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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】LED照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/237 20180101AFI20230515BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20230515BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230515BHJP
   F21S 43/243 20180101ALI20230515BHJP
   F21S 43/245 20180101ALI20230515BHJP
   F21S 43/247 20180101ALI20230515BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20230515BHJP
   B60Q 1/24 20060101ALI20230515BHJP
   B60Q 1/50 20060101ALI20230515BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230515BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20230515BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20230515BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20230515BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20230515BHJP
   F21W 103/25 20180101ALN20230515BHJP
【FI】
F21S43/237
F21V8/00 320
F21V8/00 355
F21S2/00 439
F21S2/00 419
F21S43/243
F21S43/245
F21S43/247
F21S43/14
B60Q1/24 Z
B60Q1/50 C
F21Y115:10 500
F21Y115:10 100
F21W102:10
F21W102:30
F21W103:00
F21W103:20
F21W103:25
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021573064
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000474
(87)【国際公開番号】W WO2021149513
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020008489
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】梅田 謙治
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-108640(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106870975(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/237
F21V 8/00
F21S 2/00
F21S 43/243
F21S 43/245
F21S 43/247
F21S 43/14
B60Q 1/24
B60Q 1/50
F21Y 115/10
F21W 102/10
F21W 102/30
F21W 103/00
F21W 103/20
F21W 103/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の外装部や内装部に配設されて、基板に実装されたLED素子及び該LED素子の発光面を覆っている透明の被覆体と、前記LED素子の発光面からの射出光を光導入端より導入し光伝達通路として機能する導光体とを備えたLED照明装置であって、
前記導光体は、前記被覆体と共に透明の樹脂材を用いて前記基板に実装されたLED素子にインサート成形により一体化しており、また柔軟性を有していることを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記被覆体は、前記LED素子の発光面と共に前記基板の上面から周囲、更に給電部を除いた下面側を被覆していることを特徴とする請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記導光体は長尺状又は凸状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記被覆体及び前記導光体はポリオレフィン系ポリマーにより形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記導光体は自動車外装部に設けられた給電口又は給油口であるエネルギー注入口に配されることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のLED照明装置。
【請求項6】
前記被覆体は、車体パネル又はドアパネルに設けられた取付穴に差し込む差込部、及び前記差込部を前記取付穴から抜止可能にする係合部を一体に形成していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のLED照明装置。
【請求項7】
前記取付穴に対し着脱可能に装着されるホールキャップないしはホールプラグを兼ねることを特徴とする請求項6に記載のLED照明装置。
【請求項8】
自動車の外装部や内装部に配設されて、基板に実装されたLED素子及び該LED素子の発光面を覆っている透明の被覆体と、前記LED素子の発光面からの射出光を光導入端より導入し光伝達通路として機能する導光体とを備えたLED照明装置であって、
前記導光体は、前記被覆体と共に透明の樹脂材を用いて前記基板に実装されたLED素子にインサート成形により一体化しており、
前記被覆体は、車体パネル又はドアパネルに設けられた取付穴に差し込む差込部、及び前記差込部を前記取付穴から抜止可能にする係合部を一体に形成していることを特徴とするLED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11(a)(b)は特許文献1に開示のLED照明装置を示す。この装置構造では、基板(プリント基板)に実装されたLED素子2及びLED素子の発光面を覆っている透明の被覆体(透明体)3と、被覆体3に設けられてLED素子の発光面の真上に位置したファイバ挿入穴5と、そのファイバ挿入穴5に光導入端41側を挿入し固定される光ファイバ4とを備えており、LED素子の発光面から射出される光を光ファイバ4の光導入端41と反対側の光導出端から導出して照明に利用される。ここで、ファイバ挿入穴5は、LED素子の発光面に対し略垂直に形成され、底面51を備え、光ファイバ4を挿入して接着剤ATなどにより固定可能にする。光ファイバ4は、プラスチックやガラス等の一般的なものが用いられて、光導入端41に導入される光のうち、ファイバ軸に対して所定角度範囲(例えば60度)内の光のみ伝達可能にする。
【0003】
また、図12(a)(b)は特許文献2に開示のホールキャップを示す。このホールキャップは、図12(b)のごとく車のドアAに設けられたメンテナンス用サービスホール(以下、取付穴という)を着脱可能に塞ぐものである。キャップ構造としては、基板71に実装されたLED素子である発光体74を有した発光ユニット70と、発光ユニット70を電源92と共に収容する筐体91と、筐体91の上端に取り付けられて取付穴に差し込む差込部61を有した受け部60と、受け部60の上開口を閉じるレンズ81付きの上蓋80とを備えている。また、受け部60は、差込部61に設けられた環状溝65を有し、ドアAのパネルに設けられた取付穴に対しその穴縁部を環状溝65に嵌合した状態に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-149608号公報
【文献】実用新案登録第3215198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した図11(a)(b)のLED照明装置は、LED素子2を覆う被覆体3にファイバ挿入穴5を予め設けておくことによって、光ファイバ4を簡単にかつ正確に取り付けられるようにしたものである。しかしながら、この構造では、光ファイバ4を被覆体3の挿入穴5に接着剤ATで接合する組立工程が必要となりコスト的に高くなるだけではなく、光ファイバ4をファイバ挿入穴5に挿入し接着剤ATなどで固定したとしてもファイバ挿入穴5の深さが制約されるため外れる虞があり信頼性に欠ける。また、この構造では、光ファイバ固定用の被覆体3により大型となり設置の自由度が低いと共に、既存の光ファイバを使用することを前提としているため用途に応じた太さ(光量)や長さにできないので設計自由度が低い。しかも、この構造では、LED素子2の発光面と光ファイバ5の光導入端41の間に隙間があるため光取り出し効率が悪く、LED素子の放熱性も悪い。
【0006】
また、図12(a)(b)のホールキャップは、発光機能を追加することにより、発光ユニット70がドアAの開状態を検知すると、光を発して後方にくる車や人にドアAの開状態を分かるよう警告して安全性を向上する。しかし、この構造では、発光ユニット70と共に筐体91、パネル装着用受け部60、上蓋80などを必須としているため、複雑で高価となる。
【0007】
本発明の目的は、以上のような問題を一掃して、組立工程が不要であり、小型で設計自由度が高く、光取り出し効率が高く付加価値を付与し易いLED照明装置を提供することにある。他の目的は以下の説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の一態様によるLED照明装置は、自動車の外装部や内装部に配設されて、基板に実装されたLED素子及び該LED素子の発光面を覆っている透明の被覆体と、前記LED素子の発光面からの射出光を光導入端より導入し光伝達通路として機能する導光体とを備えたLED照明装置であって、前記導光体は、前記被覆体と共に透明の樹脂材を用いて前記基板に実装されたLED素子にインサート成形により一体化しており、また柔軟性を有していることを特徴としている。
【0009】
この態様のLED照明装置において、「基板に実装されたLED素子」は、LEDチップやLED構造体などとも称されており、又、市販品に限られず本発明の被覆体及び導光体を有した専用品として作製される。「導光体」は、透明樹脂で被覆体と一体に形成されており、LED素子の発光面からの射出光を光導入端より導入し、光導入端の反対側である光導出端側へ向けて光を導く光伝達要素として機能する部材である。また、「前記導光体が前記被覆体と共に」とは、「前記導光体及び前記被覆体が」と実質的に同じ意味で使用している。
【0010】
前記形態のLED照明装置は、下記の態様のように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記被覆体は前記LED素子の発光面と共に前記基板の上面から周囲、更に給電部を除いた下面側を被覆している構成である。この構成では、被覆体が給電部を除いてLED素子の発光面を含む基板のほぼ全体を覆っている。この構成によれば、優れた防水・防塵効果に加え、被覆体と一体化している導光体の接合も高強度となり導光体が外力により不用意に外れるというような虞を解消できる。
(イ)、前記導光体は長尺状又は凸状に形成されている構成である。この構成によれば、導光体が長尺状に形成されている場合、照明態様として光伝達通路を利用した斬新なものを実現でき、また、導光体が凸状に形成されている場合、点照明に好適となる。
【0011】
(ウ)、前記被覆体及び前記導光体はポリオレフィン系ポリマーにより形成されている構成である。この構成によれば、特に耐熱性及び高透明性と光学特性に優れた特性を付与できる。このポリオレフィン系ポリマーとしては、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ポリウレタン等が例示され、より好ましくは耐熱性及び高透明性、更に光学特性に優れたシクロオレフィンポリマー(COP)及びそれに類似の樹脂が好ましい。
(エ)、前記導光体は自動車外装部に設けられた給電口又は給油口であるエネルギー注入口に配置される構成である。この構成は、後述する本発明の第1形態である構成を特定したものである。この構成によれば、給電口等の形状に合わせて最適な照明態様で設置でき、優れた照明効果及び斬新性を付与できる。但し、本発明装置は、自動車の外装部や内装部に適用される構成であればよく、例えばヘッドライト、フォグランプ、コンビネーションランプ、ウインカライト、ドア用警告灯や室内灯などにも好適である。
【0012】
(オ)、前記被覆体は、車体パネル又はドアパネルに設けられた取付穴に差し込む差込部、及び前記差込部を前記取付穴から抜止可能にする係合部を一体に形成している構成である。この構成は、後述する本発明の第2実施形態である構成を特定したものである。この構成によれば、部材数を最小に抑えて付加価値を付与し易くなる。
(カ)、前記取付穴に対し着脱可能に装着されるホールキャップないしはホールプラグを兼ねる構成である。この構成によれば、軽量・小型化を実現しながら商品価値を向上できる。なお、ホールキャップは特許文献1等で使用された名称、ホールプラグは特開2012-72896号公報等で使用されている名称である。
(キ)、また、本願の請求項8の発明は、自動車の外装部や内装部に配設されて、基板に実装されたLED素子及び該LED素子の発光面を覆っている透明の被覆体と、前記LED素子の発光面からの射出光を光導入端より導入し光伝達通路として機能する導光体とを備えたLED照明装置であって、前記導光体は、前記被覆体と共に透明の樹脂材を用いて前記基板に実装されたLED素子にインサート成形により一体化しており、前記被覆体は、車体パネル又はドアパネルに設けられた取付穴に差し込む差込部、及び前記差込部を前記取付穴から抜止可能にする係合部を一体に形成している構成である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のLED照明装置は、自動車の外装部や内装部に配設されるLED照明装置として以下に挙げるような利点を有している。
第1に、LED照明装置を構成している導光体がLED素子の発光面を覆っている被覆体と共に透明の樹脂材を用いて基板に実装されたLED素子、つまりLED構造体にインサート成形により一体化しているため、導光体の組付け作業が不要となり、小型化を図り易く、LED素子に対して防水・防塵効果に優れた構成となる。
第2に、導光体がLED素子の発光面を覆っている被覆体と共に基板に実装されたLED構造体にインサート成形により一体化しているためLED素子の発光面と導光体の間に隙間が無く、それにより光取り出し効率を向上できる。
第3に、本発明は、小型化により設置態様の制約をなくしたり、導光体の形状を相手側である使用箇所に合わせて任意に設定でき、それらにより設計自由度を拡大できる。
第4に、導光体が柔軟性を有しているため取付相手形状に追従して配置可能となり、配置自由度を拡大できる。
一方、請求項8のLED照明装置は、上記第1から第3の利点に加えて、前記被覆体が取付穴に差し込む差込部、及び前記差込部を前記取付穴から抜止可能にする係合部を一体に形成しているため部材数を最小に抑えて付加価値を付与し易くなる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態のLED照明装置の模式外観図、(b)は(a)において2点鎖線で示すA部を拡大した拡大図である。
図2】(a)は上記LED照明装置の模式上面図、(b)及び(c)は(a)の装置を(a)に示すB方向とC方向から見た模式図である。
図3】上記LED照明装置を構成している基板に実装されたLED素子(以下、LED構造体という)を模式的に示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
図4】上記LED構造体を射出成形型に配置した状態を示す部分模式図である。
図5】上記射出成形型のキャビティに溶融樹脂を射出した状態を示す模式図及び射出後にLED照明装置を離型した状態を示す模式図である。
図6】上記LED照明装置を自動車の給電口に配置した使用例を示し、(a)は車体側の充填部を露出した状態を示す模式図、(b)はLED照明装置を外した状態でケースを裏側から見た模式図、(c)は(a)のZ-Z線に沿った部分拡大断面図である。
図7】(a)と(b)は第1実施形態のLED照明装置の導光体の形状を変更した変形例1と2を示す模式外観図である。
図8】(a)は、本発明の第2実施形態のLED照明装置の模式外観図、(b)は第2実施形態の形状を変更した変形例を示す模式外観図である。
図9】(a)は図8(a)に示す第2実施形態によるLED照明装置の模式正面図、(b)は(a)のD-D線に沿ったLED照明装置の断面と被取付部材の関係を示す模式断面図、(c)はLED照明装置を被取付部材に係合した取付状態を示す模式断面図である。
図10】(a)は図8(b)に示す第2実施形態の変形例によるLED照明装置の模式正面図、(b)は(a)のE-E線に沿ったLED照明装置の断面と被取付部材の関係を示す模式断面図、(c)はLED照明装置を被取付部材に係合した取付状態を示す模式断面図である。
図11】(a),(b)は特許文献1に開示の照明装置(文献1の図3図4)を示している。
図12】(a),(b)は特許文献2に開示のホールキャップ(文献2の図3図6)を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るLED照明装置の特徴について図面を参照し説明する。この説明では、LED照明装置の第1実施形態及びその変形例1と2、第2実施形態及びその変形例を作動と共に明らかにする。
【0016】
(第1実施形態)第1実施形態のLED照明装置1は、図2(a)~(c)に示すように、基板2に実装されたLED素子3及び該LED素子3の発光面を覆っている透明の被覆体8と、LED素子3の発光面からの射出光を光導入端より導入し光伝達通路として機能する導光体9とを備えている点で特許文献1と同じである。工夫点は、LED照明装置1の開発目標として自動車の外装部や内装部用として最適化したものであり、導光体9が被覆体8と共に同じ透明の樹脂材を用いて基板2に実装されたLED素子3、つまりLED構造体を図4及び図5に示されるごとく射出成形型30に配置した態様でインサート成形により一体に形成される構成にある。
【0017】
ここで、「基板2に実装されたLED素子3」は必要に応じてLED構造体と称する。このLED構造体は、図3(a)~(c)に示されるごとくセラミックス等からなる矩形板状の基板2と、基板2の上面に実装された発光素子であるLED素子3及び抵抗4と、基板2の下面に一体的に立設されたコネクタ5等を有している。基板2には、不図示の配線パターンが印刷されており、LED素子3及び抵抗4がその配線パターンの定位置に実装されている。LED素子3は表面実装型と称される発光素子である。図3(c)中の符号SDは抵抗4を固定している半田である。コネクタ5は、ホルダー内に絶縁体6などを介して立設された対をなすピン状の給電端子7,7を有し、外部電力が両給電端子7を介して供給される。すると、LED素子3は抵抗4を介して加えられる電圧により発光する。図3(a)中の符号7aは基板上面に突出されている給電端子7の基端である。
【0018】
図4及び図5は、被覆体8及び導光体9をインサート成形により上記LED構造体に一体に形成する射出成型機を構成している射出成形金型30の一部を模式的に示している。射出成形金型30は、複数の分割金型にて構成されており、LED構造体を嵌め込む嵌合空間及び被覆体8と導光体9に対応した射出空間つまりキャビティ31を区画形成している。そして、キャビティ31には、LED構造体を嵌合空間に嵌め込んだ状態で、溶融された透明の樹脂材が図示しない射出成型機のノズルからスプール等を介して高圧注入される。図5の左図では注入された透明の樹脂材を理解し易くするため黒色で示している。その後、この射出成形品は、離型されることにより図5の右側に示したごとくLED構造体に被覆体8及び導光体9が一体化されたLED照明装置となる。
【0019】
使用される樹脂材は、熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン系ポリマーとして、特にシクロオレフィンポリマー(COP)及びそれに類似の樹脂が好ましい。COPは、シクロオレフィンユニットがポリマー骨格にランダム又は交互に結合しており、その重合体は非晶質である。材料特性としては高い光学的透明性、耐熱性、低収縮性、低吸湿性、柔軟性に優れている。この例では、被覆体8及び導光体9が日本ゼオン(株)製の商品名ZEONOR(登録商標)のCOPを使用して形成されている。
【0020】
被覆体8は、図1(b)及び図5の右図に示されるごとくLED素子3の発光面と共に、基板2の上面から周囲、更に給電部を除いた下面側を被覆している。符号8aは基板2の上面側を覆っている上被覆部、符号8bは基板2の周囲を覆っている周囲被覆部、8cは基板2の下面側を覆っている下被覆部である。また、符号8dと8eは上被覆部8aにおいて抵抗4と給電端子の基端7aの存在により張り出した箇所、符号8fは下被覆部において抵抗4を基板2に固定している半田SDの存在により張り出した箇所、符号8gはコネクタ5の下端周囲を被覆している被覆部である。
【0021】
導光体9は、上被覆部8aのうち、LED素子3の発光面を覆っている箇所に一体に結合した状態で細長く延びた長尺状となっている。また、導光体9は、断面矩形からなり、全体が略リング状に形成されて柔軟性を有している。そして、導光体9は、LED素子3の発光面を覆っている箇所が光導入端9a、その反対側の端面が光導出端9bであり、LED素子3の発光面からの射出光を光導入端9aより導入し、光導出端9b側へ向けて光を導くため、両端面9a,9bの間を形成している部分が光伝達通路となる。この例では、後述するごとく導光体9がLED素子3の射出光を伝達する発光伝達通路の輝きにより点状ではなく導光体の形状、例えば、リング状の輪郭が分かるようにする。
【0022】
ここで、図6は以上のLED照明装置の使用例を示している。この例では、LED照明装置1が自動車に設けられた給電口であるエネルギー注入口10に用いられている。このエネルギー注入口10は、図示を簡略化したが、電気自動車の外装部である車体の後方側壁にあって不図示のリッドで開閉される凹所に設けられている。凹所内には、電源供給装置側の充電ガンを接触させる電気導入用コネクタの充填口20がケース11内に露出配置されている。ケース11は、ヒンジ19を支点として回動されるカバー18を有し、カバー18の開状態で充電口20を露出し、カバー18の閉状態で充電口20が覆われる。
【0023】
なお、このような構造は、例えば、特開2012-226873号公報に開示されている。但し、同公報のものは、充電口20を照らす光源が充電口外側に配設されて、カバーのヒンジ基端側、又は、カバーを係脱する係止部側に設けられた貫通孔を通して照射する構造であるため、例えば充填操作を暗いようなときに行うと、充電ガンを正確で素早く充電口に接触操作し難いものとなる。実施形態のLED照明装置1は、そのような問題を解決する構造として最適なものとなる。
【0024】
すなわち、図6(a)~(c)に示すケース11は、上縁に張り出した鍔状のフランジ12を備えており、フランジ12に対し内周縁にリング状に設けられた透光部17と、フランジ裏面に突設されてケース11の周囲壁との間に溝部15を区画している縦壁13と、縦壁13の下端に設けられて溝部15に配置された導光体9を抜け止め支持する複数の係止部13aと、縦壁13の一端側に設けられてLED照明装置1を構成している基板2及びコネクタ5を取り付ける枠部16とを有している。透光部17は、例えば、ケース11を射出形成により作製する際、透明や乳白色の壁部分として二色成形により形成される。符号14はフランジ部裏面に突設された位置決め用軸部14である。
【0025】
そして、この構造では、LED照明装置1のうち、基板2側及びコネクタ5が枠部16に対し嵌合されると共に、導光体9が溝部15に対し係止部13aを介して嵌合保持される。LED照明装置1は、図6(c)の保持状態において、電源が安定器からコネクタ5の各給電端子7及び抵抗4などを介して通電されると、LED素子3がその電圧により発光する。この構造では、LED素子3の発光面からの射出光が光導入端9aより導入され、導光体9を光伝達通路として進み光導出端9bに達し外へ導出される。このため、エネルギー供給部を区画形成しているケース10としては、導光体9が光伝達通路として照らされ、その光が透光部17である透明や乳白色の壁部分を通して充電部20の輪郭を認識されるようにし、電源供給装置側の充填ガンを充電部20に素早く正確に接続操作可能となる。
【0026】
(作動)次に、以上のLED照明装置の主な作動ないしは利点を明らかにする。まず、LED照明装置1は、LED素子3の発光面を被覆体8により覆っていることと、導光体9を被覆部8と一体に形成しているため、従来LED構造体に対し導光体9の組み付け作業を省略できると共に優れた防水・防塵効果が得られる。また、導光体9は、基板2のほぼ全体を覆っている被覆体8に一体化されているため、被覆体8との結合状態を安定保持できる。これらは、LED照明装置1が自動車の内装部以外に外装部に用いられる場合にも不用意な故障を未然に防いで品質や信頼性を向上できるようにする。
【0027】
また、導光体9は、長尺で柔軟性を有していることから、図6(a)~(c)の使用例のごとく取付相手形状に追従して配置可能となり、配置自由度を拡大できる。具体的には、LED照明装置1として、導光体9がLED素子3の射出光を伝達する発光伝達通路の輝きにより点状ではなく、図6(a)~(c)のごとく透光部17を介してリング状の輪郭を明るく照らし、それにより例えば充電部20に充電ガンを確実かつ正確に接合操作できるようにする。
【0028】
(第1実施形態の2つの変形例)図7(a)と(b)は、上記LED照明装置を構成している導光体の形状を変更した変形例1と2を示している。この説明では、上記実施形態と同じ部材や部位に同一符号を付して重複説明を省き、変更点だけを詳述する。
【0029】
図7(a)の導光体9Aは断面が矩形で真っ直ぐな棒状に形成されている。これに対し、図7(b)の導光体9Bは断面が矩形で先端側がL形に湾曲形成されている。これらは、例えば自動車の外装部に付設される方向指示器点灯用、ドアミラー点灯用、ボンネットや車室内側の点灯用を想定したものであるが、導光体の形状はこれ以外でも差し支えなく、使用目的や配置部等に応じて任意に設計されるものである。
【0030】
(第2実施形態)本発明の第2実施形態のLED照明装置1Aは、図8(a)~図9(c)に示されるごとく車体やドアのパネル25に設けられた取付穴25aに対し着脱可能なホールキャップないしはホールプラグを兼ねる構成である。なお、この説明でも、上記実施形態と同じ部材や部位に同一符号を付して重複説明を極力省く。
【0031】
すなわち、LED照明装置1Aは、基板2に実装されたLED素子3及び該LED素子3の発光面を覆っている透明の被覆体8Aと、LED素子3の発光面からの射出光を導入し光導出端より導出する導光体9Aとを備えている。また、被覆体8Aは、パネル25の取付穴25aに差し込む差込部8h、及び差込部8hを取付穴25aから抜止可能にする係合部である係合爪8i、並びにフランジ部8jを一体に形成している。
【0032】
ここで、被覆体8Aは、図9(b)に示されるごとくLED素子3の発光面と共に、基板2の上面から周囲、更に給電部を除いた下面側を被覆し、加えて係合爪8i付きの差込部8h及びフランジ部8jを一体に形成している。符号8aは基板2の上面側を覆っている上被覆部、符号8bは基板2の周囲を覆っている周囲被覆部、8cは基板2の下面側を覆っている下面被覆部である。下面被覆部8cにはコネクタ5の上端側が埋設されている。つまり、コネクタ5は、上端側が下面被覆部8cで覆われた状態で基板2に立設されている。コネクタ5内の絶縁体6や給電端子7は図示を省略している。
【0033】
差込部8hは、下面被覆部8cに一体化された状態で被覆部8Aと所定の隙間S1を保って概略有底筒状に突出されている。差込部8hの先端外周にはフランジ部8jが傘状に一体化されている。フランジ部8jは、差込部8hを取付穴25aに差し込んだ際にパネル25の上面に弾性圧接し、その圧接状態で取付穴25aに対する差込部8hの過剰な差込量を規制したり、取付穴25aから液などの浸入を阻止可能にする。差込部8hの外周には係合爪8iが突出されている。係合爪8iは、図9(c)のごとく差込部hを取付穴25aに差し込む過程で縮径変位し、取付穴25aを通過したときに元の状態に弾性復帰して取付穴25aに対し抜止可能に弾性係合する。なお、係合爪8iは、差込部8hの全周に突出しているが、差込部8hの複数箇所に突出する構成でも差し支えない。
【0034】
導光体9Aは、上被覆部8aのうち、LED素子3の発光面を覆っている箇所に凸状に一体化されている。そして、導光体9Aは、LED素子3の発光面を覆っている内側が光導入端、外端面が平面の光導出端9aであり、LED素子3の発光面からの射出光を光導入端より導入し、光導出端側から外へ向けて光を照射する。
【0035】
以上のLED照明装置1Aは、使い方の一例としてホールキャップないしはホールプラグを兼ねる構成であり、ドアが開いたときにLED素子3の光を導光体9aを介して照射して後方にくる車や人にドアの開状態を分かるよう警告して安全性を向上する。LED照明装置1Aは、この点で特許文献2と同様であるが、文献2の構成に比べて簡易かつ低コストで提供できる。
【0036】
(第2実施形態の変形例)図8(b)と図10(a)~(c)は、上記LED照明装置1Aを構成している被覆体の形状及びコネクタ5を省略した変形例を示している。この説明でも、上記各実施形態と同じ部材や部位に同一符号を付して重複説明を極力省く。
【0037】
この変形例は、第2実施形態のLED照明装置1Aに比べ被覆部8Aと差込部8hの間の隙間S2が狭くなっている点、導光体9Bの光導出端9aが平面ではなく球面つまり凹状に形成されている点、上記コネクタ5が省略されている点などで異なっている。このうち、隙間S2の大きさは差込部8hの形状などに応じて設計される。光導出端9aは、凹状ないしは凹レンズ状に形成されていると光の拡散効果が期待できる。コネクタ5はこの例のごとく省略可能であり省略によりコスト低減が図られる。
【0038】
なお、以上の本発明は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は以上の各実施形態や変形例を参考にして更に変更したり展開可能なものである。その例として、第1実施形態の用途としては、LED照明装置を電気自動車の給電口であるエネルギー注入口に使用した例を挙げたが、これに限られずガソリン車であればエネルギー注入口として給油口の照明用であってもよく、更にトランクや車室内の照明用でもよい。
【0039】
第2実施形態の用途としては、自動車のドアパネルに限られず、車体パネルの取付穴に着脱されるホールキャップないしはホールプラグでも差し支えない。また、基板に実装されたLED素子つまりLED構造体としては表面実装型以外にも、砲弾型の頭部形状を工夫することで砲弾型への適用も可能である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・LED照明装置
1A・・・・LED照明装置(ホールキャップ)
2・・・・・基板
3・・・・・LED素子
4・・・・・抵抗
5・・・・・コネクタ
6・・・・・絶縁体
7・・・・・給電端子(給電部)
8・・・・・被覆体
8A・・・・被覆体
8a・・・・基板上面側被覆部
8b・・・・基板周囲側被覆部
8c・・・・基板下面側被覆部
8h・・・・差込部
8i・・・・係合爪(係合部)
8j・・・・フランジ部
9・・・・・導光体
9A・・・・導光体
9B・・・・導光体
10・・・・ケース(エネルギー注入部)
11・・・・筒部
12・・・・フランジ
13・・・・縦壁
13a・・・係止部
14・・・・軸部
15・・・・溝部
16・・・・枠部
17・・・・透光部
18・・・・カバー(19はヒンジ)
20・・・・充電部
25・・・・パネル(25aは取付穴)
30・・・・射出成形型(31はキャビティ)
S1・・・・隙間
S2・・・・隙間
SD・・・・半田

なお、2020年1月22日に出願された日本国特願2020-008489号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
図2
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