(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】高密度炭素欠陥構造を含有する二次電池用電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230515BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230515BHJP
H01M 4/26 20060101ALI20230515BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20230515BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20230515BHJP
H01M 10/36 20100101ALI20230515BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230515BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20230515BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/66 A
H01M4/26 H
H01M4/24 H
H01M12/08 K
H01M10/36 Z
H01M4/02 A
H01M4/88 C
H01M4/96 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021012762
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0030791
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒタク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュヒョク
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-066334(JP,A)
【文献】特開2004-134516(JP,A)
【文献】特開昭62-002472(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155648(WO,A1)
【文献】YU,Hui et al.,RSC Advances,2019年,9,9577-9583
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/66
H01M 4/26
H01M 4/24
H01M 12/08
H01M 10/36
H01M 4/02
H01M 4/88
H01M 4/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含
む炭素欠陥構造を含有する
Znベースの二次電池用電極の製造方法:
(a)電極基材に金属-有機構造体(metal-organic framework;MOF)をコーティングする段階;及び
(b)前記(a)段階でMOFコーティングされた電極基材を炭化させ
、炭素欠陥構造を含有する炭素層を形成する段階。
【請求項2】
前記金属-有機構造体は、
MOF-74、MOF-101、MOF-177、MOF-235、MOF-253、MOF-5、IRMOF-16、UiO-66、UiO-67、UiO-68、MIL-53、MIL-53(Al)-NH
2
、MIL-88A、MIL-88-Fe、MIL-88B-4CH3、MIL-100-Fe、MIL-101、MOF-199、LIC-10、ZIF-8、ZIF-90、CPL-2、F-MOF-1、及びMOP-1からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記金属-有機構造体は、ゼオライトイミダゾール構造体(Zeolitic Imidazole Framework)であることを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記(b)段階は、900~1500℃で3~7時間加熱して炭化させることを特徴とする、請求項3に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記(a)段階前に電極基材を酸化させる段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記炭素欠陥構造は、単一欠失欠陥(Single vacancy defect)構造であることを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記単一欠失欠陥(Single vacancy defect)の密度は、ラマン散乱法で測定時、1585cm
-1バンド(Gバンド)に対して1350cm
-1バンド(Dバンド)の比率(ID/IG)が1.1~2.0であることを特徴とする、請求項
6に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記電極基材は、炭素フェルト、炭素電極、金属(metal)電極、インジウムスズ酸化物(ITO)電極、及びフッ素スズ酸化物(FTO)電極からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
電極の表面
に炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む
、Znベースの二次電池用電極
であって、前記単一欠失欠陥の密度が、ラマン散乱法で測定時、1585cm
-1
バンド(Gバンド)に対して1350cm
-1
バンド(Dバンド)の比率(ID/IG)が少なくとも1.4である、前記電極。
【請求項10】
前記炭素欠陥構造は単一欠失欠陥(Single vacancy defect)構造であることを特徴とする、請求項
9に記載の電極。
【請求項11】
前記単一欠失欠陥(Single vacancy defect)の密度はラマン散乱法で測定時、1585cm
-1バンド(Gバンド)に対して1350cm
-1バンド(Dバンド)の比率(ID/IG)が
1.4~2.0であることを特徴とする、請求項
10に記載の電極。
【請求項12】
請求項
9~11のいずれか一項に記載の電極を含む
Znベースの二次電池。
【請求項13】
前記二次電池は、Zn空気電池、Znイオン電池、Zn-ハロゲンフロー電池、Zn-Feフロー電池及びZn-Ceフロー電池からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項
12に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一に分布した高密度炭素欠陥構造を含有する二次電池用電極及びその製造方法に関し、具体的には、炭素欠陥構造を含有する炭素電極及び電極基材に金属-有機構造体(metal-organic framework;MOF)をコーティングする段階及びMOFコーティングされた電極基材を炭化させ、炭素欠陥構造を含有する炭素層を形成する段階を含む前記電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池とは、外部電源から供給された電流が正極と負極との間における物質の酸化/還元反応を起こす過程で生成された電気を充電する方式で半永久的使用が可能な電池を指す。正極材、負極材、電解質などの4大核心素材で構成される。使い捨て一次電池(primary battery、一般乾電池)が再使用できない他、電池の収去やリサイクルなどに高費用がかかるという短所があるのに対し、二次電池は多回充電ができるという長所がある。また、二次電池はノートパソコン、携帯電話及びカムコーダーなどの持ち歩く電子機器だけでなく電気自動車の核心素材であり、付加価値が高いので、半導体及びディスプレイと共に21世紀‘3大電子部品’とされている。特に、二次電池は2011年基準に世界市場規模が200億ドルを突破し、将来その規模は、電気自動車市場の成長とともに中大型エネルギー貯蔵用二次電池市場の成長へとさらに拡大すると見込まれる。
【0003】
レドックスフロー電池(Redox flow battery)は既存の二次電池とは違い、電解液に溶解した亜鉛、バナジウムなどの活性物質が電子を交換して充電又は放電される電池であり、次世代二次電池として脚光を浴びいている。既存のリチウムイオン電池に比べて寿命が10倍以上長く、使用時間も貯蔵容量によって所望の分だけ増加させることができる。大規模エネルギー貯蔵技術を用いて新再生エネルギー発電システムと発電所、建物と半導体工場の無停電電源装置、無人基地局の電源などに適用できる。
【0004】
二次電池は、継続的な充放電サイクルによって反復使用することを特徴とするので、二次電池の開発において充放電効率及び電池寿命は非常に重要な要素となる。特に、持続した充放電は電池の電極を退化させ、金属イオンのデンドライト(dendrite)形成などによって電池の寿命が急速に短縮する。二次電池分野において、高寿命/高効率電池の開発は関心を受け続けている。
【0005】
二次電池におけるデンドライト形成を防ぐために、様々な電解質添加剤(J.Electrochem.Soc.,2013,160,D519-D523;Electrochim.Acta,2015,159,198-209)、電解質親和性ホスト(Joule,2019,3,1289-1300)、高濃縮電解質(Nature materials,2018,17,543)の添加などの様々な方法が試みられたが、環境汚染、高コストなどの問題からエッコ化、低コスト化の対策が必要である。
【0006】
一方、亜鉛(Zn)は、高容量(820mAh/g)、低い電気化学的電位(0.762V vs.standard hydrogen electrode(SHE))、高い豊富度、低い毒性及び水性電解質における固有の安全性を有する特徴から、最初に電池が登場して以来、化学電池分野に理想的な材料と見なされてきている。特に、Znレドックスフロー電池は高いエネルギー密度及び低い材料費用の点から産業分野における活用可能性が非常に高い。
【0007】
しかし、亜鉛(Zn)ベースの二次電池は他の二次電池と同様に、酸化還元(電着/溶解)過程の非可逆性によって、充放電が続くにつれて電池の寿命が持続して低下する。このような問題は主に悪性Znデンドライト(demonic Zn dendrite)の形成によるものであり、前記悪性Znデンドライは電気的に非連結されたZn電着物又は回路の短絡を生成する(Nat.Commun.,2018,9,3731;Nature materials,2018,17,543;G.P.Rajarathnam,2016;Int.J.Energy Res.,2018,42,903-918など)。Znデンドライトのような不均一なZnの電着は電流密度が高ければ高いほど激しくなるため、バッテリーの出力密度を制限する。
【0008】
上述したような従来の接近法による結果はまだ産業に利用し難い程度の低い電流密度及びサイクリング安定性を示している。デンドライトの形成を防ぐための従来の接近法は、主に、初期Zn電着空間分布がZn電着形態を決定するという認識に基づいている。例えば、Li金属電極技術分野において、電極表面を拡張したり、均一な電場又はLiイオンフラックス(Li ion flux)を誘導することによって、初期Li電着を均一にするために多く努力してきた(Advanced Energy Materials,2018,8,1703505;Nat.Commun.,2019,10,1363;Angew.Chem.,Int.Ed.,2017,56,7764-7768)。かかる接近法は、スカリフカー・ヒルスモデル(Scharifker and Hills model)に基づくものであり、表面にイオンが直接還元されて金属核が成長するという仮定の下に、金属核の生成部位から成長して行くという仮設から提案された(Nano Letters,171132(2017);Energy & Environ.Sci.,7,513(2014))。しかし、このような古典的モデルは、炭素のような低エネルギー基板(low-energy substrate)上のナノスケールのデンドライト形成を説明することができない(Nano Lett.,2017,17,1132-1139;ohn Wiley & Sons,2008)。最近、このような現象を説明するために、初期に形成された核が凝集したり或いは自己整列されてZn樹状突起の進化を誘発するという報告があった(Chem.Mater.,26,2396(2014);J.Phys.Chem.C,116,2322(2012);JACS,135,11550(2013))。しかし、初期に形成された核が凝集されたり或いは自己整列される明確なメカニズムに関する報告はなく、電気電着工程において、透過電子顕微鏡(TEM)及びX線散乱などのin-situ分析から、炭素のような低エネルギー基板において金属アダタム(adatom)及び核の凝集及び癒着によって電気電着が妨害されたことを確認した報告がある(Chemistry of Materials,2014,26,2396-2406)。
【0009】
一方、H.R.Jiang等は、“Towards a uniform distribution of zinc in the negative electrode for zinc bromine flow batteries”(Applied Energy 213(2018)366-374)において、亜鉛-臭素フロー電池(zinc bromine flow batteries)において、単一欠失欠陥(single vacancy defect)が電極表面へのZnの初期核形成及び核の均一な分布に重要な役割を担うことが予想されると報告したことがある。当該文献において、単一欠失欠陥を含有する電極は、炭素フェルト(SGL carbon)に何らの処理無しで500゜Cで加熱して製造した。前記電極の単一欠失欠陥の密度は、ラマン散乱分析時に、約ID/IG=0.99と報告しており、電極表面に亜鉛の均一な分布を報告しており、単一欠失欠陥の電池性能向上への寄与可能性だけを提示している。しかし、実質的な電池性能の向上を示してはおらず、本発明で確認したところによれば、このような低密度(1.09(ID/IG))の単一欠失欠陥を含む電極は、初期に均一な金属核の分布を示すといっても、核の表面移動による自己凝集及びアダタムの局所的癒着によってデンドライトの形成を効果的に抑制できず、むしろ、無欠陥炭素電極に比べて低い電池寿命及びエネルギー効率を示した。
【0010】
かかる技術的背景下で、本出願の発明者らは、従来のデンドライト形成メカニズムから脱皮し、新しい接近法を用いて電池寿命及びエネルギー効率を顕著に向上できる二次電池用電極を開発しようと鋭意努力した結果、金属核の自己凝集及び癒着による新規な電極デンドライト形成のメカニズムを明らかにした。
【0011】
また、明らかになった新規のメカニズムに基づいて、核の自己凝集及び癒着の防止によってデンドライト形成を抑制し、寿命及び効率が増加した電池を開発するために、MOFをコーティングした後に炭化させ、均一に分布した高密度の炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極を製造した。このような努力の結果、H.R.Jiang等の予想とは違い、約1.09(ID/IG)の不均一に或いは低密度に炭素欠陥構造を含有する場合に、却って、無欠陥炭素電極に比べて電池効率が低下することを確認し、また、MOFコーティング及び炭化によって製造した高密度炭素欠陥構造を含有する電極が金属核の自己凝集及び癒着を防止し、金属アダタムが電極の面に沿って金属核の側面に電着する独特の結晶成長によって、デンドライトの形成が抑制され、炭素欠陥構造の密度増加分を遥かに上回って既存電池の30倍以上と電池の寿命及びエネルギー効率を向上させることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、炭素欠陥構造を含有する二次電池用電極の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、表面に炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記電極を含む二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、電極基材に金属-有機構造体(metal-organic framework;MOF)をコーティングする段階及びMOFコーティングされた電極基材を炭化させ、高密度炭素欠陥構造を含有する炭素層を形成する段階を含む前記電極の製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、電極の表面に高密度炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極を提供する。
【0017】
本発明はまた、前記電極を含む二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1は、互いに異なる欠陥炭素構造の密度を有する電極のZn核形成及び発達を概略的に示す図であり、
図1Aは、高密度欠陥炭素構造含有電極におけるZn成長メカニズム、
図1Bは、無欠陥又は低密度欠陥炭素構造含有電極におけるZn成長メカニズムである。
【0019】
図2は、pCF、ZIF-8粉末及びZIF-8コーティングされた炭素フェルト(ZIF-8@CF)の粉末X線回折(powder X-ray diffraction,PXRD)結果である。PXRDは、pCFのZIF-8コーティングされた表面を示す。pCFは、ZIF-8に関連したピークを示さないが、ZIF-8@CF電極は、(110)、(200)、(211)、(310)、及び(222)回折ピークを示す7.2、10.2、12.5、16.0及び17.7゜で回折ピークを示し、これはpCFにZIF-8結晶が成功的に成長したことを意味する。
【0020】
図3A及び
図3Bは、pCF電極に対する様々な倍率のSEMイメージである。
図3C及び
図3Dは、CZ-1電極に対する様々な倍率のSEMイメージである。
図3E及び
図3Fは、CZ-5電極に対する様々な倍率のSEMイメージである。
図3Gは、各電極に対するXRDパターンを示すものである。
図3Hは、各電極に対するラマンスペクトルを示すものである。
図3Iは、各電極に対する高解像度XPS結果を示すものである。
【0021】
図4は、pCF、ZIF-8@CF、CZ-1及びCZ-5電極の高配率SEMイメージである。
【0022】
図5は、pCF、CZ-1及びCZ-5電極の代表的な元素XPS測量結果である。XPS測量スペクトルは、CZ-1において2.41%、CZ-5において1.11%の非常に低いN含有量を示し、Znは信号を示さない。これは、炭化過程でN及びZnが除去されたことを意味する。
【0023】
図6Aは、DFT分析のための完全グラフェン及び欠陥炭素構造を示すものである。
図6Bは、完全グラフェン及び様々な類型の炭素欠陥及びZnアダタム間の吸着エネルギーを比較したものである。
図6C及び
図6Dは、SV
1欠陥炭素表面においてZn原子がC-C結合を横切ったりC-C結合に沿って移動する場合にZnエネルギープロファイルの変化を示すものである。
図6Eは、他のZn結晶平面(赤色点)、SV
1(青色点)、及びG(001)(緑色点)表面とZnアダタム間の吸着エネルギーを比較したものである。
図6Fは、SV
1欠陥を含有する炭素層における段階別Zn核の形成及び成長を概略的に示すものである。
図6Gは、Znアダタム及び核の表面自己拡散及び凝集を概略的に示すものである。
【0024】
図7は、無結合グラフェン及び異なる欠陥炭素構造のHOMO及びLUMOを示すものである。電子密度は0.012auのiso-valueで示し、赤色及び緑色は反対符号を表す。
【0025】
図8は、Znアダタム複合体を有するG(001)及びSV
1のHOMO及びLUMOを示すものである。電子密度は0.012auのiso-valueで示し、赤色及び緑色は反対符号を表す。
【0026】
図9は、無欠陥グラフェン及び様々な欠陥炭素構造のZnアダタムと相互作用する最適化された原子構造を示すものである。
【0027】
図10は、100mA/cm
-2において1.2分間pCF及びCZ-5電極に電着されたZnのXRDパターンを示すものである。
【0028】
図11は、様々な結晶平面を持つZnアダタムのDFTシミュレーションを示すものである。Zn電着されたpCF及びCZ-5電極から観察された全てのZn結晶平面とZnアダタム(黄色)の吸着エネルギーをコンピューティングシミュレーションした。
【0029】
図12A~
図12Eは、pCF、CZ-1及びCZ-5電極のそれぞれにおいてZn核形成過程の概略図及び電着されたZn核のHAADF-STEM及びEDSマッピングイメージである。フル電池テスト(full-cell test)に使用された同一の電解質を、100mA/cm
-2下で30秒間電着を行った(炭素(C)は青色、Znは橙色)。
図12A~
図12Eは、pCF電極上の電着されたZn核のHAADF-STEM及びEDSマッピングイメージである。
図12F~
図12Jは、CZ-1電極上の電着されたZn核のHAADF-STEM及びEDSマッピングイメージである。
図12K~
図12Oは、CZ-5電極上の電着されたZn核のHAADF-STEM及びEDSマッピングイメージである。
図12Pは、各欠陥(SV
1、SW(55-77)、DV
2(585)及びDV
2(555-777))の炭素構造断片の中心から縁への移動経路を示すものである。
図12Qは、様々な欠陥に対する拡散経路(Diffusion path)であり、エネルギープロファイルの結果を示すものである。
【0030】
図13は、電気化学二重レイヤキャパシタンス(Electrochemical double layer capacitance,EDLC)分析結果を示すものである。
図13Aは、様々なスキャン速度で0V~-0.5Vの範囲でスキャンしたpCF電極のサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry,CV)結果である。
図13Bは、様々なスキャン速度で0V~-0.5Vの範囲でスキャンしたCZ-1電極のCV結果である。
図13Cは、様々なスキャン速度で0V~-0.5Vの範囲でスキャンしたCZ-5電極のCV結果である。
図13Dは、pCF、dCF、CZ-1及びCZ-5電極の容量性電流(capacitive current)の線形解析(Linear fitting)を示すものである(キャパシタンス=電流/電圧転換速度)。
【0031】
図14は、pCF、CZ-1及びCZ-5に対するサイクリックボルタンメトリー(CV)結果である。負極電流は急激に増加しており、相応する電位はフル電池テストで使用されたのと同じZnBr2電解質において、pCF、CZ-1及びCZ-5電極の電着電位(DP)に該当する。
【0032】
図15は、pCF、CZ-1及びCZ-5電極においてそれぞれ電着されたZnに対する代表的なHRTEMイメージである。全サンプルを100mA/cm
-2で30秒間電着させた。
図15A及び
図15Bは、pCF電極において積層欠陥(stacking faults)を有する凝集されたZn核であり、
図15C及び
図15Dは、CZ-1電極において、凝集されたZnナノクラスターから観察された互いに異なる結晶学的配向を有する一部ドメインを示す狭いネック(narrow neck)で連結された球形突起であり、
図15E及び
図15Fは、CZ-5電極において、単結晶Zn粒子である。
【0033】
【0034】
図17は、各電極においてZn金属メッキの形態を示すものである。1秒、30秒、60秒及び12分間電着した後のSEMイメージ及び12分においてSF600分離膜で組み立てられた相応する電極の写真(17m:pCF、17n:CZ-1、17o:CZ-5)を示す。各電極はそれぞれの充電時間において100mA/cm
-2で充電した後に収集された。(
図17A~
図17D):pCF、(
図17E~
図17H):CZ-1及び(
図17I~
図17l):CZ-5。
【0035】
図18は、各電極の電気化学的性能を示すものである。
図18A及び
図18Bは、電流密度によるpCF、CZ-1及びCZ-5電極を含むZBBのクーロン及びエネルギー効率を示すものである。
図18Cは、pCF電極を含むZBBの充電-放電プロファイルを示すものである。
図18Dは、CZ-1電極を含むZBBの充電-放電プロファイルを示すものである。
図18Eは、CZ-5電極を含むZBBの充電-放電プロファイルを示すものである。
図18Fは、pCF、CZ-1及びCZ-5電極を含むZBBの充放電サイクル回数によるエネルギー効率(Energy efficiencies,EEs)を示すものである。
図18Gは、pCF、CZ-1及びCZ-5電極を含むZBBの充放電サイクル回数によるクーロン効率(coulombic efficiencies,CEs)を示すものである。
図18Hは、各サイクルにおける充電-放電電圧容量プロファイルを示すものである。pCF、CZ-1及びCZ-5電極の長期電気化学的安定性は、固定した120mAh充電容量に対して100mA/cm
-2の高い電流密度においてZBBの定電流充電/放電によって確認した。
【0036】
図19は、pCF(a)、CZ-1(b)及びCZ-5(c)電極を用いて100mA/cm
-2の電流密度において長期サイクリングテスト後、SF600分離膜のSEMイメージである。電極からZn金属デンドライトが確認できる。
【0037】
図20は、pCF、CZ-1及びCZ-5電極をそれぞれ含むZBBの長期サイクリング性能を示すものである。定電流充/放電は120mAh容量で120mA/cm
-2電流密度において行われた。
【0038】
図21は、欠陥炭素構造を含有する炭素電極を含むZBB及び従来報告されたZnベースのフロー電池(Zn-Br RFBs、Zn-I RFBs、Zn-Fe RFBs、Zn-Ce RFBs)の作動電流密度及び寿命を比較したものである。Znベースの電池に関する全ての値は従来の文献を参照して作成した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
特に定義されない限り、本明細書で使われた技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられているものである。
【0040】
本発明の一実施例において、電極基材である炭素フェルトにMOFであるZIF-8をコーティングし、高温で炭化させることによって電極を製造し、当該電極の欠陥炭素構造の構造的分析及び電極性能分析を行った。H.R.Jiang等がApplied Energy 213(2018)366-374で報告した通り、該文献の電極と類似の欠陥炭素構造密度(1.09(ID/IG))を有するCZ-1の場合は、豊富なZn核分布を示すにもかかわらず、むしろ、電池の性能では予想外に無欠陥炭素構造電極に比べて充放電サイクル及びエネルギー効率が劣ることを確認した。
【0041】
本発明の他の実施例において、金属核が生成部位から電極表面に沿って移動し、自己凝集及び金属アダタム(adatom)の癒着によって核が成長し、デンドライトを形成する明確なメカニズムを確認し、また、上記のようなCZ-1における効率低下が不均一な低密度の欠陥炭素構造によって核の自己凝集及びアダタムの垂直的癒着を効果的に抑制できなかったためであることを証明した。
【0042】
本発明の他の実施例において、このようなメカニズムに基づいて核の自己凝集及びアダタムの垂直的癒着を効果的に抑制するために、電極基材である炭素フェルトにMOFであるZIF-8をコーティングして高温で炭化させることによって、高密度の炭素欠陥構造を均一に含有する炭素層を含む電極を製造した。MOFを高温で加熱炭化させる場合、他の原子が蒸発して炭素構造層が生成されるということは既に報告されたことがある(L.Zhang,Z.Su,F.Jiang,L.Yang,J.Qian,Y.Zhou,W.Li and M.Hong,Nanoscale,2014,6,6590-6602.)
【0043】
MOFから由来した高密度炭素欠陥を均一に含有する炭素層を含む本発明の電極が高い電流密度においてもデンドライト形成を抑制し、電池寿命及び効率を劇的に増加させることを確認した。このような効率の劇的な向上は、密度の向上(約40%向上)をはるかに上回るもの(最小20倍以上)であり、最も最近に報告された電極(100~200サイクル維持、Adv.Mater.,31,1904690(2019)及びSmall,15,1901848(2019))と比較して25倍~50倍以上優れた結果(5000サイクル以上、97%以上クーロン効率を維持)を示すことを確認した。
【0044】
本発明の実施例から確認した結果をまとめると、H.R.Jiang等が予想したように、CZ-1は豊富な初期Zn核の形成及び大きい表面積を特徴とするので、従来の接近法に相応して金属の電着及び電池における電気的効率観点で有利であると予想されるのが一般的であるが、実は、不均一に塗布された低密度の欠陥炭素構造が逆説的により深刻な凝集性成長を招くということを確認した。したがって、このような結果は、従来の安定的で効率的な電池のための表面積の増加のような従来負極(negative electrode)の設計方法をひっくり返すものである。本発明の高密度の欠陥炭素構造を含有する電極は、高い電流密度においても劇的に形成されたサイクリング性能を示し、安定したZn成長による電池電極としての利点を示す。
【0045】
このような効果は、電極上の欠陥炭素構造の均一な分布及び高い密度によるZnアダタム及び核との強い相互作用、及びZn核の無秩序な凝集抑制はともに、本発明の電極においてZnの比較的に均一な成長によるものであることを確認し、また、全く達成されたことのない100mA/cm2及び120mA/cm2の最高電流密度において、圧倒的な性能の充放電サイクリング能力及び電池性能を立証するものである。
【0046】
したがって、本発明は一観点において、電極基材に金属-有機構造体(metal-organic framework;MOF)をコーティングする段階、及びMOFコーティングされた電極基材を炭化させ、炭素欠陥構造を含有する炭素層を形成する段階を含む前記電極の製造方法に関する。
【0047】
本発明の用語“金属-有機構造体”は“metal-organic framework”又は略語“MOF”としてもよく、有機リガンドと調和して(harmonized)、一次元以上の構造を形成する金属イオン又はクラスターの化合物グループを意味する。MOFは、気体及び液体、触媒、様々なセンサー、清浄エネルギー及び環境応用分野、医療及び生物学分野及び光電子装備などの様々な分野で使用される(Trends in Analytical Chemistry 118(2019)401-425)。
【0048】
前記金属-有機構造体の例は、M.Safaei等の“A review on metal-organic frameworks:Synthesis and applications(Trends in Analytical Chemistry118(2019)401-425)”に詳細に記載されているが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明の一実施例において、電極基材である炭素フェルトに金属-有機構造体の一つであるゼオライトイミダゾール構造体(Zeolitic Imidazole Framework)をコーティングし、高温で特定時間炭化させて電極を製造した。高温におけるMOF炭化は、二次炭素供給源無しで金属及び窒素(N)のような炭素以外の原子を蒸発させ、高密度の炭素欠陥構造を含有する欠陥乱層炭素(defective turbostatic carbon)を生成した。
【0050】
本発明の一実施例においてMOFはZIF-8を使用したが、MOFを高温で加熱すれば、炭素以外の金属及び有機元素が蒸発して炭素構造だけが残るので、他の種類のMOFを使用しても高密度の炭素欠陥構造を含有する炭素層を生成することができる。
【0051】
したがって、本発明において、前記金属-有機構造体と知られたものであればいずれも使用可能であり、好ましくは、Zn2DOT(MOF-74)、Cu2(BDC-Br)2(H2O)2(MOF-101)、Zn4O(BTB)2(MOF-177)、[Fe3O(BDC)3(DMF)3][FeCl4]・(DMF)3(MOF-235)、Al(OH)(BPYDC)(MOF-253)、Zn4O(BDC)3・7DEF・3H2O(IRMOF-1(MOF-5))、Zn4O(TPDC)3・17DEF・2H2O(IRMOF-16)、Zr6O6(BDC)6(UiO-66)、Zr6O6(BPDC)6(UiO-67)、Zr6O6(TPDC)6(UiO-68)、Al(OH)(BDC)(MIL-53)、Al(OH)(BDC-NH2)(MIL-53(Al)-NH2)、Fe3O(MeOH)3(O2CCH=CHCO2)3・MeCO2・nH2O(MIL-88A)、Fe3O(MeOH)3(O2C(CH2)2CO2)3・AcO・(MeOH)4・5(MIL-88-Fe)、2Fe3O(OH)(H2O)2(BDC-Me2)3(MIL-88B-4CH3)、FeIII
3O(H2O)2F・(BTC)2・nH2O(MIL-100-Fe)、Cr3O(H2O)2F・(BDC)3・nH2O(MIL-101)、Cu3(BTC)2(HKUST-1(MOF-199))、Gd2(BDC-NH2)3(DMF)4(LIC-10)、Zn(MIM)2(ZIF-8)、Zn(FIM)2(ZIF-90)、Cu2(PZDC)2(4、4’-BPY)(CPL-2)、[Cu(HFBBA)(phen)2](H2HFBBA)2(H2O)(HCO2)(F-MOF-1)、Cu24(m-BDC)24(DMF)14(H2O)10(MOP-1)からなる群から選ばれるものであり得、最も好ましくはゼオライトイミダゾール構造体であることを特徴とし得る。
【0052】
本発明において、前記MOFコーティングされた電極基材を炭化させて炭素欠陥構造を含有する炭素層を形成する段階は、二次炭素供給源無しで炭素原子以外の金属及び他の原子を蒸発させ、欠陥乱層炭素(defect turbostatic carbon)を生成することを特徴とし得る。
【0053】
本発明において、MOFがゼオライトイミダゾール構造体である場合、亜鉛(Zn)及び窒素(N)を蒸発させて欠陥乱層炭素を生成することを特徴とし得る。本発明において、MOFがゼオライトイミダゾール構造体である場合、907℃以上で炭化させることを特徴とし、好ましくは900~1500℃で加熱して炭化させることを特徴とし得る。最も好ましくは、約1000℃で加熱して炭化させることを特徴とし得る。
【0054】
本発明の一実施例において、親水化のために炭素フェルトを酸素ストリーム下で酸化し、MOFをコーティングした後、1000℃で1時間及び5時間加熱してMOFコーティングされた電極基材を炭化させた。炭化された電極をX線回折分析で確認した結果、1時間炭化した電極の表面はデコボコの炭素スキンが形成され、むしろ、炭化していないMOFコーティング電極よりも2θ=25゜のピーク強度が最も高く観察され、炭素黒鉛質構造(graphitic structure)を有することを確認した。これに対し、5時間炭化した電極は網状(web-like)炭素層が形成され、2θ=25゜ピーク強度が減少して高密度の欠陥炭素構造を含有することを示した。
【0055】
本発明において、MOFをコーティングする段階前に電極基材を酸化させる段階をさらに含むことができる。
【0056】
したがって、本発明において、前記MOFコーティングされた電極基材を炭化させ、炭素欠陥構造を含有する炭素層を形成する段階は、900~1500℃で3~7時間炭化させることを特徴とし、好ましくは、約1000℃で5時間以上炭化させることを特徴とし得る。
【0057】
本発明の用語“炭素欠陥構造”は、炭素の構造に欠陥を含むことを意味する。無欠陥炭素構造は、一般にグラフェン(grapheme)という6角形の環構造を有する。炭素欠陥構造は、完全グラフェン構造において、炭素が欠失したり再配列されて6角形構造が5角形、7角形及び8角形の構造などに変形される。また、炭素結合オービタル的側面では欠陥によってC-C結合が破壊され、sp2軌道からsp3軌道へと変化を伴い得る。“炭素欠陥構造”は本発明において“欠陥炭素構造”と同じ意味で使用可能である。
【0058】
“無欠陥炭素構造”は、
図7に示すように、6角形の炭素輪構造を有する完全グラフェン(perfect graphene)であり、一般に知られた炭素欠陥構造は、1種類の単一欠失欠陥(Single vacancy,SV
1)、2種類の二重欠失欠陥(Double vacancy,DV
2(585)、DV
2(555-777))及びストーンウェイルズ欠陥(Stone wales,SW(55-77))があるが、これに制限されるものではない。
【0059】
本発明において、前記炭素欠陥構造は単一欠失欠陥(Single vacancy defect)であることを特徴とし得る。
【0060】
本発明の用語“単一欠失欠陥(Single vacancy defect)”は、1個の炭素を失ったり或いは複数の炭素が欠失した欠陥構造であり、欠失によってダングリング結合(Dangling bond)を形成した構造を意味する。
【0061】
本発明において、前記炭素欠陥構造はダングリング結合を含むことを特徴とし得る。
【0062】
本発明の用語“ダングリング結合(Dangling bond)”とは、固体のように原子が動けない状況に置かれている時、物体の表面に存在する動けない自由ラジカルを意味するものであり、本発明では炭素の欠失によって炭素原子の最外郭電子が完壁に結合を終えない場合に最外郭電子を意味する。
【0063】
本発明において、前記欠陥炭素構造に形成された豊富で均一なダングリング結合は、金属核を表面に豊富ながらも均一に形成させ、金属アダタム及び核の自己凝集及び癒着を防止することによって、デンドライトの形成を抑制し、電池の寿命及びエネルギー効率を向上させる。
【0064】
本発明において、前記方法で製造された電極は、単一欠失欠陥(Single vacancy defect)を高密度に含有することを特徴とし得る。前記単一欠失欠陥の密度は、ラマン散乱法(Raman scattering)で測定時に、1585cm-1バンド(Gバンド)に対して1350cm-1バンド(Dバンド)の比率(ID/IG)が1以上であることを特徴とし、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.4以上であることを特徴とし、1.1~2.0であり得るが、これに制限されるものではない。
【0065】
本発明において、前記方法で製造された電極は炭素欠陥構造が均一に分布することを特徴とし得る。
【0066】
本発明において、前記方法で製造された電極は、充/放電サイクリング過程において、単一欠失欠陥部位の側面部に金属原子が吸着して成長し、デンドライトを形成せずに均一に電極に電着及び溶解することを特徴とする。
【0067】
前記1350cm-1バンド(Dバンド、ID)は、ラマン散乱法で炭素構造を測定する場合に、sp3混成化炭素のような欠陥炭素構造を示すバンドであり、1585cm-1バンド(Gバンド、IG)は、高純度の熱分解炭素のタンジェンシャルストレッチングモード(tangential stretching mode)を示すものであり、DバンドとGバンドの比率(ID/IG)は欠陥炭素の比率を示し、比率が高いほど欠陥炭素構造を高密度に含有していることを示す。本発明において、MOFをコーティングした後に炭化して電極を製造することによって、様々な電極基材に基づき、高密度の欠陥炭素構造を含有する電極を製造できることを確認した。
【0068】
本発明の一実施例において、単一欠失欠陥及びZnアダタム間の吸着エネルギーが約3.26eVで、Zn結晶面(Zn crystal plane)及びZnアダタム間の吸着エネルギーよりもはるかに大きいことを確認し、これによって、亜鉛核結晶の自己拡散及び凝集を防止し、亜鉛を電極表面に均一に電着可能にすることを確認した。
【0069】
本発明の用語“電極基材”とは、電極を作るための電着過程において、メッキ溶液が電着可能な母材(basis material)を意味する。好ましくは、電極基材は伝導性の電極であり得、より好ましくは、カーボン電極、金属電極、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素スズ酸化物(FTO)又はこれを含むガラス板などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明において、前記電極基材は、カーボン(carbon)電極、金属(metal)電極、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素スズ酸化物(FTO)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とし得る。
【0071】
本発明において、前記二次電池は金属ベース電池であることを特徴とし得る。
【0072】
本発明において、前記金属は、金属結晶面(crystal plane)と金属アダタム(adatom)間の吸着エネルギーが金属アダタム(adatom)と前記炭素欠陥構造間の吸着エネルギーよりも小さいことを特徴とし、好ましくはZn-ベースの電池であることを特徴とし得る。
【0073】
亜鉛(Zn)は高容量(820mAh/g)、低い電気化学的電位(762V vs. standard hydrogen electrode(SHE))、高い豊富度、低い毒性及び水性電解質における固有の安全性を特徴とするので、最初に電池が登場して以来、化学電池分野に理想的な材料である。特に、Znレドックスフロー電池は高いエネルギー密度及び低い材料費用を有する点で、産業分野における活用可能性が非常に大きい。
【0074】
したがって、本発明において、前記二次電池は金属ベース電池であることを特徴とし得る。本発明において、前記金属は、結晶面(crystal plane)と金属アダタム間の吸着エネルギーが金属アダタム(adatom)及び電極の炭素欠陥構造間の吸着エネルギーよりも小さいことを特徴とし、好ましくは、前記金属は亜鉛(Zn)であることを特徴とし得る。
【0075】
前記二次電池は金属イオン電池、フロー電池などであり得、好ましくはZn空気電池、Znイオン電池、Zn-ハロゲンフロー電池、Zn-Feフロー電池及びZn-Ceフロー電池からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0076】
本発明は他の観点において、前記方法で製造された電極に関する。
【0077】
本発明は更に他の観点において、電極の表面に炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極に関する。
【0078】
本発明において、前記炭素欠陥構造は単一欠失欠陥(Single vacancy defect)構造であることを特徴とし得る。
【0079】
本発明の一実施例において、電極の表面に高密度の炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極を製造し、特に単一欠失欠陥構造を含有する場合に、100mA/cm-2の高い電流密度においてもZnデンドライトの形成が効果的に抑制され、前記電極を含むZnフローバッテリーが5000サイクルにわたって97%の優れたエネルギー効率を示すことを確認した。
【0080】
本発明の他の実施例において、前記製造方法で電極を生産する場合、欠陥炭素構造を高密度に含有することを確認した。
【0081】
したがって、本発明の電極は単一欠失欠陥(Single vacancy defect)を高密度に含有することを特徴とし得る。前記単一欠失欠陥の密度は、ラマン散乱法で測定時、1585cm-1バンド(Gバンド)に対して1350cm-1バンド(Dバンド)の比率(ID/IG)が1以上であることを特徴とし、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.4以上であることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0082】
本発明において、前記単一欠失欠陥の密度は1.1~2.0のID/IGであることを特徴とし得る。
【0083】
本発明において、前記単一欠失欠陥は前記炭素層に均一に分布したことを特徴とし得る。
【0084】
本発明はさらに他の観点において、前記方法で製造された電極又は電極の表面に炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極を含む二次電池に関する。
【0085】
本発明の用語“二次電池”とは、外部電源から供給された電流が正極と負極間における物質の酸化/還元反応を起こす過程で生成された電気を充電する方式で半永久的使用が可能な電池を指す。
【0086】
本発明において、前記二次電池は金属ベース電池であることを特徴とし得る。本発明において、前記金属は、結晶面(crystal plane)と金属アダタム間の吸着エネルギーが金属アダタム(adatom)及び電極の炭素欠陥構造間の吸着エネルギーよりも小さいことを特徴とし、好ましくは、前記金属は亜鉛(Zn)であることを特徴とし得る。
【0087】
本発明の一実施例から確認したように、アダタムと結晶面間の吸着エネルギーが大きい場合には金属核及びアダタムが移動して凝集し、癒着してデンドライトを形成できる。しかし、結晶面(crystal plane)との吸着エネルギーが金属アダタム(adatom)及び電極の炭素欠陥構造間の吸着エネルギーよりも小さい場合には、金属核及びアダタムの凝集又は癒着が起きず、電極表面間に均一に分布した炭素欠陥構造を中心に側面成長し、均一なメッキが誘導されてデンドライトの形成が抑制され、電池の寿命及びエネルギー効率が増加する。
【0088】
本発明の用語“アダタム(adatom)”とは、吸着原子を意味するものであり、本発明において、アダタムは正極又は負極に吸着した電解質の原子を意味し、一実施例において、負極(anode)に吸着した金属原子を意味する。本発明の一実施例において、前記アダタムは亜鉛アダタム(Zn adatom)である。
【0089】
本発明の用語“結晶面(crystal plane)”とは、“結晶の面”を意味する。本発明において、金属の結晶面と金属アダタムの吸着エネルギーが欠陥炭素構造と金属アダタムの吸着エネルギーよりも大きい場合、自己拡散及び自己凝集してデンドライトを形成し、電池の寿命及びエネルギー効率を低下させる、デンドライト形成の新しいメカニズムを確認した。
【0090】
本発明の用語“吸着エネルギー”とは、吸着された両物質間のエネルギーを意味し、一般に、両物質を分離するのに必要なエネルギーを意味する。通常、吸着エネルギーは“Eads”又は“Ead”で表示し、通常の技術者に認識可能な計算法又は方法で計算可能であり、‘(元素が吸着された構造エネルギー)-(それぞれの元素及び構造体の構造エネルギー)’で計算するのが一般的であるが、これに制限されるものではない。本発明の一実施例において、亜鉛と炭素表面間の吸着エネルギー(Eads)は、Eads=EZn+Carbon surface-EZn-ECarbon surfaceで計算した。
【0091】
本発明において、前記二次電池はZn空気電池、Znイオン電池、Zn-フロー電池からなる群から選ばれることを特徴とし、例えば、Zn-フロー電池はZn-ハロゲンフロー電池、Zn-Feフロー電池又はZn-Ceフロー電池のようなZnベースのハイブリッドフロー電池であり得るが、これに制限されるものではない。
【0092】
本発明の電極は前記二次電池において負極(anode)として使用可能である。
【0093】
本発明の二次電池は、負極におけるデンドライト形成が抑制され、優れた充放電サイクル及びエネルギー効率を有することを特徴とし得る。
【0094】
本発明において、前記二次電池は約500回以上の充放電サイクルにおいて約80%以上のクーロン効率を有することを特徴とし、好ましくは約1000回以上、より好ましくは約3000回以上、最も好ましくは約5000回以上の充放電サイクルにおいて約80%以上のクーロン効率、好ましくは85%以上のクーロン効率、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%のクーロン効率を維持することを特徴とし得る。
【0095】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0096】
材料及び方法
電極作製
ZIF-8コーティング炭素フェルト電極(ZIF-8@CF):炭素フェルト(CF,3×2cm2)を親水化させるために、O2ガスストリーム下で9時間520℃で表面を酸化させた。室温に冷却した後、表面酸化されたCFをZIF-8でコーティングした。具体的に、硝酸亜鉛六水和物(Zinc nitrate hexahydrate、5.95g、1eq.)及び2-メチルイミダゾール(13.136g、8eq.)を100mLのメタノールにそれぞれ溶解させた。Zn2+(15ml)及び2-メチルイミダゾール(15ml)溶液を12時間混合した。その後、サンプルをエタノールで徹底的に洗浄して残留溶媒を除去した。ZIF-8コーティング手順を9回反復し、生成されたZIF-8@CFを60℃で真空乾燥させた。
【0097】
炭化電極(CZ):前記ZIF-8@CFを真空オーブンに移してN2大気下で分当たり5℃ずつ昇温して炭化温度(1000℃)で加熱して炭化した。CZ-1は1時間加熱炭化し、CZ-5は5時間加熱炭化した。生成されたCZを2M HCl含有ビーカーに移して室温で6時間撹拌した。CZを順次に蒸留水で洗って70℃で6時間真空乾燥させた。
【0098】
電極特性分析
97X線回折(X-ray diffraction,XRD)は5.0kVの10゜~90゜の角度範囲及び分当たり5゜のスキャニング速度を有するXRDシステム(モデル:D/MAX-2500)によって行われた。EDSと結合したTEM及びHAADF-STEMイメージは200kVの加速電圧において、FEI Talos F200X TEMを用いて行われた。電着物の表面形態はFE-SEM(Sirion,Netherlands)上で走査電子顕微鏡(SEM)によって分析された。ラマンスペクトルは、レーザー波長が488nmで、スポットサイズは0.5mmであるWITec CRM200共焦点ラマン顕微鏡システムを用いて得た。サンプルの表面分析はThermo Scientific Theta Probe X線光電子分光法(XPS)を用いて行った。
【0099】
電気化学的分析
本発明の電極の電気化学的特性を正確に分析するために、J.H.Park et al.,J Power Sources,2016,310,137-144に開示と同じ新しい類型の電気化学的分析セルが用いられた。全てのクロノアンぺロメトリ-(chronoamperometry,CA)、電気化学的インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy,EIS)、定電流電着(galvanostatic deposition)は、VSP装置(Biologic science instruments)を用いて行われた。飽和NaCl水溶液中のAg/AgCl電極及び活性炭素フェルト(TOYOBO)をそれぞれ基準(reference)及び相対(counter)電極として使用した。使用された電解質は0.01M ZnBr2であり、クロノアンぺロメトリ-(CA)実験のためにSigma-Aldrich社の材料を用いて製造した。EDLCの電気化学的性能はBioLogic science instruments社の電気化学測定装置(VSP)を用いて測定した。CVは、ZBBサイクリング実験に用いられた同じ電解質において様々なスキャン速度(10~140mV/sec)で0~0.5Vの安定電位窓(stable potential window)に対して記録された。
【0100】
電池性能試験
非圧縮の厚さが約4mmである商業用炭素フェルト(SGL carbon)が用いられた。6cm2の陰性及び陽性面積ともにSF-600分離膜(Asahi)によって分離された。脱イオン水(DI)中の2M ZnBr2+0.5M ZnCl2+4M NH4Cl+0.02M MEP(N-ethyl N-methyl pyrrolidinium bromide)の電解質混合物40mLをフローセルテストに使用した。電解質のフローを50mL/minの流速で正極液及び負極液に適用した。
【0101】
DFT(Density Functional Theory)計算
全ての密度汎関数理論(DFT)計算は、Accerlrys,Inc.のMaterials StudioでプログラムパッケージDMol3を用いて行われた。Dmol3は近似オービタル(numerical orbitals)を基本関数として使用し、各オービタルは原子オービタルに相応する。当該作業はDNP(double-numeric-plus-polarization)及び4.0Åのグローバルオービタルカットオフを使用する。DNP基準セットのサイズはGaussian 6-31G(d)と比較可能であるが、DNPは当該Gaussian basis set 63よりも正確である。DFT計算は、PBE(Perdew-Bueke-Ernzerhof)交換相関汎関数(exchange correlation functional)を有するGGA(Gradient-corrected)汎関数によって行われた。エネルギー、勾配(gradient)及び変位収斂の許容誤差はそれぞれ0.00001hartree、0.002hartree/Å、及び0.005Åである。周期性(periodicity)による相互作用を避けるために、z-方向に沿って20Åの真空層を計算に使用した。平板モデル(slab model)は3×3×1スーパーセルにおいて単層グラファイト(001)表面に基づいて構築され、3×3×1のk点モンコルストパック(k-point Monkhorst-Pack)グリッドは、ブリュアンゾーン(Brillouin zone)に適用された。自己無撞着場(self-consistent-field,SCF)サイクルの力許容誤差(force tolerances)は1.0×10-6であり、Grimme’s DFT-D2方法は、様々なDFT汎関数に最適化されたワンデルワールス相互作用(vdW)を評価するために適用された。他の炭素表面におけるZn吸着エネルギーは、下記式のように計算された。
Eads=EZn+Carbon surface-EZn-ECarbon surface
【0102】
前記EZn+Carbon surface及びECarbon surfaceは、Zn原子が吸着又は非吸着された互いに異なる炭素表面のDFT総エネルギー、前記EZnは、分離された原子から得られたZnのエネルギーを意味する。
【0103】
実施例1:電極の製造
電極の欠陥炭素構造の密度を高めるために、欠陥炭素の前駆体として、金属-有機構造体(metal-organic framework,MOF)を使用し、電極基材である炭素フェルトを酸化させた後、MOFをコーティングし炭化して電極を製造した。
【0104】
様々なMOFを高密度欠陥炭素構造を生成するために使用でき、中でもゼオライトイミダゾール構造体(zeolitic imidazole framework,ZIF)を選択した。ゼオライトイミダゾールはZn及びN原子を含むが、各原子の沸点を考慮すれば、約1000℃以上で炭化するとき、二次炭素供給源無しでZn及びN原子が除去され、欠陥乱層炭素(defective turbostatic carbon)を生成する。硝酸亜鉛六水和物(Zinc nitrate hexahydrate)及び2-メチルイミダゾール(2-methyl imidazole)の混合溶液において溶液コーティング法を用いて炭素フェルト(CF)にZIF-8をコーティングし、ZIF-8コーティングされたCF(ZIF-8@CF)を約1000℃で炭化してZn及びNを蒸発させ、高密度欠陥炭素構造を含有する電極(CZ)を製造した(Zn沸点は約907℃)。
【0105】
実施例2:電極表面形態分析
時間によって生成される欠陥炭素構造の影響を比較分析するために、1時間炭化させたCZ-1電極及び5時間炭化させたCZ-5電極を準備した。炭素フェルト(pristine CF;pCF)及び製造した電極(CZ-1及びCZ-5)においてZnの成長の形態及びデンドライトの形成は、
図1の通りである。炭素フェルト(pCF)の滑らかな表面は6角形構造のZIF-8ナノ結晶で均一に覆われてZIF-8@CFを形成した。炭素フェルト上のZIF-8粒子の成長を粉末X線回折分析で確認した(
図2)。ZIF-8@CFに対して検出された7.2゜、10.2゜、12.5゜、16.0゜、及び17.7゜における回折ピークはそれぞれ、ZIF-8の(110)、(200)、(211)、(310)、及び(222)平面に相応する。炭化後、CZ-1の表面はCF上にデコボコの炭素スキンが形成され、これは、欠陥の少ないCFの滑らかな炭素スキンが進化したことを暗示する(
図3C及び
図3D)。炭化時間を1時間から5時間に増加させるにつれて、炭素層による炭素フェルトのカバレッジが増加して網状(web-like)炭素層が形成され、これは、炭化過程でCF及び炭化ZIF-8粒子間のπ-π相互作用によるCF表面上の炭素層の拡散を示すものである(
図3及び
図4)。pCF、CZ-1及びCZ-5の結晶構造はX線回折(XRD)によって分析された(
図3G)。2θ=25゜で最も強い尖っている反射ピークは一般に炭素の黒鉛構造の(002)反射を示す。結果的に、XRDスペクトルにおいて、CZ-1の場合、2θ=25゜で最も高いピーク強度が観察され、これはZIF-8の炭化で生成された高黒鉛質炭素構造を意味する。CZ-5のXRDパターンにおいて2θ=25゜における強度はpCFと比較して減少しており、これは高密度欠陥炭素構造の形成に起因する(
図3G)。
【0106】
pCF、CZ-1及びCZ-5電極に対するラマンスペクトルは、各電極の欠陥炭素構造の密度を示す(
図3H)。1350cm
-1におけるDバンドは、sp3-混成化炭素のような欠陥炭素構造に起因し、1585cm
-1におけるGバンドは高純度熱分解黒鉛の接線ストレッチングモードに起因する。したがって、D及びGバンドの強度比率(ID/IG)は炭素構造の欠陥密度を示す。ID/IG比率は、pCFの場合1.05、CZ-1の場合1.09、CZ-5の場合1.45を示した。これは、5時間の1000℃での熱処理過程においてZIF-8由来炭素層において高密度の炭素欠陥構造が形成されたことを示す。一方、CZ-1のID/IGはXRDスペクトルと一致し、pCFと比較して有意の増加が見られなかった。
【0107】
その後、X線光電子分光法(XPS)分析によってCZ電極に対する欠陥形成をさらに確認した。C1sスペクトル(
図3I)は、284.1±0.1(sp2炭素)、284.3±0.1(sp3炭素)、285.7±0.2(C-O)及び289.7±0.4eV(C=C)において4個のピークを示した。黒鉛から欠陥炭素構造への変換はC-C結合破損及び単一欠失欠陥の形成によってsp2からsp3への軌道変化を伴う。欠陥炭素構造の密度を示すsp3/sp2の強度比はそれぞれ、pCF、CZ-1及びCZ-5に対して0.51、0.59及び0.73を示した。しかし、ラマンスペクトルにおいてID/IG値のように、pCF及びCZ-1のsp3/sp2強度比率は有意の差がなく、これはXRDの結果と一致する。上記の結果は、CZ-1が高度に整列された黒鉛炭素表面を有することを意味する。また、
図5のXPSサーベイスペクトルは、炭素外の酸素及び窒素原子の含有量を示し、CZ-1の場合2.41%、CZ-5の場合1.11%のN含有量を示し、Znは信号がないため、N及びZnが除去されたことを表す(
図5)。上記の様々な分析に基づくと、CZ-1及びCZ-5はそれぞれ高黒鉛質炭素及び高密度炭素欠陥構造を含有する電極であることを意味する。
【0108】
実施例3:密度汎関数理論(DFT)計算:Znアダタムの吸着及び表面拡散に対する炭素欠陥の影響分析
Zn吸着及び表面拡散に対する欠陥構造の影響に対する基本的な理解を得るために、本発明者らは完全グラフェン、及び典型的な炭素欠陥を有するZnアダタムの吸着エネルギー(adsorption energies,Eads)に対する密度汎関数理論(density functional theory(DFT)に基づく第1原理計算を行った。代表的な5類型の炭素構造を考慮した;1)無欠陥グラフェン(perfect grapheme,G(001))、単一欠失欠陥(Single vacancy,SV
1)、2)ストーンウェイルズ欠陥(Stone wales,SW(55-77)、及び3,4)2個の二重欠失欠陥(Double vacancy,DV
2(585)及びDV
2(555-777))(
図6A)。原子を除去又は追加せずに、6角形環を再構成しようとする傾向により、炭素欠陥構造は前記5類型の構造の一つに収斂する。一つの欠損格子炭素を有する最も簡単な欠陥である単一欠失欠陥は、一つのダングリング結合(dangling bond)を有することができる(SV
1)。ストーンウェイルズ欠陥は2個の7角形及び2個の5角形構造で構成される(SW(55-77))。二重欠失欠陥の類型の構造は、完全なグラフェン(無欠陥炭素構造)からC-C二量体を除去したり、或いは2個の単一欠失欠陥の癒着(coalescene)によって形成可能であり、その一つの構造は2個の5角形及び1個の8角形構造を有し(DV
2(585))、もう一つは3個の5角形及び3個の7角形を有する(DV
2(555-777))。(001)結晶面を有する完全なグラフェンを対照群とした。
【0109】
図7に示すように、SV
1欠陥だけが欠陥周辺に局所的に集中し、奇形的な電子構造を有するので、欠陥とZn吸着剤間の電子移動を実現可能にする。
図6Bは、完壁なグラフェン及び5個の欠陥のあるグラフェン表面に対するZnアダタムの吸着エネルギー(Eads)を示す。SV
1のEad(3.26eV)は、G(001)(0.27eV)及び他の欠陥(SW(SW(55-77):0.24eV;DV
2(585):0.24eV;DV
2(555-777):0.25eV)のEadよりもはるかに大きく、これはSV
1が最も強力な吸着部位であることを示す。前記結果は、Zn原子とSV
1間のオービタル混合(orbital hybridization)(
図8)と、Zn原子とSV
1間の最短距離に対する結果と一致する(
図9)。
【0110】
Znアダタム及び小さい核の自己凝集を防止するために、SV
1欠陥において吸着されたZnの表面拡散のためのエネルギーを計算することが重要である。一般に、欠陥中心から隣接六角形中心へのZnアダタム移動の2つの軌道;1)C-C結合の中間点を横切る軌道、及び2)C-C結合に沿う軌道;がSV
1及びG(001)表面で考慮された。
図6C及び
図6Dに示す軌道上の5つの地点において、移動に対する障壁を定量化するためにEadを計算した。
図6C及び
図6Dに示すように、Znアダタムが2つの経路に対するSV
1欠陥から離れる時、吸着エネルギーが大きく低下する。最大吸着エネルギーと六角形中心における吸着エネルギー間の差は、拡散に対するエネルギー障壁に該当する。エネルギー障壁はC-C結合を横切る移動に対して2.986eVであり、C-C結合に沿う移動に対して3.046eVであって、G(001)(0.07eV)に比べてはるかに大きい(
図6C~
図6D)。前記結果は、SV
1結合部位に吸着されたZnアダタムが凝集し難いということを意味する。
【0111】
SV
1欠陥又はZn結晶面(Zn crystal plane)とZnアダタム(adatom)間の吸着エネルギーの相対的な強度は、核形成/成長方式に影響を及ぼす。Zn結晶面とZnアダタム間の吸収エネルギーより小さい場合、SV
1欠陥から既に形成されたZn核へのZnアダタムの移動は熱力学的に不可能なので、SV
1欠陥において均一なZn核形成/成長が達成され得る。逆に、Zn結晶面に対する吸収エネルギーがより大きい場合、Zn電着は、SV
1欠陥よりも形成されたZn核に優先的に発生し、初期に形成された核における局所的なZn電着を引き起こす。pCF及びCZ-5電極においてZn電着物のXRDパターンから観察された全てのZn結晶面に対して、DFT計算が行われた(
図10及び
図11)。
図6Eに示すように、様々なZn結晶平面に対するEadsはSV
1に対するEadsよりもはるかに小さいが(青い点線)、Zn(102)平面以外のG(001)に対するEadsよりは大きい(赤い点線)。明確に、強い吸着エネルギー及び拡散に対する大きいエネルギー障壁によって、SV
1欠陥はZnの自己凝集を防止するが(
図6F)、無欠陥グラフェン表面の場合、表面拡散による、Zn凝集が顕著に観察される(
図6G)。ナノサイズのZn核及びナノスケールクラスターの自己表面拡散は電気化学的な金属成長においてほとんど確認されなかったが、基質と核間の格子パラメータの不一致が大きい場合には、ナノサイズのZn核とナノクラスターもアダタムのように、より大きいサイズに癒着し得る。アダタム及び核のこのような凝集メカニズムは、表面エネルギーが最も低い表面エネルギーを有する安定した形態に変化しようとする熱力学的原動力によって発生する。また、Znアダタムに対するDFTの計算は、ナノサイズ核の表面拡散挙動を示すことができる。理論的な計算法に基づいて、SV
1欠陥が均一に分布した核生成を提供し、生成部位でZnの成長をさらに調節するZn核及びアダタムの表面自己拡散を抑制できることを確認した。
【0112】
実施例4:欠陥炭素構造を含有する電極におけるZn電着メカニズム及び形態分析
欠陥のある炭素レイヤにおいて選好されるZnの成長は、ex-situ高角環形暗視野走査透過電子顕微鏡(ex situ high-angle annular dark field scanning transmission electron microscopy(HAADF-STEM)及びこれに相応するエネルギー分散分光法マッピング(energy dispersive spectroscopy(EDS)mapping)によって確認された。マイクロメートルサイズのZn金属の既に成長した部分は、ナノメートルスケール観測ができなかった。他の部位で形成されたZnのナノスケール核がEDSマッピング及びHAADF-STEMの対象とされた。
図12A~
図12Dに示すように、pCFにおいてZn核は低い粒子密度で粗く形成されることが観測され、無作為に分布したZn核はZn核及びアダタムによる高い吸着エネルギーを有する特異的にあらかじめ決定された核生成部位がないことを示す。対照的に、CZ-1の欠陥炭素層ではZn核の豊富な形成が観測された。CZ-1電極の豊富なZn核は、pCF及びCZ-5電極のキャパシタンス(0.4mF/cm
2及び8.6mF/cm
2)よりも大きい15.4mF/cm
2の電気的二重レイヤキャパシタンスによって有効電流密度が減少したため、発達することがあるという点に留意すべきである(
図13)。iR-補償(iR-compensation)後の他の電極に10mA/cm
2のZnを電着するための特性電圧プロファイルを確認した。1.142VのCZ-1に対する核形成過電位(Overpotential,η)は、CZ-5及びpCFの核形成過電位(1.145V及び1.124V)よりも非常に低く、これは、CZ-1の増加した表面積がCZ-5の欠陥炭素レイヤのような事前-定義された核形成位置に比べてZn沈着物をより効果的に生成するということを意味する。これと一致して、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetries,CVs)において、CZ-1電極は-984.9mVの小さいZn電着電位を示したのに対し、pCF及びCZ-5はそれぞれ定電流電気電着(galvanostatic electrodeposition)においてEDLC及びηの傾向によって-992.0mV及び-985.1mVの電着電位の減少を示す(
図14)。対照的に、CZ-5上の炭素元素に対してのみEDSマッピングをしたとき、Zn核は主に欠陥炭素レイヤに電着されたため、コーティングされた欠陥炭素レイヤは検出されなかった(
図12M、
図12N)。これは、埋め立てられているnmサイズのZn核がDFT計算で予想された通り、欠陥炭素レイヤの高い吸着エネルギーによってCZ-5の結合炭素層だけにおいて成長したことを意味する。
図12E、
図12J及び
図12Oは、STEMイメージ結果によるpCF、CZ-1及びCZ-5電極において電気電着されたZnの概略的な断面図である。CZ-1サンプルは初期段階で比較的に豊富で均一なZn金属フォトグラフィー(topography)を示す。対照的に、CZ-5の欠陥炭素層に沿うZn核の推定縁成長(putative edge growth)は、欠陥のZnの自己凝集に対する抑制影響と同じ意味を有する。
【0113】
炭化されたZIF-8粒子の縁における局所的なZn核形成は、SV
1欠陥の縁への移動可能性を暗示する。最近の報告などは、炭素欠陥が常に固定されているわけではなく、欠陥周囲の歪みによって発生した変形(strain)を緩和させながら、グラフェン平面に平行に移動し得るということをサポートする。特に、SV
1欠陥の移動は100-200で発生するものと知られている(ACS Nano,2010,5,26-41;Chemical Physics Letters,2006,418,132-136)。これを検証するために、グラフェンの内部から縁への他の欠陥の移動に対するDFT計算を行った(
図12K)。SV
1欠陥の場合、縁における相対エネルギー(相対エネルギー=初期形成エネルギー(Diffusion path 1)-中間状態形成エネルギー)は、内部のエネルギーよりも-3.25eVたけ顕著に低い(
図12Q)。しかし、他の欠陥は中心と縁間に大きいエネルギー差がないことが確認された(SW(55-77):-0.70eV、DV
2(585):-1.54eV、DV
2(555-777):-0.36eV)(
図15)。
【0114】
したがって、熱処理過程で形成されたSV
1欠陥が表面へ移動して欠陥-豊富表面を招く可能性が高い。HAADF-STEMと対照的に、高解像TEM(HRTEM)測定を通じて、
図15に示すように、電気電着されたZnナノ粒子の実サイズ及び格子模様が得られた。Znの電気電着前に、pCFの観察は
図16の乱層構造(turbostatic structure)を示す(完全に無秩序である。)。
図15Aは、pCF電極に粗く分布した凝集されたZn核を示す。
図15Bに示すように、一つのナノクラスターに対するより詳細な観察により、結晶質ドメインが15~20nm範囲のサイズを有する、積層欠陥(stacking fault)及びツイニング(twinning、双晶変形)を有する多結晶質構造;Zn(101);及びZn(002)平面;がより大きいナノ構造と共存した。このような形態学は電気化学的電着及びコロイド合成において、ナノクラスター凝集媒介成長を示す。類似に、CZ-1の場合(
図15C、
図15D)、多くの球形凝集Znも電極から観察でき、
図15Cで強調されたように、大部分の凝集Znは狭いネック(narrower neck)によってボディーの残り部分と連結される。格子模様がCZ-1上の大きいZnドメインを通じて高凝集度で延長されても、同じ粒子内に互いに異なる結晶学的配向(crystallographic orientation)が共存することは明らかである。したがって、pCF及びCZ-1から観測されたZnの多結晶質ナノクラスター、積層欠陥及び狭いネックのような当該明白な証拠は、癒着及び凝集成長が均一な電着を妨害するということを暗示する。しかし、ZnがCZ-5電極上に電着される時、Zn核は互いに分離して存在し、Zn(002)平面のような単結晶質を有する(
図15E、
図15F)。前記結果は、CZ-5電極上のSV
1欠陥によるZnアダタム及び核の表面拡散の抑制が初期核生成モードを調節できることを強力に立証する。
【0115】
実施例5:様々な電流密度におけるZn電着の形態分析
各電極の電着メカニズムに関するより多い情報を得るために、100mA/cm
2の電流密度において様々な電着時間(1秒、30秒、60秒及び12分)の変化によって、pCF、CZ-1及びCZ-5電極において電着されたZnの構造的な変化を観察した。
図17A~
図17Dは、炭素繊維のチップ部分においてpCF上のZn電着物の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示すものである。1秒において、ミクロンサイズのZnナノ粒子の凝集体がpCF表面の小さな部分に見られた。pCF表面に均一に分布した核の代わりに、Znナノクラスターが炭素表面に垂直に成長することが見られた(
図17A)。DFT計算結果のように、Znのこのようなチップ成長は2段階の核成長によって発生する;まず、炭素繊維の幾何学的に切断されたチップ部分は当該部位でより強い電場を引き起こし、局所的に強化された電場は炭素繊維のチップ部分において有利な電着によるデンドライト成長を招く。その後、Zn原子と核は表面エネルギーを減らすために炭素繊維のチップにある電着されたZnに移動する。Zn凝集体の形成は無欠陥完全グラフェン表面におけるZnアダタムの小さい吸着エネルギーによって理解され得る。Zn電着が進行し続くことによって、電場が集中している炭素繊維の切断されたチップにZn突出部が観測された(
図17B)。
【0116】
追加の電着はpCF電極の一部だけを用いて、チップから由来した体積が大きく、分離されたZn電着物の形状を招く(
図17C、
図17D)。CZ-1の場合、1秒において垂直方向へのこのような凝集性Zn成長は、pCFと類似に観察された(
図17E)。これは、CZ-1上の欠陥炭素構造がZnの凝集核生成を防止できないことを示唆する。30秒の追加電着時間に、多くのZn突出部が炭素繊維のチップ部分で増幅されており(
図17F)、垂直に成長したZn突出部が合わせられて体積の大きいZn電着物を形成し、60秒では各炭素繊維を連結した(
図17G)。最終的に、12分の追加の電着は、局所化されたZn電着物を生成させた(
図17H)。したがって、pCF及びCZ-1電極の場合、電極の局所部位においてZnデンドライトが形成され、電極にZn電着のための大きな分極を招く。pCF及びCZ-1電極とは対照的に、CZ-5電極は相当均一なZn電着を示した。1秒に、微細サイズのZn核が任意のチップ-成長又は塊りを形成せず、CZ-5電極の表面全体にわたって分布しており(
図17I)、これは、豊富な欠陥炭素部位が均一なZn核形成のための強力な吸着部位として効果的に働くということを暗示する。30秒の追加電着後に、Zn電着物の形態は凝集体や突出部を形成せず、炭素繊維の表面を覆った(
図17J)。60秒では表面を完全に覆っており、繊維の側面に成長したZn電着物は他の隣接繊維の電着物に連結された(
図17K)。最終的に、pCF及びCZ-1電極とは違い、CZ-5電極はデンドライトが形成されておらず、高密度欠陥炭素構造を含有する電極の欠陥炭素部位がZnアダタム及び核の自己拡散を効果的に抑制したことを意味する。
【0117】
実施例6:欠陥炭素表面を含有する電極を含む亜鉛フロー電池の電気化学的性能確認
Znメッキ/剥離の臨界電流密度を確認するために、pCF、CZ-1及びCZ-5電極を含む亜鉛-臭素フロー電池(Zinc-bromine flow batteries,ZBB)の律速特性(rate capability)を調べた。ZBBのサイクリング性能は40mA/cm
2の電流密度で4サイクルにわたってサイクリングした後、60mA/cm
2、80mA/cm
2、100mA/cm
2、120mA/cm
2及び60mA/cm
2の様々な電流密度でそれぞれ10サイクルずつ12mAhの固定充電容量でテストした(
図18A~
図18E)。
図18A及び
図18Bに示すように、CZ-5電極を含むZBB(CZ-5@ZBB)のセルだけが120mA/cm
2のメッキ/剥離電流密度に対してそれぞれ67%及び97%のエネルギー効率(Energy Efficiency,EE)及びクーロン効率(coulombic efficiency,CE)を示した。逆に、pCF及びCZ-1を含むZBB(pCF@ZBB及びCZ-1@ZBB)は、120mA/cm
2の電流密度においてセル破壊(cell failure)を示した。興味深いことに、むしろpCF@ZBBはCZ-1@ZBBよりも高いEE及びCEを示し、より長い律速特性テスト時間を維持した(
図18C及び
図18D)。このような結果は、CZ-1電極がpCF電極に比べて不安定な電気化学的性能を示すことを意味し、これは、豊富な核によって誘導可能な電極における有効電流密度の減少及びより均一な金属メッキの生成のような通常の予想と異なるものである。しかし、pCF及びCZ-5電極に比べてより大きい表面積を持つCZ-1の速いセル破壊及び低い律速特性は、強い吸着核生成部位無しで低い表面エネルギー上に豊富に形成された核が、エピタキシャル成長(epitaxial growth)よりはデンドライト凝集体の成長に寄与できることを暗示する。このような傾向は、長期電気化学安定性試験でも確認された(
図18F~18J)。Znメッキ/剥離工程の間にZnデンドライトの成長によって462サイクルにおいてpCF@ZBBセルでCE及びEEが急に減少し(
図19は、長期セルサイクリングテスト以降のZnのデンドライト成長を示す。)、CZ-1@BBは約395サイクルにおいてCE及びEEが減少した。これと比較して、CZ-5@ZBB細胞は、安定したCE(97%以上)及び5,000サイクルまでサイクリングする間にZnの安定した成長を示し、また、効果的にデンドライト成長を抑制した(
図19F、
図19G)。CZ-5@ZBBの圧倒的に優れた電気化学的性能は、固定した120mAh充電容量において120mA/cm
2の充放電電流密度の条件のセルサイクリングテストからも立証された(
図20)。CZ-5@ZBBセルは、200サイクル以上においても安定した性能を示したのに対し、pCF@ZBBセルの場合、CE及びEEはわずか20サイクル後に不安定な性能を示し、CZ-1@ZBBの場合には単に1サイクル後にCE及びEEが劇的に減少した。これは、100mA/cm
2における長期試験結果と類似の傾向であった。他のハイブリッドRFB(ZBBs、Zn-Iodine(I)RFBs、Zn-Iron(Fe)RFBs、Zn-Cerium(Ce)RFBs)と比較しても、CZ-5@ZBBは高電流密度において非常に優れた寿命を示す(
図21)。下記表1は、
図21に引用された文献を示す。
【0118】
【0119】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る電極の表面に高密度炭素欠陥構造を含有する炭素層を含む電極は、金属核の自己拡散及び凝集を抑制してデンドライト形成による電池性能の低下を防止し、金属核又はアダタムを電極の表面に均一に電着させることによって、単純な炭素欠陥構造密度の増加以上の劇的に向上した充放電サイクル及び優れたエネルギー効率を示す。本発明の二次電池用炭素電極の製造方法を用いると、均一に分布した高密度炭素欠陥構造を含有する電極が製造でき、より高い効率及び寿命の電池を生産することができる。前記電極を含む二次電池は中/大規模のエネルギー貯蔵技術に関連した分野に有用に使用可能であり、特に、モバイル機器、自動車バッテリー、新再生エネルギー発電システムなどに有用である。