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特許7279179股関節形成術のための手術器具の位置決め装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】股関節形成術のための手術器具の位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021549496
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 IB2020051419
(87)【国際公開番号】W WO2020170184
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】102019000002543
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】トロンベッタ,クリスチャン
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6905502(US,B2)
【文献】特表2003-534096(JP,A)
【文献】国際公開第2013/180191(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16 - A61B 17/17
A61B 17/56
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節を別の場所に移すおよび/または元の場所に戻すための手術中に手術器具を寛骨臼カップに正しく向けて方向付けるように構成された、股関節形成術用の手術器具の位置決め装置であって、
第1の端部(3)と第2の端部(4)を持つアーチ型構造(2)であって、前記第1の端部(3)が患者の内部に配置することができる、アーチ型構造(2)と、
前記アーチ型構造(2)の前記第2の端部(4)に配置された把持要素(7)と、
前記把持要素(7)に形成されたシート(9)で前記把持要素(7)に結合することができる手術器具(8)と、
前記アーチ型構造(2)の前記第1の端部に配置され且つ接続手段(13)を有する位置決めおよび固定ヘッド(12)と、を備え、
前記位置決めおよび固定ヘッド(12)が、前記アーチ型構造(2)の前記第1の端部(3)を通る長手方向軸(3a)に対して5°から85°の間の角度(φ)だけ傾斜した平面(B)上にあり、その結果、前記位置決めおよび固定ヘッド(12)の前記接続手段(13)は、前記把持要素(7)に方向付けられ且つ面しており、前記接続手段(13)は、大腿骨頸部を通して患者の大腿管に挿入できる一時的なステム(100)に結合されるように構成される、位置決め装置。
【請求項2】
前記角度(φ)は45°である、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記接続手段(13)がスナップ接続またはスナップフィットを含む、請求項1または2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記位置決めおよび固定ヘッド(12)は通常の使用のゼロ位置を有し、前記ゼロ位置において前記位置決めおよび固定ヘッド(12)は前記把持要素(7)に面し、前記接続手段(13)は、前記アーチ型構造(2)の長手方向対称軸(2a)を通過する平面(A)によって、軸方向に切断される、請求項1から3の一項に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記位置決めおよび固定ヘッド(12)が、前記アーチ型構造(2)の前記長手方向対称軸(2a)の周りに回転自由度を有し、前記回転自由度は、前記ゼロ位置に対して約+または-20°の角度(θ)による前記位置決めおよび固定ヘッド(12)の振動を可能にする、請求項に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記アーチ型構造(2)は、前記第2の端部(4)を前記患者の大腿骨の上に配置するように成形されおよびサイズ決定されている、請求項1からの一項に記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記把持要素(7)が、前記把持要素(7)の長手方向対称軸(7a)に沿って前記アーチ型構造(2)に対して少なくとも第1の並進自由度を有する、請求項1からの一項に記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記手術器具(8)が、前記シート(9)内でスライド可能に移動可能なステム(10)を有する、請求項1からの一項に記載の位置決め装置。
【請求項9】
前記手術器具(8)が、前記ステム(10)に接合することができる複数の交換可能なヘッドまたは工具(11)を備える、請求項に記載の位置決め装置。
【請求項10】
前記ステム(10)が、実質的に前記位置決めおよび固定ヘッド(12)に向けられるように前記把持要素(7)に接合され、これにより、前記把持要素(7)の長手方向対称軸(7a)に対して30°から60°の範囲の挿入角度(α)を規定する、請求項に記載の位置決め装置。
【請求項11】
前記挿入角度(α)は45°である、請求項10に記載の位置決め装置。
【請求項12】
前記ステム(10)は、前記ステム(10)自体および前記把持要素(7)の前記長手方向対称軸(7a)の両方に対する直交軸(X)の周りに回転自由度を有することができ、前記回転自由度は、前記ステム(10)が前記挿入角度(α)に対して-15°から+105°の範囲の角度(β)に移動することを可能にする、請求項10または11に記載の位置決め装置。
【請求項13】
前記把持要素(7)が、前記ステム(10)の回転移動の前記角度を示す円形の目盛り付きスケール(15)を有する、請求項から12の一項に記載の位置決め装置。
【請求項14】
前記把持要素(7)が、前記把持要素(7)の長手方向対称軸(7a)の周りに少なくとも第2の回転自由度を有し、前記第2の回転自由度が、前記把持要素(7)が通常の使用位置に対して+または-15°の角度(δ)に前記長手方向対称軸(7a)の周りを移動することを可能にし、前記通常の使用位置で前記ステム(10)が前記アーチ型構造(2)を含む平面(A)に属する、請求項から13の一項に記載の位置決め装置。
【請求項15】
前記手術器具(8)の前記ステム(10)を収容するための前記シート(9)が少なくとも部分的に開いている、請求項から14の一項に記載の位置決め装置。
【請求項16】
前記手術器具(8)の前記ステム(10)を収容するための前記シート(9)がスロットである、請求項から15の一項に記載の位置決め装置。
【請求項17】
前記アーチ型構造(2)が、開いたアーチ型構造(2)を規定する少なくとも第1の直線セグメント(21)、第2の直線セグメント(22)、および第3の直線セグメント(23)を有する、請求項1から16の一項に記載の位置決め装置。
【請求項18】
前記第1の直線セグメント(21)および前記第2の直線セグメント(22)が、それぞれのアーチ部分(5)で互いに直交して順番に接続されており、前記第2の直線セグメント(22)および前記第3の直線セグメント(23)は、それぞれのアーチ部分(6)で互いに直交して順番に接続されている、請求項17に記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節形成術のための手術器具の位置決め装置に関する。
【0002】
完全股関節形成術(THA)での良好な長期結果は、様々な外科的手法を使用して達成できる。従来、前方アプローチ、側方アプローチ、または後方アプローチが使用されている。前方アプローチを除いて、他のすべてのアプローチには、腸脛靭帯に影響を与えるという残念な欠点があり、患者の回復時間の長期化の原因となる。
【0003】
腸脛靭帯(ITB)は、2つの筋肉、すなわち、大臀筋および大腿筋膜張筋に接続する腱である。腸脛靭帯は、腸骨稜、腸骨結節で収束して腓骨に挿入される垂直配向繊維の群である。
【0004】
言い換えれば、腸脛靭帯は膝関節のすぐ下の脛骨の外面に挿入される。その過程で、腸脛靭帯は、外側上顆と呼ばれる骨の隆起を通過し、そこから滑液包によって分離される。
【0005】
腸脛靭帯は、脚の屈筋と伸筋を安定させる補強帯である。この構造に影響を与えると、股関節だけでなく膝関節にも影響があり、患者にとってより要求の厳しい、痛みを伴う手術およびより長い回復時間につながる可能性がある。
【0006】
したがって、コストを抑え且つより高い患者の期待に応えるという傾向により、入院期間の長さおよび低用量の病院の鎮痛剤または麻酔薬の使用など、短期的な結果の改善に焦点が移った。
【背景技術】
【0007】
近年、腸脛靭帯との相互作用を回避する上外側手術が開発され、迅速、安全、低侵襲の手術が可能になり、患者の回復時間が大幅に短縮された。
【0008】
現在使用されている上外側技術は、例えば、US6905002およびUS7833229に記載されている。この技術は、サポートアームと手術器具の入り口を規定するマーカーとの使用を含む。このアームは寛骨臼カップに接続しており、マーカーを器具の正しい挿入方向に向けるように形作られている。
【0009】
しかしながら、出願人は、そのようなアプローチがいくつかの欠点を引き起こすことを発見した。
【0010】
特に、アームと寛骨臼カップの接続は、基準点が操作したい要素から切り離された要素であるため、装置全体の接続を不安定にする。言い換えれば、接続は寛骨臼カップで行われるが、器具の挿入点は脚にあり、したがって、大腿骨の水平面(level)にある。これにより、機器の挿入が幾分か不安定になる。
【0011】
さらに、股関節形成術では、外科医は寛骨臼カップに作用する必要があるため、寛骨臼カップは、器具を所定の位置に保持する基準アームとの直接接続によって妨げられる。
【0012】
さらに、この技術は、カニューレの使用を伴い、その中に様々な手術器具が順番に挿入される。カニューレの存在は、手術器具を交換するための操作時間を長くすることに加えて、視界を妨害することにおいて追加の問題を引き起こす可能性がある。
【0013】
US5346496に記載されているように、大腿骨頸部へのねじの挿入をガイドするための、またはEP3298972に記載されているように、髄内釘を大腿骨に挿入するための既知の装置がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。
【0015】
特に、本発明の目的は、器具の良好な安定性を保証し且つ外科医の視野を妨げない、股関節形成術用の手術器具の位置決め装置を提案することである。
【0016】
本発明の別の目的は、外科医が使用しやすく且つ患者に対する迅速且つ安全な手術を可能にする、股関節形成術用の手術器具の位置決め装置を提供することである。
【0017】
最後に、本発明の目的は、股関節置換手術中の患者の解剖学的構造に関して正確且つ精確な基準として構成することができる器具を提供することである。
【0018】
これらおよび他の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に記載されているものによる、股関節形成術用の手術器具の位置決め装置を用いて達成される。
【0019】
概要
本発明の第1の態様は、第1および第2の端部を備えたアーチ型構造を含む、股関節形成術用の手術器具の位置決め装置を含む。アーチ型構造は、好ましくは、第1の端部を患者の内部に配置することができ、第2の端部が患者の外側に留まるように、開いている。この第2の端部は、有利には、把持要素を備える。
【0020】
手術器具は、把持要素自体に形成されたスロット内において少なくとも部分的に開いているかまたは閉じているシートで把持要素に結合することができる。
【0021】
位置決めおよび固定ヘッドは、アーチ型構造の第1の端部に配置され、大腿管に挿入できるステムに接続するための接続手段を備える。
【0022】
位置決めおよび固定ヘッドは、アーチ型構造の第1の端部に対して、特にアーチ型構造の第1のセクションの長手方向軸に対して傾斜している平面上にある。第1の端部に対する位置決めおよび固定ヘッドのこの傾斜角は、5°から85°の範囲であり、好ましくは45°である。
【0023】
位置決めおよび固定ヘッドのこれらの接続手段は、把持要素に面して把持要素の方に向けられており、患者の大腿管内、特に大腿骨頸部に挿入できるステムと正確に結合する。
【0024】
接続手段は、スナップ接続またはスナップフィットを含む。位置決めおよび固定ヘッドは、通常の使用ではゼロ位置にあり、ゼロ位置では、把持要素に面し、接続手段は、アーチ型構造の長手方向の対称軸を通過する平面によって軸方向に切断される。
【0025】
ゼロ位置では、位置決めおよび固定ヘッドの接続手段は、把持要素シートと位置合わせされ、その内部にスライド可能に移動可能なステムを挿入することができる。位置決めおよび固定ヘッドは、アーチ型構造の長手方向の対称軸の周りに回転自由度を有し、これにより、位置決めおよび固定ヘッドは、そのゼロ位置に対して+または-20°の角度θを移動することができる。
【0026】
アーチ型構造は、第2の端部を患者の大腿骨の上方で脚の外側に配置するように形作られ且つサイズ決定されている。
【0027】
手術器具は、ステムに結合することができる複数の交換可能なヘッドを含む。
【0028】
手術器具は、シート内でスライド可能に移動可能なステムを備える。
【0029】
ステムは、基本的に位置決めおよび固定ヘッドの方向に、特にヘッドがゼロ位置にあるときの接続手段の方向に向けられ、把持要素の長手方向の対称軸に対して30°から60°の範囲の、好ましくは45°の挿入角度を定義するように、把持要素に接合される。挿入角度αはまた、患者の骨盤面に対して45°である。
【0030】
ステムは、ステム自体および把持要素の長手方向軸の両方に直交する軸の周りに回転自由度を有し得る。この回転の自由度により、ステムは挿入角度αに対して-15°から+105°の範囲の角度βを移動できる。
【0031】
把持要素には、ステムの回転移動角度を示す円形の目盛り付きスケールが付いている。
【0032】
把持要素は、その長手方向軸に沿ってアーチ型構造に対して少なくとも第1の並進自由度を有する。好ましくは、把持要素の長手方向軸は、把持要素自体の長さに沿って、アーチ型構造の長手方向軸と一致する。
【0033】
把持要素は、その長手方向の対称軸の周りに少なくとも第2の回転自由度を有する。回転自由度により、把持要素は、ステムがアーチ型構造を含む平面に属する通常の使用位置に対して+または-15°の角度δに長手方向の対称軸の周りを移動できる。
【0034】
アーチ型構造は開いており、少なくとも第1、第2および第3の直線セグメントを持つ。
【0035】
第2および第3の直線セグメントがそれぞれのアーチ部分で互いに順番に直交して接続されているのと同様に、第1および第2の直線セグメントは、それぞれのアーチ部分で互いに順番に直交して接続されている。
【0036】
第2の態様では、本発明は、股関節形成術のための外科的方法に関する。
【0037】
この方法は、患者が横になるように患者を配置するステップと、
寛骨臼カップの上方の切開点を決めて、患者の皮膚に第1の切開を入れるステップと、
梨状筋および接合腱から大腿骨領域を解放するステップと、
上部大腿骨の皮質開口を進め、次に近位領域の大腿骨をリーミングするステップと、
遠位と近位の両方の位置で大腿管をこするステップと、を含む。
【0038】
次に、大腿骨頸部が切断されて、大腿骨頭が寛骨臼から取り外される。
【0039】
好ましくは、遠位大腿骨はトリミングされる(trimmed)。
【0040】
第1の切開点から、アーチ型構造によって支えられた手術器具を挿入するための第2の切開点を決める。特定された場所で第2の切開を行う。
【0041】
この時点で、一時的なステムが大腿管に挿入され、そこに、位置決め装置のアーチ型構造の第1の端部に配置された、位置決めおよび固定ヘッドの接続手段が接続される。一時的なステムは残りの大腿骨から切り離された大腿骨頸部から挿入される。
【0042】
股関節形成術用の手術器具の位置決め装置は、アーチ型構造の第2の端部を、大腿骨の上方で、患者の脚の外側、すなわち、もう一方の足に面していない側の、患者の脚の外側の正しい位置に持ってきることで、患者から出てくる。手術器具であって、そのステムが骨盤面に対して45°傾斜している手術器具を位置合わせし、第2の切開から器具のステムを挿入する。
【0043】
患者の内部のステムを寛骨臼カップまで前進させ、第1の切開を通して、ステムに接続される第1の手術工具を挿入する。第1の手術工具は、好ましくは、寛骨臼カップを滑らかにするためのラスプである。続いて、第1の手術工具は、第2の手術工具と交換される。第2の手術工具は、寛骨臼カッププロテーゼを所定の位置に配置した後、寛骨臼内に寛骨臼カッププロテーゼを詰め込むように設計され得る。
【0044】
大腿管から手術工具、ステム、位置決め装置、および一時的なステムを取り外して、最終的なステムを大腿管に挿入し、当該ステムを寛骨臼内の新しく配置されたプロテーゼに取り付けて、最終的なインプラントを配置する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
説明およびクレームされた股関節形成術用の手術器具の位置決め装置はまた、例示的であり且つ網羅的ではないことを意図する以下の図に示されている。
図1】大腿骨および股関節に作用する、本発明による股関節形成術用の手術器具の位置決め装置の斜視図である。
図2】第1の動作構成における、本発明の主題である装置の斜視図である。
図3】第2の動作構成における、本発明の主題である装置の斜視図である。
図4】本発明の主題である装置の構成要素をよりよく説明するための当該装置の部分分解図である。
図5-6】他の動作位置における本発明の主題である装置の正面図である。
図7-21】本発明の装置が使用される手術方法の種々のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
添付の図に関して、参照番号1は、股関節形成術200のための手術器具の位置決め装置を示す。
【0047】
詳細には、この装置は、股関節形成術200のための手術器具を正しく位置決めおよび方向付けるために使用される、すなわち、股関節置換手術中に必要とされる種々の手術器具11を寛骨臼カップ300に正しく向けるために使用される。
【0048】
この装置は、第1の端部3および第2の端部4を持つアーチ型構造2を備える(図4において見える)。
【0049】
特に、第1の端部3は、患者500の内部に配置することができ、一方、第2の端部4は、患者500の外側に留まる。特に、第2の端部は、脚の外側、すなわち、骨盤領域に面していない側で、患者の外側に留まる。
【0050】
有利には、このアーチ型構造2は開いており、好ましくは、順番に間に配置された少なくとも第1の直線セグメント21、第2の直線セグメント22、および第3の直線セグメント23を有する。さらにより好ましくは、第2の直線セグメント22および第3の直線セグメント23がそれぞれのアーチ部分6によって互いに直交して順番に接続されているのと同様に、第1の直線セグメント21および第2の直線セグメント22は、それぞれのアーチ部分5を使用して互いに直交して順番に接続されている。
【0051】
第1のセクション21は、好ましくは、第1の端部3で始まり、第3のセクション23は、アーチ型構造2の第2の端部4で終わる。
【0052】
さらに、装置1は、アーチ型構造2の第2の端部4に配置された把持要素7またはハンドルを含み、外科医は、そのために、装置自体1を把持して取り扱うことができる。
【0053】
第1の端部3において、装置1は、位置決めおよび固定ヘッド12を備える。このヘッド12は、患者500の大腿骨400の大腿管600の内部に挿入することができる一時的なステム100と結合するために、把持要素7に面する接続手段13を有する。一時的なステム100は、切断される大腿骨頸部を通して大腿管に挿入され、大腿骨頸部を大腿骨の残りの部分から分離することができる。
【0054】
換言すれば、位置決めおよび固定ヘッド12は、寛骨臼カップ300に対して反対方向を向いている。
【0055】
有利には、これらの接続手段13は、スナップ接続またはスナップフィット、またはジョイント、干渉、または押しボタン接続などを備え、大腿管600に挿入することができる一時的なステム100に形成されたそれぞれのシートの内部で迅速に結合する。
【0056】
第1の端部3のための第1の入口点P1が特定されると、この構成、特に位置決めおよび固定ヘッド12の一時的なステム100への接続により、第2の端部を患者の脚の外側部分の上に正しく配置することができる。
【0057】
言い換えれば、アーチ型構造2は、第2の端部4が患者の大腿骨の上方で、脚の外側、すなわち骨盤領域と反対方向を向くように配置されるように、成形およびサイズ決定される。
【0058】
上記の3つの直線セグメントから構成されるアーチ型構造の代替構成(図示せず)は、第1の端部3および第2の端部4が半円の直径の極値点に配置される半円形構造を含み得る。
【0059】
図2-4および13-15に見られるように、位置決めおよび固定ヘッド12は、アーチ型構造2の第1の端部3に対して、特に、アーチ型構造2の第1のセクション21の長手方向軸3aに対して、角度φ傾斜している平面B上にある。第1の端部3に対する位置決めおよび固定ヘッド12のこの傾斜角φは、5°から85°の範囲、好ましくは45°である。このようにして、接続手段13は、把持要素7に向けられ且つ面している。
【0060】
装置1は、さらに、この把持要素7に形成されたシート9で把持要素7に結合することができる手術器具8を備える。シート9は、単に例として、添付の図に示されているように、少なくとも部分的に開いているか、あるいは、閉じてスロットのような形状をしていてもよい。
【0061】
手術器具8は、このシート9で把持要素7に結合することができる。
【0062】
特に、手術器具8は、ステム10と、ステム10に接合することができる複数の交換可能な工具またはヘッド11とを備える。
【0063】
交換可能なヘッドまたは工具11は、例えば、所与の位置に切開を行うためのメス、寛骨臼カップの内側を滑らかにするためのラスプ、または寛骨臼カップにプロテーゼを挿入するための当接ヘッドであり得る。
【0064】
ステム10は、以下で詳細に説明するように、接合された工具を寛骨臼カップ300に近づけたり遠ざけたりするように、把持要素7の上記シート9の内部でスライド可能に移動可能である。したがって、ステム10を位置決めおよび固定ヘッド12に近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0065】
有利には、ステム10は、それが基本的に位置決めおよび固定ヘッド12の方向に向けられるように把持要素7に結合され、前記把持要素7の長手方向対称軸7aに対して30°から60°の間の挿入角度α、好ましくは45°の挿入角度αを規定する。
【0066】
言い換えれば、ステムは、患者の骨盤面に対して約45°の角度で患者に入る。
【0067】
手術器具8のステム10は、把持要素7の長手方向対称軸7aを横切る長手方向対称軸10aを有する。ステム10は、収容シート9で把持要素7にヒンジで連結されており、したがって、ステム10の軸10aおよび把持要素7の長手方向対称軸7aの両方に直交する追加の軸Xの周りの回転自由度を有する。
【0068】
この回転自由度により、ステム10は、挿入角度αに対して-15°から+105°の範囲の角度β(図3)に軸Xの周りを移動することができる。把持要素7に対するステム10の傾斜をチェックするために、円形の目盛り付きスケール15が把持要素7上に提供され、これはステム10の回転移動角度を示す。図2に示すように、円形の目盛り付きスケール15(図2)のゼロは、挿入角度αの45°に配置される。目盛り付きスケールの角度α’(図3)は、ステム10自体の軸10aと把持要素7の軸7aとの間に形成される角度α=45°に対応するステム10自体のゼロ位置からのステム10の偏角を示す。
【0069】
ステム10の軸10aと位置決めおよび固定ヘッド12の横たわる平面Bとによって形成される角度は、ステム10の可変傾斜およびアーチ型構造2の端部3に対して位置決めおよびヘッド12に与えられる角度位置に応じて、30°から150°の範囲である。
【0070】
アーチ型構造2の第2の端部4に配置された把持要素7は、アーチ型構造2に対して少なくとも第1の並進自由度を有する。特に、それは、少なくとも部分的に、アーチ型構造2の第3の直線セグメント23に沿って、アーチ型構造2の長手方向軸23aと一致する把持要素自体の長手方向軸7aに沿って、スライド可能に移動可能である。この並進の自由は、有利なことに、ステム10を、したがってその軸10aを、ステム10に結合されることになる工具が作用しなければならない寛骨臼カップ300と正しく位置決めさせるために存在する。
【0071】
第2の直線セグメント22からの把持要素7の距離を調整する必要性は、基本的に、患者のサイズによる。
【0072】
ピンまたはねじなどの固定要素14は、アーチ型構造2に沿って、特にこのアーチ型構造2の第3の直線セグメント23に沿って、把持要素7の位置を固定する。
【0073】
さらに、把持要素7は、その長手方向対称軸7aの周りに少なくとも第2の回転自由度を有する。この回転の自由度により、把持要素7は、ステム10がアーチ型構造2を含む平面Aに属する通常の使用のゼロ位置に対して+または-15°の角度δで、その長手方向対称軸7aの周りを回転することができる。換言すれば、把持要素7の通常の使用のゼロ位置は、ステムがアーチ型構造2の空間内に含まれるときに構成される。
【0074】
把持要素7の回転の自由により、ステム10も同じ角度幅だけ振動する。これは、寛骨臼カップの中心軸に対してオフセットされた固定ねじとステムに結合された手術器具との係合を進めるときに役立つ。したがって、寛骨臼カップの中心軸と完全に位置合わせされていない点に到達することを含めて、それがステム10と共に移動することが可能であることが必要である。
【0075】
位置決めおよび固定ヘッド12は、通常の使用ではゼロ位置にあり(図1-5)、ゼロ位置では、それは把持要素7に面し、接続手段13は、アーチ型構造2を含み且つアーチ型構造2の対称軸2aを通る1つの平面Aによって軸方向および中央に切断される。
【0076】
位置決めおよび固定ヘッド12は、アーチ型構造2の長手方向対称軸2aの周りに回転自由度を有し、これにより、上記のゼロ位置に対して約+または-20°の角度θに従って移動することができる(図6)。これにより、アーチ型構造2全体を、患者の大腿管内に挿入された一時的なステム100と固定されて一体のままである位置決めおよび固定ヘッド12に対して回転させることが可能になる。
【0077】
任意選択的に、ステム10の周囲に、その移動中のステム10の側面と患者の周囲組織との間の摩擦を防止する一種の保護シース(図示せず)があってもよい。
【0078】
使用中、患者は横向きの位置に置かれ、手術される側を外科医に向け、外科医は寛骨臼カップの上方に位置する第1の切開P1を行うための点を決める。
【0079】
次に、接合腱の梨状筋腱が切断されて大腿骨を露出させる。
【0080】
次に、外科医は、大腿骨の上部皮質開口、大腿骨の近位リーミング、および大腿骨自体の近位および遠位ブローチ(図8)を進めて、一時的なステム100(図9)を挿入する。当該ステム100は、外科的処置中に使用され、最終的なステムを配置するために取り外されることになる。
【0081】
次に、大腿骨頸部が切断され(図10)、大腿骨頭が寛骨臼カップから切り離される(図11)。本発明の主題である位置決め装置を挿入する前に、大腿骨の切断された遠位部分がトリミングされる(図12)。
【0082】
一時的なステム100は、大腿骨の大腿骨頸部で大腿管に挿入される。
【0083】
外科医は、装置の第1の端部3を、特に、位置決めおよび固定ヘッド12を第1の切開P1(図13)を通して挿入して、大腿骨頸部で大腿管(図14)に挿入された一時的なステム100にヘッド12の接続手段13を固定する。
【0084】
位置決めおよび固定ヘッド12が一時的な大腿骨ステム100に結合されると、アーチ型構造2が患者の体から出て、第2の端部4を大腿骨の高さで患者の脚の上方に配置することによってそれ自体を方向付ける(図14)。
【0085】
アーチ型構造は、脚の外側で、骨盤領域の反対側に配置されている。
【0086】
アーチ型構造2の第3の直線セグメント23に沿った把持要素7の位置は、第2の直線セグメント22および第3の直線セグメント23の間に配置されたアーチ型部分6からのステム10の、すなわちシート9のヒンジ点の距離が、基本的に、第2の直線セグメント22の長さに等しいように、調整される。
【0087】
把持要素7が固定されると、ステム10が45°に傾けられて目盛り付きスケールがゼロ位置になり、ステム10が再び45°で患者の脚に向かって前進し、第2の切開P2を行う(図14)。このようにして、ステム10は、寛骨臼カップ300に到達するように大腿骨頸部と位置合わせされる。
【0088】
ステム10が所定の位置に配置されると(図15)、アーチ型構造を取り外して、ステムに接続される手術工具のさまざまなヘッドを連続して挿入することにより続行することが可能である(図16および17)。
【0089】
次に、外科医は寛骨臼のリーミングを進め、新しい寛骨臼カップを詰め込む(図18)。
【0090】
アーチ型構造2は、有利には、新しい寛骨臼カップの固定ねじを挿入するために別の場所に移されるので、ドライバーは、ねじを正しい位置に挿入する際により安定し且つより誘導可能である。
【0091】
最後に、装置全体と、先に大腿骨に固定されていた一時的なステム100を取り外して、当該ステム100を最終的なステム700と交換し、したがって、最終的なインプラント800を固定することができる(図19-21)。
【0092】
すでに知られているものと比較して、本発明の主題である股関節形成術用の手術器具の位置決め装置は、装置が大腿骨に直接固定されているため、器具がより安定し且つより誘導可能になる。
【0093】
この装置の使用により、従来技術の装置の場合のように手術部位の視野が遮られることはなく、より良い視野が可能になる。寛骨臼カップではなく大腿骨に直接接続することで、外科医は自由に直接、障害物なしに、寛骨臼カップ内をリーミングしてプロテーゼを挿入することができる。
【0094】
本発明の主題である装置は、外科医にとって使いやすく、患者にとって迅速かつ安全な手術を容易にする。ステムを傾けると、器具が手術部位に位置合わせされ、ステム自体を動かす可能性によって、外科医はより自由に動作できる。
【0095】
最後に、本発明の主題である装置は、股関節置換手術中の患者の解剖学的構造への正確且つ精確な基準として構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【文献】US6905002
【文献】US7833229
【文献】US5346496
【文献】EP3298972
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