(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/30 20060101AFI20230515BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20230515BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01Q19/30
H01Q1/50
H01Q21/08
(21)【出願番号】P 2021183150
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000109668
【氏名又は名称】DXアンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榮 京介
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴陽
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-211643(JP,A)
【文献】特開2010-050605(JP,A)
【文献】米国特許第06285336(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/30
H01Q 1/50
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電波が到来する到来方向と反対方向に前記電波を反射する反射器と、
前記反射器の、前記電波の到来方向の上流側に配置された導波器と、
前記到来方向に対して前記導波器と前記反射器との間に隙間をあけて配置された放射器と、
前記反射器、前記導波器、および前記放射器を内部に収容する筐体と、
前記放射器に電気的に接続され、かつ前記筐体の外部から、前記筐体の外部に設けられた外部装置に接続された同軸ケーブルを電気的に接続可能な同軸コネクタと、
を備え、前記同軸コネクタに前記同軸ケーブルを接続することで前記放射器から前記外部装置に前記電波を伝送可能なアンテナ装置において、
前記放射器に電気的に接続された
一対の導電部と、前記同軸コネクタ
と一対の前記導電部の一方とに電気的に接続された伝送部と、
一対の前記導電部
の他方と前記伝送部との間で
一対の前記導電部
の他方および前記伝送部に電気的に接続されたバラン部と、を有し、前記放射器と前記同軸コネクタとの間でインピーダンスを整合する、前記筐体の内部に収容された給電回路を備え、
一対の前記導電部、前記伝送部、および前記バラン部は、一体をなす板金部材であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記同軸コネクタは、端部に形成された第1端子部を有し、
前記伝送部は、前記第1端子部に接触して前記伝送部と前記同軸コネクタとを電気的に接続する第2端子部と、前記バラン部の厚み方向と直交する前記反射器の長手方向に沿って、前記第2端子部から互いに逆方向に分岐する第1伝送部および第2伝送部と、を含んで構成され、
前記放射器は、第1放射器と、第2放射器と、を含んで構成され、
一対の前記導電部は、前記
第1放射器と電気的に接続される
一対の第1導電部と、前記
第2放射器と電気的にに接続される
一対の第2導電部と、を含んで構成され、
前記バラン部は、前記第1伝送部
及び一対の前記第1導電部の一方と電気的に接続される第1バラン部と、前記第2伝送部
及び一対の前記第2導電部の一方と電気的に接続される第2バラン部と、を含んで構成され、
一対の前記第1導電部の他方は、前記第1伝送部と電気的に接続され、
一対の前記第2導電部の他方は、前記第2伝送部と電気的に接続され、
前記給電回路は、前記第1バラン部および
一対の前記第1導電部からなる部分と前記第2バラン部および
一対の前記第2導電部からなる部分とが、前記第2端子部を中心として前記長手方向に対称形状をなす請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1端子部は、前記同軸コネクタの端部から前記伝送部に向かって突出し、
前記第2端子部は、前記伝送部の厚み方向に貫通する貫通孔であり、前記第1端子部に外挿されて接触し、
前記反射器は、前記バラン部と前記バラン部の厚み方向に所定の隙間を介して対向する平面部と、前記平面部の前記長手方向に沿った側端部から前記到来方向の上流側に立ち上がった側壁部と、を有し、前記側壁部を貫通し、前記同軸コネクタが挿入されて、前記同軸コネクタを前記第1端子部と前記第2端子部とが接触する接触位置で位置決めする位置決め孔が形成されている請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記平面部と前記第1バラン部および前記第2バラン部との前記厚み方向の間隔は、3
mm以上、かつ5mm以下である請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記導波器は、前記第1放射器と前記到来方向に対向する複数の第1導波器と、前記第2放射器と前記到来方向に対向する複数の第2導波器と、を含んで構成されている請求項2から4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記放射器のインピーダンスは、前記同軸コネクタのインピーダンスの3.5倍以上、かつ4.5倍以下である請求項1から5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、UHFアンテナ等の屋外に設置されるアンテナ装置として、アンテナ装置を構成する各機構(反射器、導波器、放射器、伝送部、同軸コネクタ(アンテナ出力端)等)を箱状の筐体の内部に収容したものがある(特許文献1)。同軸コネクタは、伝送部および放射器と電気的に接続されている。また、同軸コネクタには筐体の外部から同軸ケーブルを電気的に接続可能である。同軸ケーブルは、同軸コネクタと筐体の外部に設けられた外部装置とを電気的に接続し、放射器で受信した電波を、電気信号として外部装置に送信する。
【0003】
特許文献1のアンテナ装置は、放射器のインピーダンス(150Ω)と、同軸コネクタのインピーダンス(75Ω)とが異なる値となっている。特許文献1には、放射器と同軸コネクタとの間でインピーダンスの整合を行う合成回路を備えたアンテナ装置も開示されている(特許文献1の
図10、
図11参照)。合成回路は、放射器と、インピーダンス変換器と、同軸コネクタとによって構成されている。インピーダンス変換器は、放射器および同軸コネクタに複数の導線を用いて電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の放射器のインピーダンスは比較的低い値(150Ω)に設定されており、アンテナ出力の損失が比較的大きなものとなる。アンテナ出力の損失を抑制する一般的な手法として比較的高インピーダンスの放射器を採用する場合がある。しかし、高インピーダンスの放射器を用いた場合、同軸コネクタのインピーダンスと放射器のインピーダンスとの差が比較的大きくなる。すると、インピーダンスの均衡が崩れ、同軸コネクタに接続された同軸ケーブルにノイズ(コモンノードノイズ)が生じる。このため、アンテナ出力の損失を解消することが困難となる。このコモンノードノイズを抑制すべく上述した合成回路を配置する場合、合成回路を筐体の内部に収容する必要がある。このため、筐体内に複数の導線やインピーダンス変換器を配線する必要があり、装置の大型化や回路の構成の複雑化に繋がるおそれがある。そこで、本発明は、アンテナ出力の損失を抑制しつつ、簡易な構造によって装置の大型化を抑制可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係るアンテナ装置は、反射器と、導波器と、放射器と、筐体と、同軸コネクタと、を備え、同軸コネクタに同軸ケーブルを接続することで放射器から外部装置に電波を伝送可能なアンテナ装置である。反射器は、所定の電波が到来する到来方向と反対方向に電波を反射する。導波器は、反射器の、電波の到来方向の上流側に配置されている。放射器は、到来方向に対して導波器と反射器との間に隙間をあけて配置されている。筐体は、反射器、導波器、および放射器を内部に収容する。同軸コネクタは、放射器に電気的に接続され、かつ筐体の外部から、筐体の外部に設けられた外部装置に接続された同軸ケーブルを電気的に接続可能となっている。アンテナ装置は、放射器に電気的に接続された導電部と、同軸コネクタに電気的に接続された伝送部と、導電部と伝送部との間で導電部および伝送部に電気的に接続されたバラン部と、を有し、放射器と同軸コネクタとの間でインピーダンスを整合する、筐体の内部に収容された給電回路を備える。導電部、伝送部、およびバラン部は、一体をなす板金部材である。
【0007】
また、上記第1の構成のアンテナ装置において、同軸コネクタは、端部に形成された第1端子部を有し、伝送部は、第1端子部に接触して伝送部と同軸コネクタとを電気的に接続する第2端子部と、バラン部の厚み方向と直交する反射器の長手方向に沿って、第2端子部から互いに逆方向に分岐する第1伝送部および第2伝送部と、を含んで構成され、バラン部は、第1伝送部に接続される第1バラン部と、第2伝送部に接続される第2バラン部と、を含んで構成され、導電部は、第1バラン部に接続される第1導電部と、第2バラン部に接続される第2導電部と、を含んで構成され、放射器は、第1導電部に接続される第1放射器と、第2導電部に接続される第2放射器と、を含んで構成され、給電回路は、第1バラン部および第1導電部からなる部分と第2バラン部および第2導電部からなる部分とが、第2端子部を中心として長手方向に対称形状をなす構成(第2の構成)であってもよい。
【0008】
また、上記第2の構成のアンテナ装置において、第1端子部は、同軸コネクタの端部から伝送部に向かって突出し、第2端子部は、伝送部の厚み方向に貫通する貫通孔であり、第1端子部に外挿されて接触し、反射器は、バラン部とバラン部の厚み方向に所定の隙間を介して対向する平面部と、平面部の長手方向に沿った側端部から到来方向の上流側に立ち上がった側壁部と、を有し、側壁部を貫通し、同軸コネクタが挿入されて、同軸コネクタを第1端子部と第2端子部とが接触する接触位置で位置決めする位置決め孔が形成されている構成(第3の構成)であってもよい。
【0009】
また、上記第2、第3の構成のアンテナ装置において、導波器は、第1放射器と到来方向に対向する複数の第1導波器と、第2放射器と到来方向に対向する複数の第2導波器と、を含んで構成された構成(第4の構成)であってもよい。
【0010】
また、上記第2~第4の構成のアンテナ装置において、平面部と第1バラン部および第2バラン部との厚み方向の間隔は、3mm以上、かつ5mm以下である構成(第5の構成)であってもよい。
【0011】
また、上記第1~第5の構成のアンテナ装置において、放射器のインピーダンスは、同軸コネクタのインピーダンスの3.5倍以上、かつ4.5倍以下である構成(第6の構成)であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の構成によれば、給電回路によって放射器と同軸コネクタとの間でインピーダンスの整合が可能になる。このため、比較的インピーダンスの高い放射器を用いた場合でも、同軸コネクタに接続される同軸ケーブルと放射器とのインピーダンスの均衡を保つことが可能となり、同軸ケーブルのコモンノードノイズを抑制することができる。また、給電回路を構成する導電部、伝送部、およびバラン部は、板金部材により一体的に形成されている。このため、給電回路は、比較的薄く省スペースな形状とすることができる。従って、アンテナ出力の損失を抑制しつつ、簡易な構造によって装置の大型化を抑制可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置の全体を示す斜視図
【
図2】上カバーを取り外した状態のアンテナ装置を示す斜視図
【
図3】
図1に示すA-A断面線の位置でy―z平面に沿ってアンテナ装置を切断した断面を示す断面図
【
図4】アンテナ装置の内部の各部位(反射器、導波器、放射器、給電回路)を展開した斜視図
【
図5】
図3に示すB-B断面線で切断したアンテナ装置の断面を示す断面図
【
図7】同軸ケーブルと放射器との伝送経路を示す給電回路の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るアンテナ装置1は、UHF(Ultra High Frequency)帯(300~3000MHzの周波数帯)の電波を受信するアンテナである。より詳細には、アンテナ装置1は、470~710MHzの電波を受信することを目的としたアンテナである。
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置1の全体を示す斜視図である。
図2は、上カバー8を取り外した状態のアンテナ装置1を示す斜視図である。
図3は、
図1に示すA-A断面線の位置でy―z平面(図に示す矢印yおよび矢印zに平行な平面)に沿ってアンテナ装置1を切断した断面を示す断面図である。なお、各図に示すx―x´方向を幅方向とする。また、y―y´矢印に沿った方向を前後方向とし、アンテナ装置1のy側を前面側(前方ともいう)、アンテナ装置1のy´側を背面側(後方ともいう)とする。また、z-z´方向を上下方向とし、矢印Z側を上方、矢印Z´側を下方とする。
【0015】
図1、
図2に示すように、アンテナ装置1は、筐体2と、筐体2に収容される反射器3、導波器4、放射器5、および給電回路6と、同軸コネクタ7とを備える。同軸コネクタ7には同軸ケーブル48を接続可能である。アンテナ装置1は同軸コネクタ7に同軸ケーブル48を接続した状態で、同軸ケーブル48を介して、筐体2の外部に配置された装置(分配器やテレビ受像機等)に電気信号を伝送可能である。
【0016】
筐体2は、上カバー8と下カバー9とから構成された、内部に空間を有する箱状体である。上カバー8と下カバー9とは上下方向に対向し、固定手段(スナップフィット構造、ねじ部材による締結等)により互いに連結している。
【0017】
図3に示すように、筐体2の背面(
図3に示す筐体2の右側の端面)には、マスト固定部10が取り付けられている。マスト固定部10は、筐体2の背面に当接するベース部11と、ベース部11より後方に位置し、ベース部11と前後方向に対向する取付プレート12とを有する。マスト固定部10は、棒状のマスト部材13をベース部11と取付プレート12との間に挟み込んで挟持可能である。マスト固定部10は、ねじ部材14a、14bが取付プレート12の後方(矢印y´側)からベース部11を貫通するようにして筐体2の背面にねじ込まれて固定されている。ねじ部材14a、14bの締結力によって、マスト部材13をベース部11との間で挟持しつつ、マスト固定部10を筐体2に固定可能である。マスト部材13を屋外に設けられた構造物(不図示)に固定することで、アンテナ装置1を設置することができる。
【0018】
図4は、アンテナ装置1の内部の各部位(反射器3、導波器4、放射器5、給電回路6)を展開した斜視図である。
図4に示すように、反射器3は、金属材料によって形成された板状体である。反射器3は、アンテナ装置1の前方から後方に向かって進む所定の電波を、前方に向けて反射する。この電波が反射器3に到来する方向(前後方向に沿ってアンテナ装置1の前方から後方に向かって進む方向)を、到来方向とする。反射器3は接地状態にある。反射器3は、平面部15と、側壁部16a、16b、16c、16dを有する。
【0019】
平面部15は、前後方向に直交する矩形状の板状体である。平面部15は、上述した所定の電波を反射する。側壁部16a~16dは平面部15の各縁に連接する矩形状の板状体である。側壁部16aは平面部15の上端縁に、側壁部16bは平面部15の下端縁に、側壁部16cは平面部15の右側縁(
図4の右側の側縁)に、側壁部16dは平面部15の左側縁(
図4の左側の側縁)に、それぞれ連接している。側壁部16a~16dは、平面部15から前方に向かって折り曲げられている。平面部15と側壁部16a~16dは、一枚の板状材料が折り曲げられて形成された、一体をなす板状体である。
【0020】
図2、
図4に示すように、放射器5は、反射器3の前方に複数(ここでは2つ)配置されている。各放射器5は幅方向に所定の間隔をあけて並んでいる。以下、各放射器5のうち、幅方向の一方(ここでは
図2の右側に位置する方)に配置されたものを第1放射器5aと、幅方向の他方(ここでは
図2の左側に位置する方)に配置されたものを第2放射器5bと称する。第1放射器5aと第2放射器5bとは、前後方向に対して重なる位置にある。第1放射器5aと第2放射器5bとは同一形状の同一部材を採用することができる。そこで、以下、第1放射器5aについて詳細に説明し、第2放射器5bについては説明を省略する。
【0021】
第1放射器5aは、金属材料によって形成された板状体である。第1放射器5aは、幅方向および上下方向に対称な形状をなしている。
図3、
図4に示すように、第1放射器5aは、正面部17と、一対の側面部18とを有する。正面部17は、幅方向および上下方向に平行な平面を有する。正面部17は、反射器3の平面部15と前後方向に所定の間隔をあけて対向している。正面部17は平面部15と平行に配置されている。
【0022】
側面部18は、正面部17の幅方向の両端縁に連接する板状体である。側面部18は、正面部17から後方に延びている。第1放射器5aは、一枚の板状体であり、曲げ加工によって正面部17と側面部18とが形成されている。第1放射器5aのインピーダンスは、300Ωである。
【0023】
図5は、
図3に示すB-B断面線で切断したアンテナ装置1の断面を示す断面図である。
図3、
図5に示すように、第1放射器5aは、上カバー8の底面19(筐体2の内周面のうちの上方に位置する面)に設けられた上側位置決め部20と、下カバー9の底面50に設けられた下側位置決め部21とによって、前後方向に位置決めされている。上側位置決め部20は、幅方向に並んだ複数の上側前面リブ22と、幅方向に並んだ複数の上側背面リブ23とから構成されている(
図3参照)。下側位置決め部21は、幅方向に並ぶ複数の下側前面リブ24と、幅方向に並ぶ複数の下側背面リブ25とから構成されている(
図3、
図5参照)。
【0024】
上側前面リブ22および下側前面リブ24は、正面部17の前方に配置されている。上側前面リブ22および下側前面リブ24は、正面部17に対して前方から当接して、正面部17が前方に移動するのを規制している。上側背面リブ23および下側背面リブ25は、正面部17の後方に配置されている。上側背面リブ23および下側背面リブ25は、正面部17に対して後方から当接して、正面部17が後方に移動するのを規制している。上側前面リブ22および下側前面リブ24と、上側背面リブ23および下側背面リブ25との間に正面部17が差し込まれることで、第1放射器5aは前後方向に位置決めされる。
【0025】
図2から
図4に示すように、第1放射器5aは、正面部17から後方に屈曲して形成された接点部26a、26bを有する。接点部26a、26bは、正面部17と直交する矩形状の板状体である。接点部26a、26bは下カバー9の底面50から上方に向かって突出する固定用リブ27の上面と重ね合わせて配置される(
図3参照)。また、接点部26a、26bと固定用リブ27の上面との間には、後述する給電回路6の導電部34が配置されている。接点部26a、26bと導電部34とが電気的に接続した状態で、接点部26a、26bは固定用リブ27にねじ部材14cによって固定されている。これにより、第1放射器5aは下カバー9に固定される。
【0026】
図2から
図4に示すように、放射器5の前方には、複数の導波器4が配置されている。導波器4は、導電性を有する金属材料等によって形成された矩形状の板状体である。各導波器4は前後方向と直交するように配置されている。複数の導波器4のうち、第1放射器5aと前後方向に対向するものを第1導波器4a、第2放射器5bと前後方向に対向するものを第2導波器4bとする。以下、第1導波器4aについて詳細に説明し、第2導波器4bについては説明を省略する。
【0027】
ここでは、第1導波器4aは5つ配置されている。各第1導波器4aは、前後方向に隙間をあけて3列に並んでいる。最前列には1枚の第1導波器4aが配置され、その他の列には、上下に並んだ2枚の第1導波器4aが配置されている。
【0028】
第1導波器4aは、導波器固定部28によって前後方向に固定されている。導波器固定部28は、上カバー8の底面19と下カバー9の底面50に設けられている。上述した2列目および3列目の各第1導波器4aのうち、上方に配置されたものは上カバー8に設けられた導波器固定部28により固定され、下方に配置された第1導波器4aは下カバー9に設けられた導波器固定部28によって固定されている。
【0029】
導波器固定部28は、前面側リブ29、背面側リブ30、および爪部31を有する。上カバー8に設けられた導波器固定部28の前面側リブ29、背面側リブ30、および爪部31は、底面19から下方に向かって突出している。反対に、下カバー9に設けられた導波器固定部28の前面側リブ29、背面側リブ30、および爪部31は、底面50から上方に向かって突出している。
【0030】
前面側リブ29は第1導波器4aの前方に位置し、第1導波器4aに対して前方から当接することで第1導波器4aが前方に移動するのを規制している。背面側リブ30は第1導波器4aの後方に位置し、第1導波器4aに対して後方から当接することで第1導波器4aが後方に移動するのを規制している。爪部31は第1導波器4aの前方に位置している。爪部31の上端部は、後方に向かって先細り形状に突出している。爪部31の上端部が第1導波器4aに形成された固定用孔32に差し込まれ、第1導波器4aと導波器固定部28とがスナップフィット構造によって固定される。
【0031】
図4、
図5に示すように、給電回路6は、伝送部33と、導電部34と、バラン部35と、を含んで構成されている。伝送部33は、第2端子部37、第1伝送部33a、第2伝送部33b、第1突出部51、および第2突出部52から構成されている。第2端子部37は、伝送部33から前方に向かって突出している。第2端子部37は、幅方向に対して伝送部33の中央部(幅方向に対して筐体2の中央部)に位置している。第2端子部37の前後方向および幅方向の中央部には、伝送部33の厚み方向に貫通する貫通孔36が形成されている(
図6参照)。
【0032】
第1伝送部33aは、伝送部33の、幅方向に対して第2端子部37より第1放射器5aに近い側(
図5に示す右側)の部分である。第2伝送部33bは、伝送部33の、幅方向に対して第2端子部37より第2放射器5bに近い側(
図4に示す左側)の部分である。上述の通り第2端子部37は伝送部33の幅方向の中央部に位置している。このため、第1伝送部33aの長さは第2伝送部33bの長さと等しい。第1伝送部33aと第2伝送部33bとは、幅方向に対称形状をなす。
【0033】
第1伝送部33aの幅方向の外側(
図5における左側)の端部には、上方に向かって突出する第1突出部51が連接している。第2伝送部33bの幅方向の外側(
図5における右側)の端部には、上方に向かって突出する第2突出部52が連接している。
【0034】
図4、
図5に示すように、導電部34は、第1放射器5aに接続される第1導電部34a、34bと、第2放射器5bに接続される第2導電部34c、34dとから構成されている。第1導電部34aは幅方向に対して第1導電部34bよりも外側に位置している。第1導電部34aの一端は、第1突出部51に接続され、他端は第1放射器5aの接点部26aに接続されている。第1導電部34bの一端は後述する第1バラン部35aの端部に連接し、他端は第1放射器5aの接点部26bに接続されている。
【0035】
第2導電部34cは幅方向に対して第2導電部34dよりも内側に位置している。第2導電部34cの一端は第2突出部52に接続され、他端は第2放射器5bの接点部26aに接続されている。第2導電部34dの一端は、後述する第2バラン部35bの端部に連接し、他端は第2放射器5bの接点部26bに接続されている。
【0036】
図4、
図5に示すように、バラン部35は、第1伝送部33aと連接する第1バラン部35aと、第2伝送部33bと連接する第2バラン部35bとから構成されている。第1バラン部35aおよび第2バラン部35bの厚みの方向は、前後方向と平行になっている。第1バラン部35aおよび第2バラン部35bは、第1伝送部33aおよび第2伝送部33bに垂直な板状体である。第1バラン部35aおよび第2バラン部35bは、反射器3の平面部15と、前後方向(第1バラン部35aおよび第2バラン部35bの厚みの方向)に所定の隙間(好ましくは3mm以上、かつ5mm以下、より好ましくは、3.5mm以上、かつ4.5mm以下の隙間)を介して対向している。また、バラン部35と反射器3との間に、バラン部35および反射器3以外の部品を介した導通経路は存在しない。すなわち、反射器3とバラン部35とは電気的に接続していない。
【0037】
第1バラン部35aの一端は、第1突出部51の端部に重ね合わされて第1突出部51と電気的に接続した状態で、第1突出部51と共に筐体2に対して固定されている。上述したとおり、第1バラン部35aの他端は、第1導電部34bに連接している。第1バラン部35aは、第1伝送部33aとの接続箇所から第1導電部34bとの連接箇所まで、複数の直線状の部分が上下方向または左右方向に直進方向を変位させながら延びるように形成されている。第1バラン部35aと第1導電部34a、34bとは一体をなす同一体であり、連接箇所で折り曲げられて形成されている。
【0038】
第2バラン部35bは第1バラン部35aと同一形状に形成されている。第2バラン部35bの一端は、第2突出部52の端部に重ね合わされて第2突出部52と電気的に接続した状態で、第2突出部52と共に筐体2に対して固定されている。上述したとおり、第2バラン部35bの他端は、第2導電部34dに連接している。第2バラン部35bと第2導電部34c、34dとは一体をなす同一体であり、連接箇所で折り曲げられて形成されている。
【0039】
給電回路6を構成する伝送部33、導電部34、およびバラン部35は、1つの板金部材(導電性を有する板状の金属材料)から切り出され、かつ複数回の曲げ加工によって形成されている。すなわち、第1伝送部33a、第2伝送部33b、第1導電部34a、34b、第2導電部34c、34d、第1バラン部35a、および第2バラン部35bは、互いに一体的に連続した同一体である。給電回路6は、伝送部33、導電部34、およびバラン部35の幅が変化するように形成され、この幅の変化によって、給電回路6に接続される放射器5と同軸コネクタ7とのインピーダンスの整合が可能となっている。
【0040】
伝送部33の第2端子部37には、同軸コネクタ7が電気的に接続されている。同軸コネクタ7は、電気信号等を伝送可能な金属製の芯線を内部に有する。同軸コネクタ7は、筐体2の外部に一部が露出しており、その露出部分に後述する同軸ケーブル48を接続可能なケーブル接続端子42が形成されている。放射器5のインピーダンスは、同軸コネクタ7のインピーダンスの3.5倍以上、かつ4.5倍以下が好ましい。ここでは、同軸コネクタ7のインピーダンスを75Ωとしており、第1放射器5aおよび第2放射器5bのインピーダンスを上述のとおり300Ωとしている。同軸ケーブル48のインピーダンスは、同軸コネクタ7のインピーダンスと同一の値(75Ω)としている。
【0041】
図6は、第2端子部37の周辺を拡大して示す斜視図である。
図6に示すように、同軸コネクタ7は、位置決め部43と、第1端子部44とを有する。位置決め部43の外周面は、前後方向に並ぶ一対の曲面部45と、幅方向に並ぶ一対の水平部46とから構成されている。水平部46は、幅方向に直交する直線状の面を有する。
【0042】
幅方向に対して側壁部16bの中央の位置には、側壁部16bを貫通する位置決め孔47が形成されている。同軸コネクタ7の位置決め部43は、位置決め孔47に挿入される。位置決め孔47の内周面は、位置決め部43の外周面の形状(一対の曲面部45および一対の水平部46からなる外周面)に沿った形状となっている。すなわち、位置決め部43が位置決め孔47に挿入された状態で、位置決め孔47の内周面と位置決め部43の外周面とは平行になる。
【0043】
この状態で同軸コネクタ7が前後方向または幅方向に移動しようとすると、位置決め部43の外周面が位置決め孔47の内周面に当接し、同軸コネクタ7の移動が規制される。また、この状態で同軸コネクタ7が回転しようとすると、位置決め部43の水平部46が位置決め孔47の内周面に当接し、同軸コネクタ7の回転が規制される。このように、同軸コネクタ7は、位置決め孔47によって前後方向、幅方向、および回転方向に位置決め可能となっている。アンテナ装置1を組み立てる際には、同軸コネクタ7を位置決め孔47によって位置決めした状態でボルト、ナット等の締結部材(図示省略)によって側壁部16bに固定可能である。
【0044】
第1端子部44は、位置決め部43の上端から伝送部33に向かって突出した、同軸コネクタ7の内部の芯線の上端部である。第1端子部44は、比較的薄く、かつ比較的幅の狭い矩形状の板状体に形成されている。第1端子部44は、同軸コネクタ7が位置決めされた状態で第2端子部37の貫通孔36内に挿入され、貫通孔36の内周面の一部(第2端子部37の一部)に接触する。この接触により、同軸コネクタ7の芯線と第2端子部37とが電気的に接続する。同軸コネクタ7の芯線はケーブル接続端子42内に露出している(図示省略)。
【0045】
図2に戻って、同軸ケーブル48は、電気信号等を伝送可能な金属製の電線を内部に有し、その電線の外周をポリエチレン等の絶縁体で被覆し、絶縁体の外周を外部動体および被膜で被覆したケーブルである。同軸ケーブル48の端部には、同軸コネクタ7のケーブル接続端子42に接続可能な第3端子部49を有する。同軸ケーブル48の内部の電線は、第3端子部49と電気的に接続している。第3端子部49を同軸コネクタ7のケーブル接続端子42に接続することで、同軸コネクタ7の芯線と同軸ケーブル48の電線とが電気的に接続する。これにより、給電回路6と同軸ケーブル48とが電気的に接続する。
【0046】
図7は、同軸コネクタ7と放射器5との伝送経路を示す給電回路6の斜視図である。ここで、
図7の破線矢印で示すように、第1伝送部33a、第1突出部51、第1導電部34aを通過して第1放射器5aに導通する経路を第1経路38とし、第1伝送部33a、第1突出部51、第1バラン部35a、第1導電部34bを通過して第1放射器5aに導通する経路を第2経路39とする。また、第2伝送部33b、第2突出部52、第2導電部34cを通過して第2放射器5bに導通する経路を第3経路40とし、第2伝送部33b、第2突出部52、第2バラン部35b、第2導電部34dを通過して第2放射器5bに導通する経路を第4経路41とする。
【0047】
第1経路38の長さは、第3経路40の長さと等しい。また、第2経路39の長さは、第4経路41の長さと等しい。上述のとおり、第1伝送部33aの長さと第2伝送部22bの長さは等しいため、給電回路6の、第1バラン部35aおよび第1導電部34a、34bからなる部分と、第2バラン部35bおよび第2導電部34c、34dからなる部分とは、幅方向(給電回路6の長手方向)に対称形状に形成され、かつ第1突出部51と第2突出部52の形状(長さおよび幅)は互いに等しいのが好ましい。
【0048】
第1経路38では、第1伝送部33aから第1放射器5aに直接接続されている。一方、第2経路39は、第1伝送部33aと第1導電部34aとの連接箇所におおいて第1経路38から分岐し、第1バラン部35aを経由して第1放射器5aに接続されている。また、第3経路40では、第2伝送部33bから第2放射器5bに直接接続されている。他方、第4経路41では、第2伝送部33bと第2導電部34cとの連接箇所において第3経路40から分岐し、第2バラン部35bを経由して第2放射器5bに接続されている。第1バラン部35aおよび第2バラン部35bは、同軸コネクタ7(同軸ケーブル48)のインピーダンス(75Ω)と第1放射器5aのインピーダンス(300Ω)を整合する。すなわち、給電回路6は、同軸コネクタ7(同軸ケーブル48)と放射器5との間で、1:4のインピーダンス変換が可能である。
【0049】
実施形態に係る本発明のアンテナ装置1は、上述の通り、給電回路6によって放射器5と同軸コネクタ7(同軸ケーブル48)との間でインピーダンスの整合が可能になる。このため、比較的インピーダンスの高い放射器5を用いた場合でも、同軸ケーブル48と放射器5とのインピーダンスの均衡を保つことができ、同軸ケーブル48に生じるコモンノードノイズを抑制できる。給電回路6を構成する導電部34、伝送部33、およびバラン部35は、板金部材により一体的に形成されている。このため、給電回路6は、比較的薄く省スペースな形状とすることができる。
【0050】
ところで、近年、屋外に設置されるアンテナ装置は、設置箇所周辺の急激な環境の変化(集中豪雨や大型台風の到来等)に対応すべく、装置全体の小型化の要請がある。従来のアンテナ装置では、放射器と同軸ケーブルとのインピーダンスを整合する合成回路を筐体内に配置するために、合成回路を構成する導線やインピーダンス変換器を筐体内に配線する必要があった。このため、装置全体の大型化に繋がって上述の要請に反するものになったり、構造が複雑化して製造コストが増大したりするおそれがあった。これに対して、本発明の実施形態に係るアンテナ装置1は、インピーダンスの整合を行う給電回路6が、上述した通り板金部材によって一体に形成されている。このため、従来の合成回路のような配線が不要となり、省スペース化させつつ、放射器5と同軸コネクタ7(同軸ケーブル48)とのインピーダンスの整合が可能になる。すなわち、高インピーダンスの放射器5を採用した場合でも、装置の大型化を抑制しつつインピーダンスの整合が可能となる。従って、アンテナ出力の損失を抑制しつつ、簡易な構造によって装置の大型化を抑制可能なアンテナ装置1を提供することができる。
【0051】
また、本発明のアンテナ装置1は、上記実施形態に係る給電回路6を採用することで、従来のアンテナ装置に比べ、筐体2の寸法を小さくすることができる。具体的には、筐体2の高さ方向の寸法を従来のアンテナ装置の2/3以下(より詳細には、17/27以下)に小さくすることができる。すなわち、従来のアンテナ装置の筐体は、上下方向の両端間の寸法が135mmであったが、本発明のアンテナ装置1の筐体2は、上下方向の両端間の寸法を85mmとすることができた。これにより、本発明のアンテナ装置1は、従来のアンテナ装置に比べて風に対する抵抗が小さい形状となっている。
【0052】
また、上述の通り、給電回路6の、第1バラン部35aおよび第1導電部34a、34bからなる部分と、第2バラン部35bおよび第2導電部34c、34dからなる部分とが、幅方向(給電回路6の長手方向)に対称形状に形成された構成を採用することで、第1経路38、第2経路39、第3経路40、および第4経路41の長さがより近似したものとなる。すると、放射器5のインピーダンスと同軸コネクタ7(同軸ケーブル48)のインピーダンスとをより好適に整合することができる。
【0053】
また、上述の通り、位置決め部43が位置決め孔47に挿入されることで、給電回路6は前後方向、幅方向、および回転方向に位置決めされる。このため、前後方向に対して、第1バラン部35aおよび第2バラン部35bと反射器3の平面部15との間に、所定の間隔をあけた状態で、給電回路6を固定することが可能になる。これにより、複雑な構成を用いることなく、バラン部35と反射器3とが電気的に接続されないようにアンテナ装置1を組み立てることができ、アンテナ装置1の製造コストの増大を抑制可能となる。また、バラン部35(第1バラン部35aおよび第2バラン部35b)と平面部15との前後方向の隙間を3.0mm以上、かつ5.0mm以下とすることで、接地状態にある反射器3に対してバラン部35が電気的に接続されない状態で、反射器3とバラン部35との距離を近づけたものとなっており、アンテナ装置1を小型化することができる。
【0054】
以下、実施例により本発明の効果についてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0055】
本発明に係るアンテナ装置1について、アンテナ性能を試験により調査した。試験は、ネットワークアナライザを給電回路6の第2端子部37に接続し、周波数をテレビ放送に用いられる周波数帯である470MHzから710MHzの間で30MHzずつ増加させ、各周波数でのアンテナ性能を評価している。評価対象となるアンテナ性能は、利得[dB]、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)(電圧定在波比)、前後比[dB]、半値幅[deg]である。
【0056】
試験は、上述した給電回路6を備える本発明のアンテナ装置1(以下、単に「本発明」とも称する)と、比較例として従来のアンテナ装置(以下、単に「比較例」とも称する)とを用いて行う。比較例のアンテナ装置は、本実施形態に係るアンテナ装置1から給電回路6を取り外し、かつ第1放射器5aおよび第2放射器5bをインピーダンスが150Ωの放射器に置換えたものである。比較例のアンテナ装置1は、各放射器と伝送部33とを直接接続している。その結果を、
図8から
図11を用いて説明する。
図8から
図11のグラフでは、本発明の結果を●、比較例の結果を○として示している。
【0057】
図8は、本発明と比較例の利得を示すグラフである。
図8に示すように、470MHzから710MHzの全ての周波数において、本発明の利得は、比較例の利得よりも高くなっている。このため、本発明に係るアンテナ装置1は、比較例のアンテナ装置1に比べ、より微弱な電波を受信可能なものとなっている。
【0058】
図9は、本発明と比較例のVSWRの値を示すグラフである。ここで、一般に、VSWRの値が2以下であれば実用面で問題がないとされている。
図9に示すように、470MHzから710MHzの全ての周波数において、本発明のアンテナ装置1のVSWRの値は、2以下となっている。このため、本発明のアンテナ装置1は、実用面で問題がないものである。
【0059】
図10は、本発明と比較例の前後比を示すグラフである。
図10に示すように、周波数が470MHzから620MHzとなる区間では、本発明の前後比が比較例の前後比よりも高くなっている。特に周波数が590MHzの状態では、本発明の前後比は、比較例の前後比よりも11.84dB大きい。すなわち、テレビ放送の周波数帯(470MHzから710MHz)のうちの広範囲の周波数帯において、本発明は比較例よりも前後比が高いものとなっており、より好適にテレビ放送の電波を受信しやすいものとなっている。
【0060】
図11は、本発明と比較例の半値幅を示すグラフである。一般的に、半値幅が低い場合にはアンテナ装置1の指向性が高いことになる。アンテナ装置1の指向性が高い場合には、建造物等の壁面等に反射して通常の電波(発信源から直接放射器5に到達する電波)の進行方向と異なる方向で進行する電波(以下反射波と称する)を受信しにくくなる。反射波は通常の電波よりも遅延して放射器5に到達するため、アンテナ装置1の指向性が低く反射波を受信しやすい場合、反射波と通常の電波とのずれによって生じるマルチパス現象の発生につながるおそれがある。ここで、
図11に示すように、470MHzから710MHzの全ての周波数において、本発明の半値幅が比較例の半値幅よりも低い。このことから、本発明は比較例よりも指向性の高いものとなっていることが分かる。従って、本発明のアンテナ装置1を採用することで、マルチパス現象の発生を抑制することができる。
【0061】
以上の結果から、給電回路6を配置することで、比較的高インピーダンス(300Ω)の放射器5を採用した場合でも、アンテナ出力の損失(アンテナ性能の低下)を抑制可能であることが確認できた。これにより、アンテナ性能の低下を抑制しつつ、アンテナ装置1の小型化が可能であることが確認できた。
【0062】
また、上記実施形態の給電回路6について、第1放射器5a、第2放射器5bを同等の抵抗値を有する単なる抵抗器に置換えて、上記の周波数帯(470MHzから710MHz)でリターンロス[dB]を測定した。すると、470MHzでのリターンロスは-22.64dB、710MHzでのリターンロスは-23.7dBであった。また470MHzから710MHzの他の全ての周波数において、リターンロスは-20dB以下であった。一般的に、リターンロスが-20dB程度よりも小さい場合、アンテナ出力の損失が比較的小さなものと言える。従って、上記実施形態に係る給電回路6を採用することで、アンテナ出力の損失を抑制することができる。
【0063】
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態のアンテナ装置1はUHFの電波を受信するアンテナとしたが、UHF以外の種々の電波(例えば、AM、FM、VHF等の電波)を受信するアンテナに採用することができる。この場合、受信する周波数帯に合わせてアンテナサイズを変更する。
【0064】
また上記実施形態では、第1放射器5aおよび第2放射器5bをインピーダンスが300Ωのものとしたが、インピーダンスを150Ωとする放射器や、300Ω以上のものを採用してもよい。すなわち、上記実施形態の給電回路6は1:4のインピーダンス変換を可能としているが、1:2のインピーダンス変換や、さらに異なる比率の変換をするものとすることができる。この場合、第1伝送部33a、第2伝送部33b、第1導電部34a、34b、第2導電部34c、34d、第1バラン部35a、第2バラン部35bの幅を変更した種々の給電回路6を選択することで、変換の比率を調整可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 アンテナ装置
2 筐体
3 反射器
4 導波器
4a 第1導波器
4b 第2導波器
5 放射器
5a 第1放射器
5b 第2放射器
6 給電回路
7 同軸コネクタ
15 平面部
16a~16d 側壁部
33 伝送部
33a 第1伝送部
33b 第2伝送部
34 導電部
34a、34b 第1導電部
34c、34d 第2導電部
35 バラン部
35a 第1バラン部
35b 第2バラン部
37 第2端子部
44 第1端子部
47 位置決め孔
48 同軸ケーブル
【要約】
【課題】アンテナ出力の損失を抑制しつつ、簡易な構造によって装置の大型化を抑制可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】本発明のアンテナ装置は、所定の電波を反射する反射器と、導波器と、放射器と、筐体と、同軸コネクタと、を備えるアンテナ装置である。アンテナ装置は、筐体内部に収容された給電回路を備える。給電回路は、放射器に電気的に接続された導電部と、同軸コネクタに電気的に接続された伝送部と、導電部と伝送部との間で導電部および伝送部に電気的に接続されたバラン部と、を有し、放射器と同軸コネクタとの間でインピーダンスを整合する。導電部、伝送部、およびバラン部は、一体をなす板金部材である。
【選択図】
図4