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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】光学用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/043 20200101AFI20230516BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230516BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20230516BHJP
   G02B 1/14 20150101ALN20230516BHJP
   C09D 5/00 20060101ALN20230516BHJP
   C09D 7/63 20180101ALN20230516BHJP
   C09D 7/61 20180101ALN20230516BHJP
   C09D 133/00 20060101ALN20230516BHJP
   C09D 175/04 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
C08J7/043 A CFD
B32B27/36
C09D171/02
G02B1/14
C09D5/00 D
C09D7/63
C09D7/61
C09D133/00
C09D175/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021549309
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2019018149
(87)【国際公開番号】W WO2020171362
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0019808
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501380081
【氏名又は名称】東レ先端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA, INC.
【住所又は居所原語表記】93-1, Imsu-dong, Gumi-si, Gyeongsangbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ユン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, キル ジュン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069591(JP,A)
【文献】特開2012-232581(JP,A)
【文献】特開2018-199338(JP,A)
【文献】特開2018-154111(JP,A)
【文献】特開2017-185777(JP,A)
【文献】特開2001-179912(JP,A)
【文献】特開2007-297565(JP,A)
【文献】特開2003-291290(JP,A)
【文献】特開2017-193720(JP,A)
【文献】特開平08-244187(JP,A)
【文献】特開2006-281498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0326380(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1927995(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04-7/06
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00
C09D101/00-201/10
G02B 1/10-1/18
C03K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなる基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一面に形成されたプライマー層とを含み、
前記プライマー層は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖又はブチレンオキシドを有するポリアルキレンオキシド及び架橋剤を含むプライマー塗布液で塗布され、
前記カルボキシル基を有するアクリル樹脂の酸価は、10ないし100mgKOH/gである、光学用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記光学用ポリエステルフィルムは、下記の数式1を満たすものの、
[数式1]
△HAZE≦1%
式中、△HAZE=HAZE2-HAZE1で、HAZE2は、150℃において1時間維持させた後のフィルムのヘイズで、HAZE1は、加熱前フィルムのヘイズである、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記光学用ポリエステルフィルムは、常温接着力測定に関して、下記の数式2を満たすものの、
[数式2]
a/A×100≧95%
式中、Aは、プライマー層と後加工コーティング層とが接触する全体面積で、aは、Aにおいて接着力がある面積である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記光学用ポリエステルフィルムのヘイズは、2.0%以下である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキシドは、重量平均分子量が100ないし10,000g/molである、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記架橋剤は、カルボジイミド、イソシアネート及びメラミンからなる群より1種以上選択された化合物である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記カルボジイミドは、分子骨格内にシクロヘキサンまたはベンゼン環基を有する化合物である、請求項6に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記架橋剤は、カルボジイミド化合物とイソシアネート化合物からなる、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記プライマー塗布液は、前記カルボキシル基を有するアクリル樹脂40~70重量%を含む、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記プライマー塗布液は、前記アクリル樹脂と前記架橋剤のモル比は、1:0.2ないし1:2であり、前記アクリル樹脂と前記ポリアルキレンオキシドのモル比は、1:0.1ないし1:80である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記アクリル樹脂は、ガラス転移温度が40ないし80℃である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記プライマー層の厚さは、10ないし200nmである、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記プライマー層は、平均粒径が80ないし300nmである有機または無機粒子をさらに含む、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項14】
前記プライマー層の屈折率は、1.45ないし1.59である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用ポリエステルフィルム(OPTICAL POLYESTER FILM)に関し、さらに詳細には、タッチパネル、LCD、PDPなどの内部に装着されるフィルムに適用される積層光学用ポリエステルフィルムで加工性を向上させることができるようにプライマー層を有する構造であって、基材及びプリズム、粘着、またはハードコーティングのような後加工後に均一な易接着性、加熱処理を伴う加工工程においてポリエステルフィルムから析出されるオリゴマーを抑制するための光学用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエステルフィルムは、寸法安定性、厚さ均一性及び光学的透明性に優れているから、ディスプレイ機器だけでなく様々な産業用材料としてその利用範囲が非常に広い。その中でも光学用ポリエステルフィルムは、光学用に使用されるプラスチックフィルムであって、さらに詳細には、ディスプレイ装置の構成部品としてプラスチックフィルムが多く使用されており、この中で光学的な透明性が求められる場合には、ポリエステルフィルムが使用されており、耐久性及び耐熱性が要求される場合には、ポリイミドフィルムが主に使用されている。特に、二軸延伸されたポリエステルフィルムの場合、寸法安定性、厚さ均一性、及び光学的透明性に優れているから、基材フィルムとして様々な産業において利用されている。
【0003】
また、光学用ポリエステルフィルムは、基材フィルムとして使用される時に後加工処理により多様な樹脂が塗布されて様々な用途として利用され、後加工時に使用される樹脂は、通常UV硬化型樹脂が使用される。したがって、後加工を介して塗布されるUV硬化型樹脂コーティング層と光学用ポリエステルフィルムとの均一な接着力のために、一般にポリエステルフィルムの表面にプライマーコーティング層を位置させる方法が工業的に最も広く使用されている方法である。
【0004】
このような各種のUV樹脂との接着力は得ることができるが、加工工程における熱処理が加えられると、熱可塑性樹脂フィルムからのオリゴマーの析出がおき、白化またはフィルム表面の汚染のため最終製品として実用的に適用できない。それがゆえに、従来からオリゴマー析出抑制を目的として樹脂フィルムの表面に塗膜を積層させる検討がなされている。例えば、アクリロイル基を有する樹脂またはスチレンとアクリル酸構造を有する塗膜(日本特許JP6040934、日本特許JP6023227)、アクリル変性ポリエステルを使用して塗膜を設計する方法(日本特許公開平4-263937号、日本特許公開2003-012841号)、特定官能基を有する樹脂または鉱油、架橋剤などの添加剤を樹脂層に設計する方法(日本特許公開2006-281498号)が提案されている。
【0005】
しかしながら、日本特許JP6040934、日本特許JP6023227のようにアクリロイル基を有する樹脂またはスチレンとアクリル酸構造を有する樹脂層を設計しても、このような樹脂のみではポリエステル系基材であるフィルムとの接着性は充分であるが、耐熱、耐湿接着力が低下し、他の基材であるプリズム加工層、レンズ加工層、反射防止層またはハードコーティング層のような後加工をする時には、易接着性が非常に不足した短所がある。また、日本特許公開平4-263937号、日本特許公開2003-012841号のようにフィルムの表面にアクリル変性ポリエステルを使用して樹脂層を設計する方法は、アクリル変性ポリエステル中にある一定温度以上のガラス転移点を有するアクリル成分を含有するが、樹脂層を硬化する時に樹脂層に欠点またはクラックが起きて充分なオリゴマー抑制効果が現れないだけでなく、積層フィルムの透明性と易接着性を減少させる。また、日本特許公開2006-281498号のように添加剤を使用する方法は、樹脂層形成時や除膜後経時で樹脂層表層に添加剤自体がブリードアウトしてしまい、これにより易接着性が低下しオリゴマー析出と同様に樹脂フィルムの白化またはフィルム表面の汚染などを発生させる危険がある。
【0006】
基材として使用される光学用ポリエステルフィルムは、後加工作業特性、特に後加工に用いられる樹脂との均一な接着力が要求され、オリゴマー析出抑制による光学用基材として透明性を維持する技術により製品の不良率減少及び寿命向上、高品質化をなすのに必須と言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決し、従来の要求事項に応えるために案出されたものであって、本発明の目的は、プライマー層を有する光学用ポリエステルフィルムと後加工樹脂の接着力を向上させることができ、同時に高温で発生できるオリゴマー析出を効果的に抑制して光学用基材としての透明性を維持できる光学用ポリエステルフィルムを提供しようとすることにある。
【0008】
本発明の前記及び他の目的と利点は、好ましい実施例を説明した下記の説明からより明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、ポリエステルからなる基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一面に形成されたプライマー層とを含み、プライマー層は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、ポリアルキレンオキシド樹脂及び架橋剤を含むプライマー塗布液で塗布される、光学用ポリエステルフィルムにより達成される。
【0010】
ここで、光学用ポリエステルフィルムは、下記の数式1を満たすものの、
[数式1]
△HAZE≦1%
式中、△HAZE=HAZE2-HAZE1で、HAZE2は、150℃において1時間維持させた後のフィルムのヘイズで、HAZE1は、加熱前フィルムのヘイズでありうる。
【0011】
好ましくは、光学用ポリエステルフィルムは、下記の数式2を満たすものの、
[数式2]
a/A×100≧95%
式中、Aは、プライマー層と後加工コーティング層とが接触する全体面積で、aは、Aにおいて接着力がある面積でありうる。
【0012】
好ましくは、光学用ポリエステルフィルムのヘイズは、2.0%以下でありうる。
【0013】
好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂の酸価は、10ないし100mgKOH/gでありうる。
【0014】
好ましくは、ポリアルキレンオキシド樹脂は、重量平均分子量が100ないし10,000g/molでありうる。
【0015】
好ましくは、架橋剤は、カルボジイミド、イソシアネート及びメラミンからなる群より1種以上選択された化合物でありうる。
【0016】
さらに好ましくは、カルボジイミドは、分子骨格内にシクロヘキサンまたはベンゼン環基を有する化合物でありうる。
【0017】
さらに好ましくは、架橋剤は、カルボジイミド化合物とイソシアネート化合物からなりうる。
【0018】
好ましくは、プライマー塗布液は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂40~70重量%及び架橋剤30~60重量%を含むことができる。
【0019】
好ましくは、プライマー塗布液は、アクリル樹脂と架橋剤のモルは、1:0.2ないし1:2であり、アクリル樹脂とポリアルキレンオキシド樹脂のモルは、1:0.1ないし1:80でありうる。
【0020】
好ましくは、アクリル樹脂は、ガラス転移温度が40ないし80℃でありうる。
【0021】
好ましくは、プライマー層の厚さは、10ないし200nmでありうる。
【0022】
好ましくは、プライマー層は、平均粒径が80ないし300nmである有機または無機粒子をさらに含むことができる。
【0023】
好ましくは、プライマー層の屈折率は、1.45ないし1.59でありうる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高温においてポリエステルフィルムのオリゴマー析出を防止できる等の効果を有する。
【0025】
また、本発明は、後加工樹脂と均一でかつ優れた接着力を有し、高温工程において優れた耐熱性を有するから、後加工コーティング層の脱落及び高温での白濁または白化現象を防止できる等の効果を有する。
【0026】
なお、本発明は、製品の生産性確保と不良率減少により高品質化を達成できる等の効果を有する。
【0027】
ただし、本発明の効果らは、以上で言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果らは、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムの断面模式図である。
図2】本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルム上に機能性コーティング層を形成したフィルムの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例と図面を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をさらに具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0030】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する記述分野における熟練者により通常理解される通りと同じ意味を有する。相反する場合、定義を含む本明細書が優先するはずである。また、本明細書において説明されることと類似または同等な方法及び材料が本発明の実施または試験に使用されうるが、適合した方法及び材料が本明細書に記載される。
【0031】
別に記述しない限り、すべての百分率、部、比などは、重量基準である。また、量、濃度、または他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値と好ましい下限値の目録のうち、いずれか一つとして与えられる場合、これは、範囲が別に開示されるかどうかに関係なく、任意の上限範囲限界値または好ましい値と任意の下限範囲限界値または好ましい値の任意の対から形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解されなければならない。
【0032】
数値値の範囲が本明細書において言及される場合、別に記述しない限り、その範囲は、その終点及びその範囲内のすべての整数と分数を含むことが意図される。本発明の範疇 は、範囲を定義する時に言及される特定値に限定されないことが意図される。
【0033】
本明細書に使用されたように、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「備える(include)」、「備えている(including)」、「含有している(containing)」、「~を特徴とする(characterized by)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語またはこれらの任意のその他変形は、排他的でない包含をカバーしようとする。例えば、要素らの目録を含む工程、方法、用品、または器具は、必ずそういう要素だけで制限されず、明確に列挙されないか、またはそういう工程、方法、用品、または器具に内在的な他の要素を含むこともできる。また、明確に反対に述べられない限り、「または」は、包括的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味することがではない。
【0034】
出願人が「含んでいる」のような開放型用語で発明またはその一部を定義した場合、別に明示されない限り、その説明が「本質的になされた」という用語を利用してそういう発明を説明すると解析されなければならないことが容易に理解されなければならない。
【0035】
図1は、本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムの断面模式図であって、1次加工後にプライマー層を含んだ光学用ポリエステルフィルムの断面図であり、図2は、本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルム上に機能性コーティング層を形成したフィルムの断面模式図であって、2次加工後に光学用ポリエステルフィルムに機能性コーティング層を含んだ断面図である。参考に、図面における識別番号「1」は、ポリエステル基材フィルム、「2」は、プライマー層及び「3」は、機能性コーティング層(2次UV後加工)を示す。
【0036】
まず、本発明の好ましい実施例による光学用ポリエステルフィルムの断面模式図である図1から分かるように、本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムは、基材フィルムの一面にプライマー層を含む。図1は、基材フィルムの一面にプライマー層を形成したものであるが、基材フィルムの両面にプライマー層を形成したフィルムも、本発明の範囲に含まれることは当然である。
【0037】
本発明による光学用ポリエステルフィルムは、高温での安定した透明性を維持しながら優れた易接着性を保有するために、プライマー1次加工処理がなされる。また、光学用ポリエステルフィルム基材と2次後加工処理がなされる紫外線硬化型または熱硬化型コーティング層間の接着力を向上させるために、本発明による光学用ポリエステルフィルムは、カルボキシル基を有するアクリルバインダー樹脂とポリアルキレンオキシド樹脂を適用し、特定架橋システムで設計したプライマー層を具備する。
【0038】
また、本発明による光学用ポリエステルフィルムは、下記の数式1を満たす。
【0039】
[数式1]
△HAZE≦1%
式中、△HAZE=HAZE2-HAZE1で、HAZE2は、150℃で1時間維持させた後のフィルムのヘイズで、HAZE1は、加熱前フィルムのヘイズである。
【0040】
次に、本明細書では、本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何らの限定になるのではない。
【0041】
本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムの基材フィルムは、ジカルボン酸とグリコールを重合して得ることができるポリエステルを必要によって乾燥させた後、公知の圧出機で溶融、供給してスリット状態のダイから単層または複合層のシート状態で押し出した後、静電印加などの方式によりキャストドラムに密着、冷却固体化した後、未延伸シートを製造した後、二軸延伸後熱処理したフィルムであることが好ましい。ポリエステル樹脂に利用されるジカルボン酸は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸またはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などがあり、グリコールは、エチレングリコール、プロパンジオール、ブータンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールまたはジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールなどを使用することができる。
【0042】
機械的強度、耐候性、耐化学薬品性及び透明性などを考慮すると、ジカルボン酸としてテレフタル酸あるいはナフタレンジカルボン酸とグリコールとしてエチレングリコールを利用することが好ましい。また、重合時の触媒としてアルカリ土類金属種類、金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物などを使用することが好ましい。このようなジカルボン酸の種類とグリコールの種類または触媒は、それぞれ2種以上を併用しても構わない。
【0043】
また、フィルムが走行性または耐候性及び耐熱性などの機能を有するように、フィルム原料に粒子を添加しても良いが、フィルムの透明性を害さないように添加量または材質に十分な注意が必要である。したがって、きわめて少量のみを添加することが好ましい。
【0044】
また、フィルムの延伸方法では、縦方向延伸後、横方向延伸する順に二軸延伸する方法、または縦方向及び横方向をほぼ同時に延伸する同時二軸延伸方法などの公知技術を利用できる。延伸前予熱温度及び延伸温度は、60~130℃であり、延伸倍率は、2.0~5.0倍である。必要によって延伸後に140℃から240℃の熱処理を実施する。
【0045】
本発明では、縦方向延伸後に横方向延伸する順次二軸延伸方法が好ましい。
【0046】
本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムのプライマー層は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、ポリアルキレンオキシド樹脂及び架橋剤でカルボジイミド、イソシアネート及びメラミンからなる群より1種以上の化合物で架橋する熱硬化型塗布液(プライマー塗布液)で形成されることができ、このような構成によりUV硬化樹脂と良好な粘着力及びポリエステルフィルムでのオリゴマー析出現象を制御できる。
【0047】
前記プライマー層を形成する方法は、上述したフィルムの二軸延伸除膜プロセスの中で縦方向延伸後、横方向延伸前のステップで実施することが好ましい。また、コーティング方法としては、マイヤーバーを使用するバーコーティング法、グラビアコーティング法、スリットダイコーティング法、カンマコーティング法等、公知のいろいろなコーティング法のうち、どれを使用しても構わないが、水分散された塗布剤を使用するので粘度が低い状態で優れた外観を得るためには、バーコーティング法が好ましい。
【0048】
本発明による光学用ポリエステルフィルムのプライマー層は、1次熱硬化システムを経た後2次後加工でプライマー層上に位置するUV硬化型樹脂と200nm~400mの紫外線硬化システムを経て共に硬化されることができる。ここで、後加工時用いられる機能性UV硬化型樹脂には、一般にアクリル系樹脂を選択することが代表的である。
【0049】
本発明は、先に言及したプライマー設計を介して後加工時基材フィルム上に位置する。
【0050】
アクリル系UV硬化型樹脂と水素結合と共有結合で接着力をより效率的に向上させることができるようになる。
【0051】
本発明による光学用ポリエステルフィルムは、下記の数式2を満たす。
【0052】
[数式2]
a/A×100≧95%
式中、Aは、プライマー層と後加工コーティング層とが接触する全体面積で、aは、Aにおける接着力がある面積である。
【0053】
また、本発明による光学用ポリエステルフィルムは、プライマー層とUV硬化型樹脂であるアクリル系樹脂で構成されたコーティング層間の付着力(接着性)が65℃、95%RH下で96時間耐湿性テスト後95%以上である。
【0054】
また、後加工時加熱工程のような高温環境においてポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出がおきる現象が発生し、これは、光学用としての透明性を減少させるが、本発明では、上のようなプライマー層設計を介して高温環境でのポリエステルフィルムのオリゴマー析出をプライマー層塗膜において効率的に抑制させることができるようになる。本発明による光学用ポリエステルフィルムは、150℃で1時間の間に熱処理される時、熱処理前と後のヘイズ変化量が1%以下であり、後加工での高分子樹脂コーティングに対する優れた易接着性を有する。
【0055】
本発明は、基本的に透明光学フィルム分野に応用されて、プライマー層が形成された基材フィルムの面は、全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が2.0%以下になることを特徴とする。
【0056】
本発明の一実施例による光学用ポリエステルフィルムの構成についてさらに詳細に説明する。
【0057】
本発明は、少なくとも一軸に延伸されたポリエステル基材フィルム上にプライマー層が形成され、プライマー層を製造する塗布液は、カルボキシル基を有するアクリルバインダーを適用する。アクリル樹脂は、カルボキシル基含有モノマーから由来する構成単位を含むアクリル系重合体である。アクリル系重合体中のカルボキシル基は、水分散性を有するようにし、メチロール基と反応して架橋構造を形成することによって、アクリル系重合体の粒子内部を架橋し、ポリアルキレンオキシド樹脂と共に最終的にメラミンまたはカルボジイミドまたはイソシアネート架橋剤と追加反応して、アクリル系重合体の粒子同士を架橋する。また、アクリル系重合体のうち、架橋剤と反応していないカルボキシル基は、ポリエステルフィルムから析出する親水性オリゴマーを捕捉できる。
【0058】
プライマー層のカルボキシル基を有するアクリル樹脂の酸価(値)は、10ないし100mgKOH/gであることが好ましい。酸価値が10未満の場合、オリゴマー捕捉能力が低下し、架橋剤との架橋度が不足して未硬化発生で塗膜層の外観不良または接着力が不足するようになり、酸価値が100を超過する場合、未反応架橋反応の多数発生でむしろ経時性副反応の外観不良及び接着力不良が発生できる。
【0059】
また、アクリル樹脂の形成に利用するカルボキシル基含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー及びω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートのうち、単独または化合物形態で利用しても良い。
【0060】
また、本発明のプライマー層を形成する塗布液におけるアクリル樹脂は、塗布液全体重量の40~70重量%を含むことが好ましく、前記アクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が40~80℃であることを特徴とする。アクリル樹脂の含有量が40重量%未満またはガラス転移温度が40℃未満であると、ポリエステルフィルムのオリゴマー析出抑制効果が減少でき、アクリル樹脂の含有量が70重量%超過またはガラス転移温度が80℃超過すると、接着力減少及び二軸延伸フィルム除膜工程中に樹脂層にひび割れがおきる可能性がある。
【0061】
本発明において提案するポリアルキレンオキシド樹脂は、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、ブチレンオキシドからなる群より選択された少なくとも1種の化合物が好ましい。具体的には、下記の化学式1で表される化合物構造が好ましく、鎖繰り返し数nが2ないし200であることが好ましく、さらに好ましくは、10ないし100である。
【0062】
[化学式1]
【化1】
【0063】
また、プライマー層を形成するプライマー塗布液においてアクリル樹脂とポリアルキレンオキシド樹脂のモルは、1:0.1ないし1:80であることが好ましく、ポリアルキレンオキシド樹脂は、重量平均分子量が100ないし10,000g/molであることが好ましい。ポリアルキレンオキシド樹脂の重量平均分子量が100未満であると、アクリル樹脂との架橋度が不足して未硬化発生により塗膜層の外観不良または接着力が不足するようになり、重量平均分子量が10,000超過であると、未反応架橋反応物が多数発生して、接着力減少及び二軸延伸除膜工程において樹脂層のひび割れまたは延伸跡などの外観不良が発生できる。
【0064】
本発明の一実施例によれば、本発明による光学用ポリエステルフィルム基材と2次後加工処理がなされる過程の加熱工程及び高温工程においてポリエステルフィルムの透明性を維持するために、プライマー層には、架橋剤としてカルボジイミド、イソシアネート及びメラミンからなる群より1種以上選択された化合物で架橋する構造で設計することを特徴とする。
【0065】
本発明において提案したカルボジイミド化合物は、分子中に2個以上のカルボジイミド基を有するのを指し示し、例えば、特開平10-316930号公報または特開平11-140164号公報に開示されたように、有機ポリイソシアネート、特に好ましくは、有機ジイソシアネートを主な合成原料として製造される。ジイソシアネート類は、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ジイソシアネートドデカン、ノルボルネンジイソシアネート及び2,4-ビス-(8-イソシアネートオクチル)-1,3-ジオクチルシクロブタン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートから選択される1種または2種以上のジイソシアネートを例とすることができる。本発明では、カルボジイミド化合物として分子骨格内にシクロヘキサンまたはベンゼン環基を有するカルボジイミド化合物が好ましい。
【0066】
本発明に使用することができるメラミン系化合物としては、特に限定されるものではないが、親水化の点でメラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましく、本発明の樹脂層を熱可塑性樹脂フィルム上に設置して積層フィルムとした時、樹脂層のオリゴマー抑制効果だけでなく、各種のインキまたはハードコート剤などとの接着性または耐湿熱接着性、可撓性、強じん性、耐溶剤性が高くなって好ましく使用することができる。メチロール化メラミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミンを例とすることができる。
【0067】
本発明に使用することができるイソシアネート化合物としては、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、α,α、α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートなどが例示される。これらは、単独で使用しても、複数種併用しても良い。また、これらのポリイソシアネート化合物は、二量体またはイソシアヌレート環で代表されるような三量体またはそれ以上の重合体であっても良い。
【0068】
また、水分散させるために、水酸基と反応しない構造をイソシアネート末端基に反応させたことが必要である。いわゆるブロック剤としてイソシアネート基の反応器を保護したブロックイソシアネートを使用し、このブロック剤が100℃以上において解離されることを特徴とし、ブロック剤としては、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、酸アミド系、ラクタム系、酸イミド系、イミダゾール系、ヨウ素系、オキシム系、アミン系化合物などを使用することができ、より具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、アセトアニリド、アセト酸アミドなどの酸アミド系化合物、カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム系化合物、コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド系化合物、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、亜硫酸ナトリウムなどを例とすることができ、上記ブロック剤のうち、いずれでも良いが、オキシム系化合物を使用することが好ましい。
【0069】
本発明の一実施例においてプライマー塗布液に用いられる架橋剤は、カルボジイミド化合物とイソシアネート化合物を同時に使用したことが好ましい。
【0070】
また、プライマー層を形成するプライマー塗布液においてアクリル樹脂と架橋剤のモルは、1:0.2ないし1:2であることが好ましく、また、本発明のプライマー塗布液に含まれる架橋剤は、塗布液全体重量の30~60重量%に維持することが好ましい。架橋剤が30重量%未満であると、重合体架橋度が不足して、ポリエステルフィルムのオリゴマー析出抑制効果が減少でき、60%重量超過であると、未反応架橋反応水の多数発生で接着力減少及び二軸延伸フィルム除膜工程中に樹脂層にひび割れ及び製品外観損傷がおきる可能性がある。
【0071】
また、フィルムの走行性または耐候性及び耐熱性などの機能を有するようにするために、フィルム原料に粒子を添加しても良いが、フィルムの透明性を害さないように添加量または材質に十分な注意が必要である。添加量に対しては、好ましくは、きわめて少量、さらに好ましくは、添加しないことが良い。フィルムの走行性に関しては、プライマー層の粒子添加で補助することが好ましい。
【0072】
本発明による光学用ポリエステルフィルムは、工程中のスクラッチ防止のために、プライマー層に有機または無機物ナノ粒子を含むことができる。
【0073】
ナノ粒子は、プライマー塗布液全体重量基準0.01~8重量%を含むことが好ましい。また、ナノ粒子の粒子平均粒径は、フィルムの透明性の観点において、通常1.0μm以下、好ましくは、0.5μm以下、さらに好ましくは、80ないし300nmである。また、すべり性またはブロッキング改良効果を一層高める必要がある場合は、プライマー層の膜厚よりも大きな平均粒径の粒子を併用することが好ましい。使用する粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属などの無機粒子または架橋高分子粒子などの有機粒子などを例とすることができる。特に、プライマー層への分散性または得られる塗膜の透明性の観点では、シリカ粒子が適している。
【0074】
また、本発明の物性を損傷しない範囲において、プライマー層の形成には、必要によって消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料などを併用しても良い。
【0075】
上で言及した製造方法中のコーティング工程は、濃度が0.1~15重量%程度に基づいて調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領でプライマー層を含むポリエステルフィルムを製造することが好ましい。また、本発明の主旨を損傷しない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良などを目的として、塗布液中には、有機溶媒を含有していても良い。有機溶媒は、1種類であってもよく、適切に2種類以上を使用しても良い。
【0076】
また、プライマー層の膜厚は、通常0.002ないし1.0μm、好ましくは、0.005ないし0.5μm、さらに好ましくは、0.01~0.2μmである。膜厚が前記範囲から逸脱する場合は、密着性、塗布外観、ブロッキング特性が悪化する場合がある。また、本発明におけるプライマー層は、膜厚が薄くても接着力が優れた特徴がある。
【0077】
また、プライマー層の屈折率は、通常1.42ないし1.62、好ましくは、1.45ないし1.59である。プライマー層の屈折率が以上の範囲から逸脱する場合は、光学用フィルムとしての光透過率均一性の弱化または2次加工において加工層との光干渉現象による外観不良が発生できる。本発明においては、光学用途の適用のための適正屈折率を提案して、光学用としての優れた特徴を有している。
【0078】
上述したように、本発明によれば、光学用ポリエステルフィルムで後加工層と接着力を向上させることができるように、2種のバインダーシステムを適用した特定プライマー層の構造を提示し、また適正架橋剤システムを適用して効率的な架橋効果で高温においてポリエステルフィルムのオリゴマー析出抑制効果を向上させることができる。それが故に本発明による光学用ポリエステルフィルムは、プライマー層を有する光学用ポリエステルフィルムと後加工樹脂、例えばプリズム、粘着コーティングまたはハードコーティングのような機能性光学用樹脂の接着力を向上させることができ、同時に高温において発生できるオリゴマー析出現象を効果的に抑制して光学用基材としての透明性を維持できる。
【0079】
以下、実施例と比較例にて本発明の構成及びそれによる効果をさらに詳細に説明しようとする。しかしながら、本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0080】
以下、実施例と比較例に使用する成分は、次のとおりであり、それぞれ略式名称で名付けることができる。
【0081】
(A1)アクリル樹脂
構成割合は、N-メチロールアクリルアミド2mol及びエチルアクリレート60.5mol、n-ブチルアクリレート12.5mol、メチルメタクリレート11mol、アクリル酸14molで構成した。60℃を維持しながら過硫酸アンモニウム水溶液及びメタ重亜硫酸ナトリウム水溶液で乳化重合し、酸価55mgKOH/gを維持しながらガラス転移温度(Tg)は60℃を有するようにした。前記割合で得られた乳化重合物は、60℃において2時間熟成させた後室温まで冷却した後、アンモニア水溶液適当量でpH9.0に調整し、望みのポリアクリル水分散液を製造した。
【0082】
(A2)アクリル樹脂
構成割合は、N-メチロールアクリルアミド2mol及びエチルアクリレート67.5mol、n-ブチルアクリレート16.5mol、メチルメタクリレート10mol、アクリル酸2molで構成した。60℃を維持しながら過硫酸アンモニウム水溶液及びメタ重亜硫酸ナトリウム水溶液で乳化重合し、酸価5mgKOH/gを維持しながらガラス転移温度(Tg)は、60℃を有するようにした。前記割合で得られた乳化重合物は、60℃において2時間熟成させた後室温まで冷却した後、アンモニア水溶液適当量でpH9.0に調整し、望みのポリアクリル水分散液を製造した。
【0083】
前記(A1)、(A2)の成分に対するAcid Value測定及びガラス転移温度測定は、下記のように進行した。
【0084】
1.酸価確認
上述した(A1)、(A2)の成分に対して測定しようとするサンプル15gをビーカーに入れてフェノールフタレイン指示薬3滴を投入した後、0.1N水酸化カリウム(KOH)で滴定して無色から微紅色へ変わるまで投入した。色が変わった後に投入量を確認して、一次的に下記の数式3で酸価を計算した。
[数式3]
酸価(mgKOH/g)=56.11N(B-C)/S
N:0.1N KOH水溶液の規定濃度
B:対照試験に消費された適正液の体積(ml)
C:本試験に消費された適正液の体積(ml)
S:試料の重さ(g)
【0085】
2.ガラス転移温度確認
TA社のDCS(Differential Scanning Calorimetry)で測定した。測定温度範囲は、-30℃~200℃を分当りの10℃ずつ2回スキャン(scan)し、測定されたガラス転移温度は、2回目のスキャン時のガラス転移温度値を測定した。
【0086】
その他、追加される化合物の成分は、下記のとおりである。
(B1)化学式1で表示されるポリアルキレンオキシド樹脂であって、nが30で、重量平均分子量が1,340である化合物
(C1)亜硫酸ナトリウムブロック処理されたヘキサメチレンジイソシアネート水性ブロックイソシアネート化合物
(C2)カルボジイミド当量420g/molのシクロヘキサン構造を含むポリカルボジイミド化合物
(C3)ヘキサメトキシメチロールメラミン
(D1)平均粒径0.1μmのシリカゾル
【0087】
[実施例1~6]
本実施例においてプライマーコーティング液を塗布する前に基材フィルムとして使用されたポリエステルフィルムの製造方法は、下記のとおりである。
【0088】
まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃において6時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、これを圧出機に供給して約280℃においてシート上へ溶融押出し、表面温度20℃を維持した金属ロール上において急冷固化して、厚さ1024μmのキャストフィルムを得た。
【0089】
次に、このキャストフィルムを加熱されたロール(roll group)及び赤外線ヒーター100℃で加熱し、その後周速差があるロールで縦方向に3.2倍延伸比で延伸して一軸配向PETフィルムを得て、これを基材として使用した。続いて、フィルムをクリップで端部に把持し、熱風領域に導入し、乾燥させた。その後、130℃において横方向へ3.2倍延伸比で延伸し、240℃において熱固定した後、200℃において3%の横緩和した。このようにして厚さ100μmである光学用ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
本実施例1ないし6では、前記ポリエステル基材フィルムの製造工程中にプライマー層を形成する塗布液を縦方向に3.2倍延伸比で延伸する製造工程後にリバースロール法で一軸配向PETフィルムの一面に固形分重量が0.08g/mになるように塗布する工程を追加挿入し、塗布液の組成は、下記表1のとおりである。
【0091】
また、下記の表1のように、同等な割合で成分を調節し、上述したように略式名称で要約し、すべての実施例及び比較例において総分子量は、10,000g/mol以下になるように調節した。
【0092】
また、塗布液を適用した最終プライマー層の厚さは、0.1μmである。
【0093】
【表1】
【0094】
[比較例1]
プライマー層を形成しないことを除いては、実施例1と同様に実施して光学用ポリエステルフィルムを製造した。
【0095】
[比較例2~19]
下記表2の成分と含有量を有した塗布液でプライマー層を構成したことを除いては、実施例1と同様に実施して光学用ポリエステルフィルムを製造した。
【0096】
【表2】
【0097】
前記実施例1ないし6及び比較例1ないし19による光学用ポリエステルフィルムを使用して、次のような実験例にて物性を測定し、その結果を次の表に表した。
【0098】
<実験例>
1.熱処理前後のヘイズ及びヘイズ変化量測定
上述した実施例、比較例において作られた塗布液でポリエステルフィルムに塗布して硬化させた後、NIPPON DENSHOKU社製のHAZE測定器を利用してヘイズを測定した。
【0099】
Haze確認後に電気乾燥器を利用して150℃で1時間保管した。1時間後試料を取り出してNIPPON DENSHOKU社製のHAZE測定器を利用してヘイズを再測定した。熱処理後物性が測定されると、熱処理前後の変化量を算出した。総10枚の同一試料の測定値の平均で算出した。
【0100】
2.常温接着力及び耐湿性テスト後接着力測定
常温及び耐湿雰囲気でプライマー層間の接着力を測定した。#20ワイヤーバーを使用してプライマー層が接着されている表面にアクリル系UV硬化樹脂を塗布させた後、切断機でプライマー層がコーティングされたフィルムに切断線を作って、10×10のマトリックスに1mm×1mm正四角形を配置した。切断線があるフィルムにセロハンテープ(No.405、NICHIBAN社製;広さ:24mm)を付け、ベルベットを利用して、テープをさすってフィルムに強力に付着させた後、垂直にテープをはがした。コーティング層に残っているプライマー層の面積を視覚的に観察し、次の数式4により接着力を計算した。
[数式4]
【数1】
【0101】
また、信頼性評価次元で60℃、90%湿度下で96時間後の耐湿性テスト後、接着力評価も前記と同じ方法で実施した。
【0102】
【表3】
【0103】
表3において表したように、実施例1ないし6による光学用ポリエステルフィルムを比較例1ないし19による光学用ポリエステルフィルムと比較してみると、プライマー構成物質で適正酸価を表し、カルボン酸を有するアクリル樹脂(A1)とポリアルキレンオキシド樹脂(B1)を適用した実施例が比較例より同じ条件で熱処理前後ヘイズ変化量が低かったし、常温接着力及び耐湿性テスト後接着力ともが優れた。
【0104】
しかしながら、比較例によるフィルムの場合、接着力及び耐湿性テスト後接着力がプライマー層がない比較例1によるフィルムと比較すると相対的に良好であるが、実施例による光学用ポリエステルフィルムに比べて相対的に接着力が弱くなり、反面に酸価値の減少に対しても熱処理後ヘイズ変化量が悪化する傾向を見せた。
【0105】
全体実施例の結果に基づいて、メラミン化合物(C3)を利用するか、または組み合わせた実施例3、5、6は、熱処理前後のヘイズ変化量が悪化し、大きな差ではないが、イソシアネート(C1)とカルボジイミド化合物(C2)を適用した実施例4の結果を見ると、他の実施例に比べて相対的に優れた接着力を表し、耐久性を表す耐湿性テストでも優れた接着力を維持することが確認されて、最も最適化された構成であることが分かる。
【0106】
本明細書では、本発明者らが行った多様な実施例のうち、いくつかの例だけを挙げって説明しているが、本発明の技術的思想は、これらに限定または制限されず、当業者により変形されて多様に実施されうることはもちろんである。
図1
図2