(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】金属担持粉末触媒マトリックス及び多相化学反応法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20230515BHJP
B01J 8/10 20060101ALI20230515BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20230515BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20230515BHJP
B01J 3/02 20060101ALI20230515BHJP
B01J 3/04 20060101ALI20230515BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20230515BHJP
C07C 35/40 20060101ALI20230515BHJP
C07C 29/145 20060101ALI20230515BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230515BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01J8/10 301
B01F27/90
B01J3/00 A
B01J3/00 B
B01J3/02 A
B01J3/02 101A
B01J3/04 D
B01J3/04 F
B01J3/04 G
B01J23/44 Z
C07C35/40
C07C29/145
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020555502
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(86)【国際出願番号】 US2018027020
(87)【国際公開番号】W WO2019199294
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ピー.ハープ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エー.クノップ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイ.ナピア,ザ サード
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-525751(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046589(WO,A1)
【文献】特表平11-505469(JP,A)
【文献】特開2004-261633(JP,A)
【文献】特開昭55-099345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
B01J 8/00- 8/46
B01F 27/00-27/96
B01J 3/00- 3/08
B01J 21/00-38/74
C07C 35/40
C07C 29/145
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの相を有する多相反応のための反応システムであって、該反応システムは、
回転可能なインペラシャフトに付いた少なくとも1つのインペラブレードを有してなる攪拌タンク反応容器と、
少なくとも1つの液相反応体を含む液相と、
少なくとも1つの気相反応体を含む気相と
を含んでなり、
該回転可能なインペラシャフトは触媒物品に回転可能に取り付けられ、該触媒物品は多孔質フィブリル化ポリマー膜を含み、かつ、該多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子が含まれ、
該多孔質フィブリル化ポリマー膜は、固定化触媒ディスク又はディスクスタックの形態であり
、
該担持触媒粒子は、該多孔質フィブリル化ポリマー膜の微細構造内に非共有結合的に固定化されて
おり、
該担持触媒粒子は、多孔質担体基材上及び/又は多孔質担体基材内に分散された少なくとも1つの微細分割金属触媒を含み、かつ
該反応システムは水素化のために構成されている、
反応システム。
【請求項2】
前記触媒物品は接触器として構成されていない、請求項1記載の反応システム。
【請求項3】
前記インペラブレードは傾斜している、請求項1記載の反応システム。
【請求項4】
前記ディスクスタックは、固定化触媒ディスクを分離する介在スペーサを備えた複数の固定化触媒ディスクを含む、請求項1記載の反応システム。
【請求項5】
前記固定化触媒ディスクの中に、前記ディスクスタックを通して反応混合物を循環させるための貫通孔を有する、請求項4記載の反応システム。
【請求項6】
前記反応システムは撹拌タンクオートクレーブ反応器システムである、請求項1記載の反応システム。
【請求項7】
前記液相反応体及び前記気相反応体は前記触媒物品を横切って通過して流れる、請求項1記載の反応システム。
【請求項8】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は30%~95%の多孔度を有する、請求項1記載の反応システム。
【請求項9】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、多相化学反応における反応体及び生成物に対して不溶性である、請求項1記載の反応システム。
【請求項10】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ乳酸又はそれらの任意の組み合わせ若しくはブレンドを含む、請求項1記載の反応システム。
【請求項11】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含む、請求項1記載の反応システム。
【請求項12】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項1記載の反応システム。
【請求項13】
少なくとも3つの相を有する多相反応のための連続フロー反応システムであって、該反応システムは、
多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含んでなる触媒物品と、
少なくとも1つの液相反応体を含む液相と、
少なくとも1つの気相反応体を含む気相と、
該触媒物品を横切って通過する該液相反応体及び気相反応体の連続流のために構成されている反応容器と
を含んでなり、
該担持触媒粒子は、該多孔質フィブリル化ポリマー膜の微細構造内に非共有結合的に固定化されており
、
該触媒物品は、チューブ、又は、チューブ状アレイに束ねられた複数のチューブの形態であ
り、
該担持触媒粒子は、多孔質担体基材上及び/又は多孔質担体基材内に分散された少なくとも1つの微細分割金属触媒を含み、かつ
該反応システムは水素化のために構成されている、
反応システム。
【請求項14】
前記触媒物品は接触器として構成されていない、請求項13記載の反応システム。
【請求項15】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、多相化学反応における反応体及び生成物に対して不溶性である、請求項13記載の反応システム。
【請求項16】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ乳酸又はそれらの任意の組み合わせ若しくはブレンドを含む、請求項13記載の反応システム。
【請求項17】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含む、請求項13記載の反応システム。
【請求項18】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項13記載の反応システム。
【請求項19】
前記多孔性フィブリル化ポリマー膜は30%~95%の多孔度を有する、請求項13記載の反応システム。
【請求項20】
前記反応システムは連続ループ反応器である、請求項13記載の反応システム。
【請求項21】
多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含む、さいの目に切ったテープの形態にある触媒物品と、
少なくとも1つの反応体を有する液相及び少なくとも1つの追加の反応体を有する気相を含む反応混合物と、
該触媒物品及び該反応混合物を含む反応容器と
を含んでなる反応システムであって、
該反応混合物は、該触媒粒子およびその付近を通り移動する自由アクセスを有し
、
該担持触媒粒子は、該多孔質フィブリル化ポリマー膜の微細構造内に非共有結合的に固定化されて
おり、
該担持触媒粒子は、多孔質担体基材上及び/又は多孔質担体基材内に分散された少なくとも1つの微細分割金属触媒を含み、かつ
該反応システムは水素化のために構成されている、
反応システム。
【請求項22】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、多相化学反応における反応体及び生成物に対して不溶性である、請求項21記載の反応システム。
【請求項23】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ乳酸又はそれらの任意の組み合わせ若しくはブレンドを含む、請求項21記載の反応システム。
【請求項24】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含む、請求項21記載の反応システム。
【請求項25】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項21記載の反応システム。
【請求項26】
前記多孔性フィブリル化ポリマー膜は、30%~95%の多孔度を有する、請求項21記載の反応システム。
【請求項27】
少なくとも3つの相を有する多相反応のための反応システムであって、該反応システムは、
回転可能なインペラシャフトに付いた少なくとも1つのインペラブレードを有してなる攪拌タンク反応容器と、
多孔質フィブリル化ポリマー膜を含む触媒物品と、
少なくとも1つの液相反応体を含む液相と、
少なくとも1つの気相反応体を含む気相と
を含んでなり、
該多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子が含まれ、
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、さいの目に切ったテープの形態であり
、
該担持触媒粒子は、該多孔質フィブリル化ポリマー膜の微細構造内に非共有結合的に固定化されて
おり、
該担持触媒粒子は、多孔質担体基材上及び/又は多孔質担体基材内に分散された少なくとも1つの微細分割金属触媒を含み、かつ
該反応システムは水素化のために構成されている、
反応システム。
【請求項28】
前記触媒物品は接触器として構成されていない、請求項27記載の反応システム。
【請求項29】
前記インペラブレードは傾斜している、請求項27記載の反応システム。
【請求項30】
前記液相反応体及び前記気相反応体は、前記触媒物品を横切って通過して流れる、請求項27記載の反応システム。
【請求項31】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、多相化学反応における反応体及び生成物に不溶性である、請求項27記載の反応システム。
【請求項32】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ乳酸又はそれらの任意の組み合わせ若しくはブレンドを含む、請求項27記載の反応システム。
【請求項33】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含む、請求項27記載の反応システム。
【請求項34】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項27記載の反応システム。
【請求項35】
少なくとも3つの相を有する多相反応のための連続フロー反応システムであって、該反応システムは、
多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含む、さいの目に切ったテープの形態にある触媒物品と、
少なくとも1つの液相反応体を含む液相と、
少なくとも1つの気相反応体を含む気相と
連続ループの形態であり、該触媒物品を横切って通過する該液相反応体及び該気相反応体の連続流のために構成されている反応容器と
を含んでなり
、
該担持触媒粒子は、該多孔質フィブリル化ポリマー膜の微細構造内に非共有結合的に固定化されて
おり、
該担持触媒粒子は、多孔質担体基材上及び/又は多孔質担体基材内に分散された少なくとも1つの微細分割金属触媒を含み、かつ
該反応システムは水素化のために構成されている、
反応システム。
【請求項36】
前記触媒物品は接触器として構成されていない、請求項35記載の反応システム。
【請求項37】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、多相化学反応における反応体及び生成物に対して不溶性である、請求項35記載の反応システム。
【請求項38】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ乳酸又はそれらの任意の組み合わせ若しくはブレンドを含む、請求項35記載の反応システム。
【請求項39】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含む、請求項35記載の反応システム。
【請求項40】
前記多孔質フィブリル化ポリマー膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項35記載の反応システム。
【請求項41】
前記多孔性フィブリル化ポリマー膜は、30%~95%の多孔度を有する、請求項35記載の反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、多相化学反応に関し、より具体的には、多相反応システムで使用するための、多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含む多孔質フィブリル化ポリマー膜に関する。
【背景技術】
【0002】
固相として粉末化触媒を利用する多相化学反応システム及び方法は当該技術分野で知られている。しかしながら、三相気液固反応には幾つかの難しい問題がある。1つの困難は、反応のために気体及び液体と固体との実質的に均一な分散又は混合を得ることである。時々、これらの反応に影響を及ぼすときに、気体及び液体は導入されて混合されるが、固体触媒表面に到達する前に分離又は脱混合される。その結果、副反応がしばしば発生し、副生成物の蓄積を引き起こし、危険な状態を引き起こすことがある。不十分な転化は、不適切な混合のもう1つの態様である。二相触媒反応もまた、固体触媒の混合にとって困難である。
【0003】
多相化学反応に関連する問題に対する現在の最も一般的な解決策は、シャフト駆動式インペラミキサーを使用して、液相中で微細分割粉末化触媒をスラリー化することであり、該ミキサーは液体容量の隅々まで容易に混合し、触媒表面領域の分配性を高めるからである。しかしながら、これらの微細分割粉末化触媒は、しばしば、反応器の装填中及び反応後の触媒と生成物との分離のためのろ過中に、広範なオペレータの取り扱いを必要とする。さらに、微細サイズのために、反応器内の表面及びシールの裂け目に付着するため、移送損失しやすくなる。また、反応器内に残留する触媒はプロセスの安全性の懸念につながる可能性がある。例えば、残留触媒が乾燥して、火災や爆発を引き起こす可能性がある。さらに、粉末化触媒の移送損失は正味生産性の低下をもたらす。反応器の装填時に乾燥触媒粉末の発火を防ぐために広範囲にわたる注意深いオペレータの取り扱いが必要とされるので、粉末化触媒の使用には操作性の課題も存在する。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態は、反応システムが(1)回転可能なインペラシャフトに付いた少なくとも1つのインペラブレードを有してなる攪拌タンク反応容器であって、該回転可能なインペラシャフトが触媒物品に回転可能に取り付けられている攪拌タンク反応容器と、(2)少なくとも1つの液相反応体を含む液相と、そして(3)少なくとも1つの気相反応体を含む気相とを含んでなる、少なくとも3つの相を有する多相反応のための反応システムに関する。触媒物品は、多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含む。多孔質フィブリル化ポリマー膜は、固定化触媒ディスク又はディスクスタックの形態であることができる。少なくとも1つの実施形態において、ディスクスタックは、固定化触媒ディスクを分離する介在スペーサを備えた複数の固定化触媒ディスクを含む。また、固定化触媒ディスクの中に、ディスクスタックを通して反応混合物を循環させるための貫通孔を有する。例示的な1つの実施形態において、インペラブレードは傾斜している。反応システムは水素化用に構成されうる。例示的な実施形態において、反応システムは、攪拌タンクオートクレーブ反応器システムである。多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含むことができる。さらに、触媒物品は接触器として構成されていない。代替の実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、さいの目に切ったテープの形態であることができる。
【0005】
別の実施形態は、反応システムが(1)多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含む多孔質フィブリル化ポリマー膜を含む触媒物品と、(2)少なくとも1つの液相反応体を含む液相と、(3)少なくとも1つの気相反応体を含む気相と、そして(4)触媒物品を横切って通る液相反応体及び気相反応体の連続流用に構成された反応容器とを含んでなる、少なくとも3つの相を有する多相反応のための連続フロー反応システムに関する。触媒物品は、チューブ、又は、チューブ状アレイに束ねられた複数のチューブの形態であることができる。代替の実施形態において、触媒物品は、さいの目に切ったテープの形態であることができる。少なくとも1つの実施形態において、反応システムは水素化用に構成されている。多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含むことができる。さらに、多孔質フィブリル化物は約30%~約95%の多孔度を有する。さらに、触媒物品は接触器として構成されていない。
【0006】
さらに別の実施形態は、反応システムが(1)多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部に耐久的に絡められた担持触媒粒子を含む多孔質フィブリル化ポリマー膜を含む触媒物品であって、さいの目に切ったテープの形態である触媒物品と、(2)少なくとも1つの反応体を有する液相及び少なくとも1つの追加の反応体を有する気相を含む反応混合物と、(3)該触媒物品及び該反応混合物を含む反応容器とを含んでなる、少なくとも3つの相を有する多相反応のための連続フロー反応システムに関する。反応混合物は、水素化反応に影響を与えるために、触媒粒子およびその付近を通り移動するための自由アクセスを有する。多孔質フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性PTFE又はPTFEコポリマーを含むことができる。多孔質のフィブリル化ポリマー膜は、多相化学反応における反応体及び生成物に不溶性である。さらに、触媒物品は接触器として構成されていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を例示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0008】
【
図1】
図1は、少なくとも1つの実施形態による、例示的な担持触媒粒子であって、その表面上に微細分割金属を有する担持触媒粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0009】
【
図2】
図2は、少なくとも1つの実施形態による、2つの金属板の間に配置されたスペーサ材料で間隔を置いて配置されたディスクのスタックの分解図である。
【0010】
【
図3A】]
図3Aは、少なくとも1つの実施形態による、ディスクスタックを含むオートクレーブ反応器の概略図である。
【0011】
【
図3B】
図3Bは、少なくとも1つの実施形態による、インペラシャフト上に配置されたスペーサ材料で間隔を置いて配置されたディスクのスタックの概略図である。
【
図3C】
図3Cは、少なくとも1つの実施形態による、担持触媒粒子を含む、さいの目に切ったテープを使用するオートクレーブ反応器の概略図である。
【0012】
【
図4】
図4は、少なくとも1つの実施形態による、チューブ状アレイ内の多孔質フィブリル化ポリマー膜から形成されたチューブを示す画像である。
【0013】
【
図5A】
図5Aは、少なくとも1つの実施形態による、反応器内に固定化されたチューブの上面概略図である。
【0014】
【
図5B】
図5Bは、少なくとも1つの実施形態による、
図5Aに示される反応器を含む反応システムの概略図である。
【0015】
【
図6】
図6は、少なくとも1つの実施形態による、チューブ状アレイを利用する連続ループ反応器の概略図である。
【0016】
【
図7】
図7は、少なくとも1つの実施形態による、担持触媒粒子を含む、さいの目に切ったテープを使用するパーシェーカー反応器の概略図である。
【0017】
【
図8】
図8は、少なくとも1つの実施形態による、撹拌オートクレーブ反応器における多相水素化後の触媒除去ろ過のグラフである。
【0018】
【
図9】
図9は、少なくとも1つの実施形態による、オートクレーブ反応中の圧力の変化のグラフである。
【0019】
【
図10】
図10は、少なくとも1つの実施形態による、撹拌オートクレーブ反応器におけるPd金属装入物1モル当たりの水素及びs-リモネンの多相水素化のバッチ2、3及び4の相対的生産性のグラフである。
【0020】
【
図11】
図11は、少なくとも1つの実施形態による、さいの目に切ったテープを使用する連続ループ反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を例示するために誇張されている場合があり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。本明細書で使用されるときに、「多孔質担持触媒粒子」及び「担持触媒粒子」という用語は、本明細書で互換的に使用されうる。また、「固定化触媒ディスク」及び「ディスク」という用語は、本明細書で互換的に使用されうる。
【0022】
本開示は、多孔質フィブリル化ポリマー膜に耐久的に絡められた多孔質担持触媒粒子を含む触媒膜複合材を対象とする。あるいは、担持触媒粒子は非多孔性又は実質的に非多孔性であることができることに留意されたい。フィブリル化ポリマー膜は、チューブ、ディスク、又は、さいの目に切ったテープの形態を取るように操作することができ、多相反応システムで使用することができる。担持触媒粒子は、多孔質担体基材上に分散された少なくとも1つの微細分割金属触媒から構成される。触媒膜複合材は様々な異なるクラスの多相化学反応で使用することができ、該多相化学反応としては、限定するわけではないが、水素化、水素化分解、ニトロ基還元、水素化脱ハロゲン化、水素化脱硫、水素化分解、水素化脱窒素及び脱酸素化が挙げられる。触媒膜複合材は、攪拌タンクオートクレーブ反応器システム、連続フロー反応器又はパーシェーカー反応器に導入されそして触媒反応を行うために使用されうる。本開示において、触媒物品は接触器として構成されていない(すなわち、多孔質フィブリル化ポリマー膜は反応の相を分離するために使用されない)。
【0023】
多孔質担持触媒粒子は、農薬、工業用化学薬品、特殊化学薬品、フレーバ、香料、食品、燃料、有機発光ダイオードで使用する材料、リソグラフィー用ポリマー、医薬品有効成分、又は、そのような医薬品有効成分の中間体の調製にも使用できる。化学物質の分野では、多孔質担持触媒粒子は、鎮痛剤、脂質、抗炎症剤、スタチン、コレステロール阻害剤、インスリン刺激剤、糖尿病の治療剤、心臓病の治療剤、疼痛薬剤、代謝物、神経伝達物質、アゴニスト、抗ウイルス剤、オピオイド、核酸、酵素阻害剤、抗生物質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、アルカロイド、グリコシド、脂質、非リボソームペプチド、フェナジン、天然フェノール(フラボノイドを含む)、ポリケチド、カラーボディ、ポリマー、テルペン、ステロイド、テトラピロール、アジュバント、多糖類、除草剤、農薬、酵素、抗体及び特定の商業的用途を持つ他の化学物質の調製又は修飾に使用できる。
【0024】
担持触媒粒子は、担体基材上及び/又は担体基材内に担持された少なくとも1つの微細分割触媒金属から形成されている。本明細書で使用されるときに、「微細分割」という用語は、直径が10ミクロン未満の平均粒子サイズを有する粒子又は粒中に存在する触媒金属を示すことが意図される。幾つかの実施形態において、微細分割触媒金属は、直径が約3μm~約0.1nm、約3μm~約5nm、又は、直径が約1μm~約1nmの範囲である。担体基材への組み込みに適した触媒金属としては、周期表のVb族、VIb族、VIIb族、VIIIb族及びIb族の金属から選ばれる元素が挙げられる。金属触媒の非限定的な例としては、コバルト、ニッケル、ラネー型金属又はスポンジニッケル、パラジウム、白金、銅、コバルト、ロジウム、ルテニウム及びレニウムが挙げられる。幾つかの実施形態において、触媒金属の混合物(例えば、パラジウム及びニッケル又は銅クロム酸化物)は担体基材上に分散されている。
【0025】
微細分割金属触媒は当該技術分野で記載される既知の最適化された方法によって、担体基材上及び/又は担体基材内に分散させることができ、該方法としては、限定するわけではないが、沈殿、めっき、原子層堆積及び分子層堆積が挙げられる。触媒金属の塩溶液からの初期湿潤は、基材粒子上に触媒金属を組み込むための方法の1つの非限定的な例である。担体基材上への金属触媒の装填量は、担持触媒粒子の約0.1~約25質量%、約0.5~約15質量%、又は約1~約10質量%の範囲であることができる。担体基材は、約75質量%~約99.9質量%、約85質量%~約99.5質量%、又は約90質量%~99質量%の担持触媒粒子を含むことができる。高い触媒活性は、金属触媒が担体基材を覆うように、及び/又は、担体基材の細孔内に散在するように、微細分割金属触媒を効果的に微細分散させることによって得られる。
【0026】
担体基材は、それが使用される多相触媒反応に影響を及ぼさない限り、特に制限されない。例示的な実施形態において、担体基材は多孔質である。担体基材として使用するための材料の例としては、限定するわけではないが、金属、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、シリカ、粘土、珪藻土(例えば、キーゼルグール)、ゼオライト(例えば、X、Y、A及びZSM)、炭素及び活性炭が挙げられる。少なくとも1つの実施形態において、担体基材は球形であり、約10μm~約300μm、約10μm~約150μm又は約10μm~約30μm、又は、約0.5μm~約10、約0.5μm~5μm、約0.5μm~約4μm、約0.5μm~約3μm、約0.5μm~約2μm、又は、約0.5μm~約1.0μmの範囲の直径を有する。担体基材という用語は限定することが意図されず、粒子、フレーク、繊維、ナノチューブ、ナノ粒子、小板及び粉末は本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
図1は、表面上に微細分割金属を有する例示的な球形担持基材の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0027】
上記のように、担持触媒粒子は、延伸ポリマーマトリックス内に耐久的に絡められている。本明細書で使用される「耐久的に絡められた」という語句は、ポリマー膜のフィブリル化微細構造内に非共有結合的に固定化された担持触媒粒子を記載することが意図される。担持触媒粒子を膜の内部に固定するために別個のバインダは存在しない。さらに、担持触媒粒子は、フィブリル化ポリマー膜の厚さ全体に配置されている。フィブリル化ポリマー膜の多孔性は、液体/気体混合物(液/気相)による担持触媒粒子(固相)への自由なアクセスを可能にする。さらに、多孔質フィブリル化膜は、水銀ポロアイソメトリーによって決定して、約0.1μm~約355μm(又はそれ以上)、約0.1μm~約200μm、約0.1μm~約100μm、又は、約0.1μm~約40μmの細孔サイズを有することができる。
【0028】
フィブリル化ポリマー膜を形成するポリマーは、溶媒不活性又は耐溶媒性ポリマーである。特に、ポリマーは、それが使用される多相化学反応の反応体及び生成物に対して不溶性かつ不活性の両方であることができる。フィブリル化ポリマー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリエチレン、ポリパラキシレン(PPX)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリエチレン(PE)、発泡ポリエチレン(ePE)及びそれらの任意の組み合わせ又はブレンドを含むことができる。本開示全体を通して、「PTFE」という用語は、ポリテトラフルオロエチレンだけでなく、例えば、Brancaの米国特許第5,708,044号明細書、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらの米国特許第7,531,611号明細書、Fordの米国特許第8,637,144号明細書及びXuらの米国特許第9,139,669号明細書に記載されているような、延伸PTFE、変性PTFE、延伸変性PTFE及びPTFEの延伸コポリマーも含むことが意図されると理解されたい。多孔質フィブリル化ポリマー膜はまた、テトラフルオロエチレン、エチレン、ρ-キシレン及び乳酸のうちの1つ以上のモノマーから形成されうる。少なくとも1つの実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、延伸フルオロポリマーの溶媒不活性サブミクロン繊維を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、フィブリル化ポリマー膜は、ノード及びフィブリル微細構造を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜である。PTFE粒子のフィブリルは、他のPTFEフィブリル及び/又はノードと相互接続して、担持触媒粒子の内部及び周囲にネットを形成し、それらを効果的に固定化する。したがって、1つの非限定的な実施形態において、フィブリル化ポリマー膜は、フィブリル化微細構造内の担持触媒粒子を固定化しそして絡ませるPTFEフィブリルのネットワークから形成されうる。
【0030】
多孔質フィブリル化ポリマー膜は、Mitchellらの米国公開第2005/0057888号明細書、Zhongらの米国公開第2010/0119699号明細書、Sassaらの米国特許第5,849,235号明細書、Rudolfらの米国特許第6,218,000号明細書、又は、Mortimer、Jr.の米国特許第4,985,296号明細書に一般的に教示されているような方法で、フィブリル化可能なポリマー粒子を担持触媒粒子とブレンドし、続いて一軸又は二軸延伸することによって形成することができる。本明細書で使用される「フィブリル化」という用語は、フィブリル化ポリマーがノード及びフィブリル微細構造を形成することができる能力を指す。混合は、例えば、湿式又は乾式混合、分散又は凝固によって達成することができる。混合が起こる時間及び温度は、粒子サイズ、使用される材料、共混合される粒子の量などによって様々であり、当業者によって容易に特定される。一軸又は二軸延伸は、当業者に知られており、Goreの米国特許第3,953,566号明細書及びHubisの米国特許第4,478,665号明細書に一般的に記載されているような連続又はバッチプロセスであることができる。
【0031】
本多孔質フィブリル化ポリマー膜は多相触媒反応において利用できる。多相触媒反応には多数のカテゴリーが存在し、気体+液体反応体、気体+液体+第二の非混和性液相反応体、液体+非混和性/液相反応体、又は気体+凝縮液体蒸気相反応体、その他これら反応体の物質相が2種以上存在する様々な組み合わせを、本多孔質フィブリル化ポリマー膜に使用することができる。多孔質フィブリル化ポリマー膜が、例えば、本明細書に記載されるような撹拌タンクオートクレーブ反応器システム、連続ループ反応器又はパーシェーカー反応器に配置されているところで、これらの反応を行うことができる。1つの非限定的な実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、液体中の溶媒和化合物又は非混和性液体混合物中の化合物の水素化に使用されうる。三相反応で使用できる溶媒の非限定的な例としては、低級アルコール(例えば、メタノール及びエタノール)、テトラヒドロフラン及びグリコール(例えば、エチレングリコール及びジエチレングリコール)が挙げられる。溶媒は、装填物の約1質量%~約99質量%、約1質量%~約75質量%又は約1質量%~約50質量%の量で、水素化反応に存在しうる。
【0032】
1つの例示的な実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、撹拌タンク反応容器で使用するために、固定化触媒ディスク210に切断され、
図2に示されるように介在スペーサ220を含むディスクスタック200へとスタックすることができる。介在スペーサ220は、ワッシャー又はスクリム又はプラスチック材料(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)スクリム)であることができる。ディスクスタック200は、ディスクスタック200を一緒にしっかりと保持するためにねじ又はボルトなどにより機械的に相互接続されて上部位置合わせプレート230と下部位置合わせプレート240との間に配置されうる。
【0033】
図3Aを参照すると、ディスクスタック200を含むオートクレーブ反応器300(例えば、攪拌タンク反応容器)の概略図を見ることができる。オートクレーブ反応器300は、オートクレーブタンクリザーバ315に取り外し可能に取り付けられた蓋310を含むことができる。タンクリザーバは加熱マントル320によって覆われている。蓋310は、温度プローブ用の入口330と、水素気体を反応システムに導入するための入口340とを含む。オートクレーブタンク内に冷却ループ350が存在しうる。ディスクスタック200は、インペラブレード370が付いた回転可能なインペラシャフト360に取り付けられ、反応混合物390中に挿入される。インペラブレード370がタンク315内で回転可能であり、反応混合物390を、ディスクスタック200を通して攪拌する限り、インペラブレード370はインペラシャフト360に沿った任意の位置でインペラシャフト360を軸として配置されうることを理解すべきである。さらに、複数のインペラブレードを、ディスクスタック200の上方、下方のいずれか、又は上方と下方に、インペラシャフト360を軸にして配置することができる。
図3Aに示されるインペラブレード370は、限定することが意図されず、インペラブレード370は、1つ以上のブレード、スパイラル構造から形成されることができ、又は、インペラタービンであることができる。
【0034】
図3Bは、インペラシャフト360上のディスクスタック200の拡大図を概略的に示す。示されるように、インペラシャフト360は、ディスクスタック200の中心を通って延在している。貫通孔280は、触媒ディスク210及び介在スペーサ220の平面を通って延在し、ディスクスタック200を通る循環を可能にする。貫通孔280はまた、第一の位置合わせプレート230及び第二の位置合わせプレート240を通って延在している。触媒ディスク210及び介在スペーサ220は、ディスク210及びスペーサ220の貫通孔280が互いに整列して、ディスクスタック200全体を通る孔290を形成するように配置されうることが理解されるべきである。任意の数の貫通孔が触媒ディスク210及び介在スペーサ220内に配置されうる。固定化触媒ディスク210及びスペーサ220の交互スタックは、第一の位置合わせプレート230と第二の位置合わせプレート240との間に配置され、ボルト260及びねじ270によって一緒に保持される。
【0035】
反応混合物390は、三相触媒反応の液/気相を含む。インペラシャフト360及びインペラブレード370はモータ380によって駆動されうる。触媒反応を行うために、インペラブレード370は、取り付けられたディスクスタック200とともに、オートクレーブタンク315内で回転され、タンク315内で混合運動をもたらす。固定化触媒ディスク210を含むディスクスタック200は、反応混合物390がディスク210間及びオートクレーブタンク315を通って再循環されるように、シャフト360とともに回転する。フィブリル化ポリマー膜の多孔質構造のために、反応混合物390中の反応体は、固定化触媒ディスク210を通って移動し、担持触媒粒子上の微細分割触媒と反応することができる。バインダ及び他のポリマーを使用する反応システムとは異なり、固定化触媒ディスク210は、担持触媒粒子の表面をブロックせず、ディスク210およびその付近を通る反応体の移動を可能にする。
【0036】
図3Cに一般的に示されている代替の実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、例えば、本明細書で「さいの目に切ったテープ」と称する幾何学的形状(例えば、正方形、長方形、円、三角形など)に切断又はダイシングすることができる。触媒反応を行うために、インペラブレード370は、タンク315内で混合運動を行い、それにより、さいの目に切ったテープ395を反応混合物390内で運動させる。フィブリル化ポリマー膜の多孔質構造のために、反応混合物390中の反応体は、さいの目に切ったテープ395およびその付近を通って移動し、担持触媒粒子上の微細分割触媒と反応することができる。
【0037】
別の実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、スリットされ又はストリップに切断され、所望のピッチでチューブ状支持部材の周りに、例えば、約40°~約60°で巻かれることができる。適切なチューブ状支持部材の非限定的な例としては、ステンレス鋼ばね、編組ワイヤ、押出多孔質ポリマーチューブ、有孔金属チューブ及びプラスチック又は金属製静的ミキサーが挙げられる。所望の長さ及び巻き付けられたチューブ状支持部材の長さに応じて、巻き付けられたチューブ状支持部材は、チューブを形成するために所望の長さに切断されうる。
図4に概略的に示されるように、チューブ410は、反応器に挿入するために、チューブ状アレイ400に一緒に束ねられることができる。1つの実施形態において、チューブ410はプラスチックフィルム420と一緒に束ねられている。
【0038】
図5A及び5Bを参照すると、これらのチューブ410(又は巻き付けられたチューブ状支持部材)は、それらが固定化されるように、反応器アセンブリ500内に設置されうる。
図5Bに示されるように、チューブ状アレイ400は、ガラスチューブ510(例えば、サイトガラスチューブ)に挿入され、その両端が衛生ガスケット530でシールされうる。ガスケット530は、Viton(商標)衛生ガスケットなどのゴムから形成されうる。チューブ状アレイ400を含むガラスチューブ510は、上流の衛生コネクタ540と下流の衛生コネクタ550との間に取り付けることができる。衛生コネクタ540,550は、ボルト560及びナット565によって一緒に保持されうる。有孔プレート580は上流の衛生コネクタ540に配置され、そして上流の衛生コネクタ540のチューブ545は、流れを分配するためにガラスビーズ
520で満たされることができる。
【0039】
触媒反応を行うために、反応器アセンブリ500は、液/気相を含む反応混合物を含む容器に流体的に接続されうる。反応混合物は、有孔プレート580及びガラスビーズ
520を介して反応アセンブリ500にポンプで送られるか、又は別の方法で供給されうる。有孔プレート580及びガラスビーズ
520の両方は、反応混合物の流れを分配して、それにより、チューブ410を通して均一又は実質的に均一に分配される。反応混合物は、反応器アセンブリ500内に配置されたチューブ410を通過し、そこで、反応混合物中の液/気相は、チューブ410を形成している多孔質フィブリル化ポリマー膜に絡められた担持触媒粒子(固相)と接触する。1つの実施形態において、反応器アセンブリ500は、
図6に一般的に示されそして「充填チューブ状アレイにおける連続ループ反応」というタイトルの以下のセクションで詳細に議論されている連続フロー反応システム600などの連続フロー反応システムに挿入することができる。フィブリル化ポリマー膜の多孔質構造により、反応混合物中の反応体は、反応器アセンブリ500内のチューブ410を通って自由に移動し、担持触媒粒子の表面上の微細分割触媒と反応することができる。さらに、多孔質フィブリル化ポリマー膜の内部の担持触媒粒子の分布は、チューブ410の長さにわたる均一な触媒活性及び分布を可能にする。さらに、反応混合物は、チューブ410の管腔を通してだけでなく、チューブ410間の隙間を通して流れることができる。さらに、反応器アセンブリ500は、粉末又はペレットの従来の充填床と比較して、有利に低い圧力低下を示す。
【0040】
さらに別の実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、本明細書で「さいの目に切ったテープ」と称する幾何学的形状(例えば、正方形又は長方形)などに切断又はダイシングされうる。さいの目に切ったテープは、
図7に概略的に示されているようなパーシェーカー反応器
700で利用することができる。示されるように、三相触媒反応の液/気相を含む反応混合物710を、担持金属触媒を含む、さいの目に切ったテープ720とともにタンク730に入れる。次に、タンク730を気体740(例えば、水素)で加圧する。圧力計760を使用して、タンク730の内圧をモニターすることができる。加熱ジャケット750は、反応プロセスのためにタンク730に熱を提供する。触媒反応に影響を及ぼすために、タンク730を振とうデバイス(図示せず)によって振とうし、それによって、タンク730内で混合運動を作り出す。その結果、さいの目に切ったテープ720を、反応混合物710内で循環させる。フィブリル化ポリマー膜の多孔質構造のために、反応混合物710中の反応体は、さいの目に切ったテープ720およびその付近を通り移動して、担持触媒粒子の表面の微細分割触媒と反応するように自由アクセスを有する。
【0041】
さらなる実施形態において、さいの目に切ったテープの形態の多孔質フィブリル化ポリマー膜を、
図11に示すような連続ループ反応器で使用することができる。連続ループ反応器800は、気体計量ポンプ810、液体計量ポンプ820、さいの目に切ったテープ計量部材870、及びループ反応器800において反応混合物860を周回させるためのポンプ830を含む。気体反応体及び液体反応体は、それぞれ気体及び液体計量ポンプ810,820を介して反応器タンク880に供給され、反応混合物860を形成する。さいの目に切ったテープ850は、さいの目に切ったテープ計量部材870を介して反応混合物860に導入される。触媒反応を行うために、ポンプ830は、タンク880内で反応混合物860の周回移動を起こさせることにより、さいの目に切ったテープ850を反応混合物860内で移動させる。フィブリル化ポリマー膜の多孔質構造のために、反応混合物860中の反応物は、さいの目に切ったテープ859およびその付近を通って移動し、担持触媒粒子上の微細分割触媒と反応することができる。
【0042】
上記の実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマー膜は、長さ方向及び厚さ方向の両方で、担持金属触媒を膜全体に効果的に分配する。さらに、フィブリル化ポリマー膜の多孔性により、多相反応体及び生成物を触媒表面に向けて、また、触媒表面から効率的かつ信頼性高く輸送することができる。さらに、担持触媒粒子が多孔質フィブリル化ポリマー膜のフィブリル内に耐久的に絡められた結果として、触媒損失は最小限に抑えられる。
【0043】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に説明するが、当業者によって適切であると決定される他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0044】
ディスクスタックの形成
【0045】
実施例に記載されている多孔質フィブリル化ポリマー膜を、9つの孔:直径1/4インチの8つの孔及び直径0.380インチのシャフト用の1つの中心孔を有するディスクへとさいの目に切った。次に、これらの固定化触媒ディスクを、ステンレス鋼の位置合わせプレートに取り付けるために、外側の4つの孔でボルトを使用してディスクスタックに組み立てた。ディスクはスタックされそしてワッシャーにより間隔が開けられており、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)延伸プラスチックメッシュ(Dexmet Corporation, Wallingford, Connecticut)のダイカットディスクと同様であった。PVDFメッシュスペーサは厚さが0.020インチ(約0.051cm)であり、ストランド幅が0.010インチ(約0.025cm)であり、ダイヤモンド形の開口部が(LWD)長幅寸法0.158インチ(約0.401cm)であり、短幅寸法(SWD)0.125インチ(約0.318cm)であった。固定化触媒ディスク及びPVDFメッシュスペーサは、ディスクとPVDFメッシュスペーサの間に0.125インチ(約0.318cm)の間隔でワッシャーを使用してスタックした。上部ディスク及び下部ディスクとそれぞれのステンレス鋼位置合わせプレートとの間にも、0.125インチ(約0.318cm)の間隔を保持した。ディスクスタック及びステンレス鋼位置合わせプレートは、ネジ及びナットを使用してボルトで固定された。次に、止めねじを使用して、ディスクスタックがインペラシャフトと反応器装置中で一緒に回転するように、反応器装置(例えば、オートクレーブ反応器又は攪拌反応器)中でディスクスタックをインペラシャフトに固定した。したがって、固定化触媒ディスクは、反応混合物(例えば、液/気相)がディスク間及び反応器のタンクを通って再循環されるように、インペラシャフトとともに回転するであろう。
【0046】
パーシェーカー反応及び反応器の説明
【0047】
「パーシェーカー」としても知られるモデル3910Parr水素化装置(Parr Instrument Company,Illinois)を使用した。反応は、ネオプレンで栓をした500mLParrガラスボトル中で行った。ボトルは、Parr Instrument Companyから市販されている加熱マントル及び金属ガードで覆われていた。反応を行うために、ガラス瓶に100mLのEAQワーキング溶液又は100mLのSigma Aldrichの純度96%のs-リモネンを入れた。次に、実施例に記載されている量の触媒を加えた。ボトルにキャップをして、ネオプレンストッパーを備えたパーシェーカーに取り付け、該ストッパーを通して気体入口ライン及び溶媒に浸した熱電対を追加した。次に、水素で50psi(約0.35MPa)に加圧することにより、ボトルの空気をパージし、繰り返しベントした。
【0048】
パージ後に、ボトルを水素で5psi(約0.035MPa)に加圧し、パーシェーカーを起動し、温度制御設定値をオンにして50℃(EAQワーキング溶液)又は25℃(リモネン)に設定した。その温度に達した後(5~10分)、振とうを停止し、ボトルを50psi(約0.35MPa)に加圧し、圧力リザーババルブを閉じて、システムはボトル及び圧力ゲージへのガスラインを含み、約420mLの水素ヘッドスペースを備えた。次に、シェーカーを4ヘルツ(Hz)の周波数で始動し、ボトル内の圧力を記録し、それぞれの例で記載されるように10分間モニターした。次に、水素化反応の進行を、反応器内の圧力低下に基づいて評価した。
【0049】
撹拌タンクオートクレーブ反応及び装置
【0050】
従来の担持触媒スラリー粉末、及び、多孔質フィブリル化膜に固定化された担持触媒粒子を含むディスクスタックを使用した試験では、同じ1ガロン(約3.79リットル)のオートクレーブタンクを使用した。反応器は、Autoclave Engineers 1ガロン(約3.79リットル)Hastelloy(登録商標)C(ニッケル、モリブデン、クロム及び鉄で構成される耐食性合金)容器、モデル番号N6657HC、定格2200psi(約15.17MPa)であった。容器は、反応器内のベアリング取り付けインペラのために中央駆動シャフトへの磁気カップリングを使用する。磁気カプラーは、実施例に示されているように、ベルトドライブを介して外部電気モータ又は空気モータに取り付けられている。攪拌速度は、実施例に記載されているように、毎分300回転(rpm)又は350rpmに設定された。
【0051】
すべての実験で、反応器に以下のように調製した1LのEAQワーキング溶液を入れた。触媒を実施例に記載の量で添加し、室温で水素と共に撹拌しながら、連続的な加圧/減圧を使用して、反応器をパージして空気を除去した。反応器は、容器の蓋のサーモウェルを介して熱電対によってモニターされ、比例積分微分(PID)調整電子温度コントローラを介して制御される電気加熱ジャケットを装備していた。温度制御は、実施例に示された記載温度に設定された。特に断りのない限り、反応器は、反応を開始する前に、撹拌せずに、50psi(約0.35MPA)の水素で1時間、当該温度の+/-2℃の範囲内でチャージして平衡化した。反応の開始時に加熱要素の温度コントローラをオフにした。反応器内の圧力は、反応器の蓋に取り付けられたデジタル圧力計から直接モニターした。
【0052】
反応運転を開始するために、反応器をシールし、水素で記載された設定圧力、例えば、それぞれ50psi(約0.35MPa)又は200psi(約1.38MPa)に加圧した。攪拌を開始し、加熱用温度コントローラをオフにした。実施例に記載されているように、反応の間に、設定された間隔で圧力を記録した。
【0053】
次に、水素化反応の進行は、反応器内の圧力低下に基づいて評価した。反応器はチューブ状の水冷ループを備えており(冷却には使用されなかったが)、実験の実行中に水素で満たされた。これらの実験ではバッフルを挿入しなかったが、実施された実験では、浸漬水冷ループによって幾らかの阻害が発生した。タービンインペラの作用により、攪拌点に低圧ゾーンが作成された。タービンの回転は水素を微細分割された気泡に分解し、それぞれの液体ワーキング溶液に水素を溶解させた。そうすることで、両方の反応体相を触媒表面に届けるのに役立つ泡状混合物が作成された。さらに、インペラの回転作用により、構造化された触媒粒子が遊離形態で存在する例では、液体全体に粉末化触媒の均一懸濁液がもたらされた。
【0054】
各試験後及び運転の間に、反応器を減圧し、ワーキング溶液を排液によって除去し、すべての表面が目に見えてきれいになり、触媒粒子がなくなるまで、反応器をEAQワーキング溶液の揮発性共溶媒を使用して複数のすすぎ及び排液工程にかけた。次に、反応器を乾燥させ、実施例に記載されているように次の反応のためにチャージした。同じ触媒装填を使用する連続実験では、触媒をワットマンナンバー2ろ紙(Thermo Fisher Scientific)上でワーク溶液から真空ろ過して、粉末触媒を回収した。次に、ろ紙を損傷しないように注意して触媒をろ紙から注意深くこすり落とし、次の装填のために反応器に戻した。
【0055】
充填チューブ状アレイにおける連続ループ反応
【0056】
バッチ条件を超えた多相化学反応のために、担体粒子が繊維状多孔質マトリックスに固定化された、多孔質担体粒子上に分散した金属を含む粉末触媒の本発明の範囲の広さをさらに実証するために、連続フロー反応用の以下の実験装置を使用した。
【0057】
約30%~約95%の多孔度を有する多孔質フィブリル化ポリマー膜を0.25インチ(約0.64cm)の幅にスリットし、52°の角度でステンレス鋼ストックスプリング(McMaster-Carr, Robbinsville, NJ, アイテム番号9663K64-WB. Jones パーツ番号732; WB. Jones Spring Company, Wilder, KY)にらせん状に巻き付けた。該ステンレス鋼ストックスプリングは、事前に元の長さの約150%に引き伸ばされ、全長15インチ(約38.1cm)及び公称外直径0.096インチ(約0.244cm)でヒートセットされた。チューブ状の巻き付けられたスプリングを、5インチ(約12.7cm)の間隔で、溶融プラスチックフィルムで所定の位置に固定し、5インチ(約12.7cm)のチューブに切断した。巻き付けられた各チューブは、(約5g/21チューブ又は約0.24g)グラムの膜を有した。
【0058】
21本のチューブを束ねてプラスチックフィルムでしっかりと巻き付け、6インチ(約15.2cm)の可視領域を備えたバイトン(商標)密閉サニタリーサイトグラスに取り付けた。サイトグラスは、1インチ(約2.54cm)のサニタリーフランジコネクタを使用したバイトン(商標)サニタリーガスケットを使用して、連続フロースルー反応器内に取り付けられた。上流のサニタリーコネクタに穿孔を備えたサニタリーガスケットを配置し、チューブ状アレイの前にあるサイトグラスの入口サニタリーフランジのチューブに、流れを分配するためのガラスビーズを充填した。
【0059】
上記の連続フロースルー反応器は、
図6に概略的に示されている回路に取り付けられた。連続フロースルー反応器は、気体及び液体計量ポンプ610,620、背圧弁630、圧力計635、5リットルのガスセパレータフラスコ640、熱電対及びPID制御加熱マントル660及びマグネチックスターラ(図示せず)を備えた5リットル3つ口ガラス丸底フラスコを含む液体サンプ650を含んでいた。セパレータフラスコ640は、蒸発を防ぎ、ガラス凝縮器670で大気にベントし、過剰の水素を大気中に逃がした。すべての回路配管工事は、3/8インチ(約9.5mm)のフッ素化エチレンプロピレン(FEP)チューブ及びステンレス鋼の圧縮継手を使用して行った。
【0060】
システムを準備するために、サンプ丸底フラスコ650に1.75LのEAQワーキング溶液を入れ、システムを窒素でパージした。液体流は、液体計量ポンプ620を使用して300mL/分で開始した。加熱マントル660を50℃に設定し、システム温度を1時間にわたって平衡化した。反応を開始するために、液体計量ポンプ620を600mL/分に増加させ、水素気体計量ポンプ610を毎分2100mLで始動させ、その結果、一次FEPチューブ、及び、バンドルされたチューブ反応器500自体の外側チューブの間の空間に液体と気泡が交互に見えるようになった。背圧弁630は、36psi(約0.25MPA)に設定された弁の前の反応器内の液圧を提供するように調整された。反応器を横切る差圧は0.2psi(約1.38kPa)未満であった。
【0061】
反応を再循環によって開始し、ワーキング流体の20mLサンプルを、15分間隔で反応器の後の0.7μmグラスファイバーシリンジフィルタを通して抜き出した。次に、これらのサンプルを、穏やかな空気流で20分間バブリングすることによって酸化した。次に、各サンプルの5mLアリコートを蒸留水と5分間振とうして、過酸化水素を水相に抽出した。次に、標準化された過マンガン酸塩溶液を使用して各水サンプルを滴定し、H2O2の濃度を定量化した。
【0062】
水銀ポロシメトリー試験
【0063】
多孔度の測定は、Micromeritics MicroActiveソフトウェアバージョン2.0を使用して、Micromeritics AutoPore V水銀ポロシメータ(Micromeritics, Norcross, Ga., USA)で実施した。四重蒸留バージン水銀-99.9995%純度(Bethlehem Apparatus, Bethlehem, PA)を受け取ったまま試験に使用した。試験は、バルブ体積が5cc、ステム体積が0.392ccの固体タイプの針入度計(SN:07-0979)を使用した。複合材サンプルの片を1cmx2cmのストリップに切断し、これらのストリップの十分な量を分析天びんで秤量して、総質量が約0.25gになるようにした。質量を記録した後に、サンプル片を針入度計に入れた。
【0064】
試験パラメータは次のとおりであった。(1)針入度計をAutoPoreの低圧ポートに配置し、50μmHgまで排気した後に、5分間無制限に排気した。(2)次に、針入度計に0.5psia(約3.5kPa)の水銀を充填し、10秒間平衡化し、続いて、窒素を使用して最大30psia(約0.21MPa)まで複数の工程でキャピラリーに圧力を加え、各工程で10秒間平衡化してから、針入度計キャピラリーを使用した標準静電容量測定によって侵入体積を決定した。(3)大気圧に戻った後に、針入度計を低圧ポートから取り外し、次に秤量して、添加された水銀の量を決定した。(4)その後、針入度計をAutoPoreの高圧ポートに入れ、圧力を約60,000psia(約413.7MPa)まで一連の工程で再び増加させ、各工程で10秒平衡化してから、侵入体積測定した。
【0065】
任意の圧力での侵入体積Vは、事前に校正されたキャピラリー(つまり、外側の接点がガラスキャピラリーの外面上の金属コーティングであり、内側の接点が液体水銀であり、誘電体がガラス毛細管である筒形コンデンサー)を用いて容量測定により決定される。総侵入体積をサンプル質量で割ると、比侵入体積(mL/g)が得られる。
【0066】
サンプルが占める体積は、2つの極端な目標圧力、つまり0.5psia(約3.5kPa)と60,000psia(約413.7MPa)で計算された。針入度計には既知の校正済み体積を有するので、この体積と水銀体積の差(低圧での水銀添加後の質量増加及び水銀の密度から決定)により、細孔を含むサンプルの体積が得られる。サンプルの質量をこの低圧での体積で割ると、サンプルのバルク密度が得られる。水銀が侵入体積によって与えられた量だけ細孔に押し込まれている高圧では、骨格密度は、サンプルの質量を調整サンプル体積(例えば、低圧体積から総侵入量を引いたもの)で割ることによって概算することができる。
【0067】
総細孔面積
【0068】
報告される総細孔面積は、一連の中間計算によって決定された。最初に、所与の圧力で充填されている細孔の直径を、ウォッシュバーン式を使用して計算した。
【数1】
【0069】
上式中、Di=i番目の圧力点での細孔直径であり、γ=表面張力であり、θ=接触角であり、Pi=圧力である。次に、i番目の点の平均直径は次のようになる。
【数2】
【0070】
i番目のポイントの増分比侵入体積は、各点(Ii)で取得された総侵入体積から計算した。
【数3】
【0071】
最後に、i番目の点の増分比細孔面積は、増分侵入体積と平均直径から下記式より計算した。
【数4】
【0072】
次に、i番目の点の合計(つまり、累積)比細孔面積を次のように計算した。
【数5】
【0073】
バルク密度
【0074】
サンプルのバルク密度は、すべての開放細孔及び内部ボイド体積を含む固体の密度である。バルク密度は、サンプルの質量を低圧水銀侵入体積で割ることによって計算した。サンプルの質量は、+/-0.01mgの感度の分析天びんで計量することによって決定した。
【数6】
【0075】
骨格密度
【0076】
骨格密度は、すべての開放細孔と内部ボイド体積を除外して計算された中実の密度である。骨格密度は、サンプルの質量を調整サンプル体積(低圧体積から総侵入体積を引いたもの)で割ることによって計算した。サンプルの質量は、+/-0.01mgの感度の分析天びんで計量することによって決定した。
【数7】
【0077】
上式中、VLow
Pressureは0.5psia(約3.5kPa)でのサンプルの体積であり、VHigh
Pressureは60,000psia(約413.7MPa)での総侵入体積である。
【0078】
総多孔度
【0079】
基材内の総多孔度は、単にサンプルのボイド体積をサンプルの総体積で割ったものである。これは次のように計算できる。
【0080】
%多孔度=100*(60,000psia(約413.7MPa)での総侵入体積)/(0.5psia(約3.5kPa)でのサンプルの体積)。
【0081】
厚さ
【0082】
膜の厚さは、Kafer FZ1000/30厚さスナップゲージ(Kafer Messuhrenfabrik GmbH, Villingen-Schwenningen, Germany)の2つのプレートの間に膜を配置することによって測定した。3つの測定値の平均を使用した。
【0083】
試験材料
エチルアントラキノン(EAQ)ワーキング溶液
【0084】
EAQワーキング溶液は、100gのEAQを666mLのトリメチルベンゼン(TMB)及び333mLのリン酸トリオクチル(TOP)の溶液に溶解して調製した。EAQ及びTMBはどちらも、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から取得した。TOPは、TCI Chemical(TCI America,Portland,OR)から取得した。3つの化学物質はすべて試薬グレード(純度>98%)であり、さらに精製することなく受け取ったまま使用した。EAQを6Lマスターバッチ中でTMB/TOP溶液にゆっくりと溶解し、閉鎖ガラス丸底フラスコ内で攪拌しながら、40℃に制御された加熱マントルを介して穏やかな熱を供給した。開始時のEAQワーキング溶液は黄色であった。
【0085】
消費された水素が、実施例で使用されるPd/SiAl触媒のモルベースでの水素化EAQH2の生成に正比例することを確立するために、標準的な過マンガン酸塩過酸化物滴定を使用して別の分析研究を行った。水素の消費量は、H2水素気体圧の変化に正比例する。水素のモル消費量は、生成される生成物に正比例するため、反応性及び生産性の測定基準の計算において、生成物のモル数の直接的な代用として機能する。
【0086】
リモネン溶液
【0087】
40.8gの(-)-リモネン(Acros Organics,Thermo Fisher Scientific,96%,CAS 5989-54-8)を、無水エタノールからなる総量1000mLに溶解した。この溶液は、さらに精製することなく、その後の反応のために、製造されたままで使用した。リモネンと水素の反応は定量的な収率で進行する。したがって、水素の消費量は、生成されるメタンのモル量の直接の代用となる。
【実施例】
【0088】
本明細書で別段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明は、以下の実施例においてさらに規定される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その主旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途及び条件に適合させるために様々な変更及び修正を行うことができる。
【0089】
比較例1
【0090】
0.225グラムの、SiO2-Al2O3担体上の2wt%Pd(0.0045g Pd金属)-Johnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429粉末触媒及び100mLのEAQワーキング溶液を0.5Lパーガラスボトルに装填した。反応の前に、触媒を前処理して、50psi(約0.35MPa)の一定の水素圧で、55℃で1時間、ワーキング溶液中で調整することにより、酸化されたPdが還元状態に戻るようにした。デカンテーションによってワーキング溶液から分離された触媒を前処理した後に、反応器に新しい100mLのEAQワーキング溶液を再装填した。上記の「撹拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで記載されるように、水素化反応を50℃で行った。
【0091】
EAQの水素化は、ワーキング溶液の色が黄色から茶色に変化し、水素の消費が50℃での触媒粉末の10分間の攪拌振とう後の18psi(約0.12MPa)のボトル内の圧力変化によって示されるとおりに成功した。EAQH2への最終的なEAQの転化率は43.7%であった。反応終了時の最終生産性は437であった(消費されたH2モル/Pd金属モルに基づく)。
【0092】
比較例2
【0093】
12.5グラムの、SiO2-Al2O3担体上の2wt%Pd-Johnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429粉末触媒及び1250mLのEAQワーキング溶液を、Autoclave Engineers1ガロン(約3.79L)HASTELLOY(登録商標)C容器、モデル番号N6657HCに装填した。水素化反応は、上記の「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで記載したように、金属ディスクスタック及びスクリーンを備えた標準ピッチブレードタービンを使用して行ったが、上記の固定化触媒ディスクを含まなかった。EAQの水素化は、試験の終了時にワーキング溶液の色が黄色から茶色に変化し、1時間にわたってモニターされた反応器内の73.2psi(約0.505MPa)の圧力変化によって示される水素の消費によって示されるとおりに達成された。
【0094】
試験後に、スラリー状粉末触媒を含む試験流体を、0.7μmミクロンポア定格のガラス繊維フィルタカプセル(Sterlitech Corporation, Kent, WA)を通して重力ろ過した。この試験を達成するために、プランジャーのない50mLポリエチレンルアーシリンジバレル(Terumo Medical Corporation, Somerset, NJ)をカプセルに取り付け、反応後のワーキング溶液中でスラリー化した30mLの触媒をバレルに添加した。フィルタカプセルからのエフルエントを20mLガラスクラスのメスシリンダに集めた。ストップウォッチで測定した時間間隔で体積を記録した。
【0095】
この試験の結果を
図8に、単位時間あたりの流量/面積又はろ過フラックスに関してプロットして記録する。これらの結果は、ワーキング溶液及びスラリー粒子がフィルタを急速に詰まらせ、フラックスがゼロになることを明確に示している。さらに、
図8に示されるように、構造化触媒粒子を絡めて固定化するための多孔質フィブリル化ポリマー膜の使用はフィルタの目詰まりをもたらさなかったが(本発明例1)、固定化されていない構造化触媒粒子はフィルタを詰まらせた(比較例1)。したがって、フィルタを交換し、又は、フィルタから触媒粒子を除去する必要がないため、延伸ポリマーマトリックスを使用することで、処理の容易さが大幅に向上する。EAQH
2への最終的なEAQの転化率は81.1%であった。還元状態での始動を確実にするために触媒が最初に前処理されていないため、生産性は計算されなかった。
【0096】
比較例3
【0097】
約2.5グラムの、SiO2-Al2O3担体上の2wt%Pd-Johnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429粉末触媒及び1000mLのEAQワーキング溶液をAutoclave Engineers 1ガロン(約3.79L)HASTELLOY(登録商標)C容器、モデル番号N6657HCに装填した。水素化反応は、上記の「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで記載されるように、金属ディスクスタック及びスクリーンを備えた標準ピッチブレードタービンを使用して行ったが、上記の固定化触媒ディスクは含まなかった。これについては、反応器を55℃にし、水素で200psi(約1.38MPa)に加圧し、攪拌を開始した。EAQの水素化は、試験終了時にワーキング溶液の色が黄色から茶色へ変化し、水素の消費が1時間にわたってモニターされた反応器内の圧力変化によって示されることで証明されるとおりに達成された。この試験(「バッチ1」と称する)が完了すると、触媒粉末を回収し、上記の「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで記載されるように反応器をクリーニングした。この時点で、ワーキング溶液のろ過及び装置のコーティングで失われた材料を差し引いて、回収触媒が反応器に装填された(この粉末触媒は、次の反応運転/バッチの前に装置のその後の溶媒洗浄でリンスすることによって除去され、触媒の除去は粉末が見えなくなるまで視覚的に評価され、典型的に、バッチごとにすすぐために約3リットルの溶媒(約0.8g/mLの密度)が必要であることに注意されたい)。
【0098】
次に、反応器に新鮮な1000mLのEAQワーキング溶液を入れ、前のバッチと同様に準備し、反応を開始して、別の水素化に成功した(「バッチ2」と称する)。バッチ2に続いて、同じシーケンスを「バッチ3」及び「バッチ4」に対してそれぞれ繰り返した。それぞれ4つのバッチすべての後に、触媒粉末を溶媒ですすぎ、乾燥させた。触媒の最終重量は約1.9グラムであり、フィルタ捕捉及び移動のために出発粉末触媒の約24%が失われたことを示唆した。
【0099】
第一のバッチでのEAQH2へのEAQ転化率は28.5%であった。4つのバッチ後に、297.4gのEAQH2が水素消費量に基づいて生成されたと認められた。第一のバッチ後の生産性は285であった(消費されたH2モル/初期触媒装填でのPd金属モルに基づく)。Sheldon,RA,Chem Ind,12-15,1997に記載されている方法に基づいて、生成された材料廃棄物(すすぎ及び反応溶媒12,000mL*0.8g/mL+触媒0.6g)のグラム及び4つのバッチで生成された生成物のグラムに基づいて32.6のEファクタ(質量廃棄物g/質量生成物)が計算された。
【0100】
比較例4
【0101】
約2.0グラムの、SiO2-Al2O3担体上の2wt%Pd-Johnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429粉末触媒及び1000mLのリモネン溶液をAutoclave Engineers1ガロン(約3.79L)をHASTELLOY(登録商標)C容器、モデル番号N6657HCに装填した。反応は、21℃の室温で反応器を50psi(約0.35MPa)に加圧し、上記の「撹拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで記載されたように、金属ディスクスタック及びスクリーンを備えた標準ピッチドブレードタービンを使用して350rpmで撹拌を開始することによって行ったが、上記の固定化触媒ディスク又はPVDFスクリーンは含まなかった。1時間にわたってモニターされた反応器内の圧力変化によって示されるように、反応は達成された。この試験(「バッチ1」と称する)が完了すると、触媒粉末を回収し、上記の「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで記載されるように反応器をクリーニングした。
【0102】
次に、反応器に、回収された触媒から、ワーキング溶液のろ過及び装置のコーティングで失われた材料を差し引いたものを装填した(この粉末触媒は、その後の反応/バッチの前に、装置のその後の溶媒洗浄でリンスすることによって除去され、触媒の除去は、粉末が見えなくなるまで視覚的に評価され、典型的に、バッチごとにすすぐために約3リットルの溶媒(約0.8g/mLの密度)が必要であることに注意されたい)。次に、反応器に新鮮な1000mLのリモネンワーキング溶液を入れ、前のバッチと同様に準備し、反応を開始して、別の水素化(「バッチ2」と称する)に成功した。バッチ2に続いて、同じシーケンスを「バッチ3」及び「バッチ4」に対してそれぞれ繰り返した。それぞれ4つのバッチすべての後に、触媒粉末を溶媒ですすぎ、乾燥させた。バッチ1、2、3及び4の後の水素消費量は、それぞれ4.6psi(約0.032MPa)、4.5psi(約0.031MPa)、3.7psi(約0.026MPa)及び3.3psi(約0.023MPa)と測定された。消費された水素の一部が酸化された触媒の還元に使われた可能性があるため、第一のバッチの生産性は使用されなかった。第二の、第三の、第四のバッチの生産性はそれぞれ94.3、77.5、67.1であった(消費されたH
2モル/初期触媒装填でのPd金属モルに基づく)。
図10は、それぞれ第二の、第三の及び第四の連続バッチでの相対的な生産性を示している。上記のSheldon,RA,1997に記載されている方法に基づいて、生成された材料廃棄物のグラム数(すすぎ及び反応溶媒9,000mL*0.8g/mL)及び4つのバッチで生産された生成物のグラムに基づいて382.4のEファクタ(質量廃棄物g/質量生成物)を計算した。
【0103】
例1
【0104】
約14.5μmのサイズの、50wt%PTFE及び50wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429Pd/SiO2-Al2O3触媒(2wt%Pd)のブレンドの複合材を、Michellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書に一般的に教示されている方法でブレンドし、その後、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示に従って一軸延伸した。得られた多孔質フィブリル化ePTFE膜には、ePTFEノード及びフィブリルマトリックス内に絡められた固定化された担持触媒粒子が含まれていた。多孔質フィブリル化ePTFE膜は厚さが0.47mmであった。膜は、水銀ポロシメトリーによって、侵入体積が3.17mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が86%であり、総細孔面積が133.25m2/gであり、バルク密度が0.27g/cm3であり、そして骨格密度が1.9g/cm3であった。次に、2.33グラムのこの多孔質フィブリル化ePTFE膜を1cm2の正方形(0.0233グラムのPd金属含有量を表す)にダイシングし、100mLのEAQワーキング溶液を含む0.5Lパーガラスボトルに入れた。EAQの水素化は、ワーキング溶液の色が黄色から茶色に変化し、水素の消費が27psi(約0.19MPa)のボトル内の圧力変化によって示されるとおりに成功し、次いで、50℃で10分間、触媒粉末を撹拌振とうした。EAQH2への最終的なEAQの転化率は40.1%であった。反応終了時の最終生産性は400であった(消費されたH2モル/Pd金属モルに基づく)。
【0105】
例2
【0106】
約14.5μmのサイズの、50wt%のPTFE及び及び50wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429Pd/SiO2-Al2O3触媒(2wt%Pd)のブレンドの複合材を、Michellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書に一般的に教示されている方法でブレンドし、その後、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示に従って一軸延伸した。得られた多孔質フィブリル化ePTFE膜には、ePTFEノード及びフィブリルマトリックス内に絡められた固定化された担持触媒粒子が含まれていた。多孔質フィブリル化ePTFE膜は厚さが0.14mmであった。膜は、水銀ポロシメトリーによって、侵入体積が1.04mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が65%であり、総細孔面積が68m2/gであり、バルク密度が0.62g/cm3であり、そして骨格密度が1.77g/cm3であった。担持触媒粒子を含む多孔質フィブリル化ePTFE膜をダイシングし、上記の「ディスクスタックの形成」というタイトルのセクションで記載されるように、合計25グラムの16個のディスクと15個のPVDFスペーサを備えたディスクスタックに組み立てた。
【0107】
ディスクスタックをインペラシャフトに取り付け、1000mLのEAQワーキング溶液をAutoclave Engineers(Parker Autoclave Engineers,Erie,PA)1ガロン(約3.79リットル)Hastelloy(登録商標)C容器、モデル番号N6657HCに装填した。反応器を200psi(約1.38MPa)に課し、55℃の温度にした。350rpmで撹拌を開始した。水素化反応を、「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで詳細に記載されているように、ディスクスタックが取り付けられた標準ピッチブレードタービン(すなわち、インペラ)を使用して行った。EAQの水素化は、試験の終了時にワーキング溶液の色が黄色から茶色に変化することで示されるとおりに行われ、水素の消費は、1時間にわたってモニターされた反応器内の40.7psi(約0.281MPa)の圧力変化によって示された。
【0108】
反応後に、ワーキング溶液及び反応生成物を含む試験流体を、0.7μmのグラスファイバーフィルタカプセル(Sterlitech Corporation)で重力ろ過した。この試験を行うために、プランジャーのない50mLポリエチレンルアーシリンジバレル(Terumo Medical Corporation)をカプセルに取り付け、反応後のワーキング溶液中でスラリー化した30mLの触媒をバレルに添加した。フィルタカプセルからのエフルエントを、20mLガラス(クラスa)メスシリンダに集めた。ストップウォッチで測定した時間間隔で体積を記録した。結果を表に示し、単位時間あたりの流量/面積又はろ過フラックスに関して
図8にプロットした。生成物回収後の反応器は視覚的にクリーンであった。固定化されていない触媒とは対照的に、フィルタは詰まらず、流れ続けた。EAQH
2への最終的なEAQ転化率は45%であると決定された。還元状態での始動を確実にするために触媒が最初に前処理されていないため、生産性は計算しなかった。
【表1】
【0109】
例3
【0110】
約14.5μmのサイズの、50wt%のPTFE及び及び50wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429Pd/SiO2-Al2O3触媒(2wt%Pd)のブレンドの複合材を、Michellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書に一般的に教示されている方法でブレンドし、その後、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示に従って一軸延伸した。得られた多孔質フィブリル化ePTFE膜には、ePTFEノード及びフィブリルマトリックス内に絡められた固定化された担持触媒粒子が含まれていた。多孔質フィブリル化ePTFE膜は厚さが0.47mmであった。膜は、水銀ポロシメトリーによって、侵入体積が3.17mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が86%であり、総細孔面積が133.25m2/gであり、バルク密度が0.27g/cm3であり、そして骨格密度が1.9g/cm3であった。絡んだ固定化された担持触媒粒子を含む多孔質フィブリル化ePTFE膜をダイシングし、上記の「ディスクスタックの形成」というタイトルのセクションで記載されるように、合計4.5グラムの5個の延伸テープのディスクと4個のPVDFスペーサを備えたPVDFスクリムスペーサを備えたディスクスタックに組み立てた。
【0111】
ディスクスタックをインペラシャフトに取り付け、1000mLのEAQワーキング溶液をAutoclave Engineers1ガロン(約3.79リットル)Hastelloy(登録商標)C容器、モデル番号N6657HCに装填した。反応器を200psi(約1.38MPa)に課し、50℃の温度にした。水素化反応を、「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで詳細に記載されているように、ディスクスタックが取り付けられた標準ピッチブレードタービン(すなわち、インペラ)を使用して行った。EAQの水素化は、試験の終了時にワーキング溶液の色が黄色から茶色に変化することで示されるとおりに行われ、水素の消費は、1時間にわたってモニターされた反応器内の18.7psi(約0.129MPa)の圧力変化によって示された。
【0112】
この試験(「バッチ1」と称する)が完了したときに、触媒粉末を回収し、「撹拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで詳細に記載されているように反応器を洗浄した。次に、ディスクアセンブリを溶媒(空気と接触すると不安定な過酸化物を生成する水素化EAQを除去するために1L)ですすいだ。次に、ワーキング溶液をろ過して、失われた触媒を捕捉した。触媒の損失は最小限であり、ろ紙(約0.01g)の溶媒ホールドアップ又は乾燥変化の範囲内であると判断された。反応器はまた、視覚的にクリーンであることが観察された。すすいだディスクスタック触媒を反応器に装填し、EAQワーキング溶液の新しい1000mL部分を前のバッチと同様に調製した。
【0113】
次いで、水素化反応を開始し、別の水素化(「バッチ2」と称する)をうまくもたらした。バッチ2に続いて、同じシーケンスをそれぞれ「バッチ3」と「バッチ4」に対して繰り返した(ディスクスタックに同じすすぎ溶媒を4つの試験すべてで使用した)。
図9は、第一の試験の時間に対する反応器圧力レートを示している。第一のバッチでのEAQからEAQH
2への転化率は31.2%であると決定された。4回のバッチ処理後に、水素消費量に基づいて228.4gのEAQH
2が生成されたものと認められた。第一のバッチ後の生産性は312.4であった(消費されたH
2モル/初期触媒装填でのPd金属モルに基づく)。上記のSheldon,R.A.,1997に記載されている方法に基づいて、4つのバッチで発生した材料廃棄物のグラム数(すすぎ及び反応溶媒1,000mL*0.8g/mL)及び生成された生成物のグラム数に基づいて、4.7質量廃棄物g/質量生成物のEファクタを計算した。固定化構造化触媒粒子のEファクタは、廃棄物の削減で実証されているように、固定化されていない構造化触媒粒子よりもはるかに優れている。特に、この例では、比較例3と比較して廃棄物の削減が6.7倍優れていた。
【0114】
例4
【0115】
約14.5μmのサイズの、50wt%のPTFE及び及び50wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429Pd/SiO2-Al2O3触媒(2wt%Pd)のブレンドの複合材を、Michellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書に一般的に教示されている方法でブレンドし、その後、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示に従って一軸延伸した。得られた多孔質ePTFE膜には、ePTFEノード及びフィブリルマトリックス内に絡められた固定化された担持触媒粒子が含まれていた。多孔質ePTFE膜は厚さが0.47mmであった。膜は、水銀ポロシメトリーによって、侵入体積が3.17mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が86%であり、総細孔面積が133.25m2/gであり、バルク密度が0.27g/cm3であり、そして骨格密度が1.9g/cm3であった。固定化された担持触媒粒子を含む多孔質フィブリル化ePTFE膜をダイ切断してディスクとし、上記の「ディスクスタックの形成」というタイトルのセクションで記載されるように、合計4.0グラムの5個のディスクを備えたディスクスタックに組み立てた。次に、ディスクスタックをインペラシャフトに取り付けた。
【0116】
1000mLのリモネンワーキング溶液をAutoclave Engineers1ガロンHastelloy(登録商標)C容器、モデル番号N6657HCに装填した。反応器を50psi(約0.34MPa)に課し、21℃の温度にした。350rpmで撹拌を開始した。水素化反応を、「攪拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで詳細に記載されているように、ディスクスタックが取り付けられた標準ピッチブレードタービン(すなわち、インペラ)を使用して行った。反応は、1時間にわたってモニターされた反応器内の圧力変化によって示されるように達成された。
【0117】
この試験(「バッチ1」と称する)が完了したときに、触媒粉末を回収し、ディスクスタックが取り付けられた状態で標準ピッチブレードタービン(すなわち、インペラ)を使用して、上記の「撹拌タンクオートクレーブ反応及び装置」というタイトルのセクションで詳細に記載されるように反応器を洗浄した。この時点で、反応体及び生成物を含むワーキング溶液を反応器から取り出し、真空ろ過によって処理した。反応器は視覚的にきれいに見えたので、次のバッチの準備ができていると認められた。次のバッチの反応を達成するために、反応器に新しい1000mLのリモネンワーキング溶液を入れ、前のバッチと同様に調製し、反応を開始して、別の水素化(「バッチ2」と称する)をうまく行った。バッチ2に続いて、同じシーケンスを「バッチ3」及び「バッチ4」に対してそれぞれ繰り返した。
【0118】
4つのバッチのそれぞれで、回収されたワーキング溶液をろ過し、乾燥した。バッチ1、2、3及び4の後の水素消費量は、それぞれ8psi(約0.06MPa)、6.3psi(約0.043MPa)、6psi(約0.04MPa)及び5.8psi(約0.04MPa)であった。消費された水素の一部が酸化済み触媒の還元に使われた可能性があるため、第一のバッチの生産性は使用されなかった。第二、第三、第四のバッチの生産性はそれぞれ132、125、121であった(消費されたH
2モル/初期触媒装填でのPd金属モルに基づく)。
図10は、この実施例対比較例4のそれぞれのバッチ2~4にわたる相対的生産性を示している。
図10に示されるように、多孔質フィブリル化ポリマー膜に固定化された構造化触媒粒子は、固定化されていない構造化触媒よりも高い生産性を示した。上記のSheldon,R.A.,1997に記載されている方法に基づいて、4つのバッチで発生した材料廃棄物のグラム数(0.01gの触媒損失)及び生成された生成物17.7グラムに基づいて、0.0006質量廃棄物g/質量生成物のEファクタ(質量廃棄物g/質量生成物g)を計算した。固定化構造化触媒粒子のEファクタは、廃棄物の削減で実証されているように、固定化されていない構造化触媒粒子よりもはるかに優れている。特に、この例では、比較例4と比較して廃棄物の削減が180万倍優れていた。
【0119】
例5
【0120】
約14.5μmのサイズの、50wt%のPTFE及び及び50wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)のタイプ429Pd/SiO2-Al2O3触媒(2wt%Pd)のブレンドの複合材を、Michellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書に一般的に教示されている方法でブレンドし、その後、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示に従って一軸延伸した。得られた多孔質ePTFE膜には、ePTFEノード及びフィブリルマトリックス内に絡められた固定化された担持触媒粒子が含まれていた。多孔質ePTFE膜は厚さが0.14mmであった。膜は、水銀ポロシメトリーによって、侵入体積が1.04mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が65%であり、総細孔面積が68m2/gであり、バルク密度が0.62g/cm3であり、そして骨格密度が1.772g/cm3であった。多孔質フィブリル化ePTFE膜を担持チューブ上に形成し、束ねて反応器中でシールし、「充填チューブ状アレイにおける連続ループ反応」というタイトルのセクションで上記に詳細に記載した装置に挿入した。
【0121】
反応装置に装填し、反応の準備をし、上記の「充填チューブ状アレイにおける連続ループ反応」に記載されているように反応を開始した。2時間の操作後に、滴定された抽出H2O2に基づくEAQH2の濃度は0.09モル/Lであり、これはEAQ材料の36%の転化率に対応し、生産性は239であった。2時間の実験の過程で、ワーキング溶液を反応器に582回再循環させ、パスあたり0.06%の転化率を示唆した。この実施例は、多孔質フィブリル化ポリマー膜が連続フロー反応で使用され得ることを実証した。
【0122】
例6
【0123】
この例では、同じ材料を含む第二のチューブアレイ反応器を第一の反応器の真下に直列に追加して、その結果、ワーキング溶液及び気泡は2つのアレイを直列で流れることを除いて、例5で記載したように実験を行った。2時間の操作後に、滴定された抽出H2O2に基づくEAQH2の濃度は0.16モル/Lであり、EAQ材料の50%転化率に対応し、生産性は424であった。
【0124】
2時間の実験の過程で、ワーキング溶液は反応器を582回再循環し、パスあたり0.09%の転化率を示唆した。この例は、フロー反応器内の水素化の程度を単純にスケーリング又は調整して、直列のユニット数によって又は固定化された担持触媒粒子との接触時間を変更することによって、所望の転化率の生成物を生成できることを示している。この実施例は、多孔質フィブリル化ポリマー膜が連続フロー反応で直列に使用されうることを実証している。
【0125】
例7
【0126】
50wt%PTFE及び50wt%Pd/C触媒(5wt%Pd; Alfa Aesar PN A102023-5)のブレンドの複合材を、Mitchellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書で一般的に教示されている方法でブレンドし、PTFE/触媒混合物を形成し、次いで、カレンダロールを通過させた。得られた多孔質ePTFE膜には、ePTFEノード及びフィブリルマトリックス内に絡められた固定化された担持触媒粒子が含まれていた。多孔質フィブリル化ePTFE膜は厚さが0.14mmであった。膜は、水銀ポロシメトリーによって、侵入体積が1.04 mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が50%、総細孔面積が120 m2/g、バルク密度が1.12g/cm3、骨格密度が2.25g/cm3であった。
【0127】
次に、1.12グラムの多孔質フィブリル化ePTFE膜を1cm2の正方形(0.02818グラムのPd金属含有量を表す)にダイシングし、次いで、100mLのs-リモネンを含む0.5Lのパーボトルに入れた。s-リモネンの水素化は、25℃で触媒粉末を10分間撹拌振とうした後に、25psi(約110kPa)のボトル内の圧力変化によって示される水素の消費によって示されるされるように成功した。最終的なリモネン転化率は4.5%であると決定された(転化率は、圧力変化に基づいて消費されたH2のモル数に基づいて生成された生成物のモル数を反応器内のリモネン出発材料のモル数で割ったものx100)。この例は、異なる担持触媒粒子がフィブリル化ポリマー膜に絡むことができ、異なる水素化反応で使用される可能性があることを示している。
【0128】
例8
【0129】
70wt%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び30wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)の5R452Pd/C触媒(Pd/C担持触媒は5wt%Pdであった)の複合ブレンドを、当該技術分野で一般的に知られているような共凝固により製造した。
【0130】
次に、複合ブレンド材料を加熱パンタグラフ上で一軸延伸した。得られた延伸複合材は厚さが0.74mmであった。延伸複合材は、水銀ポロシメトリーによって侵入体積が0.74mL/gであることを特徴として、その結果、総多孔度が60.0%であり、総細孔面積が60.9m2/gであり、バルク密度が0.82g/cm3であり、骨格密度が2.04g/cm3であった。次に、0.1グラムの延伸複合材を1cm2の正方形(0.05グラムのPd金属含有量を表す)にダイシングし、35グラムのニトロベンゼンを400mLのメタノールに分散させた、Buchiglasuster BPC 圧力/水素流量制御を備えたガスインペラ(Mettler Toledo, Columbus, Ohio, USA)及び測定システム(Buchiglasuster, Uster, Switzerland)を備えた1L MP 06RC1圧力撹拌反応器に装填した。反応器をパージし、3barg(約300kPa)に加圧し、再循環ウォータージャケット及び温度コントローラを使用して30℃の温度に設定した。ニトロベンゼンのアニリンへの水素化は、設定された温度及び圧力で0.023モルの水素に比例するBPCによって測定された気体消費量に基づいて成功した。実験に続いて、別々のGC/MS及びNMR測定により、水素気体消費量と一致してアニリンが生成されたことを確認した。
【0131】
例9
【0132】
70wt%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び30wt%のJohnson Matthey(Royston,United Kingdom)の5R452Pd/C触媒(Pd/C担持触媒は5wt%Pdであった)の複合ブレンドを、Mitchellらの米国公開番号第2005/0057888号明細書に一般に教示される方法でブレンドし、次いで、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示に従って一軸延伸した。
【0133】
得られた延伸複合材は厚さが0.544mmであった。延伸複合材は、水銀ポロシメトリーによって侵入体積が0.84mL/gであることを特徴とし、その結果、総多孔度が62.2%であり、総細孔面積が62.1m2/gであり、バルク密度が0.74g/cm3、骨格密度が1.97g/cm3であった。次に、0.1グラムのこの複合材を0.5~1cm2の正方形(0.05グラムのPd金属含有量を表す)にダイシングし、35グラムのニトロベンゼンを400mLのメタノールに分散させた、Buchiglasuster BPC 圧力/水素流量制御を備えたガスインペラ(Mettler Toledo, Columbus, Ohio, USA)及び測定システム(Buchiglasuster, Uster, Switzerland)を備えた1L MP 06RC1圧力撹拌反応器に装填した。反応器をパージし、3barg(約300kPa)に加圧し、再循環ウォータージャケット及び温度コントローラを使用して30℃の温度に設定した。ニトロベンゼンのアニリンへの水素化は、設定された温度及び圧力で0.025モルの水素に比例するBPCによって測定された気体消費量に基づいて成功した。実験に続いて、別々のGC/MS及びNMR測定により、水素気体消費量と一致してアニリンが生成されたことを確認した。
【0134】
本出願の発明は、一般的及び特定の実施形態の両方に関して、上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な修正及び変更を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るという条件で、本発明の修正及び変形を網羅することが意図される。