IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスピーティーエス テクノロジーズ リミティドの特許一覧

<>
  • 特許-プラズマ生成装置及び方法 図1
  • 特許-プラズマ生成装置及び方法 図2
  • 特許-プラズマ生成装置及び方法 図3
  • 特許-プラズマ生成装置及び方法 図4
  • 特許-プラズマ生成装置及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】プラズマ生成装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230515BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022080620
(22)【出願日】2022-05-17
(62)【分割の表示】P 2020118324の分割
【原出願日】2016-02-12
(65)【公開番号】P2022107642
(43)【公開日】2022-07-22
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】1502453.2
(32)【優先日】2015-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン アール.バーゲス
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ポール ウィルビー
(72)【発明者】
【氏名】クライブ エル ウィディックス
(72)【発明者】
【氏名】イアン モンクリーフ
(72)【発明者】
【氏名】ピー デンスレー
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-097422(JP,A)
【文献】特表2002-518165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部表面を有するチャンバと、
前記チャンバ内に誘導結合プラズマを生成するためのプラズマ生成デバイスと、
プラズマ処理の間、基材を支持するための基材支持体と、
前記プラズマ処理によって前記基材から除去された材料から、前記内部表面の少なくとも一部を保護するための、前記チャンバ内に配置されたファラデーシールドであって、前記ファラデーシールドは複数の開口を含む、ファラデーシールドと、
を含む、基材のプラズマ処理のためのプラズマ生成装置であって、
前記プラズマ生成デバイスは、
アンテナと、
前記アンテナにRF電力を供給するためのRF電力供給源と、
を含み、
前記アンテナは2つの末端を含み、一方の末端は前記RF電力に接続され、他方の末端は接地されており、前記2つの末端の両極性が1000Hz以下の周波数で交替し、前記アンテナがシングルターンコイルであり、
前記ファラデーシールドが、アースされており、縦に整列した前記複数の開口を画定する、複数の間隔を置いて離れた金属バーを含む金属ケージであり、前記複数の開口は前記チャンバをスパッタのために曝露し、
前記ファラデーシールドの前記複数の開口によって暴露された前記チャンバの前記内部表面の部分をスパッタエッチングすることで、前記基材の処理回数の増大によらずに前記基材のエッチング速度及びエッチング不均一性を維持するプラズマ生成装置。
【請求項2】
前記RF電力供給源は、0.01Hz以上の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項3】
前記RF電力供給源は、0.05Hz以上の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項4】
前記RF電力供給源は、0.1Hz以上の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項5】
前記RF電力供給源は、100Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項6】
前記RF電力供給源は、25Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項7】
前記RF電力供給源は、10Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項8】
前記アンテナが、前記チャンバの周りに水平に配置された、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項9】
前記RF電力供給源が、RF源と、前記アンテナに供給される前記RF電力の両極性の交替を生ずるスイッチとを含む、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項10】
前記基材支持体に電気的にバイアスをかけるための基材支持体電源を更に含む、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項11】
前記基材支持体電源が、前記基材支持体上にRFバイアスを生成するRF電力供給源である、請求項10に記載のプラズマ生成装置。
【請求項12】
前記基材をスパッタエッチングするよう構成された、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項13】
前記基材を前洗浄するよう構成された、請求項12に記載のプラズマ生成装置。
【請求項14】
アンテナと、前記アンテナにRF電力を供給するためのRF電力供給源とを含むプラズマ生成デバイスを用いて、チャンバ内にプラズマを生成することと、
基材をプラズマ処理することと、
を含む、基材をプラズマ処理する方法であって、
前記プラズマ処理によって前記基材から除去された材料から、前記チャンバの内部表面の少なくとも一部を保護するファラデーシールドが、前記チャンバ内に配置されており、前記ファラデーシールドは複数の開口を含み、
前記アンテナは2つの末端を含み、一方の末端は前記RF電力に接続され、他方の末端は接地されており、
前記2つの末端の両極性が1000Hz以下の周波数で交替するように、前記アンテナに前記RF電力が供給され、前記アンテナがシングルターンコイルであり、
前記ファラデーシールドが、アースされており、縦に整列した前記複数の開口を画定する、複数の間隔を置いて離れた金属バーを含む金属ケージであり、
前記ファラデーシールドの前記複数の開口によって暴露された前記チャンバの前記内部表面の部分をスパッタエッチングすることで、前記基材の処理回数の増大によらずに前記基材のエッチング速度及びエッチング不均一性を維持する、方法。
【請求項15】
前記プラズマ処理がスパッタエッチング処理である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材が、その上に形成された一つ又は複数の金属層を有する半導体材料を含み、前記スパッタエッチング処理は、前記一つ又は複数の金属層から材料を除去する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ生成装置、及び基材をプラズマ処理する方法、特に、限定されないがスパッタエッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業において、処理工程の前に半導体ウェハを前洗浄することは、一般的な方法である。例えば、金属層を有する半導体ウェハに関し、高品質な金属/金属界面を確実にするために、スパッタエッチング処理によってウェハ表面から材料を除去することが一般的であり望ましい。これは、再現可能な低い接触抵抗、及び良好な接着性を生ずるために望ましい。通常、この工程は、誘導コイルアンテナに囲まれた減圧チャンバから成るスパッタ前洗浄モジュール内で行われる。前洗浄される基材は、チャンバ内でプラテン上に支持される。誘導コイルアンテナはチャンバの外側の周りに巻回され、一端はインピーダンス整合回路を通してRF電源(power source)に接続される。アンテナの他端はアースされる。さらに、RF電力供給源(power supply)及び関連するインピーダンス整合回路は、プラテンにバイアスをかけるため、プラテンに接続されている。典型的に、誘導コイルアンテナの近くのチャンバ壁は、電気絶縁材料、例えばクォーツ、又はセラミックから作られ、チャンバにつながれたRF電力の減衰を最小にしている。
【0003】
稼働時には、適切な気体(典型的にはアルゴン)を、低圧(典型的には約1~10mTorr)でチャンバ内に導入し、コイルアンテナからのRF電力が誘導結合プラズマ(ICP)を生成する。プラテンのバイアスが作用して、プラズマから基材へとイオンを加速する。得られるイオン衝撃が、基材の表面をエッチングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-97422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基材からスパッタされ、チャンバの蓋及び壁の周りに再堆積した材料の蓄積に関する問題がある。この再堆積した材料は、後に放たれる粒子として蓄積する可能性がある。これは、粒子が基材に落下して混入する可能性を引き起こす。他の問題は、半導体産業において一般的に用いられる導電性層(例えば、銅、チタン、及びアルミニウム)のスパッタエッチングは、チャンバの壁上の導電性材料の蓄積につながる可能性があるということである。チャンバの壁上の導電性コーティングは、コイルアンテナによってチ
ャンバにつながれたRF電力を減衰する効果を有する。導電性コーティングの厚みは、経時的に増加する。導電性コーティングの厚みは、スパッタエッチング処理が深刻に悪化するまで増加する可能性がある。例えば、問題は、エッチング速度のふらつき、又はエッチングの均一性の欠如を発生させる可能性があり、プラズマの点火又は維持に関する問題が観察される可能性がある。
【0006】
これらの問題を回避するために、処理モジュールを頻繁にメンテナンスすることが必要であった。これは必然的に、著しいコスト及びツール停止につながる。処理量及び効率が極めて重要な製造環境において、これは非常に望ましくない。
【0007】
本発明は、少なくともその実施形態のいくつかにおいて、上記の問題を解決する。本発明は、実施形態の少なくともいくつかにおいて、少なくとも基材から基材への(substrate to substrate)処理反復性を維持しつつ、チャンバの維持洗浄の時間を延ばすことができる。さらに、本発明は、実施形態の少なくともいくつかにおいて、改善されたエッチング均一性につながる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の側面によれば、
内部表面を有するチャンバ;
チャンバ内に誘導結合プラズマを生成するためのプラズマ生成デバイス;
プラズマ処理の間、基材を支持するための基材支持体;及び
プラズマ処理によって基材から除去された材料から、内部表面の少なくとも一部を保護するための、チャンバ内に配置されたファラデーシールド;
を含む、基材のプラズマ処理のためのプラズマ生成装置であって、
プラズマ生成デバイスは、アンテナと、1000Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、アンテナにRF電力を供給するためのRF電力供給源とを含む、プラズマ生成装置が提供される。
【0009】
RF電力供給源は、0.01Hz以上、好ましくは0.05Hz以上、最も好ましくは0.1Hz以上の周波数で交替する両極性とともに、アンテナにRF電力を供給してもよい。
【0010】
RF電力供給源は、100Hz以下、好ましくは25Hz以下、最も好ましくは10Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、アンテナにRF電力を供給してもよい。
【0011】
本発明は、上述の周波数の上下限の任意の組合せを含む周波数範囲における両極性の交替に及ぶ。例えば、両極性が交替してもよい周波数レンジは、0.1~1000Hz、0.1~100Hz、0.05~5Hz、0.1~10Hz、及び全ての他の組合せの範囲を含む。
【0012】
ファラデーシールドは、アースされていてもよい。チャンバの少なくとも一部は、アースされていてもよい。例えば、チャンバの蓋は、アースされていてもよい。ファラデーシールド、及びチャンバをアースすることは、いずれも、プラズマ処理の間、チャンバ上への材料の堆積を低減するよう機能することができる。
【0013】
ファラデーシールドは、ケージであってもよい。
【0014】
ファラデーシールドは、複数の開口を含んでもよい。開口は、縦に整列したスロットでもよい。典型的に、アンテナはチャンバの周りに水平に配置されており、縦に整列したスロットを提供することは、連続的な水平方向の金属のバンドの堆積を妨げる。このことは、チャンバの内部表面に堆積された連続的な水平方向の金属のバンドは、エッチング速度の低減につながる渦電流損失を引き起こすので、有利である。
【0015】
アンテナは、シングルターンコイルを含んでもよい。これは改善された結果を引き起こすことが分かった。しかしながら、本発明は、アンテナがマルチターンコイルである実施形態にも及ぶ。
【0016】
RF電力供給源は、RF電源と、アンテナにRF電力供給源の両極性の交替を生じさせるスイッチとを含んでもよい。他の要素、例えばインピーダンス整合回路を提供してもよい。
【0017】
装置は、基材支持体を電気的にバイアスする基材支持体電源を更に含んでもよい。基材支持体電源は、基材支持体上にRFバイアスを生成するためのRF電力供給源でもよい。
【0018】
装置は、基材をスパッタエッチングするよう構成されてもよい。典型的に、この種類の装置は、基材支持体上にRFバイアスを生成するためのRF電力供給源を含む。
【0019】
装置は、基材を前洗浄するよう構成されてもよい。これらの実施例では、装置は、ある処理ツールにおけるモジュールとして提供されてもよい。
【0020】
基材は、半導体材料を含んでもよい。基材は、半導体ウェハでもよい。
【0021】
基材は、その上に形成された一つ又は複数の金属層を有する半導体材料を含んでもよい。
【0022】
本発明は、任意の特定のプラズマに特有ではない。優れた結果は、アルゴンプラズマを使用して得られたが、多くの他の気体及び気体の混合物を用いてプラズマを生成してもよいことが想定される。
【0023】
本発明の第二の側面によれば、アンテナと、アンテナにRF電力を供給するためのRF電力供給源とを含むプラズマ生成デバイスを用いて、チャンバ内にプラズマを生成すること;及び
基材をプラズマ処理すること;
を含む、基材をプラズマ処理する方法であって、
プラズマ処理によって基材から除去された材料から、チャンバの内部表面の少なくとも一部を保護するファラデーシールドが、チャンバ内に配置されており;
1000Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、アンテナにRF電力を供給する、方法が提供される。
【0024】
プラズマ処理は、スパッタエッチング処理でもよい。基材は、その上に形成された一つ又は複数の金属層を有する半導体材料を含んでもよく、スパッタエッチング処理は、一つ又は複数の金属層から材料を除去する。
【0025】
プラズマ処理によって基材から除去された材料は、金属を含んでもよく、又は金属から成ってもよい。
【0026】
本発明の第三の、広い側面によれば、
内部表面を有するチャンバ;
チャンバ内に誘導結合プラズマを生成するプラズマ生成デバイス;
プラズマ処理の間、基材を支持する基材支持体;
を含む、基材のプラズマ処理のためのプラズマ生成装置であって、
プラズマ生成デバイスは、アンテナと、1000Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、アンテナにRF電力を供給するRF電力供給源とを含む、プラズマ生成装置が提供される。
【0027】
本発明を上記に開示したが、本発明は、上述の、又は以下の記載、図面、若しくは請求項に記載された特徴のあらゆる創意的組合せに及ぶ。例えば、本発明の第一の側面に関して記載されているあらゆる特徴は、本発明の第二、及び第三の側面に関しても開示されていると考えられる。
【0028】
以下、本発明による装置及び方法の実施形態を、添付の図面を参照しながら記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は本発明の装置の断面図である。
図2図2,ファラデーシールドの斜視図である。
図3図3は、適用されたRF電圧の両極性を交替させるためのスイッチを含む、RF電力供給源を示す。
図4図4は、マラソンウェハエッチング(marathon wafer etching)処理のエッチング速度を示す。
図5図5は、マラソンウェハエッチング処理におけるエッチングの不均一性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、チャンバ12と、チャンバ12内に置かれ、処理されるウェハ16の支持として機能するプラテン14とを含む、概して10で示すプラズマ処理装置を示す。実線は、ウェハを受容する前の下降位置におけるプラテン14を示し、破線は、持ち上げられた使用中の位置にあるプラテン14を示す。チャンバ12は、蓋部分12bに配置された気体入口12a、及びポンプ口12cを含む。適切なポンピング手段に接続されたポンプ口12cを介して、チャンバ12から気体が除去される。ターボ分子ポンプを用いて、チャンバをポンピングしてよい。チャンバ12は、電気絶縁材料、例えばクォーツ、又はセラミックから形成された壁部分12d、及びウェハ装填スロット12eを更に含む。誘導コイルアンテナ18は、チャンバ12の壁領域12dの周りに、円周方向に配置されている。RF電力供給源、及びインピーダンス整合装置20によって、誘導コイルアンテナ18にRF電力が供給される。誘導コイルアンテナ18からチャンバ12へとRF電力を誘導的につなぐことによって、プラズマ22がチャンバ12内で生成される。チャンバ壁12dの電気絶縁材料は、チャンバ12につながれたRF電力の減衰を最小にする。
【0031】
装置10は、チャンバ12内に配置されたファラデーシールド24を更に含む。図2にファラデーシールド24を更に詳細に示す。図1及び2に示す実施形態では、ファラデーシールドは、縦に整列したスロット24bを画定する、複数の間隔を置いて離れた金属バー24aを含む金属ケージである。ファラデーシールドは、上リム部及び下リム部、それぞれ24c、24dを更に含む。便宜に、上リム部24cを蓋部分12bに取り付けて、ファラデーシールド24を蓋部分12bにアースできるようにしてもよい。ファラデーシールドの形状は、一般に、チャンバ12の壁部分12dの形状に適合する。図1及び2に示す実施形態では、ファラデーシールド24は、チャンバ12内に置いたとき、ファラデーシールド24が壁部分12dの内部表面から間隔を置いて離れるようなサイズの円筒形である。
【0032】
RF電力供給源20は、両極性を伴うRF電圧を適用することによって、コイルアンテナ18にRF電力を供給する。本発明によれば、両極性は低周波数で交替する。低周波数の交替は、1000Hz以下であることができる。図3は、適用されるRF電圧の両極性を適切な低周波数で切替えることができる配置を示す。図3は、図1のRF電力供給源20を更に詳細に示す。RF電力供給源20は、RF電源(図示せず)、RFインピーダンス整合装置30、及び関連するRFアンテナ回路を含む。RF電源(図示せず)は、スイッチ32を通してコイルアンテナ18につなげられたインピーダンス整合装置30を通して、RFエネルギーを供給する。スイッチ32は、第一及び第二のリレー34、36、及び第一及び第二のコンデンサ38、40を含む。それぞれのリレー34、36は、高いRF電圧を持つインプットライン、及びアースされたインプットラインを有する。それぞれのリレーは、第二のコンデンサ40の異なる末端に接続されたアウトプットラインを有する。アンテナコイル18は、第二のコンデンサ40の異なる末端へそれぞれ接続された2つの末端を有する。リレー34、36は、コイルアンテナの所望の末端にRF電力を適用し、コイルアンテナの他の末端を接地電位に保持するように、容易に制御することができる。コイルアンテナの2つの末端の間に適用されたRF電圧の両極性を、所望の低周波数で容易に交替させることもできる。当業者であれば、この結果を達成するための多くの他の適切なスイッチを、直接的な態様で実施することができる。
【0033】
標準的な従来技術のICPの配置において、コイルアンテナは、一つの末端をアースし、他の末端にRF電力を供給するように構成される。このICPコイルアンテナを稼働する従来の方法は、非対称として特徴付けられる。非対称の様式でRF電力を供給する結果、この非対称性は、生成されるプラズマにも現れる。具体的には、高いRF電位にあるコイルの末端は、その近傍に高エネルギーな「熱い」プラズマを生成する。反対に、アースされたコイルアンテナの末端は、よりエネルギーの低い、比較的「冷たい」プラズマを生ずる。本発明者は、非対称の従来技術のICPプラズマ生成技術を、図2に一般に示される種類のスロット付きファラデーシールドと組み合わせて使用する実験を行った。「熱い」、高エネルギーのプラズマの近傍(すなわち、コイルアンテナのRF駆動末端の近く)のチャンバの内壁には、実質的に又は全く堆積しないことが分かった。反対に、「冷たい」、より低エネルギーのプラズマの近傍(すなわち、コイルアンテナのアースされた末端の近く)におけるファラデーシールドのスロットに対応するチャンバの内壁は、再堆積した材料でコーティングされた。いかなる特定の理論又は推測にも制約されないが、イオン衝撃によって、すなわちチャンバの壁へ向かう強い電界によって加速された正に帯電したイオンによって、チャンバ壁の内部のスパッタ型摩耗を可能にする、コイルアンテナの一端における高電圧によって生じたと考えられる。コイルアンテナのアース末端の末端にそのような機構が存在しなければ、チャンバのこの領域の内壁に材料が堆積するかもしれない。これは、処理の問題、例えば、RF電力からプラズマへの誘導結合の部分的なブロッキングによる、エッチング速度の低下、又はエッチング均一性の悪化につながる可能性がある。更に、この領域にゆるく付着した粒状材料の剥離に関する問題は、チャンバのメンテナンス間隔を短縮することがある。従来技術に関する更なる問題は、非対称的にコイルアンテナを稼働することにより、チャンバの中心から離れたプラズマが生成されることである。エッチングプロファイルが基材の中央にこない、エッチング不均一性として現れる。
【0034】
本発明によって教示される、低周波数の両極性の切替えは、多くの実質的な利点を生ずる。一方の極性と逆の極性とを使用してコイルアンテナを繰り返し稼働することによって、プラズマの特性に関して平均化効果が得られる。これは、エッチングプロファイルを中央にし、エッチング均一性を改善する。低周波数の両極性の切替えを行うこれらの利点を実証するために、300mmのウェハを使用した実験を行った。一方の極性のみによって稼働させたコイルアンテナ、及び他方の極性のみによって稼働させたコイルアンテナを用いてエッチングを行った実験で結果を比較した。結果を表1に示す。これは、エッチング速度を少なくとも維持しつつ、低周波数の両極性の切替えを用いて、エッチング均一性が改善されることを明確に実証した。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明に従い両極性を交替させたとき、コイルアンテナの両方の末端が交互に「熱」くなる。したがって、コイル上の全ての点は、イオン衝撃によるチャンバのスパッタ型エッチングを促進する強い電界を生じるのに必要な、より高い電圧を経験する。この方法は、RF周波数で稼働するバランスドライブにコイルが接続された、従来技術の「バラン」コイル技術とは根本的に異なる点に留意する必要がある。バランコイルの場合、仮想接地が生じ、仮想接地の近傍ではチャンバのイオンエッチングが起こらない。バラン技術では、スイッチングはMHzレンジの超短波である。そのような高周波においては、スパッタリングイオン、例えばAr+の相対的可動性は相対的に低く、このことは、チャンバ内部の衝撃が非常に低減されることを意味する。これは、チャンバ壁上に再堆積した材料の望ましくない蓄積につながる。本発明は、非常に低いスイッチング周波数を利用する。低周波数では、プラズマ中に存在するイオンは電界について行くことができ、チャンバ壁のスパッタ型摩耗が行われ、効果的な洗浄につながる。
【0037】
ファラデーシールドは、チャンバの内部の少なくとも一部を、材料の望ましくない再析から保護する、物理的なシールドとして機能する。特に、ファラデーシールドは、コイルアンテナとプラズマとの間の誘導結合を減衰する導電性材料が再析することから守る、スパッターシールドとして機能することができる。ファラデーシールドは、チャンバの内部からファラデーシールド後ろのチャンバの壁まで、著しい視程が存在しない程度に、チャンバの壁に十分に近いサイズであってよく、配置されてよい。ファラデーシールドのスロットは、コイルアンテナによって生ずる電界に著しく影響を与えない十分な長さで成形されていることができる。これは、エッチングプロセスへのファラデーシールドの影響を最小にするよう機能する。水平方向の渦電流がチャンバ内を循環することが妨げられるように、スロットが縦に形成されることが好ましい。便宜に、ファラデーシールドをチャンバへとアースして、プラズマ処理の間、チャンバの表面上へのスパッタリングを最小にする。ファラデーシールドによって提供される物理的な遮蔽に加えて、更なる利点は、ファラデーシールドが、プラズマへの容量結合を防ぐのに効果的であるということである。容量結合は、不均一なプラズマ密度の一因となるおそれがある。プラズマを打つこと、処理エッチング速度、又は不均一性に関する問題がないように、誘導結合RFのあらゆる低下を最低限に保つことが好ましい。
【0038】
上述のように、ファラデーシールドに形成されたスロットを通したチャンバ壁のイオン衝撃を増加させつつ、全ての点において時間平均電界を増加させるような方法で、コイルアンテナの両極性を低周波数で切替える。このようにして、これらの内壁の暴露された部分に材料が実質的に再析しない、特に金属材料が再析しないままであるように、ファラデーシールドの開口によって暴露されたチャンバの内壁の部分を効果的にスパッタエッチングすることができる。ファラデーシールドの使用と組み合わせた低周波数の両極性の切替えは、ファラデーシールドの開口に、特に強いプラズマ光を生じさせることが分かった。この強烈な光は、開口内の位置の関数として本質的に均一である。開口内のプラズマの強度は、ファラデーシールドが所定位置にない場合より、開口に隣接したチャンバの壁上のあらゆる堆積材料をより効果的に除去する効果を有する。これは、ファラデーシールドの開口を通して、材料がチャンバの壁上へスパッタされる可能性があるという事実を、少なくとも部分的に補う。
【0039】
本発明のICPスパッタエッチング装置を用いた、及びコイルアンテナを単一で変化しない両極性によって稼働させた従来技術のICPスパッタエッチング装置を用いた、300mmのウェハで、マラソン試験を行った。銅60%及び二酸化ケイ素40%の表面領域を有するウェハをエッチングした。それぞれのマラソン試験の後、チャンバのセラミック部分を検査した。単一の両極性を用いた従来技術の態様でコイルを稼働したとき、セラミックは、設置したコイルの部分に近い領域において、再堆積材料で完全にコーティングされていたことが分かった。再堆積材料で完全にコーティングされた領域は、セラミック部分の総面積の約17%に相当した。この再堆積材料は、誘導結合を防ぐよう働き、渦電流の循環を可能にし、表面に落ちることがある粒状材料の潜在的な源である。これに対して、本発明を用いたマラソン試験の後、チャンバセラミックは、あらゆる点において全く堆積していないことが分かった。これは、長期間にわたって維持することができる、安定で均一なエッチングにつながる。
【0040】
図4及び5は、マラソン試験に関する定量的な結果を示す。図4は、エッチングされたウェハの増加数の関数としての、得られたエッチング速度を示す。図5は、エッチングされたウェハの増加数の関数としての、エッチング不均一性を示す。本発明を用いて達成されるエッチング速度及びエッチング不均一性の両方は、従来の方法に対して著しく優れることが分かった。従来技術を用いたシーケンスでは、限定された数のウェハのみエッチングすることができることが分かった。これは、20のウェハをエッチングした後、メンテナンス処理が必要だったからである。
【0041】
ファラデーシールド自体の上への再堆積材料の蓄積は、問題微粒子の潜在的な源になるかもしれない。この問題は、ペースト技術を用いて、良好な接着性を有する低応力材料でケージを被覆することによって、予防又は少なくとも低減することができる。チャンバのメンテナンスを延ばすことができるように、ファラデーシールド上のあらゆるゆるい粒状材料に張り付くよう作用する。以下の項目[1]~[17]に本発明の実施形態の例を列記する。
[1] 内部表面を有するチャンバ; 前記チャンバ内に誘導結合プラズマを生成するためのプラズマ生成デバイス; プラズマ処理の間、基材を支持するための基材支持体;及び 前記プラズマ処理によって前記基材から除去された材料から、前記内部表面の少なくとも一部を保護するための、前記チャンバ内に配置されたファラデーシールド;を含む、基材のプラズマ処理のためのプラズマ生成装置であって、 前記プラズマ生成デバイスは、アンテナと、1000Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナにRF電力を供給するためのRF電力供給源とを含む、プラズマ生成装置。
[2] 前記RF電力供給源は、0.01Hz以上、好ましくは0.05Hz以上、最も好ましくは0.1Hz以上の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、項目1に記載のプラズマ生成装置。
[3] 前記RF電力供給源は、100Hz以下、好ましくは25Hz以下、最も好ましくは10Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、項目1又は2に記載のプラズマ生成装置。
[4] 前記ファラデーシールドがアースされている、項目1~3のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[5]前記ファラデーシールドがケージである、項目1~4のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[6] 前記ファラデーシールドが複数の開口を含む、項目1~5のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[7] 前記開口が、縦に整列したスロットである、項目6に記載のプラズマ生成装置。
[8] 前記アンテナが、前記チャンバの周りに水平に配置された、項目7に記載のプラズマ生成装置。
[9] 前記アンテナがシングルターンコイルである、項目1~8のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[10] 前記RF電力供給源が、RF源と、前記アンテナに供給される前記RF電力の両極性の交替を生ずるスイッチとを含む、項目1~9のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[11] 前記基材支持体に電気的にバイアスをかけるための基材支持体電源を更に含む、項目1~10のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[12] 前記基材支持体電源が、前記基材支持体上にRFバイアスを生成するRF電力供給源である、項目11に記載のプラズマ生成装置。
[13] 前記基材をスパッタエッチングするよう構成された、項目1~12のいずれか一項に記載のプラズマ生成装置。
[14] 前記基材を前洗浄するよう構成された、項目13に記載のプラズマ生成装置。
[15] アンテナと、前記アンテナにRF電力を供給するためのRF電力供給源とを含むプラズマ生成デバイスを用いて、チャンバ内にプラズマを生成すること;及び 基材をプラズマ処理すること;を含む、基材をプラズマ処理する方法であって、 前記プラズマ処理によって前記基材から除去された材料から、前記チャンバの内部表面の少なくとも一部を保護するファラデーシールドが、前記チャンバ内に配置されており; 1000Hz以下の周波数で交替する両極性とともに、前記アンテナに前記RF電力を供給する、方法。
[16] 前記プラズマ処理がスパッタエッチング処理である、項目15に記載の方法。
[17] 前記基材が、その上に形成された一つ又は複数の金属層を有する半導体材料を含み、前記スパッタエッチング処理は、前記一つ又は複数の金属層から材料を除去する、項目16に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5