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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】気相重合のための装置およびプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20230515BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230515BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20230515BHJP
   B01J 8/18 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F10/00 510
C08F2/34
B01J8/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022533215
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020085237
(87)【国際公開番号】W WO2021155977
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】19215247.8
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ペンゾ、ジュセッペ
(72)【発明者】
【氏名】ドリーニ、マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】リナルディ、リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ソフリッティ、シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】メイ、ジュリア
【審査官】蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-533749(JP,A)
【文献】特表2015-529271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0165605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 ~ 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒気相オレフィン重合を行なうための装置であって、
成長する重合体粒子が、速い流動化または輸送条件下で上方に流れるように構成されて配置された少なくとも第1の重合ゾーン(1)と、前記成長する重合体粒子が下方に流れるように構成されて配置された少なくとも第2の重合ゾーン(2)と、円筒状を有するガス/固体分離ゾーン(4)とを含み;前記第2の重合ゾーン(2)は、前記分離ゾーン(4)に連結された上部(5)と、前記上部(5)に連結された下部(6)と、ガスおよび/または液体を前記第2の重合ゾーン(2)内に供給するためのライン(13)とを有し;前記第1の重合ゾーン(1)は、連結部(3)によって前記分離ゾーン(4)に連結され;前記第2の重合ゾーン(2)の下部(6)は、連結部(9)によって前記第1の重合ゾーン(1)の下部に連結され;
前記分離ゾーン(4)の直径D01対前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03の比D01/D03は1.02~1.5であり;
前記分離ゾーン(4)の高さH01対前記分離ゾーン(4)の直径D01の比H01/D01は2.5~4.5であり、
前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03対前記第2の重合ゾーン(2)の下部(6)の直径D04の比D03/D04は1.2~2でり、且つ
前記分離ゾーン(4)と前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)は、高さH02を有する第1の連結部(7a)によって連結され、前記連結部(7a)の直径は、前記分離ゾーン(4)の直径D01から前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03に一定に減少し、及び
前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)と前記第2の重合ゾーンの下部(6)は、高さH06を有する第2の連結部(7b)によって連結され、前記連結部(7b)の直径は、前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03から前記第2の重合ゾーン(2)の下部(6)の直径D04に一定に減少する、装置。
【請求項2】
前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の高さH05対前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03の比H05/D03は2~4である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記分離ゾーン(4)を前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)に連結する前記第1の連結部(7a)の角度A01は5~25°である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の重合ゾーン(2)の上部(5)を前記第2の重合ゾーン(2)の下部(6)に連結する前記第2の連結部(7b)の角度A02は5~25°である、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の装置における触媒気相オレフィン重合を行なうためのプロセスであって、1つ以上のオレフィンを前記装置内に供給するステップ、少なくとも第1の重合ゾーン(1)および少なくとも第2の重合ゾーン(2)における反応条件下で前記オレフィンおよび触媒を接触させ、前記少なくとも第2の重合ゾーン(2)から重合体生成物を収集するステップを含み、成長する重合体粒子が速い流動化または輸送条件下で前記第1の重合ゾーン(1)を通って上方に流れ、前記第1の重合ゾーン(1)を離れ、ガス/固体分離ゾーン(4)を通過して前記重合体粒子が重力の作用下に下方に流れる前記第2の重合ゾーン(2)に入り、前記第2の重合ゾーン(2)を離れて少なくとも部分的に前記第1の重合ゾーン(1)に再導入され、前記第1の重合ゾーン(1)と前記第2の重合ゾーン(2)との間に重合体の循環が確立され、前記第2の重合ゾーン(2)は高密度化重合体粒子の床を含む、プロセス。
【請求項6】
前記重合は、エチレンの単独重合またはエチレンと1‐ブテン、1‐ヘキセンおよび1‐オクテンからなる群より選択される1つ以上の他のオレフィンとの共重合であるか、または前記重合は、プロピレンの単独重合またはプロピレンとエチレン、1‐ブテンおよび1‐ヘキセンからなる群より選択される1つ以上の他のオレフィンとの共重合である、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2つの相互に連結された重合ゾーンを有する触媒気相オレフィン重合を行なうための装置を提供し、この装置における触媒気相オレフィン重合を行なうためのプロセスをさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、今日製造されて使用されている合成重合体の中で断然最大のクラスである。それらの成功は、主に低い生産コスト、軽い重量および高い耐化学性に起因する。共重合、ブレンディングおよび添加剤を使用してエラストマーから熱可塑性プラスチック、高強度繊維に至る製品を製造することにより、広範囲な機械的特性が可能である。1930年代以降に確立されているが、これらの材料の生産プロセスと性能を改善することは、依然として進行中の研究テーマである。
【0003】
今日、ポリオレフィンの生産のために広く使用される技術は、気相重合、特に重合体が垂直円筒状ゾーンに閉じ込められる流動床(fluidized-bed)気相プロセスである。一般に、反応器から退出した反応ガスは、圧縮機によって取り込まれ、冷却されて、補充単量体(make-up monomer)および適切な量の水素と共に、床の底へ配分器を通じて返送される。ガスに対する固体の飛沫同伴は、ガス速度が低下される反応器の上部の適切な寸法化(dimensioning)によって制限される。循環するガスの流量は、最低流動化速度を超えかつ「輸送速度」を下回る適切な範囲内の速度を確保できるように、設定される。反応熱は、循環ガスを冷却することによって除去され、触媒成分は、重合容器内に連続的に供給され得る。重合体の組成は、気相の組成によって制御され得る。しかしながら、流動床プロセスの限界は、特に分子量分布を広げたり、異なる共単量体組成を有する共重合体を得ることと関連して、得られる重合体の分子量分布を制御し難いということにある。分子量分布および共単量体分布の幅は、重合体のレオロジー挙動、それにしたがって溶融物の加工性の両方、そして製品の最終的な機械的特性に影響を及ぼすため、必要に応じて製造される重合体の構造を調整できるということは魅力的であろう。したがって、研究と産業の主な焦点のうちの1つは、ポリオレフィンの組成に影響を与えることのできる戦略にあった。
【0004】
WO97/04015は、第1と第2の相互に連結された重合ゾーンで行われるα‐オレフィンCH=CHR(ここで、Rは、水素または1~12個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである)の気相重合プロセスを言及し、ここに上記α‐オレフィンのうち1つ以上が反応条件下で触媒の存在下で供給されて重合体生成物が排出され、成長する重合体粒子が速い流動化条件下で上記重合ゾーンのうちの第1のゾーンを通って流れ、上記第1の重合ゾーンを離れて重合体粒子が重力の作用下で高密度化形態(densified form)で流れる上記重合ゾーンのうちの第2のゾーンに入り、上記第2の重合ゾーンを離れて上記第1の重合ゾーンに少なくとも部分的に再導入され、2つの重合ゾーンの間で重合体の循環が確立される。
【0005】
WO97/04015に説明されている技術に基づいて、WO00/02929は、上昇管(riser)、すなわち、第1の重合ゾーンに存在するガス混合物が下降管(downcomer)、すなわち、第2の重合ゾーンに入るのを完全にまたは部分的に防止することのできる手段が提供され、上昇管に存在するガス混合物とは異なる組成を有するガスおよび/または液体混合物が、異なる組成を有する重合体の反応器内製造のブレンドを達成するために、下降管に導入されるプロセスをさらに提示している。
【0006】
WO2012/031986は、重合体粒子が速い流動化条件または輸送条件下で上方に流れる上昇管と、重力の作用下で重合体粒子が高密度化形態で下方に流れる下降管を含む相互に連結された重合ゾーンを有する気相重合反応器を提案し、下降管の底は、輸送区間によって上昇管の下部領域に連結され、輸送区間は、下降管から上昇管に下降する屈曲(bend)として設計され;反応器には、輸送区間の流入口でキャリアガスを供給するためのラインと輸送区間の屈曲に沿って少なくとも50°の角度で輸送区間の流入口から延びられるガス分配グリッドがさらに提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
気相重合は、持続的に発展されてきたが、特に重合体の分子量分布の制御と関連して、さらなる改善が依然として必要である。
【0008】
したがって、今日の複雑な加工および製品要件を充足する、調整された重合体構造物の生産を可能にする気相重合用装置を提供する必要がある。
【0009】
本開示は、触媒気相オレフィン重合を行なうための装置を提供し、装置は、
成長する重合体粒子が、速い流動化または輸送条件下で上方に流れるように構成されて配置された少なくとも第1の重合ゾーンと、成長する重合体粒子が下方に流れるように構成されて配置された少なくとも第2の重合ゾーンと、円筒状を有するガス/固体分離ゾーンとを含み;第2の重合ゾーンは、分離ゾーンに連結された上部と、上部に連結された下部と、ガスおよび/または液体を第2の重合ゾーン内に供給するためのラインとを有し;第1の重合ゾーンは、連結部によって分離ゾーンに連結され;第2の重合ゾーンの下部は、連結部によって第1の重合ゾーンの下部に連結され;
分離ゾーン(4)の直径D01対第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03の比は1.02~1.5、好ましくは1.05~1.4、より好ましくは1.08~1.3であり;
分離ゾーンの高さH01対分離ゾーンの直径D01の比は2.5~4.5、好ましくは2.8~4.2、より好ましくは2.9~4であり、
第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03対第2の重合ゾーン(2)の下部(6)の直径D04の比は1.2~2、好ましくは1.3~1.8、より好ましくは1.4~1.7である。
【0010】
いくつかの実施形態において、第2の重合ゾーン(2)の上部の高さH05は5000~10000mm、好ましくは6000~8000mm、より好ましくは6800~7200mmである。
【0011】
いくつかの実施形態において、第2の重合ゾーンの上部の高さH05対第2の重合ゾーンの上部の直径D03の比は2~4、好ましくは2~3.8、より好ましくは2~3.6である。
【0012】
いくつかの実施形態において、分離ゾーンと第2の重合ゾーンの上部は、高さH02を有する第1の連結部によって連結され、連結部の直径は、分離ゾーンの直径D01から第2の重合ゾーンの上部の直径D03に一定に減少する。
【0013】
いくつかの実施形態において、第2の重合ゾーンの上部および第2の重合ゾーンの下部は、高さH06を有する第2の連結部をによって連結され、ここで連結部の直径は、第2の重合ゾーンの上部の直径D03から第2の重合ゾーンの下部の直径D04に一定に減少する。
【0014】
いくつかの実施形態において、分離ゾーンを第2の重合ゾーンの上部に連結する第1の連結部の角度A01は5~25°であり、好ましくは8~20°、より好ましくは10~15°である。
【0015】
いくつかの実施形態において、第2の重合ゾーンの上部を第2の重合ゾーンの下部に連結する第2の連結部の角度A02は5~25°、好ましくは8~20°、より好ましくは10~15°である。
【0016】
いくつかの実施形態において、第2の重合ゾーンの上部の底接線(tangent line)から第2の重合ゾーン内への供給ラインの入口までの高さH05′は2000~6000mm、好ましくは2500~5000mm、より好ましくは3000~4500mmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、装置は、以下のうちの少なくとも1つをさらに含む:
i) 分離ゾーンを連結部または第1の重合ゾーンに再導入する1つ以上のポイントに連結する再循環ライン;
ii) 触媒を第1の重合ゾーン内に供給するためのライン;
iii) 装置内に単量体を供給するためのライン;
iv) 第2の重合ゾーンから重合体を排出するための排出システム。
【0018】
本開示は、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置における触媒気相オレフィン重合を行なうためのプロセスであって、1つ以上のオレフィンを装置内に供給するステップ、少なくとも第1の重合ゾーンおよび少なくとも第2の重合ゾーンにおける反応条件下でオレフィンおよび触媒を接触させ、少なくとも第2の重合ゾーンから重合体生成物を収集するステップを含み、成長する重合体粒子が速い流動化または輸送条件下で第1の重合ゾーンを通って上方に流れ、第1の重合ゾーンを離れ、ガス/固体分離ゾーンを通過して重合体粒子が重力の作用下に下方に流れる第2の重合ゾーンに入り、第2の重合ゾーンを離れて少なくとも部分的に第1の重合ゾーンに再導入され、第1の重合ゾーンと第2の重合ゾーンとの間に重合体の循環が確立され、第2の重合ゾーンは高密度化重合体粒子の床を含む、プロセスをさらに提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1の重合ゾーンに存在するガス混合物は、ガスまたは液体を供給ラインを介して第2の重合ゾーンに導入することにより、第2の重合ゾーンの上部へ下方に流れることが完全にまたは部分的に防止され;第2の重合ゾーンに存在するガス混合物は、第1の重合ゾーンに存在するガス混合物とは異なる。
【0020】
いくつかの実施形態において、高密度化重合体粒子の床の表面は、第2の重合ゾーンの上部に位置する。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の重合ゾーンに存在するガス混合物は、高密度化重合体粒子の床の表面の上または下で第2の重合ゾーンの上部にガスまたは液体を導入することにより、第2の重合ゾーンに入ることが防止される。
【0022】
いくつかの実施形態において、重合は、エチレンの単独重合またはエチレンと1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群より選択される1つ以上の他のオレフィンとの共重合であるか、または重合は、プロピレンの単独重合またはプロピレンとエチレン、1-ブテン、および1-ヘキセンからなる群より選択される1つ以上の他のオレフィンとの共重合である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本開示による装置の一実施形態の概略図である。
図2図2は、第2の重合ゾーン(2)の上端部を拡大抜粋図であり; - 高さH01および直径D01を有する分離ゾーン(4); - 高さH05および直径D03を有する第2の重合ゾーン(2)の上部(5); - 高さH02と関連角度A01を有する第1の連結部(7a);および - 高さH06と関連角度A02を有する第2の連結部(7b)を詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の過程内において、本発明者らは成長する重合体粒子が速い流動化または輸送条件下で上方に流れる第1の重合ゾーンを含み、成長する重合体粒子が下方に流れる第2の重合ゾーンを含む、触媒気相オレフィン重合を行なうための装置の設計を適用することにより、すなわち、いわゆるマルチゾーン循環反応器(MZCR;multizone circulation reactor)の設計を適用し、装置の異なる部分の間の幾何学的な比率に特別な注意を払うことによって重合の生産効能、および特に分子量分布および得られたポリオレフィンの共単量体分布の制御がさらに改善され得ることを見出した。
【0025】
したがって、本開示は、触媒気相オレフィン重合を行なうための装置であって、成長する重合体粒子が速い流動化または輸送条件下で上方に流れるように構成されて配置された円筒状を有する少なくとも第1の重合ゾーン(1)と、成長する重合体粒子が下方に流れるように構成されて配置された少なくとも第2の重合ゾーン(2)と、ガス/固体分離ゾーン(4)とを含み;第2の重合ゾーン(2)は、分離ゾーン(4)に連結された上部(5)と、上部(5)に連結された下部(6)と、ガスおよび/または液体を第2の重合ゾーン(2)内に供給するためのライン(13)とを有し;第1の重合ゾーン(1)は、連結部(3)によって分離ゾーン(4)に連結され;第2の重合ゾーン(2)の下部(6)は、連結部(9)によって第1の重合ゾーン(1)の下部に連結され;分離ゾーン(4)の高さH01対分離ゾーン(4)の直径D01の比は2.5~4.5、好ましくは2.8~4.2、より好ましくは2.9~4である、装置を提供する。
【0026】
本開示の装置において重合され得るオレフィンは、特に1-オレフィン、すなわち、末端二重結合を有する炭化水素であり、これに限定されるものではない。非極性オレフィン系化合物が好ましい。特に好ましい1-オレフィンは、線状もしくは分岐状C~C12-1-アルケン、特にエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンなどの線状C~C10-1-アルケン、または4-メチル-1-ペンテンなどの分岐状C~C10-1-アルケン、1,3-ブタジエン、1,4-ヘキサジエンまたは1,7-オクタジエンなどの共役および非共役ジエンである。様々な1-オレフィンの混合物を重合することも可能である。適切なオレフィンは、二重結合が1つ以上の環系を有することができる環状構造の一部であるものも含む。例としては、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンまたはメチルノルボルネン、あるいはジエン、たとえば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエンまたはエチルノルボルナジエンがある。2つ以上のオレフィンの混合物を重合することも可能である。
【0027】
本開示の装置は、エチレンおよびプロピレンの単独重合または共重合に使用され得、装置は、特にエチレンの単独重合または共重合に適している。プロピレン重合における好ましい共単量体は、最大40重量%のエチレン、1-ブテンおよび/または1ーヘキセン、好ましくは0.5重量%~35重量%のエチレン、1-ブテンおよび/または1-ヘキセンである。エチレン重合における共単量体として、最大20重量%、より好ましくは0.01重量%~15重量%、特に0.05重量%~12重量%のC~C-1-アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび/または1-オクテンを使用するのが好ましい。エチレンが0.1重量%~12重量%の1-ヘキセンおよび/または1-ブテンと共重合される重合が特に好ましい。
【0028】
分離ゾーン(4)の高さH01と分離ゾーン(4)の直径D01との間の比を請求された範囲内に保持することにより、第1の重合ゾーン(1)から分離ゾーン(4)に導入される、ガス/固体混合物の効果的な分離を許容する。さらに、H01/D01比で表されるように、分離ゾーン(4)の十分な高さと直径を保障することにより、第2の重合(2)ゾーン内の重合体の水準が特に高い場合であっても、分離ゾーン(4)を離れるガスの重合体キャリーオーバー(carry-over)が防止されるか、または著しく減少され得ることを見出した。
【0029】
マルチゾーン循環反応器の概念は、異なる反応条件を有する多数の反応ゾーンを提供することに依存される。重合は、循環プロセスで行われるため、効果的なプロセスと広い分子量分布を保障するために、第1の重合ゾーン(1)と第2の重合ゾーン(2)に存在するガス混合物の分離が最も重要である。本開示の過程において、分離ゾーン(4)を離れるガス内の重合体のキャリーオーバーを制限することおよび重合ゾーン(1)のガスと重合ゾーン(2)のガスからの分離を制限することに対する必要性の両方とも、分離ゾーン(4)の直径D01と第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03を調整することによって組み合わせられ得ることを見出した。好ましい実施形態において、分離ゾーン(4)の直径D01と第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03との比D01/D03は、したがって1.02~1.5、好ましくは1.05~1.4、特に好ましくは1.08~1.3である。請求された限度内に分離ゾーン(4)の直径D01と第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03との比を保持すれば、分離ゾーン(4)における効率的なガス/固体分離も可能であり、第2の重合ゾーン(2)内のガスから第1の重合ゾーン(1)に存在するガス混合物の分離が保障される。
【0030】
装置の重合能力とは別に、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の高さH05は、好ましくは5000~10000mm、より好ましくは6000~8000mm、特に6800~7200mmである。請求された範囲内の第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の高さは、ガス/固体分離ゾーン(4)の効率に影響を与えることなく適切なガス分離のための十分な粉末滞留時間と、水準制御および変動のための十分な空間を同時に保障するものと明らかになった。
【0031】
さらに、分離ゾーン(4)の分離効能にネガティブな影響を及ぼし得る、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)のオーバーフローのリスクが第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の十分な高さを保障することによって、それだけでなく第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の十分に大きい直径D03を確保することによっても最小化され得ることを見出した。好ましい実施形態において、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の高さH05と上記上部(5)の直径D03との比であるH05/D03は2~4、好ましくは2~3.8で、より好ましくは2~3.6である。
【0032】
MZCR技術の特徴の1つは、異なる重合ゾーンに存在するガス混合物が効果的に分離できるということである。したがって、上記分離の効能を高めるために多くの努力が払われてきた。現在、第1の重合ゾーン(1)に存在するガス混合物と第2の重合ゾーン(2)に存在するガス混合物の分離が、第2の重合ゾーン(2)の設計を調整することにより、さらに増加できることを見出した。本開示の好ましい実施形態において、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03と第2の重合ゾーン(2)の下部(6)の直径D04との比D03/D04は1.2~2、好ましくは1.3~1.8、より好ましくは1.4~1.7である。このような方式で、バリアガスおよび/または液体が導入される、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)における固体の速度は、第2の重合ゾーン(2)の下部(6)と比較してもはるかに低く保持され得、これはバリアが効果的になるのを妨げる流動化を回避させる。
【0033】
本開示の好ましい実施形態において、分離ゾーン(4)は、円筒状を有し、すなわち、分離ゾーン(4)の直径D01は、分離ゾーン(4)の全体高さH01にわたって一定であり/あるか、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)は、円筒状を有し、すなわち、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03は、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の全体高さH05にわたって一定である。本開示の意味内で一定の直径は、各々の直径が任意の与えられた値から5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは0.5%未満、そして具体的には0.1%未満の誤差があるものと理解されたい。
【0034】
上述のように、異なる重合ゾーンのガス混合物の分離効能は、第2の重合ゾーン(2)の設計を調整することにより、さらに増加され得る。好ましい実施形態において、分離ゾーン(4)と第2の重合ゾーン(2)の上部(5)は、したがって高さH02を有する第1の連結部(7a)によって連結され、連結部(7a)の直径は、分離ゾーン(4)の直径D01から第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03に、好ましくは連結部(7a)の総高さH02にわたって一定に減少する。第2の重合ゾーン(2)の上部(5)と第2の重合ゾーンの下部(6)は、好ましくは高さH06を有する第2の連結部(7b)によって連結され、連結部(7b)の直径は、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の直径D03から第2の重合ゾーン(2)の下部(6)の直径D04に、好ましくは第2の連結部(7b)の総高さH06にわたって一定に減少する。
【0035】
直径の減少により、第2の重合ゾーン(2)の第1の連結部(7a)と第2の連結部(7b)は、各々円錐状および/またはトロンコ(tronco)‐円錐状を有する。第1の(トロンコ‐)円錐状連結部(7a)の角度A01は好ましくは5~25°、より好ましくは8~20°、特に10~15°である。第2の(トロンコ‐)円錐状連結部(7b)の角度A02は好ましくは5~25°、より好ましくは8~20°、特に10~15°である。角度A01およびA02が設定される限界内に保持され、一般にチャンク形成をもたらす、重合体粉末の停滞が大幅に減少され得るときに、第2の重合ゾーン(2)を通って重合体の滑らかな下方の流れが保障され得ることを見出した。
【0036】
MZCR技術内において、多数の反応ゾーンの分離は、ある反応ゾーンのガス混合物が、他の反応ゾーンに入るのを防止するバリアガスまたは液体を導入することによって達成される。本開示の過程内において、分離の効能が、バリアガスおよび/または液体を第2の重合ゾーン(2)に導入のための供給ラインの入口と第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の底接線との間に一定の距離を確保することによって改善され得ることを見出した。したがって、好ましい実施形態において、本開示の装置の第2の重合ゾーン(2)の上部(5)の底接線(tangent line)から第2の重合ゾーン(2)内へガスおよび/または液体供給のための供給ライン(13)の入口までの距離H05′は2000~6000mm、好ましくは2500~5000mm、より好ましくは3000~4500mmである。
【0037】
円滑で効率的な重合を保障するために、本開示の装置は、好ましくは以下のうちの少なくとも1つをさらに含む:
i) 分離ゾーン(4)を連結部(9)および/または第1の重合ゾーン(1)に再導入する1つ以上のポイントに連結する再循環ライン(8)(好ましくは熱交換器(14)と圧縮機(15)を備える);
ii) 触媒を第1の重合ゾーン(1)内に供給するためのライン(10);
iii) 単量体を装置内に供給するためのライン(11);
iv) 第2の重合ゾーン(2)から重合体を排出するための排出システム(12)。
【0038】
当業者は、本開示の装置の少なくとも第1の重合ゾーン(1)と少なくとも第2の重合ゾーン(2)が異なる方式で連結され得、2つより多くの重合ゾーンが本開示の精神から逸脱することなく採用され得ることを認知している。適切な構造および組み合わせは、たとえば、WO00/02929およびWO97/04015に記載されている。
【0039】
本開示は、本開示の装置における触媒気相オレフィン重合を行なうためのプロセスをさらに提供する。本プロセスは、1つ以上のオレフィンを装置内に供給するステップ、少なくとも第1の重合ゾーン(1)および少なくとも第2の重合ゾーン(2)における反応条件下でオレフィンおよび触媒を接触させ、少なくとも第2の重合ゾーン(2)から重合体生成物を収集するステップを含み、成長する重合体粒子は、速い流動化または輸送条件下で第1の重合ゾーン(1)を通って上方に流れ、第1の重合ゾーン(1)を離れ、ガス/固体分離ゾーン(4)を通過して重合体粒子が重力の作用下に下方に流れる第2の重合ゾーン(2)に入り、第2の重合ゾーン(2)を離れて少なくとも部分的に第1の重合ゾーン(1)に再導入され、第1の重合ゾーン(1)と第2の重合ゾーン(2)との間に重合体の循環が確立され、第2の重合ゾーン(2)は高密度化重合体粒子の床を含む。
【0040】
本開示の好ましい実施形態において、高密度化重合体粒子の床の表面は、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)に位置する。
【0041】
得られたポリオレフィンの分子量分布を広げたり、または異なる共単量体分布を有する共重合体を得るために、第1の重合ゾーン(1)に存在するガス混合物が第2の重合ゾーン(2)に入るのを防止することによって異なる重合ゾーンが確立される。したがって、好ましい実施形態において、第1の重合ゾーン(1)に存在するガス混合物は、バリアガスおよび/または液体を供給ライン(13)を介して第2の重合ゾーン(2)に導入することにより、第2の重合ゾーン(2)の上部(5)へ下方に流れることが完全にまたは部分的に防止され;第2の重合ゾーン(2)に存在するガス混合物は、第1の重合ゾーン(1)に存在するガス混合物とは異なる。
【0042】
したがって、好ましい実施形態において、第1の重合ゾーン(1)に存在するガス混合物は、高密度化重合体粒子の床の表面の上または下で第2の重合ゾーン(2)の上部(5)にガスまたは液体を導入することにより、第2の重合ゾーン(2)に入ることが防止される。
【0043】
本開示は、以下の図によってより詳細に説明され、これらは、いかなる方式でも本開示の範囲および思想を限定するものとして理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0044】
1 第1の重合ゾーン
2 第2の重合ゾーン
3 連結部
4 分離ゾーン
5 第2の重合ゾーンの上部
6 第2の重合ゾーンの下部
7a 分離ゾーンと第2の重合ゾーンの上部を連結する第1の連結部
7b 第2の重合ゾーンの上部と下部を連結する第2の連結部
8 再循環ライン
9 連結部
10 触媒供給ライン
11 単量体供給ライン
12 重合体排出システム
13 バリアガス/液体供給ライン
14 熱交換器
15 圧縮機

図1
図2