(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ノズル洗浄装置、ノズル洗浄方法および塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20230515BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20230515BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230515BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
B05D3/00 A
B05D3/10 F
(21)【出願番号】P 2021029987
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】柏野 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】高村 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】安陪 裕滋
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-167508(JP,A)
【文献】特開2020-037092(JP,A)
【文献】特開平07-168015(JP,A)
【文献】特開平10-216598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0107184(US,A1)
【文献】特開2004-055607(JP,A)
【文献】特開2010-240550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を基板に塗布する塗布装置に装備され、前記ノズルを洗浄するノズル洗浄装置であって、
ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部と、
前記ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に当接させた状態で前記吐出口の延設方向に前記付着物除去部を移動させる移動部と、
前記移動部による前記ノズル当接部材の移動によって除去された後で前記付着物除去部を経由して下方に流動する前記塗布液を前記付着物除去部の下方で回収する回収部と、
前記回収部で回収された前記塗布液を前記塗布装置の外部に案内して排出する排出部と、を備え、
前記回収部は、前記付着物除去部の下方で前記排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、前記底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体であり、前記底部および前記側壁で形成される回収領域に沿って前記塗布液を前記排出部に向けて流動させ
、
前記回収部は、
前記回収領域のうち鉛直方向において最も低く前記塗布液が集まってくる集積部位で前記排出部を臨むように前記構造体に開口された排液口に対して開閉自在な開閉部材をさらに有し、
前記開閉部材により前記排液口を閉成することで前記回収領域で前記塗布液を貯留する一方、前記開閉部材による前記排液口の閉成を解除して前記排液口を開成することで前記塗布液を前記排出部に流出させることを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項2】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を基板に塗布する塗布装置に装備され、前記ノズルを洗浄するノズル洗浄装置であって、
ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部と、
前記ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に当接させた状態で前記吐出口の延設方向に前記付着物除去部を移動させる移動部と、
前記移動部による前記ノズル当接部材の移動によって除去された後で前記付着物除去部を経由して下方に流動する前記塗布液を前記付着物除去部の下方で回収する回収部と、
前記回収部で回収された前記塗布液を前記塗布装置の外部に案内して排出する排出部と、を備え、
前記回収部は、前記付着物除去部の下方で前記排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、前記底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体であり、前記底部および前記側壁で形成される回収領域に沿って前記塗布液を前記排出部に向けて流動させ
、
前記回収部は、前記内底面が鉛直上方からの平面視で前記付着物除去部を下方から覆うように配置された状態で、前記付着物除去部と一体的に前記移動部により前記延設方向に移動されることを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項3】
請求項
2に記載のノズル洗浄装置であって、
前記回収部は、
前記回収領域のうち鉛直方向において最も低く前記塗布液が集まってくる集積部位で前記排出部を臨むように前記構造体に開口された排液口に対して開閉自在な開閉部材をさらに有し、
前記開閉部材により前記排液口を閉成することで前記回収領域で前記塗布液を貯留する一方、前記開閉部材による前記排液口の閉成を解除して前記排液口を開成することで前記塗布液を前記排出部に流出させるノズル洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載のノズル洗浄装置であって、
前記排出部は前記回収部の移動範囲の下方に配置され、
前記開閉部材は、前記移動範囲のうち前記回収部が前記排出部の直上位置から外れた位置に位置する間においては前記排液口を閉成し、前記回収部が前記排出部の直上位置に位置するときに前記排液口を開成するノズル洗浄装置。
【請求項5】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を基板に塗布する塗布装置に装備され、前記ノズルを洗浄するノズル洗浄装置であって、
ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部と、
前記ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に当接させた状態で前記吐出口の延設方向に前記付着物除去部を移動させる移動部と、
前記移動部による前記ノズル当接部材の移動によって除去された後で前記付着物除去部を経由して下方に流動する前記塗布液を前記付着物除去部の下方で回収する回収部と、
前記回収部で回収された前記塗布液を前記塗布装置の外部に案内して排出する排出部と、を備え、
前記回収部は、前記付着物除去部の下方で前記排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、前記底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体であり、前記底部および前記側壁で形成される回収領域に沿って前記塗布液を前記排出部に向けて流動させ
、
前記回収部は、前記底部が前記移動部による前記ノズル当接部材の移動範囲に沿って延設されるとともに前記側壁が前記延設方向と直交する水平方向における前記底部の一対の辺部から立設され、断面が凹形状を有する樋部材であり、
前記付着物除去部は、前記支持部材と一体的に移動しつつ、前記支持部材の下方で前記支持部材に沿って下方に流れてくる前記塗布液を受け止めて前記樋部材に流下させるシューターを有することを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載のノズル洗浄装置であって、
前記排出部は、前
記移動範囲の一方側に配置され、
前記樋部材は、前記移動範囲の一方側での前記内底面の高さ位置が前記移動範囲の他方側での高さ位置よりも低くなるように、傾斜して配置されるノズル洗浄装置。
【請求項7】
請求項5
または6に記載のノズル洗浄装置であって、
前記樋部材は交換可能に設けられるノズル洗浄装置。
【請求項8】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を塗布する塗布装置において、前記ノズルを洗浄するノズル洗浄方法であって、
ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部を、前記ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に当接させた状態で前記吐出口の延設方向に移動させて前記ノズルの下端部に付着する前記塗布液を前記ノズル当接部材により除去する第1工程と、
前記ノズル当接部材により除去された後で前記付着物除去部を経由して下方に流動する、前記塗布液を前記付着物除去部の下方で回収する第2工程と、
回収された前記塗布液を排出部を介して前記塗布装置の外部に排出する第3工程と、を備え、
前記第2工程は、前記付着物除去部の下方で前記排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、前記底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体
と、前記底部および前記側壁で形成される回収領域のうち鉛直方向において最も低く前記塗布液が集まってくる集積部位で前記排出部を臨むように前記構造体に開口された排液口に対して開閉自在な開閉部材とで構成される回収部により前記塗布液を回収し、
前記開閉部材により前記排液口を閉成することで前
記回収領域
で前記塗布液を貯留する一方、前記開閉部材による前記排液口の閉成を解除して前記排液口を開成することで前記塗布液を前記排出部に
流出させる工程であることを特徴とするノズル洗浄方法。
【請求項9】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を塗布する塗布装置において、前記ノズルを洗浄するノズル洗浄方法であって、
ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部を、前記ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に当接させた状態で前記吐出口の延設方向に移動させて前記ノズルの下端部に付着する前記塗布液を前記ノズル当接部材により除去する第1工程と、
前記ノズル当接部材により除去された後で前記付着物除去部を経由して下方に流動する、前記塗布液を前記付着物除去部の下方で回収する第2工程と、
回収された前記塗布液を排出部を介して前記塗布装置の外部に排出する第3工程と、を備え、
前記第2工程は、前記付着物除去部の下方で前記排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、前記底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体で構成され
、前記内底面が鉛直上方からの平面視で前記付着物除去部を下方から覆うように配置された状態で、前記付着物除去部と一体的に前記延設方向に移動される回収部により前記塗布液を回収し、前記底部および前記側壁で形成される回収領域に沿って前記排出部に向けて流動させる工程であることを特徴とするノズル洗浄方法。
【請求項10】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を塗布する塗布装置において、前記ノズルを洗浄するノズル洗浄方法であって、
ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部を、前記ノズル当接部材を前記ノズルの下端部に当接させた状態で前記吐出口の延設方向に移動させて前記ノズルの下端部に付着する前記塗布液を前記ノズル当接部材により除去する第1工程と、
前記ノズル当接部材により除去された後で前記付着物除去部を経由して下方に流動する、前記塗布液を前記付着物除去部の下方で回収する第2工程と、
回収された前記塗布液を排出部を介して前記塗布装置の外部に排出する第3工程と、を備え、
前記第2工程は、前記付着物除去部の下方で前記排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、前記底部の辺部から立設された側壁と、を有
し、前記底部が前記ノズル当接部材の移動範囲に沿って延設されるとともに前記側壁が前記延設方向と直交する水平方向における前記底部の一対の辺部から立設され、断面が凹形状を有する樋部材である回収部により前記塗布液を回収し、前記底部および前記側壁で形成される回収領域に沿って前記排出部に向けて流動させる工程であ
り、
前記付着物除去部は、前記支持部材と一体的に移動するシューターを有し、
前記ノズル当接部材により除去された前記塗布液を前記付着物除去部を経由して下方に流動させる際は、前記支持部材の下方で前記支持部材に沿って下方に流れてくる前記塗布液を前記シューターにより受け止めて前記樋部材に流下させることを特徴とするノズル洗浄方法。
【請求項11】
ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して前記塗布液を基板に塗布する塗布部と、
請求項1ないし
7のいずれか一項に記載のノズル洗浄装置と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置用ガラス基板、半導体基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、矩形ガラス基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、有機EL用基板(以下、単に「基板」と称する)に対してノズルの下端部に設けられた吐出口から塗布液を吐出して塗布する塗布装置および上記ノズルの下端部に付着する付着物をノズル当接部材により除去して洗浄するノズル洗浄技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に対して塗布液を供給するために、例えば特許文献1に記載されているようにスリット状の吐出口を有するノズルが一般的に用いられる。このようなノズルでは、塗布液がノズルの下端部に付着することがある。付着物が乾燥して硬化して基板に落下すると、基板を汚染してしまう。そこで、特許文献1に記載の装置では、ノズルから基板に塗布液を供給する前に、ノズルの下端部の側面に付着した塗布液をノズル当接部材により除去して洗浄している。また、ノズル当接部材を下方から被包するようにフィルムを配置し、ノズル当接部材により除去された塗布液をフィルムの中央部に回収した上で、塗布装置の外部に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記フィルムの交換は手作業により行われる。このため、フィルムを取り付ける際、シワになりやすい。全くシワが無いようにするのに、相当な時間を要す。また、シワ無く取り付けたとしても、経時変化および作業者の不注意により、シワが発生することがある。このような要因によりシワが発生すると、当該シワ部分で塗布液が滞留してしまい、塗布液を安定して回収し、塗布装置の外部に排出することが困難となる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルの下端部から除去された塗布液を円滑に塗布装置の外部に排出することができるノズル洗浄技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を基板に塗布する塗布装置に装備され、ノズルを洗浄するノズル洗浄装置であって、ノズル当接部材をノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部と、ノズル当接部材をノズルの下端部に当接させた状態で吐出口の延設方向に付着物除去部を移動させる移動部と、移動部によるノズル当接部材の移動によって除去された後で付着物除去部を経由して下方に流動する塗布液を付着物除去部の下方で回収する回収部と、回収部で回収された塗布液を塗布装置の外部に案内して排出する排出部と、を備え、回収部は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体であり、底部および側壁で形成される回収領域に沿って塗布液を排出部に向けて流動させ、回収部は、回収領域のうち鉛直方向において最も低く塗布液が集まってくる集積部位で排出部を臨むように構造体に開口された排液口に対して開閉自在な開閉部材をさらに有し、開閉部材により排液口を閉成することで回収領域で塗布液を貯留する一方、開閉部材による排液口の閉成を解除して排液口を開成することで塗布液を排出部に流出させることを特徴としている。
また、この発明の第2の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を基板に塗布する塗布装置に装備され、ノズルを洗浄するノズル洗浄装置であって、ノズル当接部材をノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部と、ノズル当接部材をノズルの下端部に当接させた状態で吐出口の延設方向に付着物除去部を移動させる移動部と、移動部によるノズル当接部材の移動によって除去された後で付着物除去部を経由して下方に流動する塗布液を付着物除去部の下方で回収する回収部と、回収部で回収された塗布液を塗布装置の外部に案内して排出する排出部と、を備え、回収部は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体であり、底部および側壁で形成される回収領域に沿って塗布液を排出部に向けて流動させ、回収部は、内底面が鉛直上方からの平面視で付着物除去部を下方から覆うように配置された状態で、付着物除去部と一体的に移動部により延設方向に移動されることを特徴としている。
また、この発明の第3の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を基板に塗布する塗布装置に装備され、ノズルを洗浄するノズル洗浄装置であって、ノズル当接部材をノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部と、ノズル当接部材をノズルの下端部に当接させた状態で吐出口の延設方向に付着物除去部を移動させる移動部と、移動部によるノズル当接部材の移動によって除去された後で付着物除去部を経由して下方に流動する塗布液を付着物除去部の下方で回収する回収部と、回収部で回収された塗布液を塗布装置の外部に案内して排出する排出部と、を備え、回収部は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体であり、底部および側壁で形成される回収領域に沿って塗布液を排出部に向けて流動させ、回収部は、底部が移動部によるノズル当接部材の移動範囲に沿って延設されるとともに側壁が延設方向と直交する水平方向における底部の一対の辺部から立設され、断面が凹形状を有する樋部材であり、付着物除去部は、支持部材と一体的に移動しつつ、支持部材の下方で支持部材に沿って下方に流れてくる塗布液を受け止めて樋部材に流下させるシューターを有することを特徴としている。
【0007】
また、この発明の第4の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を塗布する塗布装置において、ノズルを洗浄するノズル洗浄方法であって、ノズル当接部材をノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部を、ノズル当接部材をノズルの下端部に当接させた状態で吐出口の延設方向に移動させてノズルの下端部に付着する塗布液をノズル当接部材により除去する第1工程と、ノズル当接部材により除去された後で付着物除去部を経由して下方に流動する、塗布液を付着物除去部の下方で回収する第2工程と、回収された塗布液を排出部を介して塗布装置の外部に排出する第3工程と、を備え、第2工程は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体と、底部および側壁で形成される回収領域のうち鉛直方向において最も低く塗布液が集まってくる集積部位で排出部を臨むように構造体に開口された排液口に対して開閉自在な開閉部材とで構成される回収部により塗布液を回収し、開閉部材により排液口を閉成することで回収領域で塗布液を貯留する一方、開閉部材による排液口の閉成を解除して排液口を開成することで塗布液を排出部に流出させる工程であることを特徴としている。
また、この発明の第5の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を塗布する塗布装置において、ノズルを洗浄するノズル洗浄方法であって、ノズル当接部材をノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部を、ノズル当接部材をノズルの下端部に当接させた状態で吐出口の延設方向に移動させてノズルの下端部に付着する塗布液をノズル当接部材により除去する第1工程と、ノズル当接部材により除去された後で付着物除去部を経由して下方に流動する、塗布液を付着物除去部の下方で回収する第2工程と、回収された塗布液を排出部を介して塗布装置の外部に排出する第3工程と、を備え、第2工程は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体で構成され、内底面が鉛直上方からの平面視で付着物除去部を下方から覆うように配置された状態で、付着物除去部と一体的に延設方向に移動される回収部により塗布液を回収し、底部および側壁で形成される回収領域に沿って排出部に向けて流動させる工程であることを特徴としている。
また、この発明の第6の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を塗布する塗布装置において、ノズルを洗浄するノズル洗浄方法であって、ノズル当接部材をノズルの下端部に向けた状態で支持部材により支持した付着物除去部を、ノズル当接部材をノズルの下端部に当接させた状態で吐出口の延設方向に移動させてノズルの下端部に付着する塗布液をノズル当接部材により除去する第1工程と、ノズル当接部材により除去された後で付着物除去部を経由して下方に流動する、塗布液を付着物除去部の下方で回収する第2工程と、回収された塗布液を排出部を介して塗布装置の外部に排出する第3工程と、を備え、第2工程は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する内底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有し、底部が移動範囲に沿って延設されるとともに側壁が延設方向と直交する水平方向における底部の一対の辺部から立設され、断面が凹形状を有する樋部材である回収部により塗布液を回収し、底部および側壁で形成される回収領域に沿って排出部に向けて流動させる工程であり、付着物除去部は、支持部材と一体的に移動するシューターを有し、ノズル当接部材により除去された塗布液を付着物除去部を経由して下方に流動させる際は、支持部材の下方で支持部材に沿って下方に流れてくる塗布液をシューターにより受け止めて樋部材に流下させることを特徴としている。
【0008】
さらに、この発明の第7の態様は、ノズルの下端部に設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出して塗布液を基板に塗布する塗布部と、上記ノズル洗浄装置と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、付着物除去部に設けられるノズル当接部材によりノズルから塗布液が除去される。この塗布液は付着物除去部を経由して下方に流動し、回収部に回収される。回収部は、付着物除去部の下方で排出部に向けて傾斜する底面を有する底部と、底部の辺部から立設された側壁と、を有する構造体で構成される。この回収部では、塗布液が底部および側壁で形成される回収領域に沿って排出部に向けて流動される。そして、当該塗布液が排出部を介して塗布装置の外部に排出される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ノズルの下端部から除去された塗布液を円滑に塗布装置の外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るノズル洗浄装置の一実施形態を装備する塗布装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す塗布装置を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図1に示す塗布装置の各部の配置を概略的に示す上面図である。
【
図4】本発明に係るノズル洗浄装置の第1実施形態である洗浄ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図4に示す洗浄ユニットの付着物除去部および回収部の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係るノズル洗浄装置の第2実施形態である洗浄ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図7】
図6に示す洗浄ユニットの付着物除去部および回収部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係るノズル洗浄装置の一実施形態を装備する塗布装置を模式的に示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示す塗布装置を模式的に示す側面図である。さらに、
図3は、
図1に示す塗布装置の各部の配置を概略的に示す上面図である。なお、
図1、
図2、
図3および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付するとともに、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、
図2および
図3では、ノズル支持体等の一部の構成を省略している。
【0013】
塗布装置1は、スリットノズル2を用いて被塗布物の一例である基板3の表面31に塗布液を塗布するスリットコータと呼ばれる塗布装置である。塗布液は、顔料やマイクロカプセルなどの分散系材料を分散させた分散系塗布液である。また、ノズル2に付着する分散系塗布液を洗浄する洗浄液として、本実施形態では、PGMEA(propyleneglycol monomethyl ether acetate:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、シンナー(エーテル類溶媒やケトン類の有機溶媒など)、PGMEAとPEGME(polyethylene glycol monomethyl ether:プロピレングリコールモノメチルエーテル)との混合液などを用いている。また、基板3は平面視で矩形状を有するガラス基板である。なお、本明細書中で、「基板3の表面31」とは基板3の両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0014】
塗布装置1は、基板3を水平姿勢で吸着保持可能なステージ4と、ステージ4に保持される基板3にノズル2を用いて塗布処理を施す塗布処理部5と、ノズル2に対してメンテナンス処理を施すノズルメンテナンスユニット6と、これら各部を制御する制御部100とを備える。
【0015】
ステージ4は略直方体の形状を有する花崗岩等の石材で構成されており、その上面(+Z側)のうち(-Y)方向側には、略水平な平坦面に加工されて基板3を保持する保持面41を有する。保持面41には図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口により基板3が吸着されることで、塗布処理の際に基板3が所定の位置に水平に保持される。なお、基板3の保持態様はこれに限定されるものではなく、例えば機械的に基板3を保持するように構成してもよい。また、ステージ4において保持面41が占有する領域より(+Y)方向側にはノズル調整領域RAが設けられており、このノズル調整領域RAに後述するように本発明に係るノズル洗浄装置の一実施形態を有するノズルメンテナンスユニット6が配置されている。
【0016】
ノズル2はX方向に延設されている。また、YZ断面において下端部2a(ノズルリップ部)は下方へ先細りの形状を有する。そして、当該下端部2aにおいてスリット状の吐出口21がX方向に延設されており、図示省略の塗布液供給部から圧送されてくる塗布液が上記吐出口21から基板3の表面31に吐出される。これによって、基板3の表面31に塗布液が塗布される。
【0017】
塗布処理部5は、ノズル2を支持するノズル支持体51を有する。このノズル支持体51は、ステージ4の上方でX方向に平行に延設された支持部材51aと、支持部材51aをX方向の両側から支持して支持部材51aを昇降させる2つの昇降機構51bとを有する。支持部材51aは、カーボンファイバ補強樹脂等で構成され、矩形の断面を有する棒部材である。この支持部材51aの下面はノズル2の装着箇所510となっており、支持部材51aは装着箇所510にノズル2を着脱可能に支持する。なお、ノズル2を支持部材51aの装着箇所510に着脱するための機構としては、ラッチあるいはネジ等の種々の締結機構を適宜用いることができる。
【0018】
2つの昇降機構51bは支持部材51aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータおよび及びボールネジ等を有する。これらの昇降機構51bにより、支持部材51aおよびそれに固定されたノズル2が鉛直方向(Z方向)に昇降され、ノズル2の下端で開口する吐出口21と基板3との間隔、すなわち、基板3に対する吐出口21の相対的な高さが調整される。なお、支持部材51aの鉛直方向の位置は、例えば、図示を省略しているが、昇降機構51bの側面に設けられたスケール部と、当該スケール部に対向してノズル2の側面等に設けられた検出センサとで構成されるリニアエンコーダにより検出できる。
【0019】
このように構成されたノズル支持体51は、
図1に示すように、ステージ4の左右両端部をX方向に沿って掛け渡された、保持面41を跨ぐ架橋構造を有している。塗布処理部5は、このノズル支持体51をY方向に移動させるスリットノズル移動部53を有する。スリットノズル移動部53は、架橋構造体としてのノズル支持体51とこれに支持されたノズル2とを、ステージ4上に保持される基板3に対してY方向に沿って相対移動させる相対移動手段として機能する。具体的には、スリットノズル移動部53は、±X側のそれぞれにおいて、ノズル2の移動をY方向に案内するガイドレール52と、駆動源であるリニアモータ54と、ノズル2の吐出口21の位置を検出するためのリニアエンコーダ55とを有する。
【0020】
2つのガイドレール52はそれぞれ、ステージ4のX方向の両端部に設けられ、ノズル調整領域RAおよび保持面41が設けられた区間を含むようにY方向に延設されている。そして、2つのガイドレール52がそれぞれ、2個の昇降機構51bの移動をY方向に案内する。また、2つのリニアモータ54はそれぞれ、ステージ4の両側に設けられ、固定子54aと移動子54bとを有するACコアレスリニアモータである。固定子54aは、ステージ4のX方向の側面にY方向に沿って設けられている。一方、移動子54bは、昇降機構51bの外側に固設されている。2個のリニアモータ54はそれぞれ、これら固定子54aと移動子54bとの間に生じる磁力によって、2個の昇降機構51bをY方向に駆動する。
【0021】
また、各リニアエンコーダ55はそれぞれ、スケール部55aと検出部55bとを有している。スケール部55aはステージ4に固設されたリニアモータ54の固定子54aの下部にY方向に沿って設けられている。一方、検出部55bは、昇降機構51bに固設されたリニアモータ54の移動子54bのさらに外側に固設され、スケール部55aに対向配置される。リニアエンコーダ55は、スケール部55aと検出部55bとの相対的な位置関係に基づいて、Y方向におけるノズル2の吐出口21の位置を検出する。
【0022】
このように構成されたスリットノズル移動部53は、ノズル支持体51をY方向に駆動することで、ノズル調整領域RAの上方とステージ4上に保持される基板3の上方との間でノズル2を移動させることができる。そして、塗布装置1は、ノズル2の吐出口21から塗布液を吐出しながらノズル2を基板3に対して相対移動させることで、基板3の表面31に塗布層を形成する。なお、基板3の各辺の端部から所定の幅の領域(額縁状の領域)は、塗布液の塗布対象とならない非塗布領域となっている。したがって、基板3のうち、この非塗布領域を除いた矩形領域が、塗布液を塗布すべき塗布領域RTとなっている(
図3)。このため、ノズル2の移動区間のうち基板3の塗布領域RTの上方区間を移動する吐出口21から塗布液が吐出される。
【0023】
また、塗布装置1と外部搬送機構との基板3の受渡し期間(基板3の搬入・搬出期間)等のステージ4上で塗布処理が行われない期間には、ノズル2は、基板3の保持面41から(+Y)方向側に外れたノズル調整領域RAに待避する(
図1に示す状態)。そして、ノズル調整領域RAに位置するノズル2に対して、ノズルメンテナンスユニット6が各種のメンテナンスを実行する。
【0024】
ノズルメンテナンスユニット6は、
図2に示すように、保持面41の占有する領域より(+Y)方向側(同図の右手側)のノズル調整領域RAに設けられており、ノズル2をノズル洗浄して、ノズル2に付着した付着物を除去する機能を有している。ここで、除去対象となる付着物としては、ノズル2に付着しうる種々の物質が挙げられる。例えば、この付着物は塗布液自体および塗布液の溶質が乾燥・固化した固化材料などを含む。
【0025】
ノズルメンテナンスユニット6は、2種類の洗浄ユニット7、8を備えている。洗浄ユニット7は、本発明に係るノズル洗浄装置の第1実施形態に相当するものである。洗浄ユニット7では、スクレーパ(ノズル当接部材)がノズル2の下端部2a(ノズルリップ部)の外面に当接しながら、当該外面に沿ってX方向に沿って移動する(掻き取り動作)。これにより、スクレーパはノズル2の下端部2aに付着した塗布液などを掻き取って除去する。この除去された塗布液は後で説明するリンス液と一緒に洗浄ユニット7に設けられる回収部および排出部を介して塗布装置1の外部に排出される。なお、洗浄ユニット7の構成ついては、後で詳述する。
【0026】
もう一方の洗浄ユニット8は、上記洗浄ユニット7によっては除去しきれなかった残留付着物を洗浄液と超音波振動とを利用してノズル2から除去するための装置である。この洗浄ユニット8では、ノズル2の下端部2aを洗浄するための洗浄液が洗浄槽81に貯留されている。ノズル2の下端部2aを洗浄槽81に浸漬した状態で洗浄液を介して超音波振動を下端部2aに加えることで残留付着物を除去する。
【0027】
図4は、本発明に係るノズル洗浄装置の第1実施形態である洗浄ユニットの構成を模式的に示す図である。また、
図5は
図4に示す洗浄ユニットの付着物除去部および回収部の構成を示す斜視図である。洗浄ユニット7は、付着物除去部71と、ノズル洗浄移動部72と、回収部73と、排出部74とを備えている。
【0028】
付着物除去部71は、
図5に示すように、スプレッダ711およびスクレーパ712の2種類のノズル洗浄部材と、スプレッダ711およびスクレーパ712をノズル2の下端部2aに向けた状態で支持する支持部材713とを有する。これらのうち、スプレッダ711は、図示を省略するリンス液供給機構からノズル2の下端部2aに供給されたリンス液をノズル2の下端部2aに塗り広げるリンス液供給機能を担い、スクレーパ712はスプレッダ711の移動方向Xの下流側でノズル2の下端部2aからリンス液を除去する液切り機能を担う。これによって、ノズル2の下端部2aの付着物をリンス液とともに除去することができる。つまり、乾燥して固化した塗布液等の付着物が下端部2aの傾斜面に付着している場合、スプレッダ711により塗り広げられたリンス液が付着物をある程度溶解し、この溶解物(付着物)を含むリンス液がスクレーパ712によって除去される。このように本実施形態では、スクレーパ712が本発明の「ノズル当接部材」の一例に相当しており、ノズル2の下端部2aに付着する塗布液をリンス液とともに除去する機能を有している。なお、洗浄ユニット7のさらに詳しい構成および動作は特許文献1に記載の装置と同一であるため、それらの説明を省略する。
【0029】
支持部材713には、ノズル洗浄移動部72が接続されている。このノズル洗浄移動部72は、制御部100からの移動指令に応じて支持部材713を吐出口21の延設方向Xに往復移動させる。これによりスプレッダ711およびスクレーパ712が
図4に示す移動範囲MRでX方向に往復移動する。この移動範囲MRは、ノズル2の下端部2aの下方で、かつ下端部2aのX方向サイズよりも若干広いサイズを有している。ノズル洗浄移動部72により付着物除去部71が(+X)方向側から(-X)方向側に移動する際には、同図の1点鎖線で示すように、ノズル2が洗浄ユニット7の洗浄位置に位置している。つまり、上記スクレーパ712がノズル2の下端部2aに当接した状態で、付着物除去部71が(+X)方向側から(-X)方向側に移動する。これによりノズル2の下端部2aの洗浄処理が実行される。一方、洗浄処理が完了し、ノズル2が洗浄ユニット7の洗浄位置から離間した状態で、付着物除去部71が(-X)方向側から(+X)方向側に移動し、
図4の実線で示すように排出部74の上方に位置決めされる。このように、ノズル洗浄移動部72が本発明の「移動部」として機能する。
【0030】
洗浄処理によりノズル2の下端部2aから除去された塗布液やリンス液など(以下において、これらを総称して適宜「除去された塗布液」という)、
図5の点線で示すように、付着物除去部71を経由して下方に流れる。この塗布液を回収するために、本実施形態では、回収部73が設けられている。回収部73は鉛直上方に開口したボックス形状を有する構造体で構成されている。より詳しくは、回収部73は、付着物除去部71を下方から覆うのに十分なサイズの開口を有するとともに当該開口と対向する矩形形状の内底面731aを有する底部731を有している。また、底部731の四辺から側壁732~735がそれぞれ立設されている。これにより、付着物除去部71を経由して落下してくる、除去された塗布液を回収する回収領域736が形成されている。
【0031】
このように構成された回収部73は、内底面731aが鉛直上方からの平面視で付着物除去部71を下方から覆うように配置された状態で、図示を省略するブラケットにより付着物除去部71と接続されている。このため、回収部73は、ノズル洗浄移動部72の作動により付着物除去部71と一体的に、延設方向Xに移動する。このため、ノズル2の下端部2aの洗浄処理中、除去された塗布液が連続的に回収部73の回収領域736に回収される。
【0032】
また、本実施形態では、内底面731aが排出部74に向けて傾斜するように、底部731は構成されている。排出部74は、
図4に示すように、移動範囲MRの(+X)方向側で、回収部73の(-Y)方向部位の鉛直下方に配置されている。これに対応し、内底面731aは鉛直方向Zにおいて(-Y)方向部位が最も低くなっている。このため、回収領域736の回収された塗布液は内底面731aに沿って(-Y)方向側に流動し、(-Y)方向部位に集積される。つまり、(-Y)方向部位が本発明の「集積部位」の一例に相当している。また、
図4の実線で示すように、付着物除去部71および回収部73が移動範囲MRの(+X)方向側に位置決めされた状態(以下、「洗浄待機状態」という)、つまり排出部74の直上位置に回収部73が位置した状態で、回収部73で回収した塗布液を排出部74に流出させるために、排液口737が回収部73の底部731に設けられている。より詳しくは、回収部73のうち集積部位736aに対応する箇所に排液口737が排出部74を臨むように設けられている。なお、本実施形態では、底部731の(-Y)方向部位に排液口737が設けられているが、例えば側壁732の下端部位に排液口737を設けてもよい。
【0033】
排液口737に対して開閉自在な開閉部材738が回収部73に設けられている。そして、移動範囲MRのうち回収部73が排出部74の直上位置から外れて位置する間、開閉部材738により排液口737は閉成される。したがって、この間、除去された塗布液は回収領域736内に貯留される。一方、付着物除去部71および回収部73が洗浄待機状態にある際には、回収部73は排出部74の直上位置に位置している。そこで、例えばオペレータが開閉部材738による排液口737の閉成を解除して排液口737を開成することで回収された塗布液は排出部74に流出される。
【0034】
排出部74は、洗浄待機状態の回収部73に向けて開口したボックス形状の受取部材741と、受取部材741の底面から塗布装置1の外部に延設される配管742とを有している。排出部74では、受取部材741が回収部73から排出される塗布液を受け止め、配管742を介して塗布装置1の外部に設けられた排液処理装置(図示省略)に排出する。
【0035】
以上のように、第1実施形態によれば、付着物除去部71に設けられるスクレーパ712によりノズル2から除去された塗布液は、回収部73および排出部74を介して塗布装置1の外部に排出される。しかも、上記回収部73は、付着物除去部71の下方で排出部74に向けて傾斜する内底面731aを有する底部731と、底部731の辺部から立設された側壁732~735と、を有する構造体で構成されている。したがって、フィルムにより塗布液の回収を行っていた従来技術で発生していた各種問題は解消され、ノズル2の下端部2aから除去された塗布液を円滑に塗布装置1の外部に排出することができる。
【0036】
また、第1実施形態では、底部731と側壁732~735とで構成される構造体を付着物除去部71を下方から覆いながら回収部73を付着物除去部71と一体的に移動させている。このため、回収部73の小型化を図ることができる。また、
図4の実線で示すように洗浄待機状態で回収部73から排出部74に塗布液を排出している。したがって、塗布液で汚れる箇所が限定され、メンテナンスに要する負担を軽減することができる。
【0037】
ところで、上記第1実施形態では、回収部73が付着物除去部71と一体的に移動しているが、これは本発明の必須要件ではない。つまり、付着物除去部71が移動するのに対し、回収部が所定位置で静止するように構成されてもよい。以下、
図6および
図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。
【0038】
図6は本発明に係るノズル洗浄装置の第2実施形態である洗浄ユニットの構成を模式的に示す図である。また、
図7は
図6に示す洗浄ユニットの付着物除去部および回収部の構成を示す斜視図である。第2実施形態では、回収部75は、付着物除去部71の移動範囲MRの下方位置でノズルメンテナンスユニット6のフレーム(図示省略)に対して着脱自在に設けられている。回収部75は、
図6に示すように、付着物除去部71の移動範囲MRに沿って延設され、鉛直上方に開口した樋形状を有する構造体で構成されている。より詳しくは、回収部75は、付着物除去部71の移動経路を下方から臨むように移動範囲MRに沿って延設された、略V字状断面を有する底部751と、ノズル2の延設方向Xと直交する水平方向Yにおける底部751の(+Y)方向側の長辺部から立設された側壁752を有している。すなわち、回収部75はYZ断面において凹形状を有する樋部材753で構成されている。凹形状の一例として、本実施形態では、樋部材753を略V字形状に仕上げている。この樋部材753は、移動範囲MRの一方側(
図6中の(-X)方向側)での内底面751aの鉛直方向Zにおける高さ位置が移動範囲MRの他方側(
図6中の(+X)方向側)での高さ位置よりも低くなるように、傾斜して配置されている。
【0039】
また、側壁752では、
図7に示すように、互いに異なる傾斜角を有する側壁部位752a~752cが設けられている。つまり、底部751の(+Y)方向側の長辺部から斜め上方外側に延びる側壁部位752aは比較的急峻な傾斜面となっている。側壁部位752aから(+Y)方向に側壁部位752bが比較的緩やかな傾斜角で斜め上方外側に延びている。さらに、側壁部位752bから側壁部位752cがほぼ垂直に延設されている。
【0040】
このように構成された樋部材753は、次に説明する付着物除去部71のシューター715の流出口がV字状の内底面751aを構成する一方斜面751b(
図7)に対向するように、樋部材753はノズルメンテナンスユニット6のフレームに対して着脱自在と装着されている。なお、
図6中の符号754が樋部材753を上記フレームに固定するためのボルトであり、ボルト754を外すことでフレームに固定されている樋部材753を取り外し、新品または洗浄済の交換用樋部材753に交換可能となっている。
【0041】
付着物除去部71の基本構成は第1実施形態と同一であるが、樋部材753の側壁部位752bに回収した塗布液を落下させるために、第2実施形態における付着物除去部71は以下のような相違点を有している。付着物除去部71の支持部材713の上面は、
図7に示すように、(-Y)方向側から(+Y)方向側への下る傾斜面713aに仕上げられている。また、支持部材713の(+Y)方向側の側面に対し、案内部材714が取り付けられている。この案内部材714は、上記(+Y)方向側の側面に沿って流れる塗布液を(+X)方向側に集めて狭小部位714aから落下させる機能を有している。また、狭小部位714aの下方にシューター715が設けられている。さらに、支持部材713および案内部材714を外側から覆うようにカバーするカバー部材716が着脱自在に取り付けられている。このため、洗浄処理によりノズル2の下端部2aから除去された塗布液は、
図7の点線で示すように、カバー部材716の上端部でX方向への流出を規制した状態で、支持部材713の上面(傾斜面713a)に沿ってカバー部材716と案内部材714との間を流れ込む。この塗布液は、さらに狭小部位714aを介してシューター715に流れ、シューター715の先端部から樋部材753の一方斜面751bに流下される。こうして塗布液が樋部材753に回収される。
【0042】
この回収処理は、スクレーパ712がノズル2の下端部2a(ノズルリップ部)の外面に当接しながら当該外面に沿ってX方向に沿って移動している間、連続的に実行される。また、樋部材753に回収された塗布液は、側壁部位752bから内底面751aに移動し、
図6中の点線矢印で示すように、内底面751aに沿って(-X)方向に流れ、排出部74に送り込まれる。そして、受取部材741が樋部材753からの塗布液を受け止め、配管742を介して塗布装置1の外部に設けられた排液処理装置(図示省略)に排出する。
【0043】
以上のように、第2実施形態においては、上記回収部75が、底部751の一対の長辺部から側壁752、753をそれぞれ立設させてYZ断面において略U形状を有する樋形状を有する構造体(樋部材753)で構成されている。したがって、第1実施形態と同様に、フィルムにより塗布液の回収を行っていた従来技術で発生していた各種問題は解消され、ノズル2の下端部2aから除去された塗布液を円滑に塗布装置1の外部に排出することができる。
【0044】
また、シューター715の先端部から樋部材753の一方斜面751bを経由して内底面751aに流動させ、排出部74に送り込んでいる。したがって、内底面751aに沿って流れている塗布液に対してシューター715から新たな塗布液を直接流下させるのを防止している。このため、回収部75内での塗布液の飛び散りを効果的に防止することができ、スクレーパ712により除去された塗布液の回収を安定して行うことができる。
【0045】
また、樋部材753が交換自在となっているため、メンテナンス時には必要となる作業は、新品または洗浄済の交換用樋部材753との交換のみとなり、メンテナンス性を高めることができる。なお、取り外した樋部材753については、塗布装置1を再稼働した後で作業者の時間があるときに樋部材753を洗浄すればよく、作業効率を高めることができる。
【0046】
さらに、第2実施形態では、シューター715が支持部材713の下方に配置され、支持部材713に沿って下方に流れてくる塗布液を受け止めて樋部材753に流下するように構成している。このため、除去された塗布液を安定して樋部材753で回収することができる。また、傾斜面713a、案内部材714およびカバー部材716を設けることで、除去された塗布液の流れる経路を規定し、シューター715に確実に案内している。このため、塗布液の回収効率をさらに高めることができる。ただし、このような経路を形成することは必須要件ではなく、例えば第1実施形態と同様に、支持部材713を下方から覆うようにシューター715を配置してもよい。このシューター715は、支持部材713の側面を流れる塗布液を受け止め、その先端部から樋部材753の一方斜面751bに流下させる。
【0047】
上記したように、第1実施形態および第2実施形態では、吐出口21から塗布液を吐出するノズル2を塗布処理部5によりY方向に移動させて基板3に塗布液を塗布しており、ノズル2および塗布処理部5の組み合わせが本発明の「塗布部」として機能している。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、スプレッダ711およびスクレーパ712を有する付着物除去部71によりノズル洗浄を行う装置に本発明を適用しているが、スクレーパ712のみを有するノズル洗浄装置に対しても本発明を適用することができる。
【0049】
また、上記第2実施形態では、樋部材753の側壁752を単一の側壁部位で構成するとともに、側壁752を互いに異なる傾斜角を有する3つの側壁部位752a~752cで構成している。側壁の構成はこれらに限定されるものではなく、側壁752を構成する側壁部位の数は任意である。
【0050】
さらに、上記第1実施形態では本発明の「内底面」のYZ断面形状を「平面」に仕上げ、上記第2実施形態では本発明の「内底面」のYZ断面形状を略「V字面」に仕上げているが、「内底面」の形状はこれらに限定されるものでなく、例えばYZ断面形状を弧状に仕上げてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は、基板」と称する)に対してノズルの下端部に設けられた吐出口から塗布液を吐出して塗布する塗布装置および上記ノズルの下端部に付着する付着物をノズル当接部材により除去して洗浄するノズル洗浄技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…塗布装置
2…スリットノズル(塗布部)
2a…(ノズルの)下端部
3…基板
5…塗布処理部(塗布部)
7…洗浄ユニット(ノズル洗浄装置)
21…吐出口
71…付着物除去部
72…ノズル洗浄移動部
73,75…回収部
74…排出部
731,751…底部
731a,751a…(底部の)内底面
732~735,752…側壁
736…回収領域
736a…集積部位
738…開閉部材
753…樋部材
MR…移動範囲
X…延設方向
Y…水平方向
Z…鉛直方向