(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】飲用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/70 20060101AFI20230516BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230516BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A23L2/00 K
A23L2/52
A23L2/54
A23L2/70
(21)【出願番号】P 2018183106
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2017194514
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本間 芳子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 幸市朗
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-304323(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133408(WO,A1)
【文献】特開平05-155756(JP,A)
【文献】特開2010-143894(JP,A)
【文献】クックパッド [オンライン], 2010.09.26 [検索日 2022.10.12], インターネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/1200981>
【文献】楽天レシピ [オンライン], 2014.06.04 [検索日 2022.10.14], インターネット:<URL:https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1090015576/>
【文献】ヤンマー部隊隊長の日記 [オンライン], 2011.02.22 [検索日 2022.10.12], インターネット:<URL:https://butaitaichou.com/entry/20110222/p1>
【文献】livedoor Blog [オンライン], 2006.03.13 [検索日 2022.10.12], インターネット:<URL:http://blog.livedoor.jp/masakani911/archives/50362022.html>
【文献】You Tube [オンライン], 2016.07.05 [検索日 2022.10.12], インターネット:<URL:https://www.youtube.com/watch?v=OlGTDgl4qTA>
【文献】Hatena Blog [オンライン], 2010.05.07 [検索日 2022.10.14], インターネット:<URL:https://softcandy.hatenablog.com/entry/20100507/1273250160>
【文献】20代夫婦が始めるご隠居生活 [オンライン], 2017.07.01 [検索日 2022.10.14], インターネット:<URL:https://nadegata.info/monster-high-pressure/>
【文献】Amazon [オンライン], 2015.06.04 [検索日 2022.10.12], インターネット:<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AA%E3%83%9D%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%B3-%E5%A4%A7%E6%AD%A3%E8%A3%BD%E8%96%AC-%E3%83%AA%E3%83%9D%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%B3-%E6%8C%87%E5%AE%9A%E5%8C%BB%E8%96%AC%E9%83%A8%E5%A4%96%E5%93%81-,続き100mLx10%E6%9C%AC/dp/B00YU235ZG/ref=sr_1_2?keywords=%E3%83%AA%E3%83%9D%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%B3&qid=1665713649&qu=eyJxc2MiOiIzLjE5IiwicXNhIjoiMi40NSIsInFzcCI6IjIuMjkifQ%3D%3D&sr=8-2>
【文献】Amazon [オンライン], 2008.03.07 [検索日 2022.10.14], インターネット:<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%93%E3%82%BF-%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF-100ml%C3%9710%E6%9C%AC-%E6%8C%87%E5%AE%9A%E5%8C%BB%E8%96%AC%E9%83%A8%E5%A4%96%E5%93%81/dp/B0015LRAHY/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2K6GOI41K61RB&keywords=%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF&,続きqid=1665713711&qu=eyJxc2MiOiIzLjE2IiwicXNhIjoiMi41NiIsInFzcCI6IjIuMzcifQ%3D%3D&sprefix=%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF%2Caps%2C415&sr=8-1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/70
A23L 2/52
A23L 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
リボフラビン、リン酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンヌクレオチドからなる群から選ばれる少なくとも一種であるビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩、b)ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩の1質量部に対して0.02~2.5質量部の
没食子酸プロピル、及びc)二酸化炭素をガス内圧で1.0~4.0kg/cm2含有
し、キャッピング容器に充填された飲用組成物。
【請求項2】
449nmの光透過率が0.1%以上である容器に充填した請求項1に記載の飲用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩と多価フェノール化合物を含有した、液剤中に沈殿の生じない飲用組成物に関するものであり、医薬、食品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩は、口角炎、口内炎、舌炎、口唇炎、結膜炎、角膜炎、急・慢性湿疹、脂漏性皮膚炎等の諸症状の緩和に有効であるほか、肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時のビタミンB2の補給に用いられている。
多価フェノール化合物は、抗酸化作用を有することが知られており、今までに多価フェノール化合物である没食子酸類を配合してチオクト酸の光安定性を改善した内服液剤やトリプタン化合物の安定性低下を抑制した内服液剤が開示されている(特許文献1~3)。また、ビタミンB1類の不快臭を低減するために、没食子酸類が有用であることも知られている(特許文献4)。
一方で、多価フェノール化合物である没食子酸類は光照射により水に対する溶解度が低い副生成物を生じることが報告されており(非特許文献1)、沈殿の原因となってしまうことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-305089
【文献】特開2012-36166
【文献】特開2012-36167
【文献】特開2004-321178
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Phys. Chem. A., 112, 1188-94 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩と多価フェノール化合物である没食子酸若しくはその誘導体又はその塩を含有した飲用組成物は、没食子酸若しくはその誘導体又はその塩の光安定性が大きく低下するという知見を得た。
【0006】
したがって、本発明は、飲用組成物中の多価フェノール化合物の光分解を抑制し、沈殿の原因となる副生成物の生成を抑制した飲用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、二酸化炭素を含有させた場合に、多価フェノール化合物である没食子酸若しくはその誘導体又はその塩の光分解が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、
(1)a) ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩、b) ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩の1質量部に対して0.02~2.5質量部の多価フェノール化合物、及びc) 二酸化炭素をガス内圧で1.0~4.0kg/cm2含有する飲用組成物、
(2)ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩が、リボフラビン、リン酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンヌクレオチド及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の飲用組成物、
(3)多価フェノール化合物が没食子酸プロピルである(1)に記載の飲用組成物、
(4)449nmの光透過率が0.1%以上である容器に充填した(1)~(3)のいずれかに記載の飲用組成物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩と多価フェノール化合物を含有した飲用組成物に、二酸化炭素を含有させることで、液中の沈殿生成を抑制した飲用組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に使用するビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩とは、通常可食性のものを指し、具体的にはリボフラビン、リン酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンヌクレオチド及びそれらの塩などをあげることができる。本発明におけるビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩の含有量は、特に限定されないが、栄養摂取量の面からリボフラビンに換算して、1日当たり0.01~100mgが好ましく、0.33~30mgがより好ましく、2~30mgがさらに好ましい。飲用組成物におけるリボフラビンの含有量は、0.00001~1w/v%が好ましく、0.00033~0.3w/v%がより好ましく、0.002~0.3w/v%がさらに好ましい。
【0011】
本発明に用いる多価フェノール化合物とは、通常可食性のものを指し、特に限定されないが、没食子酸若しくはその誘導体又はその塩が好ましい。より好ましくは、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル及びそれらの塩であり、さらに好ましくは没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルである。本発明における多価フェノールの含有量は、ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩の光安定性確保の面から、ビタミンB2若しくはその誘導体又はその塩1質量部に対して0.02~2.5質量部であり、好ましくは0.06~2.0質量部であり、さらに好ましくは0.06~1.3質量部である。
【0012】
本発明に用いる二酸化炭素は、通常食品や医薬品に用いられるものを指す。二酸化炭素としては、二酸化炭素を単独で使用するものであっても、二酸化炭素とそれ以外の酸素、水素、窒素等のガス類とを2種類以上混合するものであってよいが、二酸化炭素を単独で用いることが好ましい。二酸化炭素の含有量は、飲用組成物全体に対するガス内圧(単位体積中に溶解しているガス量)として、1.0~4.0kg/cm2であるが、1.3~3.8kg/cm2がより好ましい。
【0013】
本発明に用いる容器は、449nmの光透過率が0.1%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2%以上である。具体的には、透明ガラス瓶や褐色あるいは茶系のガラス瓶などが挙げられる。容器の材質は、特に制限がなく、例えばガラス製、プラスティック製等が挙げられる。
【0014】
本発明にかかる飲用組成物のpHは、特に限定されず、例えば、2.0~7.0である。風味の観点からは低pHであることが好ましく、さらに好ましくは2.5~5.5である。本発明の飲用組成物のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸等の無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられる。
【0015】
本発明の飲用組成物にはその他の成分として、他のビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、他の生薬や生薬抽出物、カフェインなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0016】
さらに必要に応じて、甘味料、酸味料、増粘安定剤、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、保存料、調味料、苦味料、強化剤、可溶化剤、乳化剤などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0017】
本発明の飲用組成物は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し得られた飲料原液を冷却した後、ガス圧が所定の範囲、例えば、1.0~4.0kg/cm2になるように炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、本発明においてはいずれを採用してもよい。
【0018】
本発明の飲用組成物は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種製剤、健康飲料などの各種飲料に適用することができる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
【0020】
(実施例1~3、比較例1~2)
リボフラビンリン酸エステルナトリウム5mg、没食子酸プロピル2mg、安息香酸ナトリウム60mg、クエン酸500mgを精製水に溶解し、二酸化炭素をガス内圧でそれぞれ、1.3kg/cm2、2.4kg/cm2、3.8kg/cm2になるように調整した炭酸水で全量を100mLとした。この液を洗浄した449nmの光透過率が0.1%の褐色ガラスビンに充填し、キャッピングしたものを内服液剤とした。
以下の比較例1、比較例2は、炭酸水を精製水に変更し、その他は実施例1~3と同様に調製した。それぞれの処方を表1に示す。
【0021】
【0022】
(実施例4~12、比較例3~8)
実施例1~3、比較例1~2と同様に、表2~7の処方に従って、実施例4~12、比較例3~8の内服液剤を調製した。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
(試験例1:没食子酸プロピルの光安定性試験)
実施例1~3、6~12、比較例1及び比較例2、比較例5~8で得た内服液剤を3000Lux×200時間曝光させた。実施例4及び実施例5、比較例3及び比較例4で得た内服液剤は3000Lux×60時間曝光させた。これらの内服液剤中の没食子酸プロピル残存率を液体クロマトグラフ法(カラム:ODS-80TS(東ソー)、移動相:水:アセトニトリル:酢酸=800:170:30、流速:1mL/min、検出波長:280nm)により定量した。調製直後に対する3000Lux×200時間曝光後または3000Lux×60時間曝光後の没食子酸プロピル残存率(%)を表1~7に示す。
【0030】
表1から明らかなように、比較例1と比較例2より、リボフラビンリン酸エステルナトリウム存在下では没食子酸プロピルの光安定性が大きく低下した。実施例1~3は比較例2と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。
実施例4は比較例3と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。実施例5は比較例4と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。実施例6は比較例5と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。実施例7及び実施例8は比較例6と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。実施例9及び実施例10は比較例7と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。実施例11及び実施例12は比較例8と比較して没食子酸プロピルの光安定性が改善されていた。
これら結果から二酸化炭素を含有させることにより、リボフラビンリン酸エステルが含有された際に生じる没食子酸プロピルの光安定性低下を改善できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によりビタミンB2類を安定に含有し、沈殿の生じない内服液剤を得ることができ、医薬品、食品、健康飲料、特定保健用食品などに使用可能である。