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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】発電装置及びブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20230515BHJP
   B60T 13/36 20060101ALI20230515BHJP
   B60T 13/66 20060101ALI20230515BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20230515BHJP
   B60T 8/176 20060101ALI20230515BHJP
   B61H 11/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B60T17/00 B
B60T13/36
B60T13/66 A
B60T17/00 E
B60T15/36 A
B60T8/176 Z
B61H11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022078867
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】黒光 将
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-024327(JP,A)
【文献】特表2003-508701(JP,A)
【文献】特開平04-372453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00
B60T 13/36
B60T 13/66
B60T 15/36
B60T 8/176
B61H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付随車に設けられるとともに、前記付随車が有する空気ブレーキ装置に動力車から前記空気ブレーキ装置を駆動する圧縮空気を供給する空気溜管の空気によって発電する空気発電部と、
前記空気溜管から前記空気発電部への空気の供給を制御する発電制御弁と、を備える
発電装置。
【請求項2】
前記空気発電部から供給された電力で動作して前記発電制御弁を制御する制御部を備える
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記空気溜管の圧縮空気の圧力を取得する圧力取得部を備え、
前記制御部は、前記空気溜管の圧縮空気の圧力が所定値未満となると前記発電制御弁を制御して前記空気溜管から前記空気発電部への圧縮空気の供給を停止する
請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記空気溜管の圧縮空気の圧力が前記所定値以上となると前記発電制御弁を制御して前記空気溜管から前記空気発電部へ空気を供給する
請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記空気ブレーキ装置が制動しているときに前記発電制御弁を制御して前記空気溜管から前記空気発電部への圧縮空気の供給を停止する
請求項2に記載の発電装置。
【請求項6】
前記制御部は、空気の圧力変化を空気信号として前記動力車から前記付随車に供給するブレーキ管によって駆動されて前記空気溜管の圧縮空気を調圧して前記空気ブレーキ装置に供給するブレーキ制御弁の駆動状態から前記空気ブレーキ装置の制動状態を判定する
請求項5に記載の発電装置。
【請求項7】
付随車に設けられるとともに、前記付随車が有する空気ブレーキ装置に動力車から圧縮空気を供給する空気溜管の空気によって発電する空気発電部と、
空気の圧力変化を空気信号として前記動力車から前記付随車に供給するブレーキ管によって駆動されて前記空気溜管の圧縮空気を調圧して前記空気ブレーキ装置に供給するブレーキ制御弁と、
前記空気溜管から前記空気発電部への圧縮空気の供給を制御する発電制御弁と、
前記空気発電部から供給された電力で動作して前記発電制御弁を制御する制御部と、を備える
ブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記付随車の滑走を検知する滑走検知部を備え、
前記制御部は、前記滑走検知部が滑走を検知したときに前記空気ブレーキ装置に滑走制御を行う滑走防止弁も制御する
請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置及びブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のブレーキシステムは、空気の圧力変化を空気信号として動力車から貨車や旅客車等の付随車に供給するブレーキ管と、ブレーキ装置を駆動する空気を動力車から付随車に供給する空気溜管とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-372453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のブレーキシステムでは、各付随車のブレーキ装置に同様の信号が入力され、同様の圧力によってブレーキ装置が駆動される。このように空気信号によって一律に制御されるブレーキシステムでは、各付随車の状況を把握するためには電源が必要である。よって、付随車において電源を確保することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する発電装置は、付随車が有する空気ブレーキ装置に動力車から前記空気ブレーキ装置を駆動する圧縮空気を供給する空気溜管の空気によって発電する空気発電部と、前記空気溜管から前記空気発電部への空気の供給を制御する発電制御弁と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、付随車には空気ブレーキ装置を駆動する空気が空気溜管によって供給されているので、この空気溜管の空気によって空気発電部が発電することで付随車において電源を得ることができる。
【0007】
上記発電装置について、前記空気発電部から供給された電力で動作して前記発電制御弁を制御する制御部を備える。
上記発電装置について、前記空気溜管の圧縮空気の圧力を取得する圧力取得部と、前記制御部は、前記空気溜管の圧縮空気の圧力が所定値未満となると前記発電制御弁を制御して前記空気溜管から前記空気発電部への圧縮空気の供給を停止することが好ましい。
【0008】
上記発電装置について、前記制御部は、前記空気溜管の圧縮空気の圧力が前記所定値以上となると前記発電制御弁を制御して前記空気溜管から前記空気発電部へ空気を供給することが好ましい。
【0009】
上記発電装置について、前記制御部は、前記空気ブレーキ装置が駆動しているときに前記発電制御弁を制御して前記空気溜管から前記空気発電部への圧縮空気の供給を停止することが好ましい。
【0010】
上記発電装置について、前記制御部は、空気の圧力変化を空気信号として前記動力車から前記付随車に供給するブレーキ管によって駆動されて前記空気溜管の圧縮空気を調圧して前記空気ブレーキ装置に供給するブレーキ制御弁の駆動状態から前記空気ブレーキ装置の制動状態を判定することが好ましい。
【0011】
上記ブレーキ制御装置について、付随車が有する空気ブレーキ装置に動力車から圧縮空気を供給する空気溜管の空気によって発電する空気発電部と、空気の圧力変化を空気信号として前記動力車から前記付随車に供給するブレーキ管によって駆動されて前記空気溜管の圧縮空気を調圧して前記空気ブレーキ装置に供給するブレーキ制御弁と、前記空気溜管から前記空気発電部への圧縮空気の供給を制御する発電制御弁と、前記空気発電部から供給された電力で動作して前記発電制御弁を制御する制御部と、を備える。
【0012】
上記構成によれば、付随車には空気ブレーキ装置を駆動する空気が空気溜管によって供給されているので、この空気溜管の空気によって空気発電部が発電することで付随車において電源を得ることができる。また、空気発電部から供給された電力で動作する制御部が空気溜管から空気発電部への空気の供給を発電制御弁によって制御することで、空気発電部の発電を制御することができる。
【0013】
上記ブレーキ制御装置について、前記付随車の滑走を検知する滑走検知部を備え、前記制御部は、前記滑走検知部が滑走を検知したときに前記空気ブレーキ装置に滑走制御を行う滑走防止弁も制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、付随車において電源を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】列車の概略構成を示す図。
図2】第1実施形態の発電装置及びブレーキ制御装置を備えたブレーキシステムの構成を示すブロック図。
図3】同実施形態の発電装置による発電処理を示すフローチャート。
図4】同実施形態のブレーキ制御装置の滑走処理を示すフローチャート。
図5】第2実施形態の発電装置及びブレーキ制御装置を備えたブレーキシステムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図1図4を参照して、ブレーキ制御装置を備えたブレーキシステムの第1実施形態について説明する。ブレーキシステムは、ブレーキ制御装置によって制御される。発電装置は、ブレーキ制御装置に設けられている。
【0017】
(列車1)
図1に示すように、列車1では、機関車2に複数の貨車3が連結されている。機関車2は、列車1が走行するための動力源を有する動力車である。貨車3は、動力源を有さず、動力車に牽引されて動力車に付随される付随車である。機関車2及び各貨車3には、ブレーキ管BPと、空気溜管MRとが設けられている。ブレーキ管BP及び空気溜管MRは、機関車2から各貨車3に亘って設けられている。ブレーキ管BPは、空気の圧力変化を空気信号として機関車2から貨車3に供給する。空気溜管MRは、ブレーキ装置を駆動する空気を機関車2から貨車3に供給する。
【0018】
(ブレーキシステム5)
図2に示すように、ブレーキシステム5は、ブレーキ管BPから空気信号が入力されることによって空気溜管MRの圧縮空気をブレーキ装置20に供給する。ブレーキ装置20は、列車1を制動するトレッドブレーキ装置やディスクブレーキ装置等である。つまり、ブレーキ装置20は、車輪又は車軸に取り付けられるディスクである被摩擦材と、被摩擦材に接触して制動力を発生させる摩擦材と、摩擦材を駆動する駆動機構と、圧縮空気によって駆動機構を駆動する空気シリンダとを備えている。ブレーキ装置20は、貨車3の各車輪(図示略)に対して設けられ、図中では同軸上の2個を示している。ブレーキ装置20には、ブレーキ制御装置10を介して空気溜管MRの圧縮空気が供給される。ブレーキ管BPからの空気信号は、ブレーキ制御装置10に入力される。空気溜管MRの圧縮空気は、ブレーキ制御装置10に供給される。ブレーキ制御装置10は、貨車3の各台車(図示略)に設けられている。なお、ブレーキ制御装置10は、貨車3毎に設けられてもよい。ブレーキ装置20が空気ブレーキ装置に相当する。
【0019】
(ブレーキ制御装置10)
ブレーキ制御装置10は、ブレーキ制御弁11と、ブレーキ制御部12と、を備えている。ブレーキ制御弁11には、ブレーキ管BPが接続されている。ブレーキ制御弁11には、ブレーキ管BPから空気信号が入力される。また、ブレーキ制御弁11には、空気溜管MRが接続されている。ブレーキ制御弁11には、空気溜管MRの圧縮空気が供給される。ブレーキ制御弁11は、ブレーキ管BPから空気信号が入力されることによって空気溜管MRの圧縮空気を調圧してブレーキ装置20に供給する。ブレーキ制御部12は、ブレーキ制御弁11を制御する。ブレーキ制御部12は、列車1が走行中であるときに空気発電部13にて発電を行う。ブレーキ制御弁11は、ブレーキ管BPからの空気信号によって動作可能である。そして、ブレーキ制御弁11は、ブレーキ制御部12によって制御されることで状況に応じた細かなブレーキ制御が可能となる。
【0020】
ブレーキ制御部12は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。ブレーキ制御部12は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはその組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。ブレーキ制御部12は、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。ブレーキ制御部12は、記憶部又はそれ以外の記憶媒体からオペレーティングシステムやその他のプログラムをメモリにロードし、メモリから取り出した命令を実行する演算装置である。
【0021】
ブレーキ制御弁11とブレーキ装置20との間には、応荷重弁21が設けられている。応荷重弁21は、各車輪に対して設けられている。応荷重弁21には、測量弁22が接続されている。測量弁22は、車輪が設けられた位置において貨車3から台車に掛かる応荷重を計測して、応荷重を応荷重弁21に出力する。
【0022】
応荷重弁21とブレーキ装置20との間には、滑走防止弁23が設けられている。滑走防止弁23は、各ブレーキ装置20に対して設けられている。滑走防止弁23は、ブレーキ制御部12からの電気信号によって動作する。ブレーキ制御部12には、滑走検知部24が接続されている。滑走検知部24は、貨車3の車輪の滑走を検知するとブレーキ制御部12に滑走検知を出力する。ブレーキ制御部12は、滑走検知部24から滑走検知が入力されたときに滑走防止弁23を動作させる電気信号を出力する。ブレーキ制御部12は、滑走防止弁23に滑走制御を行わせる。滑走制御は、車輪が滑走しないよう制動を緩めて再び制動を行う制御である。
【0023】
(発電装置6)
ブレーキ制御装置10には、発電装置6が設けられている。発電装置6は、空気発電部13と、発電制御弁14と、蓄電池15と、を備えている。空気発電部13は、空気溜管MRの圧縮空気によって発電する。空気発電部13は、例えば空圧モータであって、空気溜管MRの圧縮空気が供給されることでモータのロータが回転して発電を行う。発電制御弁14は、空気溜管MRから空気発電部13への空気の供給を制御する。発電制御弁14は、電磁ソレノイドと、弁体とを備えている。電磁ソレノイドは、空気発電部13によって制御される。弁体は、電磁ソレノイドによって駆動される。発電制御弁14が開弁すると空気溜管MRの圧縮空気が空気発電部13に供給され、発電制御弁14が閉弁すると空気溜管MRの圧縮空気の空気発電部13への供給が停止される。蓄電池15は、空気発電部13が発電した電気を蓄える。ブレーキ制御部12は、空気発電部13から供給された電力で動作して発電制御弁14を制御する。なお、空気発電部13は、空気溜管MRの圧縮空気が供給される管に羽根を有する回転体を設置して、回転体の回転を発電モータに伝達することで発電するものでもよい。
【0024】
空気溜管MRからブレーキ制御弁11に接続される接続管には、検知部16が設けられている。検知部16は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力を検知して、検知結果をブレーキ制御部12に出力する。なお、ブレーキ制御部12が圧力取得部に相当する。
【0025】
ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値未満となると発電制御弁14を閉弁して空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。空気溜管MRの圧縮空気の圧力の所定値は、空気溜管MRの圧縮空気によってブレーキ装置20を駆動するために最低限必要な圧力である。また、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値以上となると発電制御弁14を開弁して空気溜管MRから空気発電部13へ圧縮空気を供給する。
【0026】
ブレーキ制御部12は、ブレーキ装置20が制動しているときに発電制御弁14を閉弁して空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。ブレーキ制御部12は、ブレーキ制御弁11の駆動状態からブレーキ装置20の制動状態を判定する。すなわち、ブレーキ制御部12は、ブレーキ制御弁11にブレーキ管BPから空気信号が供給されている、又はブレーキ制御弁11から空気溜管MRの圧縮空気が供給されているときにブレーキ装置20が制動状態であると判定する。ブレーキ制御弁11は、駆動状態を検知するセンサ(図示略)を備える。ブレーキ制御部12は、当該センサからブレーキ制御弁11の駆動状態を取得する。
【0027】
(発電処理)
次に、図3を参照して、上記のように構成されたブレーキ制御装置10による発電処理について説明する。列車1が停止しているときには、発電制御弁14は、開いており、空気発電部13に圧縮空気が提供される。空気溜管MRの圧縮空気により空気発電部13が発電し、一定以上の電力が蓄電池15に蓄えられるとブレーキ制御部12が起動する。
【0028】
図3に示すように、ブレーキ制御装置10は、列車1が走行中であるか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRから圧縮空気が供給されていることで列車1が走行中であるか否かを判定する。ここで言う「走行中」とは機関車2が起動していることを意味している。そして、ブレーキ制御部12は、列車1が走行中ではないと判定した場合には(ステップS11:NO)、列車1が走行中となるまで待機する。
【0029】
一方、ブレーキ制御装置10は、列車1が走行中であると判定した場合には(ステップS11:YES)、ステップS12に移行する。
続いて、ブレーキ制御装置10は、ブレーキ装置20が貨車3に対して制動力を発生させている状態(制動状態)であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、ブレーキ制御部12は、ブレーキ制御弁11にブレーキ管BPから空気信号が入力されている、又はブレーキ制御弁11から空気溜管MRの圧縮空気が供給されているときにブレーキ装置20が制動状態であると判定する。
【0030】
そして、ブレーキ制御部12は、ブレーキ装置20が制動状態であると判定した場合には(ステップS12:YES)、発電制御弁14を閉じる(ステップS15)。すなわち、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気がブレーキ装置20で使用されているので、発電制御弁14を閉じることで、空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。
【0031】
一方、ブレーキ制御部12は、ブレーキ装置20が制動状態でないと判定した場合には(ステップS12:NO)、ステップS13に移行する。
ブレーキ制御装置10は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS13)。所定値とは、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が空気溜管MRの圧縮空気によってブレーキ装置20を駆動するために最低限必要な圧力である。
【0032】
そして、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値未満であると判定した場合には(ステップS13:NO)、発電制御弁14を閉じる(ステップS15)。すなわち、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が低下している際に、発電制御弁14を閉じて、空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。
【0033】
一方、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値以上であると判定した場合には(ステップS13:YES)、ステップS14に移行する。
ブレーキ制御装置10は、発電制御弁14を開く(ステップS14)。すなわち、列車1は制動しておらず、空気溜管MRの圧縮空気の圧力は所定値以上であるので、ブレーキ制御部12は、発電制御弁14を開いて、空気溜管MRの圧縮空気を空気発電部13に供給する。空気発電部13は、空気溜管MRから供給された圧縮空気で発電を行い、蓄電池15を蓄電する。なお、ブレーキ制御部12は、蓄電池15の蓄電量に基づいて発電制御弁14を制御してもよい。より詳細には、蓄電量が第1閾値に達したら発電制御弁14を閉じて発電を停止し、その後、蓄電量が第1閾値よりも小さい第2閾値まで減ったら発電制御弁14を開いて発電を行ってもよい。
【0034】
続いて、ブレーキ制御装置10は、列車1が停止したか否かを判定する(ステップS16)。より詳細には、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRからの圧縮空気の供給が停止することで列車1が停止したか否かを判定する。列車1の走行時に列車1を制動するには空気溜管MRの空気が必要であるため、空気溜管MRから圧縮空気の供給が停止されているということは列車1が停止している。ブレーキ制御部12は、列車1が停止していないと判定すると(ステップS16:NO)、ステップS12に移行する。
【0035】
一方、ブレーキ制御部12は、列車1が停止していると判定すると(ステップS16:YES)、ステップS17に移行する。
ブレーキ制御装置10は、発電制御弁14を閉じる(ステップS17)。すなわち、ブレーキ制御部12は、空気溜管MRの圧縮空気が空気発電部13に供給されないように、発電制御弁14を閉じて、空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。
【0036】
(滑走処理)
次に、図4を参照して、ブレーキ制御装置10による滑走処理について説明する。
ブレーキ制御装置10は、列車1が走行中に滑走を検知したか否かを判定する(ステップS21)。すなわち、ブレーキ制御部12は、滑走検知部24が滑走を検知して滑走検知を出力したことによって滑走を検知したか否かを判定する。そして、ブレーキ制御部12は、滑走を検知しない場合には(ステップS21:NO)、滑走を検知するため待機する。
【0037】
一方、ブレーキ制御装置10は、滑走を検知したと判定した場合には(ステップS21:YES)、滑走制御を行う(ステップS22)。すなわち、ブレーキ制御部12は、滑走防止弁23を動作させる電気信号を出力して、滑走防止弁23に滑走制御を行わせる。
【0038】
上記によれば、ブレーキ制御装置10に発電装置6が設けられることによって、ブレーキ制御装置10は、電源を得ることができる。このため、発電された電力で動作するブレーキ制御部12がブレーキ制御弁11を制御することによって状況に応じたブレーキ制御を行うことができる。また、電源が必要な滑走検知部24を設置することが可能となり、滑走検知部24の検知結果に応じてブレーキ制御部12が滑走防止弁23を制御することができる。
【0039】
さらに、無電源であった貨車3等の付随車において、発電装置6を追加することで電源が得られるようになる。そして、電源確保により、滑走制御、ブレーキ制御の高応答化、貨車3や貨車3に積載された貨物の状態を監視するセンサの追加、ブレーキ制御部12と外部端末との間の無線通信機能の追加などの付加価値を付与することができる。
【0040】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)貨車3にはブレーキ装置20を駆動する圧縮空気が供給される空気溜管MRの圧縮空気によって空気発電部13が発電することで貨車3において電源を得ることができる。空気溜管MRは既存の設備であって、空気溜管MRの圧縮空気は各貨車3に供給されているので、貨車3の空気溜管MRから圧縮空気が供給される部分に発電装置6を追加することで貨車3において定常電源を確保することができる。
【0041】
(1-2)空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を制御する発電制御弁14を設けることで、空気発電部13の発電を制御することができる。
【0042】
(1-3)空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値未満となるとブレーキ制御部12が発電制御弁14を制御して空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。このため、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値未満に減少することを抑制して、ブレーキ装置20の駆動に使う圧縮空気の圧力を確保することができる。
【0043】
(1-4)空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値以上となるとブレーキ制御部12が発電制御弁14を制御して空気溜管MRから空気発電部13へ圧縮空気を供給する。このため、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値以上であるときに人が操作することなく発電装置6が自動で空気発電部13が発電することができる。
【0044】
(1-5)ブレーキ装置20が制動しているときにブレーキ制御部12が発電制御弁14を制御して空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止する。このため、空気溜管MRの圧縮空気が使われるときに空気溜管MRの圧縮空気の圧力が減少することを抑制して、ブレーキ装置20の駆動に使う圧縮空気の圧力を確保することができる。
【0045】
(1-6)空気発電部13から供給された電力で動作するブレーキ制御部12が滑走防止弁23も制御する。このため、電源が機関車2から供給されていない貨車3でも、貨車3の状況に合わせてブレーキ制御部12がブレーキ装置20を制御することができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下、図5を参照して、発電装置及びブレーキ制御装置を備えたブレーキシステムの第2実施形態について説明する。この実施形態のブレーキ制御装置は、空気回路が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
(ブレーキ制御装置10)
図5に示すように、ブレーキ制御装置10は、ブレーキ制御弁11と、ブレーキ制御部12と、に加えて、電気指令制御弁17と、中継弁18と、を備えている。電気指令制御弁17には、空気溜管MRが接続されている。ブレーキ制御部12は、電気指令制御弁17と電気的に接続されており、電気指令制御弁17を制御する。ブレーキ制御部12は、電気指令制御弁17から空気溜管MRの圧縮空気が供給されているか否かを取得する。ブレーキ制御部12は、ブレーキ制御弁11を制御しない。このため、ブレーキ制御弁11とブレーキ制御部12とを電気的に接続する必要がない。
【0048】
中継弁18は、ブレーキ制御弁11と電気指令制御弁17との間に設けられている。中継弁18には、ブレーキ制御弁11からの圧縮空気と、電気指令制御弁17からの圧縮空気とが供給される。中継弁18は、ブレーキ制御弁11からの圧縮空気と、電気指令制御弁17からの圧縮空気とのうち圧力の高い方の圧縮空気をブレーキ装置20に供給する。
【0049】
電気指令制御弁17及び中継弁18を追加する構成であれば、電気指令制御弁17が接続された中継弁18をブレーキ制御弁11とブレーキ装置20との間に接続することで設置することができる。また、電気指令制御弁17に空気溜管MRからの接続管を接続する。
【0050】
次に、第2実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1-1)~(1-5)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(2-1)ブレーキ制御部12が電気指令制御弁17を制御して、ブレーキ制御弁11と電気指令制御弁17との間に中継弁18を設けることにより、発電装置6を追加する際の空気溜管MRの接続管の接続作業を容易とすることができる。
【0051】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・上記各実施形態において、空気発電部13が発電を行う条件として、蓄電池15の蓄電量が所定値未満であるときを追加してもよい。蓄電量の所定値は、ブレーキ制御部12等が動作するために必要な蓄電量である。
【0053】
・上記各実施形態において、列車1の滑走制御が不要であれば、滑走防止弁23及び滑走検知部24を省略してもよい。また、応荷重に対する制御が不要であれば、応荷重弁21及び測量弁22を省略してもよい。
【0054】
・上記各実施形態において、ブレーキ管BPやブレーキ装置20に設置したセンサによってブレーキ装置20の制動状態を検知して、ブレーキ制御部12がブレーキ装置20の制動状態を判定してもよい。このような構成によれば、ブレーキ装置20が制動状態であるか否かを的確に判定することができる。
【0055】
・上記各実施形態において、ブレーキ装置20が駆動しているときに発電制御弁14を制御して空気溜管MRから空気発電部13への空気の供給を停止した。しかしながら、ブレーキ装置20が駆動しているときも発電制御弁14を開いて空気発電部13が発電を行ってもよい。
【0056】
・上記各実施形態において、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値以上となると空気溜管MRから空気発電部13へ空気を供給した。また、空気溜管MRの圧縮空気の圧力が所定値未満となると空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を停止した。しかしながら、空気溜管MRの圧縮空気の圧力に関係なく、発電制御弁14を開いて空気発電部13が発電を行ってもよい。この場合、検知部16を省略してもよい。
【0057】
・上記各実施形態において、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【0058】
・上記各実施形態において、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0059】
BP…ブレーキ管
MR…空気溜管
1…列車
2…機関車
3…貨車
5…ブレーキシステム
6…発電装置
10…ブレーキ制御装置
11…ブレーキ制御弁
12…ブレーキ制御部
13…空気発電部
14…発電制御弁
15…蓄電池
16…検知部
17…電気指令制御弁
18…中継弁
20…ブレーキ装置
21…応荷重弁
22…測量弁
23…滑走防止弁
24…滑走検知部
【要約】
【課題】付随車において電源を確保する発電装置及びブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】発電装置6は、貨車が有するブレーキ装置20に機関車からブレーキ装置20を駆動する圧縮空気を供給する空気溜管MRの圧縮空気によって発電する空気発電部13と、空気溜管MRから空気発電部13への圧縮空気の供給を制御する発電制御弁14と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5