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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】尿素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/04 20060101AFI20230515BHJP
   C07C 275/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
C07C273/04
C07C275/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020513226
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2019014847
(87)【国際公開番号】W WO2019198600
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018077244
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】長島 英紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 政志
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192823(WO,A1)
【文献】特開2005-249550(JP,A)
【文献】特開2004-163250(JP,A)
【文献】遅沢 浩一郎,ステンレス鋼の特性と使用上の要点,腐食センターニュース,2009年01月,No.048,p1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素製造プラントにおいてアンモニアと二酸化炭素を含む製造原料から尿素を製造する方法であって、
前記尿素製造プラントが、
二酸化炭素とアンモニアを原料として尿素合成液を生成させるためのリアクターと、
前記リアクターで生成させた尿素合成液を加熱することによって、未反応のアンモニアと未反応の二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離するためのストリッパーと、
前記ストリッパーで得られる前記混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いて低圧スチームを発生させるコンデンサーを含む複数の処理装置と、前記複数の処理装置を接続する複数本のラインを有しているものであり、
前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面がステンレス鋼からなり、前記複数本のラインのうち少なくとも一部がオーステナイト系ステンレス鋼からなるものであり、
下記の制御方法(A)~(C)の三つの制御方法を、前記制御方法(A)、前記制御方法(B)および前記制御方法(C)の順序で実施するとき、
前記制御方法(A)における腐食速度から原料二酸化炭素中の酸素供給量を増加するかどうかを決定し、前記酸素供給量を増加したときは、前記制御方法(B)および前記制御方法(C)は実施せず、前記酸素供給量を増加しなかったときは、前記制御方法(B)に移行し、
前記制御方法(B)に移行したときは、前記制御方法(B)における腐食速度から原料二酸化炭素中の酸素供給量を増加するかどうかを決定し、前記酸素供給量を増加したときは、前記制御方法(C)は実施せず、前記酸素供給量を増加しなかったときは、前記制御方法(C)に移行し、
前記制御方法(C)に移行したときは、前記制御方法(C)における腐食速度から原料二酸化炭素中の酸素供給量を増加するかどうかを決定し、前記酸素供給量を増加したときはそれ以降の実施はなく、前記酸素供給量を増加しなかったときは、制御方法(A)~(C)のそれぞれにおける腐食速度から原料二酸化炭素中の酸素供給量を現状維持するか、または原料二酸化炭素中の酸素供給量を減少させるかを決定する、尿素の製造方法。
(A)前記尿素製造方法において、前記製造原料である二酸化炭素に酸素を加えて供給することで前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面に不動態皮膜を形成させると共に、オーステナイト系ステンレス鋼からなる前記ラインの肉厚を連続的に測定し、前記肉厚の測定値に応じて前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法。
(B)尿素またはアンモニア中に溶存している鉄、クロムまたはニッケルの濃度と運転温度を測定し、前記濃度と前記運転温度の測定値に応じて前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法。
(C)前記複数の処理装置の運転圧力とそれぞれの運転温度、前記原料として導入される二酸化炭素の流量、前記原料二酸化炭素中の酸素量、前記原料として導入されるアンモニアの流量を測定することで、前記複数の処理装置のそれぞれの腐食速度と、前記複数の処理装置を接続する複数のラインの腐食速度を算定して、前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素の製造方法に関する。
背景技術
【0002】
尿素製造プラントでは、アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成する過程において、中間物質として腐食性の強いアンモニウムカーバメイトが生成される。そのため、プラントの種々の処理装置やラインに耐食性が要求される。
【0003】
特許第3987607号公報には、尿素合成方法と尿素合成装置の発明が記載されており、凝縮器、合成塔、ストリッパーに防食用空気を導入することが記載されている(段落番号0028、0046、0055、0070参照)。
【0004】
WO2014/192823には、尿素合成方法の発明が記載されている。尿素合成方法を実施するための尿素合成装置において、尿素合成塔A、ストリッパーB、及び凝縮器C、並びにこれらをつなぐ配管が腐食性を有する流体と接触する箇所のうち、少なくとも一部の箇所を特定組成のオーステナイト-フェライト二相系ステンレス鋼からなるものにすることができること、また配管、バルブなどには腐食環境に応じて、S31603系汎用ステンレス鋼を用いることもできることが記載されている。WO2014/192823では、供給する防食用酸素量を少なくすることができ、イナートガスが減少され、反応収率が向上されることが記載されている(発明の効果)。
発明の概要
【0005】
本発明は、尿素プラントにより尿素を製造する際の前記プラントの処理装置およびラインの腐食を抑制することで尿素の反応収率を高めることができる尿素の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、尿素製造プラントにおいてアンモニアと二酸化炭素を含む製造原料から尿素を製造する方法であって、
前記尿素製造プラントが、リアクター、ストリッパーおよびコンデンサーを含む複数の処理装置および前記複数の処理装置を接続する複数本のラインを有しているものであり、
前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面がステンレス鋼からなり、前記複数本のラインのうち少なくとも一部がオーステナイト系ステンレス鋼からなるものであり、
前記尿素製造方法において、前記製造原料である二酸化炭素に酸素を加えて供給することで前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面に不動態皮膜を形成させると共に、オーステナイト系ステンレス鋼からなる前記ラインの肉厚を連続的に測定し、前記肉厚の測定値に応じて前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する(制御方法(A))、尿素の製造方法を提供する。
【0007】
また本発明は、尿素製造プラントにおいてアンモニアと二酸化炭素を含む製造原料から尿素を製造する方法であって、
前記尿素製造プラントが、リアクター、ストリッパーおよびコンデンサーを含む複数の処理装置および前記複数の処理装置を接続する複数本のラインを有しているものであり、
前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面がステンレス鋼からなり、前記複数本のラインのうち少なくとも一部がオーステナイト系ステンレス鋼からなるものであり、
前記尿素製造方法において、前記製造原料である二酸化炭素に酸素を加えて供給することで前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面に不動態皮膜を形成させると共に、尿素またはアンモニア中に溶存している鉄、クロムまたはニッケルの濃度と運転温度を測定し、前記濃度と前記運転温度の測定値に応じて前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する(制御方法(B))、尿素の製造方法を提供する。
【0008】
さらに本発明は、尿素製造プラントにおいてアンモニアと二酸化炭素を含む製造原料から尿素を製造する方法であって、
前記尿素製造プラントが、
二酸化炭素とアンモニアを原料として尿素合成液を生成させるためのリアクターと、
前記リアクターで生成させた尿素合成液を加熱することによって、アンモニウムカーバメートを分解し、かつアンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離するためのストリッパーと、
前記ストリッパーで得られる前記混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いて低圧スチームを発生させるコンデンサーを含む複数の処理装置と、
前記複数の処理装置を接続する複数本のラインを有しているものであり、
前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面がステンレス鋼からなり、前記複数本のラインのうち少なくとも一部がオーステナイト系ステンレス鋼からなるものであり、
下記の制御方法(A)~(C)のいずれか一つの制御方法、いずれか二つの制御方法、または三つの制御方法を実施する、尿素の製造方法を提供する。
(A)前記尿素製造方法において、前記製造原料である二酸化炭素に酸素を加えて供給することで前記複数の処理装置および前記複数本のラインの内壁面に不動態皮膜を形成させると共に、オーステナイト系ステンレス鋼からなる前記ラインの肉厚を連続的に測定し、前記肉厚の測定値に応じて前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法。
(B)尿素またはアンモニア中に溶存している鉄、クロムまたはニッケルの濃度と運転温度を測定し、前記濃度と前記運転温度の測定値に応じて前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法。
(C)前記複数の処理装置の運転圧力とそれぞれの運転温度、前記原料として導入される二酸化炭素の流量、前記原料二酸化炭素中の酸素量、前記原料として導入されるアンモニアの流量を測定することで、前記複数の処理装置のそれぞれの腐食速度と、前記複数の処理装置を接続する複数のラインの腐食速度を算定して、前記酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法。
【0009】
本発明の尿素の製造方法によれば、尿素の製造過程における尿素製造プラントの処理装置およびラインの腐食を抑制して、尿素の収量を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】尿素製造プラントにおける尿素の製造フローを示す概略図。
図2】尿素製造プラントを使用した尿素製造方法の一実施形態を説明するための図。
図3】実施例1において不動態皮膜層が形成されたパイプと不動態皮膜層が形成されていないパイプの腐食速度の違いを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1により本発明の尿素の製造方法を説明する。図1に示す尿素製造プラントは、本発明の尿素製造方法を実施するための一実施形態であり、これに限定されるものではない。
【0012】
また、図1に示す尿素プラントにおける尿素の製造フロー自体は公知であり、例えば、特許第3987607号公報の図3に示す製造フロー、WO2014/192823の図2に示す製造フローと実質的に同じものである。図1に示すリアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3、熱交換器5、エジェクター6は、それぞれ特許第3987607号公報の図3に示す尿素合成塔A、ストリッパーC、凝縮器B(スクラバーFを含む)、熱交換器D、エジェクターGと同じものである。
【0013】
本発明の尿素の製造方法は、例えば図1に示す尿素製造プラントにおいて尿素を製造する際、特定の測定値に応じて酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御することが一つの特徴であり、具体的な製造手順、反応条件を含む製造方法は特に制限されるものではない。
【0014】
本発明の尿素の製造方法では、例えば、特許第3987607号公報の図3に示す尿素製造プラントを使用した、段落番号0052~段落番号0062、または実施例3に記載された製造方法と同じ製造手順や条件を用いた製造方法、或いはWO2014/192823の段落番号0040~段落番号0048、または段落番号0060に記載された製造方法と同じ製造手順や条件を用いた製造方法により尿素を製造することもできる。
【0015】
図1に示す製造フロー例では、アンモニア供給ライン10からリアクター1の下部にアンモニアを供給し、それと並行して二酸化炭素供給ライン11、11aからリアクター1の下部に二酸化炭素を供給し、リアクター1内部で反応させて尿素を含む気液混合物を得る。リアクター1は、二酸化炭素とアンモニアを原料として尿素合成液を生成させるための装置である。
【0016】
リアクター1は例えば炭素鋼からなるものであり、内壁面に相当する部分には二相系ステンレス鋼からなる内張層が形成されている。このためリアクター1は、超音波肉厚測定器により外部から肉厚を測定することはできない。
【0017】
リアクター1で得られた気液混合物には、尿素、反応中間体であるアンモニウムカーバメート、水、未反応のアンモニアが液相として存在し、一部の未反応アンモニア、未反応の二酸化炭素、イナートガスが気相として存在している。イナートガスは、防食目的で供給された空気(酸素)、原料二酸化炭素中に含まれている水素などの不純物である。
【0018】
リアクター1における反応条件は、上記したとおり、特許第3987607号公報の図3に示す尿素製造プラントを使用した場合と同じにすることができ、例えば圧力は130~250バール(13,000~25,000kPa)、N/C(アンモニアと二酸化炭素のモル比)は3.5~5.0、H/C(水と二酸化炭素のモル比)は1.0以下、滞留時間は10~40分、温度は180~200℃が好ましい。
【0019】
リアクター1に二酸化炭素を供給するとき、圧縮機(二酸化炭素供給ライン11、11aに接続されているが、図示していない)により昇圧すると共に、調整量の酸素を混入させる。前記酸素は、純酸素でもよいし、空気でもよい。空気を使用するときは、エアフィルターなどを介して空気を供給することが好ましい。
【0020】
アンモニアは、アンモニア供給ライン10からリアクター1に供給される途中において、熱交換器5を介して70~90℃程度に予熱された後、エジェクター6によりコンデンサー3から回収されたアンモニアと共にリアクター1に供給される。
【0021】
リアクター1で得られた気液混合物は、気液混合物ライン12からストリッパー2の頂部に送られる。ストリッパー2は、リアクター1で生成させた尿素合成液を加熱することによって、未反応のアンモニアと未反応の二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離するための装置である。
【0022】
ストリッパー2は例えば炭素鋼からなるものであり、内壁面に相当する部分には二相系ステンレス鋼からなる内張層が形成されている。このためストリッパー2は、超音波肉厚測定器により外部から肉厚を測定することはできない。
【0023】
ストリッパー2の下部からは、二酸化炭素供給ライン11、11bから、ストリッピング剤として機能する二酸化炭素ガスが供給される。ストリッパー2は、図示していない加熱装置により加熱され、内部が昇温できるようになっている。
【0024】
ストリッパー2における運転条件は、上記したとおり、特許第3987607号公報の図3に示す尿素製造プラントを使用した場合と同じにすることができ、例えば圧力130~250バール(13,000~25,000kPa)、好ましくは140~200バール(14,000~20,000kPa)、温度160~200℃が好ましい。
【0025】
ストリッパー2では、加熱とストリッピング剤として機能する二酸化炭素の導入によって、気液混合物中のアンモニウムカーバメートはアンモニアと二酸化炭素に分解され、未反応のアンモニア、二酸化炭素、イナートガス、水(水蒸気)の高温混合ガスとして返送ガスライン14からコンデンサー3の底部に送られる。
【0026】
気液混合物中の尿素、分解されなかった微量のアンモニウムカーバメート、分離されなかったアンモニア、二酸化炭素などは、ストリッパー2の底部の尿素回収ライン13から回収される。尿素回収ライン13から回収された尿素は後工程(低圧分解工程)でさらに精製処理されて純度が高められ、残留した微量のアンモニウムカーバメートは分解処理されてアンモニアと二酸化炭素を含む低温のリサイクル液(未反応のアンモニアと二酸化炭素も含む)となり、リサイクルライン17からコンデンサー3の頂部(スクラバー)に吸収媒体として送られる。
【0027】
コンデンサー3は、ストリッパー2で得られる混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いて低圧スチームを発生させるための装置である。コンデンサー3の底部に供給された高温状態の混合ガスに含まれているアンモニアは、冷却されて凝縮された後、エジェクター6による吸引作用によって、ダウンパイプ15から原料アンモニア供給ライン10に送られ、尿素製造原料として再利用される。
【0028】
コンデンサー3の底部に供給された高温状態のイナートガスと同伴する一部のアンモニア、二酸化炭素、水(水蒸気)は、冷却されて低温ガスとして排気ライン16から排出される過程で吸収媒体と接触して、アンモニア、二酸化炭素は吸収除去され、イナートガスは排気ライン16から排出される。
【0029】
コンデンサー3は例えば炭素鋼からなるものであり、内壁面に相当する部分には二相系ステンレス鋼からなる内張層が形成されている。このためコンデンサー3は、超音波肉厚測定器により外部から肉厚を測定することはできない。
【0030】
コンデンサー3内には、冷却水ライン21から冷却水が導入され、内部で熱交換して気化された水蒸気は水蒸気ライン22から採取され、高温の水蒸気として再利用される。コンデンサー3の運転条件は、上記したとおり、特許第3987607号公報の図3に示す尿素製造プラントを使用した場合と同じにすることができ、例えば圧力140~250バール(14,000~25,000kPa)、温度130~250℃(好ましくは170~190℃)であり、N/Cは2.5~3.5、H/Cは1.0以下、滞留時間は10~30分が好ましい。
【0031】
上記した各ラインとしては、オーステナイト系ステンレス鋼(単相)のパイプまたは二相系ステンレス鋼(オーステナイト-フェライト二相系ステンレス鋼)のパイプを使用することができるが、図1に示す尿素プラントの例では、超音波肉厚測定器による肉厚測定部位30~37がある各ラインは、オーステナイト系ステンレス鋼のパイプからなるものである。
【0032】
オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばS31603(316L SS)を使用することができ、二相系ステンレス鋼としては、例えば25Cr系二相ステンレス鋼(S31260)、28Cr系二相ステンレス鋼(S32808:DP28W)を使用することができる。各ラインは、単一材からなるものであるため、超音波肉厚測定器により外部から肉厚を測定することができる。
【0033】
図1に示す尿素製造プラントにおける尿素の製造過程では、アンモニアと二酸化炭素を反応させたときに金属腐食性の大きなアンモニウムカーバメートが副生することによって、リアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3の内壁面を腐食させたり、各ラインの内壁面を腐食させたりすることが知られている。
【0034】
本発明の製造方法では、原料二酸化炭素中に酸素を混入させてステンレス鋼の表面に不動態皮膜を形成させることで、アンモニウムカーバメートとステンレス鋼の接触を抑制し、ステンレス鋼の腐食を抑制している。なお、オーステナイト系ステンレス鋼は、二相系ステンレス鋼と比べると不動態皮膜が形成するためにより多くの酸素が必要となるという性質を持っている。しかし、原料二酸化炭素中の酸素濃度が高すぎると、リアクター1内部とコンデンサー3内部の温度を十分に上昇させることができず、反応速度も大きくできないため、尿素の反応収率が低下し(収量が低下し)、前記酸素濃度が低すぎるとステンレス鋼の腐食が過度に進行することになる。
【0035】
なお、WO2014/192823の図5には、ガス相中の酸素濃度(横軸)と腐食速度(縦軸)の関係が示されており、オーステナイト系ステンレス鋼(S31603)は、25Cr系二相ステンレス鋼(S31260)および28Cr系二相ステンレス鋼(S32808)と比べると不動態皮膜が形成され難いため、酸素濃度が低いと腐食速度が大きくなること、いずれのステンレス鋼も酸素濃度を増加させると不動態皮膜が形成されるため、腐食速度が小さくなることが示されている。
【0036】
本発明の製造方法では、下記の制御方法(A)~(C)のいずれか一つの制御方法、いずれか二つの制御方法、または三つの制御方法を実施することが好ましい。
【0037】
制御方法(A)
制御方法(A)は、尿素製造方法において、製造原料である二酸化炭素に酸素を加えて供給することで複数の処理装置(リアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3を含む)および複数本のラインの内壁面に不動態皮膜を形成させると共に、オーステナイト系ステンレス鋼からなるラインの肉厚を連続的に測定し、肉厚の測定値に応じて酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法である。
【0038】
図1に示す尿素製造プラントの例では、例えば肉厚測定部位30~37における各ラインの運転中の厚さt2を超音波肉厚測定器により連続的に測定することで、次式:s=(t1-t2)/(運転時間)(t1は、運転する前の肉厚測定部位30~37における各ラインの初期厚さを示す)から腐食速度s(mm/year)を求める。
【0039】
各ラインの初期厚さt1は分かっており(測定値または規格値)、各ラインの運転後の厚さt2との差を運転時間で除した値が腐食速度sとなるから、運転中に各ラインの厚さt2を連続的に測定することで腐食速度sの変化を連続的に確認できるようになる。
【0040】
このため、制御方法(A)の例として、腐食速度sが大きくなりすぎたら酸素供給量(空気を使用するときは酸素換算量の空気量)を増加させ、腐食速度sが十分に小さければ酸素供給量を減少させることで、尿素の反応収率の増減幅ができるだけ小さくなるように抑制することができるようになるため、安定した反応収率で尿素を製造できるようになる。
【0041】
図1に示す尿素製造プラントを運転するときの各ラインにおける腐食速度sは、尿素の反応収率との関係からは、0.2mm/year以下に制御されていることが好ましく、0.15mm/year以下に制御されていることがより好ましい。
【0042】
制御方法(B)
制御方法(B)は、尿素またはアンモニア中に溶存している鉄、クロムまたはニッケルの濃度と運転温度を測定し、濃度と運転温度の測定値に応じて酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法である。
【0043】
図1に示す尿素製造プラントの例では、例えばサンプリング位置40~42においてサンプリングをすることができる。サンプリング位置40では、例えば気液混合物ライン12を流れる尿素、反応中間体であるアンモニウムカーバメート、未反応ガス(アンモニアと二酸化炭素)を含む気液混合物をサンプリングし、併せて温度を測定した後、サンプル中の鉄、クロムまたはニッケルの各イオン濃度を測定する。
【0044】
サンプリング位置41では、例えば尿素回収ライン13を流れる尿素、微量のアンモニウムカーバメートなどをサンプリングし、併せて温度を測定した後、サンプル中の鉄、クロムおよびニッケルの各イオン濃度を測定する。
【0045】
サンプリング位置42では、例えばダウンパイプ15を流れるアンモニアを含む液体をサンプリングし、併せて温度を測定した後、サンプル中の鉄、クロムまたはニッケルの各イオン濃度を測定する。
【0046】
測定の結果、サンプル中の鉄、クロムおよびニッケルの各イオン濃度が高いときは、不動態皮膜の形成が不十分で、腐食が進行していることになり、サンプル中の鉄、クロムまたはニッケルの各イオン濃度が低いときは、不動態皮膜の形成が十分で、腐食が進行していないことになる。測定対象となる鉄、クロムまたはニッケルのイオンは、いずれか一つでもよいし、いずれか二つの組み合わせでもよいし、三つ全てでもよい。また測定の結果、サンプリング位置の温度が高いときは、腐食の進行が速くなることになり、サンプリング位置の温度が低いときは、腐食の進行が遅くなることになる。
【0047】
制御方法(B)を実施するときは、尿素製造プラントの複数箇所にてサンプリングし、前記複数のサンプリング箇所の運転温度を測定することが好ましい。サンプリング箇所(温度測定箇所)は特に制限されるものではなく、複数箇所(好ましくは3箇所以上)を選択することができ、例えば、リアクター1の出口側ライン(気液混合物ライン12)、ストリッパー2の出口側ライン(尿素回収ライン13)、コンデンサー3の出口側ライン(ダウンパイプ15)が好ましい。
【0048】
なお、運転温度はそれぞれのサンプリング箇所の近傍のリアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3の機器内部の温度を測定することも好ましい。温度測定は、熱電対や測温抵抗体などの公知の温度計を用いて測定することができる。
【0049】
このため、制御方法(B)として、
鉄、クロムおよびニッケルの濃度が高く、サンプリング位置の温度が高いときは酸素供給量を増加させて不動態皮膜を形成させる(制御方法(B)の第1形態)、
鉄、クロムおよびニッケルの濃度が低く、サンプリング位置の温度が低いときは酸素供給量を減少させる(制御方法(B)の第2形態)、
鉄、クロムおよびニッケルの濃度が高く、サンプリング位置の温度が低いときは酸素供給量を増加させて(但し、第1形態よりも増加量は少なくする)不動態皮膜を形成させる(制御方法(B)の第3形態)、
鉄、クロムおよびニッケルの濃度が低く、サンプリング位置の温度が高いときは酸素供給量を減少(但し、第2形態よりも減少量は少なくする)させる(制御方法(B)の第4形態)のいずれかを実施することで、尿素の反応収率の増減幅を抑制することができるようになるため、安定した反応収率で尿素を製造できるようになる。
【0050】
制御方法(C)
制御方法(C)は、複数の処理装置(リアクター、ストリッパー、コンデンサー)の運転圧力とそれぞれの運転温度、原料として導入される二酸化炭素の流量、原料二酸化炭素中の酸素量、原料として導入されるアンモニアの流量を測定することで、複数の処理装置のそれぞれの腐食速度と、複数の処理装置を接続する複数のラインの腐食速度を算定して、酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御する制御方法である。
【0051】
リアクター1の運転温度は、例えばリアクター1の上部(好ましくは頂部付近)の測定部位(測定器)51、あるいは下部の測定部位(測定器)54において測定することができる。ストリッパー2の運転温度は、例えばストリッパー2の上部(好ましくは頂部付近)の測定部位(測定器)52、あるいは下部の測定部位(測定器)55において測定することができる。コンデンサー3の運転温度は、例えばコンデンサー3の上部(好ましくは頂部付近)の測定部位(測定器)53、あるいは下部の測定部位(測定器)56において測定することができる。
【0052】
リアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3の圧力はほぼ同じである。これらの圧力は例えばライン11bもしくは不図示のコンデンサー3へのアンモニアのインジェクションラインで測定することができる。
【0053】
原料として導入される二酸化炭素の流量は、例えば二酸化炭素供給ライン11、11aにおいて測定することができる。原料二酸化炭素中の酸素量は、リアクター1に二酸化炭素を供給するとき、圧縮機により昇圧すると共に調整量の酸素を混入させるため、例えば圧縮機に導入する空気量から算出することができる。原料として導入されるアンモニアの流量は、例えばアンモニア供給ライン10において測定することができる。
【0054】
リアクター1、ストリッパー2およびコンデンサー3のそれぞれの腐食速度、リアクター1、ストリッパー2およびコンデンサー3を接続する複数のライン(気液混合物ライン12、返送ガスライン14、ダウンパイプ15)の腐食速度は、上記の測定データである、運転温度、運転圧力、二酸化炭素の流量、二酸化炭素中の酸素濃度、アンモニアの流量から、次のようにして求めることができる。(A)の制御方法における測定データと腐食速度の関係をベースとして、運転温度が高くなるほど腐食速度が大きくなること、アンモニウムカーバメート濃度が高くなるほど腐食速度が大きくなること、二酸化炭素中の酸素濃度が高くなるほど腐食速度が小さくなることを考慮して求めることができる。
【0055】
本発明の尿素の製造方法のさらに好ましい実施形態を図2により説明する。図2に示す実施形態は、制御方法(A)、制御方法(B)および制御方法(C)をこの順序で実施する。
【0056】
段階(1)において、例えば図1に示す製造フローにより尿素の製造を開始する。尿素の製造開始後、酸素の供給量を調整することで腐食速度と尿素の反応収率を制御するための制御方法(A)~(C)を実施する。
【0057】
段階(2)では、制御方法(A)により原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加するか、またはそのまま維持するかを決定する。制御方法(A)において求めた腐食速度が許容値以内であるときは(Yes)、段階(3)に移行する。制御方法(A)において求めた腐食速度が許容値を超えているときは(No)、防食効果を高めるために段階(5)に移行して、原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加した状態で尿素の製造を継続する。段階(2)において段階(5)に移行して原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加させたときは、段階(3)以降は実施しない。
【0058】
段階(3)では、制御方法(B)により原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加するか、またはそのまま維持するかを決定する。制御方法(B)において求めた腐食速度が許容値以内であるときは(Yes)、段階(4)に移行する。制御方法(B)において求めた腐食速度が許容値を超えているときは(No)、防食効果を高めるために段階(5)に移行して、原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加した状態で尿素の製造を継続する。段階(3)において段階(5)に移行して原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加させたときは、段階(4)以降は実施しない。
【0059】
段階(4)では、制御方法(C)により原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加するか、またはそのまま維持するかを決定する。制御方法(C)において求めた腐食速度が許容値以内であるときは(Yes)、段階(5)に移行する。制御方法(C)において求めた腐食速度が許容値を超えているときは(No)、防食効果を高めるために段階(5)に移行して、原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加した状態で尿素の製造を継続する。段階(4)において段階(5)に移行して原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を増加させたときは、段階(6)以降は実施しない。
【0060】
段階(6)では、制御方法(A)~(C)を総合的に評価して、原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を減少するか、またはそのまま維持するかを決定する。制御方法(A)~(C)において求めた腐食速度の内、いずれかの腐食速度が許容値以下であるが、許容値に近接する数値であるときは(例えば、腐食速度の許容値の95%を超えている場合)、段階(7)に移行して、原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量をそのまま維持する。制御方法(A)~(C)において求めた腐食速度がいずれも許容値を大きく下回っているときは(例えば、腐食速度の許容値の95%以下である場合)、段階(8)に移行して、原料二酸化炭素中の空気(酸素)の供給量を減少させる。
【0061】
本発明は、上記した各実施形態のほか、次の実施形態も含むものである。
【0062】
図1に示す例の尿素製造プラントにおけるリアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3などの処理装置は、炭素鋼からなり、内壁面に相当する部分には二相系ステンレス鋼からなる内張層が形成されているものであるため、超音波肉厚測定器により外部から肉厚を測定することはできない。また、リアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3などの処理装置は、運転中は高温および高圧状態であり、内部を観察することもできないため、尿素製造プラントの運転中においては前記処理装置の腐食状態を直接確認することはできない。一方、図1に示す各ラインは、単一材のステンレス鋼からなるものであるため、超音波肉厚測定器により外部から肉厚を測定することができるため、腐食状態を確認することができる。
【0063】
このため、図1に示す尿素製造プラントの運転中において、運転時におけるリアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3などの処理装置の温度、圧力、運転時間などの運転データを取得し、それらのデータの取得に併せて各ラインの肉厚(肉厚測定部位30~37の肉厚)を測定して、関連データとして蓄積しておくことができる。さらに定期的に図1に示す尿素製造プラントの運転を停止して、リアクター1、ストリッパー2、コンデンサー3などの処理装置内部の二相系ステンレス鋼からなる内張層の腐食状態を観察してデータとして蓄積しておくことができる。
【0064】
各処理装置の温度、圧力、運転時間などの運転データ、各ラインの肉厚データ、および各処理装置の腐食状態の観察データを対比評価することで、各ラインの肉厚データから各処理装置内部の腐食状態を推定することができるようになる。このようにすることで、尿素製造プラントを連続的に運転した状態のまま、各ラインの肉厚の変化データから各処理装置内部の腐食状態を推定することができるため、尿素製造プラントの運転を停止することなく、各処理装置の交換時期やメンテナンス時期を確認することができるようになり、安定した尿素製造運転ができるようになる。
【0065】
なお、この実施形態は、上記した制御方法(A)および制御方法(B)のように酸素供給量(空気を使用するときは酸素換算量の空気量)を増減させるのではなく、尿素の製造原料中に一定量の酸素(空気を使用するときは酸素換算量の空気)を導入した状態で尿素を製造する場合に適しているが、上記した制御方法(A)および制御方法(B)の一方または両方と組み合わせて実施することもできる。
実施例
【0066】
実施例1
オートクレーブ内にて合成した尿素液中にステンレス鋼(28Cr系二相ステンレス鋼;S32808、オーステナイト系ステンレス鋼;S31603)製の試験片をそれぞれ浸漬した。この状態で、オートクレーブに徐々に酸素を導入して、試験片に不動態皮膜が形成された時(Passive Corrosion)の酸素量を測定した。試験温度は、195℃で実施した。結果を図3に示す。
【0067】
図3から明らかなとおり、S31603に不動態皮膜を形成させた場合(Passive Corrosion)では、腐食部分は0.1mmとごく僅かであったが、不動態皮膜の形成が不十分な場合(Active Corrosion)の腐食部分は10mmを大きく超えていた。なお、S32808は、S31603と比べ、不働態皮膜の形成に必要となる酸素量が小さいことが、同実験を通じて確認できた。
【0068】
この結果から、本発明の尿素の製造方法において、図1に示す尿素プラントを構成する複数の処理装置および複数本のラインの内壁面に不動態皮膜を形成させると共に、尿素またはアンモニア中に溶存している鉄、クロムおよびニッケルの濃度と運転温度を測定し、前記濃度と前記運転温度の測定値に応じて酸素の供給量を調整することで腐食速度を制御できることが確認された。さらに尿素の製造過程において、酸素量(空気量)が多いと尿素の反応収率が低下することは周知の事実であるから、前記酸素の供給量を調整して腐食速度を制御することと併せて、尿素の反応収率も制御できることが確認された。
【0069】
実施例2
図1に示す尿素製造プラントの製造フローにより尿素を製造する過程において、下記の制御方法(A)、(B)および(C)を実施した。
【0070】
制御方法(A)
尿素の製造運転開始から60日後において、ストリッパー2とコンデンサー3をつなぐ、S31603系汎用ステンレス鋼(オーステナイト系ステンレス鋼)からなる返送ガスライン14(初期肉厚23.01mm)の肉厚(肉厚測定部位35)を超音波肉厚計(GEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社の超音波厚さ計、小型・シンプル操作・高性能 超音波厚さ計DM5Eシリーズ)にて測定した。前記測定肉厚と初期肉厚の差と経過時間から求められる腐食速度は0.12mm/yearであった。運転開始から測定時点の間における原料二酸化炭素中に供給された酸素濃度は5500ppm、運転温度(平均値)は183℃であった。
【0071】
得られた腐食速度から、返送ガスライン14の内壁面には、不働態皮膜が形成されていると判断した。これは図2に示す実施形態において、段階(2)が「Yes」であることを示すから、段階(3)に移行する。
【0072】
制御方法(B)
ストリッパー2の出口(サンプリング位置41)における溶液中の鉄濃度は0.8ppm、その時の運転温度は171℃であった。得られた鉄の濃度から、サンプリング位置41よりも上流に位置する、リアクター1、気液混合物ライン12、ストリッパー2のそれぞれの内壁面には、不働態皮膜が形成されていると判断した。これは図2に示す実施形態において、段階(3)が「Yes」であることを示すから、段階(4)に移行する。
【0073】
制御方法(C)
測定部位51~53の運転温度と運転圧力は、次のとおりであった。
測定部位51:温度186℃、圧力151kg/cm
測定部位52:温度188℃、圧力151kg/cm
測定部位53:温度180℃、圧力151kg/cm
【0074】
二酸化炭素の流量(二酸化炭素供給ライン11、11aにおいて測定)は、45000Nm/hであった。原料二酸化炭素中の酸素量は250Nm/hであった(圧縮機に導入する空気量から算出)。アンモニアの流量(アンモニア供給ライン10にて測定)は69t/hであった。以上の測定結果と制御方法(A)における腐食速度を含むデータから、各装置および各ラインの腐食速度を以下のように算出した。
【0075】
(i)コンデンサー3(内壁面がS31603系汎用ステンレス鋼):0.09mm/year、温度(180℃)
(ii)ストリッパー2(内壁面が二相系ステンレス鋼):0.10mm/year、温度(188℃)
(iii)リアクター1(内壁面がS31603系汎用ステンレス鋼):0.14mm/year、温度(186℃)
(iv)ストリッパー2からコンデンサー3への返送ガスライン14(内壁面がS31603系汎用ステンレス鋼):0.16mm/year、温度(188℃)
(v)コンデンサー3からリアクター1へのダウンパイプ15(内壁面がS31603系汎用ステンレス鋼):0.09mm/year、温度(180℃)
(vi)リアクター1からストリッパー2への気液混合物ライン12(内壁面がS31603系汎用ステンレス鋼):0.14mm/year、温度(186℃)
(i)~(vi)では、いずれの場合も原料二酸化炭素中に供給された酸素濃度は5525ppmであり、得られた腐食速度から、各機器の内壁面、各ラインの内壁面には不働態皮膜が形成されていると判断された。これは図2に示す実施形態において、段階(4)が「Yes」であることを示すから、段階(6)に移行する。その結果、腐食速度が許容値未満であり酸素量を減らせると判断し、原料二酸化炭素中の酸素濃度を4500ppmまで減少させた(図2に示す段階(6)→段階(8))。
産業上の利用可能性
【0076】
本発明の尿素の製造方法は、公知の尿素製造プラントを使用して、尿素を製造する際の前記プラント寿命を延長しながら、反応収率良く尿素を製造することができるため、プラントの運転コストおよび尿素の製造コストを低下できる製造方法として利用することができる。
符号の説明
【0077】
1 リアクター
2 ストリッパー
3 コンデンサー
5 熱交換器
6 エジェクター
30~37 肉厚測定部位
40~42 サンプリング位置
51~56 温度測定部位
図1
図2
図3