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特許7279132ドライヤを備える外科用組織マーキングデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ドライヤを備える外科用組織マーキングデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
A61B17/00
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172148
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2017154925の分割
【原出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2022002797
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】62/373,563
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500204326
【氏名又は名称】テルモ カーディオバスキュラー システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ランダル・ジェームズ・カディコフスキ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05226419(US,A)
【文献】特表2015-513408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0042838(US,A1)
【文献】特開昭59-000350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 90/00
A61M 35/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物組織にインクを付与するためのマーキング/乾燥ツールであって、
円筒形の本体と、
前記本体内の格納位置と、前記組織にマーキングするための前記本体の外側にある延伸位置との間で移動可能であるフェルト製の先端部と、
乾燥ガスを前記組織上に選択的に分配するための手動バルブを備えるガス供給源と、
前記先端部が前記延伸位置にあるときに、前記手動バルブの作動を防止することにより乾燥ガスの分配を防止するためのインターロックと
を備える、マーキング/乾燥ツール。
【請求項2】
前記インターロックは、前記手動バルブから前記乾燥ガスが分配されている間、前記先端部が前記延伸位置まで移動するのを防止する、請求項1に記載のマーキング/乾燥ツール。
【請求項3】
前記本体から延在する可鍛性支持シャフトをさらに備え、前記可鍛性支持シャフトの遠位端に前記フェルト製の先端部が取り付けられている、請求項2に記載のマーキング/乾燥ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2016年8月11日に出願された米国仮特許出願第62/373,563号の優先権を主張するものである。連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし
本発明は、概して、外科手技中に生物組織にマーキングするためのツールに関し、より詳細には、生物組織を乾燥させることにより組織マーキングの精度および完全性を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
切開、縫合または他の外科的ステップの準備として、標的組織を適切に方向付けるためにおよび見つけるために、外科医が最初に組織上のロケーションを特定してマーキングする場合がある。例えば、冠動脈バイパス術(CABG:coronary artery
bypass grafting)では、血管が患者の身体内のその元のロケーションから「摘出」され(つまり、取り除かれる)、閉塞部分の周りに血流を形成するために他の場所に再び取り付けられる。管は、患者の身体から取り除かれた後、バイパスグラフトとして使用されるように準備されなければならない。準備には、各ブランチスタブ(branch stub)を結紮すること(つまり、遮断すること)、漏洩を試験するために圧力下で静脈に液剤を注入すること、更には他には、血管の状態を検査することが含まれる。準備の後、バイパスを形成するために管が外科的に吻合され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
管の準備には、メチレンブルー染料からなる長手方向ガイドラインをグラフトの外壁に沿うように付与することが含まれることが一般的になっている。このラインは、グラフトが捻じれているかどうかを示すことによりグラフトを適切に配置するのを補助することが意図され、グラフトが捻じれている場合は捩れが生じてバイパスを通る血流が不足する可能性がある。ガイドラインを付与するために、外科医または内科医の助手が、メチレンブルー染料が充填されたフェルトペンを使用して手作業で管にマーキングする。体外にあるとき、管を維持するために、管はヘパリン化塩水(heparinized saline)により湿潤状態に保たれる。しかし、水分が染料を「移動」または放散させる可能性があり、その場合、ラインが不明瞭になる。これにより、多くの手技で所望されるようなピンポイントの精度を達成することが困難となる。
【0004】
湿潤組織のマーキングの他の例には、1)縫合位置を示すために、大動脈弁の修復中に、生きた状態のヒトの大動脈弁の内側表面(塩水および血液により湿潤している)にマーキングすること、2)種々の手技のために、および、解剖された検体にマーキングするために、死体および生きた状態の動物の組織の内部にマーキングすること、ならびに、3)湿潤したヒトの眼の外側表面にマーキングすること、が含まれる。
【0005】
メチレンブルーなどの染料を用いてマーキングすることに加えて、レーザスコアリング、点墨、ヒートバーニングおよびコールドバーニングなどの、組織をマーキングするための他の手段も、マーキングされる組織表面上の水分により悪影響を受ける可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インクまたは染料を使用して組織上に所望のラインまたはパターンを正確に
マーキングする能力を向上させるために生物組織上の水分を減少させることができるツールを提供する。このデバイスが、湿潤組織上のラインが不明瞭になる場合がある従来の染料マーカーペンと比較して、湿潤組織上での組織マーキングをより迅速およびより明瞭にすることにより、手術結果を向上させる。
【0007】
本発明が、乾燥ガス(例えば、加圧されたCO)の流れを使用して水分を減少させるための「ブロードライ特徴部」を有するマーキングデバイスを提供する。湿潤組織を乾燥させることは、周りの水分が乾燥領域へと戻るように迅速に広がる可能性があることから、長続きしない可能性がある。したがって、マーカーおよびドライヤノズルが一般的なハウジング内に収容され、それにより使用者が乾燥機能とマーキング機能とを迅速に切り換えることが可能となる。好適には、マーカー先端部および/またはガスノズルの一方または両方がエアブラシ効果を回避するために格納可能であるかまたは他の形でもう一方から保護され、エアブラシ効果では、染料が意図されずに組織上へと拡散する可能性がある。
【0008】
本発明の一態様によると、湿潤組織マーキング装置は、マーキング先端部と、ガスノズルと、保持体とを備える。保持体がマーキング先端部およびガスノズルを格納し、それにより、使用者が湿潤組織表面上への乾燥ガスを計量しながら供給することにより湿潤組織表面を乾燥させ、装置を再構成してマーキング先端部を用いて表面にマーキングする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】生物組織を乾燥させて生物組織にマーキングするための組み合わせツールの一実施形態を示す平面図である。
図2】マーキングおよび乾燥用の両頭型ツールを有する別の実施形態を示す平面図である。
図3A図3Aは、マーカーが延伸している状態の、格納可能なマーカーおよび乾燥ガスの内部供給源を有する別の実施形態を示す平面図である。
図3B図3Bは、マーカーが格納されている状態の、格納可能なマーカーおよび乾燥ガスの内部供給源を有する別の実施形態を示す平面図である。
図4A図4Aは、マーカーの延伸時に乾燥ガスの放出を防止するためのインターロック機構を備える、マーキング機能と乾燥機能とを組み合わせたツールの別の実施形態を示す概略図である。
図4B図4Bは、マーカーの延伸時に乾燥ガスの放出を防止するためのインターロック機構を備える、マーキング機能と乾燥機能とを組み合わせたツールの別の実施形態を示す概略図である。
図5】改良型の実施形態を示す概略図である。
図6】マーキング先端部が可鍛性シャフトによって保持される別の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ブロードライヤ機能およびマーカー機能を提供する組み合わせツール10を示す。ハンドル11は、その遠位端のところにノズル13を有する中空ロッド12を支持する。COなどの乾燥ガスが、供給チューブ15によって接続される外部供給源14からロッド12およびハンドル11を通してノズル13へと供給される。COガスは、一般に、手術設備内で、例えば標準的なルアーフィッティングあるいはガスカートリッジまたはガスシリンダを介して、利用可能である。マーキングされることになる湿潤組織領域は、その領域の方を向くノズル13を通るガスを計量しながら供給することにより一時的に乾燥され得る。先端部17を備えるマーカーデバイス16が、ノズル13に隣接するように、ストラップ18によりロッド12に設置される。先端部17は、好適には、メチレン染料のための精密な先端部の外科用マーカーからなる。別法として、マークを形成するために組織を切除するためのレーザエミッタ、墨を形成するためのニードルまたはセットの
ニードル、マークを焼き付けるための加熱要素、または、マークを焼き付けるためのコールドバーン要素(cold burn element)が使用されてもよい。
【0011】
図2は、筆記用のペンに類似する円筒形の全体形状を有する自己収容デバイス20を示す。一方の端部のところで、フェルト製の先端部21が、円筒形本体またはチューブ23内のリザーバ22から染料またはインクを提供する。もう一方の端部のところにあるCOノズル24が、本体23内に設置されるCOカートリッジ25から、円筒形本体23の側面上のプッシュボタンによって手動で制御されるバルブ26を介して、ガス流れを選択的に提供する。所望の領域が乾燥された後で所望される通りに組織にマーキングするのを可能にするために、本体を握持して本体の向きを逆にする(つまり、反転させる)のを補助するための環状隆起部27が本体23の長手方向における中央部分のところに設けられる。
【0012】
図3Aおよび図3Bは、デバイス30を逆にすることが必要ではない代替的実施形態を示す(つまり、円筒形本体の同じ作業端部からマーカーおよびドライヤノズルが展開されることになる)。マーキング先端部31およびガスノズル32の一方または両方が格納可能であり、その結果、乾燥機能およびマーキング機能の各々がもう一方の機能によって干渉されることなく実施され得るようになる(例えば、染料がエアブラシで消されることがない)。図3Aでは、マーキング先端部31が円筒形本体33から延伸している。本体33の端部のところにあるノズル開口部から出るように先端部31を選択的に延伸させるのに、円筒形本体33の反対側の端部のところにあるプッシュボタン34によって作動される回転カム本体(図示せず)を備える格納可能なペンタイプの構造が使用される。図3Bでは、先端部31が格納されている。先端部31が開口部を開放するとき、カートリッジ35からガスを分配するためにガスノズルが延伸させられ得る。別法として、ガスが逃げることができるようにマーキング先端部31がノズル開口部32の後方の位置まで格納される限り、延伸可能なノズルを提供する必要はない。
【0013】
図4Aおよび4Bは、格納可能なドライヤ/マーカーツール40の別の実施形態をより詳細に示す。外部供給装置からのガスライン41がルアーフィッティング42を介して内部ライン43に接続される。内部ライン43がバルブ44に接続され、バルブ44が内部開口部またはノズル45へとガスを選択的に解放する。バルブ44は、チューブ46の側面に沿って長手方向に延在するガスレバー47から管状本体46内へと延在する第1のプランジャアームを介して、開閉される。レバー47の近位端がチューブ46に取り付けられる。ガスレバー47の遠位端のところで、第2のプランジャアーム48が、延伸可能/格納可能なマーカーシャフト51によって保持される停止ブロック50にインターフェース接続(換言すれば、面接触)される。マーカー先端部52がシャフト51の遠位端のところに配置される。図4Aに示されるようにマーカー先端部52が管状本体46内に格納されると、停止ブロック50により、第2のプランジャアーム48は向きがそれることがなく、それにより、第1のプランジャアームがガスバルブ44を開けることが可能となり、それにより、標的組織を乾燥させるために管状本体46を通って遠位端内の開口部53から外に出る乾燥ガスを計量しながら供給することが可能となる。プランジャアームおよび停止ブロックが、バルブ44を作動させるために先端部52を必ず格納するようにするためのインターロックを形成する。プランジャアーム48の上に備え付けられるばね54がレバー47をチューブ46から離すように付勢し、その結果、通常時はバルブ44が停止される。レバー47をチューブ46の方に移動させるのを可能にするために、シャフト51/先端部52は、停止ブロック50がプランジャアーム48の侵入を妨げないように格納されなければならない。
【0014】
シャフト51/先端部52の格納/延伸は、近位端のところにあるプッシュボタン55を使用して制御される。好適な実施形態では、開口部53を通すようにマーキング先端部
52を選択的に延伸させるかまたは格納するのに、ばね56を有する格納可能な(つまり、クリックタイプの)ペン機構が使用される。こうして、先端部52が格納される場合を除いて、停止ブロック50が第2のプランジャアーム48に干渉する状態となるように配置される。ガスレバー47を押し下げることにより乾燥ガスを分配するように構成された後、第2のプランジャアームが図4Aに示される位置まで貫通し、それにより、停止ブロック50およびプランジャアーム48の干渉を理由としてシャフト51が延伸することが防止される。マーカーシャフト51が延伸させられると、ガスレバー47が径方向外側に向きを変え、その結果、第1のプランジャアームがガスバルブ44から離れるように移動し、ガスバルブ44が閉じられ、それにより遠位端のところでガスが放出されることが防止される。
【0015】
図5に示されるように、乾燥ガスがマーカーの上に吹きつけられることがないように乾燥ガスの自由流れがマーカー先端部の格納位置を越えたところで始まるよう、長く延びる内部ガスライン60を提供することが好適である場合がある。別法として、ガス流れから先端部を分離するために、マーカー先端部の格納位置の周りに内部保護壁またはチューブ61が配置されてもよい。
【0016】
図6は別の実施形態を示しており、ここでは、ツール本体70が、近位端のところにあるガス供給用のルアー接続部71と、遠位端のところにあるガス排出チューブ72とを装備する。本体70を便利に操作することができるように、親指作動式のガスバルブ73がフィンガーグリップ74の後方に配置される。マーキング部分75は、本体70から延在する可鍛性(換言すれば、柔軟な)支持シャフト77の遠位端に取り付けられる染料マーカーのフェルト製の先端部76を有する。内部の大動脈弁の部分などの窮屈な領域をより良好に可視化するような先端部76の配置を設定するように、使用者がシャフト77を手動で曲げることができる。
【0017】
図6の実施形態では、先端部76が格納可能ではない。別法として、フェルト製の先端部のホルダーチューブ、および、摺動制御ボタンからの連結部が設けられ得る。いずれの場合も、シャフト77が予め曲げられていてよく、その結果、フェルト製の先端部76が組織に接触するように配置される場合、主本体70に対して一定の角度をつけられて保持されることになる。これにより、使用者の可視性をより良好にすることが可能となる。通常、直線状のマーカーはマーキングしようとする場所を遮ってしまう。フェルト製の先端部の場合、曲がったチューブの中に格納されるとき、チューブホルダーの内部に戻ったときに直線状に戻ることができる。
【符号の説明】
【0018】
10 ツール
11 ハンドル
12 中空ロッド
13 ノズル
14 外部供給源
15 供給チューブ
16 マーカーデバイス
17 先端部
18 ストラップ
20 自己収容デバイス
21 フェルト製の先端部
22 リザーバ
23 円筒形本体またはチューブ
24 COノズル
25 COカートリッジ
26 バルブ
27 環状隆起部
30 デバイス
31 マーキング先端部
32 ガスノズル、ノズル開口部
33 円筒形本体
34 プッシュボタン
35 カートリッジ
40 ドライヤ/マーカーツール
41 ガスライン
42 ルアーフィッティング
43 内部ライン
44 ガスバルブ
45 内部開口部またはノズル
46 チューブ、管状本体
47 ガスレバー
48 第2のプランジャアーム
50 停止ブロック
51 マーカーシャフト
52 マーカー先端部
53 遠位端内の開口部
54 ばね
55 プッシュボタン
56 ばね
60 内部ガスライン
61 内部保護壁またはチューブ
70 ツール本体、主本体
71 ルアー接続部
72 ガス排出チューブ
73 親指作動式のガスバルブ
74 フィンガーグリップ
75 マーキング部分
76 染料マーカーのフェルト製の先端部
77 可鍛性支持シャフト
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6