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特許7279135抗微生物性ガス放出剤、ならびにその使用のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】抗微生物性ガス放出剤、ならびにその使用のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/28 20060101AFI20230515BHJP
   A23L 3/3445 20060101ALI20230515BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B65D81/28 C
A23L3/3445
A61L2/20
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180586
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2019524317の分割
【原出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2022017492
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】62/421,348
(32)【優先日】2016-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501014005
【氏名又は名称】シーエスピー テクノロジーズ,インコーポレイティド
【住所又は居所原語表記】960 West Veterans Boulevard, Auburn, Alabama 36832 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・アール・フリードマン
(72)【発明者】
【氏名】ディープティ・エス・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・ジョンストン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ベルファンス
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513748(JP,A)
【文献】特開平08-081580(JP,A)
【文献】特表2001-516213(JP,A)
【文献】特表2013-525215(JP,A)
【文献】特表2016-504296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 81/18-81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
A23B 4/00- 5/22
A23B 7/00- 9/34
A23L 3/00- 3/3598
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
A61L 2/00- 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器において、前容器、前容器内の内部空間内に配置される製品を有し前記容器が前記製品によって占有されていない前記内部空間の体積内に形成されるヘッドスペースを含み、前記容器が密閉されておりかつ混和ポリマーを含み、前記容器内に前記混和ポリマーによって生成される二酸化塩素ガスをし、前記混和ポリマーが、
(a)ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリアクリルエステル、ポリウレタン、ポリアセタール又はそれらのコポリマー若しくは混合物から選択されるベースポリマーと、
(b)チャネリング剤であって、前記混和ポリマーが、前記チャネリング剤から形成された、前記ベースポリマーを通るチャネルを特徴とし、前記チャネリング剤は、ポリグリコール、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、グリセリンポリアミン、ポリウレタン、ポリカルボン酸、酸化プロピレン重合モノブチルエーテル、酸化プロピレン重合物、エチレン-酢酸ビニル、ナイロン6、ナイロン66又はそれらの組合せであるチャネリング剤と、
(c)アルカリ性亜塩素酸塩を含む二酸化塩素ガス放出剤であって、二酸化塩素ガスの放出が、前記混和ポリマーが湿気と接触することによって活性化される、二酸化塩素ガス放出剤と
を含み、
前記容器が、二酸化塩素ガス濃度対時間の曲線によって表される、前記密閉された容器の前記ヘッドスペース内における二酸化塩素ガスの放出プロフィールであって、前記曲線がゼロ時間T 0 で二酸化塩素ガスの初期放出を示し、その後前記曲線がT 0 後3~18時間であるT 1 時間で二酸化塩素ガス濃度ピーク又は最大値C max に到達するまで増加する放出プロフィールを有する容器
【請求項2】
前記容器内の内部空間に食品の形態の製品が配置され、前記二酸化塩素ガスが前記食品の器官的劣化を引き起こすことなく前記食品に付着した病原菌を阻害する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記混和ポリマーが前記食品の下には配置されていない、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記製品が前記内部空間内に配置される時に、前記製品が少なくとも1種の病原体によって汚染されており、前記二酸化塩素ガス放出剤、前記少なくとも1種の病原体のグラムあたりのコロニー形成単位(CFU/g)における少なくとも2の対数減少をもたらすように、二酸化塩素ガスの徐放を提供する、請求項1に記載の容器
【請求項5】
前記混和ポリマーが製品の下には配置されていない、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記容器が、底部、前記底部から上部開口まで垂直方向に延在する1つ以上の側壁、前記上部開口を閉じ及び/又は密封して前記容器を閉じるカバーとを備え、前記混和ポリマーが、(a)前記内部空間内の1つ以上の側壁の少なくとも1つの上に、1つ以上の側壁の少なくとも1つの正中線上に位置し、前記正中線は、前記底部と前記上部開口との間の中心に位置し;及び/又は(b)前記カバー上に配置される、請求項1に記載の容器。
【請求項7】
max に到達した後に、前記曲線は、その後C max の3分の1以下であるT 2 時間の二酸化塩素ガス濃度(C T2 )に到達するまで経時的に減少し、T 2 はT 1 の値の3倍である、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記混和ポリマーが、
(a)前記ベースポリマーを10~50重量%、
(b)前記チャネリング剤を2~10重量%、
(c)前記二酸化塩素ガス放出剤を40~70重量%
含む、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
前記ベースポリマーがエチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、前記チャネリング剤がポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1又は8に記載の容器。
【請求項10】
前記アルカリ性亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記二酸化塩素ガス放出剤がトリガーとしての塩化カルシウムをさらに含む、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記混和ポリマーがペレット、プラグ、ライナー、フィルム又はシート状に形成された、請求項1~10のいずれかに記載の容器。
【請求項12】
前記混和ポリマーが、0.1mm~1.0mmの厚さを有するフィルムである、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記混和ポリマーが、包装材料に形成されるか、又は包装材料の成分である、請求項1~12のいずれかに記載の容器。
【請求項14】
前記混和ポリマーが蓋若しくは蓋フィルムとして、又は蓋若しくは蓋フィルムの成分として提供される、請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記混和ポリマーがポリプロピレン又はポリエチレンからなる軟質バッグの成分として提供される、請求項13に記載の容器。
【請求項16】
前記混和ポリマー及び/又は二酸化塩素ガス放出剤が、二酸化塩素ガスの所定の放出プロフィールを実現するために、少なくとも1個の延長放出コーティング又は層で被覆されている、請求項1~15のいずれかに記載の容器。
【請求項17】
閉容器の内部空間内にある製品に対する微生物を害するための方法であって、前記方法が、
a.前記製品によって占有されていない前記内部空間内にヘッドスペースが形成された前記密閉容器に前記製品配置することと;
b.混和ポリマーを提供することと
前記混和ポリマーと湿分とを接触させて、前記ヘッドスペース内における二酸化塩素ガスの形成を、前記製品に対して微生物を阻害するのに十分な濃度で活性化させることと
を含み、前記混和ポリマーが、
(a)ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリアクリルエステル、ポリウレタン、ポリアセタール又はそれらのコポリマー若しくは混合物から選択されるベースポリマーと、
(b)チャネリング剤であって、前記混和ポリマーが、前記チャネリング剤から形成された、前記ベースポリマーを通るチャネルを特徴とし、前記チャネリング剤は、ポリグリコール、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、グリセリンポリアミン、ポリウレタン、ポリカルボン酸、酸化プロピレン重合モノブチルエーテル、酸化プロピレン重合物、エチレン-酢酸ビニル、ナイロン6、ナイロン66又はそれらの組合せであるチャネリング剤と、
(c)アルカリ性亜塩素酸塩を含む二酸化塩素ガス放出剤であって、二酸化塩素ガスの放出が、前記混和ポリマーが湿気と接触することによって活性化される、二酸化塩素ガス放出剤と
を含み、
前記二酸化塩素ガスが前記製品を滅菌し、前記製品が前記内部空間内に提供される時に、前記製品が少なくとも1種の病原体によって汚染される場合、前記二酸化塩素ガス、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも2の対数減少をもたらす、方法。
【請求項18】
滅菌される前記製品が医療デバイスである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記製品が食品であり、前記方法が食品の器官的劣化を引き起こさない、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記混和ポリマーが製品の下には配置されていない、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記容器が、二酸化塩素ガス濃度対時間の曲線によって表される、前記密閉容器の前記ヘッドスペース内における二酸化塩素ガスの放出プロフィールであって、前記曲線がゼロ時間T 0 で二酸化塩素ガスの初期放出を示し、その後前記曲線がT 0 後18時間以内に生じるT 1 時間で二酸化塩素ガス濃度ピーク又は最大値C max に到達するまで増加する放出プロフィールを有する、請求項17~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
max に到達した後に、前記曲線は、その後C max の3分の1以下であるT 2 時間の二酸化塩素ガス濃度(C T2 )に到達するまで経時的に減少し、T 2 はT 1 の値の3倍である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ベースポリマーがエチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、前記チャネリング剤がポリエチレングリコール(PEG)であり、前記アルカリ性亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記二酸化塩素ガス放出剤がトリガーとして塩化カルシウムをさらに含み、前記混和ポリマーが0.1mm~1.0mmの厚さを有するフィルムである、請求項17~22のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、全体的に参照によって本明細書に組み込まれる、2016年11月13日出願の「ENTRAINED POLYMERS WITH ANTIMICROBIAL RELEASING AGENTS」と題された米国仮特許出願第62/421,348号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、容器の内部空間内、ならびに/あるいはパッケージ中に貯蔵される製品/商品における微生物の成長減少及び予防、又は微生物の殺滅のためのシステム及び方法に関する。より特に、本発明は、抗微生物性放出剤が混和されたポリマーを使用する、例えば、食品容器中での微生物の成長減少及び予防、又は微生物の殺滅のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
制御及び/又は規制されなければならない環境において、好ましくは、貯蔵、輸送及び利用される品目が多数ある。例えば、湿分制御分野において、その中に捕捉された過剰量の湿分を吸収する能力を有する容器及び/又はパッケージは望ましいものとして認識されている。同様に、汚染のリスクを伴う製品、例えば、食品のパッケージにおいて、微生物の成長及び増殖を制御することが望ましくなり得る。
【0004】
食品、特に、スライスされたか、又はカットされた生鮮食料品、例えば、肉、家禽肉、果実及び野菜は、典型的に、食品の目視検査を可能にする透明なプラスチックフィルムによってラップされた支持容器、例えば、トレーに貯蔵され、かつ販売される。これらの食品は滲出液(すなわち、汁)を生じるが、これは一般に、微生物の成長源となる可能性がある。加えて、食品が接触するプロセス装置又は他の表面の汚染が食品に残留し得、かつパッケージされた状態で増殖することもあり得る。同様に、食品は、パッケージプロセスの前にも汚染され得る。例えば、トマトは、その表皮に開口部を有し得、それを通して望ましくない微生物が侵入し、そこで自己複製することもあり得る。食品取り扱いプロセス及び/又はコールドチェーン管理における中断(例えば、食品輸送の間の冷蔵が数時間中断する)によって、汚染食品の微生物成長がもたらされる可能性があり、潜在的に食品由来疾病の発生を導く可能性がある。食品中の微生物汚染の原因又は性質にかかわらず、汚染食品の貯蔵寿命及び安全性は、汚染及び微生物の増殖に影響を受ける。
【0005】
食品産業が食料品の保存のために取り組んだ1つの方法は、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム及び亜硝酸塩などの食品グレードの防腐剤を食品の成分として含ませることによる。しかしながら、そのような防腐剤は、いくつかの健康分野及び消費者には、不自然であり、かつ健康リスクを引き起こすものとしてみなされている。さらに、未加工食品、例えば、新鮮な果実又は野菜に対して、そのような防腐剤を使用することは実際的ではない。
【0006】
食品産業が食品保蔵のために取り組んだ別の方法は、パッケージ材料中の成分として食品と直接接触する抗微生物剤を利用することである。しかしながら、いくつかの用途においては、そのような直接接触が望ましくないこともあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特定の用途に関して、有効となるためには貯蔵食品との直接接触が必要である固体又は液体成分と比較して、微生物の成長を制御するために、食品パッケージ又は容器のヘッドスペース中に抗微生物性ガスを放出する抗微生物剤を提供することが望ましい。しかしながら、ヘッドスペース中で抗微生物性ガスを提供することには課題がある。そのような課題の1つは、指定の期間でヘッドスペース内で抗微生物性ガスの望ましい放出プロフィールを達成することである。所与の製品に対して適切な放出プロフィールを達成することができないと、その製品の望ましい貯蔵寿命を達成することもできなくなり得る。したがって、食品パッケージ、ならびに制限されないが、殺菌された使い捨て医療デバイスのパッケージなどの他の用途において、微生物汚染を制御し、減少させ、かつ実質的に破壊する抗微生物剤の改善された送達が要求されている。この要求を満たすことの課題は、例えば、感覚受容性低下によって製品の品質に悪影響を及ぼす可能性のあるパッケージヘッドスペースの「過量投与」をすることなく、病原体を有効に制御及び/又は殺滅するために十分な抗微生物性ガスをパッケージヘッドスペース中に提供することのバランスを維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、一態様において、本発明は、商品がその中に位置する密閉容器において、微生物の成長を阻害若しくは予防するため、及び/又は微生物を殺滅するためのシステムを提供する。このシステムは、底部表面と、上部開口と、底部表面から上部開口まで垂直方向に延在する1つ以上の側壁と、1つ以上の側壁によって形成される内部空間と、商品によって占有されていない内部空間によって形成されるヘッドスペースと、容器を密閉及び/又は密封するためのカバーとを含む容器を含む。また、このシステムは、ベースポリマーと、放出された抗微生物性ガスを放出するように構成される抗微生物性放出剤とを含むモノリシック材料を含む、内部空間内に位置する少なくとも1種の混和ポリマー物品を含む。このシステムは、放出された抗微生物性ガスの放出を活性化するために、内部空間に存在する選択された材料をさらに含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、商品がその中に位置する密閉容器において、微生物の成長を阻害若しくは予防するため、及び/又は微生物を殺滅するための方法を提供する。この方法は、ベースポリマーを得ることと、選択された材料による活性化時にガスの形態で放出された抗微生物性材料を放出するように構成される抗微生物性放出剤をベースポリマーと組み合わせて、モノリシック材料を形成することとを含む、少なくとも1種の混和ポリマー物品を形成することを含む。また、この方法は、底部表面と、上部開口と、底部表面から上部開口まで垂直方向に延在する1つ以上の側壁と、1つ以上の側壁によって形成される内部空間と、商品によって占有されていない内部空間によって形成されるヘッドスペースと、容器を密閉及び/又は密封するためのカバーとを含む容器を得ることも含む。この方法は、容器の内部空間内に少なくとも1種の混和ポリマー物品を配置することと;容器中に商品を配置することと;容器をカバーすることと;容器の内部空間中に選択された材料を提供することと;商品中及び/又は上に存在する微生物の成長を減少若しくは予防するため、及び/又は微生物を殺滅するために有効な濃度で内部空間内に放出された抗微生物性材料を放出することとをさらに含む。
【0010】
別の態様において、製品がその中に位置する密閉容器において、微生物の成長を阻害若しくは予防するため、及び/又は微生物を殺滅するためのパッケージが提供される。このパッケージは、その中の内部空間を画定する密閉容器を含む。製品(任意選択的に、食品)が、内部空間内に提供される。製品によって占有されていない内部空間の体積内にヘッドスペースが形成される。湿分と抗微生物性放出剤との反応によってヘッドスペース中に二酸化塩素ガスを放出する抗微生物性放出剤を内部空間内に配置する。16時間~36時間の期間で、10パーツパーミリオン(PPM)~35PPM、任意選択的に、16時間~36時間の期間で、15PPM~30PPM、任意選択的に、約24時間の期間で、15PPM~30PPMのヘッドスペース濃度を提供するように二酸化塩素ガスを放出する量で抗微生物性放出剤が提供される。
【0011】
任意選択的に、いずれの実施形態においても、製品が内部空間内に提供される時に、製品が少なくとも1種の病原体によって汚染されている。抗微生物性放出剤は、製品が内部空間内に提供された時から、かつ7℃の貯蔵条件下で13日の期間後に、少なくとも1種の病原体のグラムあたりのコロニー形成単位(CFU/g)における少なくとも2の対数減少(log base 10 reduction)、任意選択的に、CFU/gにおける少なくとも3の対数減少、任意選択的に、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも4の対数減少をもたらすように、二酸化塩素ガスの徐放を提供する。任意選択的に、少なくとも1種の病原体は、サルモネラ(Salmonella)、大腸菌(E.Coli)、リステリア(Listeria)及び/又はゲオトリクム(Geotrichum)である。
【0012】
任意選択的に、製品が食品であり、かつ抗微生物性放出剤及び/又は二酸化塩素ガスの量が、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも2の対数減少(又はCFU/gにおける少なくとも3若しくは4の対数減少)をもたらすために十分な量で存在する場合、そのような有効量は、食品の感覚受容性低下という代償をもたらさない。例えば、食品は漂白されないか、又は他の様式で変色されない。
【0013】
任意選択的に、いずれの実施形態においても、抗微生物性放出剤は、内部空間内に位置する少なくとも1種の混和ポリマー物品中に提供される。混和ポリマー物品は、ベースポリマー、抗微生物性放出剤及び任意選択的にチャネリング剤を含むモノリシック材料である。好ましくは、そのような混和ポリマーは、0.1mm~1.0mm、好ましくは、0.2mm~0.6mm、任意選択的に、約0.3mmの厚さを有するフィルムとして提供される。好ましくは、そのようなフィルムは、容器側壁の正中線より上(好ましくは、少なくとも2/3又は3/4)に提供される。本発明者らは、これが所望の抗微生物性ガス放出プロフィールの達成の補助となることを見出した。
【0014】
任意選択的に、いずれの実施形態においても、抗微生物性放出剤は、アルカリ金属亜塩素酸塩、好ましくは、亜塩素酸ナトリウムを含む粉末混合物である。任意選択的に、粉末混合物は、少なくとも1種の触媒、任意選択的に硫酸粘土及び少なくとも1種の湿分誘引剤、任意選択的に、塩化カルシウムをさらに含む。
【0015】
任意選択的に、いずれの実施形態においても、食品がその中に位置する密閉容器において、微生物の成長を阻害若しくは予防するため、かつ/又は微生物を殺滅するための方法が提供される。この方法は、その中に内部空間を画定する密閉容器と、内部空間内の食品とを提供することを含む。ヘッドスペースは、製品によって占有されていない内部空間の体積内に形成される。(本明細書の要約及び他所において開示されるものなどの)抗微生物性放出剤が内部空間に提供される。この薬剤は、湿分と抗微生物性放出剤との反応によってヘッドスペース中に抗微生物性ガスを放出する。抗微生物性放出剤は、前もって決定された時間量において抗微生物性ガスの所望のヘッドスペース濃度を提供するように抗微生物性ガスを放出するために十分な量で提供される。この方法に従って、製品が内部空間内に提供される時に、製品が少なくとも1種の病原体によって汚染される場合、抗微生物性放出剤は、任意選択的に、7℃の貯蔵条件下で13日の期間後に、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも2の対数減少、任意選択的に、CFU/gにおける少なくとも3の対数減少、任意選択的に、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも4の対数減少をもたらすように、抗微生物性ガスの徐放を提供する。好ましくは、この方法は、食品の感覚受容性低下を引き起こすことなく、例えば、食品の漂白又は他の変色を引き起こすことなく減少をもたらす。好ましくは、本明細書に記載の通り、抗微生物性放出剤は、例えば、混和ポリマーフィルム中に提供される。
【0016】
任意選択的に、本明細書に記載のパッケージのいずれの実施形態においても、本発明の態様は、食品貯蔵用のパッケージの使用を含み得、そこで食品は、ヘッドスペース中で二酸化塩素ガスを放出するように抗微生物性放出剤を活性化する湿分を滲出させる。本明細書に記載の通り、このような使用によって、所望のヘッドスペース抗微生物性ガス濃度が達成され得る。このような使用によって、製品が内部空間内に提供された時から、かつ7℃の貯蔵条件下で13日の期間後に、少なくとも1種の病原体のグラムあたりのコロニー形成単位(CFU/g)における少なくとも2の対数減少、任意選択的に、CFU/gにおける少なくとも3の対数減少、任意選択的に、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも4の対数減少がもたらされ得る。これは、好ましくは、食品の感覚受容性低下を引き起こすことなく、例えば、食品の漂白又は他の変色を引き起こすことなく実行される。
【0017】
同様の数字が同様の要素を指定する以下の図面と関連して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の任意選択的な実施形態による混和ポリマーから形成されたプラグの透視図である。
図2図1の線2-2に沿って切断された断面図である。
図3】本発明の任意選択的な実施形態による混和ポリマーの別の実施形態から形成されたプラグを示す、図2と類似の断面図である。
図4】活性剤が、選択された材料(例えば、湿分)との接触によって活性化される抗微生物性ガス放出材料である、本発明の任意選択的な実施形態による混和ポリマーの概略図である。
図5】バリアシート基材に接着した、本発明の任意選択的な実施形態による混和ポリマーから形成されたシート又はフィルムの断面図である。
図6】本発明の任意選択的な実施形態による混和ポリマーを使用して形成され得るパッケージの断面図である。
図7】本発明の任意選択的な実施形態による混和ポリマーフィルムを組み込む例示的なパッケージの透視図である。
図8A】抗微生物性混和ポリマーフィルムを使用してパッケージに貯蔵された汚染トマトにおけるゲオトリクム成長(Geotrichum Growth)を比較するプロットである。
図8B】抗微生物性混和ポリマーフィルムを使用せずにパッケージに貯蔵された汚染トマトにおけるゲオトリクム成長(Geotrichum Growth)を比較するプロットである。
図9】本発明の特定の実施形態による混和ポリマーフィルムを含む容器のヘッドスペース内に提供されたClO2(二酸化塩素)の測定量を示すプロットである。
図10】本発明の特定の実施形態による、側壁の様々な高さに位置する混和ポリマーフィルムを含む容器のヘッドスペース内に提供されたClO2の測定量を示すプロットである。
図11】混和ポリマーフィルムが存在しない容器と比較した場合の、特定の実施形態による混和ポリマーフィルムがその中に位置する容器中に貯蔵された食品に対するサルモネラ(Salmonella)の対数CFU/グラム減少を示すプロットである。
図12】混和ポリマーフィルムが存在しない容器と比較した場合の、特定の実施形態による混和ポリマーフィルムがその中に位置する容器中に貯蔵された食品に対する大腸菌(E.Coli)の対数CFU/グラム減少を示すプロットである。
図13】混和ポリマーフィルムが存在しない容器と比較した場合の、特定の実施形態による混和ポリマーフィルムがその中に位置する容器中に貯蔵された食品に対するリステリア(Listeria)の対数CFU/グラム減少を示すプロットである。
図14】容器中に提供された混和抗微生物性ポリマーフィルムの量に依存する容器のヘッドスペース内で提供されるClO2の測定量を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使用される場合、「活性」という用語は、本発明に従って選択された材料(例えば、湿分又は酸素)において作用するか、それと相互作用するか、又はそれと反応することが可能であることとして定義される。そのような作用又は相互作用の例としては、選択された材料の吸収、吸着又は放出を含み得る。本発明の第一焦点と関連する「活性」の別の例は、放出された材料の放出を引き起こすために選択された材料において作用するか、それと相互作用するか、又はそれと反応することが可能である薬剤である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「活性剤」という用語は、(1)好ましくは、ベースポリマーと非混和性であり、かつベースポリマー及びチャネリング剤との混合及び加熱時に溶融せず、すなわち、ベースポリマー又はチャネリング剤のいずれかに対する融点よりも高い融点を有し、かつ(2)選択された材料において作用するか、それと相互作用するか、又はそれと反応する材料として定義される。「活性剤」という用語には、限定されないが、選択された材料を吸収、吸着又は放出する材料が含まれ得る。本明細書の第一焦点の活性剤は、抗微生物性ガス、好ましくは、二酸化塩素ガスを放出するものである。
【0021】
「抗微生物性放出剤」という用語は、例えば、ガスの形態の放出された抗微生物性材料を放出することが可能である活性剤を意味する。この活性剤は、抗微生物性ガスを放出するように構成された配合物(例えば、粉末混合物)中に活性成分及び他の成分(例えば、触媒及び誘引剤)を含み得る。「放出された抗微生物性材料」は、微生物の成長及び増殖を阻害及び予防し、かつ/又は微生物を殺滅する化合物、例えば、二酸化塩素ガスである。放出された抗微生物性材料は、抗微生物性放出剤によって放出される。例として、抗微生物性放出剤は、(湿分などの)選択された材料との接触によって、(例えば、化学反応又は物理変化によって)誘引され得る。例えば、湿分は抗微生物性放出剤と反応し、それによって薬剤は、放出された抗微生物性材料を放出し得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ベースポリマー」という用語は、チャネリング剤のガス透過率よりも実質的に低いか、低いか、又は実質的にそれと同等である、選択された材料のガス透過率を任意選択的に有するポリマーである。例として、そのような透過率は水蒸気透過率であり、選択された材料は湿分であり、かつ活性剤は、湿分によって活性化される抗微生物性ガス放出剤である。このような活性剤は、抗微生物性ガスを放出するように構成された配合物中に活性成分及び他の成分を含み得る。ベースポリマーの主要機能は、混和ポリマーの構造を提供することである。
【0023】
本発明における使用のために適切なベースポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリエステル、多酸無水物、ポリアクリリアニトリル(polyacrylianitrile)、ポリスルホン、ポリアクリル酸エステル、アクリル、ポリウレタン及びポリアセタール、あるいはそのコポリマー又は混合物が含まれる。
【0024】
特定の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの水蒸気透過率の少なくとも2倍の水蒸気透過率を有する。他の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの水蒸気透過率の少なくとも5倍の水蒸気透過率を有する。他の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの水蒸気透過率の少なくとも10倍の水蒸気透過率を有する。なお他の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの水蒸気透過率の少なくとも20倍の水蒸気透過率を有する。なお別の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの水蒸気透過率の少なくとも50倍の水蒸気透過率を有する。なお他の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの水蒸気透過率の少なくとも100倍の水蒸気透過率を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「チャネリング剤」という用語は、ベースポリマーと非混和性であり、かつベースポリマーよりも速い速度でガス相物質を輸送する親和力を有する材料として定義される。任意選択的に、チャネリング剤は、チャネリング剤をベースポリマーと混合することによって形成される時に、混和ポリマーを通ってチャネルを形成することが可能である。任意選択的に、そのようなチャネルは、単にベースポリマーのみにおける速度よりも速い速度で、混和ポリマーを通って選択された材料を伝達することが可能である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「チャネル」又は「相互連結チャネル」という用語は、ベースポリマーを通して貫入するチャネリング剤から形成された流路として定義され、かつ互いに相互連結し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「混和ポリマー」という用語は、少なくとも1種のベースポリマーと、その中に混和又は分散された活性剤及び任意選択的にチャネリング剤とから形成されたモノシリック材料として定義される。したがって、混和ポリマーとしては、(チャネリング剤を含まない)2相ポリマー、及び(チャネリング剤を含む)3相ポリマーが含まれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「モノリシック」、「モノリシック構造」又は「モノリシック組成物」という用語は、2つ以上の分離したマクロ的層又は部分からならない組成物又は材料として定義される。したがって、「モノリシック組成物」は多層複合体を含まない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「相」という用語は、構造又は組成物にそのモノリシック特徴が与えられように均一分散されたモノリシック構造又は組成物の一部若しくは成分として定義される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「選択された材料」という用語は、活性剤において作用するか、又はそれによって作用するか、又はそれと相互作用するか、若しくはそれと反応し、かつ混和ポリマーのチャネルを通って伝達されることが可能である材料として定義される。例えば、放出材料が活性剤である実施形態において、選択された材料は、抗微生物性ガスなどの放出材料を放出するように活性剤と反応するか、又は他の様式でそれを誘引する湿分であり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「3相」という用語は、3以上の相を含むモノリシック組成物又は構造として定義される。本発明による3相組成物の例は、ベースポリマー、活性剤及びチャネリング剤から形成された混和ポリマーである。任意選択的に、3相組成物又は構造は、追加の相、例えば、着色剤を含み得るが、それにもかかわらず、3種の主要機能成分の存在のため、なお「3相」であると考えられる。
【0032】
さらに、「パッケージ」、「パッケージング」及び「容器」という用語は、本明細書中、商品、例えば、食品及び食料品を保持又は含有する対象を示すように互換的に使用され得る。任意選択的に、パッケージは、製品がその中に貯蔵された容器を含み得る。パッケージ、パッケージング及び容器の非限定的な例としては、トレー、箱、カートン、ボトル容器、道管(vessel)、ポーチ及び軟質バッグが含まれる。ポーチ又は軟質バッグは、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンから製造され得る。パッケージ又は容器は、例えば、カバー、蓋、施蓋シーラント、接着剤及び熱シールを含む種々の機構を使用して、密閉、カバー及び/又は密封され得る。パッケージ又は容器は、プラスチック(例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン)、紙、スタイロフォーム、ガラス、金属及びその組合せなどの種々の材料から構成される。1つの任意選択的な実施形態において、パッケージ又は容器は、硬質又は半硬質ポリマー、任意選択的にポリプロピレン又はポリエチレンから構成され、かつ好ましくは、重力下でその形状を維持するために十分な剛性を有する。
【0033】
例示的な混和ポリマー
慣習的に、乾燥剤、酸素吸収剤及び他の活性剤は、パッケージの内部環境を制御するために、そのままの状態で、例えば、パッケージ内でサッシェ又はキャニスターに収容されたルーズな粒子として使用される。多くの用途に関して、そのようなルーズに貯蔵された活性物質を有することは望ましくない。したがって、本出願は、ポリマーが種々の所望の形態、例えば、コンテナライナー、プラグ、フィルムシート、ペレット及び他のそのような構造へと押出成形及び/又は成形可能である、活性剤を含む活性剤混和ポリマーを提供する。任意選択的に、そのような活性混和ポリマーは、混和活性剤(例えば、湿分を吸収する吸水剤)に選択された材料(例えば、湿部)を伝達するために、混和ポリマーの表面とその内部との間にチャネルを形成する、ポリエチレングリコール(PEG)などのチャネリング剤を含み得る。上記で説明される通り、混和ポリマーは、2相配合物(すなわち、チャネリング剤を含まず、ベースポリマー及び活性剤を含む)又は3相配合物(すなわち、ベースポリマー、活性剤及びチャネリング剤を含む)であり得る。混和ポリマーは、例えば、それぞれ参照によって完全に記載されるように本明細書に組み込まれる、米国特許第5,911,937号明細書、同第6,080,350号明細書、同第6,124,006号明細書、同第6,130,263号明細書、同第6,194,079号明細書、同第6,214,255号明細書、同第6,486,231号明細書、同第7,005,459号明細書及び米国特許出願公開第2016/0039955号明細書において記載されている。
【0034】
図1~6は、本発明の特定の実施形態による、例示的な混和ポリマー20及び混和ポリマーから形成された様々なパッケージングアセンブリを例示する。混和ポリマー20は、それぞれ、ベースポリマー25、任意選択的にチャネリング剤35及び活性剤30を含む。示される通り、チャネリング剤35は、混和ポリマー20を通して、相互連結チャネル45を形成する。活性剤30の少なくともいくつかがこれらのチャネル45内に含まれ、チャネル45は、混和ポリマー25の外側表面において形成されたチャネル開口48を介して、活性剤30と混和ポリマー20の外側とを連通する。活性剤30は、例えば、以下にさらに詳細に記載される種々の放出材料のいずれか1種であることが可能である。チャネリング剤、例えば、35が好ましいが、本発明は、任意選択的にチャネリング剤を含まない混和ポリマーを概括的に含む。
【0035】
適切なチャネリング剤としては、ポリグリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、グリセリンポリアミン、ポリウレタン、及びポリアクリル酸又はポリメタクリル酸を含むポリカルボン酸が含まれる。代わりに、チャネリング剤35は、例えば、CLARIANTによって製造される商品名Polyglykol B01/240で商業的に入手可能なプロピレンオキシドポリメリセート-モノブチルエーテルなどの非水溶性ポリマーであることが可能である。他の実施形態において、チャネリング剤は、CLARIANTによって製造される商品名Polyglykol B01/20で商業的に入手可能なプロピレンオキシドポリメリセート-モノブチルエーテル、CLARIANTによって製造される商品名Polyglykol D01/240で商業的に入手可能なプロピレンオキシドポリメリセート、エチレン酢酸ビニル、ナイロン6、ナイロン66、又は上記のいずれかの組合せであることも可能である。
【0036】
抗微生物性放出剤を有する混和ポリマーについて、以下にさらに記載する。
【0037】
抗微生物性放出剤及びそれを組み込む任意選択的な混和ポリマー配合物
本発明による適切な活性剤としては、抗微生物性放出剤が含まれる。図4は、活性剤30が抗微生物性放出剤である、本発明による混和ポリマー10の実施形態を例示する。矢印は、混和ポリマー10の外側から、チャネル45を通って、活性剤30(この場合、抗微生物性放出剤)の粒子までの選択された材料、例えば、湿分又は別のガスの経路を示す。任意選択的に、抗微生物性放出剤は、選択された材料(例えば、湿分)と反応するか、又は他の様式で誘引若しくは活性化され、それに応じて、放出された抗微生物性材料を、好ましくは、ガスの形態で放出する。
【0038】
本明細書において有用な抗微生物剤には、揮発性抗微生物性放出剤、非揮発性抗微生物性放出剤及びその組合せが含まれる。
【0039】
「揮発性抗微生物性放出剤」という用語は、それが流体(例えば、水又は食品からの汁)との接触時に、ガス及び/又はガス相、例えば、放出された抗微生物剤の蒸気を生じるいずれの化合物も含む。以下により詳細に記載される通り、揮発性抗微生物性放出剤は、一般に、放出された抗微生物性材料(ガス及び/又は蒸気)が漏出しないように、密閉系において使用される。揮発性抗微生物性放出剤の例としては、限定されないが、マヨラナ、バジル、シンナムアルデヒド、二酸化塩素放出剤(例えば、亜塩素酸ナトリウム、触媒及び誘引剤の組合せ)、二酸化炭素放出剤、オゾン放出剤、バニリン、バニリン酸、シラントロ油、チョウジ油、セイヨウワサビ油、ミント油、ローズマリー、セージ、タイム、ワサビ又はその抽出物、タケ抽出物、グレープフルーツシード抽出物、ダイオウ(Rheum palmatum)の抽出物、オウレン(coptis chinesis)の抽出物、ラベンダー油、レモン油、ユーカリ油、ハッカ油、イランイランノキ(cananga odorata)、ホソイトスギ(cupressus sempervirens)、ウコン(curcuma longa)、レモングラス(cymbopogon citratus)、ユーカリグロブルス(eucalyptus globulus)、ラジアータパイン(pinus radiate)、クンスペッパー(piper crassinervium)、グアバ(psidium guayava)、ローズマリー(rosmarinus officinalis)、ショウガ(zingiber officinale)、タイム、チモール、アリルイソチオシアネート(AIT)、ヒノキチオール、カルバクロール、オイゲノール、α-テルピノール、ゴマ油又は上記化合物のいずれの組合せも含まれる。
【0040】
「非揮発性抗微生物剤」という用語は、それが流体(例えば、水又は食品からの汁)との接触時に、最小限の抗微生物剤の蒸気を生じるか、又は抗微生物剤の蒸気を生じないいずれの化合物も含む。非揮発性抗微生物剤の例としては、限定されないが、アスコルビン酸、ソルビン酸塩、ソルビン酸、クエン酸、クエン酸塩、乳酸、乳酸塩、安息香酸、安息香酸塩、重炭酸塩、キレート化化合物、ミョウバン塩、ナイシン、ε-ポリリジン10%、メチル及び/又はプロピルパラベン、あるいは上記化合物のいずれの組合せも含む。塩には、上記で列挙された化合物のいずれかのナトリウム、カリウム又はマグネシウム塩も含まれる。具体例としては、ソルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム又はソルビン酸ナトリウムが含まれる。
【0041】
本発明の態様に従って使用される抗微生物性放出剤の好ましい特徴としては、以下の特徴のいずれか1つ以上が含まれる:(1)それらは、冷蔵温度において揮発する;(2)それらは、仕上げ形態で食品安全性であり、かつ食用である;(3)それらは、混和ポリマー配合物又は放出のための他の機構中に安全に組み込まれ得る;(4)それらは、長期貯蔵条件において貯蔵安定性である;(5)それらは、薬剤が配置されたパッケージが、パッケージ中に製品が配置された状態で密封されたら、放出された抗微生物性材料を放出する;(6)それらは、パッケージ内での所望の放出プロフィールを達成するように配合及び構成される場合に、貯蔵された食品に感覚受容性的に影響を与えない;(7)それらは、好ましくは、食品パッケージング及び仕上げ食品ラベリングに関する適用可能な政府規制及び/又はガイドラインにおいて容認可能である。
【0042】
二酸化塩素放出抗微生物性放出剤
本発明の一態様において、好ましい抗微生物性放出剤は、放出された抗微生物性材料としてガスの形態で二酸化塩素(ClO2)を放出する揮発性抗微生物性剤である。例えば、抗微生物性放出剤は、例えば、亜塩素酸ナトリウム又は亜塩素酸カリウムなどのアルカリ亜塩素酸塩、組み合わせて湿分によって誘引又は活性化され、薬剤が二酸化塩素を放出するようにさせる触媒及び誘引剤(例えば、粉末の形態のもの)を含む化合物又は配合物であり得る。1つの例示的な抗微生物性放出剤は、BASF Catalysts LLCによって商品名ASEPTROL 7.05で提供されている。この材料及びその調製は、参照によって全体として組み込まれる、米国特許第6,676,850号明細書に記載される。上記特許の実施例6は、本発明の任意選択的な態様による抗微生物性放出剤として特に適切である配合物を記載する。
【0043】
任意選択的に、米国特許第6,676,850号明細書の実施例6に基づく適切な抗微生物性放出剤は、湿分による活性化において二酸化塩素ガスを放出するように構成されて、以下のように調整され得る。
【0044】
抗微生物性放出剤は、(活性成分としての)亜塩素酸ナトリウム、ベース触媒及び誘引剤を含む配合物を含む。触媒及び誘引剤調製物は、別々に製造され、次いで一緒に組み合わせられて、最終的に、亜塩素酸ナトリウムと組み合わせられる。
【0045】
ベース触媒は、任意選択的に、25~30重量%のケイ酸ナトリウム溶液(2.0対3.3のSiO2:Na2O重量比)を最初に調製することによって製造される。その溶液を28~44重量%のGeorgia Kaolin Clay(約80%の粒子直径が1マイクロメートル未満である)の水性スラリー中に混合する。その中でケイ酸ナトリウム溶液はスラリーの2重量%である。スラリーを100℃においてオーブン乾燥させると、径が約70μmの凝集体又はミクロスフェアが生じる。これらのミクロスフェアの300gを、280gの2.16N硫酸溶液で含浸させる。次いで、その混合物を100℃において乾燥させる。次に、乾燥させた混合物に、3時間、350℃において焼鉱を受けさせ、続いて、テープによって封がラップされた密封ガラスジャー中で300℃において追加的な焼鉱を受けさせる。この混合物からベース触媒を形成する。
【0046】
次に、84.6gのベース触媒を10.1gの誘引剤、乾燥塩化カルシウムと混合する。このベース触媒及び誘引剤の混合物を、周囲温度において、乳鉢及び乳棒を用いて粉砕する。この混合物を200℃において2時間乾燥させる。次いで、ベース触媒及び誘引剤の混合物は、封の周囲でラップされたテープによって密封されたガラスジャーにおいて室温まで冷却される。
【0047】
最終的に、ベース触媒及び誘引剤の混合物を、(活性剤の活性成分である)5.3gの亜塩素酸ナトリウムと組み合わせる。次いで、全混合物を、周囲温度において、乳鉢及び乳棒を用いて粉砕し、そのようにして、抗微生物性放出剤の任意選択的な実施形態が形成される。次いで、抗微生物性放出剤は、それを早期に活性化させる(二酸化塩素ガスを放出する)湿分を本質的に含まないように保存及び保持されるように、封の周囲でラップされたテープによって密封されたガラスジャーに配置される。
【0048】
任意選択的に、抗微生物性放出剤は、混和ポリマー、好ましくは、活性剤(例えば、40重量%~70重量%)、ベースポリマー及びチャネリング剤を含む3相ポリマーの成分である。任意選択的に、強化ポリマーは、生鮮食品、例えば、肉又は農産物を含有する密封パッケージング内に配置されたフィルムの形態である。
【0049】
混和ポリマー混合物中の抗微生物性放出剤の濃度が高いほど、最終組成物の吸収、吸着又は放出能力が高いと一般的に考えられる。しかしながら、活性剤濃度が高過ぎると、混和ポリマーが非常に脆性になり得る。これによって、また、活性剤、ベースポリマー及び(使用される場合)チャネリング剤の溶融混合物が、熱的に形成、押出成形又は射出成形されることがより困難となり得る。一実施形態において、抗微生物性放出剤の装てんレベル又は濃度は、混和ポリマーの全重量に対して、10重量%~80重量%、好ましくは、40重量%~70重量%、より好ましくは、40重量%~60重量%、なおより好ましくは、45重量%~55重量%の範囲となることが可能である。任意選択的に、チャネリング剤は、2重量%~10重量%の範囲、好ましくは、約5重量%で提供され得る。任意選択的に、ベースポリマーは、全組成物の10重量%~50重量%、好ましくは、20重量%~35重量%の範囲となり得る。任意選択的に、着色剤が、例えば、全組成物の約2重量%で添加される。
【0050】
一実施形態において、混和ポリマーは、50重量%の粉末混合物の形態のASEPTROL 7.05抗微生物性放出剤と、38重量%のベースポリマーとしてエチル酢酸ビニル(EVA)と、12重量%のチャネリング剤としてのポリエチレングリコール(PEG)を含む3相配合物であり得る。
【0051】
図1は、本発明の特定の実施形態による混和ポリマー20から構成されるプラグ55を示す。プラグ55は、容器の内部に配置され得る。上記の通り、混和ポリマー20は、ベースポリマー25、チャネリング剤35及び活性剤30を含む。
【0052】
図2は、図1に示されるプラグ55の断面図を示す。加えて、図2は、チャネリング剤35が相互連結チャネル45を形成し、固結したプラグ55を通して経路を確立するように、混和ポリマー20が固結されていることを示す。活性剤30の少なくともいくつかがチャネル45内に含まれ、チャネル45は、混和ポリマー25の外側表面において形成されたチャネル開口48を介して、活性剤30と混和ポリマー20の外側とを連通する。
【0053】
図3は、図2のプラグ55に類似の構成を有するプラグ55の実施形態を例示する。図3中、相互連結チャネル45は、図2を示されたものと比較して、より微細である。これは、チャネリング剤35と一緒にダイマー剤(すなわち、可塑剤)を使用することから得ることが可能である。ダイマー剤は、ベースポリマー25とチャネリング剤35との間の適合性を強化し得る。このような強化された適合性は、標準的条件下で均一溶液中への組み込みに抵抗する可能性があるベースポリマー25及びチャネリング剤35のより徹底的なブレンドを促進し得る、ブレンドのより低い粘度によって促進される。ダイマー剤が添加されている混和ポリマー20の固結時に、それによってそこに形成された相互連結チャネル45は、より高い分散及びより小さい多孔率を有し、それによって、プラグ55を通しての相互連結チャネルのより高い密度が確立される。
【0054】
本明細書に開示されるものなどの相互連結チャネル45は、これらの材料の浸透に抵抗するバリアとして一般に作用するベースポリマー25を通して、湿分、ガス又は臭気などの所望の材料の伝達を促進する。この理由のため、ベースポリマー25自体は、活性剤30がその中に混和され得るバリア物質として作用する。チャネリング剤35から形成された相互連結チャネル45は、所望の材料が混和ポリマー10を通って移動するための経路を提供する。これらの相互連結チャネル45がない場合、比較的少量の所望の材料が活性剤30に、又は活性剤30からベースポリマー25を通して伝達されるであろうと考えられる。さらに、活性剤30から所望の材料が伝達される場合、それは、例えば、活性剤30が、抗微生物性ガス放出材料などの放出材料である実施形態において、活性剤30から放出され得る。
【0055】
図5は、本発明の態様に従って、複合体を形成するようにバリアシート80と組み合わせて使用される混和ポリマー20から形成された活性シート又はフィルム75を例示する。活性シート75の特徴は、図1及び2に示されたプラグ55に関して記載されるものと類似している。バリアシート80は、低湿分又は酸素透過性を有するホイル及び/又はポリマーなどの基材(容器側壁など)であり得る。バリアシート80は、活性シート75との適合性があり、したがって、分散後に活性シート75が固結する場合、活性シート75に熱的に接着するように構成される。図6は、2つのシート75、80を組み合わせて、混和ポリマー20/活性シート75によって形成された内側表面において活性特徴と、バリアシート80によって形成された外側表面において蒸気抵抗特徴を有するパッケージングラップを形成する実施形態を例示する。
【0056】
一実施形態において、図6に示される通り、図5のシート75、80が一緒になって、活性パッケージ85が形成される。示される通り、それぞれがバリアシート80と一緒になった活性シート75から形成される、2つの積層体又は複合体が提供される。パッケージの内側に配置されるように、それぞれの活性シート75を互いに対面させ、かつパッケージ内側の密封領域のほぼ周囲に形成される、密封領域90において一緒にさせて、シート積層体を積み重ねる。
【0057】
任意選択的に、上記実施形態のいずれにおいても、抗微生物性混和ポリマーは、密封食品パッケージ中に配置されたフィルムの形態である。任意選択的に、フィルムは、例えば、接着剤を使用して、パッケージの内部表面に接着されてもよい。代わりに、フィルムは、パッケージの内部表面に(接着剤を用いずに)ヒートステーク(heat stake)されていてもよい。フィルム基材にヒートステークするプロセスは当該技術において既知であり、かつ参照によって全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第8,142,603号明細書に詳細に記載されている。フィルムのサイズ及び厚さは変動可能である。特定の実施形態において、フィルムは約0.3mmの厚さを有する。任意選択的に、フィルムは、0.1mm~1.0mm、より好ましくは、0.3mm~0.6mmの範囲であり得る。
【0058】
図7は、本発明の特定の実施形態に従って、生鮮食料品、例えば、農産物又は肉を貯蔵するためのパッケージ100を示す。パッケージ100は、プラスチックトレー102の形態で示される。しかしながら、他の形態及び材料も本発明の範囲内であると考えられる。トレー102は、ベース104と、ベース104からトレー開口108へと垂直に延在する側壁106とを含む。ベース104及び側壁106は、一緒になって、例えば、生鮮食料品を保持及び貯蔵するための内部110を画定する。パッケージ100は、開口108上に配置され、かつそれを密封する、軟質プラスチック施蓋フィルム112も含む。多種多様なカバー又は蓋が、開口108を密閉及び密封するために使用され得ることが考えられ、かつ理解される。任意選択的に、内部を見ることができるように、カバー又は蓋は透明である。製品(例えば、スライスされたトマト)が内部110内に貯蔵される場合、製品の周囲及び上部の空間は、本明細書中、「ヘッドスペース」と記載される(示されない)。
【0059】
パッケージ100は、側壁106上に配置された抗微生物性混和ポリマーフィルム114の部分をさらに含む。示された実施形態においては、そのようなフィルム114の4部分があり、側壁106あたり1つのフィルム114部分がある。フィルム114は、好ましくは、開口108の近位の側壁106の上部において、又はその付近において配置される。フィルム部分114の少なくとも一部分、好ましくは、それぞれのほとんど又は全てが、側壁106の正中線116上に突出する。正中線116は、ベース104及び開口108の間で中央に位置する。パッケージ100の上部において、又はそれに向かってのフィルム配置は、そのような配置がパッケージ100のヘッドスペース中への放出された抗微生物性材料の所望の分布を促進するため、フィルム部分114の有効性に影響を与えることが見出された。混和ポリマーをベース104上の高さの非常に低い位置で、又はパッケージ中の食品の下に配置した場合、ヘッドスペース中の放出された抗微生物性材料の所望の分布が提供されないことが見出された。抗微生物剤の配置物質移動が最適ではない場合、食品/商品のいくつかは、微生物の成長に対して適切に保護されないであろう。さらに、食品は、望ましくないことに、放出された抗微生物性材料と反応し、かつ/又はそれを吸収し得る。さらに以下に説明されるように、側壁の正中線より上、好ましくは、側壁の少なくとも67%又は75%又は約80%の高さにおいてフィルムを配置することによって、所望の抗微生物性ガス放出プロフィール及びヘッドスペース濃度の達成が促進されることが見出された。
【0060】
任意選択的に、混和ポリマーフィルム114は、(例えば、図7に関して記載及び示される側壁上で)パッケージにヒートステークされる。有利には、ヒートステークによって、接着剤を使用することなくフィルムを側壁に永久に接着することが可能となる。接着剤は、食品を含有するヘッドスペース中で望ましくない揮発性物質を放出し得るため、いくつかの場合は問題となり得る。本発明の任意選択的な実施形態に従って使用され得るヒートステークプロセスの態様は、上記で参照された、米国特許第8,142,603号明細書に開示されている。ヒートステークは、この場合、フィルム及び密封層基材上に十分な圧力を加えて、フィルムを容器の壁部に接着しながら、側壁上で密封層基材を加熱することを意味する。
【0061】
特定の実施形態において、抗微生物性混和ポリマーフィルム114は、側壁106上のフィルム部分114の代わりに、又はそれに加えて、容器の内側である施蓋フィルム112(又は蓋)の表面に連結していてもよい。代わりに、抗微生物性混和ポリマーフィルム114は、施蓋フィルム112(又は蓋)の組成物に組み込まれていてもよい。
【0062】
フィルム114の配置に加えて、別の重要な要因は、放出された抗微生物性材料の放出プロフィールである。上記の通り、適切な貯蔵寿命を保証するために、薬剤の放出は全て即座に生じてはならない。むしろ、放出は、望ましい貯蔵寿命を達成するように延長され、維持され、かつ前もって決定されるべきである。
【0063】
一般に、抗微生物性放出剤が混和されたポリマーは、自己活性化する。これは、放出された抗微生物性ガスの放出は、抗微生物性放出剤が選択された材料、例えば、湿分に暴露されるまで開始されないことを意味する。典型的に、湿分は、食品が容器の内部に配置される前には容器の内部、例えば、ヘッドスペースに存在しない。配置によって、食品が湿分を生じ、それが、ポリマー中に混和された抗微生物性放出剤と相互作用し、ヘッドスペース中で抗微生物性放出剤が生じる。一実施形態において、容器は、湿分を発散する食料品によって生じた容器中の湿分を捕捉するように、湿分が漏出しない様式で密封される。
【0064】
特定の実施形態において、徐放及び/又は所望の放出プロフィールは、例えば、スプレーコーターを使用して、所望のタイムフレームにおいて放出された抗微生物剤を放出するように構成されるコーティングを活性剤に適用することによって達成することが可能である。抗微生物性放出剤は、種々の放出効果を達成するように、その上に適用された種々のコーティングを有し得る。例えば、14日間の貯蔵寿命が所望である場合、パッケージの前もって決定された相対湿度に基づいて、抗微生物性放出剤を誘引するために存在する選択された材料(湿分)の量が決定され得る。この決定に基づき、薬剤は、所望の放出プロフィールを達成するために、様々な厚さ及び/又は特性の延長放出コーティングによってコーティングされてもよい。例えば、いくつかの活性剤は、それが1週間後まで放出された抗微生物性材料を放出し始めないが、他の活性剤はほぼ即座に放出し始めるようにコーティングされるであろう。スプレーコーティング技術は当該技術において既知である。例えば、製薬ビーズなどは、有効成分の放出速度を制御するため、例えば、延長放出又は徐放性の薬剤を製造するためにスプレーコーティングされる。任意選択的に、そのような技術は、抗微生物性ガスの放出の所望の制御された速度を達成するためにコーティングを活性剤に適用するように適応され得る。
【0065】
代わりに、徐放及び/又は所望の放出プロフィールは、(次に放出された抗微生物性材料の放出を誘引する)混和ポリマー中の湿分取り込みを制御するように構成された材料の層を、任意選択的にフィルムの両側面上に提供することによって達成され得る。例えば、フィルムは、例えば、そのいずれかの片面又は両面上に配置された低密度ポリエチレン(LDPE)から製造されたポリマーライナーを含み得る。フィルム及びライナーの厚さは変動可能である。特定の実施形態において、フィルムは、厚さ約0.3mmであり、かついずれか片面上のLDPEライナーは、厚さ約0.02mm~0.04mmである。LDPEライナーは、フィルムと共押出されてもよく、又はその上に積層されてもよい。
【0066】
代わりに、徐放及び/又は所望の放出プロフィールは、抗微生物性放出剤の誘引剤の配合物を変性することによって達成され得る。例えば、誘引剤は、湿分との接触時に液化し、次いで、活性成分(例えば、亜塩素酸ナトリウム)と反応して、抗微生物性ガスの放出が引き起こされる。誘引剤は、種々の速度で湿分との接触時に液化するように配合され得る。誘引剤の液化が迅速であるほど、抗微生物性ガスの放出も迅速であり、そして逆もまた同様である。このようにして、誘引剤の変性は、抗微生物性ガスの所望の放出速度を提供するさらに別のベヒクルである。
【0067】
上記機構のいずれの組合せも、容器ヘッドスペース中で抗微生物性ガスの所望の放出速度及び放出プロフィールを達成するために利用され得る。
【0068】
貯蔵食品の性質に依存する種々の放出速度
本発明者らは、容器ヘッドスペース中の二酸化塩素ガスの所望の放出プロフィールは、貯蔵される製品の性質次第で異なり得ることを見出した。例えば、本発明者らは、高い水含有量を有する食品は、貯蔵期間の抗微生物性ガスの高いバースト(burst)と、それに続くヘッドスペース濃度の低下を要するように見えるが、より適度な水含有量を有する食品は、貯蔵期間に比較的一定なヘッドスペース濃度に十分応答するように見えることを見出した。
【0069】
高い湿分量を発散し、かつ二酸化塩素の急速バーストと、それに続く低下を有する放出プロフィールによってより適切に保護される食品の非限定的な例としては、トマト、洗浄ペッパー、洗浄タマネギ、スイカ、ハニーデュー(honey dew)、カンタループ、イチゴ、モモ、パイナップル、オレンジ、魚介類、肉及び家禽肉からなる群から選択される、スライスされたか、ダイスカットされたか、又はカットされた食品が含まれる。そのような食品に関して、好ましくは、16時間~36時間の期間で、10パーツパーミリオン(PPM)~35PPM、任意選択的に、16時間~36時間の期間で、15PPM~30PPM、任意選択的に、約24時間の期間で、15PPM~30PPMのヘッドスペース濃度を提供するように二酸化塩素ガスを放出する抗微生物性放出剤の量が提供される。ヘッドスペース濃度測定は、例えば、パッケージに配置された二酸化塩素センサーによる読み取りに関して、Analytical Technology,Inc.からのPORTASENS IIガス検出器を使用して入手してもよい。センサーは、00-1004 Chlorine Dioxide,0-1/5PPM(2PPM Std.)、00-1005 Chlorine Dioxide,0-5/200(20PPM Std.)及び00-1359 Chlorine Dioxide,0-200/1000PPM(1000PPM Std.)の1つ以上であってもよい。これらもAnalytical Technology,Inc.からであり、かつPORTASENS IIガス検出器との適合性を有する。
【0070】
この種類の「急速バースト」(16時間~36時間の期間で、10パーツパーミリオン(PPM)~35PPMのヘッドスペース濃度)は、水中に溶解する二酸化塩素ガスが溶解曲線より先に保持されて、ヘッドスペース濃度の急上昇の間に十分な抗微生物性効果を提供することが可能であり、約2週間にわたって汚染された食品の貯蔵寿命を改善するように要求されるように思われる。「急速バースト」としての放出の特徴にもかかわらず、比較的「急速」である場合でも、所与の期間にわたってヘッドスペース濃度が所望の濃度範囲になるようになお調整されるため、それはなお徐放として考えられてよい。本発明者らは、例えば、トマトを漂白することなく、約13日にわたって、上記ヘッドスペース濃度が、汚染されたスライストマトの微生物数を有意に減少するように良好に機能することを見出した。これは、以下に提供された実施例によって立証される。
【0071】
中程度の量又は低量の湿分を発散する食品の非限定的な例は、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、キュウリ、バナナ、ハーブ、ホールペッパー、ニンジン、根菜及びジャガイモからなる群から選択される完全又は最低限加工された製品である。そのような食品に関して、抗微生物性放出剤の量は、好ましくは、13日間で8PPM~15PPMのヘッドスペース濃度を提供するように二酸化塩素ガスを放出する。この正確なヘッドスペース濃度が達成されるかどうかにかかわらず、そのような低又は中程度湿分発散食品に関して、本明細書に記載の混和ポリマーフィルム中に抗微生物性放出剤が提供されることが好ましい。
【0072】
上記放出プロフィール及びヘッドスペース濃度は、パッケージ中の湿分発散食品の存在を想定している。
【0073】
製品が少なくとも1種の病原体によって汚染されているいずれの場合においても(高湿分発散又は中程度/低湿分発散食品)、製品が内部空間内に提供された時から、かつ7℃の貯蔵条件下で13日の期間後に、少なくとも1種の病原体のグラムあたりのコロニー形成単位(CFU/g)における少なくとも2の対数減少、任意選択的に、CFU/gにおける少なくとも3の対数減少、任意選択的に、少なくとも1種の病原体のCFU/gにおける少なくとも4の対数減少を、食品の感覚受容性低下を引き起こすことなく、決定された期間にわたってもたらすようなヘッドスペース濃度において二酸化塩素ガスが提供される。そのような感覚受容性低下には、食品の漂白又は他の変色が含まれ得る。
【0074】
任意選択的に、いずれの実施形態によっても、その中に1.25ポンドのトマトが貯蔵されている1L容器中で使用される場合、700~950mgの抗微生物性放出剤が有効である。抗微生物性放出剤の質量の比例調整は、含有量の容器体積及び量/種類の変更に従って実行され得ることが考えられる。
【0075】
非食用商品のための本発明の応用
別の態様において、本発明は、食品保存用途以外の使用のための抗微生物剤を含む混和ポリマーの使用に関する。例えば、本明細書に開示された解決策は、使い捨て医療デバイスの殺菌における使用のために、すなわち、それらが包装されている時のそのようなデバイスの生物汚染を減少するために適応されてもよい。生鮮食料品保存及び医療デバイスの間の主要な差異は貯蔵寿命である。生鮮食料品の保存は、日数又は週数で測定される貯蔵寿命を示すが、包装された医療デバイスの殺菌の維持は、月数又は年数で測定される貯蔵寿命を必要とする。したがって、ある1つの用途の経時的な放出プロフィールは、他の用途に対して、必ず変化するであろう。
【0076】
以下の実施例を参照して、本発明をより詳細に説明するが、本発明がそれらに限定されるようにみなされないことは理解されるべきである。
【実施例
【0077】
実施例1-ClO2ガスの徐放
理想的な貯蔵温度よりわずかに高い貯蔵温度を再現するために(又は貯蔵間の不注意な温度急上昇、例えば、冷蔵装置が数時間故障する場合を刺激するために)、7℃の貯蔵温度が選択された。本実験において、図7に示されるものと類似の3つのパッケージを利用した。3つ全てが、実質的に図7に示されるよう配置された抗微生物性混和ポリマーフィルム部分を含んだ。このフィルムは、(二酸化塩素ガスを製造する)亜塩素酸ナトリウム、(触媒としての)硫酸粘土及び(湿分誘引剤としての)塩化カルシウムを含む粉末混合物の形態の抗微生物性放出剤を含む3相混和ポリマーフィルムであった。この粉末混合物は、ASEPTROLの名称でBASFによって商業的に販売されており、かつ上記されている。
【0078】
フィルム自体の配合物は、50重量%の粉末混合物の形態の上記抗微生物性放出剤と、38重量%のベースポリマーとしてのエチル酢酸ビニル(EVA)と、12重量%のチャネリング剤としてのポリエチレングリコール(PEG)とを含む3相配合物であった。このフィルム配合物は、本明細書中、X2597として記載され、かつ開示された概念の態様による混和ポリマーの1つの例示的な非限定的な実施形態であると考えられる。上記の通り、抗微生物性放出剤は、湿分によって、放出された抗微生物性材料として二酸化塩素(ClO2)ガスを放出するように誘引される。フィルムは、3つのパッケージの間で、同一配合物及び寸法であった。しかしながら、2つのフィルムは、湿分取り込みを制御するための外部層を有し、かつ1つは、そのような層を有さなかった。パッケージAのフィルムは、厚さ約0.02mmのLDPEの共押出成形層の間に挿入された。パッケージBのフィルムは、厚さ約0.04mmのLDPEの共押出成形層の間に挿入された。パッケージC(対照)のフィルムは、フィルムのいずれの側面上にもそのようなポリマー層を有さなかった。
【0079】
パッケージ中のClO2濃度は、ほとんどの生物体に対して抗微生物性効果を及ぼすことが知られている所望の濃度に関して、キャリブレーションされた検出センサーを用いて13日間測定された。結果は次の通りであった(値はClO2のppm濃度で表される)。
【0080】
【表1】
【0081】
本実施例は、パッケージBが、フィルム中への湿分取り込みを制御した抗微生物性フィルムを挿入するより厚いポリマーライナーに帰因する、最も着実、かつ最も安定した放出プロフィールを有することを実証する。パッケージBの放出プロフィールは、特定の用途に関して、例えば、ブロッコリーなどの食品が比較的少ない量の湿分を放出する場合に望ましくなり得る。
【0082】
実施例2-ゲオトリクム(Geotrichum)の成長試験
トマトの品質の不合格品の一般的な原因は、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)、白色綿毛のように成長する酵母様カビである。本実施例において、G.カンジドゥム(G.candidum)によって故意に汚染されたスライストマトをパッケージし、そして試験した。理想的な貯蔵温度よりわずかに高い貯蔵温度を再現するために(又は貯蔵間の不注意な温度急上昇、例えば、冷蔵装置が数時間故障する場合を刺激するために)、7℃の貯蔵温度が選択された。
【0083】
パッケージの上部に向かって配置されたClO2放出抗微生物性フィルムを有する、図7に示されるものと類似のパッケージを使用して、汚染されたスライストマトを貯蔵した。抗微生物性フィルムを有さないことを除いて第1のものと同一である第2のパッケージを使用して、汚染されたスライストマトを貯蔵した。図8A及び8Bに示すグラフ上に結果を示す。この結果は、最終的に、フィルムを有さないパッケージと比較して、抗微生物性フィルムが、スライストマトにおけるゲオトリクム(Geotrichum)の成長を有意に抑制したことを示す。抗微生物性フィルムを有さないパッケージにおいて、スライストマト上のゲオトリクム(Geotrichum)の増殖は、肉眼でも容易に明らかであった。それとは対照的に、混和ポリマーClO2放出抗微生物性フィルムを有するパッケージ中のスライストマトは、新鮮に見え、ゲオトリクム(Geotrichum)の成長の目に見える徴候はなかった。14日間試験に関しての次善の7℃貯蔵条件では、さらに顕著である。
【0084】
トマトの実施例は単なる例であって、かつ他の製品及び生鮮食品(例えば、肉)が本発明に従って使用されてもよいことは理解されるべきである。さらに、二酸化塩素は1つの好ましい放出された抗微生物性材料であるが、他の放出された抗微生物性材料が本発明の範囲内にあり、かつ他の用途に関して好ましくなり得ることも理解されるべきである。
【0085】
実施例3-抗微生物性フィルム位置試験
混和ポリマーフィルム(上記のX2597フィルム)を、トレーのヘッドスペース中、側壁上の種々の高さ位置において配置し、種々の抗微生物性フィルム位置、ならびに種々の試料採取位置の有効性を試験した。「MCT」という略語は、本明細書で使用される場合、Atlanta,GAのMaxwell Chase Technologies,LLCを意味する。「FPT」という略語は、Maxwell Chase Technologies,LLCのFRESH-R-PAX(登録商標)トレーを意味する。
【0086】
本実施例において以下の材料が使用される。
【0087】
【表2】
【0088】
MCT FPT125D(1/4スチームサイズ、深型白色ポリプロピレン)トレーを次のように変更した。Xactoナイフを使用して、MCT FPT125Dトレー中に幅約8.5mmの2cm間隔で離れた3つの孔を作成した。孔の縁部をクリーニングし、そして両側面上でoリングを用いてCPCバルブを孔中にねじ込み、かつ圧縮嵌合によって2つのリングを引き締めた。蓋及び容器の外側で両バルブにQDVを配置し、試料採取目的のために外側でバルブが自動閉鎖することが可能となった。
【0089】
Flex(登録商標)GP70 3/16’’ID、1/4ODブラックPVCチューブ(MCM#5231K35)をC16 Portable Gas Analyzerの取り込み及び取り出しポートの両方、ならびに圧縮嵌合を有するCPC#3438400 Quick-Disconnect Valvesの他の端部において使用し、トレーを連結して、トレーのヘッドスペースを試料採取した。
【0090】
フィルムの同一ストリップ及び同一幅からCSPフィルム試料を切断した。次いで、それぞれの試料を1.000gまで計量し、そしてプラスチック片を有するトレーの側壁と連結させ、それをその場所で保持した。それぞれのトレーに2つの試料があり、それによって、トレーあたり2gのCSPフィルムが得られた。それぞれの試料は、トレーの異なる側壁に連結した。
【0091】
トマトは、萼が下に面するようにして、ハンドスライサーを用いてスライスした。端部は廃棄した。約7スライスのトマトをそれぞれのトレーの底部表面上に配置した。
【0092】
手動シーラーを375°Fまで加熱し、そしてその中にトマトを有するそれぞれのトレーをそれぞれの密封プレート上に配置した。施蓋/密封フィルムをトレー上に配置し、密封ハンドルを下方に押圧し、そして約1~2秒間保持し、トレー中のトマトをカバー/密封した。
【0093】
それぞれのトレーに関して、1時間間隔で11時間にわたってClO2放出速度を測定した。図9は、トレー中のCSPフィルムの種々の位置、すなわち、側壁の全高さに基づく底部表面から0%、50%、64%、79%及び100%の高さに相当するClO2(ppm)の放出を示す。これらのそれぞれの高さは、フィルムの正中線から測定される。図10は、ヘッドスペース濃度に及ぼすCSPフィルム高さの効果を示す。
【0094】
この結果は、トレー中のCSPフィルムの高さを変化させることが、ヘッドスペースにおけるClO2の存在に影響を与えることを示す。トレーの底部(0%)から中間点(50%、この特定の非限定的な実施例において側壁の約2インチ)まで、わずかのみ、例えば、ヘッドスペース濃度の有意ではない変化があった。しかしながら、トレーの中間点から上部まで、高さの増加によって濃度の有意な増加をもたらした。濃度は、トレーの全高さの64%の位置から上部(100%)までで二倍となった。このデータは、最適な有効性のためにClO2のヘッドスペース濃度を最大化するために、かつ/又は必要とされるフィルムの量を最小化するために、フィルムの配置が、好ましくは、トレーの上部20%にあるべきであり、すなわち、底部表面から測定された側壁の全高さの80%~100%である垂直高さに位置すべきであり、かつトレーの側壁の全高さの少なくとも64%の位置すべきであることを示す。
【0095】
実施例4-病原体を殺滅するための急速バースト放出プロフィールの使用
リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、大腸菌(E.coli)及びサルモネラ(Salmonella)のレベルを減少させることの有効性は、CSP ClO2フィルムを含まない対照トレーと比較して、トレーの上部に適用されたCSP ClO2フィルムに関して評価した。
【0096】
厚さ0.3mmの配合物X2597(上記)と指定されるCSP ClO2発散フィルムを使用した。この配合物は、急速ClO2放出プロフィールを有するように設計され、かつフィルム中への湿分取り込み速度を減少させるためのポリエチレン上層を使用しなかった。上記の通り、X-2597フィルムは、50重量%の抗微生物性放出剤と、38重量%のベースポリマーとしてエチル酢酸ビニル(EVA)と、12重量%のチャネリング剤としてのポリエチレングリコール(PEG)を含む3相配合物である。トレーあたり4グラム又は3グラムのフィルムを有するトレーを使用した。トレー中のトマトに、それぞれ3種の病原体、すなわち、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、大腸菌(E.coli)及びサルモネラ(Salmonella)を接種した。
【0097】
本実施例において次の材料を使用した。
【0098】
【表3】
【0099】
サルモネラ(Salmonella)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)及び大腸菌(E.coli)O157:H7の5つの菌株カクテルを調製し、混合し、そして一晩保持した。目標は、トマト上でそれぞれの病原体の5-log接種を達成することであった。接種されたトマトは、接種源1mlあたり109CFUの病原体を有した。接種は、検証及び初期レベルに関して、プレートした。
【0100】
微温湯を使用して、200ppm遊離塩素溶液を調製した。スライサーを2分間溶液に浸漬し、次いで、水道水ですすいだ。
【0101】
温水(トマトの場合とほぼ同一温度)を使用して、200ppm遊離塩素溶液を調製した。トマトを最初に水道水中、次いで、2分間、塩素溶液中に入れ、そして水道水ですすいだ。トマトは、萼が下に面するようにして、ハンドスライサーを用いてスライスした。端部は廃棄し、42スライスをそれぞれのトレーに配置した(6個のトマト×トマト1個あたり7スライス)。
【0102】
それぞれのトレーで3組の分析を達成するために、それぞれのトレー中の18のトマトスライスに、サルモネラ(Salmonella)、リリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)及び大腸菌(E.coli)(それぞれ6)接種源を用いてスポット接種した。選択された18のトマトスライスは、接種される部位の隣にSharpieによってそれぞれのスライスにマークを付けることによって識別された。接種源をボルテックスし、そして10μlの接種源を、殺菌したピペットチップで迅速に吸引し、そして上部にマークが付けられた2つのスライス上にマイクロピペットした。これは、病原体ごとにトレーあたり2回以上繰り返した。
【0103】
手動シーラーを375°Fまで加熱した。それぞれのトレーを密封プレート上に配置し、そして施蓋フィルムをトレー上に引っ張った。密封ハンドルを押し下げ、そしてその場で約1~2秒間保持した。密封後、施蓋フィルムがトレーに完全に接着したことを確認するために、それぞれのトレーを検査した。
【0104】
試験トレーは、第0日、第5日、第8日及び第12日に分析した。それぞれのトレーに対して、それぞれの病原体の合計3つの試料があり、トレーごとに3種の病原体及び3つのAPC(一般生菌数)試料をそれぞれのトレーから採取した。それぞれの試料は、殺菌ピンセットを使用して採取された2つのスライスからなった。2つのスライスを殺菌ストマッカー袋(重量は約40~50g)中に計量し、そして3倍量の殺菌ペプトン水を添加した。トマトを1分間260rpmで消化した。次いで、ホモジェネートから必要な希釈を調製し(約3)、そして相当するPCA、MOX、SMAC又はXLDプレート上に複製をプレートした。
【0105】
データは、グラムあたりのコロニー形成単位(CFU)として算出した。CFU値は、データ分析のためにlog値に変換された。データをトレーあたり、及び試料種ごとに平均化した。次は、それぞれの日に実行された試験の要約である。「CSP3」という用語は、3gのX2597フィルムを使用するトレーを意味し、そして「CSP4」という用語は、4gのX2597フィルムを使用するトレーを意味する。
【0106】
第0日:3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した1MCTトレー=12試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した1CSP4トレー=12試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した1CSP3トレー=12試験;接種されない1UNトレー(ネガティブコントロール)×4試験(sal、E.Coli、Lm、APC)/トレー=4試験。累積的に、これは合計40の試験であった。
【0107】
第5日:3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3MCTトレー=36試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3CSP4トレー=36試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3CSP3トレー=36試験;接種されない1UNトレー(ネガティブコントロール)×4試験(sal、E.Coli、Lm、APC)/トレー=4試験。累積的に、これは合計112の試験であった。
【0108】
第8日:3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3MCTトレー=36試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3CSP4トレー=36試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3CSP3トレー=36試験;接種されない1UNトレー(ネガティブコントロール)×4試験(sal、E.Coli、Lm、APC)/トレー=4試験。累積的に、これは合計112の試験であった。
【0109】
第12日:3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3MCTトレー=36試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3CSP4トレー=36試験;3サルモネラ(Salmonella)、3大腸菌(E.Coli)、3リステリア(Listeria)及び3APC試験/トレーを用いて接種した3CSP3トレー=36試験;接種されない1UNトレー(ネガティブコントロール)×4試験(sal、E.Coli、Lm、APC)/トレー=4試験。累積的に、これは合計112の試験であった。
【0110】
全部で、本実験は累積的に合計376の試験(94サルモネラ(Salmonella)、94大腸菌(E.Coli)、94リステリア(Listeria)、94APC)を含んだ。結果を図11~13に示す。
【0111】
図11は、第0日後にサルモネラ(Salmonella)に低下があり、そしてCSP3トレーに関しては第12日まで低下が保持され、そしてCSP4トレーに関しては継続したことを示す。これらの試料のそれぞれは、第5日に少なくとも1.8log、第8日に2.5log及び第12日に3logのサルモネラ(Salmonella)数の減少をそれぞれ示した。これは、CSPトレーにおいて12日後にサルモネラ(Salmonella)の99.9%減少を実証する。
【0112】
図12は、サルモネラ(Salmonella)の結果に類似する大腸菌(E.coli)に関する結果を示す。第0日後の大腸菌(E.coli)の低下は、第5日に少なくとも2log、第8日に4log及び第12日に3logの減少をもたらした。サルモネラ(Salmonella)に関する図11と類似して、図12は、第12日においてCSP3トレーに関して増加を示す。12日間後の大腸菌(E.coli)の99.9%減少があったことが決定された。
【0113】
図13は、CSPフィルムが、12日間の貯蔵寿命にわたって1logのリステリア(Listeria)の減少をもたらしたことも示す。これは、試料が得られた全ての日において一貫しており、かつ12日間の一貫したリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の90%減少を実証した。
【0114】
これらの結果は、トマトスライス上に接種され、かつ8℃において貯蔵されたサルモネラ(Salmonella)、大腸菌(E.coli)及びリステリア(Listeria)の量を減少させるために、12日の貯蔵期間にわたってのスライストマトを有する(本発明の任意選択的な態様による)CSPトレーの有効性を実証する。これは標準的な貯蔵条件ではないが、それは損傷及び病原体成長の主要な原因であるとして食品の安全な貯蔵実施において指摘されるコールドチェーンにおける使用の可能性をシミュレートする。これらのトレーの使用は、スライストマトにおける有害なレベルまでの病原体成長の可能性を低下させることに寄与することが可能である。
【0115】
実施例5-急速ブラスト抗微生物性ガス放出曲線
上記の実施例4に記載される通り、3g又は4gのX2597フィルムを使用するトレーは、試験期間にわたって病原体成長及び繁殖の阻害における有意な活性を実証した。本明細書の他所においても議論された通り、フィルム配合物は、急速バースト放出プロフィールを提供するように構成された。図14は、実施例4において使用された3g及び4g型に関する放出曲線を提供する。図14は、2gのみのフィルムを使用したトレーの放出曲線を提供する。
【0116】
図14に示す通り、4gのフィルムを使用するトレー(CSP4)は、約18時間において約30ppmのClO2においてピークに達したが、約6時間~33時間の間、10ppmより高く保持された。3gのフィルムを使用するトレー(CSP3)は、約15時間において約23ppmのClO2においてピークに達したが、約6時間~33時間の間、10ppmより高く保持された。実施例4において上記された通り、これらの実施形態は、トマトを漂白することなく、所望の微生物殺滅を達成するために十分なヘッドスペース濃度を提供した。
【0117】
図14は、2gのフィルムを使用するトレーの放出曲線も示す。曲線が示すように、その実施形態は、12時間~18時間の間に約16ppmのClO2においてピークに達した。しかしながら、その曲線は、ClO2濃度が約8時間~26時間の間のみ10ppmより高く保持されたことを示す。いくつかの場合は、このような濃度及び放出曲線でも十分な抗微生物性効果を提供し得るが、この場合は、このような濃度は好ましくない(それにもかかわらず、開示された概念の任意選択的な態様の範囲内になお含まれる)。
【0118】
本発明が詳細に、かつ特定の実施形態を参考にして説明されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を実行可能であることは当業者に明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14