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特許7279268ステータコア製造方法及びステータコア製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ステータコア製造方法及びステータコア製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
H02K15/085
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022567848
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2022017071
(87)【国際公開番号】W WO2022254963
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021091498
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 雄史
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-039191(JP,A)
【文献】特開2020-054077(JP,A)
【文献】特開2012-186976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し略U字状に形成された複数の導電部材をステータコアの周方向に所定の間隔で形成された複数のスロットに当該ステータコアの軸方向に順次差し込むに際し、
一の前記導電部材の両脚部の一方が隣接する他の一の前記導電部材の両脚部の他方とステータの径方向に重なるように同一の前記スロットに挿入し、
必要個数の前記導電部材を同一の手順で前記ステータコアの前記スロットに、略U字状の前記導電部材の開口側が下方へ向けられた冠状となるように順次挿入して一周させ、
当該冠状とされた前記導電部材が挿入されたスロットから周方向にスロットをずらして、再び必要個数の前記導電部材を同一の手順で前記ステータコアの前記スロットに前記冠状になるように順次挿入していく工程を含
前記導電部材の脚部が挿し込まれる前記スロットに対応して前記ステータコアの軸方向一端部に配置され、前記スロットの貫通方向に貫通され、前記ステータコアの径方向一方に開口された駒を用い、前記導電部材の脚部を前記駒の前記スロットとは反対側から前記駒に挿通させるステータコア製造方法。
【請求項2】
前記ステータコアの軸方向に配置されたリング状のスロットリングを用い、前記スロットリングの径方向側面に形成された溝部に前記駒を着脱可能に係合させる請求項1に記載のステータコア製造方法。
【請求項3】
前記駒において前記脚部が挿通される部分を、前記導電部材の入口側で広く前記導電部材の出口側で狭いテーパ状とする請求項1又は請求項2に記載のステータコア製造方法。
【請求項4】
前記ステータコアの径方向に駆動力によって前記駒を移動させる径方向移動手段を用いて前記駒を移動させる請求項1から請求項3の何れか1項に記載のステータコア製造方法。
【請求項5】
前記ステータコアと同軸的に前記駒及び前記ステータコアの少なくとも一方を回転させる回転装置を用いて前記駒及び前記ステータコアの少なくとも一方を回転させる請求項1から請求項4の何れか1項に記載のステータコア製造方法。
【請求項6】
導電性を有し略U字状に形成された複数の導電部材をステータコアの周方向に所定の間隔で形成された複数のスロットに当該ステータコアの軸方向に順次差し込むに際し、
一の前記導電部材の両脚部の一方が隣接する他の一の前記導電部材の両脚部の他方とステータの径方向に重なるように同一の前記スロットに挿入し、
必要個数の前記導電部材を同一の手順で前記ステータコアの前記スロットに、略U字状の前記導電部材の開口側が下方へ向けられた冠状となるように順次挿入して一周させ、
当該冠状とされた前記導電部材が挿入されたスロットから周方向にスロットをずらして、再び必要個数の前記導電部材を同一の手順で前記ステータコアの前記スロットに前記冠状になるように順次挿入していく工程を含み
前記スロット内に落下防止支えを配置し、前記導電部材の前記脚部を前記落下防止支えに当接させて前記脚部の落下を防止するステータコア製造方法。
【請求項7】
ステータコアの軸方向に前記ステータコアに隣接し、前記ステータコアのスロットに対し平行に貫通すると共に、少なくとも1つの前記スロットをおいて配置された少なくとも一対の駒を有し、導電性を有する導電部材の両端側の一方が一対の前記駒の一方を介して前記ステータコアの前記スロットとは反対側から挿入されて通過され、前記導電部材の両端側の他方が一対の前記駒の他方を介して前記ステータコアの前記スロットとは反対側から挿入されて通過され、前記一対のコアを前記ステータコアで隣接する他のスロットに向い合わせるステータコア製造装置
【請求項8】
前記駒の係合が可能な溝部を有し、前記ステータコアの軸方向に配置されたリング状のスロットリングを備える請求項7に記載のステータコア製造装置。
【請求項9】
前記駒における前記ステータコアとは反対側に設けられ、前記導電部材の前記脚部が当接して前記脚部の落下を防止する落下防止支えを備える請求項7又は請求項8に記載のステータコア製造装置。
【請求項10】
前記ステータコアの周方向に前記駒の互いに対向する面の間隔は、前記導電部材の入口側で広く前記導電部材の出口側で狭くなる傾斜がついている請求項7から請求項9の何れか1項に記載のステータコア製造装置。
【請求項11】
前記ステータコアの径方向に前記駒を移動させる径方向移動手段を備える請求項7から請求項10の何れか1項に記載のステータコア製造装置。
【請求項12】
前記ステータコアと同軸的に前記駒及び前記ステータコアの少なくとも一方を回転させる回転装置を備える請求項7から請求項11の何れか1項に記載のステータコア製造装置。
【請求項13】
前記導電部材の脚部は、前記ステータコアの径方向に複数層設けられ、径方向の内側又は外側の脚部が挿し込まれる請求項7から請求項12の何れか1項に記載のステータコア製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータコア製造方法及びステータコア製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-72839号公報に開示されたコイルセグメントの環状整列方法では、同心円周上に直径寸法が異なる複数の環状整列治具が並べられた状態で、各環状整列治具に複数のコイルセグメントがセットされる。これによって、全てのコイルセグメントが同心円状に整列され、コイルセグメントの組体が形成される。そして、この組体ごと、そっくり固定子コアのスロットに挿置される。
【0003】
しかしながら、この方法では、複数のコイルセグメント(導電部材)を整列させるための専用の工程が必要であるため、製造工程を簡素化する観点で改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記事実を考慮して、複数の導電部材を整列させる工程をなくすことができるステータコア製造方法及びステータコア製造装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様のステータコア製造方法は、導電性を有し略U字状に形成された複数の導電部材をステータコアの周方向に所定の間隔で形成された複数のスロットに当該ステータコアの軸方向に順次差し込むに際し、一の前記導電部材の両脚部の一方が隣接する他の一の前記導電部材の両脚部の他方とステータの径方向に重なるように同一の前記スロットに挿入し、必要個数の前記導電部材を同一の手順で前記ステータコアの前記スロットに、略U字状の前記導電部材の開口側が下方へ向けられた冠状となるように順次挿入して一周させ、当該冠状とされた前記導電部材が挿入されたスロットから周方向にスロットをずらして、再び必要個数の前記導電部材を同一の手順で前記ステータコアの前記スロットに前記冠状になるように順次挿入していく工程を含んでいる。
【0006】
第1の態様のステータコア製造方法によれば、導電部材は、導電性を有し、略U字状に形成されている。導電部材の両脚部の一方の先端側がステータコアのスロットに対しステータコアの軸方向一端側からステータコアの軸方向に挿し込まれる。また、導電部材の両脚部の他方の先端側がステータコアの他のスロットに対しステータコアの軸方向一端側からステータコアの軸方向に挿し込まれる。また、導電部材の一方の脚部に対して他の導電部材の他方の脚部は、ステータコアの径方向に隣接するようにステータコアの軸方向に挿し込まれる。さらに、必要個数の導電部材が同一の手順でステータコアのスロットに冠状になるように順次挿入されて一周される。次いで、冠状とされた前記導電部材が挿入されたスロットから周方向にスロットをずらして、再び必要個数の導電部材が同一の手順でステータコアのスロットに冠状になるように順次挿入される。本ステータコア製造方法では、以上の工程を含んで構成される。
【0007】
第2の態様のステータコア製造方法は、第1の態様のステータコア製造方法において、前記導電部材の脚部が挿し込まれる前記スロットに対応して前記ステータコアの軸方向一端部に配置され、前記スロットの貫通方向に貫通され、前記ステータコアの径方向一方に開口された駒を用い、前記導電部材の脚部を前記駒の前記スロットとは反対側から前記駒に挿通させる。
【0008】
第2の態様のステータコア製造方法では、導電部材の脚部が挿し込まれるスロットに対応して駒がステータコアの軸方向一端部に配置される。駒は、スロットの貫通方向に貫通されると共にステータコアの径方向一方に開口される。導電部材の脚部は、駒のスロットとは反対側から駒を通過して、スロットに差し込まれる。
【0009】
このように、無数に形成されたスロットの中から駒が載置されたスロットは、導電部材の脚部を通過させる目印となる。
【0010】
第3の態様のステータコア製造方法は、第2の態様のステータコア製造方法において、前記ステータコアの軸方向に配置されたリング状のスロットリングを用い、前記スロットリングの径方向側面に形成された溝部に前記駒を着脱可能に係合させる。
【0011】
第3の態様のステータコア製造方法では、ステータコアの軸方向にスロットリングが設けられ、スロットリングの径方向側面には溝部が形成される。溝部には駒が着脱可能に係合され、導電部材は、駒に挿入される。このように、本ステータコア製造方法では、スロットリングの溝部に係合された駒に導電部材が挿入されてスロットに差し込まれるため、スロットへの導電部材の差し込みを適切に案内できる。
【0012】
第4の態様のステータコア製造方法は、第1の態様から第3の態様の何れか1つの態様のステータコア製造方法において、前記スロット内に落下防止支えを配置し、前記導電部材の前記脚部を前記落下防止支えに当接させて前記脚部の落下を防止する。
【0013】
第4の態様のステータコア製造方法では、スロット内に落下防止支えが配置される。駒に入った導電部材の脚部は、落下防止支えに当接する。これによって、導電部材の脚部は、落下防止支えに支持された時点で停止される。
【0014】
第5の態様のステータコア製造方法は、第2の態様から第4の態様の何れか1つの態様のステータコア製造方法において、前記駒において前記脚部が挿通される部分を、前記導電部材の入口側で広く前記導電部材の出口側で狭いテーパ状とする。
【0015】
第5の態様のステータコア製造方法では、駒において導電部材の脚部が挿通される部分は、導電部材の入口側で広く導電部材の出口側で狭いテーパ状とされているため、導電部材の脚部が駒に入れ易い。
【0016】
第6の態様のステータコア製造方法は、第2の態様から第5の態様の何れか1つの態様のステータコア製造方法において、ステータコアの径方向に駆動力によって前記駒を移動させる径方向移動手段を用いて前記駒を移動させる。
【0017】
第6の態様のステータコア製造方法では、径方向移動手段が設けられる。径方向移動手段は、駆動力によってステータコアの径方向に駒を移動させる。このため、手動で駒をステータコアの径方向に移動させなくてもよく、効率がよい。
【0018】
第7の態様のステータコア製造方法は、第2の態様から第6の態様の何れか1つの態様のステータコア製造方法において、前記ステータコアと同軸的に前記駒及び前記ステータコアの少なくとも一方を回転させる回転装置を用いて前記駒及び前記ステータコアの少なくとも一方を回転させる。
【0019】
第7の態様のステータコア製造方法では、回転装置が設けられる。回転装置は、ステータコアと同軸的に駒及びステータコアの少なくとも一方を回転させる。このため、回転されることで新たに正対した駒に導電部材が挿入される。
【0020】
第8の態様のステータコア製造装置は、ステータコアの軸方向に前記ステータコアに隣接し、前記ステータコアのスロットに対し平行に貫通すると共に、少なくとも1つの前記スロットをおいて配置された少なくとも一対の駒を有し、導電性を有する導電部材の両端側の一方が一対の前記駒の一方を介して前記ステータコアの前記スロットとは反対側から挿入されて通過され、前記導電部材の両端側の他方が一対の前記駒の他方を介して前記ステータコアの前記スロットとは反対側から挿入されて通過され、前記一対の駒を前記ステータコアで隣接する他のスロットに向い合わせる。
【0021】
第8の態様のステータコア製造装置では、少なくとも1つのスロットをおいて配置された少なくとも一対の駒を備えている。駒は、ステータコアの軸方向にステータコアに隣接して配置される。また、駒は、ステータコアのスロットに対し平行に貫通する。
【0022】
このような一対の駒の一方には、導電性を有する導電部材の両端側がステータコアのスロットとは反対側から挿入されて通過される。また、一対の駒の他方には、導電部材の両端側の他方がステータコアのスロットとは反対側から挿入されて通過される。
【0023】
次いで、駒は、それまで向い合せであったステータコアのスロットに対してステータコアの周方向に隣り合う他のスロットに向い合わせられる。このように、本ステータコア製造装置では、導電部材が駒を介してステータコアのスロットに挿入される。
【0024】
第9の態様のステータコア製造装置は、第8の態様のステータコア製造装置において、前記駒の係合が可能な溝部を有し、前記ステータコアの軸方向に配置されたリング状のスロットリングを備えている。
【0025】
第9の態様のステータコア製造装置では、スロットリングを備えている。スロットリングには溝部が形成される。溝部には駒が着脱可能に係合される。導電性を有する導電部材は、スロットリングにおいて駒が装着された部位に挿入される。このように、本ステータコア製造装置では、導電部材が駒を介してステータコアのスロットに挿入される。
【0026】
第10の態様のステータコア製造装置は、第8の態様又は第9の態様のステータコア製造装置において、前記駒における前記ステータコアとは反対側に設けられ、前記導電部材の前記脚部が当接して前記脚部の落下を防止する落下防止支えを備えている。
【0027】
第10の態様のステータコア製造装置では、駒における導電部材の脚部の入口側とは反対側に落下防止支えを備えている。落下防止支えは、駒における導電部材の脚部の入口側とは反対側で駒に入った導電部材の脚部が当接する。これによって、導電部材の脚部は、落下防止支えに支持された時点で停止される。
【0028】
第11の態様のステータコア製造装置は、第8の態様から第10の態様の何れか1つの態様のステータコア製造装置において、前記ステータコアの周方向に前記駒の互いに対向する面の間隔は、前記導電部材の入口側で広く前記導電部材の出口側で狭くなる傾斜がついている。
【0029】
第11の態様のステータコア製造装置では、スロットリングの周方向に駒の互いに対向する面の間隔は、導電部材の入口側で広く導電部材の出口側で狭くなる傾斜がついている。このため、導電部材の脚部を駒に入れ易くなる。
【0030】
第12の態様のステータコア製造装置は、第8の態様から第11の態様の何れか1つの態様のステータコア製造装置において、前記ステータコアの径方向に前記駒を移動させる径方向移動手段を備えている。
【0031】
第12の態様のステータコア製造装置では、径方向移動手段を備えている。径方向移動手段は、ステータコアの径方向に駒を移動させる。このため、手動で駒をステータコアの径方向に移動させなくてもよく、効率がよい。
【0032】
第13の態様のステータコア製造装置は、第8の態様から第12の態様の何れか1つの態様のステータコア製造装置において、前記ステータコアと同軸的に前記駒及び前記ステータコアの少なくとも一方を回転させる回転装置を備えている。
【0033】
第13の態様のステータコア製造装置では、回転装置を備えている。回転装置は、ステータコアと同軸的に駒及びステータコアの少なくとも一方を回転させる。このため、回転されることで新たに正対した駒に導電部材が挿入される。
【0034】
第14の態様のステータコア製造装置は、第8の態様から第13の態様の何れか1つの態様のステータコア製造装置において、前記導電部材の脚部は、前記ステータコアの径方向に複数層設けられ、径方向の内側又は外側の脚部がステータコアのスロットに挿し込まれる。
【0035】
第14の態様のステータコア製造装置では、導電部材の脚部は、ステータコアの径方向に複数層設けられる。しかも、導電部材は、径方向の内側又は外側の脚部がステータコアのスロットに挿し込まれる。このため、導電部材の一方の脚部と、隣接する他の導電部材の他方の脚部とを近接配置できる。
【発明の効果】
【0036】
以上、説明したように、本開示では、導電部材が1本ずつステータコアのスロットに対し挿入されるため、複数の導電部材を整列させる工程をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】本開示の一実施の形態に係るステータコア製造装置を上方から見た斜視図で、平角線コイルを所定のスロットを開けて1周配置した図である。
図1B】平角線コイルを所定のスロットを開けてステータコア製造装置を1周配置が終了し、隣のスロットに平角線コイルを配置した図1Aに対応した図である。
図1C】平角線コイルを所定のスロットを開けてステータコア製造装置を2周配置が終了し、隣のスロットに平角線コイルを配置した図1Bに対応した図である。
図1D】全てのスロットに平角線コイルを配置し、更に、その外側に平角線コイルを配置した図1Cに対応した図である。
図1E】更に、その外側に平角線コイルを配置した図1Dに対応した図である。
図1F】平角線コイルの配置が終了した図1Eに対応した図である。
図2】本開示の一実施の形態に係るステータコア製造装置の正面図である。
図3A】は、平角線コイルの正面図である。
図3B】は、平角線コイルの下面図である。
図3C】は、平角線コイルの右側面図である。
図4】外周部の全周に溝部が形成されたスロットリングの平面図である。
図5】駒の平面図である。
図6】駒の正面断面図である。
図7A】落下防止支えの台座の平面図である。
図7B】落下防止支えの正面図である。
図8】ステータコアに挿入された平角線コイルの状態を示す拡大平面図である。
図9】落下防止支えの台座の変形例を示す平面図である。
図10】駒が少ない場合の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本開示の一実施の形態に係るステータコア製造装置10を各図に基いて説明する。図1Aから図1F及び図2に示されるように、ステータコア製造装置10によって導電部材又はセグメントコイルとしての平角線コイル40が挿入されるステータコア14は、導体によって形成された薄帯を積層することによって形成される。ステータコア14は、全体的にリング状に形成されている。
【0039】
ステータコア14の内周部には、複数のスロット16が形成されている。スロット16の径方向内側の端部には、抜け止め部18が形成されている。抜け止め部18は、スロット16の周方向両側におけるステータコア14の径方向内側の端部に形成されている。抜け止め部18が形成された部位では、ステータコア14の周方向に沿ったスロット16の開口幅が、スロット16の径方向中間部よりも狭い。
なお、本実施の形態では、ステータコア14に抜け止め部18を形成した。しかしながら、抜け止め部18を形成しない構成であってもよい。
【0040】
また、ステータコア14の装置上側には、ステータコア製造装置10のスロットリング20が設けられている。詳細には、図1A~1Cに示されるように、スロットリング20は、内周部と外周部とが同軸的なリング状に形成されている。また、スロットリング20は、ステータコア14に対して同軸的にステータコア14に配置されている。また、スロットリング20の外周部には、複数のキー状の溝部22がスロットリング20の外周部の一部に形成されている。1個のスロット16に対して周方向両側にそれぞれ1個の溝部22が配置されている。
なお、本実施の形態では、スロットリング20の外周部の一部に溝部22を配置した構成であった。しかしながら、溝部22は、図4に示すようにスロットリング20の外周部の全周に形成してもよい。
【0041】
図1Aに示されるように、スロットリング20の径方向外側には、スロットリング20と共にステータコア製造装置10を構成する複数の駒24が設けられている。図5及び図6に示されるように、駒24は、平面視で略U字形状とされており、スロットリング20の中心へ向けて開口されている。駒24の一対の脚部の各先端部は、スロットリング20において周方向に隣り合う溝部22に嵌り込むことができる。駒24には、一対のテーパ部26が形成されている。テーパ部26は、駒24においてスロットリング20の周方向に互いに対向する壁部のステータコア14とは反対側に形成されている。
【0042】
一対のテーパ部26の間隔は、ステータコア14とは反対側で広く、ステータコア14側で狭くされている。また、駒24には段差状の係合部28が形成されている。係合部28は、駒24においてスロットリング20の径方向外側の端部に下方へ突出するように形成されている。駒24における一対の脚部の各先端部をスロットリング20において周方向に隣り合う溝部22に嵌り込ませると、係合部28がステータコア14に対して外側から接触する。
【0043】
一方、図7A及び図7Bに示されるように、ステータコア14の装置下側には、落下防止支え30が設けられている。落下防止支え30には、台座32が設けられており、台座32には、複数の落下防止プレート34が立設されている。複数の落下防止プレート34の下端部は、台座32の外周側の一部に形成された複数の溝部38にそれぞれ挿入されて固定されている。落下防止プレート34は、ステータコア14の装置下側からステータコア14のスロット16に挿入されている。
【0044】
以上の構成のステータコア製造装置10によって平角線コイル40がステータコア14に挿入される。詳細には図3の(A)から(C)に示されるように平角線コイル40の長手方向に対して直交する断面形状は、長方形状とされている。また、平角線コイル40は、一対の脚部42A、42Bを備えている。脚部42Aの一端と脚部42Bの一端とは、クランク部44によって略U字形状に繋がっている。
クランク部44の一端は、他端よりも概ね平角線コイル40の厚さ分、ステータコア14の径方向にずれて配置されるよう、クランク状に屈曲されている。また、クランク部44は、脚部42A、42Bよりも平角線コイル40の厚さ方向一方の側へずれている。これにより、図3(A)に二点鎖線で示されるように、複数の平角線コイル40がステータコア14の径方向に積層される。さらに、クランク部44が形成されることによって脚部42Aの厚さ方向に対して脚部42Bの厚さ方向が傾く。
このクランク部44の形状等によって脚部42Aと脚部42Bとの位置関係が変わる。また、脚部42Bは、脚部42Aが挿入されたスロット16に対して時計回り方向に所定の数(本実施の形態では、5個)のスロット16を跨いでスロット16へ装置上側から挿入される。
なお、本実施の形態では、平角線コイル40の長手方向に対して直交する方向の平角線コイル40の断面形状は、長方形状であった。しかしながら、平角線コイル40の長手方向に対して直交する方向の平角線コイル40の断面形状は、角状であれば、特に限定されるものではない。
【0045】
スロット16に挿入された平角線コイル40の脚部42A、42Bの先端は、装置下方からステータコア14の内部に入った落下防止プレート34へ当接している。これによって、平角線コイル40の脚部42A、42Bは、スロット16の途中までしか入らない。
【0046】
図1Aに示されるように、駒24は、ステータコア14の周方向へ一定の間隔をおいてスロットリング20に装着されている。この駒24に平角線コイル40の脚部42Aが入る。また、平角線コイル40の脚部42Aが入った駒24に対してステータコア14の周方向へ一定の間隔離れたスロット16の装置上方に配置された駒24には、平角線コイル40の脚部42Bが入る。
【0047】
図1Aに示されるように、次いで、新たな平角線コイル40の脚部42Aが、平角線コイル40の脚部42Bに対してステータコア14の径方向にずれた位置で駒24に入る。このようにして、全ての駒24が装着されたスロット16に必要個数の平角線コイル40の脚部42A、42Bが冠状になるように順次挿入されていく。ステータコア14の周方向へ一周する最後の平角線コイル40の脚部42Bは、最初の平角線コイル40の脚部42Aの径方向内側で駒24に入る。
【0048】
次いで、図1Bに示されるように、駒24が装着されているスロット16に対して周方向に隣接するスロット16に駒24が移動されて、同じことが繰り返される。さらに、図1Cに示されるように、同じことが更に繰り返される。
【0049】
全てのスロット16に平角線コイル40の脚部42A、42Bが入ると、次は、図1Dに示されるように、それまで入った平角線コイル40の脚部42Aに対して径方向外側に新たな平角線コイル40の脚部42Aが入る。また、それまで入った平角線コイル40の脚部42Bに対して径方向外側に新たな平角線コイル40の脚部42Bが入る。
【0050】
次いで、図1Eに示されるように、径方向に6層の平角線コイル40の脚部42A、42Bがスロット16に入り、図1Fに示されるように、平角線コイル40の脚部42A、42Bのスロット16への配置が完了する。
【0051】
ここで、本ステータコア製造装置10を用いた工法では、最小単位の平角線コイル40がステータコア14のスロット16へ直接挿入される。このため、複数の平角線コイル40を整列させる専用の工程が不要であり、ステータコア14やスロット16の仕様変更時のフレキシビリティが高い。しかも、ステータコア14のスロット16の寸法の変更や、ステータコア14の内外径寸法に変更があった場合であっても、駒24の変更のみで対応が可能である。
【0052】
また、本ステータコア製造装置10を用いた工法では、無数のスロット16のうち平角線コイル40を挿入するスロット16には駒24が装着される。このため、平角線コイル40を挿入するスロット16がわかりやすく、駒24が平角線コイル40を挿入するスロット16の目印となる。しかも、駒24にはテーパ部26が形成されるため、平角線コイル40を装着しやすい。
【0053】
さらに、本ステータコア製造装置10を用いた工法では、駒24は、スロットリング20へ装着されるため、駒24が平角線コイル40を装着するスロット16から不用意に動かない。
【0054】
また、本ステータコア製造装置10を用いた工法では、図8に示されるように、平角線コイル40の脚部42A、42Bは、ステータコア14の径方向に複数層設けられる。しかも、平角線コイル40は、脚部42A、42Bの何れか一方からスロット16に挿し込まれる。このため、平角線コイル40の脚部42A、42Bの何れか一方と、隣接する他の平角線コイル40の脚部42A、42Bの何れか他方とを近接配置できる。
【0055】
なお、本実施の形態では、図7Aに示されるように、落下防止プレート34が挿入される溝部38を周方向の一部に備えた台座32を用いた。しかしながら、台座32に代えて図9に示されるように、溝部38が周方向に等間隔に形成された台座52を用いてもよいし、また、落下防止支え30を用いなくてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、スロットリング20の周方向に所定角度毎に駒24が設けられていた。しかしながら、図10に示されるように、スロットリング20の一部に対して周方向に所定角度毎に駒24が設けられていてもよい。
【0057】
さらに、本実施の形態では、スロットリング20を用いたが、スロットリング20を用いなくてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、作業者が手動で駒24の着脱を行っていた。しかしながら、駆動力で駒24をスロットリング20の径方向に往復移動させる径方向移動手段を備えていてもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態では、作業者が手動でステータコア14と同軸的に駒24の回転させていた。しかしながら、駆動力で駒24及びステータコア14の少なくとも一方をステータコア14と同軸的に回転させる回転装置を備えていてもよい。
【0060】
また、本実施の形態における「冠状」とは、1つの平角線コイル40の脚部42A、42Bの何れか一方に対して他の平角線コイル40の脚部42A、42Bの何れか他方がステータコア14の径方向に互いに対向するように重なる状態のことを言う。
【0061】
また、2021年5月31日に出願された日本国特許出願2021-091498号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10