IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図1
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図2
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図3
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図4
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図5
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図6
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図7
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図8
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図9
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図10
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図11
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図12
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図13
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図14
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図15
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図16
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図17
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図18
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図19
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図20
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図21
  • 特許-半導体記憶装置及び電子機器 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】半導体記憶装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20230515BHJP
   G11C 29/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G11C11/16 280
G11C29/00 412
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020501678
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004646
(87)【国際公開番号】W WO2019163567
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018031713
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正啓
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-512779(JP,A)
【文献】特開2013-251035(JP,A)
【文献】特開2012-89187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0259676(US,A1)
【文献】特開2016-181314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 11/16
G11C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の記憶素子と、
前記複数の記憶素子に含まれる少なくとも2以上の記憶素子を1のビットとして割り当て、前記ビットごとに、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子それぞれへの電圧の印加を制御する制御部と、
前記ビットとして割り当てられた前記2以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が他の記憶素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の記憶素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、異常と判定された前記ビットに対して、当該ビットに割り当てられていた前記2以上の記憶素子とは異なる他の2以上の記憶素子を割り当てる、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ビットごとに設定されたソフトウェア上のアドレスに対して、前記2以上の記憶素子それぞれのハードウェア上のアドレスを関連付けることで、当該ビットに対して当該2以上の記憶素子を割り当てる、請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ビットへのデータの書き込み時に、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子とは異なる状態となるように制御する、請求項1または2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記記憶素子は、電圧が印可される方向に応じて互いに異なる状態に遷移する記憶素子であり、
前記制御部は、前記ビットへのデータの書き込み時に、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの少なくとも2つの記憶素子それぞれに対して互いに異なる方向に電圧が印可されるように制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ビットへのデータの書き込み時には、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの前記少なくとも2つの記憶素子が並列に接続されるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの前記少なくとも2つの記憶素子が直列に接続されるように制御する、
請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記複数の記憶素子に含まれる2つの記憶素子を前記ビットとして割り当て、
前記ビットへのデータの書き込み時には、当該ビットに対応する前記2つの記憶素子が並列に接続されるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、当該ビットに対応する前記2つの記憶素子が直列に接続されるように制御する、
請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記記憶素子は、閾値よりも高い電圧が印可された場合に状態が遷移する記憶素子であり、
前記2つの記憶素子に共通に接続される第1の信号線と、
前記2つの記憶素子それぞれに個別に接続される2つの第2の信号線と、
を備え、
前記制御部は、
前記ビットへのデータの書き込み時には、前記2つの記憶素子それぞれに対して前記閾値よりも高い第1の電圧が印可されるように、前記第1の信号線と、2つの前記第2の信号線それぞれと、の間の電位差を制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、前記2つの記憶素子それぞれに対して前記閾値よりも低い第2の電圧が印可されるように、2つの前記第2の信号線の間の電位差を制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、前記第1の信号線の電位に応じた前記データが読み出される、
請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記2つの記憶素子それぞれに個別に接続された2つの選択トランジスタを備え、
前記選択トランジスタは、接続された前記記憶素子を介した、前記第1の信号線と前記第2の信号線との間の電気的な接続の有無を選択的に切り替える、
請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ビットに書き込むデータに応じて、前記第1の信号線と、2つの前記第2の信号線のそれぞれと、のうちの一方の電位が他方の電位よりも高くなるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、前記第1の信号線の電位が、2つの前記第2の信号線それぞれの電位の間の中間の電位よりも高い場合と低い場合とで異なる前記データが読み出される、
請求項7または8に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記ビットへの第1のデータの書き込み時には、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が基準電位となるように制御し、前記第1の信号線の電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットへの第2のデータの書き込み時には、前記第1の信号線の電位が前記基準電位となるように制御し、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも高い場合に前記第1のデータが読み出され、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも低い場合に前記第2のデータが読み出される、
請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記ビットへの第1のデータの書き込み時には、前記第1の信号線の電位が基準電位となるように制御し、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットへの第2のデータの書き込み時には、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が前記基準電位となるように制御し、前記第1の信号線の電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも低い場合に前記第1のデータが読み出され、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも高い場合に前記第2のデータが読み出される、
請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記第1の信号線の電位が前記中間の電位と略等しい場合には、当該第1の信号線が接続された前記2つの記憶素子が割り当てられた前記ビットが異常であると判定する、請求項9から11のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記記憶素子は磁気トンネル結合素子である、請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項14】
半導体記憶装置を備え、
当該半導体記憶装置は、
それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の記憶素子と、
前記複数の記憶素子に含まれる少なくとも2以上の記憶素子を1のビットとして割り当て、前記ビットごとに、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子それぞれへの電圧の印加を制御する制御部と、
前記ビットとして割り当てられた前記2以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が他の記憶素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の記憶素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、異常と判定された前記ビットに対して、当該ビットに割り当てられていた前記2以上の記憶素子とは異なる他の2以上の記憶素子を割り当てる、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体記憶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
書き換え可能に構成された不揮発性メモリとして、例えば、記憶素子として磁気抵抗効果素子を採用した磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)が知られている。MRAMでは、磁気抵抗効果素子を構成する磁性体の磁化方向によりデータが記憶される。
【0003】
MRAMを構成する磁気抵抗効果素子の一例として、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子が挙げられる。MTJ素子は、2つの強磁性層がトンネル絶縁膜を介して積層されて構成されており、2つの強磁性層の磁化方向の関係に応じてトンネル絶縁膜を介して磁性層間を流れるトンネル電流が変化する特性(換言すると、磁気トンネル接合の抵抗が変化する特性)を利用したものである。具体的には、MTJ素子は、2つの強磁性層の磁化方向が平行の場合に低い素子抵抗を有し、反平行の場合には高い素子抵抗を有する。このような互いに異なる2つの状態のそれぞれを、データ「0」または「1」に関連付けることで、記憶素子として利用することが可能である。例えば、特許文献1には、記憶素子としてMTJ素子を利用可能な記憶装置(メモリ回路)の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-171593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、MRAM等の記憶装置は、外部からの強力な磁界等のような外的要因の影響により、記憶素子に保持された情報が意図せずまたは不正に書き換えられる場合が想定され得る。特に、MRAM等の記憶装置が利用される電子機器の中には、認証等に利用される機器のように、より高いセキュリティレベルが求められるものもある。このような機器においては、記憶装置に保持された情報が不正に書き換えられた場合においても、当該情報の書き換えを検出可能とする技術の導入が求められる。
【0006】
そこで、本開示では、外的要因の影響による記憶素子に保持された情報の書き換えをより好適な態様で検出可能とする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の記憶素子と、前記複数の記憶素子に含まれる少なくとも2以上の記憶素子を1のビットとして割り当て、前記ビットごとに、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子それぞれへの電圧の印加を制御する制御部と、前記ビットとして割り当てられた前記2以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が他の記憶素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の記憶素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する判定部と、を備える、半導体記憶装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、半導体記憶装置を備え、当該半導体記憶装置は、それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の記憶素子と、前記複数の記憶素子に含まれる少なくとも2以上の記憶素子を1のビットとして割り当て、前記ビットごとに、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子それぞれへの電圧の印加を制御する制御部と、前記ビットとして割り当てられた前記2以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が他の記憶素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の記憶素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する判定部と、を備える、電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本開示によれば、外的要因の影響による記憶素子に保持された情報の書き換えをより好適な態様で検出可能とする技術が提供される。
【0010】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の概略的な機能構成の一例を示したブロック図である。
図2】MTJ素子の概要について説明するための説明図である。
図3】比較例1に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
図4】比較例1に係る半導体記憶装置の構成の一例を示した概略的な回路図である。
図5】比較例2に係る半導体記憶装置におけるメモリセルの概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
図6】比較例2に係る半導体記憶装置の構成の一例を示した概略的な回路図である。
図7】比較例2に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
図8】比較例2に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図9】比較例2に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図10】比較例2に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図11】同実施形態に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
図12】同実施形態に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図13】同実施形態に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図14】同実施形態に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図15】同実施形態に係る半導体記憶装置において、外的要因によりデータが書き換えられたことを検出するための仕組みの一例について説明するための説明図である。
図16】同実施形態に係る半導体記憶装置において、外的要因によりデータが書き換えられたことを検出するための仕組みの一例について説明するための説明図である。
図17】同実施形態に係る半導体記憶装置において、外的要因によりデータが書き換えられたことが検出された場合の制御の一例について説明するための説明図である。
図18】変形例に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
図19】変形例に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図20】変形例に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図21】変形例に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明するための説明図である。
図22】本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の応用例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.概略構成
2.磁気トンネル接合素子の概要
3.比較例
3.1.比較例1
3.2.比較例2
4.技術的課題
5.技術的特長
5.1.構成
5.2.制御
5.3.データ異常の検出
5.4.変形例
5.5.補足
6.応用例
7.むすび
【0014】
<<1.概略構成>>
まず、図1を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の概略的な機能構成の一例について説明する。図1は、本実施形態に係る半導体記憶装置の概略的な機能構成の一例を示したブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体記憶装置100は、複数の記憶素子101が2次元アレイ状に配列された素子アレイ103と、制御回路105と、読出回路107とを含む。
【0016】
記憶素子101は、印可される電圧に応じて複数の状態のうちのいずれかに遷移するように構成されている。具体的な一例として、記憶素子101は、印可される電圧の方向に応じて、複数の状態のうちのいずれかに遷移するように(例えば、互いに異なる状態に遷移するように)構成されていてもよい。また、記憶素子101は、印可された電圧が一定の電圧以上(即ち、閾値以上)の場合に、状態が遷移するように構成されていてもよい。換言すると、記憶素子101は、当該記憶素子101に対してある一定以上の電流が流れた場合に、状態が遷移するように構成されていてもよい。このような構成の基で、記憶素子101の取り得る上記複数の状態のうち少なくとも2以上の状態それぞれに対して互いに異なるデータ(例えば、「0」、「1」等)が関連付けられる。このような構成により、例えば、書き込みの対象となるデータを、1の記憶素子101の状態、または複数の記憶素子101それぞれの状態の組み合わせとして保持することが可能となる。
【0017】
記憶素子101としては、例えば、磁気トンネル接合素子(以下、「MTJ素子」とも称する)等の磁気抵抗効果素子が適用され得る。また、記憶素子101としては、上述した特性を有するものであれば、磁気抵抗効果素子とは異なる他の素子を適用することも可能である。なお、図1に示す例では、各記憶素子101に対して電圧を印可するための各種配線や他の素子等のような詳細な回路構成について図示を省略している。記憶素子101の周辺の回路構成の一例については別途後述する。
【0018】
制御回路105は、素子アレイ103を形成する複数の記憶素子101のうち少なくとも一部の記憶素子101に対するデータの書き込みや、少なくとも一部の記憶素子101からのデータの読み出しに係る各種動作を制御する。
【0019】
具体的な一例として、制御回路105は、書き込みの対象となるデータ(Write Data)に応じて、少なくとも一部の記憶素子101を選択し、当該記憶素子101に対して所定の電圧が印可されるように、当該記憶素子101と電源電圧(図1では図示を省略する)との間の電気的な接続関係を制御する。これにより、対象となる記憶素子101に対して所定の電圧が印可され、当該記憶素子101の状態が印可された電圧に応じて遷移する。
【0020】
また、制御回路105は、少なくとも一部の記憶素子101の状態に応じたデータが、読み出しデータ(Read Data)として後述する読出回路107により読み出されるように、当該記憶素子101と読出回路107との間の電気的な接続関係を制御する。これにより、対象となる記憶素子101の状態に応じたレベルの信号が素子アレイ103から読出回路107に出力され、当該読出回路107は、素子アレイ103からの当該信号のレベルに応じた読み出しデータを所定の出力先に出力することが可能となる。
【0021】
なお、本実施形態に係る半導体記憶装置100においては、制御回路105は、少なくとも2以上の記憶素子101を1のビットとして割り当てる。即ち、1のビットに対応するデータを保持する1のメモリセルが2以上の記憶素子101により構成されていてもよい。なお、この場合には、制御回路105は、データの書き込み時やデータの読み出し時における記憶素子101の選択をビット単位(即ち、1のメモリセルを構成する2以上の記憶素子101単位)で制御してもよい。
【0022】
また、制御回路105は、各ビットに関連付けられたアドレス(ソフトウェア上のアドレス)と、2以上の記憶素子101(即ち、メモリセル)に関連付けられたアドレス(ハードウェア上のアドレス)と、を対応付けることで、当該ビットに対して当該2以上の記憶素子101を割り当てる。このような構成により、あるビットに対して割り当てられた少なくとも一部の記憶素子101に異常が生じた場合(例えば、保持された情報が不正に書き換えられた場合)においても、当該ビットに対して他の記憶素子101(異常の生じていない記憶素子101)を割り当て直すことで、異常の生じた記憶素子101が使用されないように制御することが可能となる。なお、制御回路105が、「制御部」の一例に相当する。
【0023】
読出回路107は、制御回路105による制御に基づき選択された記憶素子101の状態に応じて素子アレイ103から出力される信号のレベルに基づくデータを所定の出力先に出力する。
【0024】
また、読出回路107は、素子アレイ103から出力される信号のレベルに基づき対象となる記憶素子101の状態を認識し、当該認識の結果に応じて、当該記憶素子101の状態に応じたデータ(例えば、上記ビット)が異常か否か(即ち、外的要因よりデータが書き換えられているか否か)を判定してもよい。このとき読出回路107は、データが異常であると判定したビット(換言すると、記憶素子101)に関する情報を、制御回路105に通知してもよい。これにより、例えば、制御回路105は、データの異常が検出されたビットに対して、そのとき割り当てられている記憶素子101(即ち、データに異常が生じている記憶素子101)に替えて、他の記憶素子101(即ち、データに異常が生じていない予備の記憶素子101)を割り当てることも可能となる。なお、読出回路107のうち、上記判定を行う部分が「判定部」の一例に相当する。
【0025】
なお、上述した半導体記憶装置100の各構成のうち一部の構成が当該半導体記憶装置100の外部に設けられていてもよい。具体的な一例として、読出回路107のうち少なくとも一部の構成(例えば、判定部に相当する構成)が半導体記憶装置100の外部に設けられていてもよい。同様に、制御回路105のうち、少なくとも一部の構成が半導体記憶装置100の外部に設けられていてもよい。
【0026】
以上、図1を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の概略的な機能構成の一例について説明した。
【0027】
<<2.磁気トンネル接合素子の概要>>
続いて、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置に記憶素子として適用可能なMTJ素子について概要を説明する。例えば、図2は、MTJ素子の概要について説明するための説明図である。
【0028】
MTJ素子は、STT-MRAM(Spin Transfer Torque-Magnetic Random Access Memory)と称される半導体記憶装置に記憶素子として適用される。STT-MRAMは、スビントランスファートルクによって磁化を反転させるスピン注入書き込み方式を採用した半導体記憶装置であり、磁性体の磁化方向によりデータが記憶される。
【0029】
具体的には、図2に示すように、MTJ素子は、磁化が固定された磁性層(以下、「固定層」とも称する)と、磁化が固定されない磁性層(以下、「可動層」とも称する)との間に、トンネル絶縁層が積層された磁気トンネル接合により構成される。このような構成の基で、MTJ素子に対してスピン電子が注入されると、磁性体(可動層)内部のスピン方向が制御される。図2において、固定層及び可動層に提示された矢印は、各磁性体の磁化方向を模式的に示している。
【0030】
具体的には、図2の左側に示す図では、MTJ素子に対して、固定層側から可動層側に向けてある一定以上の電流が流れるように制御された場合の一例を示している。この場合には、MTJ素子に対して可動層側から固定層側に向けて電子が注入され、固定層に保持された電子とはスピンが逆向きの電子が可動層中に保持されることとなる。これにより可動層の磁化方向が固定層とは逆向きとなる。即ち、固定層及び可動層の磁化方向が反平行状態(Antiparallel)となる。
【0031】
また、図2の右側に示す図では、MTJ素子に対して、可動層側から固定層側に向けてある一定以上の電流が流れるように制御された場合の一例を示している。この場合には、MTJ素子に対して固定層側から可動層側に向けて電子が注入され、固定層に保持された電子とスピンが同じ方向の電子が固定層側から可動層側に向けてより多く透過する。これにより、固定層に保持された電子とスピンが同じ向きの電子が可動層中に保持され、可動層の磁化方向が固定層と同じ向きとなる。即ち、固定層及び可動層の磁化方向が平行状態(Parallel)となる。
【0032】
このように、MTJ素子は、ある一定以上の電流が流された場合に、当該電流が流される方向に応じて平行状態と反平行状態とのうちのいずれかの状態に遷移する。そのため、例えば、平行状態及び反平行状態のそれぞれを互いに異なるデータ(例えば、「0」及び「1」等)に関連付けることにより、MTJ素子を書き換え可能な記憶素子として利用することが可能となる。なお、MTJ素子は、反平行状態に遷移した場合に、平行状態に遷移した場合に比べてより高い抵抗値を示すこととなる。そのため、例えば、MTJ素子の素子抵抗を検出することで、当該MTJ素子が平行状態と反平行状態とのいずれの状態に遷移しているかを認識することが可能である。
【0033】
以上、図2を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置に記憶素子として適用可能なMTJ素子について概要を説明した。
【0034】
<<3.比較例>>
続いて、本実施形態に係る半導体記憶装置の特徴をよりわかりやすくするために、記憶素子としてMTJ素子のような磁気抵抗効果素子を適用した半導体記憶装置の一例について比較例として説明する。
【0035】
<3.1.比較例1>
まず、比較例1に係る半導体記憶装置について概要を説明する。例えば、図3は、比較例1に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図であり、1のビットに相当するデータが記憶されるメモリセル近傍の電気的な接続関係の一例について概略的に示している。図3に示した比較例1に係る半導体記憶装置110は、1つのMOSトンランジスタと1つのMTJ素子とにより1つのメモリセルが構成されたもの(即ち、1T-1MTJ構成の半導体記憶装置)である。図3において、参照符号M111、M113、及びM115のそれぞれはMTJ素子を示している。また、参照符号T111、T113、及びT115のそれぞれは選択トランジスタを示している。なお、以降の説明では、MTJ素子M111、M113、及びM115を特に区別しない場合には、「MTJ素子M110」と称する場合がある。また、選択トランジスタT111、T113、及びT115を特に区別しない場合には、「選択トランジスタT110」と称する場合がある。
【0036】
MTJ素子M110及び選択トンランジスタT110は、直列に接続されて1つのメモリセルを構成しており、信号線L115及びL116間を架設するように配設される。即ち、MTJ素子M111及び選択トンランジスタT111と、MTJ素子M113及び選択トンランジスタT113と、MTJ素子M115及び選択トンランジスタT115と、のそれぞれが1つのメモリセルを構成している。なお、このとき、MTJ素子M111、M113、及びM115のそれぞれは、信号線L115及びL116それぞれとの間の電気的な接続関係が同様となるように配設される。例えば、図3に示す例では、MTJ素子M111、M113、及びM115のそれぞれは、固定層及び可動層のうち一方(例えば、可動層)が対応する選択トランジスタT110を介して信号線L115側に接続され、他方(例えば、固定層)が信号線L116側に接続されている。
【0037】
また、選択トランジスタT111、T113、及びT115のゲート端子(以下、「制御端子」とも称する)には、それぞれ制御線L111、L112、及びL113が接続されている。このような構成に基づき、選択トランジスタT111は、制御線L111を介してゲート端子に供給される制御信号に基づき導通状態(以下、「オン状態」とも称する)となる。同様に、選択トランジスタT113は、制御線L112を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。また、選択トランジスタT115は、制御線L113を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。
【0038】
信号線L115及びL116のそれぞれは、データの書き込み時に互いに異なる電位に接続される。このような構成の基で、選択トランジスタT110がオン状態に制御されると、当該選択トランジスタT110に接続されたMTJ素子M110に対して、信号線L115及びL116間の電位差に応じた電圧が印可される。このとき、信号線L115及びL116間の電位差に応じた当該電圧が所定の電圧以上(即ち、閾値以上)の場合には、当該MTJ素子M110に対してある一定以上の電流が流れ、当該MTJ素子M110の状態が平行状態または反平行状態に遷移する。なお、このときMTJ素子M110の状態が平行状態及び反平行状態のいずれに遷移するかについては、当該MTJ素子M110に流れる電流の方向(換言すると、印加される電圧の方向)に応じて決定される。即ち、MTJ素子M110の状態が平行状態及び反平行状態のいずれに遷移するかについては、信号線L115及びL116のうちのいずれの電位が高いかに応じて決定される。
【0039】
より具体的な一例として、データの書き込み時には、信号線L115及びL116のうち一方は、電源電圧V(または所定の電位V)に接続され、他方がグランドGNDに接続される。なお、この場合には、電源電圧Vの電位は、グランドGNDの電位よりも高いものとする(即ち、V>GNDとする)。これにより、対応する選択トランジスタT110がオン状態に制御されることで選択されたMTJ素子M110に対して電圧Vが印可される。なお、図3に示す例では、信号線L115が電源電圧Vに接続され、信号線L116がグランドGNDに接続された場合には、MTJ素子M110が平行状態となり、当該MTJ素子M110の抵抗値がより低くなる。これに対して、信号線L115がグランドGNDに接続され、信号線L116が電源電圧Vに接続された場合には、MTJ素子M110が反平行状態となり、当該MTJ素子M110の抵抗値がより高くなる。なお、以降の説明では、便宜上、図3に示す例においては、MTJ素子M110が平行状態となる場合が「Hデータ」に関連付けられており、MTJ素子M110が反平行状態となる場合が「Lデータ」に関連付けられているものとする。
【0040】
また、信号線L115は、データの読み出しに各メモリセルからのデータ(換言すると、各MTJ素子M110の状態に応じたデータ)の読み出し線として機能する。即ち、データの読み出し時には、信号線L115が、読出回路に接続されたノードN111に接続され、対応する選択トランジスタT110がオン状態に制御されることで選択されたMTJ素子M110の状態に応じた信号が当該読出回路に読み出される。
【0041】
また、データの読み出し時には、選択されたMTJ素子M110の状態に応じて読出回路に出力される信号のレベルに基づき、当該信号に応じたデータ(即ち、読み出しデータ)が「Hデータ」及び「Lデータ」いずれに相当するかが判定される。例えば、図4は、比較例1に係る半導体記憶装置の構成の一例を示した概略的な回路図であり、MTJ素子からのデータの読み出しに着目した構成の一例について示している。なお、図4では、SMJ素子M111の状態に応じたデータが読み出される場合に着目して、各素子間の接続関係を模式的に示している。図4において、参照符号SW11、SW12、SW21、及びSW22は、データの書き込み時やデータの読み出し時に対象となるMTJ素子M110(換言すると、メモリセル)を選択するためのスイッチを模式的に示している。
【0042】
即ち、図4に示す例では、スイッチSW11、SW12、SW21、及びSW22が制御されることで、データの読み出しの対象となるMTJ素子M111が選択される。このとき、当該MTJ素子M111の状態に応じた信号が、参照符号L11で示した経路を介してセンスアンプSAに入力され、当該センスアンプSAにより増幅されて読み出し信号とされる。即ち、読み出し信号のレベルに応じて、読み出しデータがHデータ及びLデータのいずれに相当するかが判定されることとなる。
【0043】
なお、図4に示すような1T-1MTJ構成の半導体記憶装置においては、上記読み出し信号のレベルがHデータ及びLデータのいずれに相当するかについては、例えば、所定のリファレンス信号との間のレベルの比較に応じて判定される。例えば、図4に示す例では、参照符号L13で示した経路で入力される信号をリファレンス信号として利用される。なお、当該リファレンス信号のレベルについては、抵抗RH及びRLに基づき決定される。具体的には、図4に示す例では、リファレンス信号のレベルは、(RH+RL)/2に応じたレベルとなる。
【0044】
一方で、図3及び図4を参照して説明した1T-1MTJ構成の半導体記憶装置においては、データの読み出し時に参照される素子間のばらつき(例えば、MTJ素子M110の素子ばらつき)に応じて、読み出し信号のレベルがばらつく場合がある。このような読み出し信号のばらつきがより大きくなると、例えば、信号のレベルの制御に係るマージンが不足する場合もある。また、図4に示すように、1T-1MTJ構成の半導体記憶装置においては、リファンレンス信号を出力するための構成が別途必要となる。このように付加的な回路が必要となることで、半導体記憶装置の製造に係る歩留まりが低下する可能性もある。そこで、このような問題を解消するための構成の一例について、比較例2として別途後述する。
【0045】
<3.2.比較例2>
続いて、比較例2に係る半導体記憶装置について概要を説明する。例えば、図5は、比較例2に係る半導体記憶装置におけるメモリセルの概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
【0046】
図5に示すように、比較例2に係る半導体記憶装置では、2つのMTJ素子M131及びM132により1つのメモリセルが構成されている。即ち、1つのビットに対して2つの2つのMTJ素子M131及びM132が割り当てられていることとなる。具体的には、図5に示す例では、MTJ素子M131及びM132のそれぞれには、固定層及び可動層のうちの一方に対して信号線L135が共通に接続されている。また、MTJ素子M131及びM132のそれぞれには、固定層及び可動層のうちの他方に対して別途信号線が個別に接続されている。具体的には、MTJ素子M131には、固定層及び可動層のうちの他方に対して信号線L137が接続されている。また、MTJ素子M132には、固定層及び可動層のうちの他方に対して信号線L136が接続されている。このような構成に基づき、例えば、信号線L137とL136との間に電流が流れると、MTJ素子M131及びM132は、互いに異なる状態に遷移する。
【0047】
例えば、図5の左側に示す図では、信号線L137が電源電圧VDDに接続され、信号線L136がグランドGNDに接続されており、信号線L137から信号線L136に向けて、MTJ素子M131及びM132を介して電流が流れる。この場合には、MTJ素子M131が低い抵抗値を示し、MTJ素子M132が高い抵抗値を示すこととなり、信号線L135の電位は0.5VDD以上となる。
【0048】
これに対して、図5の右側に示す図では、信号線L137がグランドGNDに接続され、信号線L136が電源電圧VDDに接続されており、信号線L136から信号線L137に向けて、MTJ素子M132及びM131を介して電流が流れる。この場合には、MTJ素子M131が高い抵抗値を示し、MTJ素子M131が低い抵抗値を示すこととなり、信号線L135の電位は0.5VDD以下となる。
【0049】
即ち、図5に示す例では、MTJ素子M131及びM132それぞれの状態に応じて、信号線L135の電位(換言すると、読み出し信号のレベル)が相対的に決定されることとなる。これにより、MTJ素子M131及びM132それぞれの素子ばらつきに起因する成分が打ち消され、図3及び図4を参照して説明した比較例1に係る半導体記憶装置に比べて、当該素子間のばらつきの影響をより低減することが可能となる。
【0050】
また、図6は、比較例2に係る半導体記憶装置の構成の一例を示した概略的な回路図であり、MTJ素子からのデータの読み出しに着目した構成の一例について示している。図6において、図4と同様の符号が付された構成は、図4に示す例と同様の構成を示すものとする。図6に示す例では、MTJ素子M131及びM132の状態に応じた信号が、参照符号L15で示した経路を介してセンスアンプSAに入力され、当該センスアンプSAにより増幅されて読み出し信号とされる。
【0051】
なお、上述の通り、比較例2に係る半導体記憶装置においては、MTJ素子M131及びM132それぞれの状態に応じて、読み出し信号のレベルが相対的に決定され、MTJ素子M131及びM132それぞれの素子ばらつきに起因する成分が打ち消される。このような特性から、比較例2に係る半導体記憶装置においては、図4を参照して説明した比較例2に係る半導体記憶装置においてリファレンス信号を生成するための構成(即ち、図6において破線で示した部分の構成)を設ける必要がなくなる。即ち、比較例2に係る半導体記憶装置は、比較例1に比べて、半導体記憶装置の製造に係る歩留まりをより向上させる効果を期待することも可能となる。
【0052】
ここで、図7図10を参照して、比較例2に係る半導体記憶装置の構成及び制御の一例についてより詳しく説明する。
【0053】
例えば、図7は、比較例2に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図であり、1のビットに相当するデータが記憶されるメモリセル近傍の電気的な接続関係の一例について概略的に示している。図7に示した比較例2に係る半導体記憶装置130は、2つのMOSトランジスタと2つのMTJ素子とにより1つのメモリセルが構成されたもの(即ち、2T-2MTJ構成の半導体記憶装置)である。図7において、参照符号M131~M116のそれぞれはMTJ素子を示している。また、参照符号T131~T136のそれぞれは選択トランジスタを示している。なお、以降の説明では、MTJ素子M131~M136を特に区別しない場合には、「MTJ素子M130」と称する場合がある。また、選択トランジスタT131~T136を特に区別しない場合には、「選択トランジスタT130」と称する場合がある。
【0054】
また、図7において、信号線L135~L137は、図5に示す例における信号線L135~L137に対応している。即ち、図7におけるMTJ素子M131、M133、及びM135が、図5に示す例におけるMTJ素子M131にそれぞれ相当する。同様に、図7におけるMTJ素子M132、M134、及びM136が、図5に示す例におけるMTJ素子M132にそれぞれ相当する。
【0055】
図7に示す半導体記憶装置130では、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M130それぞれに対して選択トランジスタT130が個別に接続される。このとき、互いに接続される1つのMTJ素子M130と1つの選択トランジスタT130とは直列に接続される。具体的な一例として、MTJ素子M131に対して選択トランジスタT131が直列に接続され、当該MTJ素子M131及び当該選択トランジスタT131が、信号線L135及びL137間を架設するように配設される。また、MTJ素子M132に対して選択トランジスタT132が直列に接続され、当該MTJ素子M132及び当該選択トランジスタT132が、信号線L135及びL136間を架設するように配設される。このような構成の基で、当該MTJ素子M131及びM132と当該選択トランジスタT131及びT132とにより、1つのメモリセルが構成される。
【0056】
同様に、MTJ素子M133及びM134と選択トランジスタT133及びT134との組み合わせと、MTJ素子M135及びM136と選択トランジスタT135及びT136との組み合わせと、のそれぞれが1つのメモリセルを構成する。なお、このとき、MTJ素子M131、M133、及びM135のそれぞれは、信号線L135及びL137それぞれとの間の電気的な接続関係が同様となるように配設される。例えば、図7に示す例では、MTJ素子M131、M133、及びM135のそれぞれは、固定層及び可動層のうち一方(例えば、固定層)が信号線L135側に接続され、他方(例えば、可動層)が対応する選択トランジスタT130を介して信号線L137側に接続されている。また、MTJ素子M132、M134、及びM136のそれぞれは、固定層及び可動層のうち一方(例えば、固定層)が信号線L135側に接続され、他方(例えば、可動層)が対応する選択トランジスタT130を介して信号線L136側に接続されている。
【0057】
また、選択トランジスタT131及びT132それぞれのゲート端子(即ち、制御端子)には制御線L131が接続されている。このような構成の基で、選択トランジスタT131及びT132のそれぞれは、制御線L131を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。同様に、選択トランジスタT133及びT134それぞれのゲート端子には制御線L132が接続されている。即ち、選択トランジスタT133及びT134のそれぞれは、制御線L132を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。また、選択トランジスタT135及びT136それぞれのゲート端子には制御線L132が接続されている。即ち、選択トランジスタT135及びT136のそれぞれは、制御線L133を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。
【0058】
信号線L136及びL137のそれぞれは、データの書き込み時に互いに異なる電位に接続される。また、信号線L135は、データの読み出し時に各メモリセルから各MTJ素子M130の状態に応じたデータ(換言すると、各MTJ素子M130の状態に応じた信号)を読み出すための読み出し線として機能する。そのため、信号線L135は、例えば、読出回路に接続されたノードN131に接続されている。このような構成により、信号線L136及びL137間に電圧が印可されると、信号線L135の電位に応じたレベルの信号が読出回路に出力される。
【0059】
ここで、図8及び図9を参照して、比較例2に係る半導体記憶装置130における、データの書き込みに係る制御の一例について説明する。図8及び図9は、比較例2に係る半導体記憶装置130の制御の一例について説明するための説明図であり、データの書き込み時におけるMTJ素子M130への電圧の印加に係る制御の一例を示している。なお、以降の説明では、便宜上、図8がメモリセルに対してHデータを書き込む場合の一例を示しており、図9がメモリセルに対してLデータを書き込む場合の一例を示しているものとする。
【0060】
まず、図8を参照して、メモリセルに対してHデータを書き込む場合の制御の一例について説明する。この場合には、信号線L137が電源電圧Vに接続され、信号線L136がグランドGNDに接続される。なお、V>GNDとする。次いで、選択トランジスタT131及びT132がオン状態に制御されることでMTJ素子M131及びM132が選択されると、当該MTJ素子M131及びM132に対して、信号線L137及びL136間の電位差に応じた電圧が印可される。即ち、信号線L137から信号線L136に向けて、MTJ素子M131、信号線L135、及びMTJ素子M132を介して電流が流れることとなる。このとき、MTJ素子M131及びM132のそれぞれに印加された電圧が所定の電圧以上(即ち、閾値以上)の場合には、当該MTJ素子M131及びM132に対してある一定以上の電流が流れる。これにより、MTJ素子M131及びM132のそれぞれの状態が、電流が流れた方向(即ち、電圧が印可された方向)に応じて平行状態または反平行状態に遷移する。具体的には、図8に示す例の場合には、MTJ素子M131が反平行状態に遷移して抵抗値がより低くなり、MTJ素子M132が平行状態に遷移して抵抗値がより高くなる。
【0061】
次いで、図9を参照して、メモリセルに対してLデータを書き込む場合の制御の一例について説明する。この場合には、信号線L137がグランドGNDに接続され、信号線L136が電源電圧Vに接続される。次いで、選択トランジスタT131及びT132がオン状態に制御されることでMTJ素子M131及びM132が選択されると、当該MTJ素子M131及びM132に対して、信号線L137及びL136間の電位差に応じた電圧が印可される。即ち、信号線L136から信号線L137に向けて、MTJ素子M132、信号線L135、及びMTJ素子M131を介して電流が流れることとなる。このとき、MTJ素子M131及びM132のそれぞれに印加された電圧が所定の電圧以上(即ち、閾値以上)の場合には、当該MTJ素子M131及びM132に対してある一定以上の電流が流れる。これにより、MTJ素子M131及びM132のそれぞれの状態が、電流が流れた方向(即ち、電圧が印可された方向)に応じて平行状態または反平行状態に遷移する。具体的には、図9に示す例の場合には、MTJ素子M131が平行状態に遷移して抵抗値がより高くなり、MTJ素子M132が反平行状態に遷移して抵抗値がより低くなる。
【0062】
次いで、図10を参照して、比較例2に係る半導体記憶装置130における、データの読み出しに係る制御の一例について説明する。図10は、比較例2に係る半導体記憶装置130の制御の一例について説明するための説明図であり、MTJ素子M130の状態に応じたデータの読み出しに係る制御の一例について示している。
【0063】
データの読み出し時には、信号線L137が電源電圧Vに接続され、信号線L136がグランドGNDに接続される。なお、V>V>GNDとする。次いで、選択トランジスタT131及びT132がオン状態に制御されることでMTJ素子M131及びM132が選択されると、当該MTJ素子M131及びM132に対して、信号線L137及びL136間の電位差に応じた電圧が印可される。即ち、信号線L137から信号線L136に向けて、MTJ素子M131、信号線L135、及びMTJ素子M132を介して電流が流れることとなる。なお、電圧Vについては、MTJ素子M131及びM132それぞれに対して、当該MTJ素子M131及びM132それぞれの状態が遷移しない程度の電流が流れるように設定される。また、信号線L135は、読出回路に接続されたノード(図7に示すノードN131)に接続される。これにより、信号線L135の電位に応じた信号がセンスアンプ(例えば、図6に示すセンスアンプSA)により増幅されて、読み出し信号として読出回路に出力される。なお、図5を参照して前述したように、読み出し信号のレベル(換言すると、信号線L135の電位)は、MTJ素子M131及びM132それぞれの状態に応じて相対的に決定される。即ち、読出回路は、当該読み出し信号のレベルに応じて、読み出しデータがHデータ及びLデータのいずれに相当するかが判定することが可能となる。
【0064】
以上、図3図10を参照して、図記憶素子としてMTJ素子のような磁気抵抗効果素子を適用した半導体記憶装置の一例について比較例1及び2として説明した。
【0065】
<<4.技術的課題>>
続いて、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の技術的課題について説明する。
【0066】
MTJ素子のような磁気抵抗効果素子を記憶素子として利用した記憶装置(例えば、MRAM等)は、外部からの強力な磁界等のような外的要因の影響により、記憶素子に保持された情報が意図せずまたは不正に書き換えられる場合がある。このように、外部からの強力な磁界等の外的要因の影響により記憶素子に保持された情報が書き換えられた場合に、記憶装置の構成によっては、当該情報が書き換えられたことを検出することが困難な場合がある。具体的な一例として、前述した比較例1に係る半導体記憶装置においては、外的要因の影響により記憶素子に保持された情報が書き換えられた場合には、当該情報が書き換えられたことを検出することが困難である。
【0067】
特に、近年では、MRAM等の記憶装置が、認証等に利用される機器のように、より高いセキュリティレベルが求められる電子機器に利用される場合もある。このような機器において、記憶装置に保持された情報が不正に書き換えられたことを検出できないと、書き換えられた情報が不正に利用される事態(例えば、なりすましや個人情報へのアクセス等)を防止することが困難となり得る。そのため、このような機器においては、記憶装置に保持された情報が不正に書き換えられた場合においても、当該情報が書き換えられたことを検出可能とする技術の導入が求められる。
【0068】
このような状況を鑑み、本開示では、外部からの強力な磁界等のような外的要因の影響により、記憶素子に保持された情報が意図せずまたは不正に書き換えられる場合においても、当該情報が書き換えられたことを検出可能とする技術を提案する。
【0069】
<<5.技術的特長>>
以下に、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の技術的特徴について説明する。
【0070】
<5.1.構成>
まず、図11を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の構成の一例について、特に、1のビットに相当するデータが記憶されるメモリセルの構成に着目して説明する。図11は、本実施形態に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図であり、メモリセル近傍の電気的な接続関係の一例について概略的に示している。
【0071】
本実施形態に係る半導体記憶装置は、1のビットに対して複数の記憶素子を割り当て、書き込みデータに応じて当該複数の記憶素子それぞれの状態を制御する。また、記憶素子としては、例えば、MTJ素子のような磁気抵抗効果素子が適用され得る。なお、以降の説明では、記憶素子としてMTJ素子が適用されるものとして説明する。
【0072】
図11に示す半導体記憶装置210は、2つのMOSトランジスタと2つのMTJ素子とにより1つのメモリセルが構成された、2T-2MTJ構成の半導体記憶装置である。図11において、参照符号M211~M216のそれぞれはMTJ素子を示している。また、参照符号T211~T216のそれぞれは選択トランジスタを示している。なお、以降の説明では、MTJ素子M211~M216を特に区別しない場合には、「MTJ素子M210」と称する場合がある。また、選択トランジスタT211~T216を特に区別しない場合には、「選択トランジスタT210」と称する場合がある。
【0073】
また、図11に示す半導体記憶装置210では、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M210それぞれに対して選択トランジスタT210が個別に接続される。このとき、互いに接続される1つのMTJ素子M210と1つの選択トランジスタT210とは直列に接続される。具体的な一例として、MTJ素子M211に対して選択トランジスタT211が直列に接続され、当該MTJ素子M211及び当該選択トランジスタT211が、信号線L215及びL217間を架設するように配設される。また、MTJ素子M212に対して選択トランジスタT212が直列に接続され、当該MTJ素子M212及び当該選択トランジスタT212が、信号線L215及びL216間を架設するように配設される。即ち、MTJ素子M211及びM213のそれぞれには信号線L215が共通に接続される。また、MTJ素子M211及びM213のそれぞれには、信号線L215とは逆側に別途信号線(即ち、信号線L217及びL216)が個別に接続される。このような構成の基で、当該MTJ素子M211及びM212と当該選択トランジスタT211及びT212とにより、1つのメモリセルが構成される。
【0074】
同様に、MTJ素子M213及びM214と選択トランジスタT213及びT214との組み合わせと、MTJ素子M215及びM216と選択トランジスタT215及びT216との組み合わせと、のそれぞれが1つのメモリセルを構成する。なお、このとき、MTJ素子M211、M213、及びM215のそれぞれは、信号線L215及びL217それぞれとの間の電気的な接続関係が同様となるように配設される。例えば、図11に示す例では、MTJ素子M211、M213、及びM215のそれぞれは、固定層及び可動層のうち一方(例えば、可動層)が信号線L215側に接続され、他方(例えば、固定層)が対応する選択トランジスタT210(即ち、選択トランジスタT211、T213、またはT215)を介して信号線L217側に接続されている。また、MTJ素子M212、M214、及びM216のそれぞれは、固定層及び可動層のうち一方(例えば、固定層)が信号線L215側に接続され、他方(例えば、可動層)が対応する選択トランジスタT210(即ち、選択トランジスタT212、T214、またはT216)を介して信号線L216側に接続されている。
【0075】
なお、上述の通り、本実施形態に係る半導体記憶装置210においては、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M210のそれぞれは、信号線L215に対する接続関係が異なる。具体的な一例として、MTJ素子M211は、可動層側が信号線L215に接続される。これに対して、MTJ素子M212は、固定層側が信号線L215に接続される。
【0076】
また、選択トランジスタT211及びT212それぞれのゲート端子(即ち、制御端子)には制御線L211が接続されている。このような構成の基で、選択トランジスタT211及びT212のそれぞれは、制御線L211を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。同様に、選択トランジスタT213及びT214それぞれのゲート端子には制御線L212が接続されている。即ち、選択トランジスタT213及びT214のそれぞれは、制御線L212を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。また、選択トランジスタT215及びT216それぞれのゲート端子には制御線L212が接続されている。即ち、選択トランジスタT215及びT216のそれぞれは、制御線L213を介してゲート端子に供給される制御信号に基づきオン状態となる。
【0077】
信号線L215と、信号線L216及びL217のそれぞれとは、データの書き込み時に互いに異なる電位に接続される。例えば、信号線L215が電源電圧Vに接続される場合には、信号線L216及びL217のそれぞれがグランドGNDに接続される。また、信号線L215がグランドGNDに接続される場合には、信号線L216及びL217のそれぞれが電源電圧Vに接続される。このように、本実施形態に係る半導体記憶装置210においては、データの書き込み時には、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M210(例えば、MTJ素子M211及びM212)が並列に接続されることとなる。また、信号線L215と、信号線L216及びL217のそれぞれとのいずれの電位が高いかに応じて、各MTJ素子M210に対して流れる電流の方向(即ち、印可される電圧の方向)が変化する。
【0078】
また、信号線L215は、データの読み出し時に各メモリセルから各MTJ素子M110の状態に応じたデータ(換言すると、各MTJ素子M210の状態に応じた信号)を読み出すための読み出し線として機能する。そのため、信号線L215は、データの読み出し時には、読出回路に接続されたノードN211に接続される。このような構成により、信号線L216及びL217間に電圧が印可されると、信号線L215の電位に応じたレベルの信号が読出回路に出力される。
【0079】
なお、本実施形態に係る半導体記憶装置210において、各メモリセル(即ち、各MTJ素子M210)に対するデータの書き込みに係る制御や、各メモリセルからのデータの読み出しに係る制御については、詳細を別途後述する。また、図11に示す例では、信号線L215が「第1の信号線」の一例に相当し、信号線L216及びL217のそれぞれが「第2の信号線」の一例に相当する。
【0080】
以上、図11を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の構成の一例について、特に、1のビットに相当するデータが記憶されるメモリセルの構成に着目して説明した。
【0081】
<5.2.制御>
続いて、本実施形態に係る半導体記憶装置の制御の一例について、特に、データの書き込み及びデータの読み出しそれぞれに係る制御に着目して説明する。
【0082】
(データの書き込みに係る制御)
まず、図12及び図13を参照して、本実施形態に係る半導体記憶装置210における、データの書き込みに係る制御の一例について説明する。図12及び図13は、本実施形態に係る半導体記憶装置210の制御の一例について説明するための説明図であり、データの書き込み時におけるMTJ素子M210への電圧の印加に係る制御の一例を示している。なお、以降の説明では、便宜上、図12がメモリセルに対してHデータを書き込む場合の一例を示しており、図13がメモリセルに対してLデータを書き込む場合の一例を示しているものとする。また、図12及び図13では、図11に示す半導体記憶装置210のメモリセルを、所謂積層構造により実現する場合における概略的な構成の一例についてもあわせて示している。
【0083】
まず、図12を参照して、メモリセルに対してHデータを書き込む場合の制御の一例について説明する。この場合には、例えば、信号線L215が電源電圧Vに接続され、信号線L216及びL217のそれぞれがグランドGNDに接続される。なお、V>GNDとする。次いで、選択トランジスタT211及びT212がオン状態に制御されることでMTJ素子M211及びM212が選択されると、当該MTJ素子M211及びM212のそれぞれに対して、信号線L215と信号線L217及びL216のそれぞれとの間の電位差に応じた電圧が印可される。このとき、MTJ素子M211及びM212は並列に接続されており、信号線L215から、信号線L217及びL216のそれぞれに向けて、対応するMTJ素子M210及び選択トランジスタT210を介して電流が流れる。具体的には、信号線L215から信号線L217に向けて、MTJ素子M211及び選択トランジスタT211を介して、当該信号線L215と当該信号線L217との間の電位差に応じた電流が流れる。同様に、信号線L215から信号線L216に向けて、MTJ素子M212及び選択トランジスタT212を介して、当該信号線L215と当該信号線L216との間の電位差に応じた電流が流れる。このとき、MTJ素子M211及びM212のそれぞれに印加された電圧が所定の電圧以上(即ち、閾値以上)の場合には、当該MTJ素子M211及びM212に対してある一定以上の電流が流れる。これにより、MTJ素子M211及びM212のそれぞれの状態が、電流が流れた方向(即ち、電圧が印可された方向)に応じて平行状態または反平行状態に遷移する。具体的には、図12に示す例での場合には、MTJ素子M211が反平行状態に遷移して抵抗値がより低くなり、MTJ素子M212が平行状態に遷移して抵抗値がより高くなる。
【0084】
次いで、図13を参照して、メモリセルに対してLデータを書き込む場合の制御の一例について説明する。この場合には、例えば、信号線L215がグランドGNDに接続され、信号線L216及びL217のそれぞれが電源電圧Vに接続される。次いで、選択トランジスタT211及びT212がオン状態に制御されることでMTJ素子M211及びM212が選択されると、当該MTJ素子M211及びM212のそれぞれに対して、信号線L217及びL216のそれぞれと信号線L215との間の電位差に応じた電圧が印可される。このとき、MTJ素子M211及びM212は並列に接続されており、信号線L217及びL216のそれぞれから、信号線L215に向けて、対応するMTJ素子M210及び選択トランジスタT210を介して電流が流れる。具体的には、信号線L217から信号線L215に向けて、選択トランジスタT211及びMTJ素子M211を介して、当該信号線L217と当該信号線L215との間の電位差に応じた電流が流れる。同様に、信号線L216から信号線L215に向けて、選択トランジスタT212及びMTJ素子M212を介して、当該信号線L216と当該信号線L215との間の電位差に応じた電流が流れる。このとき、MTJ素子M211及びM212のそれぞれに印加された電圧が所定の電圧以上(即ち、閾値以上)の場合には、当該MTJ素子M211及びM212に対してある一定以上の電流が流れる。これにより、MTJ素子M211及びM212のそれぞれの状態が、電流が流れた方向(即ち、電圧が印可された方向)に応じて平行状態または反平行状態に遷移する。具体的には、図13に示す例での場合には、MTJ素子M211が平行状態に遷移して抵抗値がより高くなり、MTJ素子M212が反平行状態に遷移して抵抗値がより低くなる。
【0085】
以上のように、図11に示す半導体記憶装置210においては、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M210が互いに異なる状態となるように制御される。即ち、本実施形態に係る半導体記憶装置は、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子のうち少なくとも一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子と異なる状態に遷移するように制御する。このような構成により、本実施形態に係る半導体記憶装置は、外部からの強力な磁界等の外的要因により、MTJ素子M210に保持されたデータが意図せずまたは不正に書き換えられた場合においても、データが書き換えられたことを検出することが可能となる。なお、外的要因によりデータが書き換えられたことを検出するための仕組み(即ち、データの異常を検出するための仕組み)については別途後述する。
【0086】
また、図11に示す半導体記憶装置210においては、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M210が並列となるように、当該メモリセルを構成する素子間の電気的な接続関係を制御する。そのため、本実施形態に係る半導体記憶装置210は、前述した比較例2に係る半導体記憶装置130(図7図10参照)に比べて、データの書き込み時に各MTJ素子M210に対して印可する電圧をより低く抑えることが可能である。具体的な一例として、比較例2に係る半導体記憶装置130のようにMTJ素子を直列に接続して電圧を印可する場合に、各選択トランジスタも含めて2.0V程度の電圧の印加が必要となるものとする。これに対して、当該半導体記憶装置130で使用されているMTJ素子と同様のものを適用して、本実施形態に係る半導体記憶装置210を構成した場合には、印加電圧を1.0V程度まで低減させることが可能である。即ち、本実施形態に係る半導体記憶装置210は、比較例2に係る半導体記憶装置130に比べて、消費電力をより低減することが可能となる。また、より低電圧の微細化半導体プロセスの適用も可能となり半導体記憶装置のサイズ縮小も可能となる。
【0087】
なお、上記では、信号線L215と信号線L216及びL217のそれぞれとのうち、一方をグランドGNDに接続することで、各MTJ素子M210に対して所定の電圧以上の電圧が印可されるように制御している。即ち、上述した例では、グランドGNDを基準電位として、各MTJ素子M210に対して所定の電圧以上の電圧が印可されるように各信号線の接続先を制御している。一方で、各MTJ素子M210に対して所定の電圧以上の電圧が印可されるように、信号線L215と信号線L216及びL217のそれぞれとの電位を制御することが可能であれば、各信号線の接続先は必ずしも上述した例には限定されない。また、データの書き込み時等にMTJ素子M210の状態を遷移させるために、当該MTJ素子M210に対して印可される電圧(即ち、上述した所定の電圧以上の電圧)が、「第1の電圧」の一例に相当する。一方で、データの読み出し時等にMTJ素子M210に対して印可される、当該MTJ素子M210の状態が遷移しない程度の電圧が、「第2の電圧」の一例に相当する。
【0088】
(データの読み出しに係る制御)
続いて、図14を参照して、本実施形態に係る半導体記憶装置210における、データの読み出しに係る制御の一例について説明する。図14は、本実施形態に係る半導体記憶装置210の制御の一例について説明するための説明図であり、MTJ素子M210の状態に応じたデータの読み出しに係る制御の一例について示している。また、図14では、図11に示す半導体記憶装置210のメモリセルを、所謂積層構造により実現する場合における概略的な構成の一例についてもあわせて示している。
【0089】
データの読み出し時には、例えば、信号線L217が電源電圧Vに接続され、信号線L216がグランドGNDに接続される。なお、V>V>GNDとする。次いで、選択トランジスタT211及びT212がオン状態に制御されることでMTJ素子M211及びM212が選択されると、当該MTJ素子M211及びM212に対して、信号線L217及びL216間の電位差に応じた電圧が印可される。即ち、信号線L217から信号線L216に向けて、MTJ素子M211、信号線L215、及びMTJ素子M212を介して電流が流れることとなる。なお、電圧Vについては、MTJ素子M211及びM212それぞれに対して、当該MTJ素子M211及びM212それぞれの状態が遷移しない程度の電流が流れるように設定される。また、信号線L215は、読出回路に接続されたノード(図11に示すノードN211)に接続される。これにより、信号線L215の電位に応じた信号がセンスアンプにより増幅されて、読み出し信号として読出回路に出力される。
【0090】
なお、読み出し信号のレベル(換言すると、信号線L215の電位)は、MTJ素子M211及びM212それぞれの状態に応じて相対的に決定される。即ち、読出回路は、当該読み出し信号のレベルに応じて、読み出しデータがHデータ及びLデータのいずれに相当するかが判定することが可能となる。
【0091】
また、上記では、信号線L216と信号線L217とのうち、一方をグランドGNDに接続することで、各MTJ素子M210に対して、当該MTJ素子M210の状態が遷移しない程度の電圧が印可されるように制御している。一方で、各MTJ素子M210に対して当該MTJ素子M210の状態が遷移しない程度の電圧が印可されるように、信号線L216と信号線L217との電位を制御することが可能であれば、各信号線の接続先は必ずしも上述した例には限定されない。また、上記では、図12に示す制御に応じたメモリセルの状態がHデータに関連付けられ、図13に示す制御に応じたメモリセルの状態がLデータに関連付けられるものとして説明した。一方で、図12及び図13に示す制御に応じた状態それぞれと、各データ(例えば、Hデータ及びLデータ)との間の関連付けは必ずしも上述した例のみには限定されない。即ち、図12に示す制御に応じたメモリセルの状態がLデータに関連付けられ、図13に示す制御に応じたメモリセルの状態がHデータに関連付けられていてもよい。
【0092】
以上、図12図14を参照して、本実施形態に係る半導体記憶装置の制御の一例について、特に、データの書き込み及びデータの読み出しそれぞれに係る制御に着目して説明した。
【0093】
<5.3.データ異常の検出>
本実施形態に係る半導体記憶装置は、外部からの強力な磁界等の外的要因の影響により、メモリセルに保持されたデータ(換言すると、MTJ素子等の記憶素子に保持されたデータ)が意図せずまたは不正に書き換えられた場合に、読み出し信号のレベルに応じてデータの書き換えられたことを検出することが可能である。そこで、図15及び図16を参照して、外的要因によりデータが書き換えられた場合に、当該データが書き換えられたことを検出するための仕組みについて以下に説明する。図15及び図16は、本実施形態に係る半導体記憶装置において、外的要因によりデータが書き換えられたことを検出するための仕組みの一例について説明するための説明図である。
【0094】
例えば、図15は、外部からの強力な磁界の影響により、メモリセルを構成するMTJ素子の状態が遷移した場合の一例について示している。前述したように、本実施形態に記憶装置においては、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子のうち少なくとも一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子と異なる状態に遷移するように制御される。即ち、図11に示す半導体記憶装置210の場合には、例えば、1つのメモリセルを構成するMTJ素子M211及びM212のうち、一方が平行状態となるように制御され、他方が反平行状態となるように制御される。換言すると、図11に示す半導体記憶装置210のように、2つのMTJ素子M210により1つのメモリセルが構成されている場合には、正常にデータが書き込まれている場合には、当該2つのMTJ素子M210それぞれの状態が相補的な関係となる。
【0095】
一方で、図15に示すように、1つのメモリセルを構成する複数のMTJ素子のそれぞれが外部からの強力な磁界にさらされると、当該複数のMTJ素子それぞれに対して同様に磁界がかかることとなる。そのため、この場合には、1つのメモリセルを構成する複数のMTJ素子それぞれが同じ状態に遷移することとなる。
【0096】
例えば、図15の左側に示した図は、外部からの強力な磁界の影響により、1つのメモリセルを構成するMTJ素子M211及びM212それぞれの状態が、反平行状態となった場合の一例を示している。この場合には、MTJ素子M211及びM212の双方がより高い抵抗値を示すこととなる。即ち、MTJ素子M211及びM212は、互いに略等しい抵抗値を示すこととなるため、信号線L215の電位は、信号線L217の電位と信号線L216の電位との間の中間近傍の電位となる。
【0097】
また、図15の右側に示した図は、外部からの強力な磁界の影響により、1つのメモリセルを構成するMTJ素子M211及びM212それぞれの状態が、平行状態となった場合の一例を示している。この場合には、MTJ素子M211及びM212の双方がより低い抵抗値を示すこととなる。即ち、この場合においても、MTJ素子M211及びM212は、互いに略等しい抵抗値を示すこととなるため、信号線L215の電位は、信号線L217の電位と信号線L216の電位との間の中間近傍の電位となる。
【0098】
続いて、図16を参照して、信号線L215を介して出力される読み出し信号のレベルに応じて、外部からの強力な磁界等のような外的要因によりデータが書き換えられたことを検出するための仕組みの一例について説明する。
【0099】
図16の左側の図は、図11を参照して説明した半導体記憶装置210において、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M210(例えば、MTJ素子M211及びM212)を抵抗とみなした場合の、当該メモリセルの概略的な等価回路を示している。具体的には、図16の左側の図において、抵抗R1及びR2が、メモリセルを構成する2つのMTJ素子M210を模式的に示している。即ち、抵抗R1及びR2のそれぞれは、対応するMTJ素子M210の状態が平行状態及び反平行状態のいずれかに応じて、より高い抵抗値とより低い抵抗値とのうちのいずれかを示すこととなる。なお、読み出し信号は、参照符号N11で示された、抵抗R1と抵抗R2との間のノードから読み出されることとなる。また、ノードN11の電位は、抵抗R1及びR2それぞれの抵抗値に応じて決定される。
【0100】
このような構成の基で、メモリセルに対して正常にデータが書き込まれた場合には、抵抗R1及びR2それぞれに相当する各MTJ素子M210が互いに異なる状態に遷移するため、当該抵抗R1及びR2は互いに異なる抵抗値を示すこととなる。そのため、例えば、抵抗R1がより高い抵抗値を示し、抵抗R2がより低い抵抗値を示す場合には、ノードN11の電位は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間の中間の電位よりも高い電位となる。なお、ノードN11は、例えば、図11に示す例における信号線L215に相当する。より具体的な一例として、図11に示す例の場合には、信号線L215の電位が、信号線L216及びL217間の中間の電位よりも高い電位となる。この場合には、読み出し信号のレベルは、電源電圧VDDとグランドGNDとの間に印加される電圧の1/2の電圧に相当するレベルよりも高い値を示す。例えば、図16に示す例では、この場合における読み出し信号のレベルが、「Hデータ」に関連付けられている。
【0101】
これに対して、抵抗R1がより低い抵抗値を示し、抵抗R2がより高い抵抗値を示す場合には、ノードN11の電位は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間の中間の電位よりも低い電位となる。より具体的な一例として、図11に示す例の場合には、信号線L215の電位が、信号線L216及びL217間の中間の電位よりも低い電位となる。この場合には、読み出し信号のレベルは、電源電圧VDDとグランドGNDとの間に印加される電圧の1/2の電圧に相当するレベルよりも低い値を示す。例えば、図16に示す例では、この場合における読み出し信号のレベルが、「Lデータ」に関連付けられている。
【0102】
一方で、図15に示すように、外的要因によりMTJ素子M210の状態が遷移した場合には、抵抗R1及びR2それぞれに相当する各MTJ素子M210が互いに同じ状態に遷移するため、当該抵抗R1及びR2は互いに同じ抵抗値を示すこととなる。なお、抵抗R1及びR2の双方がより高い抵抗値を示す場合と、より低い抵抗値を示す場合とのいずれにおいても、ノードN11の電位は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間の中間近傍の電位となる。より具体的な一例として、図11に示す例の場合には、信号線L215の電位が、信号線L216及びL217間の中間の電位と略等しくなる。この場合には、読み出し信号のレベルは、電源電圧VDDとグランドGNDとの間に印加される電圧の1/2の電圧に相当するレベルと略等しい値を示すこととなる。
【0103】
以上のように、本実施形態に係る半導体記憶装置においては、外部からの強力な磁界等のような外的要因によりデータが書き換えられた場合においても、読み出し信号のレベルに応じて、データが書き換えられたことを検出することが可能となる。また、この場合における読み出し信号のレベルは、抵抗R1及びR2それぞれに対応するMTJ素子M210それぞれの状態に応じて相対的に決定される。そのため、当該読み出し信号のレベルは、読み出し時に参照される素子間のばらつき(例えば、MTJ素子M210の素子ばらつき)の影響がより低減されている(理想的には、当該ばらつきの影響が排除されている)。なお、ノードN11の電位が、電源電圧VDDとグランドGNDとの間の中間の電位よりも高い場合と低い場合については、読み出し信号のレベルと各データ(即ち、Hデータ及びLデータ)との間の関連付けが、上述した例と逆となっていてもよい。即ち、ノードN11の電位が、電源電圧VDDとグランドGNDとの間の中間の電位よりも高い電位の場合がLデータに相当し、当該中間の電位よりも低い電位の場合がHデータに相当してもよい。
【0104】
続いて、図17を参照して、一部のメモリセルのデータが外的要因により書き換えられていることが検出された場合における、本実施形態に係る半導体記憶装置の制御の一例について説明する。図17は、本実施形態に係る半導体記憶装置において、外的要因によりデータが書き換えられたことが検出された場合の制御の一例について説明するための説明図である。なお、図17に示す例では、2つのMTJ素子により1つのメモリセルが構成されているものとする。
【0105】
本実施形態に係る半導体記憶装置は、データの最小単位であるビットそれぞれに対してメモリセル(即ち、当該メモリセルを構成する複数の記憶素子)を割り当てる。具体的には、ビットに関連付けられたアドレス(ソフトウェア上のアドレス)と、各メモリセル(換言すると、当該メモリセルを構成する複数の記憶素子)に関連付けられたアドレス(ハードウェア上のアドレス)と、が対応付けられることで、当該ビットに対して当該メモリセルが割り当てられる。このような構成の基で、本実施形態に係る半導体記憶装置は、一部のビットに割り当てられたメモリセルのデータが外的要因により書き換えられていることを検出した場合には、当該ビットに対して他のメモリセル(例えば、予備のメモリセル)を割り当て直してもよい。
【0106】
例えば、図17の左側に示す例では、各ビットに関連付けられたソフトウェアアドレスと、各メモリセルに関連付けられたハードウェアアドレスと、の間の対応付けの一例を示している。また、図17に示す例では、「抵抗状態」として、各ハードウェアアドレスが関連付けられたメモリセルの状態、即ち、当該メモリセルのデータが書き換えられているか否かを示す状態が示されている。なお、「相補的」として示した状態は、メモリセルを構成する2つのMTJ素子が互いに異なる状態を示している場合に相当し、即ち、データが正常に書き込まれた状態を示している。また、「同状態」として示した状態は、メモリセルを構成する2つのMTJ素子が互いに同じ状態を示している場合に相当し、即ち、外的要因によりデータが書き換えられた状態を示している。
【0107】
より具体的には、図17の左側に示す図では、ソフトウェアアドレス「0001」~「0004」に対して、ハードウェアアドレス「0001」~「0004」がそれぞれ対応付けられている。このような構成の基で、図17の左側に示す図では、ハードウェアアドレス「0002」に関連付けられたメモリセルの抵抗状態が「同状態」となっている。即ち、図17に示す例では、ハードウェアアドレス「0002」に関連付けられたメモリセルのデータが外的要因に書き換えられている。
【0108】
この場合には、半導体記憶装置(読出回路107)は、ハードウェアアドレス「0002」に関連付けられたメモリセルからの読み出し信号に応じて、当該メモリセルのデータが外的要因により書き換えられたことを検出することとなる。そのため、図17に示す例では、右側の図に示すように、半導体記憶装置(制御回路105)は、ソフトウェアアドレス「0002」に対して、上記ハードウェアアドレス「0002」に替えて、正常なメモリセル(例えば、予備のメモリセル)に関連付けられた他のハードウェアアドレス「1001」を改めて対応付けている。
【0109】
以上のような制御により、外的要因によりデータが書き換えられたメモリセル(換言すると、記憶素子)が参照される事態、即ち、書き換えられたデータが使用される事態の発生を防止することが可能となる。
【0110】
以上、図15図17を参照して、外的要因の影響によりメモリセルに保持されたデータが書き換えられたことを検出するための仕組みと、データが書き換えられたメモリセルが参照されないように制御するための仕組みと、についてそれぞれ説明した。
【0111】
<5.4.変形例>
続いて、本実施形態に係る半導体記憶装置の変形例について説明する。
【0112】
前述したように、本実施形態に係る半導体記憶装置は、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子のうち少なくとも一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子と異なる状態に遷移するように制御する。また、このとき本実施形態に係る半導体記憶装置は、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子のうち少なくとも2以上の記憶素子が並列に接続されるように制御したうえで、当該2以上の記憶素子それぞれに対して一定以上の電圧が印可されるように制御する(即ち、一定以上の電流が流れるように制御する)。このような構成の基で、本実施形態に係る半導体記憶装置は、データの読み出し時に、各メモリセルからの読み出し信号のレベルに応じて、当該メモリセルに保持されたデータが外的要因により書き換えられているか否かを判定する。
【0113】
一方で、上述したような構成を実現することが可能であれば、本実施形態に係る半導体記憶装置の構成(特に、メモリセル近傍の構成)は特に限定されない。そこで、本実施形態に係る半導体記憶装置の変形例として、当該半導体記憶装置の構成の他の一例について以下に説明する。
【0114】
例えば、図18は、変形例に係る半導体記憶装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図であり、メモリセル近傍の電気的な接続関係の一例について概略的に示している。
【0115】
図18に示す半導体記憶装置230は、図11を参照して前述した半導体記憶装置210と同様に、2つのMOSトランジスタと2つのMTJ素子とにより1つのメモリセルが構成された、2T-2MTJ構成の半導体記憶装置である。図18において、参照符号M231~M236のそれぞれはMTJ素子を示している。また、参照符号T231~T236のそれぞれは選択トランジスタを示している。なお、以降の説明では、MTJ素子M231~M236を特に区別しない場合には、「MTJ素子M230」と称する場合がある。また、選択トランジスタT231~T236を特に区別しない場合には、「選択トランジスタT230」と称する場合がある。
【0116】
図18に示すように、半導体記憶装置230は、1つメモリセルを構成する素子のうちの一部の素子間の接続関係が、図11を参照して説明した半導体記憶装置210と異なる。具体的には、MTJ素子M231~M236は、図11に示す例におけるMTJ素子M211~M216に相当する。また、選択トランジスタT231~T236は、図11に示す例における選択トランジスタT211~T216に相当する。また、信号線L231~L237は、図11に示す例における信号線L211~L217に相当する。
【0117】
即ち、図18に示す半導体記憶装置230は、MTJ素子M231、M233、及びM235のそれぞれと、選択トランジスタT231、T233、及びT235のそれぞれと、の間の位置関係が、図11に示す半導体記憶装置210とは異なる。具体的な一例として、MTJ素子M231及び選択トランジスタT231の関係に着目すると、半導体記憶装置230では、選択トランジスタT231が、MTJ素子M231と信号線L235との間に介在するように配設されている。これに対して、図11に示す半導体記憶装置210では、選択トランジスタT211が、MTJ素子M211と信号線L217との間に介在するように配設されている。これは、MTJ素子M233及び選択トランジスタT233の関係や、MTJ素子M235及び選択トランジスタT235の関係についても同様である。また、図18に示す例では、信号線L235が「第1の信号線」の一例に相当し、信号線L236及びL237のそれぞれが「第2の信号線」の一例に相当する。
【0118】
続いて、変形例に係る半導体記憶装置の制御の一例について、特に、データの書き込み及びデータの読み出しそれぞれに係る制御に着目して説明する。
【0119】
まず、図19及び図20を参照して、変形例に係る半導体記憶装置230における、データの書き込みに係る制御の一例について説明する。図19及び図20は、変形例に係る半導体記憶装置230の制御の一例について説明するための説明図であり、データの書き込み時におけるMTJ素子M230への電圧の印加に係る制御の一例を示している。なお、以降の説明では、便宜上、図19がメモリセルに対してHデータを書き込む場合の一例を示しており、図13がメモリセルに対してLデータを書き込む場合の一例を示しているものとする。また、図12及び図13では、図11に示す半導体記憶装置230のメモリセルを、所謂積層構造により実現する場合における概略的な構成の一例についてもあわせて示している。
【0120】
まず、図19を参照して、メモリセルに対してHデータを書き込む場合の制御の一例について説明する。この場合には、例えば、信号線L235が電源電圧Vに接続され、信号線L236及びL237のそれぞれがグランドGNDに接続される。なお、V>GNDとする。次いで、選択トランジスタT231及びT232がオン状態に制御されることでMTJ素子M231及びM232が選択されると、当該MTJ素子M231及びM232のそれぞれに対して、信号線L235と信号線L237及びL236のそれぞれとの間の電位差に応じた電圧が印可される。このとき、MTJ素子M231及びM232は並列に接続されており、信号線L235から、信号線L237及びL236のそれぞれに向けて、対応するMTJ素子M230及び選択トランジスタT230を介して電流が流れる。具体的には、信号線L235から信号線L237に向けて、選択トランジスタT231及びMTJ素子M231を介して、当該信号線L235と当該信号線L237との間の電位差に応じた電流が流れる。また、信号線L235から信号線L236に向けて、MTJ素子M232及び選択トランジスタT232を介して、当該信号線L235と当該信号線L236との間の電位差に応じた電流が流れる。このとき、MTJ素子M231及びM232のそれぞれに印加された電圧が所定の電圧以上の場合には、当該MTJ素子M231及びM232に対してある一定以上の電流が流れる。これにより、MTJ素子M231及びM232のそれぞれの状態が、電流が流れた方向(即ち、電圧が印可された方向)に応じて平行状態または反平行状態に遷移する。具体的には、図19に示す例での場合には、MTJ素子M231が反平行状態に遷移して抵抗値がより低くなり、MTJ素子M232が平行状態に遷移して抵抗値がより高くなる。
【0121】
次いで、図20を参照して、メモリセルに対してLデータを書き込む場合の制御の一例について説明する。この場合には、例えば、信号線L235がグランドGNDに接続され、信号線L236及びL237のそれぞれが電源電圧Vに接続される。次いで、選択トランジスタT231及びT232がオン状態に制御されることでMTJ素子M231及びM232が選択されると、当該MTJ素子M231及びM232のそれぞれに対して、信号線L237及びL236のそれぞれと信号線L235との間の電位差に応じた電圧が印可される。このとき、MTJ素子M231及びM232は並列に接続されており、信号線L237及びL236のそれぞれから、信号線L235に向けて、対応するMTJ素子M230及び選択トランジスタT230を介して電流が流れる。具体的には、信号線L237から信号線L235に向けて、MTJ素子M231及び選択トランジスタT231を介して、当該信号線L237と当該信号線L235との間の電位差に応じた電流が流れる。同様に、信号線L236から信号線L235に向けて、選択トランジスタT232及びMTJ素子M232を介して、当該信号線L236と当該信号線L235との間の電位差に応じた電流が流れる。このとき、MTJ素子M231及びM232のそれぞれに印加された電圧が所定の電圧以上の場合には、当該MTJ素子M231及びM232に対してある一定以上の電流が流れる。これにより、MTJ素子M231及びM232のそれぞれの状態が、電流が流れた方向(即ち、電圧が印可された方向)に応じて平行状態または反平行状態に遷移する。具体的には、図20に示す例での場合には、MTJ素子M231が平行状態に遷移して抵抗値がより高くなり、MTJ素子M232が反平行状態に遷移して抵抗値がより低くなる。
【0122】
以上のように、図18に示す半導体記憶装置230においては、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M230が互いに異なる状態となるように制御される。即ち、変形例に係る半導体記憶装置は、前述した実施形態に係る半導体記憶装置と同様に、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子のうち少なくとも一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子と異なる状態に遷移するように制御する。また、このような構成により、変形例に係る半導体記憶装置は、前述した実施形態に係る半導体記憶装置と同様に、外部からの強力な磁界等の外的要因により、MTJ素子M230に保持されたデータが意図せずまたは不正に書き換えられた場合においても、データが書き換えられたことを検出することが可能となる。
【0123】
また、図18に示す半導体記憶装置230においても、図11に示す半導体記憶装置210と同様に、データの書き込み時に、1つのメモリセルを構成する2つのMTJ素子M230が並列となるように、当該メモリセルを構成する素子間の電気的な接続関係を制御する。そのため、変形例に係る半導体記憶装置230は、前述した比較例2に係る半導体記憶装置130(図7図10参照)に比べて、データの書き込み時に各MTJ素子M230に対して印可する電圧をより低く抑えることが可能である。即ち、変形例に係る半導体記憶装置230は、比較例2に係る半導体記憶装置130に比べて、消費電力をより低減することが可能となる。
【0124】
続いて、図21を参照して、変形例に係る半導体記憶装置230における、データの読み出しに係る制御の一例について説明する。図21は、変形例に係る半導体記憶装置230の制御の一例について説明するための説明図であり、MTJ素子M230の状態に応じたデータの読み出しに係る制御の一例について示している。また、図21では、図18に示す半導体記憶装置230のメモリセルを、所謂積層構造により実現する場合における概略的な構成の一例についてもあわせて示している。
【0125】
データの読み出し時には、信号線L237が電源電圧Vに接続され、信号線L236がグランドGNDに接続される。なお、V>V>GNDとする。次いで、選択トランジスタT231及びT232がオン状態に制御されることでMTJ素子M231及びM232が選択されると、当該MTJ素子M231及びM232に対して、信号線L237及びL236間の電位差に応じた電圧が印可される。即ち、信号線L237から信号線L236に向けて、MTJ素子M231、信号線L235、及びMTJ素子M232を介して電流が流れることとなる。なお、電圧Vについては、MTJ素子M231及びM232それぞれに対して、当該MTJ素子M231及びM232それぞれの状態が遷移しない程度の電流が流れるように設定される。また、信号線L235は、読出回路に接続されたノード(図18に示すノードN231)に接続される。これにより、信号線L235の電位に応じた信号がセンスアンプにより増幅されて、読み出し信号として読出回路に出力される。
【0126】
なお、読み出し信号のレベルについては、図11に示す半導体記憶装置210と同様に、MTJ素子M231及びM232それぞれの状態に応じて相対的に決定される。即ち、読出回路は、当該読み出し信号のレベルに応じて、読み出しデータがHデータ及びLデータのいずれに相当するかが判定することが可能となる。
【0127】
また、変形例に係る半導体記憶装置230においても、図15を参照して説明したように、1つのメモリセルを構成する複数のMTJ素子のそれぞれが外部からの強力な磁界にさらされると、当該複数のMTJ素子それぞれに対して同様に磁界がかかることとなる。そのため、変形例に係る半導体記憶装置230は、メモリセルに保持されたデータが外的要因により書き換えられた場合においても、前述した実施形態に係る半導体記憶装置210と同様に、読み出し信号のレベルに応じて、当該データが書き換えられたことを検出することが可能である。
【0128】
以上、図18図21を参照して、変形例に係る半導体記憶装置の構成及び制御の一例について説明した。
【0129】
<5.5.補足>
なお、上記では、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の構成について、メモリセルの構成が2T-2MTJ構成の場合に着目して説明したが、必ずしも、当該半導体記憶装置の構成を限定するものではない。具体的な一例として、当該半導体記憶装置は、1つのメモリセルが3以上の記憶素子により構成されていてもよい。換言すると、当該半導体記憶装置が、nT-nMTJ構成(n≧2)のものであってもよい。なお、この場合には、当該半導体記憶装置は、各メモリセルへのデータの書き込み時に、当該メモリセルを構成する3以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子と異なる状態となるように制御することとなる。また、当該半導体記憶装置は、データの読み出し時においては、上記メモリセルを構成する3以上の記憶素子それぞれが同じ状態の場合には、当該メモリセルに保持されたデータが外的要因の影響により書き換えられたものと認識すればよい。また、上述した2T-2MTJ構成を有する回路群を複数関連付けることで1つのメモリセルを構成することも可能である。具体的な一例として、2T-2MTJ構成を有する2つの回路群を組み合わせることで、4T-4MTJ構成のメモリセルが実現されていてもよい。
【0130】
また、上述した例では、記憶素子として、MTJ素子のような磁気抵抗効果素子を適用する場合の一例について説明したが、当該記憶素子101として適用可能な素子を限定するものではない。具体的な一例として、印加電圧に応じて複数の状態のうちのいずれかに遷移する素子であれば、MTJ素子のような2つの状態を取り得る素子に限らず、3以上の状態を取り得る素子を記憶素子101として適用することも可能である。この場合においても、半導体記憶装置は、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子と異なる状態となるように制御すればよい。また、外的要因の影響によりデータが書き換えられた場合には、1つのメモリセルを構成する複数の記憶素子すべてが同じ状態に遷移するものと推測される。そのため、当該半導体記憶装置は、データの読み出し時においては、上記メモリセルを構成する複数の記憶素子それぞれが同じ状態の場合には、当該メモリセルに保持されたデータが外的要因の影響により書き換えられたものと認識すればよい。
【0131】
<<6.応用例>>
続いて、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の応用例として、当該半導体記憶装置を適用した電子機器の一例について説明する。
【0132】
例えば、図22は、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の応用例について説明するための説明図であり、当該半導体記憶装置をデータの記憶領域として利用した電子機器の機能構成の一例を示している。具体的には、図22は、虹彩認証に利用される撮像装置の機能構成の一例を示したブロック図である。
【0133】
図22に示すように、撮像装置500は、撮像素子501と、判別部503と、認証処理部505と、暗号化処理部507と、記憶部509とを含む。
【0134】
撮像素子501は、撮像範囲内の被写体の画像を撮像し、当該画像(以下、「撮像画像」とも称する)を後段に位置する判別部503に出力する。なお、撮像素子501の撮像範囲内に所望のユーザの眼球が位置する場合には、当該眼球(ひいては、眼球中の虹彩)が被写体として撮像画像中に撮像されることとなる。
【0135】
判別部503は、撮像画像中の被写体の構成要素に基づき、当該被写体が生体か否かを判別する。より具体的な一例として、判別部503は、撮像画像に対して画像解析を施すことで、当該撮像画像中の被写体の特徴を抽出し、当該特徴の抽出結果に基づき、当該撮像画像に被写体として虹彩が撮像されているか否かを判別してもよい。そして、判別部503により撮像画像中に生体(虹彩)が撮像されていると判別された場合には、後段に位置する認証処理部505により、当該撮像画像に基づく認証処理が実行される。
【0136】
認証処理部505は、撮像画像中に被写体として撮像された虹彩を、あらかじめ登録された虹彩パターンの情報と比較することで認証を行う。なお、当該虹彩パターンについては、例えば、記憶部509に保持されている。また、認証処理部505は、上記比較の結果、虹彩パターンが登録されていないことを認識した場合には、撮像画像中に被写体として撮像された虹彩に基づき虹彩パターンを生成し、当該虹彩パターンを記憶部509に登録してもよい。また、認証処理部505は、認証結果を所定の出力先に出力してもよい。例えば、図22に示す例では、認証処理部505は、暗号化処理部507に認証結果を出力している。
【0137】
暗号化処理部507は、各種情報の暗号化や、当該暗号化のための各種情報(例えば、鍵情報や署名情報等)の生成を行う。図22に示す例では、暗号化処理部507は、例えば、認証処理部505による認証結果に基づき、各種情報の暗号化や、当該暗号化のための各種情報の生成を行ってもよい。
【0138】
記憶部509は、撮像装置500内の各構成が各種処理を実行するための各種情報を一時的または恒久的に保持する。また、記憶部509には、上述した認証処理に利用される虹彩パターンの情報が保持されてもよい。記憶部509は、例えば、電源を供給しなくても記憶内容を保持することが可能な不揮発性の記録媒体(例えば、MRAM等)により構成され得る。具体的な一例として、記憶部509として、例えば、上述した本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置が適用されてもよい。これにより、記憶部509に保持された情報が、外部からの強力な磁界等のような外的要因により書き換えられた場合においても、当該情報が書き換えられたことを検出し、書き換えられた情報(例えば、虹彩パターンの情報)が利用されないように制御することも可能となる。
【0139】
なお、上述した例はあくまで一例であり、必ずしも本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の応用先を限定するものではない。即ち、各種情報を一時的または恒久的に保持するような電子機器であれば、当該情報の保持のための記憶装置として、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置を応用することが可能である。このような電子機器の一例としては、情報処理装置、移動体、及びロボット等が挙げられる。より具体的には、情報処理装置としては、例えば、PC、タブレット、及びスマートフォン等が挙げられる。また、移動体としては、例えば、車両及びドローン等が挙げられる。また、ロボットとしては、例えば、自律型のロボット及び工業用ロボット等が挙げられる。特に、情報の記録に対してより高いセキュリティ性が要求される電子機器については、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置との親和性が高い。即ち、このような電子機器に対して本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置が適用されることで、例えば、外的要因の影響により不正に改ざんされた情報やデータが使用される事態の発生を防止し、ひいては不正アクセス等を防止することも可能となる。
【0140】
以上、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置の応用例として、当該半導体記憶装置を適用した電子機器の一例について説明した。
【0141】
<<7.むすび>>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置は、それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の素子と、制御部と、判定部とを備える。制御部は、上記複数の素子に含まれる少なくとも2以上の素子を1のビットとして割り当て、上記ビットごとに、当該ビットに対応する上記2以上の素子それぞれへの電圧の印加を制御する。また、判定部は、上記ビットとして割り当てられた上記2以上の素子のうち一部の素子の状態が他の素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する。また、制御部は、上記ビットへのデータの書き込み時に、当該ビットに対応する上記2以上の素子のうちの一部の素子の状態が、他の素子とは異なる状態となるように制御してもよい。また、制御部は、異常と判定された前記ビットに対して、当該ビットに割り当てられていた前記2以上の素子とは異なる他の2以上の素子を割り当ててもよい。
【0142】
以上のような構成により、本開示の一実施形態に係る半導体記憶装置は、外的要因の影響により記憶素子に保持された情報が意図せずまたは不正に書き換えられる場合においても、当該情報が書き換えられたことを検出することが可能となる。また、当該半導体記憶装置は、当該検出の結果に基づき、情報が書き換えられた記憶素子が割り当てられたビットに対して他の記憶素子を割り当て直すことで、情報が書き換えられた記憶素子が利用される事態(即ち、書き換えられた情報が利用される事態)の発生を防止することも可能となる。
【0143】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0144】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0145】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の記憶素子と、
前記複数の記憶素子に含まれる少なくとも2以上の記憶素子を1のビットとして割り当て、前記ビットごとに、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子それぞれへの電圧の印加を制御する制御部と、
前記ビットとして割り当てられた前記2以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が他の記憶素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の記憶素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する判定部と、
を備える、半導体記憶装置。
(2)
前記制御部は、異常と判定された前記ビットに対して、当該ビットに割り当てられていた前記2以上の記憶素子とは異なる他の2以上の記憶素子を割り当てる、前記(1)に記載の半導体記憶装置。
(3)
前記制御部は、前記ビットごとに設定されたソフトウェア上のアドレスに対して、前記2以上の記憶素子それぞれのハードウェア上のアドレスを関連付けることで、当該ビットに対して当該2以上の記憶素子を割り当てる、前記(2)に記載の半導体記憶装置。
(4)
前記制御部は、前記ビットへのデータの書き込み時に、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの一部の記憶素子の状態が、他の記憶素子とは異なる状態となるように制御する、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
(5)
前記記憶素子は、電圧が印可される方向に応じて互いに異なる状態に遷移する記憶素子であり、
前記制御部は、前記ビットへのデータの書き込み時に、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの少なくとも2つの記憶素子それぞれに対して互いに異なる方向に電圧が印可されるように制御する、
前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
(6)
前記制御部は、
前記ビットへのデータの書き込み時には、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの前記少なくとも2つの記憶素子が並列に接続されるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子のうちの前記少なくとも2つの記憶素子が直列に接続されるように制御する、
前記(5)に記載の半導体記憶装置。
(7)
前記制御部は、
前記複数の記憶素子に含まれる2つの記憶素子を前記ビットとして割り当て、
前記ビットへのデータの書き込み時には、当該ビットに対応する前記2つの記憶素子が並列に接続されるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、当該ビットに対応する前記2つの記憶素子が直列に接続されるように制御する、
前記(6)に記載の半導体記憶装置。
(8)
前記記憶素子は、閾値よりも高い電圧が印可された場合に状態が遷移する記憶素子であり、
前記2つの記憶素子に共通に接続される第1の信号線と、
前記2つの記憶素子それぞれに個別に接続される2つの第2の信号線と、
を備え、
前記制御部は、
前記ビットへのデータの書き込み時には、前記2つの記憶素子それぞれに対して前記閾値よりも高い第1の電圧が印可されるように、前記第1の信号線と、2つの前記第2の信号線それぞれと、の間の電位差を制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、前記2つの記憶素子それぞれに対して前記閾値よりも低い第2の電圧が印可されるように、2つの前記第2の信号線の間の電位差を制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、前記第1の信号線の電位に応じた前記データが読み出される、
前記(7)に記載の半導体記憶装置。
(9)
前記2つの記憶素子それぞれに個別に接続された2つの選択トランジスタを備え、
前記選択トランジスタは、接続された前記記憶素子を介した、前記第1の信号線と前記第2の信号線との間の電気的な接続の有無を選択的に切り替える、
前記(8)に記載の半導体記憶装置。
(10)
前記制御部は、前記ビットに書き込むデータに応じて、前記第1の信号線と、2つの前記第2の信号線のそれぞれと、のうちの一方の電位が他方の電位よりも高くなるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、前記第1の信号線の電位が、2つの前記第2の信号線それぞれの電位の間の中間の電位よりも高い場合と低い場合とで異なる前記データが読み出される、
前記(8)または(9)に記載の半導体記憶装置。
(11)
前記制御部は、
前記ビットへの第1のデータの書き込み時には、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が基準電位となるように制御し、前記第1の信号線の電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットへの第2のデータの書き込み時には、前記第1の信号線の電位が前記基準電位となるように制御し、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも高い場合に前記第1のデータが読み出され、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも低い場合に前記第2のデータが読み出される、
前記(10)に記載の半導体記憶装置。
(12)
前記制御部は、
前記ビットへの第1のデータの書き込み時には、前記第1の信号線の電位が基準電位となるように制御し、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットへの第2のデータの書き込み時には、2つの前記第2の信号線のそれぞれの電位が前記基準電位となるように制御し、前記第1の信号線の電位が前記基準電位よりも高い電位となるように制御し、
前記ビットからのデータの読み出し時には、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも低い場合に前記第1のデータが読み出され、
前記第1の信号線の電位が前記中間の電位よりも高い場合に前記第2のデータが読み出される、
前記(10)に記載の半導体記憶装置。
(13)
前記判定部は、前記第1の信号線の電位が前記中間の電位と略等しい場合には、当該第1の信号線が接続された前記2つの記憶素子が割り当てられた前記ビットが異常であると判定する、前記(10)~(12)のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
(14)
前記記憶素子は磁気トンネル結合素子である、前記(1)~(13)のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
(15)
半導体記憶装置を備え、
当該半導体記憶装置は、
それぞれが印可される電圧に応じて複数の状態のいずれかに遷移する複数の記憶素子と、
前記複数の記憶素子に含まれる少なくとも2以上の記憶素子を1のビットとして割り当て、前記ビットごとに、当該ビットに対応する前記2以上の記憶素子それぞれへの電圧の印加を制御する制御部と、
前記ビットとして割り当てられた前記2以上の記憶素子のうち一部の記憶素子の状態が他の記憶素子の状態と異なる場合に当該ビットが正常であると判定し、当該2以上の記憶素子それぞれの状態が同じ場合に当該ビットが異常であると判定する判定部と、
を備える、
電子機器。
【符号の説明】
【0146】
100 半導体記憶装置
101 記憶素子
103 素子アレイ
105 制御回路
107 読出回路
210 半導体記憶装置
M211~M216 MTJ素子
T211~T216 選択トランジスタ
L211~L217 信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22