(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車両の起動システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20230516BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230516BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20230516BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230516BHJP
【FI】
B60R16/02 650V
H02J7/00 S
H02J7/00 302D
B60L1/00 L
B60L3/00 N
B60R16/02 645D
(21)【出願番号】P 2018074027
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 康弘
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007121(JP,A)
【文献】特開平09-140070(JP,A)
【文献】特開2010-213556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
B60L 1/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のパワースイッチのオンで起動され、オフで停止される制御装置と、
前記制御装置に電力を供給するバッテリと、
前記制御装置と前記バッテリとの間に設けられ、前記バッテリから前記制御装置への電力の供給をオン、オフ可能な電源リレーと、
前記制御装置のバックアップ電源回路と前記電源リレーとを繋ぐ起動回路と、
前記バックアップ電源回路に信号回路を介して接続され、前記バックアップ電源回路から前記信号回路へ電流が流れるよう通電可能なスイッチと、を備え、
前記スイッチがオンされた場合に、前記バックアップ電源回路から前記信号回路に電流が流れることで、前記バックアップ電源回路から前記電源リレーへ電力が供給されるよう構成された車両の起動システムであって、
前記信号回路が常時通電状態となる異常が発生した場合に、前記バックアップ電源回路から前記電源リレーへの電力供給を遮断可能な遮断回路を備える
ことを特徴とする車両の起動システム。
【請求項2】
前記遮断回路は、前記バッテリに接続され、前記バッテリから常時電力が供給される前記バックアップ電源回路に設けられ、前記バックアップ電源回路から前記信号回路に流れる電流を遮断可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の起動システム。
【請求項3】
前記遮断回路は、前記起動回路に設けられ、前記バックアップ電源回路から前記起動回路に流れる電流を遮断可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の起動システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記遮断回路で回路が遮断された後、前記パワースイッチのオフを条件に停止される
ことを特徴する請求項1から3の何れか一項に記載の車両の起動システム。
【請求項5】
前記バックアップ電源回路から流れる電流を監視可能なモニタ回路と、
前記モニタ回路が監視する電流に基づいて前記信号回路が常時通電状態となる異常を診断可能な回路診断部と、
前記回路診断部が前記異常と診断した場合に前記遮断回路で回路を遮断させる遮断回路制御部と、を備え、
前記回路診断部は、前記信号回路の通電状態が所定時間以上継続していると判定した場合に、前記異常と診断する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の車両の起動システム。
【請求項6】
前記遮断回路制御部は、前記遮断回路で回路を遮断させた状態で前記パワースイッチがオフからオンになった場合に、前記遮断回路に回路の遮断を復帰させる
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の起動システム。
【請求項7】
前記回路診断部が前記異常を診断した場合にその旨を報知可能な報知部を備える
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の車両の起動システム。
【請求項8】
前記スイッチが前記制御装置に対して起動要求可能な車載装置に設けられる
ことを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の車両の起動システム。
【請求項9】
前記スイッチが前記制御装置に対して起動要求可能な車載スイッチである
ことを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の車両の起動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置を車両の停止状態で起動可能とした車両の起動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車のように、外部電源と車両とを接続し、車両に搭載されている駆動用バッテリを充電可能な車両が知られている。この種の車両では、車両の停止(電源オフ)時においても充電を可能としたり、一時的に車両を制御するために車載充電器等の車載装置や車載スイッチから起動要求信号を出力して車両の制御装置を起動可能としている。
特許文献1には、車載充電器に充電ガンの接続により車載充電器から充電を制御する車両のコントロールユニット(制御装置)に充電開始信号(信号)を出力してコントロールユニットを起動させる充電開始信号回路(信号回路)を備えた車両の充電システムと充電システムの故障診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示する電動車両の充電システムと故障診断装置では、故障を診断して報知することは可能であるが、例えば、充電開始信号回路が地絡等により常時通電状態となる異常が発生した場合に、充電開始信号が常時出力(オン)される状態となり、コントロールユニットを停止できなくなってしまう可能性があった。これにより、車載充電器とコントロールユニットとを接続する充電開始信号回路(信号回路)が地絡したり、車載充電器のスイッチがオン固着して充電開始信号回路が常時通電状態(充電開始信号が常時入力され続ける状態)となった場合にはコントロールユニットに電流が流れ続け、最悪の場合にはバッテリ(補機バッテリ)が過放電となり、必要なときにコントロールユニット(制御装置)を起動できない虞があった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、車両の停止時(電源オフ時)に制御装置を起動可能な起動システムにおいて、信号回路が常時通電された状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生した場合でも制御装置を確実に停止可能な状態とすることができる、車両の起動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両の起動システムは、車両のパワースイッチのオンで起動され、オフで停止される制御装置と、前記制御装置に電力を供給するバッテリと、前記制御装置と前記バッテリとの間に設けられ、前記バッテリから前記制御装置への電力の供給をオン、オフ可能な電源リレーと、前記制御装置のバックアップ電源回路と前記電源リレーとを繋ぐ起動回路と、前記バックアップ電源回路に信号回路を介して接続され、前記バックアップ電源回路から前記信号回路へ電流が流れるよう通電可能なスイッチと、を備え、前記スイッチがオンされた場合に、前記バックアップ電源回路から前記信号回路に電流が流れることで、前記バックアップ電源回路から前記電源リレーへ電力が供給されるよう構成された車両の起動システムであって、前記バックアップ電源回路から前記電源リレーへの電力供給を遮断可能な遮断回路を備える。
【0007】
上記(1)の構成によれば、スイッチがオンされると、バックアップ電源回路、信号回路の順に電流が流れることで、バックアップ電源回路から電源リレーへ電力が供給される。これにより、バッテリから制御装置への電力の供給がオンとなる(制御装置の起動)。また、信号回路が常時通電状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生した場合にも、バックアップ電源回路、信号回路の順に電流が流れることで、バックアップ電源回路から電源リレーへ電力が供給される。この場合にはスイッチのオフによってもバックアップ電源回路、信号回路の順に流れる電流を遮断することができないので、バッテリから制御装置への電力の供給がオンとなる状態を解消することができない。
一方、バックアップ電源回路から電源リレーへの電力供給を遮断可能な遮断回路を備えるので、信号回路が常時通電状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生した場合にも、遮断回路によってバックアップ電源回路から電源リレーへの電力供給を遮断することができる(制御装置の停止)。
したがって、信号回路が常時通電された状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生した場合でも制御装置を確実に停止可能な状態とすることができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記遮断回路は、前記バックアップ電源回路に設けられ、前記バックアップ電源回路から前記信号回路に流れる電流を遮断可能である。
【0009】
上記(2)の構成によれば、信号回路が常時通電状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生しても、遮断回路によってバックアップ電源回路から信号回路に流れる電流を遮断できるので、バックアップ電源回路から起動回路に流れる電流を遮断することができる。これにより、異常が原因で前記バックアップ電源回路から前記電源リレーへ供給される電力を遮断することができ、制御装置を確実に停止可能な状態とすることができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記遮断回路は、前記起動回路に設けられ、前記バックアップ電源回路から前記起動回路に流れる電流を遮断可能である。
【0011】
上記(3)の構成によれば、信号回路が常時通電状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生しても、遮断回路によってバックアップ電源回路から起動回路に流れる電流を直接遮断できるので、信号回路のどこの場所で異常(地絡)が発生しても、異常が原因で前記バックアップ電源回路から前記電源リレーへ供給される電力を確実に遮断することができる。これにより制御装置をより確実に停止可能な状態とすることができる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)の何れか一つの構成において、前記制御装置は、前記遮断回路で回路が遮断された後、前記パワースイッチのオフを条件に停止される。
【0013】
上記(4)の構成によれば、パワースイッチがオフのときに異常が発生した場合は、遮断回路で回路を遮断した後、直ぐに制御装置を停止することができ、パワースイッチがオンのときに異常が発生した場合は、遮断回路で回路を遮断した後、パワースイッチをオフした時点で制御装置を停止することができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)の何れか一つの構成において、前記バックアップ電源回路から流れる電流を監視可能なモニタ回路と、前記モニタ回路が監視する電流に基づいて前記信号回路が常時通電状態となる異常を診断可能な回路診断部と、前記回路診断部が前記異常と診断した場合に前記遮断回路で回路を遮断させる遮断回路制御部と、を備え、前記回路診断部は、前記信号回路の通電状態が所定時間以上継続していると判定した場合に、前記異常と診断する。
【0015】
上記(5)の構成によれば、回路診断部は、信号回路の通電状態が所定時間以上継続していると判定した場合に異常と診断するので、回路制御部は信号回路が常時通電状態となる異常を正確に診断することができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、前記遮断回路制御部は、前記遮断回路で回路を遮断させた状態で前記パワースイッチがオフからオンになった場合に、前記遮断回路に回路の遮断を復帰させる。
【0017】
上記(6)の構成によれば、一旦制御装置を停止した後、パワースイッチをオフ状態からオン状態にしたときに、遮断回路によって遮断した回路が復帰されて再度異常の判定を行なうことができる。したがって、例えば、スイッチの一時的なオン固着等で異常と判定された場合であっても、パワースイッチをオフ状態からオン状態にした際に、回路を正常な状態に戻すことができる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)の構成において、前記回路診断部が前記異常を診断した場合にその旨を報知可能な報知部を備える。
【0019】
上記(7)の構成によれば、報知部は回路診断部が異常を診断した場合にその旨の報知することができる。これにより、ユーザは信号回路が常時通電された状態となる異常、例えば、信号回路の地絡やスイッチのオン固着が発生していることを知ることができる。
【0020】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)の何れか一つの構成において、前記スイッチが前記制御装置に対して起動要求可能な車載装置に設けられる。
【0021】
上記(8)の構成によれば、バックアップ電源回路と車載装置とを接続する信号回路が常時通電された状態となる異常がある場合に、制御装置を停止可能な状態とすることができる。
【0022】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)から(8)の何れか一つの構成において、
前記スイッチが前記制御装置に対して起動要求可能な車載スイッチである。
【0023】
上記(9)の構成によれば、バックアップ電源回路と車載スイッチとを接続する信号回路が常時通電された状態となる異常がある場合に、制御装置を停止可能な状態とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、信号回路が常時通電された状態(信号が常時入力され続ける状態)となる異常が発生した場合でも制御装置を確実に停止可能な状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るPHEV自動車に搭載される車両の起動システムを概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した一実施形態に係る車両の起動システムの詳細を示す回路図である。
【
図3】
図2に示した車両の起動システムの起動順序を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る車両の起動システムの故障診断及び回路遮断を可能にする構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示した回路診断部の診断を説明するためのタイムチャートである。
【
図6】
図4に示した遮断回路制御部の制御内容を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1に示した別の一実施形態に係る車両の起動システムの詳細を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
本発明の一実施形態に係る車両の起動システムは、車両を始動、停止するパワースイッチがオフされた状態(停止時)において車載装置又は車載スイッチからの起動要求により制御装置を起動可能とした起動システムであって、車載装置又は車載スイッチと制御装置のバックアップ電源とを接続する起動要求信号回路が常時通電状態となり、バックアップ電源回路から起動要求信号回路に電流が流れ続ける異常、すなわち制御装置に起動要求信号が常時入力された状態となる異常が発生した場合に、制御装置を停止可能な状態とするができる回路構造を備えたものである。
以下の説明では、車両をプラグインハイブリッド自動車(以下「PHEV自動車」という)を例に説明するが、車両はPHEV自動車に限られるものではなく、電気自動車のほか通常の自動車も含まれる。
【0028】
PHEV自動車は、エンジン及びモータを動力源とする自動車であって、外部電源(例えば、普通充電器又は急速充電器)に接続することによって駆動用バッテリの充電が可能である。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るPHEV自動車に搭載される車両の起動システム1を概略的に示すブロック図である。
図2は、
図1に示した車両の起動システム1の詳細を示す回路図である。
図1に示すように、PHEV自動車は、駆動用バッテリの充電、駆動用バッテリの管理、エンジンの管理等に用いられる各種車載装置や各種車載スイッチのほかに、これらの各種車載装置等、車両の統合的な制御に用いられる制御装置5(以下「コントロールユニット5」という)及び各種車載装置及びコントロールユニット5に電力を供給可能な補機バッテリ21、車両を始動または停止するためのパワースイッチ23を備えている。
【0030】
コントロールユニット5は、パワースイッチ23がオンのときに起動状態とされ、パワースイッチ23がオフのときにスリープ状態(停止状態)とされる。
駆動用バッテリの充電、駆動用バッテリの管理、エンジンの管理等に用いられる各種車載装置には、スリープ状態(パワースイッチ23がオフの状態)のコントロールユニット5に対して起動要求可能な各種車載装置30が含まれる。スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求可能な車載装置30は、例えば、車載充電装置(OBC(On Board Charger))、エンジン制御装置(ECM(Engine Control Module))、又はバッテリ管理装置(BMS(Battery Management System))である。
【0031】
スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求可能な車載装置30はスイッチ301を有しており、そのスイッチ301の一端はPHEV自動車の車体にアースされている。車載装置30のスイッチ301は、スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求する場合に所定時間だけオン(起動要求信号オン)となるスイッチで構成され、所定時間が経過するとオフ(起動要求信号オフ)となる。車載装置30は、所定の条件を満たした場合にコントロールユニット5に対して起動要求するためスイッチ301をオンする。そして、コントロールユニット5は、各種車載装置30のECUによってスイッチ301がオンされることで起動され、各種車載装置30に応じて各々制御を実施する。例えば、車載装置30が車載充電器の場合は、充電給電口に充電コネクタ(充電ガン)が接続されることを条件にスイッチ301がオンされてコントロールユニット5が起動され、充電コネクタをロックするアクチュエータが駆動される(普通充電の場合)。例えば、車載装置30がエンジン制御装置の場合は、給油口のオープナーの操作を検出したことを条件にスイッチ301がオンされてコントロールユニット5が起動され、エンジン制御装置とメータとが通信される。例えば、車載装置30がバッテリ管理装置の場合は、バッテリ管理装置が定期的に起動されて駆動用バッテリの電池情報等からコントロールユニット5の起動が必要と判断したことを条件にスイッチ301がオンされてコントロールユニット5を起動され、温調制御が開始される。
【0032】
駆動用バッテリの充電、駆動用バッテリの管理、エンジンの管理等に用いられる各種車載スイッチには、スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求可能な各種車載スイッチ40が含まれる。スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求可能な車載スイッチ40は、例えば、充電リッドプッシュスイッチ、充電コネクタロック解除スイッチ、又は即充電スイッチである。
【0033】
スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求可能な車載スイッチ40の一端はPHEV自動車の車体にアースされている。車載スイッチ40は、例えば、ユーザが押下した時間だけオン(起動要求信号オン)となるスイッチで構成され、ユーザが車載スイッチ40を押下するのをやめるとオフ(起動要求信号オフ)となる。
コントロールユニット5は、これら各種車載スイッチ40がオンされることで起動され、オンされた各種車載スイッチ40に応じて車両を制御する。例えば、車載スイッチ40が充電リッドプッシュスイッチの場合は、起動されたコントロールユニット5によって充電リッドのロックが解除されるようアクチュエータが駆動される。例えば、車載スイッチ40が充電コネクタロック解除スイッチの場合は、起動されたコントロールユニット5によって充電コネクタのロックが解除されるようアクチュエータが駆動される。例えば、車載スイッチ40が即充電スイッチの場合は、起動されたコントロールユニット5によってタイマー予約充電がキャンセルされて即充電が可能とされる。
【0034】
コントロールユニット5は、複数の外部接続端子を有している。複数の外部接続端子は、補機バッテリ21、電源リレー22、パワースイッチ23、車載装置30、車載スイッチ40等の外部装置を接続するための端子であり、例えば、K~N,Pの符号によって識別可能である。
【0035】
コントロールユニット5のKの符号によって識別される端子(以下「K端子」という)には補機バッテリ21の正極が接続され、補機バッテリ21の負極はPHEV自動車の車体にアースされている。したがって、補機バッテリ21からK端子に電力が常時供給可能である。
【0036】
コントロールユニット5のLの符号によって識別される端子(以下「L端子」という)には、電源リレー22のスイッチ端子の一方221aが接続され、電源リレー22のスイッチ端子の他方221bは補機バッテリ21の正極に接続されている。したがって、電源リレー22のスイッチ221がオンになると、補機バッテリ21からL端子に電力が供給され、電源リレー22のスイッチ221がオフになると補機バッテリ21からL端子への電力供給が遮断(停止)される。
【0037】
コントロールユニット5のMの符号によって識別される端子(以下「M端子」という)には、制御電源制御回路24の一端が接続されている。制御電源制御回路24は、コントロールユニット5のコントロールユニット電源52(
図2参照)を制御するための回路である。制御電源制御回路24の他端には電源リレー22のコイル222の一端が接続され、電源リレー22のコイル222の他端はPHEV自動車の車体にアースされている。したがって、M端子から制御電源制御回路24に電流が流れると、電源リレー22のコイル222に電流が流れ、電源リレー22のコイル222が励磁される。これにより、電源リレー22のスイッチ221がオンとなり、補機バッテリ21からL端子に電力が供給される。一方、M端子から制御電源制御回路24への電流の流れが遮断(停止)されると、電源リレー22のコイル222への電流の流れも遮断され、電源リレー22のコイル222が脱磁される。これにより、電源リレー22のスイッチ221がオフとなり、補機バッテリ21からL端子への電力供給が遮断(停止)される。
【0038】
コントロールユニット5のNの符号によって識別される端子(以下「N端子」という)には、起動要求信号回路25の一端が接続されている。起動要求信号回路25は、スリープ状態のコントロールユニット5が起動要求信号を検出するための回路である。起動要求信号回路25の他端は、スリープ状態のコントロールユニット5に対して起動要求可能な車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40に接続されている。したがって車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40をオフからオンにすると、N端子から起動要求信号回路25、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40の順に電流が流れる(起動要求信号が入力(起動要求信号がオン))。
【0039】
コントロールユニット5のPの符号によって識別される端子(以下「P端子」という)には、パワースイッチ23(IGSW)の一端が接続されている。パワースイッチ23は、コントロールユニット5を起動して車両を始動させるためのスイッチである。パワースイッチ23の他端には補機バッテリ21の正極が接続されている。したがって、パワースイッチ23がオフ状態からオン状態になると補機バッテリ21からP端子に電力が供給され、パワースイッチ23がオン状態からオフ状態になると補機バッテリ21からP端子への電力供給が遮断(停止)される。
【0040】
図2に示すように、コントロールユニット5は、その内部にバックアップ電源回路51を含んでいる。バックアップ電源回路51はK端子に接続されている。したがって、バックアップ電源回路51は、K端子に接続された補機バッテリ21から常時電力が供給される。これにより、パワースイッチ23がオフ状態である等、補機バッテリ21からP端子に電力が供給されない状態であっても、コントロールユニット5に内蔵された記憶装置(例えば、RAM(Random Access Memory))に記憶されたデータ等は維持される。
このように補機バッテリ21からP端子に電力供給がなく、バックアップ電源回路51に電力が供給されている状態を「コントロールユニット5がスリープの状態」という。
【0041】
また、バックアップ電源回路51はコントロールユニット5のN端子に接続されている。したがって、バックアップ電源回路51からN端子に電力供給が可能であり、車載装置30のスイッチ又は車載スイッチ40がオンされると、バックアップ電源回路51からN端子、起動要求信号回路25、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40の順に電流が流れる(起動要求信号が入力(起動要求信号がオン))。
【0042】
コントロールユニット5は、その内部にコントロールユニット電源52を含んでいる。コントロールユニット電源52はL端子に接続されている。コントロールユニット電源52は、電源リレー22のスイッチ221がオフからオンになると補機バッテリ21からL端子を介しての電力の供給が可能となり、電源リレー22のスイッチ221がオンからオフになると補機バッテリ21からL端子を介しての電力の供給が不能となる(電力供給が遮断される)。
【0043】
コントロールユニット5は、その内部に起動回路53を含んでいる。起動回路53は、バックアップ電源回路51とM端子(制御電源制御回路24)とを繋ぐものである。起動回路53の一端は、M端子(制御電源制御回路24)に接続されている。
【0044】
コントロールユニット5は、バックアップ電源回路51と起動回路53との間に第1のトランジスタ54を有している。第1のトランジスタ54のエミッタEにはバックアップ電源回路51が接続され、第1のトランジスタ54のコレクタCには起動回路53が接続されている。また、第1のトランジスタ54のベースBはバックアップ電源回路51を介してN端子(起動要求信号回路25)に接続されている。
【0045】
したがって、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオンとなり、バックアップ電源回路51から起動要求信号回路25(N端子)へ電流が流れる(起動要求信号が入力)と、第1のトランジスタ54のベースBの電位がハイレベルからローレベルに変位し、第1のトランジスタ54のエミッタEからコレクタC、起動回路53、M端子、制御電源制御回路24、電源リレー22のコイル222の順に電流が流れ、電源リレー22のコイル222が励磁される。すなわち、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40のオンで起動要求信号が入力(起動要求信号がオン)されると、バックアップ電源回路51から第1のトランジスタ54を介して電源リレー22(コイル222)に電力が供給されることで、電源リレー22のコイル222が励磁される。これにより、電源リレー22のスイッチ221がオンとなり、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52に電力の供給が可能となる。
【0046】
さらに、コントロールユニット5は、コントロールユニット電源52とM端子との間に、第2のトランジスタ55を備えている。第2のトランジスタ55のエミッタEにはコントロールユニット電源52が接続され、第2のトランジスタ55のコレクタCにはM端子が接続されている。
また、第2のトランジスタ55のベースBにはコントロールユニット電源52とスイッチ56とが接続されている。
【0047】
したがって、コントロールユニット電源52に電力が供給されている状態で、スイッチ56がオンとなり、コントロールユニット電源52からスイッチ56へ電流が流れると、第2のトランジスタ55のベースBの電位がハイレベルからローレベルに変位し、第2のトランジスタ55のエミッタEからコレクタC、M端子、制御電源制御回路24、電源リレー22のコイル222の順に電流が流れ、補機バッテリ21の電力で電源リレー22のコイル222が励磁し続けられる。これにより、スイッチ56がオンされている間は、電源リレー22のスイッチ221がオン状態に維持されて補機バッテリ21からコントロールユニット電源52に電力が供給され続けてコントロールユニット5の起動が継続される。尚、スイッチ56は、コントロールユニット5によってオン、オフが制御される。
【0048】
コントロールユニット5は、その内部でP端子とM端子とが接続されている(図示せず)。したがって、パワースイッチ23がオフ状態からオン状態になると、補機バッテリ21からP端子、M端子、制御電源制御回路24、電源リレー22のコイル222の順に電流が流れ、電源リレー22のコイル222が励磁される。これにより、電源リレー22のスイッチ221がオンとなり、補機バッテリ21からL端子に電力が供給される(コントロールユニット5の起動)。尚、コントロールユニット5が起動されるとコントロールユニット5によってスイッチ56がオンされるので、上記説明と同様、電源リレー22のスイッチ221がオン状態に維持され、パワースイッチ23がオン状態の間は、コントロールユニット5が起動し続けられる。
【0049】
一方、パワースイッチ23がオン状態からオフ状態になると、補機バッテリ21からP端子への電流の流れが遮断される。これにより、スイッチ56をオフすることで電源リレー22のスイッチ221のオフが可能、すなわち、補機バッテリ21からL端子への電力供給が遮断可能(コントロールユニット5の停止(スリープ)が可能)となる。尚、パワースイッチ23がオン状態からオフ状態になると、コントロールユニット5によってスイッチ56がオフされるので、コントロールユニット5は停止(スリープ)する。
【0050】
図3は、
図2に示したコントロールユニット5がスリープ状態(パワースイッチ23がオフ)で車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオンされた場合の起動システム1の起動順序を示すタイムチャートである。
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る車両の起動システム1は、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオフからオンになると、バックアップ電源回路51、第1のトランジスタ54のエミッタE及びベースB、(N端子)、起動要求信号回路25、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40の順に電流が流れる(コントロールユニット5において起動要求信号が検出される)。これにともない第1のトランジスタ54のエミッタEからコレクタC、起動回路53、(M端子)、制御電源制御回路24、電源リレー22のコイル222の順に電流が流れ、電源リレー22のコイル222が励磁される。これにより、電源リレー22のスイッチ221がオンとなり、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52に電力の供給が可能となる(コントロールユニット5の起動)。
【0051】
したがって、パワースイッチ23がオフの状態であり、コントロールユニット5がスリープの状態であっても、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオフからオンになることによって、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52に電力の供給が可能となり、コントロールユニット5が起動する。
【0052】
コントロールユニット5が起動し、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52に電力の供給が可能になった状態でスイッチ56がオフからオンに切り替わる(コントロールユニット5によってスイッチ56がオンに切り替えられる)と、コントロールユニット電源52から第2のトランジスタ55のエミッタE及びベースB、第2のトランジスタ55のコレクタC、(M端子)、電源リレー22のコイル222の順に電流が流れる。したがって、コントロールユニット5の起動後に車載装置30のスイッチ301及び車載スイッチ40がオンからオフに切り替わり、起動回路53に電流が流れなくなっても、電源リレー22のコイル222に電流が流れ続け、電源リレー22のコイル222の励磁が継続される。これにより、電源リレー22のスイッチ221もオン状態を継続し、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52への電力の供給を継続する(コントロールユニット5が継続して起動)。
【0053】
一方、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52への電力の供給を継続している状態でスイッチ56がオンからオフに切り替わる(コントロールユニット5によってスイッチ56がオフに切り替えられる)と、第2のトランジスタ55のエミッタEからコレクタCへの電流の流れが遮断され、電源リレー22のコイル222が脱磁される。これにより、電源リレー22のスイッチ221がオンからオフとなり、補機バッテリ21からコントロールユニット電源52への電力供給が遮断される(コントロールユニット5の停止(スリープ))。
【0054】
このような車両の起動システム1において、起動要求信号回路25が常時通電状態(起動要求信号が常時入力され続ける状態)となる異常、すなわち、電源リレー22(コイル222)にバックアップ電源回路51から電力が供給され続ける異常(以下「異常Er」という)が発生すると、電源リレー22(スイッチ221)をオフできずコントロールユニット5を停止できなくなる。例えば、パワースイッチ23がオフの状態であれば、意図せずにコントロールユニット5が起動され、コントロールユニット5を停止できなくなる。また、パワースイッチ23がオンの状態であれば、パワースイッチ23をオフしてもコントロールユニット5を停止できなくなる。そして、コントロールユニット5が停止できなくなると補機バッテリ21が過放電となって車両を始動できなくなる虞があった。
【0055】
ここでいう起動要求信号回路25が常時通電状態となる(起動要求信号が常時入力され続ける状態となる)異常Erとは、例えば、起動要求信号回路25がPHEV自動車の車体に短絡(アース)した状態となる地絡、車載装置30のスイッチ301のオン固着、又は車載スイッチ40のオン固着等である。つまり、補機バッテリ21の正極からバックアップ電源回路51、起動要求信号回路25、PHEV自動車の車体、補機バッテリ21の負極の順に電流が流れ、N端子の電位がハイレベルからローレベルになっている状態である。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態に係る車両の起動システム1の故障診断、ここでは、異常Erが発生しているか否かの診断、及び診断結果に応じて、バックアップ電源回路51から電源リレー22のコイル222へ電力が供給されるのを遮断する回路遮断を可能にする構成を示すブロック図である。
図5は、
図4に示した回路診断部63の診断を説明するためのタイムチャートであり、(a)は正常時、(b)は異常時(地絡)、(c)は異常時(オン固着)の状態を示す。
【0057】
図2及び
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る起動システム1は、コントロールユニット5の内部に、モニタ回路61、遮断回路62、回路診断部63及び遮断回路制御部64を有している。
図2に示すように、モニタ回路61は、例えば、バックアップ電源回路51に接続されている。モニタ回路61は、例えば、第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間に接続されている。モニタ回路61は、起動要求信号の入力状態、すなわちバックアップ電源回路51から起動要求信号回路25へ流れる電流の状態(通電状態)を監視可能である。ここでは、起動要求信号は、例えば、N端子の電位であり、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオンの場合にN端子の電位がハイレベルからローレベルに移行する(起動要求信号オン)。つまり、
図2示す一実施形態では、モニタ回路61は、N端子の電位(印加電圧)の変化を監視することで起動要求信号の入力状態(起動要求信号回路25へ流れる電流の状態)を監視している。
【0058】
遮断回路62は、例えば、バックアップ電源回路51に設けられる。遮断回路62は、例えば、第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間に設けられている。遮断回路62は、例えば、バックアップ電源回路51において直列に接続されている。遮断回路62は、バックアップ電源回路51において回路を遮断、すなわち起動要求信号回路25に流れる電流の遮断が可能であり、また、遮断した回路の復帰が可能である。
【0059】
遮断回路62は、後述する遮断回路制御部64からの回路の遮断を指示する信号(以下「回路遮断信号」という)が入力された場合に回路を遮断する一方、遮断回路制御部64からの遮断した回路の復帰を指示する信号(以下「回路復帰信号」という)が入力された場合に遮断した回路を復帰する。
【0060】
このようにすれば、バックアップ電源回路51に設ける遮断回路62で起動要求信号回路25に流れる電流を遮断(起動要求信号をオフ)することができるので、バックアップ電源回路51から起動回路53を介して電源リレー22(コイル222)へ電力が供給されるのを遮断(阻止)することができる。したがって、異常Er(例えば、起動要求信号回路25の地絡や、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40のオン固着等の故障)が発生しても遮断回路62によって起動要求信号回路25に流れる電流を遮断することでコントロールユニット5を停止可能な状態とすることができる。これによりパワースイッチ23のオフを条件にコントロールユニット5を停止することが可能となる。
尚、ここでいう回路の遮断とは、物理的または電気的に回路を開いて遮断した状態だけでなく、例えば、電位(印加電圧)をコントロールすることで電気的に回路を遮断(印加電圧の無効化)した状態なども含む。
【0061】
遮断回路62は、例えば、回路の開閉が可能な機械的スイッチや電位(印加電圧)を強制的に変化させることで信号の無効化が可能な回路から構成される電気的スイッチで構成される。例えば、電気的スイッチは、トランジスタやロジックICを一つ又は二つ以上を組み合わせたもので構成可能である。
尚、遮断回路62は、第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間であれば、モニタ回路61の接続位置とN端子との間に設けてもよいし、第1のトランジスタ54のベースBとモニタ回路61の接続位置との間に設けてもよい。
【0062】
回路診断部63は、異常Erが発生しているか否かの診断、つまり、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40のオン固着、及び、起動要求信号回路25の地絡等により起動要求信号が常時入力され続ける異常の診断が可能である。回路診断部63は、モニタ回路61に接続され、回路診断部63には、モニタ回路61が監視する起動要求信号の状態(N端子の電位)が入力される。
【0063】
図5に示すように、正常な場合(
図5(a)参照)は、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40のオンされている期間だけ起動要求信号回路25が通電されて起動要求信号が入力(オン)されている。
例えば、起動要求信号回路25の地絡の場合は、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオフの状態であるが、起動要求信号回路25が常時通電状態となるので起動要求信号が入力(オン)され続ける状態となっている(
図5(b)参照)。また、例えば、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオン固着した場合は、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオンされ続けることで起動要求信号回路25が常時通電状態となり、起動要求信号が入力(オン)され続ける状態となっている(
図5(c)参照)。
【0064】
そして、回路診断部63は、起動要求信号の入力時間Ta(起動要求信号回路25の通電時間)、例えば、N端子の電位がローレベルとなる時間、が予め設定された所定時間(以下「判定時間Tx」という)未満である場合に起動要求信号回路25及び車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40が正常であると診断し、起動要求信号の入力時間Ta(起動要求信号回路25の通電時間)が判定時間以上である場合に起動要求信号回路25及び車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40の何れかが異常、すなわち異常Erが発生していると診断する。
【0065】
判定時間Txは、起動要求信号回路25と接続される車載装置30や車載スイッチ40によって適宜設定される。例えば、車載装置30のスイッチ301がオンとなる設定時間及びユーザが車載スイッチ40を通常押す時間を「スイッチオン時間Tp」とすると、車載装置30の場合、判定時間Txは、スイッチオン時間Tpよりも長い時間に設定される。また、車載スイッチ40の場合、判定時間Txは、ユーザが車載スイッチ40を通常押す時間よりも十分に長い時間、例えば、数十倍に設定される。
【0066】
遮断回路制御部64は、遮断回路62を制御可能である。遮断回路制御部64には回路診断部63で異常Erと判定された場合に異常Erを知らせる信号(以下「異常信号」という)が入力可能である。遮断回路制御部64は、回路診断部63から異常信号が入力された場合に遮断回路62に回路遮断信号を出力する。
【0067】
このように、モニタ回路61がバックアップ電源回路51から起動要求信号回路25に流れる電流(起動要求信号)を監視し、回路診断部63がモニタ回路61が監視する電流(起動要求信号の検出されている時間)に基づいて異常Erが発生しているか否かを診断する。そして、回路診断部63が異常Erが発生していると診断した場合に、遮断回路制御部64が遮断回路62によってバックアップ電源回路51の回路を遮断させることで起動要求信号回路25に流れる電流を遮断する。
【0068】
これにより、第1のトランジスタ54のベースBの電位がローレベルからハイレベルに変位され、第1のトランジスタ54のエミッタEからコレクタCに電流が流れなくなる。この結果、バックアップ電源回路51から起動回路53を介して制御電源制御回路24へ流れる電流が遮断され、バックアップ電源回路51から電源リレー22(コイル222)への電力供給が遮断(阻止)される。したがって、異常Erが発生した場合でもコントロールユニット5を停止可能な状態とさせることができる。
【0069】
尚、コントロールユニット5は、遮断回路62によって回路(電流)が遮断された後、パワースイッチ23のオフを条件に停止される。すなわち、パワースイッチ23がオフされている状態であれば、即座にスイッチ56がオフされて電力の供給が停止(コントロールユニット5が停止)され、パワースイッチ23がオンの状態であれば、パワースイッチ23がオフされた時にスイッチ56がオフされて電力の供給が停止(コントロールユニット5が停止)される。
【0070】
また、遮断回路制御部64にはパワースイッチ23からスイッチのオン、オフの状態を示す状態信号(以下「パワースイッチオン信号」という)が入力可能である。遮断回路制御部64は、遮断回路62によって第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間で回路が遮断されている場合において、パワースイッチ23の状態信号がオフの状態からオンの状態とされた際、すなわち車両が停止状態から始動された際に遮断回路62に回路の遮断を復帰させる回路復帰信号を出力する。
【0071】
本発明の一実施形態に係る起動システム1は、更に、報知部65を有している。報知部65には異常Erが発生していることを報知可能である。報知部65には回路診断部63から異常信号が入力可能である。報知部65は、回路診断部63から異常信号が入力された場合にコンビネーションメータ等に設けられた警告灯や警告表示、ブザー等を介して異常Erの発生を報知する。
【0072】
このようにすれば、回路診断部63が異常Erの発生を診断した場合に報知部65がその旨を報知することができる。これにより、ユーザは起動要求信号回路25が常時通電状態となる異常Er、すなわち、起動要求信号回路25の地絡や、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40のオン固着(故障)により、起動要求信号が入力され続ける異常の発生を知ることができる。
【0073】
図6は、
図4に示した遮断回路制御部64の制御内容を説明するためのフローチャートである。
図6に示すように、上述した遮断回路制御部64は、回路診断部63から異常信号が入力されると(ステップS11:Yes)、遮断回路62に回路遮断信号を出力する(ステップS12)。遮断回路62に回路遮断信号が入力されると、遮断回路62は、第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間で回路を遮断する(ステップS13)。これにより、バックアップ電源回路51、第1のトランジスタ54、起動回路53、電源リレー22のコイル222の順に流れる電流は遮断される。そして、パワースイッチ23がオフの状態にある場合は、コントロールユニット5は即座に停止してスリープ状態とされ、パワースイッチ23がオンの状態にある場合は、コントロールユニット5はパワースイッチ23がオフされた時点で停止してスリープ状態とされる。
【0074】
遮断回路62が第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間で回路が遮断されている場合において、コントロールユニット5が停止された後、パワースイッチ23がオフの状態からオンの状態とされると(ステップS14:Yes)、遮断回路制御部64は遮断回路62に回路復帰信号を出力する(ステップS15)。遮断回路62に回路復帰信号が入力されると、遮断回路62は第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間で遮断した回路を復帰する(ステップS16)。
【0075】
これにより、一旦コントロールユニット5を停止した後、パワースイッチ23をオフ状態からオン状態にしたときに、遮断回路62によって遮断した回路が復帰されて再度異常Erの判定を行なうことができる。したがって、例えば、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40の一時的なオン固着、また、いたずら等によって車載スイッチ40が長時間押し続けられたことで異常Erと判定された場合であっても、パワースイッチ23をオフ状態からオン状態にした際に、回路を正常な状態に戻すことができる。尚、異常Erが生じている場合は、上記説明したフローのとおり再度遮断回路62によって回路が遮断される。
【0076】
尚、上記で説明した
図2に示す本発明の一実施形態に係る車両の起動システム1では、遮断回路62は、バックアップ電源回路51の第1のトランジスタ54のベースBとN端子との間に設けられているが、これに限定されるものでは無く、幾つかの実施形態では、
図7に示すように起動回路53に遮断回路62を設けていてもよい。
【0077】
図7に示す一実施形態では、遮断回路62は、例えば、第1のトランジスタ54のコレクタCとM端子との間に設けられ、モニタ回路61は、例えば、第1のトランジスタ54のコレクタCと遮断回路62との間に接続されている。この場合、起動要求信号の状態は、例えば、第1のトランジスタ54のコレクタCの電位(印加電圧)であり、車載装置30のスイッチ301又は車載スイッチ40がオン(起動要求信号オン)の場合に、第1のトランジスタ54のコレクタCの電位がローレベルからハイレベルに移行する。つまり、ここでは、回路診断部63は、バックアップ電源回路51から起動回路53に流れる電流の通電時間が判定時間Txを越えているか否かで、起動要求信号の入力時間Ta(起動要求信号回路25の通電時間)が判定時間Txを越えているか否かを判定している。
そして、遮断回路62は、起動回路53において回路を遮断、すなわち起動回路53からM端子(制御電源制御回路24)へ流れる電流の遮断が可能であり、また、遮断した回路の復帰が可能である。
【0078】
このように遮断回路62を起動回路53に設けた場合、起動回路53において回路を遮断することができるので、バックアップ電源回路51から第1のトランジスタ54、起動回路53を介して制御電源制御回路24に流れる電流を遮断することができる。これにより、バックアップ電源回路51から電源リレー22(コイル222)への電力供給を遮断(阻止)することができる。したがって、起動要求信号回路25が常時通電状態となる異常Erが発生したとしても、コントロールユニット5を停止可能な状態とさせることができる。
【0079】
以上説明したように、本発明の車両の起動システム1によれば、車載装置30のスイッチ301のオン固着や車載スイッチ40のオン固着、また起動要求信号回路25の地絡など、起動要求信号回路が常時通電状態となって、起動要求信号が出力され続ける異常Erが発生したとしても遮断回路62によって即座にバックアップ電源回路51から電源リレー22(コイル222)への電力の供給を遮断してコントロールユニット5を停止可能な状態とすることができるので、補機バッテリ21が過放電となるような現象を防止することができる。
【0080】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらを適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態においては、遮断回路による遮断は、回路遮断制御部によって制御されているが、他の幾つかの実施形態では、ユーザの手動によって行われてもよい。
また、例えば、上述の一実施形態では、コントロールユニット(制御装置)に対して一つの車載装置または車載スイッチが一つの起動要求信号回路によって接続されているが、他の幾つかの実施形態では、コントロールユニットに対して複数の車載装置や車載スイッチがそれぞれ複数の起動要求信号回路によって接続され、各々に遮断回路が設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 起動システム
21 補機バッテリ
22 電源リレー
221 スイッチ
221a,221b スイッチ端子
222 コイル
23 パワースイッチ(IGSW)
24 制御電源制御回路
25 起動要求信号回路(信号回路)
30 起動要求可能な車載装置
301 スイッチ
40 起動要求可能な車載スイッチ
5 コントロールユニット(制御装置)
51 バックアップ電源回路
52 コントロールユニット電源
53 起動回路
54 第1のトランジスタ
55 第2のトランジスタ
56 スイッチ
61 モニタ回路
62 遮断回路
63 回路診断部
64 遮断回路制御部
65 報知部