(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】車線を変更するときに、自動車両と、車両の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230515BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20230515BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230515BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20230515BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/095
B60W60/00
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2020542306
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2018085612
(87)【国際公開番号】W WO2019154549
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムナントー, エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ, ジェオフレ
(72)【発明者】
【氏名】アダッド, アラン
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-283593(JP,A)
【文献】特開2005-025458(JP,A)
【文献】特開2015-045622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両が車線を変更する場合に、前記自動車両と、前記自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するためのシステムであって、前記自動車両が、前記主
走行車線を仮想的に再構築するのに必要な
主走行車線の境界線の係数(a、b、c、d)を獲得することを可能にした、前記主
走行車線に向けられた少なくとも1つの知覚センサ、および、レーダーの視野内にある各2次物体の座標(X,Y)を検知するための少なくとも1つの前面または側面レーダーを備える検知手段を備え、
衝突リスクを検知するための前記システムが、2点(A、B)の間のセグメントの長さに対応する、前記自動車両と、前記レーダーによって検知された各物体との間の実距離(L
AB)を計算するためのモジュール(24)、前記主
走行車線の境界線および前記主
走行車線の幅に基づいて
前記主走行車線上の危険区域(Z)を決定するためのモジュール(26)、ならびに、前記レーダーによって検知された各物体について、予め決定した前記危険区域(Z)内に各物体の座標(L
AB,Y)があるかどうかをチェックするためのモジュール(28)を有した、決定した前記危険区域(Z)内の2次物体を検知
し、前記危険区域(Z)内で検知された各物体のフラグ値(F)をコンピュータに送信する
ためのモジュール(20)を備え、ならびに、前
記システムが、衝突までの時間(TTC)を推定するためのモジュール(30)を備え
、
前記主走行車線の境界線は、縦の距離xに対して式
Yline=d.x
3
+c.x
2
+b.x+a (式1)
によって決定され、
前記実距離(L
AB
)は、
によって決定され、式中、X
A
は前記自動車両の縦位置であり、X
B
は前記物体の縦位置であり、Yline‘はYlineの導関数であることを特徴とする、
システム。
【請求項2】
前記衝突までの時間(TTC)推定モジュール(30)が、前記自動車両と前記検知
された物体との間の角度(α
object)を計算するためのモジュール(32)、道路に沿って進む相対速度(V
relx_road)を取得するために、前記レーダーによって送信された相対速度(V
relx、V
rely)を前記道路の軸上に
投影するためのモジュール(34)、ならびに、前記実距離(L
AB)および前記相対速度(V
relx_road)に基づいて、前記レーダーによって検知された各物体に対する前記衝突までの時間(TTC)を、各検知
された物体について計算するためのモジュール(34)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記危険区域(Z)が、走行車線に沿って進み、第1の距離(D1)によって横方向に間隔を開けられた2つの実質的な平行線(L1)によって定義された、第1の区域部分(Z1)、および、前記
平行線(L1)に対して互いの方に向けられ、前記第1の距離(D1)より小さい第2の距離(D2)によって横方向に間隔を開けられた2つの線(L2)によって定義された、第2の区域部分(Z2)を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記危険区域(Z)内の物体の存在を示すため
のフラグ(F)、前記衝突までの時間(TTC)に基づいて、前記物体のうちの最も重要なものを識別するために、前記レーダーによって検知された前記物体をフィルタにかけるためのモジュール(40)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記検知
された物体をフィルタにかけるための前記モジュール(40)が、前記危険区域(Z)内にある前記検知
された物体だけを保持する第1のフィルタ(42)、ならびに、前記
自動車両からの前記
実距離(L
AB)、および/または前記衝突までの時間(TTC)に基づいて、最も重要な物体を決定するためのモジュール(44)、ならびに、前記最も重要な物体との前記衝突までの時間(TTC)を閾値(S
TTC)と比較するためのモジュール(46)を備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記最も重要な物体との前記衝突までの時間(TTC)が前記閾値(S
TTC)以下であるとき、前記最も重要な物体との前記衝突までの時間(TTC)を示すことによって、前記重要な物体の存在を運転者に警告する信号を送信する警告モジュール(50)を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
自動車両が車線を変更する場合に、前記自動車両と、前記自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の
システムおよびコンピュータを備える自動車両。
【請求項8】
自動車両が車線を変更する場合に、前記自動車両と、前記自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するための方法であって、前記自動車両が、前記主
走行車線を仮想的に再構築するのに必要な
主走行車線の境界線の係数(a、b、c、d)を獲得することを可能にした、前記主
走行車線に向けられた少なくとも1つの知覚センサ、および、レーダーの視野内にある各2次物体の座標(X,Y)を検知するための少なくとも1つの前面または側面レーダーを備える検知手段を備え、決定した
前記主走行車線上の危険区域(Z)内の物体の存在が検知され、前記
自動車両と検知
された物体との間の衝突までの時間(TTC)が推定され、前記危険区域(Z)内の前記物体の存在を検知するために、
前記自動車両と、前記レーダーによって検知された各物体との間の直線距離による距離に対応した、前記レーダーによって送信された距離(X)を変換することによって与えられた、前記自動車両と、前記レーダーによって検知された各物体との間の実距離(L
AB)が計算され、前記実距離(L
AB)が、2点(A、B)の間の
セグメントの長さに対応し、
前記危険区域(Z)が、前記主
走行車線の
境界線、および前記主
走行車線の幅に基づいて決定され、
前記レーダーによって検知された各物体について、前記決定した危険区域(Z)内に各物体の座標(L
AB,Y)があるかどうかがチェックされ、前記危険区域(Z)内で検知された各物体のフラグ値(F)がコンピュータに送信され
、
前記主走行車線の境界線は、縦の距離xに対して式
Yline=d.x
3
+c.x
2
+b.x+a (式1)
によって決定され、
前記実距離(L
AB
)は、
によって決定され、式中、X
A
は前記自動車両の縦位置であり、X
B
は前記物体の縦位置であり、Yline‘はYlineの導関数であることを特徴とする、
方法。
【請求項9】
衝突までの時間(TTC)を推定するステップにおいて、前記自動車両と前記検知
された物体との間の角度(α
object)が計算され、前記レーダーによって送信された相対速度(V
relx、V
rely)の道路の軸への
投影としての相対速度(V
relx_road)が計算され、前記レーダーによって検知された各物体に対する前記衝突までの時間(TTC)が、前記実距離(L
AB)および前記相対速度(V
relx_road)に基づいて、各検知
された物体について計算される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
最も重要
な物体が、前記危険区域(Z)内にある前記検知
された物体をフィルタにかけること、ならびに、前記
自動車両からの前記距離(L
AB)および/または前記衝突までの時間(TTC)に基づいて、前記検知
された物体のうちの最も重要なものを決定することによって決定される、請求項8または9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記最も重要な物体との前記衝突までの時間(TTC)が閾値(S
TTC)と比較され、前記最も重要な物体との前記衝突までの時間(TTC)が前記閾値(S
TTC)以下であるとき、前記重要な物体の存在を警告する信号が運転者に出力される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両運転補助の分野に関し、詳細には、障害物回避補助システムに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、車両が車線を変更する場合に、主走行車線(main traffic lane)にある車両と、主車線の隣の走行車線にある移動物体または非移動物体との間の差し迫った衝突リスクを検知するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
具体的には、運転者の注意力の低下の結果、車線を無意識に離れることによって、または、自分自身より遅い速度で進んでいる前の車両を運転者が追い越そうとするときに、車線を意図的に離れることによって、非常に多くの事故が引き起こされる。
【0004】
しかし、車線を意図的に離れる場合でさえ、運転者は、自分の車両と、隣の車線にある移動物体または非移動物体との間の距離を不正確に推定することがあり、このことにより、場合によっては、物体との正面衝突に至る。
【0005】
今日、自動車両には、状況に応じて衝突リスクを決定するために、自動車両の軌道を評価し、周囲を認識することができる能動的安全手段を装備されているものもある。その後、車両をその走行車線内に保つために、自動的に、または、車両の運転者と一緒にアクションが行われることがあるものもある。
【0006】
車両をその車線内に自動的に戻すことを可能にする車線維持補助(lane keeping assist)(頭字形式でLKA)システムとして知られるもの、または、車線を離れることを運転者に警告することを可能にする車線逸脱警報(lane departure warning)(頭字形式でLDW)システムとして知られるものが知られている。
【0007】
このことに関して、文献EP2042399-A1への参照が行われ、この文献は、主車両の周囲にある2次車両との衝突リスクを計算することによって、主車両の運転者を補助するためのシステムを提案する。
【0008】
文献US2015149039-A1も知られており、これは、近くの車両との衝突リスクを計算できる車線維持補助システムを記述する。
【発明の概要】
【0009】
しかし、このようなシステムは、カーブ(bend)の場合、近くの車両との衝突までの時間(time to collision)をリアルタイムに計算することを可能にしない。
【0010】
隣の車両との差し迫った衝突の検知を運転者に提供するための運転補助方法およびシステムを改善する必要があり、この検知は、できる限り安全なものであり、直線をカーブと区別することによって車線の形状を考慮に入れる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、主車線の隣の車線にある移動物体または非移動物体との差し迫った衝突リスクを検知するための方法およびシステムを提供することである。
【0012】
本発明の1つの主題は、車両が車線を変更する場合に、自動車両と、自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するためのシステムであり、自動車両は、具体的には、主車線を仮想的に再構築するのに必要な車線境界線の係数を獲得することを可能にした、車両より前の主車線に向けられた、例えば赤外線カメラといった、少なくとも1つの知覚センサ、および、レーダーの視野内にある各2次物体の座標を検知するための少なくとも1つの前面または側面レーダーを備える検知手段を備える。
【0013】
衝突リスクを検知するためのシステムは、直線または曲線(curve)の形の、車線の形状とは関係ない、2点間の線分の長さに対応する、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の実距離を計算するためのモジュール、主車線の線、および主車線の幅に基づいて危険区域を決定するためのモジュール、ならびに、レーダーによって検知された各物体について、予め決定した危険区域内に各物体の座標があるかどうかをチェックするためのモジュールを有した、決定した危険区域内の物体を検知するためのモジュールを備え、危険区域内で検知された各物体のフラグ値をコンピュータに送信する。
【0014】
実距離は、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の直線距離による距離に対応した、レーダーによって送信された距離を変換することによって与えられる。
【0015】
フラグは、例えば、当該の車線と関連付けられた2進数の真値または偽値であり、真は、隣の車線に物体があることを示し、偽は、隣の車線に物体がないことを示す。
【0016】
衝突検知システムは、衝突までの時間推定モジュールをさらに備える。
【0017】
システムは、このように、自動車両が進んでいる主車線の右隣および左隣の車線内の物体を検知し、走行車線の直線的または曲線的形状に関わらず、自動車両と物体との間の実距離を計算することができる。
【0018】
都合のよいことに、衝突までの時間推定モジュールは、物体の軌道が主車線に対して平行であるという前提の下、自動車両と検知物体との間の角度を計算するためのモジュール、道路の形状に関わらず、これらのデータを利用するために、道路に沿って進む相対速度を取得するために、レーダーによって送信された相対速度を道路の軸に射影するためのモジュール、ならびに、実距離および相対速度に基づいて、レーダーによって検知された各物体に対する衝突までの時間を、各検知物体について計算するためのモジュールを備える。
【0019】
例えば、危険区域は、走行車線に沿って進む、および、カメラによって与えられた隣の車線の幅に基づいて、または基準車線幅に基づいて計算された第1の距離によって横方向に間隔を開けられた、2つの実質的な平行線によって定義された、区域の第1の部分、ならびに、第1の線に対して互いの方に向けられ、第1の距離より小さい第2の距離によって横方向に間隔を開けられた、2つの線によって定義された、区域の第2の部分を含み、長距離にわたるレーダーの検知誤差を減らすことを可能にする。具体的には、危険区域にあるとみなされる前に、第2の危険区域の線の間の距離を減らすことによって、検知物体の横方向オフセットが拡大される。
【0020】
危険区域の全長は、車両の走行車線の形状に関わらず固定され、製造業者によってコンピュータで予め定義される。
【0021】
都合のよいことに、システムは、危険区域内の物体の存在を示すためのフラグ、および衝突までの時間に基づいて、これらのうちの最も重要なものを識別するために、レーダーによって検知された物体をフィルタにかけるためのモジュールをさらに備える。
【0022】
例えば、検知物体をフィルタにかけるためのモジュールは、フラグが真の検知物体、つまり危険区域内にある物体だけを保持する第1のフィルタ、車両からの距離、および/または衝突までの時間に基づいて、危険区域内にある最も重要な物体を決定するためのモジュール、ならびに、最も重要な物体との衝突までの時間を閾値と比較するためのモジュールを備える。非限定的な例によれば、検知物体をフィルタにかけるためのモジュールは、動いている物体だけを保持するモジュールを備えることができる。
【0023】
システムは、最も重要な物体との衝突までの時間が閾値以下であるとき、最も重要な物体との衝突までの時間を示すことによって、重要な物体の存在を運転者に警告する信号を送信する警告モジュールをさらに備えることができる。
【0024】
このように、システムは、重要であると考えられる物体を抜き出し、重要な物体の存在のリスク、およびしたがって、標的物体との差し迫った衝突リスクの場合に、警告信号および/または介入信号を出力することを可能にする。
【0025】
車両をその主走行車線に戻すために、車両制御装置(vehicle controls)の制御を行うことができるモジュールを提供することもできる。しかし、このようなモジュールは、さらに記述されない。
【0026】
第2の態様によれば、本発明は、車両が車線を変更する場合に、自動車両と、自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するための、上述のようなコンピュータおよびシステムを備える自動車両に関する。
【0027】
第3の態様によれば、本発明は、自動車両と、自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するための方法に関し、自動車両は、具体的には、主車線を仮想的に再構築するのに必要な車線境界線の係数を獲得することを可能にした、車両の前の主車線に向けられた、例えば赤外線カメラといった、少なくとも1つの知覚センサ、および、レーダーの視野内にある各2次物体の座標を検知するための少なくとも1つの前面または側面レーダーを含む検知手段を含む。
【0028】
方法によれば、決定した危険区域内の物体の存在が検知され、車両と検知物体との間の衝突までの時間が推定される。
【0029】
都合のよいことに、危険区域内の物体の存在を検知するために、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の直線距離による距離に対応した、レーダーによって送信された距離を変換することによって与えられた、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の実距離が計算され、実距離は、直線または曲線の形で、車線の形状に関わらず、2点間の弧の長さに対応し、危険区域は、主車線の線、および主車線の幅に基づいて決定され、レーダーによって検知された各物体について、決定した危険区域内に各物体の座標があるかどうかがチェックされ、危険区域内で検知された各物体のフラグ値がコンピュータに送信される。
【0030】
実距離は、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の直線距離による距離に対応した、レーダーによって送信された距離を変換することによって与えられる。
【0031】
フラグは、例えば、当該の車線と関連付けられた2進数の真値または偽値であり、真は、隣の車線に物体があることを示し、偽は、隣の車線に物体がないことを示す。
【0032】
衝突までの時間を推定するステップにおいて、物体の軌道が主車線に対して平行であるという前提の下、自動車両と検知物体との間の角度を計算することができ、道路の形状に関わらずこれらのデータを利用するために、レーダーによって送信された相対速度の道路の軸への射影として相対速度を計算することができ、実距離および相対速度に基づいて、各検知物体に対して、レーダーによって検知された各物体に対する衝突までの時間を計算することができる。
【0033】
都合のよいことに、最も重要な検知物体は、フラグが真の検知物体、つまり危険区域内にある物体をフィルタにかけることによって、ならびに、車両からの距離、および/または衝突までの時間に基づいて、検知物体のうちの最も重要なものを決定することによって決定される。
【0034】
最も重要な物体との衝突までの時間を閾値と比較することもでき、最も重要な物体との衝突までの時間が閾値以下であるとき、例えば、最も重要な物体との衝突までの時間を示すことによって、重要な物体の存在、およびしたがってリスクの存在を運転者に警告する信号が出力される。
【0035】
本発明の他の目的、特徴、および長所は、非限定的な例として単に示される以下の説明を読み、添付の図面を参照すると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明による、自動車両と2次物体との間の衝突リスクを検知するためのシステムを概略的に示す。
【
図2】衝突リスクを検知するための、
図1からのシステムによって決定された危険区域を概略的に示す。
【
図3】
図1のシステムによって実行される、本発明による、衝突リスクを検知するための方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、自動車両が車線を変更する場合に、つまり、主走行車線から隣の走行車線に車両が移動するとき、自動車両と、自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するためのシステムを非常に概略的に示す。
【0038】
「2次物体」は、安全バリアなどの非移動物体、または、主車両と同じ方向もしくは逆方向に移動する2次自動車両などの移動物体を意味するものとみなされる。
【0039】
衝突リスクを検知するためのシステム10は、自動車両に備えつけられた検知手段(図示せず)から生じるデータを取り出すためのモジュール12を備える。
【0040】
検知手段は、具体的には、主車線を仮想的に再構築するのに必要な車線境界線の係数a、b、c、dを獲得することを可能にした、車両の前の主車線に向けられた、例えば赤外線カメラといった、少なくとも1つの知覚センサを備える。
【0041】
検知手段は、レーダーの視野内にある各2次物体の座標X、Yを検知するための、少なくとも1つの前面または側面レーダー(図示せず)も備える。
【0042】
衝突リスクを検知するためのシステム10は、決定した危険区域Z内の物体を検知するためのモジュール20、および、衝突までの時間を推定するためのモジュール30をさらに備える。
【0043】
図1に示されるように、決定した危険区域Z内の物体を検知するためのモジュール20は、以下の方程式を使用して、係数a、b、c、dから道路Ylineの方程式を再構築するためのモジュール22を備える。
Yline=d.x
3+c.x
2+b.x+a (Eq.1)
ここで、
a、b、c、dは、カメラによって送信された車線の線を特徴づける係数であり、
xは、縦の距離である。
【0044】
決定した危険区域Z内の物体を検知するためのモジュール20は、次に、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の実距離LABを計算するためのモジュール24を備える。
【0045】
実距離LABは、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の直線距離による距離に対応した、レーダーによって送信された距離Xを変換することによって与えられる。
【0046】
実距離L
ABは、以下のデカルトの方程式による、2点A、Bの間の弧の長さに対応する。
ここで、
車両レーダーの縦軸を基準にすると、
x
Aは、レーダーの原点に対する車両の縦位置であり、
x
Bは、レーダーによって検知された物体のこの同じ軸上の位置であり、
Yline’は、Ylineの導関数である。
【0047】
ここで、
および
と書くことにより、
実距離L
ABは、以下の方程式を使用してこのように取得される。
【0048】
このように計算された実距離LABは、直線または曲線の形で、車線の形状に関わらず、2点AとBの間の線分の長さに対応する。
【0049】
決定した危険区域Z内の物体を検知するためのモジュール20は、危険区域Zを決定するためのモジュール26を備える。
【0050】
図2に詳細に示された危険区域Zは、実質的に平行であり、走行車線に沿って進む2つの線L1によって定義された、区域の第1の部分Z1を含み、2つの線L1は、カメラによってもたらされた隣の車線の幅に基づいて、または基準車線幅に基づいて計算された距離D1によって横方向に間隔を開けられる。
【0051】
危険区域Zは、斜めの形状を形成するように、第1の線L1に対して互いの方に向けられた2つの線L2によって定義された、区域の第2の部分Z2を含む。2つの線L2は、距離D2によって横方向に間隔を開けられ、長距離にわたるレーダーの検知誤差を減らせるようにする。具体的には、検知物体が危険区域Z内にあるとみなされる前に、第2の危険区域Z2の線の間の距離を減らすことによって、検知物体の横方向オフセットY2が拡大される。
【0052】
危険区域Zの全長は、車両の走行車線の形状に関わらず固定され、製造業者によってコンピュータで予め定義される。
【0053】
物体検知モジュール20は、レーダーによって検知された各物体について、予め決定した危険区域Z内に各物体の座標(LAB,Y)があるかどうかをチェックするためのモジュール28を備える。
【0054】
危険区域Z内で検知された各物体について、フラグFが掲げられる。フラグは、例えば、当該の車線と関連付けられた2進数の真値または偽値であり、真は、隣の車線に物体があることを示し、偽は、隣の車線に物体がないことを示す。
【0055】
図1に示されるように、衝突までの時間TTC(time to collision)を推定するためのモジュール30は、物体の軌道が主車線に対して平行であるという前提の下、自動車両と検知物体との間の角度α
objectを計算するためのモジュール32を備える。角度α
objectは、以下の方程式によって定義される。
α
object=d.x
2+c.x+b (Eq.5)
【0056】
モジュール30は、道路の形状に関わらずこれらのデータを利用するために、レーダーによって送信された、xおよびyに関する相対速度Vrelx、Vrelyを変換するためのモジュール34をさらに備える。
【0057】
レーダーによって送信された検知物体のxおよびyに関する相対速度Vrelx、Vrelyは、以下の方程式を使用して、道路に沿って進む相対速度Vrelx_roadを取得するために、道路の軸上にこのように射影される。
Vrelx_road=cos(αobject).Vrelx+sin(αobject).Vrely (Eq.6)
【0058】
TTCを推定するためのモジュール30は、最後に、以下の方程式を使用して、レーダーによって検知された各物体に対する衝突までの時間TTCを、各検知物体について計算するためのモジュール34を備える。
【0059】
衝突検知システム10は、レーダーによって検知された物体のうちの最も重要なものを識別するために、これらの物体をフィルタにかけるためのモジュール40をさらに備える。
【0060】
検知物体をフィルタにかけるためのモジュール40は、危険区域Z内の物体の存在にフラグを付けるフラグベクトルFiのセット、および、検知物体との衝突までの時間TTCiをこのように受け取り、ここで、iは、1からnの間の整数である。
【0061】
フィルタモジュール40は、フラグが真の検知物体、つまり危険区域Z内にある物体だけを保持する第1のフィルタ42を備える。
【0062】
非限定的な例によれば、検知物体をフィルタにかけるためのモジュール40は、動いている物体だけを保持するモジュールを備えることができる。
【0063】
フィルタモジュール40は、車両からの距離LAB、および/または衝突までの時間TTCに基づいて、危険区域Z内にある最も重要な物体を決定するためのモジュール44を備える。
【0064】
フィルタモジュール40は、次に、最も重要な物体との衝突までの時間TTCを閾値STTCと比較するためのモジュール46を備える。最も重要な物体との衝突までの時間TTCが閾値STTC以下の場合、重要な物体の存在を運転者に警告する信号を警告モジュール50が送信し、最も重要な物体との衝突までの時間TTCを示す。
【0065】
車両をその主走行車線に戻すために、車両制御装置の制御を行うことができるモジュールを提供することもできる。しかし、このようなモジュールは、さらに記述されない。
【0066】
図3は、主車線から隣の車線に車両が車線を変更する場合に、自動車両と、自動車両の主走行車線の隣の走行車線にある2次物体との間の衝突リスクを検知するための方法60を実行するための流れ図を示す。
【0067】
第1のステップ62において、自動車両に備えつけられた検知手段(図示せず)から生じたデータが取り出される。
【0068】
検知手段は、具体的には、主車線を仮想的に再構築するのに必要な車線境界線の係数a、b、c、dを獲得することを可能にした、車両の前の主車線に向けられた、例えば赤外線カメラといった、少なくとも1つの知覚センサを備える。
【0069】
検知手段は、レーダーの視野内にある各2次物体の座標X、Yを検知するための、少なくとも1つの前面または側面レーダー(図示せず)も備える。
【0070】
同時に、ステップ70において、危険区域Z内の物体が検知され、ステップ80において、車両と検知物体との間の衝突までの時間が推定される。
【0071】
ステップ90において、最も重要な検知物体が決定され、最後に、ステップ100において、重要な物体がある場合、警告信号が出力される。
【0072】
危険区域Z内の物体を検知するステップ70において、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の直線距離による距離に対応した、レーダーによって送信された距離Xを変換することによって与えられた、自動車両と、レーダーによって検知された各物体との間の実距離LABが計算される。
【0073】
実距離L
ABは、以下の方程式2に従って、2点A、Bの間の弧の長さに対応する。
ここで、
車両レーダーの縦軸を基準にすると、
x
Aは、レーダーの原点に対する車両の縦位置であり、
x
Bは、レーダーによって検知された物体のこの同じ軸上の位置であり、
Yline’は、方程式Eq.1を使用して決定されたYlineの導関数である。
【0074】
ここで、
および
と書くことにより、
実距離L
ABは、以下の方程式を使用して、このように取得される。
【0075】
このように計算された実距離LABは、直線または曲線の形で、車線の形状に関わらず、2点AとBの間の線分の長さに対応する。
【0076】
次に、ステップ76において、危険区域Zが決定され、これは、
図2に詳細に示されているが、走行車線に沿って進む2つの実質的な平行線L1によって定義された、区域の第1の部分Z1を含み、2つの線L1は、カメラによってもたらされた隣の車線の幅に基づいて、または基準車線幅に基づいて計算された距離D1またはオフセットによって横方向に間隔を開けられる。
【0077】
危険区域Zは、斜めの形状を形成するように、第1の線L1に対して互いの方に向けられた2つの線L2によって定義された、区域の第2の部分Z2を含む。2つの線L2は、距離D2によって横方向に間隔を開けられ、長距離にわたるレーダーの検知誤差を減らせるようにする。具体的には、検知物体が危険区域Z内にあるとみなされる前に、第2の危険区域Z2の線の間の距離を減らすことによって、検知物体の横方向オフセットY2が拡大される。
【0078】
危険区域Zの全長は、車両の走行車線の形状に関わらず固定され、製造業者によってコンピュータで予め定義される。
【0079】
次に、レーダーによって検知された各物体について、ステップ76において予め決定した危険区域Z内に各物体の座標(LAB,Y)があるかどうかが、ステップ78においてチェックされる。
【0080】
危険区域Z内で検知された各物体について、フラグFが掲げられる。フラグは、例えば、当該の車線と関連付けられた2進数の真値または偽値であり、真は、隣の車線に物体があることを示し、偽は、隣の車線に物体がないことを示す。
【0081】
図3に示されるように、衝突までの時間TTCを推定するステップ80の中で、ステップ82において、物体の軌道が主車線に対して平行であるという前提の下、自動車両と検知物体との間の角度α
objectが計算される。角度α
objectは、以下の方程式によって定義される。
α
object=d.x
2+c.x+b (Eq.5)
【0082】
次に、相対速度Vrelx_roadは、道路の形状に関わらずこれらのデータを利用するために、レーダーによって送信された、xおよびyに関する相対速度Vrelx、Vrelyの道路の軸への射影として、ステップ84において計算される。
【0083】
道路に沿って進む相対速度Vrelx_roadは、以下の方程式を使用して、このように取得される。
Vrelx_road=cos(αobject).Vrelx+sin(αobject).Vrely (Eq.6)
【0084】
以下の方程式を使用して、レーダーによって検知された各物体に対する衝突までの時間TTCが、各検知物体について最後に計算される。
【0085】
最も重要な検知物体を決定するステップ90の中で、ステップ92において、フラグが真の検知物体、つまり危険区域Z内にある物体は、フィルタをかけられる。
【0086】
非限定的な例として、動いている物体だけが保持されることも可能である。
【0087】
危険区域Z内にある最も重要な物体が、次に、ステップ94において、車両からの距離LAB、および/または衝突までの時間TTCに基づいて決定され、ステップ96において、最も重要な物体との衝突までの時間TTCが閾値STTCと比較される。最も重要な物体との衝突までの時間TTCが閾値STTC以下である場合、ステップ100において、重要な物体の存在を警告する信号が運転者に出力され、最も重要な物体との衝突までの時間TTCを示す。
【0088】
したがって、本発明によって、自動車両が進んでいる主車線の右隣および左隣の車線内の物体を検知することができる。
【0089】
走行車線の直線的または曲線的形状に関わらず、自動車両と物体との間の実距離を計算することもできる。
【0090】
最後に、本発明は、重要であるとみなされる物体を抜き出し、重要な物体がある場合、警告信号および/または介入信号を出力することを可能にする。