及び歯への自己接着などの利点を提供することができる。しかし、複合材料と比較して機械的特性が低く審美性があまり望ましくないことにより、GI組成物の使用は多くの用途において制限されてきた。更に、従来型の粉末/液体GI組成物は、混合が困難な場合がある。
【0003】
GI歯科用材料の改善が、引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、第1ペースト及び第2ペーストを含む硬化性グラスアイオノマー組成物を提供する。第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは、実質的に結晶性の無機繊維を含む。
【0005】
一実施形態では、硬化性グラスアイオノマー組成物は、水と、ポリ酸と、非酸反応性充填剤とを含む第1ペースト、並びに水と、酸反応性充填剤とを含む第2ペーストを含み、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは実質的に結晶性の無機繊維を更に含み、組成物は樹脂を本質的に含まない。
【0006】
別の実施形態では、硬化性グラスアイオノマー組成物は、水と、ポリ酸と、非酸反応性充填剤とを含む第1ペースト、並びに水と、酸反応性充填剤とを含む第2ペーストを含み、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは実質的に結晶性の無機繊維を更に含み、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率は、組成物の全重量を基準として20重量%未満である。いくつかの実施形態では、第1ペーストの含水率が、第1ペーストの全重量を基準として20重量%未満であり、第2ペーストの含水率が、第2ペーストの全重量を基準として20重量%未満である。
【0007】
別の態様では、本開示は、第1ペースト及び第2ペーストを含む、本明細書に記載される硬化性グラスアイオノマー組成物を貯蔵するためのデバイスを提供し、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは、実質的に結晶性の無機繊維を含む。デバイスは、第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び第2ペーストを収容した第2コンパートメントを含む。いくつかの実施形態では、第1コンパートメント及び第2コンパートメントとの双方が各々独立して、静的混合チップのエントランスオリフィスを受け入れるためのノズル又はインターフェースを備える。
【0008】
別の態様では、本開示は、硬化組成物の調製方法を提供する。
【0009】
一実施形態では、本方法は、第1ペースト及び第2ペーストを含む、本明細書に記載される硬化性グラスアイオノマー組成物を提供することであって、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つが実質的に結晶性の無機繊維を含む、こと、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む。
【0010】
別の実施形態では、本方法は、第1ペースト及び第2ペーストを含む、本明細書に記載される硬化性グラスアイオノマー組成物を貯蔵するためのデバイスを提供することであって、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つが実質的に結晶性の無機繊維を含み、デバイスが第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び第2ペーストを収容した第2コンパートメントを備える、こと、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む。
【0011】
本明細書に開示される硬化性のペースト/ペーストGI組成物は、例えば含水率が低いために、既知のペースト/液体GI組成物由来の硬化組成物特有の機械的強度(例えば、曲げ強度及び破壊靭性)を維持すると同時に、有利には、既知のペースト/液体GI組成物と比較して混合特性が向上し得る。
【0012】
本明細書で使用する場合、語句「実質的に結晶性の無機繊維」は、鋭いX線回折(XRD)ピークによって明示されるような非晶性の特徴が最小限である(すなわち、実質的に非非晶性である)無機繊維を指す。語句「実質的に結晶性の無機繊維」は、ガラス繊維及びガラスセラミック繊維(glass ceramic fibers)を除外することを意図する。本明細書に記載されるXRD結晶性指数試験法(XRD Crystallinity Index Test Method)により測定した際、いくつかの実施形態では、実質的に結晶性の無機繊維が少なくとも0.05の結晶性指数を有し、特定の実施形態では、少なくとも0.1の結晶性指数を有する。結晶性指数は、無機繊維試料における結晶性のレベルを特徴付けるために使用されるパラメータである。簡潔には、本明細書に更に記載されるXRD結晶性指数試験法では、内部標準としてタングステン粉末を使用する。内部又は質量標準は、試料中の存在量に基づいてX線強度値を正規化するために、結晶性指数を測定のため評価される試料に組み込まれる材料を指す。試験する各無機繊維試料を、タングステン粉末と重量比4:1で混合する。各無機繊維試料の調製物をエタノールスラリーとして混合し、次いで乾燥させ、試験する各無機繊維試料に対して2つの試料調製物を作製する。次いで、各試料調製物を6回XRDスキャンする。結晶性指数は、14~46度(2シータ)の散乱角範囲内での分析物の結晶相回折ピーク(crystalline phase diffraction peaks)において観察されたピーク面積と、タングステン内部標準における(110)回折ピーク面積との比である。
【0013】
本明細書で使用する場合、「歯科用組成物」又は「歯科で使用するための組成物」又は「歯科分野で使用されることになる組成物」は、歯科分野で使用され得る任意の組成物を指す。この点において、組成物は、患者の健康にとって有害であるべきでなく、したがって、組成物から出て移動することができる有害及び有毒な成分を含まない。歯科用組成物は、典型的には、硬化性組成物であり、これは、約15~50℃又は約20~40℃の温度範囲を含む周囲条件下において、約30分又は20分又は10分の時間枠内で硬化できる。より高い温度は推奨されない。なぜなら、患者に痛みを引き起こす可能性があり、患者の健康に害があり得るためである。歯科用組成物は、典型的に、同程度の小容量、すなわち、約0.1~約100mL、又は約0.5~約50mL、又は約1~約30mLの範囲の容量で、施術者に提供される。したがって、有用なパッケージングデバイスの貯蔵容量は、これらの範囲内である。
【0014】
本明細書で使用する場合、「重合性成分」は、例えば加熱により硬化又は固化され、重合又は化学架橋を引き起こし得る任意の成分を指す。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「樹脂」は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性基を含む重合性成分を指す。例示的な重合性基としては、(メチル)アクリレート基に見られるようなビニル基などの不飽和有機基が挙げられるが、これらに限定されない。樹脂は、多くの場合、放射線により誘導される重合若しくは架橋により、又はレドックス開始剤を使用することにより硬化され得る。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「モノマー」は、オリゴマー又はポリマーに重合させることで分子量を増加させ得る、重合性基(例えば(メタ)アクリレート基)を有する化学式により特徴付けることができる任意の化学物質を指す。モノマーの分子量は、典型的には、所与の化学式から計算することができる。
【0017】
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH=CH-C(O)-O-)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH=C(CH)-C(O)-O-)のいずれかを指す短縮語である。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「開始剤」は、例えば、レドックス/自動硬化化学反応(redox/auto-cure chemical reaction)により、放射線により誘導される反応により、又は熱により誘導される反応により、樹脂又はモノマーの硬化プロセスを開始又は引き起こすことができる物質を指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「粉末」は、振盪される又は傾けられる際に自由に流動することができる、きわめて微細な多数の粒子からなる乾燥したバルク固体を指す。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「粒子」は、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を指す。粒子は、典型的には、例えば粒径(grain size or diameter)に関して解析できる。
【0021】
粉末の平均粒径は、レーザー回折粒径分析を含む各種技術から得ることができる。粒径分布の累積曲線は、特定の粉末混合物における測定粒径の算術平均として得ることができ、定義することができる。それぞれの測定は、Beckman Coulter LS 13 320レーザー回折粒径分析器(Laser Diffraction Particle Size Analyzer)のような利用可能な回折レーザー粒径分析器(diffraction laser particle size analyzers)、又はCILASレーザー回折粒径分析装置(Laser Diffraction Particle Size Analysis Instrument)のような利用可能な粒度計を使用して行うことができる。
【0022】
本明細書で使用する場合、粒径測定に関して、用語「dX」(μm)は、分析される体積中X%の粒子が、マイクロメートル単位で示された値を下回る径を有することを意味する。例えば100μm(d50)の粒径値は、分析される体積中50%の粒子が100μmを下回る径を有することを意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「ペースト」は、液体中に分散した、軟らかく粘性の固体の塊を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「粘性の」は、(23℃において)約3Pasを超える粘度を有する材料を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「液体」は、周囲条件(例えば23℃)において成分を少なくとも部分的に分散又は溶解させることができる、任意の溶媒又は液体を指す。液体は、典型的には、約10Pasを下回る、又は約8Pasを下回る、又は約6Pasを下回る粘度を有する。
【0026】
本明細書で使用する場合、「グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement)」又は「GIC」は、水の存在下、酸反応性ガラスとポリ酸との間の反応により硬化(curing or hardening)することができるセメントを指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、「樹脂変性グラスアイオノマーセメント(resin modified glass ionomer cement)」又は「RM-GIC」は、樹脂、開始剤系、典型的には2-ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)を更に含むGICを指す。
【0028】
本明細書で使用する場合、「従来型グラスアイオノマーセメント又は修復材料」は、樹脂を含まないか、又は樹脂を本質的に含まないグラスアイオノマーセメント又は修復材料を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、組成物が特定の成分(例えば樹脂)を本質的な特徴として含まない場合、この組成物はこの成分を「本質的に含まない」又は「実質的に含まない」。したがって、この成分は、それ自体で、又は他成分若しくは他成分の含有物質との組み合わせでのいずれによっても、組成物に意図的に添加されない。
【0030】
特定の成分(例えば樹脂)を本質的に含まない組成物は、通常、この成分を、組成物又は材料の全重量に対して、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で含む。組成物は、この成分を一切含有しなくてもよい。しかし、時には、例えば用いる原料中に含まれる不純物のために、この成分が少量存在するのを避けることができないこともある。
【0031】
本明細書で使用する場合、「酸反応性充填剤」は、ポリ酸の存在下で化学的に反応して硬化反応に至らせることができる充填剤を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「非酸反応性充填剤」は、ポリ酸と混合した場合に、(i)6分以内に化学反応を示さないか、又は(ii)硬化反応の低下(例えば、時間的な遅延)のみを示す充填剤を指す。
【0033】
酸反応性充填剤を非酸反応性充填剤と区別するために、次の試験が行われ得るか、又は行われることになる。第1パート及び第2パートを質量比1:3で混合して組成物を調製し、ここで、第1パートではポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)(Mw:約20,000±3,000)が43.6重量%、水が47.2重量%、酒石酸が9.1重量%、及び安息香酸が0.1重量%を占め、第2パートでは分析されることになる充填剤が100重量%を占める。
【0034】
充填剤は、上記組成物の調製後6分以内に、以下の条件、8mmプレート、0.75mmギャップ、28℃、周波数1.25Hz、及び変形率1.75%の使用下で、レオメーターを使用して振動測定を実施することにより測定される剪断応力が50,000Pa未満であった場合に、非酸反応性であると特徴付けられる。
【0035】
本発明で使用する場合、「陽イオン低減アルミノシリケートガラス」は、ガラス粒子の表面領域における陽イオン含有量がガラス粒子の内側領域に比べて低いガラスを指す。このようなガラスは、典型的には、ポリアクリル酸水溶液との接触の際に、典型的な酸反応性充填剤と比べて、はるかにゆっくりと反応する。非酸反応性充填剤の例としては、石英ガラス又は酸化ストロンチウム系ガラスが挙げられる。更なる例が、本明細書に記載される。陽イオン低減は、ガラス粒子の表面処理により達成できる。有用な表面処理としては、酸洗浄(例えばリン酸での処理)、ホスフェートでの処理、酒石酸などのキレート剤での処理、及びシラン又は酸性若しくは塩基性シラノール溶液での処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「ポリ酸」及び/又は「ポリアルケン酸」は、複数の(例えば10個を上回る、又は20個を上回る、又は50個を上回る)酸性繰り返し単位を有するポリマーを指す。つまり、酸性繰り返し単位は、ポリマー主鎖に結合しているか、又はぶら下がっている。
【0037】
本明細書で使用する場合、語句「錯化剤」は、例えばカルシウム及び/又はマグネシウムなどの金属イオンと錯体を形成することができる低分子試薬を指す。例示的な錯化剤は、酒石酸である。
【0038】
本明細書で使用する場合、語句「貯蔵安定な組成物」は、使用の際、重大な性能上の問題(例えば曲げ強度若しくは圧縮強度の低下)及び/又は所望の期間で硬化しないこと(例えば、凝結時間が6分より長いこと)を示すことなしに、適切な期間(例えば、周囲条件下で少なくとも約12ヶ月)貯蔵できる組成物を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「硬化性(「hardenable」and/or「curable」)」は、例えば、化学架橋及び/又は放射線により誘導される重合若しくは架橋といった追加の硬化系の必要なしにグラスアイオノマーセメント反応を実施することにより、硬化又は固化できる組成物を指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、語句「周囲条件」は、典型的には、本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物が貯蔵及び取扱い中にさらされる条件を指す。周囲条件には、例えば、約900mbar~約1100mbarの圧力、約-10℃~約60℃の温度、及び/又は約10%~約100%の相対湿度が含まれてもよい。実験室では、周囲条件は、典型的には、約23℃及び約1気圧(例えば0.95~1.05気圧)に調整される。歯科及び歯列矯正分野では、周囲条件には、例えば約950mbar~約1050mbarの圧力、約15℃~約40℃の温度、及び/又は約20%~約80%の相対湿度が含まれると合理的に理解される。
【0041】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記載されたある1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを意味し、いかなる他の工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も排除されないことを意味するものと理解される。「からなる(consisting of)」により、この語句「からなる」に続くいかなるものも包み、これらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」により、この語句の後に列挙されるいかなる要素も含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意に含まれ、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい、又は、しなくてもよいことを意味する。
【0042】
用語「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0043】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」等の用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために具体例が使用され得る一般的な部類を含むことを意図するものである。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。
【0044】
列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」及び「~のうちの少なくとも1つを含む(comprises at least one of)」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
【0046】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0047】
また、本明細書では、全ての数字が用語「約」によって修飾され、特定の場合では、用語「厳密に」によって修飾されるとする。測定された量に関して本明細書で用いる場合、用語「約」は、当業者によって、測定を行い、測定の目的及び用いた測定機器の精度に見合う程度の注意を払って予想され得る、測定された量のばらつきを指す。また、測定された量に関して本明細書で用いる場合、用語「およそ(approximately)」は、当業者によって、測定を行い、測定の目的及び用いた測定機器の精度に見合う程度の注意を払って予想され得る、測定された量のばらつきを指す。
【0048】
また、本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0049】
本開示の上記の概要は、開示される各々の実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通していくつかの箇所において、例を列挙することによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせで使用することができる。いずれの場合にも、記載された列挙は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0050】
粉末/液体GI組成物の多くは、粉末/液体比が高いため、混合が困難である。このような混合上の困難に直面した場合、歯科医は、混合特性を向上させるため、製造業者が推奨するよりも粉末/液体比を低くすることがある。粉末/液体比が低いと、典型的には、手での混合特性は向上し得るが、硬化組成物の機械的強度は低下する。
【0051】
手でのより容易な混合を可能とするとともに、より再現性があり、かつ効果的な成分適用を可能とするペースト/ペーストGI組成物が、本明細書に開示される。更に、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物において、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは、実質的に結晶性の無機繊維を含む。実質的に結晶性の無機繊維により、硬化組成物の機械的強度をより高くすることができる。特定の実施形態では、ペースト/ペーストGI組成物は貯蔵安定である。
【0052】
既知のペースト/ペーストGI組成物は、典型的には同等の粉末/液体GI組成物よりも高い含水率を必要とし、含水率がより高いことで、多くの場合、硬化組成物の機械的強度が低下することになる。しかし、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つが実質的に結晶性の無機繊維を含む本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物では、硬化したGI組成物の機械的強度は、硬化した従来型の粉末/液体GI組成物の機械的強度と同等である、かつ場合によってはより優れることが見出されている。更に、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つが実質的に結晶性の無機繊維を含む本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物では、他の既知のペースト/ペーストGI組成物にて認められる混合の容易性を維持することができる。
【0053】
第1ペースト及び第2ペーストを含む硬化性グラスアイオノマー組成物が、本明細書に開示される。第1ペーストは、水、ポリ酸、及び非酸反応性充填剤を含む。第2ペーストは、水及び酸反応性充填剤を含む。第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは、実質的に結晶性の無機繊維を更に含む。特定の実施形態では、GI組成物は、樹脂を本質的に含まないか、又は樹脂を含まない(例えば、従来型GI組成物)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペースト及び第2ペーストの含水率は、組成物の全重量を基準として20重量%未満である。いくつかの実施形態では、第1ペーストの含水率が、第1ペーストの全重量を基準として20重量%未満であり、第2ペーストの含水率が、第2ペーストの全重量を基準として20重量%未満である。
【0054】
ポリ酸
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペーストは、ポリ酸を含む。多種多様なポリ酸を、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物に使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリ酸は、グラスアイオノマー組成物の材料特性を良好にするとともに、貯蔵、取扱い、及び混合特性を良好とするのに十分な分子量を有する。
【0055】
一実施形態では、ポリ酸は、以下のパラメータ、(23℃において)固体であること、及び分子量(Mw)が約2,000~約250,000又は約5,000~約100,000(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用してポリアクリル酸ナトリウム塩標準に対して評価)であることのうち、少なくとも1つ以上又は全てにより特徴付けることができる。
【0056】
ポリ酸の分子量が高すぎると、本明細書に記載されるGI組成物中に含まれる組成物を混合したときに得られるペーストの粘稠性を、作業可能なものとすることが難しくなり得る。更に、組成物の調製が困難になり得る。加えて、得られた混合物又は組成物は、粘着性が高くなりすぎることがある(例えば、適用に使用される歯科用器具に接着する)。
【0057】
ポリ酸の分子量が低すぎる場合、得られたペーストの粘度は低すぎるものになり得、結果として機械的強度が低下し得る。
【0058】
典型的には、ポリ酸は、複数の酸性繰り返し単位を有するポリマーである。
【0059】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物に有用なポリ酸は、重合性基を実質的に含まないか、又は重合性基を含まない。
【0060】
有用なポリ酸は完全に水溶性である必要はないが、他の水性成分と組み合わせたときに実質的に沈降することのないよう、典型的には、それらは少なくとも十分に水混和性である。
【0061】
ポリ酸は、例えば酸反応性充填剤及び水の存在下で硬化性であるが、好ましくはエチレン性不飽和基を含まない。すなわち、ポリ酸は、不飽和酸を重合することにより得られるポリマーである。しかし本製造方法により、ポリ酸は、回避できない微量の(例えば、使用するモノマーの量に対して最大1、又は0.5、又は0.3重量%)遊離モノマーを依然として含み得る。典型的には、不飽和酸は、炭素、硫黄、リン、又はホウ素のオキシ酸(すなわち酸素含有酸)である。より典型的には、それは、炭素のオキシ酸である。有用なポリ酸としては、例えば、不飽和モノ-、ジ-、又はトリカルボン酸のホモポリマー及びコポリマーなどのポリアルケン酸が挙げられる。
【0062】
ポリアルケン酸は、不飽和脂肪族カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、及びチグリン酸の単独重合及び共重合により調製できる。
【0063】
有用なポリ酸としては、マレイン酸及びエチレンの交互コポリマー(例えばモル比1:1で)もまた挙げられる。
【0064】
有用なポリ酸はまた、以下の文献、米国特許第4,209,434号(Wilsonら)、及び第4,360,605号(Schmittら)に記載されている。
【0065】
有用なポリ酸はまた、例えば、KETAC FIL PLUS HANDMIXの商標名で3M ESPEから入手可能なものか、又はFUJI IX GP HANDMIXの商標名で日本、東京のG-C Dental Industrial Corp.から入手可能なものといった製品の液体成分における水溶液としても利用可能である。
【0066】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物にて使用されるポリ酸の量は、酸反応性充填剤と反応し、所望の硬化特性を有するアイオノマー組成物を与えるのに十分であるべきである。
【0067】
特定の実施形態では、ポリ酸は、第1ペーストの全重量を基準として、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の量で第1ペースト中に存在する。特定の実施形態では、ポリ酸は、第1ペーストの全重量を基準として、最大で70重量%、60重量%、又は50重量%の量で第1ペースト中に存在する。特定の実施形態では、ポリ酸は、第1ペーストの全重量を基準として、3重量%~70重量%、5重量%~60重量%、又は10重量%~50重量%の量で第1ペースト中に存在する。
【0068】
ポリ酸の量が多すぎると、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物中に含まれる組成物を混合したときに得られるペーストの粘稠性を、作業可能なものとすることが難しくなり得る。更に、組成物の調製が困難になり得る。加えて、得られた混合物又は組成物は、粘着性が高くなりすぎることがある(例えば、適用のために使用する歯科用器具に接着する)。
【0069】
ポリ酸の量が少なすぎる場合も、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物中に含まれる組成物を混合したときに得られるペーストの粘稠性を、作業可能なものとすることが難しくなり得る。更に、所望の機械的特性を達成することが難しくなる。
【0070】
非酸反応性充填剤
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペーストは、非酸反応性充填剤を含む。本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第2ペーストはまた、第1ペースト中の非酸反応性充填剤と同じ又は異なる非酸反応性充填剤を任意に含むことができる。非酸反応性充填剤としては、例えば、粒子及び/又は繊維(例えば、本明細書で後述されるような実質的に結晶性の無機繊維)を挙げることができる。
【0071】
非酸反応性充填剤は、水の存在下でポリ酸と合わせた場合に、(i)グラスアイオノマーセメント反応において全く硬化しないか、又は(ii)硬化反応の遅延のみを示す、いずれかの充填剤である。
【0072】
多種多様な非酸反応性充填剤を、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物に使用することができる。特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は無機充填剤である。特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は非毒性で、ヒトの口腔内での使用に好適である。非酸反応性充填剤は、放射線不透過性又は放射線透過性であり得る。非酸反応性充填剤の粒子表面を、(例えばシランで)任意に表面処理することができる。
【0073】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤としては、石英、窒化物、カオリン、ホウケイ酸ガラス、酸化ストロンチウム系ガラス、酸化バリウム系ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0074】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、又はこれらの組み合わせなどの金属酸化物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ランタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ビスマス、又はこれらの組み合わせなどの改質剤又はドーパントを更に挙げることができる。
【0075】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤が、0.005μm~20μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、非酸反応性充填剤が、0.01μm~10μmの平均粒径を有する。特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は、10μm未満のd50を有する。第1ペースト及び第2ペーストの両方が非酸反応性充填剤を含む実施形態では、第2ペースト中の非酸反応性充填剤の平均粒径は、第1ペースト中の非酸反応性充填剤の平均粒径と同じである又は異なることができる。
【0076】
例示的な非酸反応性充填剤は、例えば、国際公開第2017/015193(A1)号(Jahnsら)に更に記載されている。
【0077】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤を、液体(例えば水)中の粒子の分散体又はゾルとして提供することができる。充填剤が水性分散体又はゾルとして提供される場合、水性分散体又はゾル中の水の量は、組成物中の水及び充填剤の量が算出される又は測定されるときに、考慮されなければならない。
【0078】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の場合、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、少なくとも10重量%の非酸反応性充填剤、少なくとも25重量%の非酸反応性充填剤、又は少なくとも35重量%の非酸反応性充填剤を含む。本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の場合、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、最大で80重量%の非酸反応性充填剤、最大で70重量%の非酸反応性充填剤、又は最大で60重量%の非酸反応性充填剤を含む。
【0079】
第2ペーストが非酸反応性充填剤を含む、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の実施形態では、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、少なくとも1重量%の非酸反応性充填剤、少なくとも3重量%の非酸反応性充填剤、又は少なくとも5重量%の非酸反応性充填剤を含む。第2ペーストが非酸反応性充填剤を含む、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の実施形態では、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、最大で50重量%の非酸反応性充填剤、最大で40重量%の非酸反応性充填剤、又は最大で30重量%の非酸反応性充填剤を含む。
【0080】
酸反応性充填剤
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第2ペーストは、酸反応性充填剤を含む。
【0081】
多種多様な酸反応性充填剤を、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物に使用することができる。酸反応性充填剤は、ポリ酸及び水とグラスアイオノマーセメント反応をすることができる。
【0082】
有用な酸反応性充填剤としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、ヒドロキシアパタイト、酸反応性ガラス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、酸反応性充填剤としては、例えば、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、ヒドロキシアパタイト、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、1.5未満のSi/Al重量パーセント比を有するガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機充填剤が挙げられる。有用な金属酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
特定の実施形態では、酸反応性充填剤は、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスである。FASガラスは、典型的には、ガラスを硬化性組成物の他成分と混合する場合に硬化した歯科用組成物を得ることができるよう、十分な量の溶出性陽イオンを含む。いくつかの実施形態では、FASガラスはまた、硬化組成物が抗齲蝕性を有するよう、十分な量の溶出性フッ化物イオンを含む。
【0084】
FASガラスは、フッ化物、シリカ、アルミナ、及び他のガラス形成成分を含む融解物から、FASガラス製造技術における当業者によく知られている技術を用いて製造することができる。例えば、米国特許第4,376,835号(Schmittら)及び同第5,250,585号(Guggenbergerら)を参照のこと。いくつかの実施形態では、FASガラスは、シリカ、アルミナ、氷晶石及び蛍石の混合物を融合することにより調製することができる。FASガラスは、典型的には、十分に微細化された粒子の形態であるので、他のセメント成分とうまい具合に混合することができ、得られた混合物が口腔内に使用される場合に、良好に機能する。
【0085】
有用なFASガラスは、当技術分野において既知であり、かつ多種多様な提供元から入手可能であり、多くは現在利用可能なガラスアイオノマーセメント、例えば、KETAC-MOLAR又はKETAC-FIL PLUSの商標名で3M ESPE Dentalから入手可能なもの、及びFUJI-IXの商標名で日本、東京のG-C Dental Industrial Corp.から入手可能なものなどに見出される。
【0086】
特定の実施形態では、酸反応性充填剤が、3μm~10μmの平均粒径を有する。酸反応性充填剤の平均粒径がこの範囲を超える場合、本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物中に含まれる組成物を混合する際に得られる組成物の粘稠性は所望より低くなり得、機械的特性は所望より劣り得る。酸反応性充填剤の平均粒径がこの範囲を下回る場合、本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物の凝結時間は、所望よりも速くなり得る。
【0087】
例示的な酸反応性充填剤は、例えば、国際公開第2015/088956(A1)号(Peezら)に更に記載されている。
【0088】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の場合、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、少なくとも40重量%の酸反応性充填剤、少なくとも50重量%の酸反応性充填剤、又は少なくとも60重量%の酸反応性充填剤を含む。本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の場合、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、最大で90重量%の酸反応性充填剤、最大で88重量%の酸反応性充填剤、又は最大で86重量%の酸反応性充填剤を含む。
【0089】
酸反応性充填剤の量が高すぎる場合、本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物のペーストが適切に混合されない場合があり、得られる組成物の粘稠性を適切なものとし、機械的特性を許容可能なものとすることが難しくなり得る。
【0090】
酸反応性充填剤の量が少なすぎる場合、本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物のそれぞれのペーストを混合することにより有用なペーストが得られない場合がある。更に、硬化組成物の機械的強度が低下し得る。
【0091】
実質的に結晶性の無機繊維
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物において、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは、実質的に結晶性の無機繊維を含む。
【0092】
実質的に結晶性の無機繊維としては、鋭いX線回折(XRD)ピークによって明示される非晶性の特徴が最小限である(すなわち、実質的に非非晶性である)無機繊維が挙げられる。ガラス繊維及びガラスセラミック繊維は、典型的には、実質的に結晶性の無機繊維ではない。本明細書に記載されるXRD結晶性指数試験法により測定した際、いくつかの実施形態では、実質的に結晶性の無機繊維が少なくとも0.05の結晶性指数を有し、特定の実施形態では、少なくとも0.1の結晶性指数を有する。結晶性指数は、無機繊維試料における結晶性のレベルを特徴付けるために使用されるパラメータである。簡潔には、本明細書に更に記載されるXRD結晶性指数試験法では、内部標準としてタングステン粉末を使用する。内部又は質量標準は、試料中の存在量に基づいてX線強度値を正規化するために、結晶性指数を測定のため評価される試料に組み込まれる材料を指す。試験する各無機繊維試料を、タングステン粉末と重量比4:1で混合する。各無機繊維試料の調製物をエタノールスラリーとして混合し、次いで乾燥させ、試験する各無機繊維試料に対して2つの試料調製物を作製する。次いで、各試料調製物を6回XRDスキャンする。結晶性指数は、14~46度(2シータ)の散乱角範囲内での分析物の結晶相回折ピークにおいて観察されたピーク面積と、タングステン内部標準における(110)回折ピーク面積との比である。
【0093】
セラミック繊維及び/又は金属酸化物繊維を含む、多種多様な実質的に結晶性の無機繊維を使用することができる。実質的に結晶性の無機繊維が金属酸化物繊維を含む実施形態では、多種多様な金属酸化物を使用することができる。例示的な金属酸化物としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。アルミノシリケートなどの混合金属酸化物は、典型的には、ガラス状ドメインが実質的に形成されることを避けるため、混合金属酸化物の全重量を基準として、20重量%以下のシリケートを含む。金属酸化物を、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ランタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ビスマス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分で任意に改質(例えばドープ)することができる。金属酸化物が改質剤又はドーパント成分を含む実施形態では、ガラス状ドメインが実質的に形成されることを避けるため、成分は、典型的には、金属酸化物の全重量を基準として10重量%以下で存在する。
【0094】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、少なくとも3μmの平均直径を有する。
【0095】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、最大で25μm、又は最大で20μmの平均直径を有する。
【0096】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物のいくつかの実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、100:1以下、50:1以下、25:1以下、又は15:1以下の平均アスペクト比を有する。本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、10:1~50:1又は15:1~25:1の平均アスペクト比を有する。本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物のいくつかの特定の実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、約10:1の平均アスペクト比を有する。
【0097】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、1mm以下、又は0.5mm以下の平均長さを有する。
【0098】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、少なくとも25μmの平均長さを有する。
【0099】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を65重量%以下含む。
【0100】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を65重量%以下含む。
【0101】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、組成物は、組成物の全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を40重量%以下含む。
【0102】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、組成物は、組成物の全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を10重量%~15重量%含む。
【0103】
含水率
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物中の水は、蒸留水、脱イオン水、又は普通の水道水とすることができる。典型的には、脱イオン水が使用される。水の量は、適切な取扱い特性及び混合特性を提供するのに、並びに特にセメント反応において、イオン輸送を許容するのに、十分であるべきである。
【0104】
水の量が少なすぎると、得られるペーストの粘稠性を作業可能なものとすることが難しくなり得る。水の量が多すぎると、同様に、得られるペーストの粘稠性を作業可能なものとすることが難しくなり得る。更に、所望の機械的特性を達成することが難しくなる可能性がある。
【0105】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物のいくつかの実施形態では、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率は、組成物の全重量を基準として、20重量%未満、19重量%未満、18重量%未満、17重量%未満、16重量%未満、又は15重量%未満である。
【0106】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率は、組成物の全重量を基準として、少なくとも10重量%であり、いくつかの実施形態では少なくとも15重量%である。
【0107】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、第1ペーストの含水率が、第1ペーストの全重量を基準として、20重量%未満、19重量%未満、18重量%未満、17重量%未満、16重量%未満、又は15重量%未満である。
【0108】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の特定の実施形態では、第2ペーストの含水率は、第2ペーストの全重量を基準として、20重量%未満、19重量%未満、18重量%未満、17重量%未満、16重量%未満、又は15重量%未満である。
【0109】
任意の錯化剤
特定の実施形態では、第1ペーストは、錯化剤を任意に含んでもよい。
【0110】
第1ペーストが錯化剤を含む実施形態では、多種多様な錯化剤を使用することができる。有用な錯化剤は、水溶性であること(23℃で少なくとも50g/lの水に)、50g/mol~500g/molの分子量を有すること、又は75g/mol~300g/molの分子量を有すること、のうちの1つ以上により特徴付けることができる。
【0111】
例示的な錯化剤としては、酒石酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、サリチル酸、メリト酸、ジヒドロキシ酒石酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、2,4及び2,6ジヒドロキシ安息香酸、ホスホノカルボン酸、ホスホノコハク酸、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。錯化剤の更なる例は、例えば、米国特許第4,569,954号(Wilsonら)に見出すことができる。
【0112】
第1ペーストが錯化剤を含む、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の実施形態では、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、少なくとも0.1重量%の錯化剤、少なくとも1.0重量%の錯化剤、又は少なくとも1.5重量%の錯化剤を含む。第1ペーストが錯化剤を含む、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物では、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、最大で12重量%の錯化剤、最大で10重量%の錯化剤、又は最大で8重量%の錯化剤を含む。
【0113】
任意の添加剤
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物は、香味剤、フッ素化剤、緩衝剤、麻痺剤、再石灰化剤、脱感作剤、着色剤、指示薬、粘度調整剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤(例えば安息香酸)、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、当技術分野において既知の様々な添加剤を任意に含んでもよい。着色剤が存在すると、水性組成物により所望の口腔内表面全てがコーティングされたことを検出するのに役立つ場合がある。着色剤の色の濃さはまた、口腔内表面上のコーティングの均一性を検出するのに役立つ場合がある。
【0114】
添加剤が第1ペースト中に存在する、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の実施形態では、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、少なくとも0.01重量%の添加剤、少なくとも0.05重量%の添加剤、又は少なくとも0.1重量%の添加剤を含む。添加剤が第1ペースト中に存在する、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物では、第1ペーストは、第1ペーストの全重量を基準として、最大で5重量%の添加剤、最大で3重量%の添加剤、又は最大で1重量%の添加剤を含む。
【0115】
添加剤が第2ペースト中に存在する、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の実施形態では、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、少なくとも0.01重量%の添加剤、少なくとも0.05重量%の添加剤、又は少なくとも0.1重量%の添加剤を含む。添加剤が第2ペースト中に存在する、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物では、第2ペーストは、第2ペーストの全重量を基準として、最大で5重量%の添加剤、最大で3重量%の添加剤、又は最大で1重量%の添加剤を含む。
【0116】
典型的には、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペースト及び第2ペーストのいずれも、以下の成分のどれも単独で、又は組み合わせて含まない。a)1重量%を超える又は0.5重量%を超える量のHEMA、b)1重量%を超える又は0.5重量%を超える量の樹脂、c)1重量%を超える又は0.5重量%を超える量の樹脂又はモノマーを硬化させるのに好適な開始剤成分、d)1重量%を超える又は0.5重量%を超える量の、メトキシフェノール又は3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルオールのような阻害剤、e)1重量%を超える又は0.5重量%を超える量の、ゼオライトのような乾燥剤。
【0117】
したがって、ペースト/ペーストGI組成物のペーストを混合した場合に得られる組成物は樹脂改質グラスアイオノマーセメント(RM-GIC)ではなく、したがって、重合に基づく硬化系を含まない。
【0118】
したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物は、レドックス開始剤系又は熱的誘導開始剤系若しくは放射線に誘導開始剤系を含まない。
【0119】
第1ペースト及び第2ペースト
第1ペーストは、典型的には、7未満のpHを有することにより特徴付けることができる。
【0120】
第2ペーストは、典型的には、7より大きいpHを有することにより特徴付けることができる。
【0121】
第1ペースト及び/又は第2ペーストは各々独立して、任意に溶媒を更に含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒又は共溶媒の添加は、組成物の粘度及び粘稠性を調整するのに役立ち得る。
【0122】
有用な溶媒の例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール)、ポリアルコール/ポリオール(例えば、エチレングリコール及びグリセロール)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0123】
デバイス
本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペースト及び第2ペーストは、様々な実施形態にて施術者に提供することができる。
【0124】
一実施形態では、ペーストは、別々の封着可能な容器(例えばプラスチック又はガラスで製造された)中に収容され得る。使用のために、施術者は、適切な分量のペースト成分を容器から取り、その分量を混合プレート上で手で混合してもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、ペーストは、貯蔵デバイスの別々のコンパートメント中に収容される。貯蔵デバイスは、典型的には、それぞれのペーストを貯蔵するための2つのコンパートメントを備え、各コンパートメントには、それぞれのペーストを送達するためのノズルが備えられている。一旦、適切な分量が送達されたら、次いで、ペーストは、混合プレート上で手で混合され得る。
【0126】
特定の実施形態では、貯蔵デバイスは、静的混合チップを受け入れるためのインターフェースを有する。混合チップは、それぞれのペーストを混合するために使用される。静的混合チップは、例えば、SulzerMixpac companyから入手可能である。有用な貯蔵デバイスは、カートリッジ、シリンジ及びチューブを備える。
【0127】
貯蔵デバイスは、典型的には2つのハウジング又はコンパートメントを備え、これは、ノズルを有する前端、及び後端、並びに少なくとも1つの、ハウジング又はコンパートメント中で移動可能なピストンを有する。
【0128】
有用なカートリッジは、例えば、米国特許出願公開第2007/0090079(A1)号(Kellerら)及び米国特許第5,918,772号(Kellerら)に記載されている。有用なカートリッジは、例えば、SulzerMixpac AG(スイス)から入手可能である。有用な静的混合チップは、例えば、米国特許出願公開第2006/0187752(A1)号(Kellerら)及び米国特許第5,944,419号(Streiff)に記載されている。有用な混合チップは、例えば、SulzerMixpac AG(スイス)から入手可能である。
【0129】
他の有用な貯蔵デバイスは、例えば、国際公開第2010/123800号(3M)、国際公開第2005/016783号(3M)、国際公開第2007/104037号(3M)、国際公開第2009/061884号(3M)に記載されている。
【0130】
あるいは、本明細書に記載されるペースト/ペーストGI組成物は、2つの個々のシリンジ中にて提供することができ、その個々のペーストは、使用前に手で混合することができる。
【0131】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物は、第1ペースト、第2ペースト、並びに第1ペースト及び第2ペーストを混合して硬化組成物を形成するための(本明細書に開示されるような)1つ以上の方法を記載する指示書を含むキットとして提供することができる。
【0132】
一実施形態では、本開示は、第1ペースト及び第2ペーストを含む、本明細書に記載される硬化性グラスアイオノマー組成物を貯蔵するためのデバイスを提供し、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは、実質的に結晶性の無機繊維を含む。デバイスは、第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び第2ペーストを収容した第2コンパートメントを含む。いくつかの実施形態では、第1コンパートメント及び第2コンパートメントとの双方が各々独立して、静的混合チップのエントランスオリフィスを受け入れるためのノズル又はインターフェースを備える。
【0133】
いくつかの実施形態では、第1ペースト及び第2ペーストの混合比は、体積に関して1:3~2:1であり、特定の実施形態では、体積に関して1:2~2:1である。
【0134】
他の実施形態では、第1ペースト及び第2ペーストの混合比は、重量に関して1:6~1:1であり、特定の実施形態では、重量に関して1:4~1:1である。
【0135】
それぞれのペーストを混合したときに得られる又は得られたものであるか、又は得ることができる組成物は、歯科用セメント、歯科用充填材、歯科用コアビルドアップ材料、又は歯科用根管充填材料として、又はそれらを製造するために、特に有用である。
【0136】
方法
施術者は、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物を多種多様な方法で使用し、硬化組成物を調製することができる。
【0137】
一実施形態では、本方法は、第1ペースト及び第2ペーストを含む、本明細書に記載される硬化性グラスアイオノマー組成物を提供することであって、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つが実質的に結晶性の無機繊維を含む、こと、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物(例えば、硬化性組成物)を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む。
【0138】
別の実施形態では、本方法は、第1ペースト及び第2ペーストを含む、本明細書に記載される硬化性グラスアイオノマー組成物を貯蔵するためのデバイスを提供することであって、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つが実質的に結晶性の無機繊維を含み、デバイスが第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び第2ペーストを収容した第2コンパートメントを備える、こと、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物(例えば、硬化性組成物)を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む。
【0139】
特定の実施形態では、混合物(例えば、硬化性組成物)を歯牙硬組織表面に適用し、混合物(例えば、硬化性組成物)を硬化させて歯牙硬組織表面に硬化組成物を形成させる。
【0140】
一実施形態によれば、本明細書に開示されるGI組成物の2つのペーストを混合することにより得られるか、又は得ることができるセメント組成物は、硬化前又は硬化中に、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ、2つ以上、又は全てを満たすことができる。EN-ISO 9917-1:2007に従って測定した約5分、4分、又は3分以内の凝結時間、EN-ISO 9917-1:2007に従って測定した約4分、3分、2分、又は1分以内の作業時間、及び、貯蔵安定であること。所望する場合、凝結時間及び硬化挙動を、本明細書の実施例セクションでより詳細に記載のとおりに測定することができる。
【0141】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペースト及び第2ペーストを混合することから形成される混合物(例えば、硬化性組成物)は、施術者が組成物を十分に混合するだけでなく、組成物を、例えば、クラウン、ブリッジ、根管、又は形成した歯の表面に適用することも可能な十分な作業時間を有する。更に、混合物(例えば、硬化性組成物)は、施術者の時間を節約し患者の利便性を高めることができる、都合よく短い凝結時間を有する。
【0142】
別の実施形態によれば、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物の第1ペースト及び第2ペーストを混合することから形成される混合物(例えば、硬化性組成物)は、硬化後、以下のパラメータのうちの1つ、2つ以上、又は全てを満たすことができる。組成物を被覆するために箔の代わりにガラススラブを使用することを条件として、EN-ISO 9917-2:2010に従って測定する、約20MPaを超える又は約25MPaを超える曲げ強度。組成物を被覆するために箔の代わりにガラススラブを使用することを条件として、EN-ISO 9917-1/2007に従って測定する、約100MPaを超える、約120MPaを超える、又は約150MPaを超える圧縮強度。所望する場合、これらのパラメータを、本明細書の実施例セクションに記載のとおりに測定することができる。
【0143】
本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物は、当技術分野におけるグラスアイオノマーセメントの市販の状態と比較して、容易に混合することができ、凝結時間などの他の重要なパラメータに影響を与えることなく、曲げ強度及び破壊靭性といった適切な機械的特性を実現することができる。典型的には、本明細書に開示されるペースト/ペーストGI組成物は、エナメル質及び象牙質といった歯の表面に対して適切に接着することができる。
【0144】
本開示の例示的実施形態
硬化性グラスアイオノマー組成物及びその使用方法を提供することが可能な、様々な実施形態が開示される。
【0145】
実施形態1Aは、水と、ポリ酸と、非酸反応性充填剤とを含む第1ペースト、並びに水と、酸反応性充填剤とを含む第2ペーストを含む硬化性グラスアイオノマー組成物であって、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは実質的に結晶性の無機繊維を更に含み、組成物は樹脂を本質的に含まない、硬化性グラスアイオノマー組成物である。
【0146】
実施形態2Aは、組成物が樹脂を含まない、実施形態1Aに記載の硬化性グラスアイオノマー組成物である。
【0147】
実施形態3Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として20重量%未満である、実施形態1A又は2Aに記載の組成物である。
【0148】
実施形態4Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として19重量%未満である、実施形態1A~3Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0149】
実施形態5Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として18重量%未満である、実施形態1A~4Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0150】
実施形態6Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として17重量%未満である、実施形態1A~5Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0151】
実施形態7Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として16重量%未満である、実施形態1A~6Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0152】
実施形態8Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として15重量%未満である、実施形態1A~7Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0153】
実施形態9Aは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として10重量%~15重量%である、実施形態1A~8Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0154】
実施形態10Aは、第1ペーストが、第1ペーストの全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を65重量%以下含む、実施形態1A~9Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0155】
実施形態11Aは、第2ペーストが、第2ペーストの全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を65重量%以下含む、実施形態1A~10Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0156】
実施形態12Aは、組成物が、組成物の全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を40重量%以下含む、実施形態1A~11Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0157】
実施形態13Aは、組成物が、組成物の全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を10重量%~15重量%含む、実施形態1A~12Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0158】
実施形態14Aは、実質的に結晶性の無機繊維が、セラミック及び/又は金属酸化物を含む、実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0159】
実施形態15Aは、実質的に結晶性の無機繊維が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、実施形態1A~14Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0160】
実施形態16Aは、金属酸化物が、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ビスマス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分で改質される、実施形態15Aに記載の組成物である。
【0161】
実施形態17Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、少なくとも3μmの平均直径を有する、実施形態1A~16Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0162】
実施形態18Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、最大で25μmの平均直径を有する、実施形態1A~17Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0163】
実施形態19Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、最大で20μmの平均直径を有する、実施形態1A~18Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0164】
実施形態20Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、約10:1の平均アスペクト比を有する、実施形態1A~19Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0165】
実施形態21Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、1mm以下の平均長さを有する、実施形態1A~20Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0166】
実施形態22Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、0.5mm以下の平均長さを有する、実施形態1A~21Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0167】
実施形態23Aは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、少なくとも25μmの平均長さを有する、実施形態1A~22Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0168】
実施形態24Aは、XRD結晶性指数試験法により測定した際、実質的に結晶性の無機繊維が少なくとも0.05の結晶性指数を有する、実施形態1A~23Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0169】
実施形態25Aは、XRD結晶性指数試験法により測定した際、実質的に結晶性の無機繊維が少なくとも0.1の結晶性指数を有する、実施形態1A~24Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0170】
実施形態26Aは、非酸反応性充填剤が、石英、窒化物、カオリン、ホウケイ酸ガラス、酸化ストロンチウム系ガラス、酸化バリウム系ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1A~25Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0171】
実施形態27Aは、非酸反応性充填剤が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、実施形態1A~26Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0172】
実施形態28Aは、非酸反応性充填剤が、0.005μm~10μmの平均粒径を有する、実施形態1A~27Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0173】
実施形態29Aは、酸反応性充填剤が、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、ヒドロキシアパタイト、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、1.5未満のSi/Al重量パーセント比を有するガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機充填剤を含む、実施形態1A~28Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0174】
実施形態30Aは、酸反応性充填剤が、3μm~10μmの平均粒径を有する、実施形態1A~29Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0175】
実施形態31Aは、第1ペーストが錯化剤を更に含む、実施形態1A~30Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0176】
実施形態1Bは、実施形態1A~31Aのいずれか1つに記載の硬化性グラスアイオノマー組成物を提供すること、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む、硬化組成物の調製方法である。
【0177】
実施形態1Cは、第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び第2ペーストを収容した第2コンパートメントを備える、実施形態1A~31Aのいずれか1つに記載の組成物を貯蔵するためのデバイスである。
【0178】
実施形態2Cは、第1コンパートメント及び第2コンパートメントとの双方が各々独立して、静的混合チップのエントランスオリフィスを受け入れるためのノズル又はインターフェースを備える、実施形態1Cに記載のデバイスである。
【0179】
実施形態1Dは、実施形態1C又は2Cに記載のデバイスを提供すること、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む、硬化組成物の調製方法である。
【0180】
実施形態1Eは、水と、ポリ酸と、非酸反応性充填剤とを含む第1ペースト、並びに水と、酸反応性充填剤とを含む第2ペーストを含む硬化性グラスアイオノマー組成物であって、第1ペースト及び第2ペーストのうちの少なくとも1つは実質的に結晶性の無機繊維を更に含み、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率は、組成物の全重量を基準として20重量%未満である、硬化性グラスアイオノマー組成物である。
【0181】
実施形態2Eは、第1ペーストの含水率が、第1ペーストの全重量を基準として20重量%未満であり、第2ペーストの含水率が、第2ペーストの全重量を基準として20重量%未満である、実施形態1Eに記載の硬化性グラスアイオノマー組成物である。
【0182】
実施形態3Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として20重量%未満である、実施形態1E又は2Eに記載の組成物である。
【0183】
実施形態4Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として19重量%未満である、実施形態1E~3Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0184】
実施形態5Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として18重量%未満である、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0185】
実施形態6Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として17重量%未満である、実施形態1E~5Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0186】
実施形態7Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として16重量%未満である、実施形態1E~6Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0187】
実施形態8Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として15重量%未満である、実施形態1E~7Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0188】
実施形態9Eは、第1ペースト及び第2ペーストを合わせた含水率が、組成物の全重量を基準として10重量%~15重量%である、実施形態1E~8Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0189】
実施形態10Eは、第1ペーストが、第1ペーストの全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を65重量%以下含む、実施形態1E~9Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0190】
実施形態11Eは、第2ペーストが、第2ペーストの全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を65重量%以下含む、実施形態1E~10Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0191】
実施形態12Eは、組成物が、組成物の全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を40重量%以下含む、実施形態1E~11Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0192】
実施形態13Eは、組成物が、組成物の全重量を基準として、実質的に結晶性の無機繊維を10重量%~15重量%含む、実施形態1E~12Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0193】
実施形態14Eは、実質的に結晶性の無機繊維が、セラミック及び/又は金属酸化物を含む、実施形態1E~13Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0194】
実施形態15Eは、実質的に結晶性の無機繊維が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、実施形態1E~14Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0195】
実施形態16Eは、金属酸化物が、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ビスマス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分で改質される、実施形態15Eに記載の組成物である。
【0196】
実施形態17Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、少なくとも3μmの平均直径を有する、実施形態1E~16Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0197】
実施形態18Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、最大で25μmの平均直径を有する、実施形態1E~17Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0198】
実施形態19Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、最大で20μmの平均直径を有する、実施形態1E~18Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0199】
実施形態20Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、約10:1の平均アスペクト比を有する、実施形態1E~19Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0200】
実施形態21Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、1mm以下の平均長さを有する、実施形態1E~20Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0201】
実施形態22Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、0.5mm以下の平均長さを有する、実施形態1E~21Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0202】
実施形態23Eは、ペースト中に含まれる実質的に結晶性の無機繊維が、少なくとも25μmの平均長さを有する、実施形態1E~22Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0203】
実施形態24Eは、XRD結晶性指数試験法により測定した際、実質的に結晶性の無機繊維が少なくとも0.05の結晶性指数を有する、実施形態1E~23Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0204】
実施形態25Eは、XRD結晶性指数試験法により測定した際、実質的に結晶性の無機繊維が少なくとも0.1の結晶性指数を有する、実施形態1E~24Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0205】
実施形態26Eは、非酸反応性充填剤が、石英、窒化物、カオリン、ホウケイ酸ガラス、酸化ストロンチウム系ガラス、酸化バリウム系ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1E~25Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0206】
実施形態27Eは、非酸反応性充填剤が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、実施形態1E~26Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0207】
実施形態28Eは、非酸反応性充填剤が、0.005μm~10μmの平均粒径を有する、実施形態1E~27Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0208】
実施形態29Eは、酸反応性充填剤が、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、ヒドロキシアパタイト、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、1.5未満のSi/Al重量パーセント比を有するガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機充填剤を含む、実施形態1E~28Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0209】
実施形態30Eは、酸反応性充填剤が、3μm~10μmの平均粒径を有する、実施形態1E~29Eのいずれか1つに記載の組成物である。
【0210】
実施形態31Eは、第1ペーストが錯化剤を更に含む、実施形態1E~30Aのいずれか1つに記載の組成物である。
【0211】
実施形態1Fは、実施形態1E~31Eのいずれか1つに記載の硬化性グラスアイオノマー組成物を提供すること、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む、硬化組成物の調製方法である。
【0212】
実施形態1Gは、第1ペーストを収容した第1コンパートメント、及び第2ペーストを収容した第2コンパートメントを備える、実施形態1E~31Eのいずれか1つに記載の組成物を貯蔵するためのデバイスである。
【0213】
実施形態2Gは、第1コンパートメント及び第2コンパートメントとの双方が各々独立して、静的混合チップのエントランスオリフィスを受け入れるためのノズル又はインターフェースを備える、実施形態1Gに記載のデバイスである。
【0214】
実施形態1Hは、実施形態1G又は2Gに記載のデバイスを提供すること、第1ペースト及び第2ペーストを組み合わせて混合物を形成すること、並びに混合物を硬化させて硬化組成物を形成すること、を含む、硬化組成物の調製方法である。
【0215】
本開示の目的及び利点は以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な材料及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限しないものと解釈されるべきである。
【実施例
【0216】
以下の実施例は本発明の範囲を例示するために示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、全ての部及び百分率は重量によるものであり、全ての水は脱イオン水であったものとする。別段の指定がない限り、材料は、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手することができる。全ての市販材料は、販売元から入手したまま使用した。水酸化ナトリウムは、EM Science(Gibbstown,NJ)から入手した。酒石酸はFisher Scientific(Waltham,MA)から入手し、3-ホスホノプロピオン酸はAlfa Aesar(Tewksbury,MA)から入手した。
【0217】
材料
「NALCO 2329」は、40重量%のSiOを含み、ナトリウム対イオン(およそ0.25%のNaO)を含み、25℃においてpH=8.4であり、粒径が75nmである、Ecolab(Naperville,IL)から入手可能な水性コロイドシリカゾルを指す。
【0218】
「LEVASIL 50/50」は、50重量%のSiOを含み、塩基安定化されたコロイドシリカゾル(base-stabilized colloidal silica sol)を含み、pH=9~10であり、粒径が50nmである、Akzo Nobel(Bohus,Sweden)から入手可能な水性コロイドシリカゾルを指す。
【0219】
「ZIRCAR ZYBF-2」は、10%のYを含み、BET表面積が4m/gである、Zircar Zirconia(Florida,NY)から入手可能なジルコニアバルク繊維(zirconia bulk fiber)を指す。
【0220】
「Cristobalite」は、「SIKRON SF6000」の商標名でQuarzwerke GmbH(Frechen,Germany)から入手可能な、粒径3.5μmの不活性なクリストバライトシリカ充填剤(cristobalite silica filler)を指す。
【0221】
「PA 1」は、およそ60,000の分子量を有する、アクリル酸の水溶性ポリ酸ホモポリマー(polyacid homopolymer)を指す。
【0222】
「PA 2」は、およそ20,000の分子量を有する、アクリル酸及びマレイン酸(1:1コポリマー)の水溶性ポリ酸コポリマーを指す。
【0223】
「FAS 1」は、(X線蛍光分析に基づく)以下の元素組成、10~15重量%のSi、10~15重量%のAl、23~26.5重量%のSr、2.0~4.0重量%のNa、11.0~14.5重量%のF、2~3.5重量%のP、4.5~7重量%のLa、26~30重量%のOを有する、平均粒径4.8μm(1.6μmのd10、8.0μmのd50、30μmのd90)の、酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス粉末(acid-reactive fluoroaluminosilicate glass powder)を指す。酸反応性ガラス粉末(acid reactive glass powder)は、ガラスフリットを溶融し、続いてフリットを4.8μmの粒径にまで粉砕及び研削し、その後1Mの塩酸で1時間洗浄し、濾過し、乾燥させ、200~300℃で12時間焼き戻すことにより調製する。
【0224】
「FAS 2」は、(X線蛍光分析に基づく)以下の元素組成、7.5~12.5重量%のSi、7.5~12.5重量%のAl、15.0~20.0重量%のLa、7.5~12.5重量%のCa、1.0~3.0重量%のNa、0.5~3.0重量%のP、12.0~17.0重量%のF、30.0~35.0重量%のOを有する、平均粒径4.8μmの、酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス粉末を指す。酸反応性ガラス粉末は、ガラスフリットを溶融し、続いてフリットを4.8μmの粒径にまで粉砕及び研削し、その後1Mの塩酸で1時間洗浄し、濾過し、乾燥させ、200~300℃で12時間焼き戻すことにより調製する。
【0225】
「NEXTEL 312」は、3Mから入手可能な、直径10~12μmのアルミノボロシリケートセラミック繊維(aluminoborosilicate ceramic fibers)(すなわち、実質的に非晶質の無機繊維)(62.5重量%のAl、24.5重量%のSiO、13重量%のB)を指し、これを200μmの均一な長さに細断した。
【0226】
「NEXTEL 720」は、3Mから入手可能な、α-Al及びムライト結晶相(85重量%のAl、15重量%のSiO)を有する、直径10~12μmのアルミノシリカセラミック繊維(aluminosilica ceramic fibers)を指し、これを更に200μmの均一な長さに細断した。「S/T NEXTEL 720」は、以下のように表面処理したNEXTEL 720を指す。細断繊維の水(細断繊維の5倍重量)中の撹拌混合物に、3-ホスホノプロピオン酸(繊維重量を基準として2重量%)を加えた。混合物を100℃に加熱し、最低2時間撹拌した。繊維をおよそ30分間沈降させ、上澄み液をデカントした。繊維を過剰な水で(2回)洗浄し、湿った繊維を85℃でおよそ2時間乾燥させ、Nextel 720細断繊維を得た。
【0227】
「NEXTEL 610」は、3Mから入手可能な、1500デニールの、きめ細かい単相のαアルミナ(>99重量%のAl)セラミック繊維を指す。
【0228】
コランダムは、およそ100%結晶性のAlであり、Linde Air Products Companyから入手可能である。
【0229】
XRD結晶性指数試験法
結晶性指数は、無機繊維試料における結晶性のレベルを特徴付けるために使用されるパラメータである。簡潔には、本明細書で使用するXRD結晶性指数試験法では、内部標準としてタングステン粉末を使用する。内部又は質量標準は、試料中の存在量に基づいてX線強度値を正規化するために、結晶性指数を測定のため評価される試料に組み込まれる材料を指す。試験する各無機繊維試料を、タングステン粉末と重量比4:1で混合する。各無機繊維試料の調製物をエタノールスラリーとして混合し、次いで乾燥させ、試験する各無機繊維試料に対して2つの試料調製物を作製する。次いで、各試料調製物を6回XRDスキャンする。結晶性指数は、14~46度(2シータ)の散乱角範囲内での分析物の結晶相回折ピークにおいて観察されたピーク面積と、タングステン内部標準における(110)回折ピーク面積との比である。以下の手順を使用して、試験した実質的に結晶性の無機繊維に関するXRD結晶性指数を測定した。
【0230】
325メッシュのふるいを通過させるため、ボールミル粉砕並びに/又は炭化ホウ素乳鉢及び乳棒による手の粉砕により、相の標準の粒径を減少させた。0.400グラムの各試料及び0.100グラムのタングステン内部標準(すなわち、General Electricから入手可能な<3ミクロンのタングステン金属粉末、ロットU-1.35-8808D)からなる個々の混合物を調製した。混合物を乳鉢及び乳棒でエタノール下にてブレンドし、窒素気流下で乾燥させた。乾燥した混合物をスパチュラ及び微細なブラシにより乳鉢及び乳棒から取り除き、最後に個々の試料容器に移した。
【0231】
各試料の一部を、シリコンからなるゼロバックグラウンド標本ホルダー(zero background specimen holders)上で、エタノールスラリーとして調製した。銅Kα放射線、可変入口スリット、固定された出口スリット、及び散乱放射線のピクセル検出器レジストリ(Pixcel detector registry)を採用するBragg-Bretano型のtheta-theta型回折計(Bragg-Bretano theta-theta diffractometer)(Empyrean、Almelo,The NetherlandsのPANalyticalにより製造)を使用することにより、各試料から複数のX線回折スキャンを得た。14~46度(2θ)で、0.026度のステップ幅及び10秒の放置時間(dwell time)を採用し、スキャンを実施した。X線発生器を40kV及び40mAの設定で作動させ、固定された入射ビームスリットを使用した。
【0232】
14~46度(2θ)の散乱角範囲内にて観察された回折ピークをプロファイルフィッティングすることにより、試料及びタングステン質量標準内の結晶相により観察された回折極大のピーク面積を測定した。内部質量標準のX線散乱は、(1 1 0)ピーク面積を使用した立方晶タングステンの測定により評価した。プロファイルフィッティング作業中、必要に応じて十分な数の適切に幅広い散乱ピークを含めることにより、非晶質相による散乱を考慮した。全ての場合において、Pearson VIIピーク形状モデル及び線形バックグラウンドモデル(linear background model)を使用した。プロファイルフィッティングは、JADE(バージョン9、Materials Data Inc.Livermore,CA)回折ソフトウェア一式の機能を用いて実施した。
【0233】
試料中に存在する結晶相により生成された極大ピーク面積を合計し、各試料に関して、全試料結晶相(total sample crystalline phase)の散乱強度値[(全結晶面積)試料]を求めた。プロファイルフィッティング中に非晶質相を考慮するために使用した幅広いピークはいずれも、結晶性指数の計算には含めなかった。これら全試料結晶相の散乱強度値をそれぞれの立方晶タングステン(1 1 0)ピーク面積で割り、各試料に関して結晶性指数[X]を求めた。
=[(全結晶面積)試料]/[(タングステン面積)試料
平均のX値は、個々のX値から計算した。
C(平均)=[ΣXC(i)]/N試料
式中、N試料=試料のスキャン回数。試料の複数回のXRD実施を報告した。
【0234】
この手順に従って測定した結晶性指数結果を、表1に報告する。
【0235】
【表1】
【0236】
Nextel 312試料に関しては、検出可能な回折ピークは観察されなかった。
【0237】
方法
グラスアイオノマーペーストの一般的な調製
下表に示す量の成分を使用し、高剪断速度ミキサー(high shear speed mixer)(FlackTek Inc.Speed Mixer,DAC 150.1 FVZ)を使用して、酸ペースト及び塩基ペーストを調製した。全成分を加え、約2500~2700RPMで1分間混合して均質な塩基ペーストを得ることにより、塩基ペーストを製造した。酸ペーストは、2つの方法のうちの1つにより調製した。1つの方法では、水、酒石酸、及び充填剤を加えた。次いで、いくらか固体が存在する場合は破壊するため、混合物をアプリケータスティックで手で混合するか、又は2500RPMで30秒間高速混合(speed mixed)した。次いでポリ酸を添加し、ペーストを3500RPMで1分間高速混合した。次いでその後、手で一連のへら操作(spatulating)を行った後、均質な酸ペーストとなるまで、3500RPMで1分間高速混合した。別の方法では、水、酒石酸、及びポリ酸を加えた。次いで、混合物を3500RPMで1分間混合した。次いで、残りの充填剤を全て加え、3500RPMで1~5分間混合した。次いでその後、手で一連のへら操作を行った後、均質な酸ペーストとなるまで、3500RPMで1分間高速混合した。どちらの方法でも、類似の見分けがつかないペーストとなる。
【0238】
下表に列挙する混合比に従い、合わせたペーストが均質になるまで酸ペースト及び塩基ペーストを手でへら操作することにより、グラスアイオノマーを調製した。全ての混合比は、重量によるものである。
【0239】
曲げ強度
2つの要素を下表に示す比率で混合し、混合した材料を、両側にポリエステルフィルムを備えた2mm×2mm×25mmのPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)型に入れることにより、グラスアイオノマー試験標本を調製した。ポリカーボネートスライドを、両ポリエステルフィルム片の外側に配置した。次いで、型をパワーハンドクランプ(power hand clamp)で固定し、温度及び湿度が制御されたチャンバーに、37℃及び相対湿度95%で約1時間入れた。次いで、試料を型から取り出して脱イオン水に入れ、37℃のオーブンに約24時間入れた。次いで、端部を滑らかにし、幅及び長さを正確に測定するため、試料をBuehler Ecomet 4 Variable Speed Grinder-Polisher上で600グリットのサンドペーパーを使用して研磨した。曲げ強度を、ANSI/ADA(American National Standard/American Dental Association)の規格番号27(1993)に準拠して、Instron試験機(Instron 5944,Instron Corp.,Canton,MA,USA)で0.75mm/分のクロスヘッド速度で測定した。
【0240】
破壊靭性
2つの要素を下表に示す比率で混合し、混合した材料を、両側にポリエステルフィルムを備えた3mm×5mm×25mmのPEEK型に入れることにより、グラスアイオノマー試験標本を調製した。ポリカーボネートスライドを、両ポリエステルフィルム片の外側に配置した。次いで、型をパワーハンドクランプで固定し、温度及び湿度が制御されたチャンバーに、37℃及び相対湿度95%で約1時間入れた。次いで、試料を型から取り出して脱イオン水に入れ、37℃のオーブンに約24時間入れた。次いで、端部を滑らかにし、幅及び長さを正確に測定するため、試料をBuehler Ecomet 4 Variable Speed Grinder-Polisher上で600グリットのサンドペーパーを使用して研磨した。次いで、ISOMET Low Speed Saw(Buehler,Lake Bluff,IL,USA)を使用して、0.15mmの切り口のウエハブレード(Buehler,Lake Bluff,IL,USA)で標本の中央にノッチを切り込んだ。ノッチは、約2mmの深さであった。次いで、0.75mm/分のクロスヘッド速度でInstron試験機(Instron 5944,Instron Corp.,Canton,MA,USA)において、破壊靭性を測定した。靭性は、ASTM 399-05に従って計算した。荷重-変位曲線下部の面積を測定することにより、破壊仕事を計算した。最終荷重が1N未満になったところで、試験を中止した(面積の計算を中止した)。
【0241】
配合物
様々なペースト-ペーストグラスアイオノマーセメント組成物を、下表に列挙する配合及び混合比に従って調製した。
【0242】
【表2】
【0243】
【表3】
【0244】
【表4】
【0245】
【表5】
【0246】
【表6】
【0247】
【表7】
【0248】
【表8】
【0249】
【表9】
【0250】
【表10】
【0251】
【表11】
【0252】
【表12】
【0253】
【表13】
【0254】
物理的特性の測定
曲げ強度を、例示的な実施例及び比較例について本明細書に記載されるように測定した。結果を表14~16に示す。
【0255】
【表14】
【0256】
表14の結果から、繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、実施例1~3)が、繊維を含まないペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、比較例1及び2)よりも高い曲げ強度を示したことは明らかである。実施例1~3の曲げ強度は、市販のグラスアイオノマー組成物(すなわち、比較例3)の曲げ強度と同等であるか、又はそれより著しく改善された(例えば、実施例3)。
【0257】
【表15】
【0258】
表15の結果から、実質的に結晶性の繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、実施例4)が、意外にも、実質的に非晶性の繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、比較例4)よりも高い曲げ強度を示したことが明らかである。
【0259】
【表16】
【0260】
表16のデータから、曲げ強度が総含水率の増加とともに減少することは明らかである。
【0261】
破壊靭性の破壊仕事測定値を、例示的な実施例及び比較例について本明細書に記載されるように得た。結果を表17~20に示す。
【0262】
【表17】
【0263】
表17のデータから、繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、実施例1~4)が、繊維を含まないグラスアイオノマー組成物(すなわち、ペースト-ペーストの比較例1若しくは2、又は粉末-液体の比較例3のいずれか)よりも高い破壊靭性を示したことは明らかである。特に、実施例3の破壊靭性は、比較例1のおよそ2倍であった。
【0264】
【表18】
【0265】
表18のデータから、繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、実施例1~3)が、繊維を含まないグラスアイオノマー組成物(すなわち、ペースト-ペーストの比較例1若しくは2、又は粉末-液体の比較例3のいずれか)よりも実質的に大きな破壊仕事を示したことは明らかである。特に、実施例3の破壊仕事は比較例1~3の破壊仕事のおよそ18~50倍であった。実施例中で最も小さな破壊仕事を示した実施例1でさえ、比較例1~3の破壊仕事のおよそ8~22倍であった。
【0266】
【表19】
【0267】
表19のデータから、実質的に結晶性の繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、実施例4)が、非晶性の繊維を含むペースト-ペーストグラスアイオノマー組成物(すなわち、比較例4)よりも高い破壊靭性を示したことが明らかである。
【0268】
【表20】
【0269】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、特許請求の範囲に記載の開示を当業者が実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。