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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】BIMシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230515BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230515BHJP
【FI】
G06F30/13
G06Q50/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021186589
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加治 裕子
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095926(JP,A)
【文献】特開2014-123233(JP,A)
【文献】特開2014-170315(JP,A)
【文献】特開2020-009214(JP,A)
【文献】特開2014-174618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置とデータベースとが通信可能に接続されたBIMシステムであって、
一の前記端末装置は、
他の前記端末装置から送信される作成条件に対応する複数のBIMパーツを含んだ建築物のBIMモデルの少なくとも一部を、当該BIMパーツを作成するためのパーツ情報を用いて作成するモデリング手段を備え、
他の前記端末装置は、
前記建築物のBIMモデルにおける前記建築物の躯体パーツを作成するための設計に必要な範囲が限定された作成条件を前記データベースに提供する作成条件提供手段を備え、
前記モデリング手段は、
前記作成条件提供手段によって送信されて前記データベースに記憶された設計に必要な範囲が限定された前記作成条件を取得し、
前記作成条件提供手段により前記作成条件が提供されるごとに、提供された前記作成条件に基づいて前記BIMモデルに含まれる前記躯体パーツを、変更点を更新して作成する、
ことを特徴とするBIMシステム。
【請求項2】
前記モデリング手段は、変更前後の前記建築物のBIMモデルの変更箇所を報知する、
ことを特徴とする請求項1に記載のBIMシステム。
【請求項3】
前記モデリング手段は、前記建築物のBIMモデルの変更箇所については、前記データベースに記憶された最新の前記作成条件に基づき前記建築物のBIMモデルを更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載のBIMシステム。
【請求項4】
前記複数の端末装置は、前記建築物のBIMモデルにおける前記建築物の躯体パーツを作成するための作成条件にかかる設計に必要な範囲を指定させるBIM連携手段をそれぞれ備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のBIMシステム。
【請求項5】
識別番号を付した改訂版の管理情報およびプロジェクトの進捗状況を示すステータス情報を、前記データベースに記憶させるBIM連携手段を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のBIMシステム。
【請求項6】
複数の端末装置とデータベースとが通信可能に接続されたBIMシステムにおいて実行される方法であって、
一の前記端末装置は、
他の前記端末装置から送信される作成条件に対応する複数のBIMパーツを含んだ建築物のBIMモデルの少なくとも一部を、当該BIMパーツを作成するためのパーツ情報を用いて作成するモデリングステップを含み、
他の前記端末装置は、
前記建築物のBIMモデルにおける前記建築物の躯体パーツを作成するための設計に必要な範囲が限定された作成条件を前記データベースに提供する作成条件提供ステップを含み、
前記モデリングステップは、
前記作成条件提供ステップによって送信されて前記データベースに記憶された設計に必要な範囲が限定された前記作成条件を取得し、
前記作成条件提供ステップにより前記作成条件が提供されるごとに、提供された前記作成条件に基づいて前記BIMモデルに含まれる前記躯体パーツを、変更点を更新して作成する、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、BIMシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築分野においては、BIM(Building Information Modeling)システムを利用することで、建築に関する作業やデータ管理の合理化や効率化を図ることが行われている。
【0003】
特許文献1には、設備機器の設計を進める際に、設計に関わる他部門間で同一情報を共有して不整合を解消することができるBIMシステムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、設備会社が、建築物に要求する躯体の形状や大きさを、変更パーツを用いて設計事務所/ゼネコンに伝えることができるBIMシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-10643号公報
【文献】特開2020-201604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、建築物に関する計画および設計段階においては、設備会社と設計事務所/ゼネコンとがレイアウト調整しながら設計を進めることになる。その際、設備会社毎および設計事務所/ゼネコン毎にBIMモデルを作成し、CADデータファイルそのものをデータ交換しながら設計を進めている。
【0007】
しかしながら、例えば設計事務所/ゼネコンが作成する建築物のBIMモデルはCADデータファイルのデータ容量が多く、データの授受が困難な場合がある。そのため、BIMモデル情報の共有方法が、BIMシステムにおける課題の一つとなっている。
【0008】
また、従来技術によれば、建築物に要求する躯体の形状や大きさの変更対応の際に、変更前と変更後との差分確認に手間を要してしまう、という課題がある。さらに、従来技術によれば、設備会社と設計事務所/ゼネコンとの間での進捗を確認することができない、という課題がある。さらにまた、従来技術によれば、設計事務所/ゼネコンにおいて、データの提供箇所を限定したいがデータの切取りに手間を要してしまう、という課題がある。
【0009】
加えて、従来技術によれば、例えば同じ「壁」であっても、各社独自のBIMパーツを用いたBIMモデルを作成している。そのため、データ管理や集計や図表現など、各社で運用ルールが異なることになる。したがって、従来技術によれば、BIMモデルを受領しても、そのまま利用することができず、自社のBIMパーツに置き換えることを行う必要がある、という課題がある。
【0010】
さらに、BIMに対応可能な建築系CADは各種存在するが、従来技術によれば、建築系CADが異なる場合には連携することができない、という課題がある。また、同じ建築系CADを用いている場合であってもバージョンが異なると、連携することができない、もしくは中間ファイルIFCなどにデータ変換する必要がある、という課題がある。さらに、従来技術によれば、同じ建築系CADを用いている場合であってもバージョンが異なると、データ変換した場合に属性情報が消えてしまうことがある、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のBIMシステムは、複数の端末装置とデータベースとが通信可能に接続されている。一の前記端末装置は、他の前記端末装置から送信される作成条件に対応する複数のBIMパーツを含んだ建築物のBIMモデルの少なくとも一部を、当該BIMパーツを作成するためのパーツ情報を用いて作成するモデリング手段を備える。他の前記端末装置は、前記建築物のBIMモデルにおける前記建築物の躯体パーツを作成するための設計に必要な範囲が限定された作成条件を前記データベースに提供する作成条件提供手段を備える。前記モデリング手段は、前記作成条件提供手段によって送信されて前記データベースに記憶された設計に必要な範囲が限定された前記作成条件を取得する。前記モデリング手段は、前記作成条件提供手段により前記作成条件が提供されるごとに、提供された前記作成条件に基づいて前記BIMモデルに含まれる前記躯体パーツを、変更点を更新して作成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係るBIMシステムのシステム構成の一例を示した例示的なシステム構成図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るBIMシステムの構成の一例を示した例示的なブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態のBIMモデルの具体例を示した例示的な分解斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態のBIMシステムにおいて実行される処理の具体例を示した例示的なフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係る設計事務所/ゼネコンから設備会社に対するデータの送付について示す図である。
図6図6は、第1の実施形態の統合BIMモデルの具体例を示す例示的な図である。
図7図7は、第1の実施形態のデータベースに格納される躯体パーツの作成条件を説明するための図である。
図8図8は、第1の実施形態のデータベースのBIMモデルデータベースに格納される躯体パーツを例示的に示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の進捗管理パネルの一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係るBIMシステムにおける建築物のBIMモデルの変更にかかるデータの流れを説明するための説明図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る躯体パーツを含むBIMモデルの具体例を示す例示的な図である。
図12図12は、第1の実施形態に係るBIM連携の流れの一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第1の実施形態に係る差分更新の様子を例示的に示す図である。
図14図14は、第1の実施形態に係るデータ変換の一例を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態に係るBIMシステムの構成を示した例示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係るBIMシステムおよび方法を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素および当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素およびその説明は、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称で特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によって説明され得る。
【0014】
BIM(Building Information Modeling)による設計方法では、各業者にて建物全体のデータである建築物の3次元モデル(すなわち、建築物のBIMモデル)を共有することができる。このため、各業者は、共通のデータ上でそれらの関連性および整合性を確認することができる。以下では、このBIMを使用したBIMシステムについて説明する。
【0015】
以下、実施形態の構成および処理について、第1の実施形態(機能分散型のBIMシステム)、第2の実施形態(サーバ(設備会社の端末装置)主導の機能分散型のBIMシステム)の順に、詳細に説明する。なお、以下では、原則として、単に「パーツ」と称する場合は建築物を構成する現実の構成部品を指し、「BIMパーツ」と称する場合はパーツに対応するBIMの仮想的な構成部品を指すものとする。しかしながら、説明の便宜上、「パーツ」が「BIMパーツ」を指す場合や、「BIMパーツ」が「パーツ」を指す場合もあるものとする。
【0016】
(第1の実施形態)
ここで、図1は第1の実施形態に係るBIMシステム1のシステム構成の一例を示した例示的なブロック図である。図1に示すように、BIMシステム1は、設備機器の一例である昇降機の3次元モデル(すなわち、昇降機のBIMパーツ)などの情報を提供可能な設備会社の端末装置200と、単数または複数のBIMアプリケーションなどが搭載された設計事務所/ゼネコンの端末装置100と、データベース700と、を備える。端末装置200は、設備会社の一例である昇降機メーカに設置され、端末装置100は、昇降機メーカの顧客の会社(設計事務所、ゼネコンなど)に設置される。なお、ここで言及する昇降機は、エレベータおよび乗客コンベアを含む概念であり、乗客コンベアは、エスカレータおよび動く歩道を含む。
【0017】
データベース700は、ネットワーク900を介して、端末装置200と端末装置100とに接続される。データベース700は、ネットワーク900上に設けられたクラウドに設けられる。なお、データベース700は、端末装置200と端末装置100との一方に設けられていてもよいし、端末装置200と端末装置100とは異なる装置に設けられていてもよい。データベース700は、各種情報(図2の例では、BIMモデルデータベース700a)を格納する。
【0018】
BIMモデルデータベース700aは、建築物のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段である。また、第1の実施形態におけるBIMモデルデータベース700aには、予め設計者により設計された建築物のBIMモデルの作成条件が格納されている。
【0019】
BIMモデルは、例えば、建物形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量や特性、部材強度、固有振動数、耐用年数、各種付属設備、各種配線配管などの構造情報を含む。構造情報は、建物用途、建物規模、躯体情報、階床数、階床名、階高、各階の使用用途、フロア人員、占有面積などから算出可能な昇降機の利用人数などの情報を含んでいても良いし、対象の建築物を構成する各構造ユニットに関する寸法、位置などを示す情報を含んでいても良い。ここで、BIMモデルを構成する各構造ユニットとしては、例えば、建築物に配置される部屋、壁、通路、非常階段、避難経路、ガス管、水道管、火災報知機、スプリンクラー、梁、防犯カメラ、安全対策品などが挙げられる。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係るBIMシステム1の構成の一例を示した例示的なブロック図である。なお、第1の実施形態において実現される各機能モジュールは、以下で例示する構成に限られず、同様の効果や機能を奏し得る範囲において、任意の単位で、論理的または物理的に分散または統合して構成され得る。また、第1の実施形態において実現される各機能モジュールは、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現されても良いし、ハードウェアのみによって実現されても良い。
【0021】
端末装置200は、出力部としての表示部214および音声出力部216と、入力部218と、制御部202と、記憶部206と、を少なくとも備える。なお、音声出力部216は、必須の構成要素ではなく、任意の構成要素としてよい。また、端末装置100は、出力部としての表示部114および音声出力部116と、入力部118と、制御部102と、記憶部106と、を少なくとも備える。
【0022】
まず、端末装置200の構成についてより具体的に説明する。
【0023】
端末装置200は、端末装置100から送信される作成条件に対応する建築物のBIMモデルに組込可能な昇降機のBIMパーツを、記憶部206に記憶されたパーツ情報を用いて作成する機能を有する。また、端末装置200は、作成されたBIMパーツを端末装置100へ送信するなどの機能を有する。
【0024】
端末装置200は、例えば、パーソナルコンピュータなどの一般的な情報処理装置などである。表示部214は、アプリケーションなどにより生成される表示画面を表示する表示手段(例えば、液晶または有機ELなどから構成されるディスプレイ、モニタ、および、タッチパネルなど)である。また、音声出力部216は、音声を出力する音声出力手段(例えば、スピーカなど)である。また、入力部218は、例えば、キー入力部、タッチパネル、コントロールパッド(例えば、タッチパッド、および、ゲームパッドなど)、マウス、キーボード、および、マイクなどである。これら表示部214、音声出力部216、および入力部218に対する入出力は、端末装置200の入出力制御インターフェース部208によって制御される。
【0025】
端末装置200は、通信制御インターフェース部204を介してネットワーク900に接続されており、端末装置100は、通信制御インターフェース部104を介してネットワーク900に接続されている。これにより、端末装置200と端末装置100とは、ネットワーク900経由で相互に通信可能に接続されている。なお、ここで行われる通信は、有線または無線による遠隔通信などを含む。
【0026】
端末装置200の制御部202は、各種の演算処理などを実行する制御手段である。また、端末装置200の通信制御インターフェース部204は、通信回線や電話回線などに接続されるアンテナやルータなどの通信装置に接続可能なインターフェースであり、端末装置200とネットワーク900との間で実行される通信の制御を行う機能を有する。すなわち、通信制御インターフェース部204は、ネットワーク900に接続された装置(図1の例では、端末装置100およびデータベース700)とデータ通信を行う機能を有する。
【0027】
また、端末装置200の記憶部206は、HDD(Hard Disk Drive)などの固定ディスク装置またはSSD(Solid State Drive)などのストレージ手段であり、データベースやテーブルなどの各種情報(図2の例では、パーツ情報データベース206a)を格納する。
【0028】
パーツ情報データベース206aは、建築物のBIMモデルに組込可能な昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段である。
【0029】
なお、ここで言及するパーツ情報は、利用者が建築物のBIMモデルに組み込む昇降機のBIMパーツを設計する上で必要となるあらゆる情報を含む。パーツ情報としては、例えば、用途、定員、積載量、動作速度、色、機種などといった昇降機の仕様や、昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース、寸法、各種付属設備、各種配線配管に関する情報が挙げられる。さらに、パーツ情報としては、例えば、昇降機を構成する機械部品や昇降機の周りに配置される鉄骨部品の、部材強度、価格、寸法、質量、色、素材、材料、固有振動数といった情報の他、納期、在庫状況、据付時間、仕上げ材、耐用年数、メーカ情報、品番型番などが挙げられるが、これら以外の情報も、パーツ情報に含まれ得る。
【0030】
より具体的に、第1の実施形態のパーツ情報は、例えば、端末装置100の制御部102によりBIMパーツをBIMモデルに組み込む際に参照されるBIMパーツのサイズ情報を含む。ここで、BIMパーツのサイズ情報は、BIMパーツを構成する各ユニット、構成部品のサイズ情報も含む。BIMパーツを構成する各ユニットとしては、例えば、昇降機がエレベータである場合には、昇降路、乗りかご、カウンタウェイト、メインロープ、巻上機、ガイドレール、乗り場ホール関連品、機械室、制御盤、電源設備、各種配線配管などが挙げられる。また、BIMパーツを構成する各ユニットとしては、例えば、昇降機がエスカレータである場合には、トラス、踏段、踏段チェーン、移動手摺、乗降板、欄干、駆動装置、機械室、制御盤、電源設備、各種配線配管などが挙げられる。
【0031】
また、パーツ情報は、例えば、端末装置100の制御部102によりBIMパーツが変更される際に用いられる設定パラメータを含む。ここで、設定パラメータは、BIMパーツを構成する各ユニットのサイズ、色、材質や、上記の各種配線配管などを規定するパラメータを含む。また、パーツ情報は、予め利用者により指定された点検対象物であることを示す情報も含む。
【0032】
ここで、BIMパーツは、典型的なBIMモデルと同様に、このBIMパーツ自体に対象の昇降機に関連するパーツ情報などの属性情報を含んでいる。属性情報は、例えば、巻上機の形式、巻上機のサイズ、昇降機に設定された乗員人数、昇降機の機種、昇降機メーカなどを含む。また、属性情報は、例えば、社外秘情報と、非社外秘情報とを含む。社外秘情報は、例えば、巻上機の形式、巻上機のサイズなどであり、非社外秘情報は、例えば、昇降機に設定された乗員人数、昇降機の機種、昇降機メーカなどである。社外秘の情報は、社内機密情報とも称される。なお、属性情報は、上記に限定されない。
【0033】
次に、端末装置200の制御部202についてより具体的に説明する。
【0034】
端末装置200の制御部202は、OS(Operating System)などの制御プログラムや、各種の処理手順などを規定したプログラム、所要データを格納するための内部メモリなどを有する。そして、制御部202は、これらのプログラムなどを用いて、各種の演算処理などを実行する。制御部202は、機能モジュールとして、作成条件受信部202aと、昇降機モデリング部202bと、情報送信部202cと、BIM連携部202dと、を備える。
【0035】
作成条件受信部202aは、端末装置100から送信される作成条件を端末装置100またはデータベース700から受信する作成条件受信手段である。ここで、作成条件は、利用者が所望する昇降機の仕様を示す条件である。つまり、作成条件は、建築物のBIMモデルに組込可能な昇降機のBIMパーツを作成するための条件を指定する。作成条件としては、例えば、機種、色、素材、希望の価格、納期、利用者の嗜好性などが挙げられる。作成条件は、基本的に客先仕様条件を満たした仕様を備えている。
【0036】
また、昇降機モデリング部202bは、作成条件受信部202aにより受信された作成条件に対応する昇降機のBIMパーツを、パーツ情報データベース206aに記憶されたパーツ情報を用いて作成するモデリング手段である。また、昇降機モデリング部202bは、昇降機の複数のBIMパーツをまとめて昇降機のBIMモデルを作成する。昇降機モデリング部202bは、例えば、エレベータに関する3次元のBIMパーツおよびBIMモデル(図3参照)を作成する。
【0037】
図3は、第1の実施形態のBIMモデルの具体例を示した例示的な分解斜視図である。図3には、複数のBIMパーツ301を含むBIMモデル300が示されている。図3の左側に、昇降路、乗りかご、ガイドレールなどのユニットから構成されるBIMパーツ301が例示される。図3の右側に、乗り場ホーム関連品の一例としての乗降口のドアユニットなどから構成されるBIMパーツ301が例示される。
【0038】
昇降機モデリング部202bは、例えば、作成条件受信部202aにより受信される作成条件としてのBIMモデル300の構造情報などに基づいて、建築物の概要、規模、設置位置、電源設備容量などから当該建築物に設置可能な昇降機のBIMパーツ301を単数または複数作成する。
【0039】
ここで、昇降機モデリング部202bは、作成条件が納期、価格、または嗜好性に関する情報を含む場合、当該情報に応じてBIMパーツ301を最適化して作成するようにしても良い。例えば、昇降機モデリング部202bは、利用者によって昇降機の設置に際し納期優先の選択がなされている場合には、設置可能な昇降機のBIMパーツ301のうち納期が早いものから順に自動で複数作成するようにしても良い。同様に、昇降機モデリング部202bは、利用者によって価格優先の選択がなされている場合には、設置可能な複数の昇降機のBIMパーツ301のうち価格が安いものから順に自動で複数作成するようにしても良い。昇降機モデリング部202bは、利用者によって利用者の嗜好性が設定されている場合には、設置可能な複数の昇降機のBIMパーツ301のうち嗜好性にあったものから順に自動で複数作成するようにしても良い。
【0040】
作成されるBIMパーツ301(BIMモデル300)は、基本的に客先仕様条件を満たした仕様を備える。なお、昇降機モデリング部202bは、作成した昇降機のBIMパーツ(BIMモデル300)を記憶部206に格納し、BIMパーツデータベースを構築しても良い。
【0041】
図2に戻り、情報送信部202cは、昇降機モデリング部202bにより作成された昇降機のBIMモデル300を端末装置100へ送信する送信手段である。ここで、情報送信部202cは、複数のBIMモデル300を含む計算結果を端末装置100へ送信しても良い。BIM連携部202dは、識別番号(リビジョン番号)を付した改訂版の管理情報およびプロジェクトの進捗状況を示すステータス情報を、データベース700に記憶させるBIM連携手段である。
【0042】
次に、端末装置100の構成についてより具体的に説明する。
【0043】
端末装置100は、設計事務所/ゼネコンが作成した建築物のBIMモデルの情報(作成条件)をデータベース700のBIMモデルデータベース700aに登録する機能を有する。
【0044】
端末装置100は、例えば、パーソナルコンピュータなどの一般的な情報処理装置や、スマートフォンなどの携帯端末装置などである。表示部114は、アプリケーションなどにより生成される表示画面を表示する表示手段(例えば、液晶または有機ELなどから構成されるディスプレイ、モニタ、および、タッチパネルなど)である。また、音声出力部116は、音声を出力する音声出力手段(例えば、スピーカなど)である。また、入力部118は、例えば、キー入力部、タッチパネル、コントロールパッド(例えば、タッチパッド、および、ゲームパッドなど)、マウス、キーボード、および、マイクなどである。これら表示部114、音声出力部116、および入力部118に対する入出力は、端末装置100の入出力制御インターフェース部108によって制御される。
【0045】
端末装置100の通信制御インターフェース部104は、通信回線や電話回線などに接続されるアンテナやルータなどの通信装置に接続可能なインターフェースであり、端末装置100とネットワーク900との間で実行される通信の制御を行う機能を有する。すなわち、通信制御インターフェース部104は、ネットワーク900に接続された装置(図1の例では、端末装置200およびデータベース700)とデータ通信を行う機能を有する。
【0046】
また、端末装置100の記憶部106は、HDDやSSDなどの大容量のストレージ手段、および/または、SRAM(Static Random Access Memory)などを用いて構成される小容量高速メモリ(例えば、キャッシュメモリ)などのストレージ手段である。記憶部106は、データベースやファイルやテーブルなどの各種情報を格納する。
【0047】
次に、端末装置100の制御部102についてより具体的に説明する。
【0048】
端末装置100の制御部102は、OSなどの制御プログラムや、各種の処理手順などを規定したプログラム、所要データを格納するための内部メモリなどを有する。そして、制御部102は、これらのプログラムなどを用いて、各種の演算処理などを実行する。
【0049】
ここで、第1の実施形態における端末装置100の制御部102は、機能モジュールとして、作成条件送信部102aと、表示制御部102cと、作成条件提供部102dと、BIM連携部102eと、を備える。
【0050】
作成条件送信部102aは、利用者により入力される作成条件を端末装置200またはデータベース700へ送信する作成条件送信手段である。前述したように、作成条件は、利用者が所望する昇降機の仕様と、客先要求の仕様と、を示す条件などである。つまり、利用者は、入力部118などを用いて作成条件を入力することで、建築物のBIMモデルに組込可能な昇降機のBIMパーツ301を作成するための条件を指定する。なお、作成条件は、予め作成条件が記憶された外部記憶装置から読み込まれたものであっても良い。
【0051】
端末装置100の表示制御部102cは、各種情報を表示部114に表示させる表示制御手段である。
【0052】
作成条件提供部102dは、建築物のBIMモデル400における建築物の躯体パーツを作成するための作成条件をデータベース700に提供する作成条件提供手段である。
【0053】
BIM連携部102eは、識別番号(リビジョン番号)を付した改訂版の管理情報およびプロジェクトの進捗状況を示すステータス情報を、データベース700に記憶させるBIM連携手段である。
【0054】
次に、第1の実施形態のBIMシステム1の動作について説明する。図4は、第1の実施形態のBIMシステム1において実行される処理の具体例を示した例示的なフローチャートである。
【0055】
図4に示すように、第1の実施形態では、まず、端末装置100の作成条件提供手段としての作成条件提供部102dが、建築物のBIMモデル400の躯体パーツを作成するためのBIMパーツの作成条件を、BIMモデルデータベース700aを介して、端末装置200に送信する(ステップS1)。そして、端末装置200は、ステップS1で端末装置100により送信された作成条件を、BIMモデルデータベース700aを介して、受信する(ステップS2)。
【0056】
端末装置200の昇降機モデリング部202bは、パーツ情報データベース206aに記憶されたパーツ情報を用いて、ステップS2で受信された作成条件に対応するBIMパーツを含む昇降機のBIMモデル300を作成する(ステップS3)。
【0057】
図5は、設計事務所/ゼネコンから設備会社に対するデータの送付について示す図である。図5に示すように、従来は、設備会社は、設計事務所/ゼネコンからCADデータファイルそのものを受領していた。そのため、CADデータファイルは容量が多く不要なデータが多いため、設備会社においては必要な箇所を切り取る必要があった。一方、本実施形態においては、設計事務所/ゼネコンは、設備会社が設計に必要な範囲を限定し、設備会社にデータ送付するようにしたものである。すなわち、パーツ情報データベース206aに記憶されたパーツ情報は、設計事務所/ゼネコンが「設備会社が設計に必要な範囲」を限定した情報を送付したものである。例えば、設備会社が昇降機メーカの場合、少なくとも躯体情報(昇降路壁と昇降路内の建屋梁)が含まれる。これにより、設備会社においては、モデリングの際に、大容量のCADデータファイルを切り取る手間がなくなる。
【0058】
また、端末装置200の昇降機モデリング部202bは、ステップS2で受信された作成条件に応じて作成した建築物のBIMモデル400に対して、昇降機のBIMモデル300を組み込み、統合BIMモデル500を作成する(ステップS4)。そして、端末装置100は、ステップS6で作成された統合BIMモデル500を表示部114に表示する(ステップS5)。
【0059】
図6は、第1の実施形態の統合BIMモデルの具体例を示す例示的な図である。図6に示される統合BIMモデル500は、建築物のBIMモデル400に、図3に例示されたような昇降機のBIMモデル300が組み込まれており、昇降機のBIMモデル300に対応するエレベータが設置された昇降機組込建築物の完成像(3次元像)を示している。
【0060】
ここで、上記の処理は繰り返し行われうる。すなわち、作成条件が変更されるごとに上記の処理が行われる。このとき、端末装置200の昇降機モデリング部202bは、端末装置100から作成条件が送信されるごとに、作成条件に基づいてBIMモデルに含まれる躯体パーツを、変更点を更新して作成する。
【0061】
ところで、建築物に関する計画および設計段階においては、設備会社と設計事務所/ゼネコンがレイアウト調整しながら設計を進めることになる。その際、例えば、設計事務所/ゼネコンは、上述した建築物のBIMモデル400を作成し、建築物のBIMモデル400としてのCADデータファイルそのものをデータ交換しながら設計を進めている。
【0062】
ところが、上述した建築物のBIMモデル400はCADデータファイルのデータ容量が多く、データの授受が困難な場合がある。そのため、BIMモデル情報の共有方法が、BIMシステムにおける課題の一つとなっている。
【0063】
そこで、本実施形態においては、設計開始時において、建築物のBIMモデル400の情報(要素ID、位置情報、プロパティ情報(カテゴリ、属性)など)をCADのネイティブデータから取得してデータベース700においてデータベース化することを可能にしたものである。これにより、CADデータファイルを受領することなく、設備会社は建物をモデリングすることができる。
【0064】
また、本実施形態においては、設計変更時において、データベース700の変更前/変更後を比較して差分を明確化することで、設備会社の昇降機のBIMモデル300に対して変更箇所のみの情報を反映することを可能としたものである。
【0065】
以下において、CADデータをデータファイル形式ではなくデータベース化し、変更点のみ更新する手法について詳述する。
【0066】
ここで、図7は第1の実施形態のデータベース700に格納される躯体パーツの作成条件を説明するための図である。図7に示すように、データベース700に格納されるBIMパーツである躯体パーツの作成条件は、要素ID、位置情報、プロパティ情報(カテゴリ、属性)などである。
【0067】
データベース700は、設計事務所/ゼネコンで作成される建築物のBIMモデル400に関し、拡張子を持つCADデータではなく、拡張子を持たないデータベースとして蓄積可能な領域を備える。
【0068】
図8は、第1の実施形態のデータベース700のBIMモデルデータベース700aに格納される躯体パーツを例示的に示す図である。図8に示すように、データベース700のBIMモデルデータベース700aは、物件IDである案件番号ごとに、設備会社の昇降機のBIMモデル300にかかる躯体パーツの要素IDと、設計事務所/ゼネコンの建築物のBIMモデル400にかかる躯体パーツの要素IDと、を関連付けて記憶する。
【0069】
ところで、本実施形態においては、BIMシステム1の端末装置200および端末装置100にそれぞれインストールされたプログラムによって、設備会社と設計事務所/ゼネコンとがレイアウト調整しながら設計を進めることになる。BIMシステム1の端末装置200および端末装置100にそれぞれインストールされたプログラムは、BIM連携部102eおよびBIM連携部202dとして、端末装置100および端末装置200に対して進捗管理パネルP(図9参照)をそれぞれ表示させる。
【0070】
図9は、第1の実施形態の進捗管理パネルPの一例を示す図である。進捗管理パネルPは、設計事務所/ゼネコンと設備会社とが、建物の計画および設計をレイアウト調整しながら進める際に用いるBIM連携ツールとして機能する。
【0071】
図9に示すように、進捗管理パネルPは、データベース接続部P1、Rev管理部P2、ワークフロー管理部P3、BIM連携エリア設定ボタンP4、躯体情報アップロードボタンP5、不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツの自動配置ボタンP6などを含む。
【0072】
データベース接続部P1は、物件IDである案件番号を入力することで、データベース700に記憶された案件番号に関連する各種情報(要素ID、位置情報、プロパティ情報(カテゴリ、属性)など)にアクセス可能とする。
【0073】
Rev管理部P2は、各種の管理情報をデータベース700に記憶させることでプロジェクトの進捗管理などを行う。ここで、各種の管理情報は、進捗状況が分かるステータス情報やRev管理情報などである。Rev管理情報は、作成条件が変更されるたびに作成されるBIMモデル300について、識別番号(リビジョン番号)を付して改訂版の管理を行う。このように、進捗管理パネルPでRev管理および進捗管理することで、処理の後戻りを無くすことができる。
【0074】
ワークフロー管理部P3は、図9に示すような(1)BIM連携開始、(2)納まり検討、(3)BIMモデル更新、(4)課題調整の各ステップで調整してRevUPを繰り返し、(5)BIMモデル更新のステップでBIMモデルに合意する。これにより、進捗管理パネルPでモデル承認を行い、合意後のBIMモデルは上書きされないような仕組みを提供することができる。
【0075】
BIM連携エリア設定ボタンP4は、BIM連携可能なエリアを設定するボタンである。例えば、BIM連携手段として機能する進捗管理パネルPは、設計事務所/ゼネコン側がBIM連携エリア設定ボタンP4を操作することで、設備会社が必要な範囲を指定させることができる。これにより、設計事務所/ゼネコンは、データの提供箇所を限定することができる。
【0076】
躯体情報アップロードボタンP5は、躯体情報である躯体パーツをアップロードするボタンである。不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツの自動配置ボタンP6は、後述する不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツの自動配置を行うボタンである。
【0077】
ここで、BIMシステム1における建築物のBIMモデル400の変更にかかるデータの流れを説明する。図10は、第1の実施形態に係るBIMシステム1における建築物のBIMモデル400の変更にかかるデータの流れを説明するための説明図である。
【0078】
図10に示される例では、端末装置100の作成条件提供手段としての作成条件提供部102dが、建築物のBIMモデル400の躯体パーツを作成するための作成条件をデータベース700に送信する。ここで、建築物のBIMモデル400の躯体パーツを作成するための作成条件は、要素ID、位置情報、プロパティ情報(カテゴリ、属性)などである。
【0079】
ここで、データベース700に格納される躯体パーツは、端末装置100において、操作者が入力部118を操作して選択する。そして、端末装置100の作成条件提供部102dは、選択された躯体パーツの作成条件を、BIMモデルデータベース700aから得る(抽出する)。このとき、躯体パーツの作成条件をデータベース700に送信した旨の情報が、端末装置100から端末装置200に送信される。
【0080】
端末装置200が作成条件を送信した旨の情報を受信すると、端末装置200の昇降機モデリング部202bは、データベース700に格納された躯体パーツの作成条件に基づいて、躯体パーツ400aを作成する。
【0081】
すなわち、端末装置100の作成条件提供部102dは、データベース700を介して、建築物のBIMモデル400の躯体パーツを作成するための作成条件を、端末装置200に提供する。
【0082】
また、作成条件提供部102dは、一度選択された躯体パーツの形状が変更された場合には、変更後の躯体パーツの作成条件を、データベース700を介して端末装置200に提供する。
【0083】
このとき、躯体パーツの作成条件が新たにデータベース700に送信した旨の情報が、端末装置100から端末装置200に送信される。
【0084】
端末装置200が新たな作成条件をデータベース700に送信した旨の情報を受信すると、端末装置200の昇降機モデリング部202bが、データベース700に格納された躯体パーツの作成条件に基づいて、躯体パーツ400aを作成(更新)する。
【0085】
すなわち、昇降機モデリング部202bは、作成条件提供部102dにより作成条件が提供されるごとに、提供に送付された作成条件に基づいて躯体パーツ400aを作成(更新)する。この場合、新たな躯体パーツ400aを用いて作成されるBIMモデルは、新たな識別番号(リビジョン番号)が付されて管理される。
【0086】
ここで、図11は第1の実施形態に係る躯体パーツを含むBIMモデルの具体例を示す例示的な図である。図11に示すように、端末装置200の昇降機モデリング部202bは、BIMモデル300に、建築物のBIMモデル400の一部であって当該一部を変更した躯体パーツ400aである変更パーツ600を含ませることができる。図11では、建築物のBIMモデル400の一部として梁パーツの変更パーツ600が示されている。変更パーツ600の元データとしての梁パーツは、例えば、操作者による入力部218の操作によって入力された情報に基づいて昇降機モデリング部202bが作成する。また、変更パーツ600は、例えば、操作者による入力部218の操作によって変更された梁パーツの情報に基づいて昇降機モデリング部202bが作成する。すなわち、昇降機モデリング部202bは、建築物のBIMモデル400の一部を作成する。
【0087】
なお、昇降機モデリング部202bは、建築物のBIMモデル400の全部を作成可能な情報が入力された場合には、建築物のBIMモデル400の全部を作成する。すなわち、昇降機モデリング部202bは、建築物のBIMモデル400の少なくとも一部を作成する。
【0088】
次に、設計事務所/ゼネコンと設備会社との間におけるBIM連携の一例について説明する。
【0089】
ここで、図12は第1の実施形態に係るBIM連携の流れの一例を示すフローチャートである。図12に示す例は、設計事務所/ゼネコンが作成した躯体位置では有効寸法がとれていないことから、設備会社側が梁の位置移動を要求し、その後、設計事務所/ゼネコン側で部屋のレイアウト変更が発生した例である。
【0090】
図12に示すように、まず、設備会社が、端末装置200によりBIM連携にかかる物件IDである案件番号を設計事務所/ゼネコンへ連絡する(ステップS11)。連絡を受け取った設計事務所/ゼネコンにおいては、端末装置100に表示されたBIM連携手段として機能する進捗管理パネルPが、BIM連携エリア設定ボタンP4で設備会社に対して必要な範囲を指定し、情報(建築物のBIMモデル400の躯体パーツを作成するための作成条件)をデータベース700にアップロードする(ステップS12)。
【0091】
次に、設備会社においては、データベース700にアップロードされた情報(建築物のBIMモデル400の躯体パーツを作成するための作成条件)をもとに、端末装置200が、設備会社が必要な躯体周りの建築物のBIMモデル400を再現する(ステップS13)。
【0092】
次に、設備会社においては、端末装置200が、昇降機およびドアの配置、昇降機およびドアの設置に必要なゼネコンへ要求する必要鉄骨部材の配置を行う(ステップS14)。これにより、データ容量が多く授受が困難な建築物のBIMモデル400のネイティブファイルを受領せず建築物のBIMモデル400をデータ化することで、昇降機のBIMモデル300を生成することができる。また、建築物のBIMモデル400をネイティブファイルではなく、データベース化することで、生成する昇降機のBIMモデル300は設備会社のルールに基づいたファミリ形式で作成が可能である。なお、建築物のBIMモデル400をネイティブファイルではなく、データベース化することで、異なるCADの場合も連携可能とすることが可能となる。
【0093】
ここで、設備会社は、昇降機などが有効寸法に干渉していることを発見する(ステップS15)。設備会社においては、端末装置200が、梁を要求位置に移動させ(ステップS16)、設計事務所/ゼネコンへ梁の位置移動を要求する不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツを作成する(ステップS17)。
【0094】
次いで、設計事務所/ゼネコンにおいては、端末装置100に表示された進捗管理パネルPが、不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツの自動配置ボタンP6を操作されたことで不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツを取り込み、配置する(ステップS18)。次いで、設計事務所/ゼネコンにおいては、端末装置100が、不要な属性情報が削除された設備会社のBIMパーツの結果を受け、梁位置を変更する(ステップS19)。
【0095】
加えて、昇降路の隣の部屋の壁位置が変更になったため、設計事務所/ゼネコンは、設備会社に対する最新の壁位置の送付が必要となる(ステップS20)。そこで、設計事務所/ゼネコンにおいては、端末装置100に表示された進捗管理パネルPが、躯体情報アップロードボタンP5を操作されたことで下記の躯体の最新情報をデータベース700にアップロードする(ステップS21)。
・移動後の梁位置
・最新の壁位置
【0096】
次いで、設備会社においては、端末装置200が、データベース700から躯体の最新情報の取り込みを行う(ステップS22)。
【0097】
ここで、図13は第1の実施形態に係る差分更新の様子を例示的に示す図である。図13に示すように、躯体の最新情報の取り込みの実行後、昇降機モデリング部202bは、躯体の最新情報に基づいて躯体パーツ400aを作成(更新)し、設計事務所/ゼネコンが送付してきた躯体の最新情報を反映する。また、図13に示すように、昇降機モデリング部202bは、躯体の最新情報に併せて、変更箇所の一覧を表示する。図13に示す例では、「1FLの壁の位置が変更になりました。(変更後X:300、Y:300、Z:100)」と、変更箇所および変更位置が記載される。これにより、変更前後のBIMモデルにおける変更箇所を報知するので、変更箇所を探す手間を軽減することができる。なお、変更点がある躯体パーツにおいて要素の色を変更する共有パラメータを変更することで、特定のビューでBIMモデルを表示した際に色を変えるようにしてもよい。
【0098】
その後、設備会社は、位置変更の結果を踏まえ、端末装置200により、仕様変更や位置調整などを行う(ステップS23)。
【0099】
なお、設計事務所/ゼネコンから受領したデータが上手く読み取れず不足している場合、設備会社は、端末装置200を介して不足情報をデータベース700に書込むことで、その不足内容については設備会社側で追加した情報を最新情報とする仕組み(後勝ち)を設けることができる。これにより、データの不足がない運用を可能とする。
【0100】
また、設備会社側で追加・変更した建築情報がNGだった場合、変更点を管理しておくことにより、元に戻した場合、データベース700を変更前の状態に戻すとともに、設備会社側も元に戻す仕組みとするようにしてもよい。
【0101】
このように、第1の実施形態のBIMシステム1によれば、データ容量が多いBIMモデルの授受を不要とすることができるとともに、変更前後のBIMモデルの変更箇所を探す手間を軽減することができる。
【0102】
ここで、図14はデータ変換の一例を示す図である。図14に示すように、第1の実施形態のBIMシステム1によれば、CADデータファイルそのものをデータ交換せずに、属性情報の変換ルールを予め用意することで、自社のBIMパーツに置き換え可能とする。データベース700のBIMモデルデータベース700aには、変換ルールで変換された形式でBIMパーツが保存される。これにより、会社ごとに属性情報の命名が異なる場合であっても同じパラメータで値を設定できるので、連携することが可能となる。さらに、第1の実施形態のBIMシステム1によれば、CADデータファイルそのものをデータ交換せずに属性情報のみを連携することになるので、異なるCADも連携可能となる。
【0103】
また、第1の実施形態のBIMシステム1によれば、建築物のBIMモデルに変更が発生した際、変更箇所については最新のデータベース700に基づきBIMモデルの作成条件を更新し、モデリングの手間を軽減することができる。
【0104】
また、第1の実施形態のBIMシステム1によれば、設計事務所/ゼネコンはデータの提供箇所を限定することができる。
【0105】
また、第1の実施形態のBIMシステム1によれば、進捗管理パネルPでリビジョン管理を行うと同時に進捗管理することで、処理の後戻りを無くすことができる。
【0106】
なお、第1の実施形態のBIMシステム1においては、計画および設計段階について説明したが、計画および設計段階のみではなく、施工後、維持管理、リニューアル時においても、設備会社と設計事務所/ゼネコンが同じデータベース700を共有することができる。
【0107】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態(サーバ(設備会社の端末装置)主導の機能分散型のBIMシステム)について説明する。この第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、統合BIMモデルの作成などが、第1の実施形態の端末装置200に対応する端末装置1200側で行われる。以下では、第1の実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する。
【0108】
図15は、第2の実施形態に係るBIMシステム1の構成を示した例示的なブロック図である。図15に示すように、第2の実施形態のBIMシステム1は、第1の実施形態の端末装置100に対応する端末装置1100と、第1の実施形態の端末装置200に対応する端末装置1200と、を備える。端末装置1100と端末装置1200とデータベース700とは、ネットワーク900を介して通信可能に接続されている。
【0109】
端末装置1100は、制御部1102と、記憶部1106と、を少なくとも備える。また、端末装置1200は、制御部1202と、記憶部1206と、を少なくとも備える。
【0110】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、第1の実施形態の作成条件提供部102dに対応する作成条件提供部1202eが、端末装置1200に設けられている。
【0111】
以上の構成の第2の実施形態のBIMシステム1においても、第1の実施形態のBIMシステム1と同様に、データ容量が多いBIMモデルの授受を不要とすることができるとともに、変更前後のBIMモデルの変更箇所を探す手間を軽減することができる。
【0112】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均などの範囲に含まれる。
【0113】
例えば、上述した実施形態は、設備機器として昇降機であるエレベータの例について説明したが、エスカレータ、動く歩道などの乗客コンベアについても同様に適用できる。
【0114】
また、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0115】
このほか、上述の説明で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件などのパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0116】
また、上述した実施形態の各装置に関して、図に例示した各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0117】
例えば、実施形態の各装置が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、後述するような記録媒体に記録されており、必要に応じてCPUにより機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDDなどの記憶部には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0118】
上記のコンピュータプログラムは、設計事務所/ゼネコンの端末装置、設備会社の端末装置、およびBIM装置に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0119】
また、上記のコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されてもよく、また、コンピュータプログラムプロダクトとして構成することもできる。ここで、記録媒体とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray(登録商標) Discなどといった、任意の可搬用の物理媒体を含むものとする。
【0120】
ここで、コンピュータプログラムとは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコードなどの形式を問わない。ここでいうコンピュータプログラムは、必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態の各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順などについては、周知の構成や手順を用いることができる。
【0121】
上述した実施形態の記憶部に格納される各種のデータベースは、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイルなどを格納可能な、RAM、ROMなどのメモリ装置、ハードディスクなどの固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスクなどのストレージ手段であってもよい。
【0122】
また、実施形態の各装置は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーションなどの情報処理装置として構成してもよく、また、当該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、実施形態の各装置は、上記の情報処理装置に、対応する実施形態の方法を実現させるソフトウェア(コンピュータプログラムやデータなどを含む)を実装することにより実現してもよい。
【0123】
さらに、実施形態の各機能の分散・統合の具体的形態は、図で例示したものに限られず、その全部または一部を、各種の付加などに応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態は、任意に組み合わせて実施することも可能であるし、選択的に実施することも可能である。
【符号の説明】
【0124】
1…BIMシステム、100,1100…端末装置、102,1102…制御部、102c…表示制御部(表示制御手段)、102d…作成条件提供部(作成条件提供手段)、102e…BIM連携部(BIM連携手段)、106…記憶部、114…表示部、200…端末装置、202…制御部、202b…昇降機モデリング部(モデリング手段)、202c…情報送信部(送信手段)、202d…BIM連携部(BIM連携手段)、206…記憶部、206a…パーツ情報データベース(パーツ情報記憶手段)、700…データベース、700a…BIMモデルデータベース(BIMモデル記憶手段)、1202b…昇降機モデリング部(モデリング手段)、1202d…表示制御部(表示制御手段)、1202e…作成条件提供部(作成条件提供手段)、1202f…BIM連携部(BIM連携手段)。
【要約】
【課題】データ容量が多いBIMモデルの授受を不要とすることができるとともに、変更前後のBIMモデルの変更箇所を探す手間を軽減する。
【解決手段】BIMシステムは、複数の端末装置とデータベースとが通信可能に接続されている。一の端末装置は、他の端末装置から送信される作成条件に対応する複数のBIMパーツを含んだ建築物のBIMモデルの少なくとも一部を、当該BIMパーツを作成するためのパーツ情報を用いて作成するモデリング手段を備える。他の端末装置は、建築物のBIMモデルにおける建築物の躯体パーツを作成するための作成条件をデータベースに提供する作成条件提供手段を備える。モデリング手段は、データベースに記憶された作成条件を取得する。モデリング手段は、作成条件提供手段により作成条件が提供されるごとに、提供された作成条件に基づいてBIMモデルに含まれる躯体パーツを、変更点を更新して作成する。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15