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特許7279314車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0962 20060101AFI20230516BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230516BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230516BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230516BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20230516BHJP
   G06F 3/0487 20130101ALI20230516BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G08G1/0962
B60R11/02 C
B60K35/00 A
G02B27/01
G06F3/0481
G06F3/0487
G06F3/01 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018149826
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2020024643
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166913(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/0962
B60R 11/02
B60K 35/00
G02B 27/01
G06F 3/0481
G06F 3/0487
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示して補助情報を提供する車両用表示装置において、
前記ドライバーの視点位置情報を取得する視点位置取得部と、
前方風景情報を取得する前方風景情報取得部と、
表示に供する画像を形成する表示部と、
前記視点位置情報及び前記前方風景情報に基づいて、前記表示部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記前方風景情報により自車両から前記補助情報の表示に供する対象物までの距離を検出し、
検出した距離に応じて、ドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する俯瞰表示領域と、前記ドライバーに対して前記画像が正対する縦面表示により前記補助情報を表示する縦面表示領域とで前記補助情報を表示するようにして、
前記検出した距離を判定距離により判定して、前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る前記対象物については、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する
車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記判定距離の地点を跨ぐ前記俯瞰表示領域に係る前記対象物については、前記俯瞰表示領域でドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示による前記補助情報の視認性が低い場合に、前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する
請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る前記対象物については、前記補助情報の表示位置を変化させて前記縦面表示領域における前記縦面表示に表示を切替える
請求項1、請求項2、請求項3の何れかに記載の車両用表示装置。
【請求項5】
さらに前記前方風景情報から視界の程度を判断する視界判断部を備え、
前記制御部は、
前記視界判断部の判断結果に基いて、視界の程度に応じて前記判定距離を変化させる
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れかに記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、
視界の低下により前記判定距離を低下させる
請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
さらに前記前方風景情報から視界の程度を判断する視界判断部を備え、
前記制御部は、
前記視界判断部の判断結果に基づいて、視界の程度に応じて前記判定距離を変化させ、
前記縦面表示に表示を切替えた前記補助情報を、少なくとも前記縦面表示領域を含む前記判定距離に対応する位置から前記縦面表示領域側の領域で表示する
請求項1、請求項2、請求項3の何れかに記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る前記対象物については、前記補助情報の表示位置を前記判定距離に対応する位置を基準にして設定して、前記補助情報を表示する
請求項1、請求項2、請求項3、請求項7の何れかに記載の車両用表示装置。
【請求項9】
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示して補助情報を提供する車両用表示装置の制御方法において、
前記ドライバーの視点位置情報を取得する視点位置取得ステップと、
前方風景情報を取得する前方風景情報取得ステップと、
前記視点位置情報及び前記前方風景情報に基づいて、表示に供する画像を形成する表示部を制御する制御ステップと、を備え、
前記制御ステップは、
前記前方風景情報により自車両から前記補助情報の表示に供する対象物までの距離を検出し、
検出した距離に応じて、ドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する俯瞰表示領域と、前記ドライバーに対して前記画像が正対する縦面表示により前記補助情報を表示する縦面表示領域とで前記補助情報を表示するようにして、
前記検出した距離を判定距離により判定して、前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する
車両用表示装置の制御方法。
【請求項10】
演算処理回路における実行により所定の処理手順を実行させる車両用表示装置の制御プログラムにおいて、
車両用表示装置が、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示して補助情報を提供する車両用表示装置であり、
前記処理手順は、
前記ドライバーの視点位置情報を取得する視点位置取得ステップと、
前方風景情報を取得する前方風景情報取得ステップと、
前記視点位置情報及び前記前方風景情報に基づいて、表示に供する画像を形成する表示部を制御する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記前方風景情報により自車両から前記補助情報の表示に供する対象物までの距離を検出し、
検出した距離に応じて、ドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する俯瞰表示領域と、前記ドライバーに対して前記画像が正対する縦面表示により前記補助情報を表示する縦面表示領域とで前記補助情報を表示するようにして、
前記検出した距離を判定距離により判定して、前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する
車両用表示装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドアップディスプレイ装置による車両用表示装置に関して、ドライバーの前方空間に、虚像により種々の画像を表示する工夫が提案されている。このような車両用表示装置は、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの視界に、種々の画像を表示することができる。
【0003】
このような車両用表示装置に関して、この虚像による画像表示により運転を支援する情報である補助情報を提供する構成が種々に提案されており、特許文献1には、2系統の画像表示機構を使用して補助情報を提供する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4907744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのような運転を支援する構成にあっては、当然に、虚像による画像表示に充分な視認性を確保できることが望まれる。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの前方空間に、虚像による画像表示により運転を支援する構成において、この虚像による画像表示に充分な視認性を確保することができる車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
係る課題を解決するため、請求項1の発明に係る車両用表示装置は、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示して補助情報を提供する車両用表示装置において、
ドライバーの視点位置情報を取得する視点位置取得部と、
前方風景情報を取得する前方風景情報取得部と、
表示に供する画像を形成する表示部と、
前記視点位置情報及び前記前方風景情報に基づいて、前記表示部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記前方風景情報により自車両から前記補助情報の表示に供する対象物までの距離を検出し、
検出した距離に応じて、ドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する俯瞰表示領域と、縦面表示により前記補助情報を表示する縦面表示領域とで前記補助情報を表示するようにして、
前記検出した距離を判定距離により判定して、前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する。
【0008】
請求項1の構成によれば、補助情報に応じて表示を切替えることができ、これにより視認性を充分に確保することができる。
【0009】
また請求項2の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1の構成において、
前記制御部は、
前記判定距離の地点を跨ぐ前記俯瞰表示領域に係る前記対象物については、前記俯瞰表示領域でドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する。
【0010】
請求項2の構成によれば、例えば区画線等については、俯瞰表示領域でドライバー視点の俯瞰表示により補助情報を表示することができ、これにより表示に供するコンテンツに応じて表示を切替えて視認性を充分に確保することができる。
【0011】
また請求項3の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1又は請求項2の構成において、
前記制御部は、
パースを付けないように表示を切替えて、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する。
【0012】
請求項3の構成によれば、対象物との関係を直感的に把握できるようにして、補助情報の視認性を充分に確保することができる。
【0013】
請求項4の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1、請求項2、請求項3の何れかの構成において、
前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記補助情報の表示位置を変化させて前記縦面表示領域における前記縦面表示に表示を切替える。
【0014】
請求項4の構成によれば、縦面表示領域で縦面表示することにより、ドライバーの使い勝手を向上することができる。
【0015】
請求項5の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れかの構成において、
さらに前記前方風景情報から視界の程度を判断する視界判断部を備え、
前記制御部は、
前記視界判断部の判断結果に基いて、視界の程度に応じて前記判定距離を変化させる。
【0016】
請求項5の構成によれば、視界の程度に応じてドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替えることができ、これにより視界不良時における視認性の低下を防止して視認性を充分に確保することができる。
【0017】
請求項6の発明に係る車両用表示装置は、
請求項5の構成において、
前記制御部は、
視界の低下により前記判定距離を低下させる。
【0018】
請求項6の構成によれば、視界の低下による視認性の低下を防止することができる。
【0019】
請求項7の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1、請求項2、請求項3の何れかの構成において、
さらに前記前方風景情報から視界の程度を判断する視界判断部を備え、
前記制御部は、
前記視界判断部の判断結果に基いて、視界の程度に応じて前記判定距離を変化させ、
前記縦面表示に表示を切替えた補助情報を、少なくとも前記縦面表示領域を含む前記判定距離に対応する位置から前記縦面表示領域側の領域で表示する。
【0020】
請求項7構成によれば、適宜、縦面表示に係る表示位置を設定して、視認性を充分に確保することができる。
【0021】
請求項8の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項7の何れかの構成において、
前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記補助情報の表示位置を前記判定距離に対応する位置を基準にして設定して、前記補助情報を表示する。
【0022】
請求項8の構成によれば、判定距離に対応する位置を基準にして補助情報を表示することにより、ドライバーによる使い勝手を向上することができる。
【0023】
請求項9の発明は、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示して補助情報を提供する車両用表示装置の制御方法において、
ドライバーの視点位置情報を取得する視点位置取得ステップと、
前方風景情報を取得する前方風景情報取得ステップと、
前記視点位置情報及び前記前方風景情報に基づいて、表示に供する画像を形成する表示部を制御する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記前方風景情報により自車両から前記補助情報の表示に供する対象物までの距離を検出し、
検出した距離に応じて、ドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する俯瞰表示領域と、縦面表示により前記補助情報を表示する縦面表示領域とで前記補助情報を表示するようにして、
前記検出した距離を判定距離により判定して、前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する。
【0024】
請求項9の構成によれば、補助情報に応じて表示を切替えることができ、これにより視認性を充分に確保することができる。
【0025】
請求項10の発明は、
演算処理回路における実行により所定の処理手順を実行させる車両用表示装置の制御プログラムにおいて、
前記車両用表示装置が、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示して補助情報を提供する車両用表示装置であり、
前記処理手順は、
ドライバーの視点位置情報を取得する視点位置取得ステップと、
前方風景情報を取得する前方風景情報取得ステップと、
前記視点位置情報及び前記前方風景情報に基づいて、表示に供する画像を形成する表示部を制御する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記前方風景情報により自車両から前記補助情報の表示に供する対象物までの距離を検出し、
検出した距離に応じて、ドライバー視点の俯瞰表示により前記補助情報を表示する俯瞰表示領域と、縦面表示により前記補助情報を表示する縦面表示領域とで前記補助情報を表示するようにして、
前記検出した距離を判定距離により判定して、前記判定距離の地点を跨がない前記判定距離以遠の前記俯瞰表示領域に係る対象物については、前記俯瞰表示領域におけるドライバー視点の俯瞰表示から前記縦面表示に表示を切替えて前記補助情報を表示する。
【0026】
請求項10の構成によれば、補助情報に応じて表示を切替えることができ、これにより視認性を充分に確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラムによれば、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの視界に、虚像による画像表示により運転を支援する構成において、この虚像による画像表示に充分な視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用表示装置を示すブロック図である。
図2図1の車両用表示装置における表示領域の説明に供する図である。
図3図1の車両用表示装置における補助情報の表示の説明に供する図である。
図4】制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図5】対象物が現れた場合における処理手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用表示装置を示すブロック図である。
図7図6の車両用表示装置における表示領域の説明に供する図である。
図8】判定距離の説明に供する図である。
図9図6の車両用表示装置における補助情報の表示の説明に供する図である。
図10図6の車両用表示装置における制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用表示装置1を示す図である。
この車両用表示装置1は、ヘッドアップディスプレイ装置による車両用表示装置であり、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの視界に、各種の画像を虚像により表示する。車両用表示装置1は、この虚像による画像表示により、種々の情報をドライバーに提供する。
車両用表示装置1は、ヘッドマウントディスプレイ装置等、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの視界に画像を表示可能な種々の構成を広く適用することができる。
【0030】
車両用表示装置1は、この虚像により提供する情報に、ドライバーの運転操作を補助する情報である補助情報が割り当てられ、さらに車速、各種の警告等の車両情報が割り当てられる。
ここで補助情報は、視覚により把握可能な対象物の存在を示す情報であり、例えば区画線(車線境界線、車道外境界線、車道中央線である)の存在を示す情報、一時停止、方面、車線等の路面に作成された表示の存在を示す情報、これらの表示に対応する標識の存在を示す情報、前方車両、歩行者等の存在を示す情報である。
【0031】
車両用表示装置1は、表示部2、視点位置取得部4、前方風景情報取得部5、制御部6を備える。
車両用表示装置1は、車両用表示装置の制御プログラムを演算処理回路で実行することにより、これら視点位置取得部4、前方風景情報取得部5、制御部6が構成される。
これによりこの制御プログラムの実行による処理手順は、視点位置取得部4、前方風景情報取得部5、制御部6にそれぞれ対応して、対応する処理を実行する視点位置取得ステップ、前方風景情報取得ステップ、制御ステップを備える。
【0032】
表示部2は、表示に供する画像を虚像により形成する部位であり、画像表示用の光を出射する光源2A、この光源2Aの出射光を表示に供する画像に応じて変調して出射する表示器2B、この表示器2Bの出射光をウインドシールドに向けて出射して虚像を形成する光学系等により形成される。
【0033】
光源2Aは、レーザー光源、発光ダイオードによる光源、水銀ランプによる光源等、種々の光源を広く適用することができる。
表示器2Bは、画像表示パネル、この画像表示パネルの周辺回路により形成される。また画像表示パネルは、DMD(Digital Mirror Device)、液晶表示パネル、種々の構成を広く適用することができる。
なお表示部2は、例えば有機EL(Electro Luminescence)パネル等による自発光型の画像表示パネルを適用して表示器と光源とを一体に構成するようにしてもよい。
【0034】
視点位置取得部4は、正面方向よりドライバーの顔を撮像し、撮像結果を画像処理することにより、ドライバーの視点の座標情報を視点位置情報として検出する。
【0035】
前方風景情報取得部5は、撮像装置により車両前方を撮像し、撮像結果を前方風景情報として出力する。前方風景情報取得部5は、撮像結果を処理して検出される対象物までの距離をステレオ視により検出可能に構成される。
【0036】
〔制御部〕
制御部6は、視点位置情報及び前方風景情報に基づいて、表示部2を制御する。
具体的に、制御部6は、前方風景情報取得部5の撮像結果を処理することにより、補助情報の表示に供する対象物を検出する。さらに制御部6は、検出した対象物に応じて対応する補助情報を選択し、ドライバーより見てこの検出した対象物に対応する補助情報を表示するように、視点位置取得部4で検出される視点情報に基づいて補助情報の表示位置を制御する。
また制御部6は、この処理において、前方風景情報取得部5で取得される撮像結果の画像処理により、この対象物までの距離を検出し、この検出結果に基いて、適宜、補助情報の表示位置を可変し、さらには表示する補助情報の形態を変更する。
これによりこの車両用表示装置1では、例えばドライバーより見て停止線の直前の路面に、「止まれ」の画像により補助情報を表示する。またこの停止線が遠方に存在する場合には、所定の表示位置に、一時停止の標識に対応する画像により補助情報を表示する。
なおこの対象物及び視点は、各種のテンプレートを使用したパターンマッチングにより検出することができる。また検出した対象物までの距離は、ステレオ視の手法を適用して検出することができる。
【0037】
〔表示領域の設定〕
図2は、制御部6の制御による画像表示の説明に供する図である。この図2においては、符号EPによりドライバーの視点(アイポイント)を示す。
ここでこの実施形態では、表示部2による表示可能領域がドライバーより見て水平方向に延長する仮想の境界線により上下に分割されて上側表示領域及び下側表示領域が設定され、これにより表示部2により形成される虚像面Pにこの上側表示領域及び下側表示領域に対応する領域が形成される。
車両用表示装置1では、この虚像面Pの上側領域が、縦面表示領域P1に設定され、下側領域が俯瞰表示領域P2に設定される。
【0038】
ここで縦面表示領域P1は、ドライバーに対して正対する平面に配置した画像を正面より見ているかのように補助情報を表示する領域であり、例えば道路の傍らに設置されている一時停止の道路標識のように補助情報を表示する領域である。以下、このような補助情報の表示を縦面表示と呼ぶ。
俯瞰表示領域P2は、ドライバーのアイポイントEPより補助情報を貼り付けた路面を俯瞰しているかのように補助情報を表示する領域である。以下、このような補助情報の表示をドライバー視点の俯瞰表示と呼ぶ。
【0039】
表示部2による表示可能領域の上端、下端に対応する車両からの路面距離をL4、L1とし、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に対応する車両からの路面距離をL2とする。
この場合、車両から補助情報の表示に供する対象物までの距離が距離L1~L2の範囲では、俯瞰表示領域P2によりドライバー視点の俯瞰表示により補助情報を表示する。また、車両から補助情報の表示に供する対象物までの距離が距離L2~L4の範囲では、縦面表示領域P1により縦面表示で補助情報を表示する。
これにより車両用表示装置1では、遠方の対象物に係る補助情報についても、確実に視認できるように補助情報を表示して視認性を充分に確保することができる。
【0040】
ここで縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2は、これらの領域P1及びP2の境界に対応する路面距離L2が、充分に遠方となるように設定されるものの、この距離L2が固定値となるように適用してもよく、さらにはこの距離L2を車速等に応じて可変するようにしてもよい。
縦面表示領域P1は、高さ方向の幅が、補助情報を縦面表示するのに充分な幅により形成される。
これにより車両用表示装置1では、確実に視認可能に補助情報を表示できるように構成される。
【0041】
しかしながらこのように単純に縦面表示領域P1、俯瞰表示領域P2を設定して補助情報を表示した場合、補助情報によっては、充分な視認性を確保できない場合がある。
具体的に、例えば路面に形成された停止線の直前に、「止まれ」の文字表示による補助情報をドライバー視点の俯瞰表示により表示する場合、この「止まれ」の表示を斜め後方より視認する形状により、パースを付けて「止まれ」を文字表示することになる。
このように表示する場合に、この停止線が遠方に存在する場合には、「止まれ」の表示の視認性が著しく低下し、これにより充分な視認性を確保することが困難になる。
しかしながらこのように停止線が遠方に存在する場合でも、自車両の直前からこの停止線まで延長する区画線については、車両の直前より連続することにより、充分な視認性を確保することができる。
【0042】
これによりこの実施形態では、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に対応する距離L2より自車側に、判定距離L3を設定し、前方風景情報取得部5の撮像結果を処理して検出される表示対象までの距離を判定距離L3により判定する。またこの判定結果により、対応する補助情報の表示を切替える。
これによりこの実施形態では、縦面表示領域P1に近接する俯瞰表示領域P2の補助情報については、表示に供するコンテンツに応じてドライバー視点の俯瞰表示から表示を切替え、補助情報の視認性の低下を防止する。
【0043】
ここで判定距離L3は、自車両を基準にした固定値としてもよく、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界を基準にした固定値としてもよく、さらには表示に供する補助情報に応じて可変するようにしてもよい。また気象条件、視界等に応じて可変するようにしてもよい。
【0044】
より具体的に、制御部6は、前方風景情報取得部5の撮像結果を処理して検出される対象物までの距離により、判定距離L3より遠方側のみに対象物が存在する場合、この対象物に係る補助情報の表示位置を縦面表示領域P1に設定し、この縦面表示領域P1で対応する補助情報を縦面表示により提供する。
また対象物が判定距離L3以遠に存在する場合であっても、この判定距離L3の地点を跨ぐように手前側から連続する対象物については、俯瞰表示領域P2においてドライバー視点の俯瞰表示により表示する。
【0045】
図3は、この制御部6の処理による補助情報の表示の説明に供する図であり、ドライバーの視点(アイポイント)EPより車両前方を見て示す図である。なおこの図3においては、表示部2により形成される虚像面、自車両からの距離との関係によりドライバーの前景を示す。
この図3の例では、自車両が右側レーンを走行して、走行車線の左右に、区画線8、9を見て取ることができ、前方に一時停止の停止線11を見て取ることができる。また左側レーンを走行する前方車両12を見て取ることができる。
【0046】
図3(A)は、補助情報を表示しない例を示す図であり、ウインドシールド7を介して前方を視認可能に、表示部2による表示可能領域2Cが形成され、この表示可能領域2Cには、車両情報の表示である、走行中の道路の制限速度を示す表示13、車速の表示14が形成されている。
【0047】
図3(B)は、単純に、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の区分により補助情報を表示する場合を示す図である。
この場合、区画線8、9の存在を示す帯状の直線による補助情報15、16が、それぞれ左右の区画線8、9に重なり合うように表示され、さらに停止線11の存在を示す帯状の直線による補助情報17が、対応する停止線11に重なり合うように表示される。またさらに左側レーンを走行する前方車両12の存在を示す補助情報18が、この前方車両12を後方より部分的に囲むように表示される。
これらの補助情報15、16、17、18は、何れも対応する表示対象が距離L2より近傍に存在することにより、俯瞰表示領域P2に係るドライバー視点の俯瞰表示により対応する表示位置で表示され、これらの補助情報15、16、17、18の表示では充分な視認性を確保してドライバーの運転を補助することができる。
【0048】
このようにして補助情報15、16、17、18を表示して、停止線11の直前に、一時停止を示す「止まれ」の文字表示により補助情報19Aを表示するものとする。この場合、この停止線11が、距離L2より手前である場合、俯瞰表示により表示して、あたかも路面に「止まれ」の文字が表示されているかのようにパースをつけて表示することになる。
しかしながらこの補助情報19Aは、路面に配置したかのように、パースを付けて小さく表示されることにより、著しく視認性が低下することになる。
【0049】
図3(C)は、この図3(B)との対比により、制御部6の制御による表示の説明に供する図である。
そこでこの場合、制御部6は、この補助情報19Bを縦面表示により表示する。
このように縦面表示により表示すれば、パースを付けない分、視認性を充分に確保することができる。
【0050】
またさらに制御部6は、この補助情報19Bの表示位置を上方に変更して、縦面表示領域P1で表示する。
このようにすれば、この縦面表示領域P1が補助情報を縦面表示する領域であることにより、縦面表示する補助情報19Bを表示位置により容易に理解できるようにすることができ、一段と視認性を充分に確保することができる。
【0051】
さらに制御部6は、この補助情報19Bの表示形態を、一時停止の標識の形態に切替える。これにより制御部6は、実景で把握されるこの種の表示と同様に、補助情報19Bの表示を切替えることにより、直感的に、補助情報19Bの内容を把握できるようにして、一段と補助情報の視認性を確保する。
【0052】
これに対して区画線8、9にあっては、判定距離L3に係る地点を跨ぐことにより、俯瞰表示領域P2において、ドライバー視点の俯瞰表示により表示する。
【0053】
なおこれらにより、実用上充分な視認性を確保できる場合、表示形態の切替えを中止するようにしてもよい。このようにすれば、制御部6の構成を簡略化することができる。
またさらに表示位置の縦面表示領域P1側への変更を中止して、対象物に対応する位置で補助情報を表示するようにしてもよい。具体的に、パースを付けないようにして補助情報19Aを表示するようにして、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替えることができる。
このようにパースを付けないようにして補助情報を表示するようにしてドライバー視点の俯瞰表示から表示を切替えるようにしても、充分に視認性を確保することができる。またこの場合、補助情報を表示対象に関連付けて表示できることにより、対象物との関係を直感的に把握することができ、補助情報の視認性を充分に確保して使い勝手を向上することができる。
【0054】
制御部6は、このようなドライバー視点の俯瞰表示からの表示の切替えを、判定距離L3を自車両側から跨ぐ対象物と、判定距離L3以遠の俯瞰表示領域P2のみに存在する対象物とが混在する場合に、実行する。
これによりこの車両用表示装置1は、処理を簡略化するように構成される。
【0055】
図4は、図3について説明した制御部6による処理手順を示すフローチャートである。制御部6は、この処理手順を一定の時間間隔により実行する。制御部6は、この処理手順を開始すると、視点位置取得部4により視点位置情報を取得し(SP1-SP2)、前方風景情報取得部5により前方風景情報を取得する(SP3)。
またこの前方風景情報の画像処理により補助情報の対象物(ドライバー視点の俯瞰表示では、対象物に重畳しているかのように見て取られることにより、適宜、重畳対象物と呼ぶ)を検出し、さらには検出した対象物までの距離を検出する。
制御部6は、判定距離L3から縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に係る距離L2の間に、複数の対象物が存在するか否か判断し(SP4)、複数の対象物が存在する場合(図3(A)により説明した場合である)、自車両の直前に係る距離L1の側から連続する対象物(判定距離L3の地点を跨ぐ対象物であり、図3(A)における区画線8、9である)と、自車両の直前に係る距離L1の側からは連続していない対象物(判定距離L3の地点を跨がない対象物であり、図3(A)における停止線11である)との両者が含まれているか否か判断する(SP5)。これにより制御部6は、判定距離L3の地点を跨ぐ対象物と、判定距離L3以遠の俯瞰表示領域P2のみに存在する対象物とが混在しているか否か判断する。
ここで両者が含まれている場合(混在している場合)、自車両の直前に係る距離L1の側から連続する対象物については、俯瞰表示領域P2でドライバー視点による俯瞰表示により補助情報を表示するように設定し(SP6)、自車両の直前に係る距離L1の側からは連続していない対象物については、縦面表示領域P1に表示位置を設定して縦面表示により補助情報を表示するように設定し、この処理手順を終了する(SP7-SP8)。
これに対して混在していない場合、俯瞰表示領域P2においてドライバー視点の俯瞰表示により表示してこの処理手順を終了する(SP5-SP10-SP8)。
【0056】
これに対して判定距離L3から縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に係る距離L2の間に、複数の対象物が存在しない場合、この対象物が判定距離L3から縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に係る距離L2の間に1つ存在するか否か判断する(SP4-SP9)。
ここで判定距離L3から境界に係る距離L2の間に対象物が1だけ存在する場合、制御部6は、この対象物については、俯瞰表示領域P2においてドライバー視点の俯瞰表示により表示してこの処理手順を終了する(SP9-SP10-SP8)。
【0057】
また判定距離L3から縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に係る距離L2の間に、1つの対象物も存在しない場合、制御部6は、距離L1の側から距離L3(この場合、距離L1の側から距離L2となる)の対象物については、俯瞰表示領域P2でドライバー視点の俯瞰表示により表示するように設定し、距離L2~L4の対象物については、縦面表示領域P1で縦面表示するように設定してこの処理手順を終了する(SP9-SP11-SP12-SP8)。
【0058】
図5は、図4の処理手順を繰り返して、距離L1の側から連続する重畳対象物が判定距離L3から距離L2の間に新たに出現した場合の処理手順を示すフローチャートである。
この場合、制御部6は、前方風景情報取得部5による自車両前方の撮像結果から、距離L1の側から連続しない重畳対象物が判定距離L3から距離L2の間に存在するか否か判断し(SP21-SP22)、このような対象物が存在しない場合、距離L1の側から距離L3の対象物については、俯瞰表示領域P2でドライバー視点の俯瞰表示により表示するように設定し、距離L2~L4の対象物については、縦面表示領域P1で縦面表示するように設定し、この処理手順を終了する(SP22-SP29-SP30-SP27)。
【0059】
これに対して距離L1の側から連続しない重畳対象物が判定距離L3から距離L2の間に存在する場合、制御部6は、この対象物に係る補助情報の表示Iを俯瞰表示領域P2でドライバー視点の俯瞰表示により一旦表示する(SP22-SP23)。
また続いて距離L1の側から連続する重畳対象物が判定距離L3から距離L2の間に新たに出現しているか判断し、ここでこの対象物が出現していない場合、それまでの表示である俯瞰表示領域P2におけるドライバー視点の俯瞰表示による表示Iを維持してこの処理手順を終了する(SP24-SP28-SP27)。
【0060】
これに対して距離L1の側から連続する重畳対象物が判定距離L3から距離L2の間に新たに出現したものである場合、判定距離L3に係る地点を跨ぐ対象物と、判定距離L3以遠のみに存在する対象物とが混在することになる。
この場合、制御部6は、俯瞰表示領域P2で表示したドライバー視点による表示Iの表示を一旦中止する。またこの中止した表示に係る補助情報について、表示形態を異ならせて縦面表示により表示する。具体的に、図3の例では、一時停止に係る「止まれ」の表示Iを一旦表示した後、この表示を一時停止の標識の縦面表示による表示に切替える(SP24-SP25)。
これによりこの車両用表示装置1では、ドライバーが充分に対象物の位置を確認できるようにして、充分な視認性を確保できるようにする。
なおこの表示の切替えは、例えばクロスフェードの効果により、徐々にそれまでの表示Iの視認性を低下させながら、形態を異ならせた新な表示(コンテンツII)の視認性を徐々に増大させることにより、ドライバーに違和感を与えることなく表示を切替えることができる。
【0061】
このようにして表示を切替えると、制御部6は、新に出現した判定距離L3を跨ぐ対象物に係る補助情報を俯瞰表示領域P2におけるドライバー視点の俯瞰情報に設定した後、この処理手順を終了する(SP26-SP27)。
【0062】
以上の構成によれば、自車両から対象物までの距離に応じて、俯瞰表示領域と縦面表示領域とで補助情報を表示するようにして、この距離を判定距離により判定して判定距離の地点を跨がない判定距離以遠の俯瞰表示領域の対象物について、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替えることにより、補助情報に応じて表示を切替えることができ、これにより視認性を充分に確保することができる。
【0063】
また判定距離の地点を跨ぐ俯瞰表示領域に係る対象物については、俯瞰表示領域でドライバー視点の俯瞰表示により表示することにより、表示に供するコンテンツに応じて表示を切替えて視認性を充分に確保することができる。
【0064】
またこれに代えてパースを付けないように表示を切替えて、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替えることにより、対象物との関係を直感的に把握できるようにして、補助情報の視認性を充分に確保することができる。
【0065】
また表示位置を変化させて縦面表示領域における縦面表示に表示を切替えることにより、ドライバーの使い勝手を向上することができる。
【0066】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態に係る車両用表示装置21の構成を示すブロック図である。この車両用表示装置21は、制御部26の構成が異なる点を除いて、第1実施形態の車両用表示装置1と同一に構成されることにより、車両用表示装置1と同一の構成は、対応する符号を付して示す。
【0067】
制御部26は、視界判断部26Aを備える。
ここで視界判断部26Aは、前方風景情報から視界の程度を判断する構成であり、前方風景情報を画像処理することにより視程を計測し、この計測結果により視界の低下を判断する。なおこの視程の計測は、車両からの距離により、撮像結果における輝度値、コントラスト等の低下を検出して推定する場合等、種々の計測方法を広く適用することができる。
【0068】
制御部26は、この視界判断部26Aの判断結果に基いて、表示部2の表示を制御する。
図7は、図2との対比により、この制御部26の制御の説明に供する図である。
制御部26は、表示部2による表示可能領域を上下に分割して虚像面Pに縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2を設定し、それぞれ縦面表示、ドライバー視点の俯瞰表示により補助情報を表示する。
【0069】
この車両用表示装置21では、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に対応する路面距離L2が、概ね自車両を水平に保持した場合における前方風景の消失点となるように設定される。従ってこの図7は、虚像面Pと路面距離との関係を模式的に示すものである。
なおこれら路面距離L2、L4は、必要に応じて種々に設定することができる。
【0070】
このように単純に、縦面表示領域P1、俯瞰表示領域P2を設定して補助情報を表示した場合、視界の低下により、充分に補助情報の視認性を確保できなくなる恐れがある。
具体的に、例えば路面に形成された停止線の直前に、「止まれ」の文字表示による補助情報をドライバー視点の俯瞰表示により表示する場合、視界の低下により、遠方の停止線に係る「止まれ」の表示の視認性が低下し、これにより充分な視認性を確保することが困難になる。
【0071】
そこで制御部26は、制御部6と同様に、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の境界に対応する距離L2より自車側に、判定距離L3を設定し、前方風景情報取得部5の撮像結果を処理して検出される表示対象までの距離を判定距離L3により判定する。またこの判定結果により、対応する補助情報の表示を切替える。
【0072】
より具体的に、この判定距離L3より遠方の俯瞰表示領域に存在する対象物について、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替える。
なお判定距離L3を跨ぐ対象物については、俯瞰表示領域P2でドライバー視点の俯瞰表示により表示する。
これによりこの実施形態では、縦面表示領域P1に近接する俯瞰表示領域P2の補助情報については、表示に供するコンテンツに応じてドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替え、これにより自車両からの距離による補助情報の視認性の低下を防止する。
【0073】
またこのように判定距離L3より遠方の俯瞰表示領域に存在する対象物について、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示に表示を切替えるようにして、少なくとも縦面表示領域P1を含む判定距離L3に対応する虚像面位置から縦面表示領域P1側の領域(図3において、符号P3により示す領域である)で、この表示を切替えた縦面表示による補助情報を表示する。
なおこれにより第1実施形態と同様に、表示位置を上方に変更して縦面表示領域P1で表示してもよく、さらには元の表示位置で表示しても良く、これらの間で表示するようにしてもよい。
また例えば補助情報の表示の下端が判定距離L3に対応する虚像面位置に位置するように表示する場合、補助情報の表示の下端が判定距離L3に対応する虚像面位置から一定位置に位置するように表示する場合等、判定距離L3に対応する虚像面位置を基準にして表示してもよい。
このようにすれば縦面表示に表示を切替えた補助情報を統一的に、特定箇所に表示してドライバーの使い勝手を向上することができる。
【0074】
またさらに制御部6は、符号Aにより示すように、視界判断部26Aの判断結果に基いて、視界の程度に応じて判定距離L3を変化させる。
これにより車両用表示装置21は、視界により変化する遠方対象物に係る補助情報の視認性の低下を、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示への表示の切替えにより防止する。
【0075】
より具体的に、図8に示すように、制御部26は、視界の低下により判定距離L3を低下させ、これにより視界の低下により対象物の視認性が低下すると、これに伴って低下する補助情報の視認性の低下を、ドライバー視点の俯瞰表示から縦面表示への表示の切替えにより防止する。
【0076】
図9は、図3との対比により、この制御部26による制御の説明に供する図である。
図9(A)は、単純に、縦面表示領域P1及び俯瞰表示領域P2の区分により補助情報を表示する場合を示す図である。
この場合、停止線11の存在を示す帯状の直線による補助情報17が、対応する停止線11に重なり合うように表示される。さらに左側レーンを走行する前方車両12の存在を示す補助情報18が、この前方車両12を後方より部分的に囲むように表示される。また停止線11の直前に、一時停止を示す「止まれ」の文字表示により補助情報19Aが表示されている。
【0077】
このように補助情報17、18を表示して、充分に前方視界が確保されている場合、これらの補助情報17、18、19Aによりドライバーの運転を補助することができる。
【0078】
しかしながら夜間、降雨が激しい場合等にあっては、前方視界が低下することにより停止線11の視認性が低下し、これに伴って補助情報19Aの視認性が低下することになる。またさらにこの場合、停止線11を認識することなく、補助情報19Aを視認することも考えられ、これにより却って運転の妨げとなる恐れもある。
【0079】
図9(B)は、この図9(A)との対比により、制御部26の制御による表示の説明に供する図である。
そこでこの場合、制御部26は、判定距離L3によりこの補助情報19Bを縦面表示により表示するようにして、視界の低下によりこの判定距離L3を低減し、この判定距離L3に係る判定基準位置を俯瞰表示領域P2側に変位させる。
このように縦面表示により表示すれば、視界の低下による視認性の低下を防止することができ、充分な視界が確保されている場合と同様の視認性を確保することができる。
これにより車両用表示装置1は、補助情報に応じて表示を切替えて視認性を充分に確保することができる。
なおこれにより図9(A)による表示可能領域2Cの表示は、充分に前方視界が確保されており、判定距離L3がこの図9(A)の例より距離L2側に充分に接近している場合の例である。
【0080】
またさらに制御部26は、この縦面表示に表示を切替えた補助情報19Bを、少なくとも縦面表示領域P1を含む判定距離L3に対応する位置から縦面表示領域P1側の領域で表示するようにして、この図9(A)の例では、停止線11の上方に表示位置を設定して表示する。
これによりこの補助情報19Bの表示位置にあっては、前方視界の低下により視認性が劣化した実景との位置関係を把握可能な位置に、適宜、設定することができ、これによっても補助情報の視認性を充分に確保することができる。
【0081】
またこの場合も、制御部26は、この補助情報19Bの表示形態を、一時停止の標識の形態に切替え、直感的に、補助情報19Bの内容を把握できるようにして、一段と補助情報の視認性を確保する。
【0082】
なおこの図9の例では、区画線8、9の補助情報15、16(図3参照)については、記載を省略しているものの、区画線8、9の補助情報は、視界の低下により表示を中止してもよく、ドライバーによる設定により表示するようにしても良く、必要に応じて種々に設定することができる。
【0083】
なおこの車両用表示装置21においても、実用上充分な視認性を確保できる場合、表示形態の切替えを中止するようにしてもよく、さらにはパースを付けないようにして補助情報19Aを縦面表示してもよい。
【0084】
図10は、この制御部26の処理手順を示すフローチャートであり、判定距離L3の位置を跨がない判定距離L3以遠の俯瞰表示領域P2について処理を示すフローチャートである。
制御部26は、この処理手順を一定の時間間隔により実行する。制御部26は、この処理手順を開始すると、視点位置取得部4により視点位置情報を取得し(SP31-SP32)、前方風景情報取得部5により前方風景情報を取得する(SP33)。
また視界判断部26Aにより視界が低下しているか判断し(SP34)、視界が低下していると判断される場合、視界判断部26Aにより視界不良の度合を検出し(SP35)、この検出した視界不良の度合いに応じて判定距離L3を低減し、この判定距離L3に係る判定位置を自車側に変更する(SP36)。
【0085】
さらにこの判定距離L3の位置を跨がない判定距離L3以遠の俯瞰表示領域P2に対応する対象物が存在するか判断し(SP37)、このような対象物が存在する場合にはこの対象物の補助情報を少なくとも縦面表示領域P1を含む判定距離L3に対応する位置から縦面表示領域P1側の領域で縦面表示するように設定してこの処理手順を終了する(SP37-SP38-SP39)。またこのような対象物が存在しない場合には、この処理手順を終了する(SP37-SP39)。
【0086】
これに対して視界が低下していない場合、制御部26は、判定距離L3を初期設定値に保持し(SP34-SP40)、この処理設定値の判定距離L3により判定距離L3の位置を跨がない判定距離L3以遠の俯瞰表示領域P2に対応する対象物が存在するか判断し(SP40-SP37)、このような対象物の有無により同様の処理を実行する(SP37-SP38-SP39、SP37-SP39)。
【0087】
この第2の実施形態によれば、判定距離により対象物までの距離を判定してドライバー視点の俯瞰表示を縦面表示に切替えるようにして、視界の程度に応じてこの判定距離を変化させることにより、補助情報の視認性を充分に確保することができる。
またこの場合、夜間、降雨等により視界が低下した場合でも、この視界の低下による視認性の低下を防止して充分に視認性を確保することができる。
【0088】
またこのようにして、少なくとも縦面表示領域を含む判定距離に対応する位置から縦面表示領域側の領域で、縦面表示に表示を切替えた補助情報を表示することにより、前方視界の低下により視認性が劣化した実景との位置関係を把握可能な位置に、適宜、補助情報を表示することができ、これによっても補助情報の視認性を充分に確保することができる。
【0089】
またさらに視界の低下により判定距離を低下させることにより、より具体的構成により、視界の低下による視認性の低下を防止して充分に視認性を確保することができる。
【0090】
また判定距離の地点を跨がない判定距離以遠の俯瞰表示領域に係る対象物については、判定距離に対応する位置を基準にして表示位置を設定して補助情報を表示することにより、ドライバーによる使い勝手を向上することができる。
【0091】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更したり、組み合わせたりすることができる。
【0092】
具体的に第1実施形態の構成に第2実施形態の構成を適用して、視界の低下により判定距離L3を低減し、この判定距離L3に係る判定基準位置を俯瞰表示領域P2側に変位させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1、21 車両用表示装置
2 表示部
2A 表示器
2B 光源
2C 表示可能領域
4 視点位置取得部
5 前方風景情報取得部
6、26 制御部
7 ウインドシールド
8、9 区画線
11 停止線
12 前方車両
15、16、17、18、19A、19B 補助情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10