IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社事業革新パートナーズの特許一覧

特許7279090容器又は平板の成形物及びその樹脂ペレットの製造方法
<>
  • 特許-容器又は平板の成形物及びその樹脂ペレットの製造方法 図1
  • 特許-容器又は平板の成形物及びその樹脂ペレットの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】容器又は平板の成形物及びその樹脂ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/46 20060101AFI20230515BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20230515BHJP
   C08L 5/14 20060101ALI20230515BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230515BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B65D65/46
B65D1/00 110
C08L5/14
C08L101/00
B29C45/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021000991
(22)【出願日】2021-01-06
(62)【分割の表示】P 2019030378の分割
【原出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2021075726
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】510043560
【氏名又は名称】株式会社事業革新パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】森田 成二
(72)【発明者】
【氏名】茄子川 仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】ラクスミ クスマワーダニ
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532334(JP,A)
【文献】特開2013-181134(JP,A)
【文献】特開2014-092668(JP,A)
【文献】特表2018-505239(JP,A)
【文献】特表2010-527384(JP,A)
【文献】特開2017-095628(JP,A)
【文献】特開2011-042168(JP,A)
【文献】特開2005-306919(JP,A)
【文献】特開2011-143561(JP,A)
【文献】特開2020-111732(JP,A)
【文献】特開2007-217684(JP,A)
【文献】特開2016-155940(JP,A)
【文献】特表2014-525488(JP,A)
【文献】特開平02-299555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0073008(US,A1)
【文献】化学大辞典1,日本,共立出版株式会社,1965年03月30日,p.137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 3/00 - 3/28
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B65D 65/00 - 65/46
B65D 1/00 - 1/48
B29C 45/00 - 45/24
B29C 45/46 - 45/63
B29C 45/70 - 45/72
B29C 45/74 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の以下の構造式からなる第1樹脂、
【化1】

を含む樹脂組成物による飲料容器、コップ容器もしくは平板の光成形物又は射出成形物。
(式中、R1およびR2が、アルキル基、アセチル基、アセトニル基(以下に示す化学式)、カルボニル基又はそれらを構造中に含んだ置換基を示す。R1およびR2は、同一又は不同である。
nは、2以上の整数を示す。)
【化2】

【請求項2】
さらにポリメチルメタクリレート(PMMA、アクリル)である第2樹脂を含む
請求項1に記載の飲料容器、コップ容器もしくは平板の光成形物又は射出成形物。
【請求項3】
さらにポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル(HBP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PUR)、アイオノマー樹脂(IO)、フッ素樹脂(FR)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリルスチレン(MS)、ブタジエン樹脂(BDR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルカーボネート(PPC)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ノルボルネン樹脂(NB)、ポリアミド(ナイロン)(PA)、テフロン(登録商標)、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)、アセチルセルロース(CA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シリコン樹脂(SI)、エポキシ樹脂(EP)、木質粉、木質ペレット、竹粉、竹質ペレット、草粉体、草ペレット、紙パウダー、紙ペレット及びポリ乳酸(PLA)のいずれか1つを含む第2樹脂を含む、
請求項1に記載の飲料容器、コップ容器もしくは平板の光成形物又は射出成形物。
【請求項4】
前記第1樹脂が30~60重量%、前記第2樹脂が40~70重量%である請求項2又は請求項3に記載の成形用の飲料容器、コップ容器もしくは平板の光成形物又は射出成形物。
【請求項5】
前記第1樹脂が40~50重量%、前記第2樹脂が50~60重量%である請求項2又は請求項3に記載の成形用の飲料容器、コップ容器もしくは平板の光成形物又は射出成形物。
【請求項6】
植物由来の以下の構造式からなる樹脂、
【化3】

を含む、光成形もしくは射出成形によって作成されたダンベル試験片を用いて計測した引張強度の値が80MPa以上である樹脂組成物による飲料容器、コップもしくは平板の成形物。
(式中、R1およびR2が、アルキル基、アセチル基、アセトニル基(以下に示す化学式)、カルボニル基又はそれらを構造中に含んだ置換基を示す。R1およびR2は、同一又は不同である。
nは、2以上の整数を示す。)
【化4】

【請求項7】
植物由来の以下の構造式からなる第1樹脂、
【化5】

を含む樹脂組成物を押出混練装置に投入する工程と、
前記押出混練装置のノズルから円筒状の樹脂として押し出す工程と、
押し出された前記円筒状の樹脂をペレタイザーでカッティングする工程と、を備え、
直径0.2~3mm、長さ0.2~5mmの、光成形もしくは射出成形可能な樹脂ペレットを製造する製造方法。
(式中、R1およびR2が、アルキル基、アセチル基、アセトニル基(以下に示す化学式)、カルボニル基又はそれらを構造中に含んだ置換基を示す。R1およびR2は、同一又は不同である。
nは、2以上の整数を示す。)
【化6】
【請求項8】
さらにポリメチルメタクリレート(PMMA、アクリル)である第2樹脂を含む
請求項7に記載の樹脂ペレットを製造する製造方法。
【請求項9】
さらにポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル(HBP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PUR)、アイオノマー樹脂(IO)、フッ素樹脂(FR)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリルスチレン(MS)、ブタジエン樹脂(BDR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルカーボネート(PPC)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ノルボルネン樹脂(NB)、ポリアミド(ナイロン)(PA)、テフロン(登録商標)、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)、アセチルセルロース(CA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シリコン樹脂(SI)、エポキシ樹脂(EP)、木質粉、木質ペレット、竹粉、竹質ペレット、草粉体、草ペレット、紙パウダー、紙ペレット及びポリ乳酸(PLA)のいずれか1つを含む第2樹脂を含む、
請求項7に記載の樹脂ペレットを製造する製造方法。
【請求項10】
前記第1樹脂が30~60重量%、前記第2樹脂が40~70重量%である請求項8又は請求項9に記載の樹脂ペレットを製造する製造方法。
【請求項11】
前記第1樹脂が40~50重量%、前記第2樹脂が50~60重量%である請求項8又は請求項9に記載の樹脂ペレットを製造する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 容器又は平板の成形物、及び樹脂ペレットの製造方法に関する。特には生分解性を有している成形物、及び樹脂ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から成形用樹脂材料としてはPP、PE、PET、PC、PMMA、PS、COP、COCなどの化学合成のプラスチックが使われている。現状、これら化学合成のプラスチックは二酸化炭素発生と環境汚染の問題があるものの、これらの問題はほぼ無視されて使われている。
【0003】
このような状況から、作成時に二酸化炭素発生をしないように、植物のような自然の材料の成分から作られる樹脂組成物が開発されている。また、微生物が関与して環境に悪影響を与えない低分子化合物に分解される生分解性を持つ樹脂組成物が開発された。このような植物由来の材料であって生分解性を有する樹脂組成物としてはPLA(ポリ乳酸)がある。ポリ乳酸を使った成形物が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-179694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PLAはとうもろこしやサトウキビから作られるためCO発生は少ないが作成プロセスが多く作成コストが高いという問題があった。また、PLAは50℃以上の高温でないと生分解しないといった材料である。このため廃棄された環境では生分解性が全く得られない。また、耐熱性が悪くコップなどの飲料容器といった成形物の場合は熱湯を注ぐと変形してしまうといった問題がある。また、強度的にも弱く成形物を落下させたり、曲げたり、押したりするとひび割れや傷が発生したり破壊したりする。さらに、成形物を射出成形で作成しようとすると、PLAは流動性が悪く射出成形のサイクル時間が長くなったり、射出成形不良が生じやすいといった成形物の量産上の問題があったりもする。つまり、従来のPLAは、耐熱性、硬度、コスト及び生分解性において課題があった。
【0006】
本発明者らが鋭意研究した結果、植物由来の木材から抽出される非晶質樹脂材料成分を応用することで、耐熱性、硬度、コスト、生分解性において優れた成形用の樹脂組成物を提供する。またこの樹脂組成物を使用した成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の成形用の樹脂組成物は、植物由来の以下の構造式(化1)の第1樹脂を含む。
【化1】
【0008】
成形用の樹脂組成物はさらに、以下の構造式(化2)の第2樹脂を含むことが好ましい。
【化2】
【0009】
成形用の樹脂組成物はさらに、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル(HBP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PUR)、アイオノマー樹脂(IO)、フッ素樹脂(FR)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリルスチレン(MS)、ブタジエン樹脂(BDR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルカーボネート(PPC)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ノルボルネン樹脂(NB)、ポリアミド(ナイロン)(PA)、テフロン(登録商標)、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)、アセチルセルロース(CA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シリコン樹脂(SI)、エポキシ樹脂(EP)及びポリ乳酸(PLA)のいずれかでもよい。またはそれらの複数でもよい。この場合、第1樹脂が30~60重量%、第2樹脂が40~70重量%であることが好ましい。
【0010】
また、樹木、竹、草を凍結粉砕して粉体またはペレット状にした木質粉や木質ペレット、竹粉や竹ペレット、草粉体や草ペレット、あるいは紙を凍結粉砕し粉体化させた紙パウダーを第1樹脂に混練しても良いし上記の第1樹脂と第2樹脂に混練しても良い。これらは非常に低価格であることから混練した樹脂ペレット自体の低コスト化が可能であり低価格化が期待できる。木質粉や木質ペレット、竹粉や竹ペレット、草粉体や草ペレット、あるいは紙パウダーや紙ペレットはそのまま第2樹脂と混合すると耐熱性と強度と流動性が劣化するが第1樹脂と混練することによって耐熱性と強度と流動性は向上し、かつ、生分解性も得られる。この場合も第1樹脂が30~60重量%に混練することが好ましい。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物の成形方法は、樹脂組成物を固化したまま樹脂射出部に投入する工程と、樹脂射出部にて樹脂組成物を加熱及び圧縮して液体化する工程と、液体化した樹脂組成物を加圧して樹脂射出部から金型部に射出する工程と、金型部にて樹脂組成物を冷却して固化させ、金型部から成形物を取り出し工程と、を備える。
さらに、液体化した樹脂組成物にガスを導入して、該ガスを樹脂組成物中に拡散する工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は耐熱性、硬度、コスト、生分解性において優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】射出成形機10及び金型50を使って、射出成形物を成形する概念図である(ガス無し)。
図2】射出成形機10及び金型50を使って、射出成形物を成形する概念図である(ガス有り)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ヘミセルロース及びヘミセルロース誘導体>
本実施形態における樹脂組成物は、植物由来の樹脂成分を含んでいる。この樹脂成分は主として木を構成する成分の1種である。木は主として、セルロース、ヘミセルロース、リグニンという3種類の成分から構成されている。本実施形態の第1樹脂の成分はヘミセルロースである。ヘミセルロースは非晶質であり非常に均一性が良く、また、融解した後の液体は流動性も良く射出成形材料としては好適である。セルロースは結晶性が高く、また、繊維状の物質であり射出成形材料の主成分としては適していない。また、リグニンも結晶性が高く、流動性が悪いことから射出成形材料の主成分としては適していない。ヘミセルロースだけが非晶質材料であり液化した際に射出成形におけるシリンダ内部に均一に流れることが可能である。
【0015】
ヘミセルロースには、マンナン、グルカン、キシラン、キシログルカンといった複合多糖がある。本実施形態においてはこれらのいずれも使うことができる。また、ヘミセルロースにはセルロースが少量含まれていても良いしリグニンが少量含まれていてもいい。ヘミセルロースの中で、キシランが使用されることが好ましい。ヘミセルロースの分子量(重量平均分子量Mw)は一般に1,000~100,000であるが、分子量30,000~100,000の場合、射出成形が行われた際の成形物として強度が良好である。
【0016】
ヘミセルロースは生分解性が良好である。ヘミセルロースはセルロース及びリグニンよりも生分解速度が早く、また、低温、例えば摂氏5度ら高温まで生分解性が良好である。常温においてもヘミセルロースは微生物により分解されて3ヶ月後には水と炭酸ガスとになる。土の中に埋められた場合、ヘミセルロースは土壌中の微生物によって分解される。海水中においてもヘミセルロースは微生物によって分解される。ヘミセルロースは環境に調和した材料である。
【0017】
ヘミセルロースは木の成分であるから化学合成自体が不要である。すなわち、原料の化学合成に伴う二酸化炭素が発生することなく、また植物由来の木は光合成によって二酸化炭素を消費する。ヘミセルロースが射出成形の組成物の第1樹脂として活用されることは、二酸化炭素の発生を減少させる。
【0018】
第1樹脂であるヘミセルロースの基本構造のヘミセルロースは以下の構造式(化1)を有する。分子構造中に以下の構造を含んでいるものを本実施形態においては使うことができる。
【化3】

【0019】
R1及びR2は置換基を表す。R1及びR2は、水素、窒素、アルキル基、アセチル基、ヒドロキシ基、アシル基、アルデヒド基、アミノ基、イミノ基、アリール基、ホスホニル基、プロぺニル基、プロパニル基、アセトニル基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基、ニトロ基、ビニル基、アリル基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アラアルキル基、ベンジル基、シッフ基、アルキレン基、アミル基、アセトアミドメチル基、アダマンチル基、アダマンチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、、Tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシメチル基、ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、シアノエチル基、シクロへキシル基、カルボキシメチル基、シクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、シクロへキシル基、グルコース、へキシル基、イソブチル基、イソプロピル基、メシチル基、トリメチルフェニル基、メトキシメチル基、メシチレンスルホニル基、メシル基、ノシル基、オクタデシルシリル基、ピバロイル基、メトキシベンジル基、メトキシフェニル基、プロピル基、エトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルエトキシメチル基、シアミル基、tert-ブチル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリエチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、トリイソプロピルシリル基、トリル基、トシル基、トリイソプロピルベンゼンスルホニル基、トリチル基、トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メチレン基、バレリル基、メトキシ基、アセトアミド基、トリメチルアンモニウム基、ジアゾ基、炭化水素基などであるがこれらに限定されない。それらを構造中に含む置換基であってもよい。また、フッ素、臭素 、塩素、ヨウ素などでも良いし、それらを構造中に含む置換基であってもいい。また、イオン液体構造を形成するカチオンやアニオンといったイオン化置換基であってもよいし、それらを構造中に含む置換基であってもよい。R1の置換基とR2の置換基とが異なっていてもよい。
【0020】
この基本構造を含むことで生分解性が得られ、また、耐熱性、強度、流動性、透明性が得られる。射出成形が可能であり、射出成形で得られた成形物は、生分解性が有り、耐熱性、強度、流動性、透明性は良好である。なお、nは2以上の整数である。なお、後述するように、木材チップからヘミセルロースの成分が抽出された状態では、R1及びR2が水素である。R1及びR2が水素の場合が「ヘミセルロース」と呼ばれている。R1及びR2が水素であるヘミセルロース自体は、親水性が高いことから水分を取り込みやすい。吸水性が高いと、成形品の用途によっては、寸法、体積、重量が経時的に変化しやすいため好ましくない場合がある。また成型品の用途によっては、成形物の強度、透明性もしくは耐熱性が悪くなる。このような吸水による問題を解決するにはヘミセルロースの分子におけるRを上述のような置換基、アセチル基、アセトニル基、イオン化置換基といった置換基に変更した方が好ましい。水素以外の様々な置換基のヘミセルロースをヘミセルロース誘導体と呼ぶ。代表的なヘミセルロース誘導体においてはR1及びR2がアセチル基となっている。
【0021】
<ヘミセルロース及びヘミセルロース誘導体の作成>
木材を小さく粉砕した破片を木材チップと呼ばれる。この木材チップがブタノールを含んだ水溶液に入れて加熱される。するとこの液体は、ブタノール及びリグニンの相と水及びヘミセルロースの相とに分離する。セルロースは固体として沈殿する。水及びヘミセルロースの相から水を除去することでヘミセルロースの粉体を得ることができる。この粉体のヘミセルロースは基本構造の構造式におけるR1及びR2が水素である。この場合、親水性が高いことから水分を取り込みやすい。このように吸水性が高いと成形物における寸法、体積、重量が経時的に変化しやすく、また成形物自体の強度、透明性、耐熱性が悪くなることがある。
【0022】
そのため、ヘミセルロース自体にアセチル化反応が行われることで構造式におけるR1及びR2の水素をアセチル基に変更し、ヘミセルロース誘導体を作成することができる。アセチル基以外にも、化学反応により構造式におけるR1及びR2を、アセトニル基、プロぺニル基、カルボキシル基等の置換基に変更してこれらのヘミセルロース誘導体を作成することが可能である。ヘミセルロース誘導体を作成することが可能である。このヘミセルロース誘導体の作成は、従来の糖誘導体作成技術で実施された。この糖誘導体作成技術は、山形大学、日本化薬株式会社、株式会社堀場エステック、神戸天然物化学株式会社又は株式会社林原がそれぞれ提案している技術である。
【0023】
<成形用の樹脂組成物>
第1樹脂であるヘミセルロース自体もしくはヘミセルロース誘導体は、それら自体で射出成形可能な樹脂組成物及び射出成形用の樹脂ペレットになる。また、第1樹脂であるヘミセルロース自体もしくはヘミセルロース誘導体は、第2樹脂と混合することができる。射出成形可能な樹脂組成物を得るにはヘミセルロース自体又はヘミセルロース誘導体の粉体と第2樹脂の紛体もしくは第2樹脂ペレット等を混合して押出混練装置に投入すればよい。
【0024】
押出混練装置で、第1樹脂と第2樹脂とが溶融混練されて、混錬された樹脂組成物が押出混練装置のノズルから円筒状に押し出される。その円筒状の樹脂をペレタイザーでカッティングすることで樹脂組成物の樹脂ペレットが作成される。樹脂ペレットは、直径0.2~3mm、長さ0.2~5mmの樹脂細片である。
【0025】
第2樹脂は、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)、ABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル(HBP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PUR)、アイオノマー樹脂(IO)、フッ素樹脂(FR)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリルスチレン(MS)、ブタジエン樹脂(BDR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルカーボネート(PPC)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ノルボルネン樹脂(NB)、ポリアミド(ナイロン)(PA)、テフロン(登録商標)、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)、アセチルセルロース(CA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シリコン樹脂(SI)、エポキシ樹脂(EP)などがあげられるがこれらの樹脂に限られることはない。またはこれらの樹脂の複数でもよい。
また、樹木、竹、草を凍結粉砕して粉体またはペレット状にした木質粉や木質ペレット、竹粉や竹ペレット、草粉体や草ペレット、あるいは紙を凍結粉砕し粉体化させた紙パウダーを第1樹脂に混練しても良いし上記の第1樹脂と第2樹脂に混練しても良い。これらは非常に低価格であることから混練した樹脂ペレット自体の低コスト化が可能であり低価格化が期待できる。木質粉や木質ペレット、竹粉や竹ペレット、草粉体や草ペレット、あるいは紙パウダーや紙ペレットはそのまま第2樹脂と混合すると耐熱性と強度と流動性が劣化するが第1樹脂と混練することによって耐熱性と強度と流動性は向上し、かつ、生分解性も得られる。
【0026】
第2樹脂は以下の構造式(化2)の樹脂を混合することもできる。一例としてポリメチルメタクリレート(PMMA、アクリル)が含まれる。
【化4】
【0027】
ここで、R3は置換基を表し、水素、窒素、アルキル基、アセチル基、ヒドロキシ基、アシル基、アルデヒド基、アミノ基、イミノ基、アリール基、ホスホニル基、プロぺニル基、プロパニル基、アセトニル基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基、ニトロ基、ビニル基、アリル基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アラアルキル基、ベンジル基、シッフ基、アミル基、アセトアミドメチル基、アダマンチル基、アダマンチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、、Tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシメチル基、ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、シアノエチル基、シクロへキシル基、カルボキシメチル基、シクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、シクロへキシル基、グルコース、へキシル基、イソブチル基、イソプロピル基、メシチル基、トリメチルフェニル基、メトキシメチル基、メシチレンスルホニル基、メシル基、ノシル基、オクタデシルシリル基、ピバロイル基、メトキシベンジル基、メトキシフェニル基、プロピル基、エトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルエトキシメチル基、シアミル基、tert-ブチル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリエチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、トリイソプロピルシリル基、トリル基、トシル基、トリイソプロピルベンゼンスルホニル基、トリチル基、トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メチレン基、バレリル基、メトキシ基、アセトアミド基、トリメチルアンモニウム基、ジアゾ基、炭化水素基などであるがこれらに限定されない。また、フッ素、臭素 、塩素、ヨウ素などでも良いし、それらを構造中に含んだ置換基であってもいい。また、イオン液体構造を形成するカチオンやアニオンといったイオン化置換基であってもよい。以上を構造中に含んだ置換基であってもよい。
【0028】
Qは単結合または連結基を表し、Qが連結基である場合、Qとしては、アルキレン基、-O-、-NH2-、カルボニル基などを含む基が挙げられる。Aは単結合であり、Aとしては、アルキレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。なお、nは2以上の整数であり、複数の上記構造式のR3が同一でも異なっても良く、Qも同一であっても異なっていてもよく、AとQとが同一であっても異なっていてもよい。第2樹脂の分子量(重量平均分子量Mw)は1,000~10,000,000であるが、分子量30,000~1,000,000の場合、射出成形が行われた際の成形物として強度が良好である。
【0029】
第1樹脂と第2樹脂とからなる樹脂組成物の樹脂ペレットは、射出成形装置に投入されて、成形金型に応じて様々な形状の成形物を得ることができる。本実施形態の樹脂組成物を使った成形物は、土中もしくは海水中に入れた場合、その樹脂組成物中の第1樹脂が第2樹脂に分子レベルで混ざり合っている。第1樹脂が微生物等によって生分解すると第2樹脂自体も分子レベルで分解することになり生分解が進行する。すなわち、第1樹脂は第2樹脂自体に生分解性を持たせる役割を果たす。この第2樹脂に対しても第1樹脂が生分解性を持たせる役割を果たすことは全く予測できなかったことであった。プラスチックやバイオプラスチックや生分解性プラスチックに携わっている当業者が容易に推測できないことでありこの発明の実施例の実験において実証された。第2樹脂の分子の間に第1樹脂の分子が入り込むことによって第1樹脂が生分解した際に第2樹脂の分子自体が生分解しやすくなると考えられる。
【0030】
また、第1樹脂と第2樹脂を分子レベルで混合した場合、第1樹脂のみに比較し、耐熱性、強度、流動性、転写性、光学特性が向上することが判明した。これは全く予測できなかったことであった。プラスチックやバイオプラスチックや生分解性プラスチックに携わっている当業者が容易に推測できないことでありこの発明の実施例の実験において実証された。これは第1樹脂の分子と第2樹脂の分子が複雑に絡み合うことによって、高温であっても安定し、また、強度も向上し、光学的にも均一な材料となったことから全光線透過率や複屈折が向上したと考えられる。さらに、第1樹脂が融解した際に第2樹脂の溶媒としての機能もするため粘度が下がり流動性が向上し転写性も良くなったと考えられる。
【0031】
<<光成形による成形物>>
<第1実施形態>
第1実施形態ではヘミセルロース誘導体100重量%の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。ヘミセルロース誘導体は、上記構造式で、R1とR2とがアセチル基である。ヘミセルロース誘導体の分子量(重量平均分子量Mw)は100,000である。この樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。また比較例としてPLA(ポリ乳酸)(PLAの分子量((重量平均分子量Mw)は100,000である。)100重量%のダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表1に示す。
【表1】
【0032】
ヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品は、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率が目標値を上回った。また、ヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品は、PLA(ポリ乳酸)100重量%のサンプル品に比べ、すべての評価項目で優れている。なお、第7実施形態及び第8実施形態との関係で、ヘミセルロース誘導体100重量%の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。R1とR2とがアセチル基であるヘミセルロース誘導体を、実施例10という。
【0033】
<第2実施形態>
次に、ヘミセルロース誘導体とPMMAとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体は、上記構造式で、R1とR2とがアセチル基である。PMMAの分子量(重量平均分子量Mw)は120,000である。
【0034】
実施例1ではヘミセルロース誘導体10重量%とPMMA90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例2ではヘミセルロース誘導体20重量%とPMMA80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例3ではヘミセルロース誘導体30重量%とPMMA70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例4ではヘミセルロース誘導体40重量%とPMMA60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例5ではヘミセルロース誘導体50重量%とPMMA50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例6ではヘミセルロース誘導体60重量%とPMMA40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例7ではヘミセルロース誘導体70重量%とPMMA30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例8ではヘミセルロース誘導体80重量%とPMMA20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例9ではヘミセルロース誘導体90重量%とPMMA10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
【0035】
これら9種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表2に示す。なお表2には測定法が掲載されていないが、表1の計測法と同じである。以下の表3から表7までも同様である。
【表2】
【0036】
第2樹脂がPMMAの場合には、PMMAの割合にかかわらず、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率が目標値を上回った。特にPMMAが40重量%から70重量%(ヘミセルロース誘導体60重量%から30重量%)のときは、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている。ヘミセルロース誘導体100重量%と比べても、多くの評価項目で良い結果である。
【0037】
<第3実施形態>
次に、ヘミセルロース誘導体とPCとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体は、上記構造式で、R1とR2とがアセチル基である。PCの分子量(重量平均分子量Mw)は140,000である。
【0038】
実施例11ではヘミセルロース誘導体10重量%とPC90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例12ではヘミセルロース誘導体20重量%とPC80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例13ではヘミセルロース誘導体30重量%とPC70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例14ではヘミセルロース誘導体40重量%とPC60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例15ではヘミセルロース誘導体50重量%とPC50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例16ではヘミセルロース誘導体60重量%とPC40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例17ではヘミセルロース誘導体70重量%とPC30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例18ではヘミセルロース誘導体80重量%とPC20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例19ではヘミセルロース誘導体90重量%とPC10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。なお実施例20は欠番である。
【0039】
これら9種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表3に示す。
【表3】
【0040】
第2樹脂がPCの場合には、PCの割合にかかわらず、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率が目標値を上回った。特にPCが40重量%から70重量%(ヘミセルロース誘導体60重量%から30重量%)のときは、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている。ヘミセルロース誘導体100重量%と比べても、多くの評価項目で良い結果である。
【0041】
<第4実施形態>
次に、ヘミセルロース誘導体とPEとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体は、上記構造式で、R1とR2とがアセチル基である。PEの分子量(重量平均分子量Mw)は160,000である。
【0042】
実施例21ではヘミセルロース誘導体10重量%とPE90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例22ではヘミセルロース誘導体20重量%とPE80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例23ではヘミセルロース誘導体30重量%とPE70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例24ではヘミセルロース誘導体40重量%とPE60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例25ではヘミセルロース誘導体50重量%とPE50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例26ではヘミセルロース誘導体60重量%とPE40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例27ではヘミセルロース誘導体70重量%とPE30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例28ではヘミセルロース誘導体80重量%とPE20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例29ではヘミセルロース誘導体90重量%とPE10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。なお実施例30は欠番である。
【0043】
これら9種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表4に示す。
【表4】
【0044】
第2樹脂がPEの場合には、全光線透過率および複屈折位相差が悪いので、光学部品又は透過性が要求される成形物には適用できない。しかしながら、PEが70重量%以下であれば、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、不純物濃度、及び生分解率が目標値を上回っている。特にPEが40重量%から70重量%(ヘミセルロース誘導体60重量%から30重量%)のときは、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている。ヘミセルロース誘導体100重量%と比べても流動性で良い結果である。
【0045】
<第5実施形態>
次に、ヘミセルロース誘導体とPPとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体は、上記構造式で、R1とR2とがアセチル基である。PPの分子量(重量平均分子量Mw)は200,000である。
【0046】
実施例31ではヘミセルロース誘導体10重量%とPP90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例32ではヘミセルロース誘導体20重量%とPP80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例33ではヘミセルロース誘導体30重量%とPP70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例34ではヘミセルロース誘導体40重量%とPP60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例35ではヘミセルロース誘導体50重量%とPP50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例36ではヘミセルロース誘導体60重量%とPP40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例37ではヘミセルロース誘導体70重量%とPP30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例38ではヘミセルロース誘導体80重量%とPP20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例39ではヘミセルロース誘導体90重量%とPP10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。なお実施例40は欠番である。
【0047】
これら9種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表5に示す。
【表5】
【0048】
第2樹脂がPPの場合には、全光線透過率および複屈折位相差が悪いので、光学部品又は透過性が要求される成形物には適用できない。しかしながら、PPが70重量%以下であれば、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、不純物濃度、及び生分解率が目標値を上回っている。特にPPが40重量%から70重量%のときは、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている。ヘミセルロース誘導体100重量%と比べても、多くの評価項目で良い結果である。
【0049】
<第6実施形態>
次に、ヘミセルロース誘導体とPETとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体は、上記構造式で、R1とR2とがアセチル基である。PETの分子量(重量平均分子量Mw)は300,000である。
【0050】
実施例41ではヘミセルロース誘導体10重量%とPET90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例42ではヘミセルロース誘導体20重量%とPET80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例43ではヘミセルロース誘導体30重量%とPET70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例44ではヘミセルロース誘導体40重量%とPET60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例45ではヘミセルロース誘導体50重量%とPET50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例46ではヘミセルロース誘導体60重量%とPET40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例47ではヘミセルロース誘導体70重量%とPET30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例48ではヘミセルロース誘導体80重量%とPET20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例49ではヘミセルロース誘導体90重量%とPET10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。なお実施例50は欠番である。
【0051】
これら9種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表6に示す。
【表6】
【0052】
第2樹脂がPETの場合には、PETが80重量%以上であると複屈折位相差が悪いので、光学部品には適用できない。しかしながら、PETが70重量%以下であれば、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、不純物濃度、及び生分解率が目標値を上回っている。特にPETが40重量%から70重量%のときは、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている。ヘミセルロース誘導体100重量%と比べても、多くの評価項目で良い結果である。
【0053】
<第7実施形態>
次に、ヘミセルロース誘導体とPMMAとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体はR1とR2がアセトニル基である。アセトニル基を以下に示す。ヘミセルロース誘導体の分子量(重量平均分子量Mw)は100,000である。PMMAの分子量(重量平均分子量Mw)は120,000である。
【化3】
【0054】
実施例51ではヘミセルロース誘導体10重量%とPMMA90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例52ではヘミセルロース誘導体20重量%とPMMA80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例53ではヘミセルロース誘導体30重量%とPMMA70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例54ではヘミセルロース誘導体40重量%とPMMA60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例55ではヘミセルロース誘導体50重量%とPMMA50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例56ではヘミセルロース誘導体60重量%とPMMA40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例57ではヘミセルロース誘導体70重量%とPMMA30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例58ではヘミセルロース誘導体80重量%とPMMA20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例59ではヘミセルロース誘導体90重量%とPMMA10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例60では、R1とR2がアセトニル基のヘミセルロース誘導体100重量%の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
【0055】
これら10種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表7に示す。
【表7】
【0056】
R1とR2とがアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%とR1とR2がアセトニル基のヘミセルロース誘導体100重量%とを比べると、大きな差異はないが若干、R1とR2がアセトニル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品が良い結果である。このため、表1と表7とを比較すると、同じ割合のPMMAであっても、表7の評価項目の方が同じもしくは若干良い結果となっている。また、特にPMMAが40重量%から70重量%のとき、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている傾向も表1と同じである。
【0057】
<第8実施形態>
まず、ヘミセルロース誘導体とPMMAとの割合を変えて、それらを押出混練機で溶融混練し、これらの樹脂組成物の樹脂ペレットを3kg作成した。ヘミセルロース誘導体はR1とR2がカルボキシル基(-COOH)である。ヘミセルロース誘導体の分子量(重量平均分子量Mw)は100,000である。PMMAの分子量(重量平均分子量Mw)は120,000である。
【0058】
実施例61ではヘミセルロース誘導体10重量%とPMMA90重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例62ではヘミセルロース誘導体20重量%とPMMA80重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例63ではヘミセルロース誘導体30重量%とPMMA70重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例64ではヘミセルロース誘導体40重量%とPMMA60重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例65ではヘミセルロース誘導体50重量%とPMMA50重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例66ではヘミセルロース誘導体60重量%とPMMA40重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例67ではヘミセルロース誘導体70重量%とPMMA30重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例68ではヘミセルロース誘導体80重量%とPMMA20重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例69ではヘミセルロース誘導体90重量%とPMMA10重量%との割合の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
実施例70ではR1とR2がカルボキシル基のヘミセルロース誘導体100重量%の樹脂組成物の樹脂ペレットが作成された。
【0059】
これら10種類の樹脂ペレットを使って光成形によって、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。これらのサンプル品を使い、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、流動性、転写性、全光線透過率、複屈折位相差、不純物濃度、及び生分解率を評価した。その評価結果を表8に示す。
【表8】
【0060】
R1とR2とがアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%とR1とR2がカルボキシル基のヘミセルロース誘導体100重量%とを比べると、大きな差異はないが若干、R1とR2がカルボキシル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品が良い結果である。このため、表1と表8とを比較すると、同じ割合のPMMAであっても、表8の評価項目の方が同じもしくは若干良い結果となっている。また、特にPMMAが40重量%から70重量%のとき、耐熱温度、引張強度、曲げ強度及び生分解率が優れている傾向も表1と同じである。
【0061】
以上をまとめると、従来のPLA100%重量のものと比較して、アセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%、アセトニル基のヘミセルロース誘導体100重量%及びカルボキシル基のヘミセルロース誘導体100重量%は、全ての評価項目において良好な結果となっている。さらに、ヘミセルロース誘導体である第1樹脂と第2樹脂とからなる樹脂組成物は、また、第1樹脂が30~60重量%、第2樹脂が40~70重量%である場合が良好な結果が得られていることが理解される。さらに、第1樹脂が40~50重量%、第2樹脂が50~60重量%の場合はさらに良好な結果が得られていることが理解される。
【0062】
<<射出成形(ガス無し)による射出成形物>>
<第9実施形態>
第1実施形態から第8実施形態(実施例1から実施例70)において説明された、第1樹脂と第2樹脂とからなる樹脂組成物の樹脂ペレットを使い、射出成形物が作成された。
【0063】
図1は、射出成形機10及び金型50を使って、射出成形物を成形する概念図である。図1(a)は、樹脂組成物の樹脂ペレットRPを樹脂射出部にて加熱し液体化する状態を示した図である。(b)は、液体化された樹脂組成物を樹脂射出部から金型部に射出する状態を示した図である。(c)は、金型部を開いて樹脂成形物を取り出す状態を示した図である。
【0064】
(射出成形機の構成)
射出成形機10は、樹脂組成物の樹脂ペレットRPを入れるホッパー11と、ホッパー11から樹脂ペレットRPが入るシリンダ12と、シリンダ12内に配置される回転可能なスクリュー13と、シリンダ12の外側に配置されたヒータ14とを備えている。またスクリュー13は、駆動部15によって金型方向とその逆方向に移動可能である。シリンダ12の先端のノズル16から液体化した樹脂組成物が射出される。
【0065】
金型50は、固定側金型52と移動側金型54とからなり、固定側金型52と移動側金型54とが密着した状態で、空洞のキャビティ56が形成される。キャビティ56には、液体化した樹脂組成物が入る孔であるスプールブッシュ55が形成されている。
【0066】
(射出成形機の成形方法)
樹脂ペレットRPは、スクリュー13の回転によって計量されながらホッパー11から落ちていく。そして、樹脂ペレットRPは、スクリュー13の回転・混練によって発生する摩擦熱及びヒータ14の熱によって溶融(液体化)される。そして計量され液体化された樹脂組成物は、スクリュー13を金型方向に駆動部15によって移動することで、シリンダ12の先端のノズル16から樹脂組成物が金型50のスプールブッシュ55を通ってキャビティ56に射出される。キャビティ56に射出された樹脂組成物は、金型50内で冷却され固化される。その後の移動側金型54が移動し、射出成形機10のノズル16もスプールブッシュ55から離れて、成形物MDが取り出される状態となる。成形物MDは、金型50から自動落下で取り出されたり不図示の取り出し器で取り出されたりする。
【0067】
成形物MDは、第1実施形態から第8実施形態と同様に、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。評価結果を表9A(第9実施形態その1)から表9G(第9実施形態その7)に示す。成型品であるので、新たに成形サイクルタイム、成形物欠陥密度、成形物重さの項目が評価対象として追加された。一方、流動性、複屈折位相差及び不純物濃度の項目が評価対象から外れた。なお、樹脂組成物に関して、第1及び第2実施形態の実施例が第9実施形態その1の実施例に対応し、第3実施形態の実施例が第9実施形態その2の実施例に対応し、それ以降順に対応し、最後に第8実施形態の実施例が第9実施形態その7に対応する。
【0068】
【表9A】
【0069】
【表9B】
【0070】
【表9C】
【0071】
【表9D】
【0072】
【表9E】
【0073】
【表9F】
【0074】
【表9G】
【0075】
第1実施形態と第9実施形態の実施例10とを比べて理解されるように、光成形によるアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品と、射出成形によるアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品とは、耐熱強度、引張強度等は同じである。
【0076】
第9実施形態その1に示されるように、第1樹脂と第2樹脂とからなる樹脂組成物は、従来のPLA100%重量のものと比較し射出成形に関する、成形サイクル時間、成形物欠陥密度、及び成形物重さの評価項目において良好な結果となっている。また、第1樹脂が30~60重量%、第2樹脂が40~70重量%である場合が良好な結果が得られていることが理解される。さらに、第1樹脂が40~50重量%、第2樹脂が50~60重量%の場合はさらに良好な結果が得られていることが理解される。第1樹脂と第2樹脂とからなる樹脂組成物は、環境問題及び海洋汚染問題を解決する生分解性が高く、また射出成形物が容易に作成可能となる。
【0077】
<<射出成形(ガスあり)による射出成形物>>
<第10実施形態>
第1実施形態から第8実施形態(実施例1から実施例70)において説明された、第1樹脂と第2樹脂とからなる樹脂組成物の樹脂ペレットを使い、射出成形物が作成された。第9実施形態と異なり、第10実施形態では、射出成形機10又は金型50の少なくとも一方に不活性ガスを供給している。
【0078】
図2は、射出成形機10及び金型50を使って、射出成形物を成形する概念図である。図2(a)は、樹脂組成物の樹脂ペレットRPを樹脂射出部にて加熱し液体化する状態を示した図である。(b)は、液体化された樹脂組成物を樹脂射出部から金型部に射出する状態を示した図である。(c)は、金型部を開いて樹脂成形物を取り出す状態を示した図である。
【0079】
(射出成形機の構成)
図1で描かれた射出成形機10及び金型50と同一の部材には同じ符号が付されている。図1と異なる点について説明し、同じ符号については説明を割愛する。シリンダ12には、ポンプPPがつながったガス供給管18が備えられている。またポンプPPがつながったガス供給管58が備えられている。ポンプPPは、不活性ガスなどを液体化した樹脂組成物に供給する。これにより成形物が発泡を有することになる。なお、液体化した樹脂組成物への不活性ガスなどの供給は、射出成形機10又は金型50の少なくとも一方に設けられれば良い。
【0080】
発泡用のガスは、窒素、ヘリウムやアルゴンなどの希ガスに代表される不活性ガス、熱可塑性樹脂に溶解しやすく良好な可塑剤効果を示す二酸化炭素、炭素数1~5の飽和炭化水素およびその一部水素をフッ素で置換したフロン、水、アルコールなどの液体の蒸気等などである。本実施形態では、発泡用のガスとして二酸化炭素を使用した。
【0081】
(射出成形機の成形方法)
以下の成形方法は、射出成形機10及び金型50の両方で液体化した樹脂組成物へガスを供給する方法である。
樹脂ペレットRPは、スクリュー13の回転によって計量されながらホッパー11から落ちていく。そして、樹脂ペレットRPは、スクリュー13の回転・混練によって発生する摩擦熱及びヒータ14の熱によって溶融(液体化)される。溶融した樹脂組成物に、ポンプPPからガスが導入され液体中にガスが拡散させられる。そして計量され液体化された樹脂組成物は、スクリュー13を金型方向に駆動部15によって移動することで、シリンダ12の先端のノズル16からガスが拡散した樹脂組成物が金型50のスプールブッシュ55を通ってキャビティ56に射出される。
【0082】
キャビティ56に射出された樹脂組成物は、まずポンプPPからガスが導入され液体中にガスが拡散させられる。その後ガスを含む樹脂組成物は金型50内で冷却され固化される。その後の移動側金型54が移動し、射出成形機10のノズル16もスプールブッシュ55から離れて、成形物MDが取り出される状態となる。成形物MDは、金型50から自動落下で取り出されたり不図示の取り出し器で取り出されたりする。
【0083】
成形物MDは、第1実施形態から第8実施形態と同様に、ダンベル試験片、短冊試験片、ディスク基板、コップ及び平板のサンプル品が作成された。評価結果を表10A(第10実施形態その1)から表10G(第10実施形態その7)に示す。
【0084】
【表10A】
【0085】
【表10B】
【0086】
【表10C】
【0087】
【表10D】
【0088】
【表10E】
【0089】
【表10F】
【0090】
【表10G】
【0091】
第9実施形態の実施例10と第10実施形態の実施例10とを比べて理解されるように、射出成形によるアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品と発泡射出成形によるアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品とは、発泡射出成形によるアセチル基のヘミセルロース誘導体100重量%のサンプル品が、成形サイクル時間等の射出成形に関する評価項目も、耐熱強度、引張強度等の項目も良くなっている。また、第1樹脂が30~60重量%、第2樹脂が40~70重量%である場合が良好な結果が得られていることが理解される。さらに、第1樹脂が40~50重量%、第2樹脂が50~60重量%の場合はさらに良好な結果が得られていることが理解される。
【0092】
さらに、第9実施形態の表(その1からその7)と第10実施形態の表(その1からその7)とを比べて理解されるように、第2樹脂が、PMMA、PC、PE、PP、PETのすべてで、成形サイクルタイム、成形物欠陥密度、成形物重さ、耐熱温度、引張強度、曲げ強度、転写性、全光線透過率、及び生分解率で性能が向上している。この結果から、本実施形態の樹脂組成物は、特にガスを使った発泡射出成形の成形方法が好ましい。
【0093】
特に実施例として挙げられていないが、樹脂ペレットとともに発泡剤をホッパーから供給して、発泡射出成形する技術がある。本実施形態の樹脂組成物は、発泡剤をホッパーから供給する場合でも性能が向上すると予想できる。また樹脂ペレット内に発泡剤を含んでいる樹脂ペレットを供給しても良い。さらに、樹脂ペレット内に発泡用のガスとして、窒素、ヘリウムやアルゴンなどの希ガスに代表される不活性ガス、熱可塑性樹脂に溶解しやすく良好な可塑剤効果を示す二酸化炭素、炭素数1~5の飽和炭化水素およびその一部水素をフッ素で置換したガス等などを含むものを供給しても良い。
【符号の説明】
【0094】
10… 射出成形機、 11…ホッパー、 12…シリンダ、 13…スクリュー
14…ヒータ、 15…駆動部、 16…ノズル、 18…ガス供給管
50…金型、 52…固定側金型、 54…移動側金型、 55…スプールブッシュ
56…キャビティ、 58…ガス供給管
PP…ガスポンプ

図1
図2