(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂成形用薄膜材料及びその応用
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20230515BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20230515BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230515BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20230515BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20230515BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/36 102
B32B27/32 Z
B32B27/30 A
B32B27/34
B32B27/30 D
B32B27/38
B32B27/36 101
B32B27/42
B32B27/00 101
F03D1/06
F03D80/00
(21)【出願番号】P 2020535249
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2018122071
(87)【国際公開番号】W WO2019128802
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】201711443440.4
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810376967.8
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811207089.3
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516120825
【氏名又は名称】東麗先端材料研究開発(中国)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】桂宗彦
(72)【発明者】
【氏名】蘇海暉
(72)【発明者】
【氏名】趙天心
(72)【発明者】
【氏名】蒋▲シン▼楠
(72)【発明者】
【氏名】荒井崇
(72)【発明者】
【氏名】鄭▲ミィァォ▼
(72)【発明者】
【氏名】長田俊一
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040815(JP,A)
【文献】特開2010-274646(JP,A)
【文献】特開2012-218392(JP,A)
【文献】特開2011-088421(JP,A)
【文献】特開2014-224882(JP,A)
【文献】特開2013-189549(JP,A)
【文献】特表2008-507430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/022
B32B 27/36
B32B 27/40
B32B 27/32
B32B 27/30
B32B 27/34
B32B 27/38
B32B 27/42
B32B 27/00
F03D 1/06
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が少なくとも第1層と第2層とを含み、且つ23℃のとき、前記第1層と前記第2層との間に剥離強度が0.02~30N/cmである界面が存在
し、
前記第1層の一方側には前記第2層が設けられ、他方側には粘着層が設けられる、
ことを特徴とする熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項2】
前記第1層は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、又はフッ素樹脂のうちの一種類又は複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項3】
前記第2層は、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又はフッ素樹脂のうちの一種類又は複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、又はフラン樹脂のうちの一種類又は複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項5】
前記第2層の23℃の場合のエポキシ樹脂の結合力は6MPa以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項6】
前記第2層は、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、又はアミノ基の化合物のうちの一種類又は複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項7】
赤外分光法を用いて第2層の外面に対し測定を行う場合、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は120℃で10分間加熱された後、加熱前に比べて、イソシアネート基の含有量が5~20%増加した、
ことを特徴とする請求項6に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項8】
前記第2層の透過率は20%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項9】
前記第2層と熱硬化性樹脂との色差ΔEは0.5以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項10】
前記第2層は着色剤を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項11】
前記第1層の少なくとも1つの表面の表面張力は40mN/m以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項12】
第3層をさらに含み、前記第3層の少なくとも1つの表面の表面張力は40mN/m以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項13】
前記第3層は、ケイ素及び/又はフッ素を含む化合物のうちの一種類又は複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項14】
前記第2層の厚さは、25~250μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項15】
触針式粗さ輪郭測定機(厦門金河源科技有限公司、TR200)を用い、試験速度を0.5mm/sに設定し、3か所の異なる位置の表面粗さを測定し、3回の試験結果の算術平均を取ることによって得られた、前記第2層の外面の粗さは、0.5μmより大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項16】
触針式粗さ輪郭測定機(厦門金河源科技有限公司、TR200)を用い、試験速度を0.5mm/sに設定し、3か所の異なる位置の表面粗さを測定し、3回の試験結果の算術平均を取ることによって得られた、前記第2層の内面の粗さは、0.1μmより大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項17】
前記粘着層は、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又は有機シリコーン樹脂のうちの一種類又は複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項
1に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項18】
前記熱硬化性樹脂において無機物をさらに含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料。
【請求項19】
請求項1から請求項
18のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の風力発電機の羽根の成形における応用。
【請求項20】
請求項1から請求項
18のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を用いて製造した風力発電機の羽根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料分野に属し、熱硬化性樹脂成形用薄膜材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂とは、一定の温度、圧力又は紫外線照射等の条件において、化学反応を生じ、硬化成形して、架橋ネットワーク構造を形成する樹脂である。熱硬化性樹脂は、人々の生産、生活と密接に関連しており、デザインや利用ニーズに従って、複数種類の形状に加工できる。例えば、エポキシ樹脂は車の内装、フレーム、ドア内外のシェル等の各種形状の板材に用いられる。
【0003】
高分子材料の1つとして、熱硬化性樹脂は一般的に高い機械的強度に対するニーズを満たし難いため、無機材料と複合する方法を用いる必要があり、これにより材料の軽量化、成形しやすい特徴を確保しつつ、材料の機械性能を確保することができる。最も普遍的なものは、ガラス繊維、炭素繊維と複合されたものであり、これにより材料の耐衝撃性を強化できる。
【0004】
熱硬化性樹脂又はその複合材料に関わらず、いずれも常套の真空注型プロセスを用いることができ、熱硬化性樹脂及び硬化剤等の原料を設定された金型内に真空注入して加熱し、硬化成形後に金型から離型させる。成形品の寸法精度を保証するため、具体的な実施工程において、樹脂自身の性能及び金型表面の状態、加工条件に対して、一定の要求がある。
【0005】
大型の成形体の1つとしての風力発電機の羽根は、構造が一般的に複雑であり、機械性能に対する要求が高く、且つ技術革新に伴い、羽根の大型化が必然的な趨勢となっており、羽根の形状及び寸法の精度に対してより高い要求が求められている。羽根の成形プロセスは基本的に上記の真空注型が用いられるが、その技術上の難点は、1.いかに効果的に離型し、金型を繰り返し使用した後、寸法上の精度の維持を確保するかという点と、2.いかに羽根の表面を効果的に処理するとともに、後続の塗装プロセスでの粉塵及び溶剤の発生を避けるかという点と、に集中している。
【0006】
従来技術において、上記の問題点1について、通常、金型内の表面に離型剤を塗布する方法を用いて離型し、有機溶剤の揮発後に、金型内の表面に離型剤層が形成されることで、硬化後の熱硬化性樹脂と金型とを簡単に分離させることができる。しかしながら、上記離型剤層は、3~4回繰り返し使用されると、離型剤の一部が熱硬化性樹脂の成形品の表面に付着するため、失われた離型剤の一部について補修する必要があり、何度も補修すると金型内面が摩耗し、成形品の羽根の表面の精度が低下することで、後々羽根に対して形状の修正が必要になり、作業時間が増加していた。金型内面の摩耗は、金型の寿命も大幅に短くしてしまう。上記の問題を改善するために、従来技術として、液体離型塗装層を代替可能なテープが挙げられ、その基材はポリテトラフルオロエチレンが塗布されたグラスファイバークロスであり、ポリテトラフルオロエチレンと反対の表面にはシリコーンが塗布されている。当該テープは金型内面に貼付可能で複数回繰り返して使用でき、羽根の製造プロセスにおいてエッジシール、コーキング等の作業に用いられる。しかしながら、ガラス繊維の破断伸び率が低いという制限を受け、当該テープは現在、局所又は曲率が大きくない成形部分にしか応用することができず、このようなテープの実用が大きく制限されている。中国特許出願公開文献CN106068550A(出願番号CN201580012256.7)では、成形後に金型から外れやすい離型膜が提示されており、この薄膜を用いてある程度、金型内面を保護し、金型内面の摩耗を減少できる。しかしながら、この薄膜は塗装層が設けられておらず、熱硬化性樹脂の成形後、成形品表面の研磨及び塗装を行う必要があり、作業時間を短縮することはできず、且つ研磨及び塗装により大量の粉塵及び溶剤が発生し、作業者の健康にも良くない。
【0007】
従来技術において、上記の問題点2について、後段の塗装過程の準備作業(羽根の形状の修正、羽根の粗面化、下塗り)は一般的に人により実施され、精度が確保し難いため、研磨効率が比較的低い。また、研磨による大量の粉塵、下塗りにより生じる大量の有機溶剤は、いずれも作業員の健康に不利益を生じる。上記の問題を改善するため、従来技術として、ロボット研磨ラインが提案されており、研磨効率をある程度向上させることができるが、当該技術も粉塵、有機溶剤の大量発生という欠点を克服できていない。従来技術として、中国特許出願公開文献CN101905622A(出願番号:CN200910052388.9)において、塗装層転移可能な薄膜が提示されており、その層構造は順に支持層、離型層、印刷層、塗装層及び粘着層であり、当該薄膜を用いて印刷層、塗装層、粘着層を壁面に転移させ、装飾効果を奏することができる。この薄膜の使用条件は熱硬化性樹脂の成形条件と異なり、熱硬化性樹脂成形時の高温の要求には応用できず、装飾層のエポキシ樹脂結合力は風力発電の羽根表面の塗装層に必要な結合力の要求に達することができないため、熱硬化性樹脂の成形プロセスには応用できない。また、中国特許出願公開文献CN101631674A(CN200880007651.6)では、転写装飾片用薄膜が提示されており、その層構造は順に基材フィルム、離型層、剥離層、絵柄層、粘着層、転写層、転写装飾片であり、成形、離型プロセス後、基材フィルムを剥離、除去し、樹脂成形体の表面において装飾層等の転写層を残すことができる。しかしながら、このような薄膜は熱可塑性樹脂の射出成形プロセスに用いられ、熱硬化性樹脂の成形プロセスとの違いが大きく、熱硬化性樹脂の成形プロセスの条件において、転写層は熱硬化性樹脂の表面に転移することができず、又は成形前に基材フィルムから抜け落ち、金型に設置することができないため、このような転写装飾片用薄膜は熱硬化性樹脂の成形プロセスに応用できない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、熱硬化性樹脂成形用(特に風力発電機の羽根の成形用)の薄膜材料を提供し、操作しやすく、取り除きやすく、金型内面の寸法精度を損なわず、且つ熱硬化性樹脂の成形プロセス後に薄膜材料の機能層が熱硬化性樹脂の表面に転移し、その機能性を付与することができるという特徴を有することにより、液体離型剤を用いることによる有機溶剤の揮発、後段の成形体表面の研磨により生じる粉塵及び研磨の難易度が高いこと、金型の複数回の使用後に設計精度を維持し難い等の問題を改善できる。特に離型後に、樹脂表面に修飾される機能層(本文において後述する第2層)が下塗りとして存在するとき、表面粗さの処理及び下塗り塗料の使用を省いて、工程の減少、作業時間の節約ができるとともに、仕上げ塗装と熱硬化性樹脂とが十分な接着力を有することを確保できる。
【0009】
具体的に、本発明は薄膜が少なくとも第1層と第2層とを含み、且つ23℃のとき、前記第1層と前記第2層との間に剥離強度が0.02~30N/cmである界面が存在する熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を提供する。
【0010】
前記第1層の主な機能は、熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の基材であり、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料に十分な機械的強度、操作可能性、施工可能性を提供することである。
【0011】
第2層の全部又は一部が前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料から外れて熱硬化性樹脂成型品に転移できることを考慮するため、23℃のとき、第2層と第1層との間に剥離強度が0.02~30N/cmの界面が存在することが好ましい。23℃のときの剥離強度が30N/cmより大きければ、第2層が熱硬化性樹脂に転移できない現象が生じ、0.02N/cmより小さければ、第2層を第1層の表面に安定して貼り付けることができない。
さらに、23℃のとき、第2層と第1層との間に、剥離強度が0.1~15N/cmの界面が存在することが好ましい。
【0012】
さらに、前記第1層は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、又はフッ素樹脂のうちの一種類又は複数種類を含む。
【0013】
前記ポリエステル樹脂とは、主鎖においてエステル結合を含むヘテロ鎖ポリマーを指す。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレントリメリテート、ポリブチレントリメセート、エチルパラベン、テレフタル酸ネオペンチル、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、ポリブチロラクトン等の化学構造又は上記の化学構造と他の化学構造とで形成される共重合体が挙げられる。
【0014】
ポリウレタン樹脂とは、主鎖においてウレタン結合を含む高分子化合物を指す。通常、ポリウレタン樹脂はポリオール及びイソシアネートの反応により作成できる。ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジヒドロキシポリオキシプロピレンエーテル、トリヒドロキシポリオキシプロピレンエーテル、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、又はジヒドロキシポリテトラヒドロフランオキシプロピルエーテル等の複数のヒドロキシ基を含む化学構造が挙げられる。イソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの物質は単独で用いられても、複数種類が併用されてもよい。
【0015】
ポリカーボネート樹脂とは、主鎖において炭酸エステル結合を含む高分子樹脂を指す。ポリカーボネート樹脂は、炭酸ジエステルによりエステル交換を行う、又はホスゲン法により合成される。ここで、炭酸ジエステルは、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジルに代表される置換炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、又は炭酸ジ-tert-ブチル等が挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で用いられても、複数種類が併用されてもよい。具体的に、ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ポリクロロカーボネート、ジアリルジグリコールカーボネート等の化学構造又は上記の化学構造と他の化学構造とで形成される共重合体等が挙げられる。
【0016】
ポリオレフィン樹脂とは、1種類又は複数種類のオレフィン重合、又は共重合により得られる樹脂を指し、オレフィンはエチレン、アクリル、ブテン、ペンテン、又はノルボルネン等が挙げられる。具体的に、ポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリノルボルネン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の化学構造又は上記の化学構造と他の化学構造とで形成される共重合体等が挙げられる。
【0017】
アクリル樹脂は、アクリレート、メタクリレート、及びスチレン等のビニル基類を主なモノマーとして合成される共重合体である。前記モノマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エチル、N-ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、ラウリルメタクリレート、N-オクチルメタクリレート、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アセト酢酸エチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム等の化学構造又は上記の化学構造と他の化学構造とで形成される共重合体等が挙げられる。
【0018】
ポリイミド樹脂は、主鎖においてイミド結合を含むポリマーであり、縮合型芳香族ポリイミド、付加型ポリイミドが挙げられる。具体的には、ポリピロメリットイミド、ビスマレイミド、PMRポリイミド、アセチレン末端ポリイミド等の化学構造又は上記の化学構造と他の化学構造とで形成される共重合体等が挙げられる。
【0019】
ポリアミド樹脂は、ナイロンとも呼ばれ、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、又はナイロン1010等が挙げられる。
アラミド樹脂、すなわち芳香族ポリアミドは、パラアラミド、メタアラミド、又はその共重合体を含む。
【0020】
フッ素樹脂とは、分子構造においてフッ素原子を含むポリマーを指し、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリパーフルオロ化イソプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の化学構造又は上記の化学構造と他の化学構造とで形成される共重合体等が挙げられる。
【0021】
具体的に、前記第1層はポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレンの共重合体又は混合物のうちの一種類又は複数種類を含んでも良い。
前記第1層の厚さは特別な制限はなく、設置のしやすさを考慮すると、10~200μmであってよく、好ましくは20~100μmであってよい。
【0022】
前記第1層は、公知の方法により作成され、例えば、圧延法、キャスティング法、ブロー成形法、又は延伸法等のプロセスにより作成される。圧延法とは、熱可塑性プラスチックを一連の加熱を行うカレンダーロールにより、薄膜又は薄板材に連続して成形する成形方法を指す。キャスティング法とは、樹脂を押出機で溶融して可塑化し、スリッターの押し出し口により押し出し、溶融樹脂を冷却ロールに密着させた後、引き伸ばし、トリミング、巻き取り等の工程を経て薄膜を形成するプロセスを指す。ブロー成形法とは、樹脂を流体圧力により、密閉金型においてブローし、中空製品とするプロセスを指す。延伸法とは、薄膜材料の融点より低く、薄膜材料のガラス転移温度より高い温度条件において、膜を縦方向又は横方向に引き伸ばし、或いは縦横双方向に引き伸ばした後、引っ張った状態で適切に冷却する成膜プロセスを指す。
【0023】
前記第2層は機能層であり、熱硬化性樹脂の成形プロセスにおいて、前記第2層は全部又は一部が前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料から離脱し、熱硬化性樹脂の成形品に転移することで、有益な効果を奏することができる。前記有益な効果は、例えば耐熱性、耐光性、耐紫外線、難燃性、耐腐食性、耐溶剤性、耐水性、耐老化性、耐燃料油性、耐油、耐摩耗性、耐衝撃性又は装飾性等の効果が挙げられる。必要に応じて、転移後の第2層の外側には追加の隣接層をさらに増やすことができ、この場合、第2層は熱硬化性樹脂と追加の隣接層とを接着する目的を達成できる。
【0024】
さらに、第2層が一定の機能性を必要とすることを考慮すると、前記第2層はポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又はフッ素樹脂のうちの一種類又は複数種類を含むことが好ましい。
【0025】
具体的に、前記第2層において含まれる物質として、以下が挙げられる。ポリウレタン樹脂類として、上海麦加塗料有限公司製のWU210A/Bシリーズ、WU233A/Bシリーズ、パン貝捷塗料(上海)有限公司製のLT2552/LW7260シリーズ、鴻澤天誠科貿有限公司製の881-FYDM-A/Bシリーズ等のポリマー又は塗料の硬化物が挙げられる。エポキシ樹脂類として、パン貝捷塗料(上海)有限公司製のLP149シリーズ、アクゾノーベル社製の670HS-A/Bシリーズ、双獅塗料有限公司製のEM400-A/Bシリーズというポリマー又は塗料の硬化物が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂類として、三化化工塗料有限公司製の191シリーズ、青衣化工物資有限公司製のTS-817シリーズ等のポリマー又は塗料の硬化物が挙げられる。アクリル樹脂類として、仁愛科技開発有限公司製のFNUH-606シリーズ、吉田化工有限公司製のE0512シリーズ等のポリマー又は塗料の硬化物が挙げられる。フッ素樹脂類として、山東応強新材料科技有限公司製のYQ-F-011-Iシリーズ、仁愛科技開発有限公司製のHC-0210F-A/Bシリーズ等のポリマー又は塗料の硬化物が挙げられる。
【0026】
さらに、熱硬化性樹脂の成形プロセスにおいて、前記第2層は全部又は一部が前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料から離脱し、熱硬化性樹脂の成形品に転移するという効果を実現し、且つ熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)に対する第2層の結合力を十分満たすために、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、23℃のとき、第2層のエポキシ樹脂結合力が6MPa以上であるという性能を有する。前記エポキシ樹脂結合力は、以下の方法によって測定した。ダウ・ケミカル社製のAirstoneシリーズ760E/766Hエポキシ樹脂を用いて、760Eと766Hとの質量比を100:32の比率で混合させた後、本発明の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の前記第2層上に、8層のガラス繊維(泰山玻璃繊維有限公司、三軸、1200g/m2)、ピールプライ、多孔質膜、ブリーダーネット、真空バッグフィルム等の副資材を設置した後、真空注入を行い、80℃、0.1MPa、2時間の硬化処理後、厚さが6mmのエポキシ樹脂成型品が得られ、23℃で本発明の熱硬化性樹脂成型用薄膜材料を取り除くと、前記第2層が熱硬化性樹脂成形用薄膜材料からエポキシ樹脂成型品の表面に転移した。付着力試験機を用いて第2層に対して付着力試験を行い、第2層のエポキシ樹脂結合力が得られた。第2層のエポキシ樹脂結合力が6MPaより低いと、第2層が前記熱硬化性樹脂表面から剥離しやすく、耐久性が不足するという現象が現れる。
【0027】
第2層のエポキシ樹脂結合力を高めるために、前記第2層は、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、又はアミノ基の化合物のうちの一種類又は複数種類をさらに含むことができる。第2層に添加されたブロックイソシアネート基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、又はアミノ基を含む一種類又は複数種類の化合物は、第2層における化学成分、熱硬化性樹脂及び/又は硬化剤と反応し、第2層と熱硬化性樹脂との間に化学結合を形成させることで、第2層のエポキシ樹脂間の結合力を高め、第2層と熱硬化性樹脂との結合力を高めるという目的を達する。
【0028】
ブロックイソシアネートとは、イソシアネート基を含む化合物とブロッキング剤とが反応して生成された室温では安定し、高温ではイソシアネートに再分解可能な化合物である。
【0029】
具体的に、イソシアネート基を含む化合物は、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、又はトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α‘,α’―テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの物質は単独で用いられても、複数種類が併用されてもよい。
【0030】
前記ブロッキング剤とは、フェノール類、ピリジノール及び相応のメルカプト基化合物、アルコール類、メルカプタン類及びヒドロキシ基を含むその他の化合物、オキシム類、アミド、環状アミド及びアシルラクタム類、イミダゾール、イミダゾリン、アミジン及び関連の化合物、ピラゾール類、トリアゾール類、アミン類、活性メチレン化合物、無機酸類等の一種類又は複数種類を指す。具体的には、フェノール、クレゾール、カテコール、メトキシフェノール、パラクロロフェノール、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシピリジン、N-ブタノール、ジメチルアミノエタノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-トリフルオロエタノール、トリフェニルメタンチオール、ヘキサンチオール、ドデシルメルカプタン、N-ヒドロキシスクシンアミド、N-モルホリノエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブタノンオキシム、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、ラクタム、カプロラクタム、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、シクロアミジン、ジイミダゾール、ピリミジン、1,2,4-トリアゾール、N-メチルアニリン、N-メトキシアニリン、ジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、2,6-ジピペリジン、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、β-ジカルボニル化合物、KHSO3、NaHSO3、HCl、HCN、グリコール酸、プロピル酢酸、イソプロピルグリコール酸等が挙げられる。
【0031】
具体的に、ブロックイソシアネートは、三井化学株式会社のTAKENATEシリーズ、厦門愛珂瑪化工有限公司のHIBLOCKシリーズ、上海宜塗実業有限公司のBL-175シリーズ、江陰格泰化工有限公司のGT-5100シリーズ、張家港市天一化工有限公司のHR-0325シリーズ、イギリスのBaxenden社のTrixeneシリーズが挙げられる。
【0032】
第2層においてブロックイソシアネート基化合物が含まれると、赤外分光により一定の温度で第2層の外面に対してテストを行い、イソシアネート基含有量の変化を測定できる。さらに、本発明に記載の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、好ましくは120℃で10分間加熱後、加熱前に比べて、イソシアネート基の含有量が5~20%増加することを満たす。
【0033】
エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基又はアミノ基を含む化合物として、具体的に、グリシドール、無水トリメリット酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-テトラヒドロフルフリルアミン、L-アスパラギン酸、β-アミノプロピオン酸、酒石酸ジエチル等が挙げられる。
【0034】
さらに、第2層が熱硬化性樹脂に対して良好な結合力を有するために、前記第2層の外面の粗さは0.5μmより高いことが好ましい。前記外面は、前記熱硬化性樹脂の成形時に薄膜材料が熱硬化性樹脂と接触する表面である。この要求より低ければ、成形プロセスの条件において、第2層は前記第1層から熱硬化性樹脂の表面に転移できず、又は第2層は転移後に熱硬化性樹脂の表面から脱落しやすくなる。前記第2層の外面の粗さは、1μmより高いことがさらに好ましい。
【0035】
前記第2層が熱硬化性樹脂に転移後、第2層の外側に追加の層を改めて設置する必要がある可能性を考慮すると、追加の層を設置しやすくするために、第2層の内面の粗さは0.1μmより高いことがさらに好ましい。前記内面は上記第2層の外面の反対の面である。前記第2層の内面の粗さは、0.5μmより高いことがさらに好ましい。
【0036】
第2層の内面の粗さを0.1μmより高くするために、第2層の内面に直接接触する層の表面に対して粗面化処理をしても良い。粗面化処理とは、表面に処理を行うことにより、表面が比較的大きなピッチ及びやや大きな凹凸を有するようにすることを指す。粗面化処理の方法は、具体的に、電気めっき、化学めっき、溶融めっき、コロナ処理法、機械的粗面化、コーティング法、真空蒸着、酸化処理、装飾コーティング、酸化処理法、溶剤処理法、又は火炎処理法を指す。第1層の粗面化は、コロナ処理法、機械式バリ取り法、コーティング法、酸化処理法、溶剤処理法、又は火炎処理法のうちの一種類又は複数種類を選択できる。
【0037】
前記第2層は、スプレーコーティング、ブラッシング、浸漬法、ロールコーティング、又はシャワーコーティング等の方法により、第1層に塗布されることで製造される。スプレーコーティングとは、スプレーガン又はディスク式噴霧器により、圧力又は遠心力によって、塗料を均一に分散させて細かいミストとし、被コーティング物の表面に塗布するコーティング方法を指す。ブラッシングとは、人工用のブラシを塗料に浸して、被コーティング物の表面に塗布する方法を指す。浸漬法とは、固体の粉末又は一定の形状及びサイズの成形された固体を活性成分を含む可溶性化合物の溶液に浸し、一定の時間触れさせた後、残留液から離し、活性成分をイオン又は化合物の形式で固体に付着させる方法を指す。ロールコーティングとは、ロール上に一定の厚さのウェットコーティング層を形成した後、ロールを通過するときに、一部又は全てのウェットコーティング層を部材に塗布する方法を指す。シャワーコーティングとは、シャワーヘッドにより、均一のラッカーを形成して被コーティング物の表面に流しかけるコーティング方法を指す。具体的には、生産条件において、第2層はコンマロール、マイクロ凹面ロール等のコーティングロールが配置されるコーティング機によりロールコーティングできる。実験室の条件において、ウェットフィルム製造装置、ワイヤバー等のコーティングツールを用いて塗布できる。
【0038】
前記第2層の厚さの要求は、第2層の粘度及び硬化時間等の性能、実施プロセス条件に応じて設定される必要がある。第2層の厚さは25~250μmが好ましく、第2層の厚さは30~200μmがさらに好ましい。
【0039】
前記第2層の全部又は一部が前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料から熱硬化性樹脂成型品に転移した後、第2層を通して内側の熱硬化性樹脂の表面を観察できるという効果を有するために、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、上記第2層の厚さの前提において、前記第2層の透過率は20%以上であるという性能を有することが好ましい。透過率が20%より低ければ、第2層の高すぎる遮蔽作用により、内側の熱硬化性樹脂の表面を観察できない。前記透過率とは、スガ試験機株式会社のHZ-V3ヘーズメータを用いて測定した前記第2層の透過する光束が入射光束に占める百分率を指す。さらに、第2層を透過し、内側の熱硬化性樹脂の表面をはっきりと観察できる効果を達成するために、透過率は40%以上であることが好ましい。
【0040】
さらに、成形後に、前記第2層の熱硬化性樹脂の表面への転移効果を確認できるようにするため、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、前記第2層と熱硬化性樹脂との色差ΔEが0.5以上であるという性能を有する。前記色差とは特に前記第2層と熱硬化性樹脂との色の差を指す。日本電色工業株式会社のNF333携帯型色差計を用いて、前記第2層と前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を使用していない熱硬化性樹脂成型品との色差ΔEを測定することができる。前記第2層と熱硬化性樹脂との色差ΔEが0.5より低いと、第2層と熱硬化性樹脂との色は近すぎ、前記第2層が熱硬化性樹脂の表面に転移したか否かを正確に判断することができない。
【0041】
第2層と熱硬化性樹脂との色差を調整するために、前記第2層は着色剤を含むことが好ましい。前記着色剤は、顔料及び染料を含む。顔料とは、水、油、溶剤、樹脂等の媒体には溶けないが、各種媒体に分散可能な一連の有色の細粒粉末物質を指す。天然鉱物顔料、金属の酸化物顔料、硫化物顔料、硫酸塩顔料、クロム酸塩顔料、モリブデン酸塩顔料、カーボンブラック顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、複素環式顔料、レーキ顔料、蛍光顔料等の一種類又は複数種類であってよい。具体的には、辰砂、テラロッサ、雄黄、珪灰石、タルカムパウダー、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、クロムオレンジ、モリブデンレッド、カーボンブラック、ピグメントイエロー93、フタロシアニンブルー顔料、キナクリドン顔料、リソールレッド顔料、又は蛍光イエローYG-51顔料等が挙げられる。染料とは、水又はその他の媒体に溶け、溶液又は分散液を製造することにより、材料を着色できる一連の有色の有機化合物を指す。直接染料、酸性染料、金属錯体染料、バット染料、硫化染料、分散染料、反応染料、カチオン染料、縮合染料、酸化染料、溶剤染料の一種類又は複数種類であってよい。具体的には、アントラキノン染料、アゾ染料、インディゴ、チオインディゴ、アニリンブラック、フタロシアニン系染料、ポリメチン系染料、芳香族メタン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料等が挙げられる。
【0042】
さらに、前記第2層を前記熱硬化性樹脂の成形時に、第1層から熱硬化性樹脂により良好に転移させるために、前記第1層の少なくとも1つの表面の表面張力は40mN/m以下である。成形時における第2層の転移能力をさらに高める必要性を考慮すると、第1層の少なくとも1つの表面の表面張力は35mN/m以下がさらに好ましい。前記薄膜材料の操作性を考慮すると、第1層の少なくとも1つの表面の表面張力は10mN/m以上がさらに好ましい。
【0043】
さらに、前記第2層を前記熱硬化性樹脂の成形時に、第1層から熱硬化性樹脂により良好に転移させるために、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、第3層をさらに含み、且つ第3層の少なくとも1つの表面の表面張力は40mN/m以下であることが好ましい。前記熱硬化性樹脂の成形時における第2層の転移能力をさらに高めることを考慮すると、第3層の少なくとも1つの表面の表面張力は35mN/m以下がさらに好ましい。前記薄膜材料の操作性を考慮すると、第3層の少なくとも1つの表面の表面張力は10mN/m以上がさらに好ましい。第3層は第1層と第2層との間に設置されてよく、離型性能を提供するために用いられる。
【0044】
前記第3層は公知の方法によりその表面張力を調節することができ、例えば、第3層にケイ素及び/又はフッ素を含む化合物のうちの一種類又は複数種類を設置することができる。ここで、ケイ素を含む化合物は、シリコーンポリマーであってよく、ポリビニルトリイソプロポキシシラン、ポリビニルトリメトキシシラン、ポリビニルトリエトキシシラン、ポリビニルトリプロポキシシラン等のポリシロキサン及びその派生物(シリコーンオイル)が挙げられる。フッ素を含む化合物はフッ素含有ポリマーであってよく、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-ポリテトラフルオロエチレン共重合体、又はフッ素化ビニル変性シリコーンオイル等が挙げられる。前記第3層はモノマーを触媒の作用により架橋剤と反応させた後、基材表面に塗布する、又は直接混練押出方法により製造できる。
【0045】
さらに好ましくは、前記第1層の一方側には前記第2層が設置され、他方側には粘着層が設置される。前記粘着層は、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料と熱硬化性樹脂成形金型の表面とを粘着させることにより、金型表面において熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を固定する効果を達し、且つ熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を使用後に、成形金型の表面から剥離させ、成形金型の表面に粘着層の残留物がない又は少なくさせることができる。
【0046】
さらに、前記粘着層は天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はシリコーン樹脂のうちの一種類又は複数種類を含む。具体的には、例えばデンプン系、セルロース系、ポリビニルアルコール系等の水性粘着剤、例えばアクリル系、ポリウレタン系等の溶剤型粘着剤、例えばポリ酢酸ビニルエマルジョン等のエマルジョン型粘着剤、例えばエポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系等の熱硬化型粘着剤、例えばアクリル系等の紫外線硬化型粘着剤、例えばアクリル系等の嫌気硬化型粘着剤、例えば、シアノアクリレート系、ポリウレタン系等の湿気硬化型粘着剤、例えばウレタン系等の縮合反応型粘着剤、例えばアクリル系等のラジカル重合型粘着剤、例えばアクリル系、ポリアミド樹脂系、ポリエステル樹脂系等のホットメルト粘着剤、例えばデンプン系等の再湿潤型粘着剤、例えばアクリル系等の感圧型粘着剤が挙げられる。
【0047】
前記粘着層の厚さは、粘着剤の粘度及び硬化時間等の性能、実施プロセスの条件等に応じて設定可能である。粘着層の推奨厚さは1~100μmであり、好ましくは2~80μmである。
粘着層の設置方法は、公知の方法を使用でき、例えば上記の第2層の設置方法を参照する。
【0048】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、又はフラン樹脂のうちの一種類又は複数種類を含むことが好ましい。具体的に、前記熱硬化性樹脂の原料として、以下が挙げられる。例えば、エポキシ樹脂類として、ダウ・ケミカル社製のAirstoneシリーズ760E/766H、上緯(上海)精細化工有限公司の2511-1A/2511-1BCシリーズ、日本の昭和高分子社のR-802等が挙げられる。ポリウレタン樹脂類として、科思創聚合物(中国)有限公司の78BD075/44CP20シリーズ等が挙げられる。アクリル樹脂類として、北京駿豊源化工有限公司の10031/7662シリーズ等が挙げられる。ビニルエステル樹脂類として、華昌聚合物有限公司のMFE-VARTM-200シリーズ、米国のアシュランド社のAROPOL G300シリーズ等が挙げられる。フェノール樹脂類として、山東佰仟化工有限公司のHK2506シリーズ、無錫博瑞宇化工科技有限公司の2124シリーズ等が挙げられる。フラン樹脂類として、無錫長乾化工有限公司のNPEL128シリーズ等が挙げられる。
【0049】
さらに、熱硬化性樹脂において無機物を含み、その力学性能を強化している。前記無機物は、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、マグネシウム系ウィスカ、珪灰石、海泡石、アスベスト、スラグ繊維、ゾノトライト、珪質アパタイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維又はホウ素繊維等の繊維状無機物のうちの一種類又は複数種類、或いはガラスフレーク、非膨潤性雲母、膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、滑石、粘土、雲母、絹雲母、ゼオライト、ベントナイト、バーミキュライト、モンモリロナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、ガラス微小中空球、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、又は白土等の薄片状又は粒状の無機物のうちの一種類又は複数種類を含むが、これらに限らない。
【0050】
熱硬化性樹脂の成形プロセスは、ハンドレイアップ成形、注入成形、真空バッグ成形、押出成形、加圧バッグ成形、フィラメントワインディング、樹脂トランスファー成形、真空補助樹脂注入成形、連続シート成形、引抜成形、遠心鋳造成形、ラミネート又はロール成形、サンドイッチ成形、圧縮成形、プレス成形、又は射出成形等を含む。本発明に記載の熱硬化性樹脂の成形は、具体的にハンドレイアップ成形、フィラメントワインディング成形、樹脂トランスファー成形、真空補助樹脂注入成形、引抜成形、圧縮成形、又はプリプレグレイアップ等のプロセスにおけるいずれか1種類又は複数種類であってよい。
【0051】
本発明の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、各種熱硬化性樹脂の成形工程において使用され、例えば風力発電機の羽根、自動車、電車、飛行機等の交通手段、電子部品、成形装飾ボード等の成形工程において適用されることで、効率的な生産、高い寸法精度、樹脂表面の低汚染、生産プロセスの好環境という有益な効果を達することができる。
【0052】
本発明は、上記の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の自動車、電車、飛行機等の交通手段、電子部品、成形装飾ボード等の分野、特に風力発電機の羽根の成形における応用をさらに提供する。
【0053】
本発明は、上記の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料により製造した製品、特に風力発電機の羽根をさらに提供する。風力発電機の羽根の真空成型プロセスにおいて用いられるとき、第2層は羽根(主にエポキシ樹脂、又はポリウレタン樹脂からなる)の表面に転移し、下塗り又は下塗り及び仕上げ塗装の作用を奏することにより、従来のプロセスにおける下塗り塗装前の羽根の表面の研磨工程及び下塗り(及び仕上げ塗装)塗装の工程を省略し、プロセスの簡略化、作業時間の短縮、人的作業の削減、VOC排出の低減をすることができる。第2層が羽根の表面に転移した後、第2層を透過して内側の熱硬化性樹脂の表面を直接観察することができ、熱硬化性樹脂の表面に存在する欠陥及び位置を検出、及び直接観察して判断し、正確に補修プロセスを行う助けとなる。一方、本発明の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、羽根の金型から直接離脱可能であり、残渣がない又は少なく、金型を掃除する必要がなく、金型の摩耗を減少し、金型の使用期限を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されない。
実施例及び比較例において用いられる試験方法は以下の通りであり、全ての試験について、試験温度が明確に説明されていない場合、23℃で試験を行った。
【0055】
1、厚さ
厚さ測定器を用いて試験を行った。試験サンプルの3か所の異なる位置の厚さに対して、これら3か所の厚さの算術平均を取り、当該試験サンプルの厚さとした。
【0056】
2、熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の剥離強度
熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の剥離強度とは、第1層と第2層との剥離強度を指し、単位はN/cm(剥離強度)である。TESA7475のテストテープを用いて第2層を補強し、サンプルサイズを150mm×10mmとし、引張試験機を用いて180°の剥離強度、剥離速度200mm/minで試験を行った。試験サンプル数は3とし、3回の試験結果の算術平均を取り、剥離強度の結果とした。
【0057】
3、透過率
透過率とは、第2層の透過する光束が入射光束に占める百分率を指す。第2層を第1層から完全に剥離させ、スガ試験機株式会社のHZ-V3ヘーズメータを用い、D65光源を選択して第2層に対して透過率測定を行った。試験サンプル数は3とし、3回の試験結果の算術平均を取り、透過率の結果とした。
【0058】
4、第2層の転移性
まず、以下の方法により、エポキシ樹脂の成形品を製造した。熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を成形金型の上方に設置し、風力発電機の羽根の真空成形ステップに従い、補助材料を設置し、ダウ・ケミカル社製のAirstoneシリーズ760E/766Hエポキシ樹脂を用いて、760Eと766Hとの質量比を100:32の比率で混合させた後、真空注入を行い、80℃、0.1MPa、2時間の真空成形後、23℃まで冷却し、離型させて、厚さが6mmのエポキシ樹脂の成形品を得た。
【0059】
続いて、赤外分光法により、転移後の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の表面(成形時に熱硬化性樹脂と貼り合わされる面)と熱硬化性樹脂の成形品の外面(成形時に熱硬化性樹脂成形用薄膜材料と貼り合わされる面)とをそれぞれ測定し、2つの表面における第2層の成分の測定結果に応じて、以下の判定を行った。
○:転移性優、熱硬化性樹脂の成形品の外面においてのみ第2層の成分が検出された。
△:転移性普通、2つの表面においていずれも第2層の成分が検出された。
×:転移性不可、熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の表面においてのみ第2層の成分が検出された。
【0060】
5、色差
色差とは、熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の第2層と熱硬化性樹脂との色の差を指す。前記第2層と前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を使用していない熱硬化性樹脂の成形品とをそれぞれ同一規格のブラックボードに置き、日本電色工業株式会社のNF333携帯型色差計を色差試験モードに設定し、前記第2層を色差測定基準サンプルとして、基準値を測定した。その後、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を使用していない熱硬化性樹脂の成形品を測定し、機器の表示に基づき、両者間の色差ΔEを得た。試験サンプル数は3とし、3回の試験結果の算術平均を取り、色差ΔEの結果とした。
【0061】
6、第2層のエポキシ樹脂の結合力
第2層のエポキシ樹脂の結合力の単位はMPaである。以下の方法により、成形サンプルを製造した。ダウ・ケミカル社製のAirstoneシリーズ760E/766Hエポキシ樹脂を用いて、760Eと766Hとの質量比を100:32の比率で混合させた後、本発明の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の前記第2層上に、8層のガラス繊維(泰山玻璃繊維有限公司、三軸、1200g/m2)、ピールプライ、多孔質膜、ブリーダーネット、真空バッグフィルム等の副資材を設置した後、真空注入を行い、80℃、0.1MPa、2時間の硬化処理後、厚さが6mmのエポキシ樹脂成型品が得られ、23℃で本発明の熱硬化性樹脂成型用薄膜材料を取り除くと、前記第2層が熱硬化性樹脂成形用薄膜材料からエポキシ樹脂成型品の表面に転移した。
【0062】
成形品の外面において平らな位置を試験位置として選び、120番の紙やすりで試験位置を光沢がなくなるまで軽く研磨した。測定機器は、北京中測三友科技有限公司のXH-M携帯式付着力測定器であり、測定器が備える20mmのドリーをMC1500接着剤で試験位置に接着し、2時間放置した後、試験を行った。3か所の異なる位置の結合力の試験を行い、これら3か所の結果の算術平均を取り、当該サンプルの第2層のエポキシ樹脂結合力の結果とした。
【0063】
7、イソシアネート基の含有量の増加量の測定
賽黙飛世爾科技(中国)有限公司のiZ10フーリエ変換赤外分光(FT-IR)光度計により、熱硬化性樹脂用薄膜材料の第2層の表面に対してFTIR-ATR試験を行った。その後、同一の熱硬化性成形用薄膜材料を120℃で10分間加熱し、第2層の表面に対して2回目のFTIR-ATR試験を行い、加熱処理前後の試験画像におけるアルキル基の伸縮振動の領域に対して強度の正規化処理を行った後、-NCOの領域の強度と比較して、イソシアネート基の増加した割合を得た。
【0064】
8、表面粗さ
触針式粗さ輪郭測定機(厦門金河源科技有限公司、TR200)を用いて試験を行った。試験速度は0.5mm/sに設定した。3か所の異なる位置の表面粗さを測定し、3回の試験結果の算術平均を取り、表面粗さの結果とした。第2層の外面の粗さは、第2層の外面を測定することにより得た。第2層の内面の粗さは、第2層を設置する前の第1層の表面(第2層を設置しようとする表面)を測定することにより得た。
【0065】
9、表面張力試験
ASTM D2578-99aに従い、標準規格を満たすダインペン又はダイン液を用いて試験を行った。
【0066】
10、元素測定
日立製S-3400N型走査電子顕微鏡、EDX型番Apollo Xを用いて、熱硬化性樹脂成形用薄膜材料の第3層に含まれる元素を測定した。
実施例と比較例とにおいて用いた原料は以下の通りである。
【0067】
<第1層(第3層を有するときの状況を含む)>
A1:東レ株式会社製のポリエチレンテレフタレート離型フィルムLumirror(R)XD-55YRである。厚さは50μm、縦方向の抗張力は153MPaであり、破断伸び率は38.6%である。片面は離型面であり、シリコーン離型処理を通じて、走査電子顕微鏡のEDX元素分析によって離型面がケイ素を有することがわかり、離型面の表面張力は20mN/mであり、非離型面の表面張力は30mN/mである。両面の粗さはいずれも0.1μmである。本薄膜は離型面を有する第1層(すなわち、第3層を有する第1層)である。
【0068】
A2:東レ株式会社製のポリオレフィンフィルムToretec(R)7H55G。厚さは30μmであり、片面は自己粘着面であり、自己粘着面の表面張力は20mN/mであり、粗さは0.1μmである。非自己粘着面の表面張力は25mN/mであり、粗さは0.2μmである。
【0069】
A3:東レ株式会社製の二軸延伸ポリプロピレンフィルムTorayfan(R)50-2500A。厚さは50μmである。両面の表面張力はいずれも18mN/mであり、粗さはいずれも0.1μmである。
【0070】
<第2層>
B1:上海麦加塗料有限公司製のWU233A/B。WU233Aは主剤であり、固形分含有量は97%であり、主要成分はポリウレタン系化合物である。WU233Bは硬化剤であり、固形分含有量は99%であり、主要成分はヘキサメチレンジイソシアネート三量体である。WU233A:WU233B=3:2の質量比に従って混合した後、待機させた。当該塗装層の硬化条件は、23℃で24時間である。
【0071】
B2:パン貝捷塗料(上海)有限公司製のLT255/LW7260。LT255は主剤であり、固形分含有量は72%であり、主要成分はポリエステルポリオール系化合物である。LW7260は硬化剤であり、固形分含有量は34%であり、主要成分はヘキサメチレンジイソシアネート三量体である。LT255:LW7260=4:1の質量比に従って混合した後、待機させた。乾燥条件は100℃で4分間であり、硬化条件は23℃で24時間である。
【0072】
B3:駿和化工(上海)有限公司製のJH-8152/3390。JH-8152は主剤であり、固形分含有量は95%であり、主要成分はポリアスパラギン酸エステル系化合物である。3390は硬化剤であり、固形分含有量は98%であり、主要成分はヘキサメチレンジイソシアネート三量体である。JH-8152:3390=4:5の質量比に従って混合した後、待機させた。乾燥条件は100℃で4分間であり、硬化条件は23℃で24時間である。
【0073】
B4:B1を基礎として、WU233Aに0.5%のXB-G282を添加したものを填料とし、その他は変更しなかった。XB-G282は三井化学株式会社製のTAKENATEシリーズのブロックイソシアネートであり、具体的にはブロック化メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートであり、ブロック剤は活性メチレン系化合物である。
B5:B4を基礎として、XB-G282をシグマアルドリッチ社製のグリシドールに変更し、その他は変更しなかった。
B6:B4を基礎として、XB-G282を阿拉丁試剤(上海)有限公司製の無水トリメリット酸に変更し、その他は変更しなかった。
B7:B4を基礎として、XB-G282を阿拉丁試剤(上海)有限公司製の3-ヒドロキシプロピオン酸に変更し、その他は変更しなかった。
B8:B4を基礎として、XB-G282を阿拉丁試剤(上海)有限公司製のL-アスパラギン酸に変更し、その他は変更しなかった。
B9:B4を基礎として、XB-G282の重量部を2重量部に変更し、その他は変更しなかった。
B10:B4を基礎として、XB-G282の重量部を0.5重量部に変更し、0.5重量部のグリシドールを添加し、その他は変更しなかった。
B11:B1を基礎として、WU233Aに1%のTiO2を添加したものを填料とし、その他は変更しなかった。
B12:B1を基礎として、WU233Aに0.5%の紺青顔料を添加したものを填料とし、その他は変更しなかった。
【0074】
<粘着層>
C1:安佐化学有限公司製のY-1210/Y-101であり、アクリル系粘着剤である。Y-1210は主剤であり、固形分含有量は36%である。Y-101は硬化剤であり、固形分含有量は75%である。Y-1210とY-101との質量比は、100:0.56である。粘度は25℃で10000CPSであり、乾燥条件は100℃で2分間であり、硬化条件は40℃で24時間である。
【0075】
C2:康利邦科技有限公司製のUPSA-933A/Bであり、ポリウレタン系粘着剤である。UPSA-933Aは主剤であり、固形分含有量は65%である。UPSA-933Bは硬化剤であり、固形分含有量は70%である。質量比は100:6であり、乾燥条件は100℃で3分間であり、硬化条件は80℃で24時間である。
【0076】
実施例1~12
表1に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いて第1層の片面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた。実施例1~3では、第2層はA1の非離型面に設置され、実施例4~6では、第2層はA1の離型面に設置され、実施例7~9では、第2層はA2の自己粘着面に設置され、実施例10~12では、第2層はA3のいずれかの面に設置される。
得られたサンプルに対して各種性能試験を行い、結果を表1に示す。
【0077】
実施例13~15
表2に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いてA2の自己粘着面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた。
得られたサンプルに対して各種性能試験を行い、結果を表2に示す。
【0078】
実施例16~22
表3に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いてA2の自己粘着面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた。
得られたサンプルに対して各種性能試験を行い、結果を表3に示す。
【0079】
実施例23~24
表4に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いてA2の非自己粘着面に粘着層の原液を塗布した後、用いられた粘着層の硬化条件において硬化させ、厚さが5μmの粘着層が得られた。
【0080】
続いて、表4に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いて第1層の他面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた。
得られたサンプルに対して各種性能試験を行い、結果を表4に示す。
【0081】
実施例25~27
A1の離型面、A2の自己粘着面、A3の任意の面に対して粗面化処理を行い、A1の粗面化処理面の粗さを3μm、A2の粗面化処理面の粗さを0.6μm、A3の粗面化処理面の粗さを1μmとした。
【0082】
表5に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いて第1層の非処理面に粘着層の原液を塗布した後、用いられた粘着層の硬化条件において硬化させ、厚さが5μmの粘着層が得られた。
【0083】
続いて、表5に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いて第1層の他面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた。
得られたサンプルに対して各種性能試験を行い、結果を表5に示す。
【0084】
実施例28~29
表6に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いてA2の非自己粘着面に粘着層の原液を塗布した後、用いられた粘着層の硬化条件において硬化させ、厚さが5μmの粘着層が得られた。
【0085】
表6に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いてA2の他面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層B1が得られた。第2層B1の外面に粗面化処理を行い、B1の粗面化処理面の粗さをそれぞれ0.6μm(実施例28)、2μm(実施例29)とした。
得られたサンプルに対して各種性能試験を行い、結果を表6に示す。
【0086】
実施例30~32
表7に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いてA2の自己粘着面に第2層の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた後、実施例30~32の第2層の外面に対して、赤外分光測定を行った。
続いて、前記熱硬化性樹脂成形用薄膜材料を120℃で10分間加熱し、加熱後の実施例30~32の第2層の外面に対して赤外分光測定を行った。
2回の赤外分光測定の結果を用いて、イソシアネート基含有量が増加した分を測定し、結果を表7に示す。
【0087】
比較例1
表8に示す組成に従い、ウェットフィルム製造装置を用いて第1層A1の非離型面に第2層C1の原液を塗布した後、用いられた第2層の硬化条件において硬化させ、厚さが100μmの第2層が得られた。試験により得られた第1層と第2層との剥離強度は35N/cmであり、第2層の転移性は×であり、即ち転移できない。
【0088】
各実施例からわかるように、本発明の熱硬化性樹脂成形用薄膜材料は、その第2層が熱硬化性樹脂の成形過程において、熱硬化性樹脂の成形品の表面に転移し、有益な効果をもたらすことができる。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】