(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】臀部被覆部を含んだ製編衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 9/02 20060101AFI20230516BHJP
A41B 11/14 20060101ALI20230516BHJP
A41B 9/04 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A41B9/02 L
A41B11/14 B
A41B9/04 Z
(21)【出願番号】P 2019047352
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】野村 宏樹
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-291448(JP,A)
【文献】実開昭64-22711(JP,U)
【文献】特開平10-259504(JP,A)
【文献】実開昭60-136306(JP,U)
【文献】特開2008-214775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/02
A41B 11/14
A41B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の臀部を覆う臀部被覆部と当該臀部被覆部に対向する配置で着用者の下腹部両脇前面を覆う左右の前部被覆部とが胴回り方向で筒形に一体成型された製編衣類において、
前記臀部被覆部と左右の前記前部被覆部とはコース数が同じであり、
前記臀部被覆部では複数本の糸より成るコースを含むことによって左右の前記前部被覆部よりも丈方向に長く形成され
、
左右の前記前部被覆部は、前記臀部被覆部に比べてフロート編したコースを多く含んだ編組織によって形成されていることを特徴とする臀部被覆部を含んだ製編衣類。
【請求項2】
前記臀部被覆部は、左右の前記前部被覆部に比べて地糸と添え糸とで添え糸編又は引き揃え編したコースを多く含んだ編組織によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の臀部被覆部を含んだ製編衣類。
【請求項3】
前記臀部被覆部は、ループ長が長く形成されたループを有するコースが左右の前記前部被覆部に比べて多い編組織によって形成されていることを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載の臀部被覆部を含んだ製編衣類。
【請求項4】
衣類は、男性用のローライズパンツ又は女性用のローライズショーツであることを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の臀部被覆部を含んだ製編衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の臀部を後側から被覆する部分(以下、「臀部被覆部」と言う)を含んだ形体で製編された衣類(例えばボクサーパンツ、ボクサーショーツなど)のうち、ローライズのデザインを採用したものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臀部被覆部を含んだ形体で製編された衣類では、男女用を問わず、「ローライズ」と呼ばれるデザインが流行している(例えば特許文献1,2等参照)。
このローライズデザインは、
図8(a)に示すように股間100から履き口(ウエストゴム部分)101までの丈h(股上)を短くして着用者の上半身をスマートに見せ掛けることを特徴としたものである。また、このような見栄え上の特徴に加え、履き口101の前部が着用者の下腹部よりも下側に配置されることを要因として、下腹部の窮屈感や圧迫感が解放されるという履き心地上の利点をも有している。
【0003】
このようなローライズデザインは、パンツやショーツ等の下着だけでなく、パンティストッキングやスポーツレギンス、スパッツ等のように、下着の上から着用するものにも広く採用されている。
なお、ローライズデザインでは、しゃがんだり前屈みになったりしたときにパンティストッキング形体等では履き口101の後部側等から下着が露出しやすく、パンツ形体等にいたっては
図8(b)に示すように着用者の臀部の一部上側までもが露出してしまうということがあった。そのため、ファッションセンスとしての好き嫌いが大きく分かれるところとなっており、意図した露出を望まない使用者からは敬遠される大きな要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3120135号公報
【文献】実用新案登録第3114367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パンツなどの衣類を製造する方法として、丸編機などを用いて一体成型による筒状生地を製編し、1着相当のピースに分離した後、このピースに股下のマチ部分をカットソーにより取り付ける生産方法が採用されることがある。そしてこのような生産方法は、ローライズデザインのパンツやショーツでも適用対象となる。
しかし当然のことながら、筒状生地は全周にわたってコース数が一定になるから、衣類の前身頃部分と後身頃部分とで着用時の丈寸法も同じになってしまう。前記したように、ローライズデザインは股間100から履き口101までの丈hが短いことが特徴であるので、前身頃部分の丈寸法を短くすることによって必然的に後身頃部分の丈寸法も短くなり、前記した意図していない露出に伴う難点を解消することはできない。
【0006】
なお、製編に用いる丸編機として、特殊な反転丸編機などを選べば、筒形における周方向の一部だけコース数を変化させることが可能になるから、これにより後身頃に相当する半周だけコース数を増加させて前身頃部分よりも後身頃部分の丈寸法を大きくさせることは可能となる。
或いは、一般的な丸編機でも、前身頃部分と後身頃部分との境界部で糸切替を行って糸種(番手や伸縮性などの違い)を異ならせることにより、前身頃部分よりも後身頃部分の丈寸法を僅かながら大きくさせることは可能である。
【0007】
しかしながら、コース数の変化や糸切替の採用では、前身頃部分と後身頃部分の境界部に丈方向に沿って孔が集まった領域や色が斑になる領域を生じさせ、見栄えが悪化することがあった。また糸の局部的な重なりや糸端の集合によって衣類の肌側面に立体的な継ぎ目が現出し、ゴワツキが生じることもあった。
のみならず、コース数の変化や糸切替を行うたびに糸入れや糸抜きが必要になるので、生産性は極度に低下することになり、そもそも一体成型を採用することの意義が失われてしまう。
【0008】
なお、一体成型とは異なり、例えばガードルの製作工程のように、始めからカットソーによって前身頃部分と後身頃部分を複数のパーツ生地から縫製することでも前身頃部分より後身頃部分の丈寸法を大きくさせることは可能であるが、このような手法は縫製作業者の熟練度を揃えて高品質を安定させる必要が生じ、益々、生産性を低下させる結果となるので採用は難しい。
【0009】
このように、ローライズデザインの採用には、衣類としての機能性(風合いや見栄えなど)に生じる問題の回避や、生産性(コスト面を含む)の問題などを回避するという理由から、一体成型による筒状生地を利用するのが好適であるものの、前身頃部分と後身頃部分とでコース数を同じにせざるを得ないという事情を払拭することはできないものであった。その結果、このようにして製作した衣類では着用時の丈寸法が前身頃部分と後身頃部分とで同じになるから、前記した意図していない露出に伴う難点を解消することはできないでいた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高生産性を確保しつつも衣類としての機能性(風合いや見栄えなど)に生じる問題を完全に回避し、そのうえでローライズデザインの特徴を遺憾なく発揮できて、使用者間に好き嫌いが生じるのを可及的に抑制できるようにした臀部被覆部を含んだ製編衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る臀部被覆部を含んだ製編衣類は、着用者の臀部を覆う臀部被覆部と当該臀部被覆部に対向する配置で着用者の下腹部両脇前面を覆う左右の前部被覆部とが胴回り方向で筒形に一体成型された製編衣類において、前記臀部被覆部と左右の前記前部被覆部とはコース数が同じであり、前記臀部被覆部では複数本の糸より成るコースを含むことによって左右の前記前部被覆部よりも丈方向に長く形成されていることを特徴とする。
【0012】
前記臀部被覆部は、左右の前記前部被覆部に比べて地糸と添え糸とで添え糸編又は引き揃え編したコースを多く含んだ編組織によって形成されたものとするとよい。
左右の前記前部被覆部は、前記臀部被覆部に比べてフロート編したコースを多く含んだ編組織によって形成されたものとするとよい。
前記臀部被覆部は、ループ長が長く形成されたループを有するコースが左右の前記前部被覆部に比べて多い編組織によって形成されたものとするとよい。
衣類は、男性用のローライズパンツ又は女性用のローライズショーツとして実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る臀部被覆部を含んだ製編衣類であれば、高生産性を確保しつつも衣類としての機能性(風合いや見栄えなど)に生じる問題を完全に回避し、そのうえでローライズデザインの特徴を遺憾なく発揮できて、使用者間に好き嫌いが生じるのを可及的に抑制できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明衣類の一実施形態を示したものであって(a)は正面側から見た斜視図であり(b)は背面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明衣類の臀部被覆部に採用可能な編組織の第1例を示した組織図である。
【
図4】本発明衣類の臀部被覆部に採用可能な編組織の第2例を示した組織図である。
【
図5】本発明衣類の前部被覆部に採用可能な編組織の第2例を示した編図である。
【
図6】本発明衣類の前部被覆部に採用可能な編組織の第3例を示した編図である。
【
図7】本発明衣類の前部被覆部に採用可能な編組織の第4例を示した編図である。
【
図8】ローライズデザインを採用した従来の男性用ボクサーパンツを示したものであって(a)は正面側から見た斜視図であり(b)は背面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至
図3は、本発明に係る臀部被覆部を含んだ製編衣類(以下、「本発明衣類」と言う)1の一実施形態を示している。
本実施形態の本発明衣類1は、男性用のボクサーパンツとして実施したものを例示している。そのため、着用者の臀部を覆う臀部被覆部2と、この臀部被覆部2に対向する配置で着用者の下腹部両脇前面を覆う左右の前部被覆部3と、これら左右の前部被覆部3に挟まれた前立て部4と、前立て部4の下端と臀部被覆部2の下端とを繋いで左右の裾口5を区画形成させるマチ部6と、臀部被覆部2、左右の前部被覆部3及び前立て部4の上端を周方向に繋ぐようにして衣類上周部を形成している履き口部(ウエストゴム部)7とを有している。
【0016】
また、パンツのデザインとしてローライズを採用したものとなっており、股間(マチ部6)から履き口7までの丈h(股上)を、標準的な寸法(ローライズではないパンツの丈)よりも短くしてある。
本発明衣類1は、丸編機などによって製編された筒状生地を基に、1着相当のピースに分離した後、このピースに股下のマチ部6をカットソーにより取り付けることによって製作されている。そのため、臀部被覆部2と左右の前部被覆部3とは、胴回り方向で筒形に一体成型された関係にある。
【0017】
本発明衣類1では、臀部被覆部2と左右の前部被覆部3とはコース数が同じとされている(
図1及び
図2ではコースを二点鎖線で模式的に表現している)。そして、このような構成でありながら本発明衣類1では、
図1に示すように臀部被覆部2が左右の前部被覆部3よりも丈方向に長く形成されている。このような構成を実現させるために、少なくとも臀部被覆部2を形成しているコースに対して、その一部又は全部に複数本の糸を含ませるようにしてある。
【0018】
なお、ここにおいて「コース数」は、編みが進行する方向に形成されるループの並びを衣類丈の方向で数えたものである。すなわち、編みが進行する方向は衣類周方向なので、この衣類周方向が「コース(本明細書ではコース方向と同義とおく)」である。これに対して、コース(又はコース方向)と垂直に交差する方向(衣類丈方向)を「ウエール(本明細書ではウエール方向と同義とおく)」と呼ぶ。
【0019】
図3は臀部被覆部2に採用可能な編組織の第1例を示した組織図である。この
図3から明らかなように、臀部被覆部2は、地糸10と添え糸11とで添え糸編(プレーティング編)を3コース、天竺編によって連続させて、地糸10のみの天竺編コースを1コース混ぜるようにした4口リピートとしてある。
これに対して前部被覆部3では、図示は省略するが全てのコースを地糸10のみで天竺編したものとしてある(これを前部被覆部3の第1例とおく)。
【0020】
そのため、臀部被覆部2では、前部被覆部3よりも4コース当たり3コースでボリュウムアップされたものとなっており、このボリュウムアップされただけ、臀部被覆部2の丈寸法が長くなっている。
地糸10を構成する糸には、例えば、ポリウレタン弾性糸に代表されるような弾性繊維を使用することができる。またカバリング糸(いわゆるFTY)を用いることも可能である。なお、地糸10にカバリング糸を採用すると、ベア糸を使用する場合に比べてしなやかな伸び縮み挙動が得られることになり、結果として、臀部被覆部2や前部被覆部3に適切な伸縮性が得られる点で好適と言える。
【0021】
カバリング糸を使用する場合の一例として、芯糸を17dtexのポリウレタン糸としカバー糸を33dtexのナイロン糸とすることを例示することができる。またこの場合の添え糸11には、78dtexのナイロン糸を組み合わせることを例示できる。
これに対して添え糸11を構成する糸には、綿などの天然繊維、セルロース、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アクリル等の合成繊維を用いることが可能である。地糸10と添え糸11とを異種の糸にすることが殊更限定されるわけではないので、添え糸11にポ
リウレタンやポリエステルを採用することも可能である。
【0022】
特にナイロンやポリエステル、レーヨン等の長繊維によるフィラメント糸は、通常の紡績糸よりも強度があるので、しっかりとしたループが形成でき、臀部被覆部2をより丈方向に長く形成できる点で好適と言える。
とは言え、これら地糸10に使用する糸種や添え糸11に使用する糸種などについては特に限定されるものではなく、前記したもの以外にも種々のものを使用することができる。
【0023】
本実施形態では、地糸10にポリウレタン糸を用い、原則的に衣類外面(着用時に肌側とは反対を向く面(反肌側面)を形成させるものとし、添え糸11にナイロン糸を用いて衣類内面(肌側面)を形成させるものとした。
なお、添え糸編に代えて、引き揃え編(交編)を採用することもできる。この場合も、地糸10と添え糸11を同じ糸種とすることが可能である。
【0024】
図4は臀部被覆部2に採用可能な編組織の第2例を示した組織図である。この
図4から明らかなように、地糸10と添え糸11とで添え糸編を天竺編するコースと地糸10のみで天竺編するコースとを1コースおきに交互に混ぜる2口リピートとしてある。
この第2例で例示するように、臀部被覆部2に対して含ませる添え糸編又は引き揃え編のコース数が特に限定されるものではなく、臀部被覆部2の丈寸法を前部被覆部3の丈寸法よりもどれだけ長くするかに応じて、適宜調整すればよいものである。
【0025】
すなわち、前部被覆部3に対して添え糸編又は引き揃え編のコースを含ませることも可能であり、含ませる場合には、臀部被覆部2への添え糸編又は引き揃え編のコース数を、前部被覆部3へのコース数に比べて多くすればよいことになる。
例えば、
図3に示した臀部被覆部2の第1例に採用した編組織や、
図4に示した臀部被覆部2の第2例に採用した編組織を前部被覆部3の編組織として採用したうえで、臀部被覆部2を形成する編組織は、全コースを地糸10と添え糸11とによる添え糸編又は引き揃え編によって製編するようにしてもよい。
【0026】
このような構成は、臀部被覆部2をより丈方向に長く形成することに好適である。
図5は前部被覆部3に採用可能な編組織の第2例を示した組織図である。この編組織では、臀部被覆部2に含ませる添え糸編又は引き揃え編のコース数を、前部被覆部3に含ませるコース数に比べて多くする構成とすることに加えて、左右の前部被覆部3にフロート編したコースも含ませるようにしたものである。
【0027】
フロート編は、コースを製編する適宜ループ間隔で、針に糸をかけずにミスさせる(ウエルトにする)ことを、ウエール方向で2コース又は3コース以上に跨がらせるようにして、編地の裏に糸を浮かせるようにした組織を言う。
図5の第2例は、地糸10にポリウレタン糸を用い、添え糸11にナイロン糸を用いた添え糸編又は引き揃え編を1コースごとの交互にくり返しつつ、ミスを5コースにわたって繰り返した5:1編の編組織としている(ミスにより形成されたループは6コースにわたって跨る形状となるのでウエール方向の引き締めが大きく、相当する量の伸びが抑えられる)。
【0028】
このフロート編を採用することで、前部被覆部3は緻密な組織となり、その結果として臀部被覆部2の丈寸法が前部被覆部3の丈寸法に比べて長くなる。
前部被覆部3に対してフロート編を入れるループ間隔やフロート編を跨がらせるコース数は、特に限定されるものではなく、前部被覆部3の丈寸法をどれだけ詰めるか(臀部被覆部2の丈寸法を前部被覆部3の丈寸法よりもどれだけ長くするかに同じことになる)に応じて、適宜調整すればよいものである。
【0029】
例えば
図6は、前部被覆部3にフロート編を採用した第3例の編図である。この第3例では、地糸10にポリウレタン糸を用い、添え糸11にナイロン糸を用いた添え糸編又は引き揃え編を1コースごとの交互にくり返しつつ、ミスを3コースにわたって繰り返した3:1編の編組織としている(ミスにより形成されたループは4コースにわたって跨る形状となるのでウエール方向の引き締めが大きく、相当する量の伸びが抑えられる)。
【0030】
また
図7は、前部被覆部3にフロート編を採用した第4例の編図である。この第4例では、地糸10にポリウレタン糸を用い、添え糸11にナイロン糸を用いた添え糸編又は引き揃え編を1コースごとの交互にくり返しつつ、ミスを3コースにわたって繰り返した1:1編の編組織としている(ミスにより形成されたループは2コースにわたって跨る形状となるのでウエール方向の引き締めが生じ、相当する量の伸びが抑えられる)。
【0031】
ミスにより形成されるループを大きくするほど(例えば1:1編に比べて5:1編のフロート編とした組織のほうが)、前部被覆部3の丈寸法を短くすることに対して有利である。
また、前部被覆部3にフロート編を採用し、臀部被覆部2は天竺編みで添え糸編(プレーティング編)とすれば、臀部被覆部2の丈寸法を前部被覆部3の丈寸法に比べて長くすることに好適となる。
【0032】
なお、地糸10を構成する糸と添え糸11を構成する糸を入れ替えて構成することもできる(例えば、臀部被覆部2は天竺編みで全コースを添え糸編とし、前部被覆部3は5:1編のフロート編として地糸10にナイロン糸、添え糸11にポリウレタン糸を用いるような場合も可能である)。
なお、臀部被覆部2に対してフロート編のコースを含ませることを排除するわけではなく、要は、前部被覆部3に含ませるフロート編のコース数を、臀部被覆部2へのコース数に比べて多くすればよいことになる。
【0033】
更に、図示は省略するが、臀部被覆部2は、添え糸編又は引き揃え編のコース数を、前部被覆部3に含ませる添え糸編又は引き揃え編のコース数に比べて多くすることに加えて、ループ長が長く形成されたループを有するコースの比較において、臀部被覆部2の方が左右の前部被覆部3に比べて多くなる編組織とすることもできる。
ループ長を長くするには、針又はシンカによる糸の引き下げ量を大きくすればよい。なお、該当するコースを形成する全てのループが、ループ長を長く形成されたものとする必要はなく、ループ長の長いループの配置や配置数などは適宜選択できるものである。
【0034】
このように、ループ長の長いループを有するコースを設けることで、臀部被覆部2は伸縮性の豊富な組織となり、その結果として臀部被覆部2の丈寸法が前部被覆部3の丈寸法に比べて長くなる。
臀部被覆部2において、1コース中に対してループ長の長いループを入れる配置数や、このようなコースを入れるコース数は、特に限定されるものではなく、臀部被覆部2の丈寸法を前部被覆部3の丈寸法よりもどれだけ長くするかに応じて、適宜調整すればよいものである。
【0035】
なお、前部被覆部3に対してループ長の長いループが含まれたコースを設けることを排除するわけではなく、要は、臀部被覆部2に含ませる該当のコース数を、前部被覆部3に入れる該当のコース数に比べて多くすればよいことになる。
以上詳説したところから明らかなように、本発明衣類1では、臀部被覆部2と左右の前部被覆部3とのコース数が同じでありながら、臀部被覆部2が左右の前部被覆部3よりも丈方向に長く形成されている。そのため、ローライズデザインを採用しても、しゃがんだり前屈みになったりすることによる履き口7からの下着露出や、着用者の臀部の一部露出が起こらないようにできるものである。
【0036】
これにより、意図した露出を望まないような使用者から、敬遠されることも抑制できることになり、使用者間に好き嫌いが生じるのを可及的に抑制できるものとなる。そのため多くの使用者へ向けて、ローライズデザインの特徴を遺憾なく発揮できるような機会を与えられるものである。
勿論、一体成型による筒状生地を利用して衣類製作ができるので、衣類としての機能性(風合いや見栄えなど)に生じる問題の回避や、生産性(コスト面を含む)の問題などの回避が可能となる。
【0037】
ところで、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、天竺編に代えてゴム編など、その他の編組織を採用することができる。
履き口7は、別のパーツ生地やウエストゴムなどを取り付けたり、編組織や使用糸種を部分的に変更したりすることにより、ウエストゴム部として形成することが限定されるものではなく、生地自体の緊締性を利用したものとすることができる。
【0038】
前部被覆部3に対するフロート編コースの採用と、臀部被覆部2に対するループ長が長く形成されたループを有するコースを設けることの採用とを、併用することは勿論可能である。
地糸10や添え糸11には、ベア糸だけでなくカバリング糸を用いることも可能である。
【0039】
本発明衣類1は、ボクサーパンツやボクサーショーツ等の下着だけでなく、パンティストッキングやスポーツレギンス、スパッツ等のように、下着の上から着用するものにも広く採用可能である。また、ビキニタイプのパンツやショーツ、或いはブルマーなど、裾口5を切り取りによって仕上げるような衣類にも採用可能である。
前立て部4やマチ部6は必ずしも必要とされるものではなく、衣類形体などに応じて省略したり、又は図示したものとは異なる形状にしたりすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 臀部被覆部を含んだ製編衣類(本発明衣類)
2 臀部被覆部
3 前部被覆部
4 前立て部
5 裾口
6 マチ部
7 履き口部
10 地糸
11 添え糸