(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】直流電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20230515BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01H33/59 Z
H02J1/00 301D
(21)【出願番号】P 2021514669
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2019016130
(87)【国際公開番号】W WO2020213027
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-07-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代洋上直流送電システム開発事業システム開発/要素技術開発委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】松本 寿彰
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195565(JP,A)
【文献】特開2017-004869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端側に存在する第1交直変換器によって変換された直流電力、又は前記第1端とは異なる第2端側に存在する第2交直変換器によって変換された直流電力が供給される直流系統の電流を遮断する直流電流遮断装置であり、
第1直流母線と、
第2直流母線と、
一以上の第1直流電流遮断器と、
一以上の第2直流電流遮断器と、
一以上の断路器とを備え、
前記第1直流電流遮断器と、前記断路器と、前記第2直流電流遮断器とは、前記第1直流母線と、前記第2直流母線との間に、前記第1直流電流遮断器と、前記断路器と、前記第2直流電流遮断器の順によって直列に接続され、
前記第1交直変換器の直流電力出力端は、前記第1直流電流遮断器と、前記断路器との接続点に接続され、
前記第2交直変換器の直流電力出力端は、前記第2直流電流遮断器と、前記断路器との接続点に接続される、
直流電流遮断装置。
【請求項2】
前記第1直流電流遮断器と、前記断路器との接続点と、前記断路器との間、又は前記第2直流電流遮断器と、前記断路器との接続点と、前記断路器との間に、直流電流遮断器が直列に更に接続される、
請求項1に記載の直流電流遮断装置。
【請求項3】
前記第1直流母線と、前記第1直流電流遮断器との間、又は前記第2直流母線と、前記第2直流電流遮断器との間に、断路器が直列に更に接続される、
請求項1又は請求項2に記載の直流電流遮断装置。
【請求項4】
前記直流系統の電流を遮断しない場合において、
前記第1直流電流遮断器、及び前記第2直流電流遮断器は、閉状態に制御され、
前記断路器は、開状態に制御され、
前記直流系統の電流を遮断する場合において、
前記第1直流電流遮断器と、前記第2直流電流遮断器とのうち、事故が発生している前記直流系統に電気的に近い位置に接続される直流電流遮断器が開状態に制御される、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項5】
前記第1直流電流遮断器と、前記第2直流電流遮断器とのうち、点検対象の直流電流遮
断器の点検時において、
前記点検対象の直流電流遮断器に係る前記断路器は、閉状態に制御され、
前記点検対象の直流電流遮断器は、前記断路器が閉状態に制御された後、開状態に制御される、
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項6】
前記第1直流電流遮断器、又は前記第2直流電流遮断器は、多端子型直流電流遮断器であり、
半導体遮断器と、前記多端子型直流電流遮断器が遮断する直流系統毎の構成要素とを備え、
前記構成要素には、
一以上の電流遮断器と、転流回路と、ダイオードと、一以上の第1断路器と、一以上の第2断路器とが含まれ、
前記第1断路器は、前記第1直流母線、又は前記第2直流母線に第1端が接続され、
前記第2断路器は、前記断路器に第2端が接続され、
前記電流遮断器は、前記第1断路器の第2端と、前記第2断路器の第1端とを接続する第1線路に設けられ、
前記第1線路において、前記第1断路器と、前記電流遮断器と、前記第2断路器の順によって直列に接続されて前記断路器と直列に接続され、
前記転流回路は、前記第1線路における前記第1断路器と前記電流遮断器との間の箇所から分岐して前記第2断路器の第1端に接続される第2線路に設けられ、
前記半導体遮断器および前記ダイオードは、前記第1断路器の第1端側と、前記第2線路における前記転流回路と前記第2断路器との間の箇所とを接続する第3線路に直列に設けられる、
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項7】
前記直流系統の電流を遮断する場合において、遮断対象の前記直流系統に対応する前記転流回路を動作させ、前記半導体遮断器に電流を遷移させ、前記電流が遷移された後、前記転流回路を停止させ、前記半導体遮断器によって前記直流系統の電流が遮断された後に、遮断対象の前記直流系統に対応する前記電流遮断器を開状態に制御する制御部を更に備える、
請求項6に記載の直流電流遮断装置。
【請求項8】
前記直流系統の電流を遮断しない場合において、
前記電流遮断器は、閉状態に制御され、
前記第1断路器、及び前記第2断路器は、閉状態に制御される、
請求項6又は請求項7に記載の直流電流遮断装置。
【請求項9】
前記第1直流電流遮断器と、前記第2直流電流遮断器とのうち、点検対象の直流電流遮断器の点検時において、
前記点検対象の前記電流遮断器に係る前記断路器は、閉状態に制御され、
前記点検対象の前記電流遮断器と、前記点検対象の前記電流遮断器に係る前記第1断路器と、前記第2断路器とは、前記断路器が閉状態に制御された後、開状態に制御される、
請求項6から請求項8のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流送電システムの検討、及び導入が進められている。直流送電システムは、従来の交流送電システムに比べ、長距離大電力送電に適用した場合に低コストで設置可能であり、送電損失が少ない高効率システムを構築することが可能である。一方、直流送電システムは、系統事故の発生した箇所を遮断や隔離することが難しいという課題がある。これを解決するため、様々な直流電流遮断装置が検討されている。
【0003】
しかしながら、従来の技術における直流送電遮断装置では、直流電流遮断器の点検時に、交直変換器を停止する必要があった。交直変換器が停止されると、直流送電システムによる送電、及び受電が停止されるため、需要家への電力供給が断たれたり、エネルギーの有効活用の機会を逸したりしてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
本発明は、送電を継続したまま保守点検をすることができる直流送電遮断装置を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、送電を継続したまま保守点検をすることができる直流電流遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の直流電流遮断装置は、第1端側に存在する第1交直変換器によって変換された直流電力、又は前記第1端とは異なる第2端側に存在する第2交直変換器によって変換された直流電力が供給される直流系統の電流を遮断する直流電流遮断装置であり、第1直流母線と、第2直流母線と、一以上の第1直流電流遮断器と、一以上の第2直流電流遮断器と、一以上の断路器とを持つ。前記第1直流電流遮断器と、前記断路器と、前記第2直流電流遮断器とは、前記第1直流母線と、前記第2直流母線との間に、前記第1直流電流遮断器と、前記断路器と、前記第2直流電流遮断器の順によって直列に接続される。前記第1交直変換器の直流電力出力端は、前記第1直流電流遮断器と、前記断路器との接続点に接続される。前記第2交直変換器の直流電力出力端は、前記第2直流電流遮断器と、前記断路器との接続点に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の直流電流遮断装置10の構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る直流電流遮断装置10が遮断状態である場合の構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る直流電流遮断装置10が、点検状態である場合の構成の一例を示す図である。
【
図4】直流電流遮断装置10の他の構成の一部分を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る直流電流遮断装置10aの構成の一例を示す図である。
【
図6】第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。
【
図7】転流回路80bの構成の一例を示す図である。
【
図8】半導体遮断器90bの構成の一例を示す図である。
【
図9】遮断状態の第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。
【
図10】スイッチング素子がオンの状態に制御された転流回路80bの動作を模式的に示す図である。
【
図11】第2状態の第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。
【
図12】閉状態に制御された半導体遮断器90bの動作の一例を模式的に示す図である。
【
図13】第3状態の第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。
【
図14】転流回路80bの他の構成の一例を示す図である。
【
図15】2回線送電以外の場面における直流電流遮断装置10aの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
[直流電流遮断装置10の構成]
図1は、第1の実施形態の直流電流遮断装置10の構成の一例を示す図である。本図は単結図で記載しており、以降も基本的に単結図で示す。本実施形態において、交直変換器CV1の直流端子CN1と、直流電流遮断装置10とが接続され、直流電流遮断装置10と、交直変換器CV2とが、直流送電線路LN1、及び直流送電線路LN2によって接続され、直流電流遮断装置10と、交直変換器CV3とが、直流送電線路LN3と、直流送電線路LN4とによって接続される。直流送電線路LNによって供給される直流電力は、例えば、数十~数百[kV]程度の電圧の電力である。以降の説明において、直流送電線路LN1~LN4を互いに区別しない場合には、直流送電線路LNとも記載し、交直変換器CV1~CV3を互いに区別しない場合には、交直変換器CVとも記載する。
【0011】
直流電流遮断装置10は、交直変換器CVを接続する直流送電線路LNを電気的に導通させ、又は遮断する装置であり、直流送電線路LNを電気的に導通させつつ、直流電流遮断装置10が備える直流電流遮断器を点検可能にする装置である。
【0012】
以下、直流電流遮断装置10が、交直変換器CV1に電気的に近く、交直変換器CV2、及び交直変換器CV3から電気的に遠い位置(つまり、直流送電線路LNの交直変換器CV1側の端部)に設置されるものとして説明する。また、以降の説明において、直流電流遮断装置10の構成のうち、交直変換器CV1に電気的に近い構成には、「a」を付し、直流送電線路LNに電気的に近い構成には、「b」を付す。
【0013】
なお、直流電流遮断装置10が、交直変換器CV2や交直変換器CV3に電気的に近く、交直変換器CV1から電気的に遠い位置(つまり、直流送電線路LNの交直変換器CV2や交直変換器CV3側の端部)に設置される場合には、交直変換器CV1と、交直変換器CV2、或いは交直変換器CV3とを読み替え、且つ末尾に付された符号の「a」と「b」とを読み替えればよい。
【0014】
直流電流遮断装置10は、例えば、第1直流母線20aと、第2直流母線20bと、一以上の第1直流電流遮断器30a(図示する第1直流電流遮断器30a-1~30a-3)と、第1直流電流遮断器30aに応じた数の第2直流電流遮断器30b(図示する第2直流電流遮断器30b-1~30b-3)と、第1直流電流遮断器30aに応じた数の断路器40(図示する断路器40-1~40-3)とを備える。第1直流電流遮断器30a、断路器40、及び第2直流電流遮断器30bの数は、例えば、直流送電線路LNの遮断に用いられる回路数(この一例では、3回路)に応じた数である。以降の説明において、3回路の各構成に係る構成を示す「1」、「2」、及び「3」の数値を、符号の末尾に「-」(ハイフン)を介して付して示す。なお、3回路の各構成を互いに区別しない場合には、「-」(ハイフン)を介して付すことを省略する。
【0015】
第1直流電流遮断器30aと、断路器40と、第2直流電流遮断器30bとは、第1直流母線20aと、第2直流母線20bとの間に、記載の順によって直列に接続される。具体的には、第1直流母線20aと、第1直流電流遮断器30a-1~30a-3の第1端子とが接続され、第1直流電流遮断器30a-1~30a-3の第2端子と、断路器40-1~40-3の第1端子とが、それぞれ接続され、断路器40-1~40-3の第2端子と、第2直流電流遮断器30b-1~30b-3の第1端子とが、それぞれ接続され、第2直流電流遮断器30b-1~30b-3の第2端子と、第2直流母線20bとが接続される。
【0016】
交直変換器CV1の直流端子CN1と直流電流遮断装置10とは、一以上の配線WR1(図示する配線WR11~WR12)によって接続される。具体的には、交直変換器CV1の直流端子CN1と、第1直流電流遮断器30a-1と断路器40-1との接続点とは、配線WR11によって接続される。また、直流端子CN1と、断路器40-2と第2直流電流遮断器30b-2との接続点とは、配線WR12によって接続される。
【0017】
直流送電線路LN1は、断路器40-1と、第2直流電流遮断器30b-1との接続点に接続され、直流送電線路LN2は、第1直流電流遮断器30a-2と、断路器40-2との接続点に接続され、直流送電線路LN3は、第1直流電流遮断器30a-3と、断路器40-3との接続点に接続され、直流送電線路LN4は、断路器40-3と、第2直流電流遮断器30b-3との接続点に接続される。
【0018】
また、各直流送電線路LNと、交直変換器CV2の直流端子CN2、又は交直変換器CV3の直流端子CN3は、直流電流遮断器を介して接続される。本実施形態では、直流送電線路LN1と直流端子CN2とは、第3直流電流遮断器30c-2を介して接続され、直流送電線路LN2と直流端子CN2とは、第3直流電流遮断器30c-1を介して接続され、直流送電線路LN3と直流端子CN3とは、第3直流電流遮断器30c-3を介して接続され、直流送電線路LN4と直流端子CN3とは、第3直流電流遮断器30c-4を介して接続される。
【0019】
上述した構成により、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間の電力は、直流送電線路LN1、及び直流送電線路LN2の2回線送電によって送電され、交直変換器CV1と、交直変換器CV3との間の電力は、直流送電線路LN3、及び直流送電線路LN4の2回線送電によって送電される。
【0020】
第1直流電流遮断器30aと、第2直流電流遮断器30bと、第3直流電流遮断器30cとは、制御装置(不図示)によってその開閉が制御される。なお、直流電流遮断装置10が、制御装置の機能を有し、少なくとも第1直流電流遮断器30a、及び第2直流電流遮断器30bの開閉を制御してもよい。
【0021】
なお、第1直流電流遮断器30aや、第2直流電流遮断器30bは、複数の直流電流遮断器が直列に接続された構成によって実現されてもよい。この場合、複数の直流電流遮断器の開閉状態は、同期する。また、断路器40は、複数の断路器が直列に接続された構成によって実現されてもよい。この場合、複数の断路器の開閉状態は、同期する。
【0022】
[直流電流遮断装置10の動作(通常状態→遮断)]
交直変換器CV1と、交直変換器CV2や交直変換器CV3とが電気的に導通されている状態(以下、通常状態)において、直流電流遮断装置10が備える各部は以下のような状態となっている。
・第1直流電流遮断器30a:閉状態
・断路器40:開状態
・第2直流電流遮断器30b:閉状態
・第3直流電流遮断器30c:閉状態
【0023】
通常状態において、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間は、直流端子CN1から、配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-2、直流送電線路LN2、第3直流電流遮断器30c-1、及び直流端子CN2を介して接続される。また、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間は、配線WR12、第2直流電流遮断器30b-2、第2直流母線20b、第2直流電流遮断器30b-1、直流送電線路LN1、及び第3直流電流遮断器30c-2、及び直流端子CN2を介しても接続される。
【0024】
また、通常状態において、交直変換器CV1と、交直変換器CV3との間は、直流端子CN1から、配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-3、直流送電線路LN3、第3直流電流遮断器30c-3、及び直流端子CN3を介して接続される。また、交直変換器CV1と、交直変換器CV3との間は、配線WR12、第2直流電流遮断器30b-2、第2直流母線20b、第2直流電流遮断器30b-3、直流送電線路LN4、第3直流電流遮断器30c-4、及び直流端子CN3を介しても接続される。
【0025】
図2は、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置10が、遮断状態である場合の構成の一例を示す図である。遮断状態とは、交直変換器CV1と、交直変換器CV2と、交直変換器CV3とのうち、いずれかの直流送電線路LNを電気的に遮断させる状態である。遮断状態において、直流電流遮断装置10が備える各部は以下のような状態となっている。
・第1直流電流遮断器30a:閉状態(通常状態と同様)
・断路器40:開状態
・遮断対象の直流送電線路LNに最も近い第2直流電流遮断器30b:開状態
・その他の第2直流電流遮断器30b:閉状態(通常状態と同様)
・遮断対象の直流送電線路LNに係る第3直流電流遮断器30c:開状態
・その他の第3直流電流遮断器30c:閉状態(通常状態と同様)
【0026】
図2において、直流送電線路LN1に事故が生じているため、直流電流遮断装置10の第2直流電流遮断器30b-1、及び第3直流電流遮断器30c-2が開状態に制御される。これにより、交直変換器CV1、及び交直変換器CV2との接続を遮断することができる。
【0027】
[直流電流遮断装置10の動作(点検時)]
図3は、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置10が、点検状態である場合の構成の一例を示す図である。点検状態とは、第1直流電流遮断器30a、又は第2直流電流遮断器30bを点検する状態である。点検状態において、直流電流遮断装置10が備える各部は以下のような状態となっている。
・点検に係る第1直流電流遮断器30a:開閉可能(無電流状態)
・その他の第1直流電流遮断器30a:閉状態(通常状態と同様)
・点検に係る第2直流電流遮断器30b:開閉可能(無電流状態)
・その他の第2直流電流遮断器30b:閉状態(通常状態と同様)
・点検に係る第1直流電流遮断器30a、又は第2直流電流遮断器30bに接続される断路器40:閉状態
・その他の断路器40:開状態(通常状態と同様)
・第3直流電流遮断器30c:閉状態
【0028】
なお、同一回路の第1直流電流遮断器30a、及び第2直流電流遮断器30bは、同時に点検されないものとする。
【0029】
図3において、第2直流電流遮断器30b-1~30b-3が点検対象の第2直流電流遮断器30bであるため、断路器40-1~40-3が閉状態に制御される。これにより、点検状態において、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間は、直流端子CN1から、配線WR11、断路器40-1、直流送電線路LN1、第3直流電流遮断器30c-2、及び直流端子CN2を介して接続される。また、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間は、直流端子CN1から配線WR12、断路器40-2、直流送電線路LN2、第3直流電流遮断器30c-1、及び直流端子CN2を介して、或いは、配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-2、直流送電線路LN2、第3直流電流遮断器30c-1、及び直流端子CN2を介しても接続される。
【0030】
また、点検状態において、交直変換器CV1と、交直変換器CV3との間は、直流端子CN1から配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-3、直流送電線路LN3、第3直流電流遮断器30c-3、及び直流端子CN3を介して接続される。また、交直変換器CV1と、交直変換器CV3との間は、直流端子CN1から配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-3、断路器40-3、直流送電線路LN4、第3直流電流遮断器30c-4、及び直流端子CN3を介しても接続される。
【0031】
この時、点検対象の第2直流電流遮断器30b-1~30b-3には、電流が流れないため、開状態、及び閉状態のいずれの状態にも制御可能であり、点検を行うことができる。また、
図3の構成において、直流電流遮断装置10が点検状態に制御された場合であっても、第1直流電流遮断器30a-1~30a-2、及び第1直流母線20aには、直流送電線路LN1、及び直流送電線路LN2の2回線分の電流が流れないため、点検状態に伴う電流値を考慮して第1直流電流遮断器30aを設計することが求められない。ただし、点検状態において、直流送電線路LNに事故が発生した場合、直流送電線路LNと、交直変換器CV1とを遮断するために交直変換器CV1が停止される。
【0032】
図4は、直流電流遮断装置10の他の構成の一部分を示す図である。
図4において、配線WR12は、断路器40-1と第2直流電流遮断器30b-1との間に接続される。この場合、点検状態において、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間は、直流端子CN1から配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-2、断路器40-2、直流送電線路LN1、第3直流電流遮断器30c-2、及び直流端子CN2を介して、或いは、配線WR12、断路器40-1、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-2、断路器40-2、直流送電線路LN1、及び第3直流電流遮断器30c-2を介して接続される。
【0033】
また、交直変換器CV1と、交直変換器CV2との間は、直流端子CN1から、配線WR11、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-2、直流送電線路LN2、第3直流電流遮断器30c-1、及び直流端子CN2を介して、或いは、配線WR12、断路器40-1、第1直流電流遮断器30a-1、第1直流母線20a、第1直流電流遮断器30a-2、直流送電線路LN2、及び第3直流電流遮断器30c-1を介しても接続される。
【0034】
この時、点検対象の第2直流電流遮断器30b-1~30b-2には、電流が流れないため、開状態、及び閉状態のいずれの状態にも制御可能であり、点検を行うことができる。また、
図4の構成において、直流電流遮断装置10が点検状態に制御され、且つ直流送電線路LN1、又は直流送電線路LN2に事故が発生した場合、第1直流電流遮断器30a-2を開状態に制御することにより、直流送電線路LNと、交直変換器CV1とを遮断することができる。ただし、第1直流電流遮断器30a-1~30a-2、及び第1直流母線20aには、直流送電線路LN1、及び直流送電線路LN2の2回線分の電流が流れるため、この場合の電流値を考慮して設計することが求められる。
【0035】
[直流電流遮断装置10の構成の他の例]
なお、上述した直流電流遮断装置10の構成は一例であり、これに限られない。例えば、上述では、直流電流遮断装置10の構成は、直流送電線路LN1、及び直流送電線路LN2には、第1直流母線20aを経由する送電経路、及び第2直流母線20bを経由する送電経路がそれぞれ設けられ、直流送電線路LN3、及び直流送電線路LN4には、第1直流母線20a、又は第2直流母線20bを経由する送電経路の一方が設けられる構成であるが、いずれの直流送電線路LNも、第1直流母線20aを経由する送電経路、及び第2直流母線20bを経由する送電経路がそれぞれ設けられる構成であってもよく、直流送電線路LN1、及び直流送電線路LN2には、第1直流母線20a、又は第2直流母線20bを経由する送電経路の一方が設けられる構成であってもよい。
【0036】
[第2直流電流遮断器30bの点検順序]
また、上述では、第2直流電流遮断器30b-1~30b-3がいずれも点検対象である場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1直流電流遮断器30a-1~30a-3のうちいずれか、或いは、第2直流電流遮断器30b-1~30b-3のうちいずれかが、点検対象であってもよい。
【0037】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の直流電流遮断装置10は、交直変換器CV1と、交直変換器CV2、及び交直変換器CV3との間において、送電を継続したまま、第1直流電流遮断器30aや第2直流電流遮断器30bの保守点検をすることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
以下、図を参照して第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、直流電流遮断装置10aが、第1直流電流遮断器30a、及び第2直流電流遮断器30bに代えて、多端子型直流電流遮断器50を備える。なお、上述した実施形態と、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図5は、第2の実施形態に係る直流電流遮断装置10aの構成の一例を示す図である。直流電流遮断装置10aは、例えば、直流電流遮断装置10が備える第1直流電流遮断器30aに代えて、第1多端子型直流電流遮断器50aを備え、第2直流電流遮断器30bに代えて、第2多端子型直流電流遮断器50bを備える。第1多端子型直流電流遮断器50aと、第2多端子型直流電流遮断器50bとは、同様の構成を有するため、以下、第2多端子型直流電流遮断器50bについて説明する。なお、第1多端子型直流電流遮断器50aについては、以降の説明のうち、末尾の符号の「b」を「a」に読み替えればよい。
【0040】
図6は、第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。第2多端子型直流電流遮断器50bは、例えば、一以上の第1断路器62b(図示する第1断路器62b-1~62b-3)と、第1断路器62bに応じた数の電流遮断器70b(図示する電流遮断器70b-1~70b-3)と、第1断路器62bに応じた数の第2断路器64b(図示する第2断路器64b-1~64b-3)と、第1断路器62bに応じた数の転流回路80b(図示する転流回路80b-1~80b-3)と、半導体遮断器90bと、第1断路器62bに応じた数のリアクトルLb(図示するリアクトルLb-1~Lb-3)と、第1断路器62bに応じた数のダイオードDb(図示するダイオードDb-1~Db-3)とを備える。第1断路器62b、電流遮断器70b、及び第2断路器64bの数は、例えば、直流送電線路LNの遮断に用いられる回路数(この一例では、3回路)に応じた数である。
【0041】
第1断路器62bと、電流遮断器70bと、第2断路器64bとは、第2直流母線20bと、断路器40との間に直列に接続される。具体的には、第2直流母線20bと、第1断路器62b-1~62b-3の第1端子とが接続され、第1断路器62b-1~62b-3の第2端子と、電流遮断器70b-1~70b-3の第1端子とが、それぞれ接続され、電流遮断器70b-1~70b-3の第2端子と、第2断路器64b-1~64b-3の第1端子とが、それぞれ接続され、第2断路器64b-1~64b-3の第2端子と、断路器40-1~40-3とが、それぞれ接続される。第1断路器62bと、電流遮断器70bと、第2断路器64bとを直列に接続する線路は、「第1線路」の一例である。
【0042】
半導体遮断器90bと、ダイオードDbと、リアクトルLbとは、第2直流母線20bと、電流遮断器70bと及び第2断路器64bとの接続点との間に、直列に接続される。具体的には、第2直流母線20bと、半導体遮断器90bの第1端とが接続され、半導体遮断器90bと、ダイオードDb-1、ダイオードDb-2、及びダイオードDb-3とのアノードが接続され、ダイオードDb-1のカソードと、リアクトルLb-1の第1端子とが接続され、ダイオードDb-2のカソードと、リアクトルLb-2の第1端子とが接続され、ダイオードDb-3のカソードと、リアクトルLb-3の第1端子とが接続され、リアクトルLb-1の第2端子と、電流遮断器70b-1と第2断路器64b-1との接続点とが接続され、リアクトルLb-2の第2端子と、電流遮断器70b-2と第2断路器64b-2との接続点とが接続され、リアクトルLb-3の第2端子と、電流遮断器70b-3と第2断路器64b-3との接続点とが接続される。半導体遮断器90bと、ダイオードDbと、リアクトルLbとを直列に接続する線路は、「第3線路」の一例である。
【0043】
転流回路80bは、第1断路器62bと電流遮断器70bとの間の箇所から分岐してダイオードDbのカソードを接続する線路に設けられる。具体的には、転流回路80bの第1端子は、第1断路器62bと電流遮断器70bとの接続点に接続され、転流回路80bの第2端子は、ダイオードDbのカソードとリアクトルLbの第1端子との接続点に接続される。転流回路80bが設けられる線路は、「第2線路」の一例である。
【0044】
上述した接続関係により、ダイオードDbは、交直変換器CV1~CV3との間の電圧の高さの関係に応じて、第2直流母線20bから半導体遮断器90bを介して断路器40の方向に流れる電流を導通させ、及び断路器40から半導体遮断器90bを介して第2直流母線20bの方向に流れる逆電流を遮断する。
【0045】
なお、説明の都合上、ダイオードDbが1つのダイオードであるように図示しているが、ダイオードDbは、直流送電線電圧相当の耐圧を有するように、直列に接続された複数のダイオードによって構成されてもよい。
【0046】
図7は、転流回路80bの構成の一例を示す図である。転流回路80bは、例えば、複数のダイオード(図示するダイオード82,84)と、複数のスイッチング部(スイッチング部86,88)と、コンデンサ89とを備える。スイッチング部86,88は、それぞれ、スイッチング素子と、ダイオードとを備える。
【0047】
スイッチング部86,88が備えるスイッチング素子と、ダイオードとは、互いに並列に接続されている。具体的には、ダイオードのカソードと、スイッチング素子のコレクタとが接続され、ダイオードのアノードと、スイッチング素子のエミッタとが接続されている。ダイオード82のアノードと、スイッチング部86のコレクタとが互いに接続されている。スイッチング部88のエミッタと、ダイオード84のカソードとが互いに接続されている。ダイオード82のカソードと、スイッチング部88のコレクタと、コンデンサ89の正極とが互いに接続されている。スイッチング部86のエミッタと、ダイオード84のアノードと、コンデンサ89の負極とが互いに接続されている。
【0048】
ダイオード82のアノードと、スイッチング部86のコレクタとの接続点は、第1断路器62bと、電流遮断器70bとの接続点に接続されている。スイッチング部88のエミッタと、ダイオード84のカソードとの接続点は、ダイオードDbのカソードと、リアクトルLbとが接続される線路(つまり、第3線路)に接続される。
【0049】
図8は、半導体遮断器90bの構成の一例を示す図である。半導体遮断器90bは、例えば、互いに直列に接続された複数(図ではn個(nは、自然数))のスイッチング部92と、アレスタ94とを備える。スイッチング部92は、それぞれ、互いに並列に接続されたスイッチング素子とダイオードとを備える。具体的には、ダイオードのカソードと、スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと、スイッチング素子のエミッタとが接続されている。スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子である。ただし、スイッチング素子は、IGBTに限定されない。スイッチング素子は、自己消弧を実現可能なスイッチング素子であれば、いかなる素子でもよい。以降の説明では、スイッチング素子がIGBTである場合について説明する。また、以降の説明において、スイッチング部92のスイッチング素子のエミッタを、「スイッチング部92のエミッタ」とも記載し、スイッチング部92のスイッチング素子のコレクタを、「スイッチング部92のコレクタ」とも記載する。
【0050】
半導体遮断器90bにおいて、あるスイッチング部92のエミッタと、当該スイッチング部92に隣り合うスイッチング部92のコレクタとが接続されている。また、半導体遮断器90bの端部(第1端)に位置するスイッチング部92のコレクタは、第2直流母線20bに接続される。また、半導体遮断器90bの他の端部(第2端)に位置するスイッチング部92のエミッタは、ダイオードDbのアノードに接続されている。
【0051】
アレスタ94は、半導体遮断器90bに対して並列に接続されている。アレスタ94は、半導体遮断器90bが開状態(つまり、スイッチング素子がオフの状態)に制御されたことにより発生するサージエネルギーを吸収する。
【0052】
なお、半導体遮断器90bと、アレスタ94とは、別体によって構成されてもよい。
【0053】
制御装置は、第1断路器62b、電流遮断器70b、第2断路器64b、半導体遮断器90b、及び転流回路80bの制御等を行う。
【0054】
[直流電流遮断装置10aの動作(通常状態→遮断)]
図6に戻り、直流電流遮断装置10aによって、交直変換器CV1と、交直変換器CV2や交直変換器CV3とが電気的に導通されている状態(つまり、通常状態)において、直流電流遮断装置10aが備える各部は以下のような状態となっている。
・第1断路器62b:閉状態
・電流遮断器70b:閉状態
・第2断路器64b:閉状態
・半導体遮断器90b:開状態(スイッチング素子がオフの状態)
・転流回路80b:スイッチング素子がオフの状態
・転流回路80bが備えるコンデンサ89:充電された状態
【0055】
図6に示す通り、通常状態において、第2直流母線20bから断路器40の方向に流れる電流、又は断路器40から第2直流母線20bの方向に流れる電流は、第1断路器62b、電流遮断器70b、及び第2断路器64b(つまり、第1線路)を介して流れる。また、
図7に示す通り、通常状態において、スイッチング部86,スイッチング部88は、オフ状態に制御される。
【0056】
図9は、第2の実施形態に係る第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。上述したように、直流送電線路LNに事故が発生している場合、遮断対象の直流送電線路LNに最も近い多端子型直流電流遮断器50の、遮断対象の直流送電線路LNに係る回路の断路器、及び電流遮断器が開状態に制御される。
【0057】
この一例では、直流送電線路LN1に事故が発生しており、第2多端子型直流電流遮断器50bのうち、1回路に係る第1断路器62b-1、電流遮断器70b-1が開状態に制御される。具体的には、第2多端子型直流電流遮断器50bは、遮断状態に係る「第1状態」、「第2状態」、及び「第3状態」への遷移を経て、第1断路器62b-1、電流遮断器70b-1、及び第2断路器64b-1が開状態に制御される。以下、各状態の詳細について説明する。
【0058】
[第1状態]
まず、遮断状態に係る第1状態において、第2多端子型直流電流遮断器50bの1回路に係る断路器、及び直流電流遮断器のうち、第1断路器62b-1と、電流遮断器70b-1とが、制御装置によって開状態に制御される。ただし、第1断路器62b-1と、電流遮断器70b-1とは、開状態に制御されて接点を単に切り離しても接点間にアークが生じるため、電気的に遮断することができない。
【0059】
図10は、スイッチング素子がオンの状態に制御された転流回路80bの動作を模式的に示す図である。この状態で、制御装置は、転流回路80bを動作させることにより、転流回路80bが備えるスイッチング部86,88をオンの状態に制御する。すると、転流回路80bは、コンデンサ89に蓄電された電荷を放電し、コンデンサ89の正極からスイッチング部88、リアクトルLb-1、電流遮断器70b-1、及び転流回路80bのスイッチング部86を介してコンデンサ89の負極までを電流が還流する回路を形成する。
図9に示す通り、この回路が形成されるのは、リアクトルLb-1に対して上述した向きによってダイオードDb-1が接続されていることにより、断路器40-1や第2直流母線20bから半導体遮断器90bの方向に流れる電流が遮断されるためである。この回路を還流する電流は、電流遮断器70b-1において第2直流母線20bから断路器40-1の方向に流れる電流と逆方向の電流であるため、電流遮断器70b-1に生じたアークを打ち消すように作用する。この結果、電流遮断器70b-1に流れる電流がゼロになり、電流遮断器70b-1が電気的な遮断状態となる。
【0060】
[第2状態]
図11は、第2状態の第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。第2状態は、電流遮断器70b-1が遮断状態された状態である。第2状態において、制御装置は、電流遮断器70b-1が機械的にも電気的にも開状態に制御された場合、転流回路80b(スイッチング部86,88)をオフの状態に制御する。この場合、第2直流母線20bから断路器40の方向に流れる電流は、ダイオード82、コンデンサ89、及びダイオード84を流れ、コンデンサ89を充電する。コンデンサ89が充電されることにより、転流回路80bは、次回の動作において、還流を発生させることができる。
【0061】
また、第2状態において、制御装置は、半導体遮断器90bを閉状態(つまり、スイッチング素子をオンの状態)に制御する。
図12は、閉状態に制御された半導体遮断器90bの動作の一例を模式的に示す図である。スイッチング素子がオン状態に制御されることにより、半導体遮断器90bは、スイッチング素子を介して、第2直流母線20bからダイオードDb1のアノードの方向の電流(つまり、ダイオードDb1に順電流)を流すことができる。また、半導体遮断器90bは、ダイオードを介して、ダイオードDb1から第2直流母線20bの方向の電流(つまり、ダイオードDb1の逆電流)を流すことができる。
【0062】
図11に戻り、転流回路80bがオフの状態に制御されているため、第2直流母線20bと断路器40との間を流れる電流は、半導体遮断器90b、ダイオードDb-1、リアクトルLb-1、及び第2断路器64b-1を介して流れる第
2経路rt
2と、第1断路器62b-1、転流回路80b-1、リアクトルLb-1、及び第2断路器64b-1を介して流れる第
1経路rt
1とに分岐する。
【0063】
ここで、第1経路rt1と、第2経路rt2とでは、転流回路80b-1のコンデンサ89が逆電圧で入るため第1経路rt1の方が、電流が流れにくい。このため、第1経路rt1を流れる電流は、徐々に第2経路rt2に遷移する。第1経路rt1を流れる電流が、第2経路rt2に遷移することにより、第1断路器62b-1には電流が流れなくなるため、第1断路器62b-1は、機械的にも電気的にも開状態に制御される。
【0064】
[第3状態]
図13は、第3状態の第2多端子型直流電流遮断器50bの構成の一例を示す図である。第3状態は、第1断路器62b-1が機械的にも電気的にも開状態に制御された状態である。半導体遮断器90bの動作を模式的に示す図である。制御装置は、第1断路器62b-1が機械的にも電気的にも開状態に制御された場合、半導体遮断器90bを、閉状態(つまり、スイッチング素子をオンの状態)に制御する。半導体遮断器90bが開状態に制御されることに伴い発生するサージエネルギーは、アレスタ94によって吸収される。制御装置は、アレスタ94によってサージが十分に吸収された場合、第2断路器64b-1を開状態に制御する。この時、第
2経路rt
2を流れていた電流は、アレスタ94によって吸収されたため、第2断路器64b-1は、即座に機械的にも電気的にも開状態に制御される。これにより、第2多端子型直流電流遮断器50bは、遮断状態に係る「第1状態」、「第2状態」、及び「第3状態」への遷移を経て、第1断路器62b-1、電流遮断器70b-1、及び第2断路器64b-1が開状態に制御され、事故が発生した直流送電線路LN1を遮断することができる
。
【0065】
[直流電流遮断装置10aの動作(点検時)]
点検状態において、直流電流遮断装置10aが備える各部は以下のような状態となっている。
・点検に係る第1多端子型直流電流遮断器50a:開閉可能(無電流状態)
・その他の第1多端子型直流電流遮断器50a:閉状態(通常状態と同様)
・点検に係る第2多端子型直流電流遮断器50b:開閉可能(無電流状態)
・その他の第2多端子型直流電流遮断器50b:閉状態(通常状態と同様)
・点検に係る第1多端子型直流電流遮断器50a、又は第2多端子型直流電流遮断器50bに接続される断路器40:閉状態
・その他の断路器40:開状態(通常状態と同様)
・第3直流電流遮断器30c:閉状態
【0066】
なお、同一回路の第1断路器62a、電流遮断器70a、及び第2断路器64aと、第1断路器62b、電流遮断器70b、及び第2断路器64bとは、同時に点検されないものとする。
【0067】
図13において、点検対象の第1多端子型直流電流遮断器50aの回路、又は第2多端子型直流電流遮断器50bの回路が開状態に制御された場合における、交直変換器CV1~CV3と、直流送電線路LN1~LN4と、直流電流遮断装置10aとの接続は、
図3において説明した直流電流遮断装置10の接続と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の直流電流遮断装置10aは、交直変換器CV1と、交直変換器CV2、及び交直変換器CV3との間において、送電を継続したまま、第1多端子型直流電流遮断器50aや第2多端子型直流電流遮断器50bの保守点検を可能にしつつ、遮断状態において、各回路が共通の半導体遮断器90を用いるため、部品点数を削減することができる。
【0069】
[転流回路80の他の構成について]
なお、上述では、転流回路80bがダイオード82,84と、スイッチング部86,88を備える場合について説明したが、これに限られない。
図14は、転流回路80bの他の構成の一例を示す図である。転流回路80bは、複数のスイッチング部(スイッチング部83,85,86,88)と、コンデンサ89とを備える。スイッチング部83,85,86,88は、それぞれ、スイッチング素子と、ダイオードとを備える。スイッチング部83,85,86,88が備えるスイッチング素子と、ダイオードとは、互いに並列に接続されている。具体的には、ダイオードのカソードと、スイッチング素子のコレクタとが接続され、ダイオードのアノードと、スイッチング素子のエミッタとが接続されている。
【0070】
スイッチング部83のエミッタと、スイッチング部86のコレクタとが互いに接続されている。スイッチング部88のエミッタと、スイッチング部85のコレクタとが互いに接続されている。スイッチング部83のコレクタと、スイッチング部88のコレクタと、コンデンサ89の正極とが互いに接続されている。スイッチング部86のエミッタと、スイッチング部85のエミッタと、コンデンサ89の負極とが互いに接続されている。
【0071】
制御装置は、スイッチング部83,85のオン状態、及びオフ状態を一致させつつ、スイッチング部86,88のオン状態、及びオフ状態を一致させることにより、上述した転流回路80bの動作と同様の動作を実現することができる。
【0072】
[交直変換器CVと直流電流遮断装置10との他の構成]
また、上述では、交直変換器CV2と、交直変換器CV3とが、2回線送電される場合において、直流電流遮断装置10、10aが用いられる際の構成を一例に説明したが、これに限られない。
図15は、2回線送電以外の場面における直流電流遮断装置10aの構成の一例を示す図である。
図15において
、交直変換器CV1の直流端子CN1と、直流電流遮断装置10aとが接続され、直流電流遮断装置10aと、交直変換器CV21とが、直流送電線路LN2によって接続され、直流電流遮断装置10aと、交直変換器CV22とが、直流送電線路LN1によって接続され、直流電流遮断装置10aと、交直変換器CV31とが、直流送電線路LN3によって接続され、直流電流遮断装置10aと、交直変換器CV32とが、直流送電線路LN4によって接続される。これにより、直流電流遮断装置10aは、複数の交直変換器CVとの間において、送電を継続したまま、第1
多端子型直流電流遮断器
50aや第2
多端子型直流電流遮断器
50bの保守点検をすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10、10a…直流電流遮断装置、20a…第1直流母線、20b…第2直流母線、30a、30a-1、30a-2、30a-3…第1直流電流遮断器、30b、30b-1、30b-2、30b-3…第2直流電流遮断器、30c、30c-1、30c-2、30c-3、30c-4…第3直流電流遮断器、40、40-1、40-2、40-3…断路器、50…多端子型直流電流遮断器、50a…第1多端子型直流電流遮断器、50b…第2多端子型直流電流遮断器、62a、62b、62b-1、62b-2、62b-3…第1断路器、64a、64b、64b-1、64b-2、64b-3…第2断路器、70a、70b、70b-1、70b-2、70b-3…電流遮断器、80、80b、80b-1、80b-2、80b-3…転流回路、82、84…ダイオード、83、85、86、88…スイッチング部、89…コンデンサ、90、90b…半導体遮断器、92…スイッチング部、94…アレスタ、CV、CV1、CV2、CV3、CV21、CV22、CV31、CV32…交直変換器、Db、Db1、Db-1、Db-2、Db-3…ダイオード、Lb、Lb-1、Lb-2、Lb-3…リアクトル、LN、LN1、LN2、LN3、LN4…直流送電線路