(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/241 20180101AFI20230516BHJP
F21S 43/242 20180101ALI20230516BHJP
F21S 43/249 20180101ALI20230516BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20230516BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20230516BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230516BHJP
【FI】
F21S43/241
F21S43/242
F21S43/249
F21W103:10
F21W103:55
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018242027
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松脇 弘樹
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026192(JP,A)
【文献】特開2017-010770(JP,A)
【文献】特開2017-033836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/241
F21S 43/242
F21S 43/249
F21W 103/10
F21W 103/55
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの出射光を照射方向の前側へと導く導光体と、を備え、
前記導光体は、前記光源からの前記出射光を前記照射方向の前側へ導く導光部と、
前記導光部で導かれた前記出射光を前記照射方向の前側へ出射させる出射面と、を有し、
前記出射面は、前記照射方向に直交する厚さ方向で前記導光部よりも大きな寸法とされ、
前記導光部は、前記照射方向に伸びる立壁面を有し、
前記立壁面には、少なくとも一部に拡散部が設けられ
、
前記導光体は、前記導光部の前記照射方向の前側において、前記導光部よりも段差を付けて前記厚さ方向に拡張された拡張箇所を有し、
前記出射面は、前記拡張箇所における前記照射方向の前側の端部に形成され、
前記光源は、前記照射方向および前記厚さ方向を含む面に対して傾斜する傾斜方向に複数が並んで設けられ、
前記導光体は、複数の前記光源に個別に対応して複数の入射箇所を有し、
前記立壁面は、複数の前記入射箇所に個別に対応して複数設けられ、
複数の前記入射箇所は、前記導光部における前記光源に対向される箇所を部分的に凹ませた凹所と、前記凹所を取り囲む環状反射面と、を有し、
前記環状反射面は、少なくとも一部が、前記光源から前記凹所を経た前記出射光を、前記立壁面へ向けて反射させる調整反射箇所とされていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記拡散部は、前記照射方向に延びる凹部および凸部の少なくとも一方が並んで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記立壁面は、隣接する2つの前記入射箇所を架け渡して設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、光源からの出射光を導光体に入射させ、導光体の導光部を通して出射面から出射させることにより、出射面を光らせるものがある(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
この車両用灯具は、導光体において導光部から出射面へと滑らかに接続する構成とすることにより、光源からの出射光を有効利用しつつ出射面に沿う形状の光として視認させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の車両用灯具は、導光体において、導光部から出射面へと滑らかに接続しているので、出射面を大きくすると導光部の厚さも大きくする必要がある。しかしながら、導光体は、導光部の厚さを大きくすると、成型時に波打ちやヒケが生じ易くなるので、導光部の厚さを大きくすることには限界がある。このため、従来の車両用灯具は、出射面を大きくすることが制限されてしまい、改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、導光部の厚さを制限しつつ出射面を大きくできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用灯具は、光源と、前記光源からの出射光を照射方向の前側へと導く導光体と、を備え、前記導光体は、前記光源からの前記出射光を前記照射方向の前側へ導く導光部と、前記導光部で導かれた前記出射光を前記照射方向の前側へ出射させる出射面と、を有し、前記出射面は、前記照射方向に直交する厚さ方向で前記導光部よりも大きな寸法とされ、前記導光部は、前記照射方向に伸びる立壁面を有し、前記立壁面には、少なくとも一部に拡散部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、導光部の厚さを制限しつつ出射面を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る一例としての車両用灯具が車両に搭載された様子を示す説明図である。
【
図2】車両用灯具の灯具ユニットを前方の斜め上方から見た様子を示す斜視図である。
【
図3】灯具ユニットを後方の斜め上方から見た様子を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示すI-I線に沿って得られた灯具ユニットの断面図である。
【
図5】灯具ユニットにおける入射箇所の構成を示す説明図であり、
図4における光源および入射箇所を部分的に拡大して出射光Lが進行する様子を示している。
【
図6】
図4に示すII-II線に沿って得られた灯具ユニットの断面図であり、入射箇所に対応して設けられた導光部の立壁面を、車両の外側から幅方向で見た様子を併せて示している。
【
図7】灯具ユニットにおける変形例としての入射箇所の構成を示す
図5と同様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一実施形態としての車両用灯具10の実施例1について
図1から
図7を参照しつつ説明する。なお、
図5および
図7では、光源21からの出射光Lが進行する様子の把握を容易とするために、
図6では、立壁面33および拡散部34の構成の把握を容易とするために、それぞれ導光体22に付すハッチを省略している。
【実施例1】
【0011】
車両用灯具10は、自動車等の車両の灯具として用いられるもので、クリアランスランプや信号灯やポジションランプやDRL(Daytime Running Lamps)に好適であり、実施例1では車両1のDRLに用いた例を示す。車両用灯具10は、
図1に示すように、車両1の前部の左右両側に設けられており、左右対称で互いに略等しい構成とされている。車両用灯具10は、前端が開放されたランプハウジングとその開口部を覆うアウターレンズとで形成された灯室11に、灯具ユニット20が設けられて構成される。そのランプハウジングは、一端が開放されかつ他端が閉塞された中空形状とされ、灯具ユニット20の取付箇所を構成するとともに、それらの点灯制御のための点灯駆動装置を収容する。以下の説明では、車両用灯具10において、車両1の直進時の進行方向であって灯具ユニット20からの光の出射により照射する方向を照射方向D1(前側)とし、車両1に搭載された状態での鉛直方向を上下方向D2(厚さ方向)とし、照射方向D1および上下方向D2に直交する方向を幅方向D3とする。また、以下では、左右の両車両用灯具10が左右対称で互いに略等しい構成であることから、乗車位置から見て左側に設けられた車両用灯具10について構成を説明する。
【0012】
灯具ユニット20は、
図2から
図4に示すように、複数の光源21(
図4参照)と、それらに対応する長尺な導光体22と、を備える。各光源21は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成され、基板に実装されている。各光源21は、導光体22の各入射箇所23に個別に対向されて、出射光軸が照射方向D1に大略沿うように設けられている(
図4参照)。基板は、点灯制御回路からの電力を光源21に適宜供給することができ、光源21を点灯させる。なお、光源21は、複数の発光素子で構成されていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0013】
導光体22は、光の透過を許す透明な樹脂材料で形成しており、例えば、アクリル樹脂もしくはポリカーボネイト等の樹脂材料で形成している。導光体22は、車両1の前方の内側に位置する先端箇所から、車両1の外側に向かうに連れて車両1の後側に向かう長尺方向D4に沿って湾曲する長尺な形状とされている(
図1等参照)。その長尺方向D4は、照射方向D1および上下方向D2を含む面に対して、傾斜されている。導光体22は、各光源21に個別に対応する複数の入射箇所23が導光部24で接続され、その導光部24の照射方向D1の前側に出射面25が設けられて構成されている。導光体22では、導光部24および出射面25が長尺方向D4に伸びるものとされ、それに合わせて各入射箇所23(各光源21)が長尺方向D4に整列されている。これにより、導光体22では、車両1の外側に位置する入射箇所23ほど車両1の後側に位置するように、各入射箇所23の位置が設定されている。
【0014】
各入射箇所23は、
図4および
図5に示すように、各光源21に対向する箇所すなわち光源21の照射方向D1の前側に設けられている。各入射箇所23では、導光体22における光源21と対向する箇所を部分的に凹ませて凹所26が設けられている。その凹所26は、
図5に示すように、照射方向D1の後側(光源21側)に凸となるように湾曲された湾曲入射面27と、その湾曲入射面27を取り囲みつつ照射方向D1に伸びる環状入射面28と、を有する。また、入射箇所23では、凹所26すなわち環状入射面28を取り囲んで環状反射面29が設けられている。環状反射面29は、導光体22が照射方向D1の後側に凸となるように湾曲されて形成されている。
【0015】
入射箇所23では、光源21から出射された光(この明細書では、導光体22への入射や導光体22からの出射に拘わらず出射光Lとする)が、凹所26に進行し、その湾曲入射面27および環状入射面28を経て、導光体22に入射する。入射箇所23では、湾曲入射面27が、出射光Lを平行光とするように、光源21の出射位置を勘案して設定されている。また、入射箇所23では、環状入射面28を経て導光体22に入射した出射光Lが、環状反射面29により全反射を利用して反射されると平行光となるように、光源21の出射位置および環状入射面28の位置を勘案して、環状反射面29が設定されている。このため、入射箇所23は、光源21から出射されて導光体22に入射した出射光Lを、平行光として照射方向D1の前側に進行させる。なお、この平行光(平行な光)とは、出射光Lが湾曲入射面27や環状反射面29を経ることでコリメートされた状態の光のことをいう。
【0016】
導光部24は、
図2から
図4に示すように、各入射箇所23から照射方向D1の前側に伸びるものとされて、各光源21から出射されて各入射箇所23で平行光とされて照射方向D1の前側へと進行する出射光Lを、そのまま照射方向D1の前側へと導く。なお、導光部24は、各入射箇所23からの出射光Lを反射させることで照射方向D1の前側に導いてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0017】
導光部24は、
図6に示すように、上壁面31と下壁面32と立壁面33とを有する。上壁面31は、導光部24における上下方向D2の上側の境界面を構成するもので、上下方向D2に直交しつつ照射方向D1に伸びる平面とされている。下壁面32は、導光部24における上下方向D2の下側の境界面を構成するもので、上下方向D2に直交しつつ照射方向D1に伸びる平面とされている。上壁面31と下壁面32とは、入射箇所23の環状反射面29の照射方向D1の前側の端部29aから照射方向D1に沿って前側へと伸びており、入射箇所23により平行光とされた出射光Lの前側への進行を阻害することが抑制されている。
【0018】
各立壁面33は、上壁面31と下壁面32とを上下方向D2に接続する平面とされている。各立壁面33は、対応する入射箇所23に対して、車両1の内側で照射方向D1の前側に伸びて設けられている。ここで、導光体22では、
図3および
図4に示すように、照射方向D1および上下方向D2を含む面に対して傾斜する長尺方向D4に各入射箇所23が並べられているので、各入射箇所23の位置が車両1の外側に向かうに連れて照射方向D1の後側へと変位している。これに伴い、立壁面33は、照射方向D1で位置が異なる各入射箇所23に対して、隣接する2つの入射箇所23を照射方向D1に架け渡して設けられている。なお、照射方向D1の最も前側で車両1の内側に位置するもの立壁面33は、同じく照射方向D1の最も前側で車両1の内側に位置する入射箇所23よりも前側には入射箇所23が設けられていないので、隣接する2つの入射箇所23を架け渡すものとはされていない。
【0019】
各立壁面33には、拡散部34が設けられている。拡散部34は、照射方向D1に延びる凹部および凸部の少なくとも一方が並んで形成されており、実施例1では照射方向D1に延びる凸部34aが上下方向D2に並列されて形成された所謂ローレット状とされている(
図6参照)。なお、拡散部34は、照射方向D1に延びる凹部が上下方向D2に並列されて形成されていてもよく、照射方向D1に延びる凹部および凸部が上下方向D2に交互に並んで形成されていてもよい。各凸部34aは、照射方向D1に直交する断面で見て、連続する曲面で形成されている。拡散部34は、実施例1では、立壁面33の全面に亘り、すなわち照射方向D1では環状反射面29(その端部29a)から立壁面33の前端(前側に位置する入射箇所23の環状反射面29)に至る範囲でかつ上下方向D2では上壁面31から下壁面32に至る範囲で設けられている。拡散部34(立壁面33)は、全反射を利用して光を反射するものとされている。
【0020】
導光体22では、
図6に示すように、拡張箇所35が設けられている。拡張箇所35は、導光部24の照射方向D1の前側の端部に設けられ、上下方向D2での厚さ寸法が導光部24よりも大きくされている。拡張箇所35は、導光部24の上壁面31よりも上下方向D2の上側に位置された拡張上壁面36と、導光部24の下壁面32よりも上下方向D2の上側に位置された拡張下壁面37と、を有する。拡張箇所35は、拡張上壁面36が上壁面31から上側に段差を付けて変位されることで上側拡張部分35aを形成し、拡張下壁面37が下壁面32から下側に段差を付けて変位されることで下側拡張部分35bを形成している。このため、拡張箇所35は、上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bにより、段差を付けて導光部24よりも上下方向D2に拡張されて導光部24に隣接されている。
【0021】
拡張箇所35は、拡張上壁面36および拡張下壁面37の前側の端部を上下方向D2に架け渡して出射面25を構成している。これにより、出射面25は、上下方向D2で導光部24よりも大きな寸法とされている。また、拡張箇所35は、導光部24の前側の端部から、拡張上壁面36および拡張下壁面37の分だけ、導光部24の前側の端部よりも前側へと変位させた位置に出射面25を配置させている。拡張箇所35は、導光体22の導光部24が長尺方向D4に伸びていることに合わせて、その照射方向D1の前側の端部において長尺方向D4に伸びるものとされている(
図1から
図4参照)。これらのことから、上下方向D2は、照射方向D1に直交するものであって、出射面25が導光部24よりも大きな寸法とされた厚さ方向として機能する。また、長尺方向D4は、照射方向D1および上下方向D2(厚さ方向)を含む面に対して傾斜し、各光源21および各入射箇所23が並べられる方向である傾斜方向として機能する。
【0022】
実施例1の拡張箇所35は、上下方向D2の上側から下側に向かうに連れて照射方向D1の前側へと変位されて設けられている。このため、出射面25は、上下方向D2の上側から下側に向かうに連れて照射方向D1の前側へと変位するように傾斜されている。そして、出射面25は、
図1から
図4に示すように、導光部24における照射方向D1の前側の端部において、上記した傾斜された状態を維持したまま導光体22の長尺方向D4に沿って伸びる長尺な面とされている。このため、出射面25は、光を出射させることで、線状(ライン状)の光として視認させることができる。出射面25は、小さな矩形状の突起(所謂プリズム)が整列されて設けられており、照射方向D1の前側からの意匠性を高めるとともに出射させる光を拡散させるものとされている。このため、出射面25は、ムラのない線状(ライン状)の光として視認させることができる。
【0023】
実施例1の車両用灯具10は、灯具ユニット20において、点灯制御回路からの電力を基板から光源21に供給して、光源21を点灯させる。すると、光源21からの出射光Lは、その出射光軸を中心としつつ放射状に進行して入射箇所23に至り、入射箇所23から導光体22内に進行して平行光とされる(
図5参照)。その出射光Lは、導光体22(導光部24)内において、照射方向D1の前側へと進行し、出射面25へと向かう。入射箇所23からの出射光Lは、導光部24内を照射方向D1の前側へと進行することで拡張箇所35の出射面25に至り、その出射面25から拡張箇所35(導光体22)の外方に出射される。ここで、入射箇所23からの出射光Lは、基本的に、照射方向D1に沿って進行する平行光とされているので、拡張箇所35の上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bには出射光Lが進行し難くなっている。これにより、出射面25では、上下方向D2の両端部から出射させる出射光Lが極めて少なくなり、上下の両端部が暗くなる虞がある。
【0024】
このため、車両用灯具10では、各入射箇所23すなわち各光源21に個別に対応させて、拡散部34を形成した立壁面33を設けている。導光体22では、各光源21から出射されて各入射箇所23から入射される出射光Lのうち、環状入射面28を経た後に環状反射面29へと向かわない一部の出射光L1(
図5参照)が立壁面33に向かう。この入射箇所23から立壁面33に向かう出射光L1は、
図5に示す例では環状入射面28における光源21に対して車両1の内側に位置する箇所を経た様子を示しているが、環状入射面28における光源21に対して上下方向D2に位置する箇所を経る場合もある。ここで、入射箇所23から立壁面33に向かう出射光L1は、基本的に照射方向D1に近い方向(上下方向D2のベクトル成分が小さいもの)で立壁面33へと向かうものとされている。しかしながら、その出射光L1は、立壁面33に複数の凸部34aが照射方向D1に延びる拡散部34が設けられているので、拡散部34(凸部34a)で反射されて拡散されることで一部の進行方向が上下方向D2側に傾斜した方向(上下方向D2のベクトル成分が大きいもの)に変化される。
【0025】
これらの出射光Lは、各凸部34aが照射方向D1に延びているので、拡張箇所35へと向かう照射方向D1のベクトル成分は維持される。これらのことから、拡散部34で反射されて拡散された出射光Lは、上下方向D2側に傾斜した方向を進行方向としつつ拡張箇所35に向かうこととなる。これにより、拡散部34からの出射光Lは、少なくとも一部が、拡張箇所35における上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bに進行することとなり、出射面25における上下方向D2の両端部からも出射光Lを積極的に出射させることができ、出射面25を上下方向D2で全体として均一に光らせることができる。
【0026】
ここで、車両用灯具10では、出射面25を長尺方向D4に伸びる単一の面としているのに対して、複数の入射箇所23および複数の光源21を長尺方向D4に並べて設けている。このため、出射面25は、照射方向D1で、各入射箇所23(各光源21)に対向する部分と、それらの間に対向する部分(以下では間部分ともいう)と、を交互に並べている。このことから、出射面25は、各入射箇所23からの平行光とされた出射光Lのみが導かれると、間部分からは出射光Lを出射させることができず、明るい箇所と暗い箇所とが交互に並ぶこととなる。これに対し、車両用灯具10では、各入射箇所23から車両1の内側に立壁面33(拡散部34)を設けているので、各入射箇所23から各立壁面33に向かう出射光L1を各立壁面33で反射することで、その出射光L1の一部を各入射箇所23よりも外側の各間部分へと進行させることができる。また、立壁面33は、対応する入射箇所23から照射方向D1の前側に伸びて設けられているため、入射箇所23からの出射光L1が照射方向D1の様々な位置に入射するので、立壁面33よりも外側へと様々な角度で出射面25へ向けて進行させることができ、反射した出射光L1が狭い範囲に集中することを防止しつつ間部分へと進行させることができる。加えて、車両用灯具10では、長尺方向D4に出射面25を伸ばすとともに各入射箇所23を並べているので、各立壁面33と各間部分との間隔を小さくでき、出射光L1の一部を各入射箇所23よりも外側の各間部分へと効率良く進行させることができる。これらのことから、車両用灯具10では、出射面25における各間部分にも出射光Lを積極的に導くことができ、明るい箇所と暗い箇所とが交互に並ぶことを抑制することができ、出射面25を長尺方向D4でも全体として均一に光らせることができる。
【0027】
よって、車両用灯具10では、各光源21からの出射光Lを、上下の両端部を含めた出射面25の全面から出射させることができ、出射面25に沿って長尺方向D4に伸びるムラのない線状の光として視認させることができる。これにより、車両用灯具10は、出射面25が全面に亘って光ることで、車両1の前側における上下方向D2や幅方向D3からの視認が可能とされ、車両1におけるDRLとして機能する(
図1参照)。
【0028】
次に、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、導光部から出射面へと滑らかに接続することで、導光部により照射方向の前側に導かれた光源からの出射光を出射面の全面に亘らせることができ、光源からの出射光を有効利用しつつ出射面を全面に亘り光らせている。このため、従来の車両用灯具は、出射面の上下方向(厚さ方向)の寸法を大きくするには、それに合わせて導光部の上下方向の寸法すなわち導光部の厚さを大きくする必要がある。ところが、導光体は、導光部の厚さを大きくすると、金型を用いて成型する際、樹脂材料の成形収縮に起因して導光部に波打ちやヒケが生じ易くなってしまうので、導光部の厚さを大きくすることには限界がある。
【0029】
ここで、従来の車両用灯具は、実施例1の車両用灯具10と同様に、導光部の照射方向の前側に段差を付けて拡張箇所を設けて出射面の上下方向の寸法を大きくすることが考えられる。しかしながら、従来の車両用灯具は、単に拡張箇所を設けて出射面の上下方向の寸法を大きくしても、上述したように拡張箇所の上側拡張部分および下側拡張部分に出射光を進行させるのが困難となる。このため、従来の車両用灯具は、拡張箇所により出射面を大きくしても、出射面の上下の両端部が暗くなるので、実質的な出射面の上下方向の寸法(発光面の大きさ)は殆ど変化せず、大きくすることができない。これらのことから、従来の車両用灯具は、出射面を大きくすることが制限されてしまう。
【0030】
これに対して、実施例1の車両用灯具10は、灯具ユニット20の導光体22の導光部24において、照射方向D1に延びる複数の凸部34aを上下方向D2に並列させて形成した拡散部34を有する立壁面33を設けている。そして、車両用灯具10は、導光部24の照射方向D1の前側に拡張箇所35を設けて出射面25の上下方向D2の寸法を大きくしている。このため、車両用灯具10は、拡張箇所35を設けることで上下方向D2での出射面25の寸法を導光部24よりも大きくしつつ、拡散部34を有する立壁面33を設けることで出射光Lを拡張箇所35の上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bに進行させることができる。これにより、車両用灯具10は、出射面25の上下の両端部まで明るくすることを可能としつつ、導光部24の上下方向D2での寸法を大きくすることなく出射面25を大きくすることができる。
【0031】
加えて、実施例1の車両用灯具10は、拡張箇所35が導光部24の前側の端部から拡張上壁面36および拡張下壁面37の分だけ前側へと変位させた位置に出射面25を配置させているので、拡散部34で反射されて進行方向が上下方向D2側に傾斜した方向とされた出射光Lを、拡張箇所35の上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bへと進行し易くしている。このため、車両用灯具10は、より確実に出射面25の上下の両端部まで明るくすることを可能としつつ、導光部24の上下方向D2での寸法を大きくすることなく出射面25を大きくすることができる。
【0032】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0033】
車両用灯具10は、導光体22において、出射面25を厚さ方向(実施例1では上下方向D2)で導光部24よりも大きな寸法とし、拡散部34を有する立壁面33を導光部24に設けている。このため、車両用灯具10は、光源21から出射される出射光Lの一部を拡散部34で反射して拡散することで、上下方向D2側に傾斜した方向にも進行させることができる。これにより、車両用灯具10は、導光部24よりも大きな厚さとした出射面25における上下方向D2の両端部からも出射光Lを積極的に出射させることができる。このため、車両用灯具10は、導光部24の厚さが大きくなることを防止しつつ、導光部24よりも厚くした出射面25における上下方向D2の両端部からも出射光Lを積極的に出射させることができ、出射面25を大きくすることができる。
【0034】
車両用灯具10は、拡散部34を、照射方向D1に延びる凹部および凸部の少なくとも一方(実施例1では複数の凸部34a)を並列させて形成している。このため、車両用灯具10は、光源21から出射される出射光Lの一部を拡散部34で反射して拡散することで、照射方向D1のベクトル成分は維持しつつ上下方向D2側に傾斜した方向に進行させることができる。これにより、車両用灯具10は、拡散部34で反射して拡散した出射光Lを、導光部24よりも大きな厚さとした出射面25における上下方向D2の両端部からもより積極的に出射させることができる。
【0035】
車両用灯具10は、傾斜方向(実施例1では長尺方向D4)に並べて複数の光源21を設け、それに個別に対応して複数の入射箇所23を導光体22に設け、複数の入射箇所23に個別に対応して複数の立壁面33を導光体22に設けている。このため、車両用灯具10は、各入射箇所23から入射された出射光Lを、個別に対応する立壁面33の拡散部34で反射して拡散することで、導光部24よりも大きな厚さとした出射面25における上下方向D2の両端部へと出射光Lを積極的に進行させている。これにより、車両用灯具10は、長尺方向D4の伸びる出射面25としても、長尺方向D4に並べられた複数の光源21および入射箇所23からの出射光Lを導光部24により、上記したように導くことができる。よって、車両用灯具10は、上下方向D2の両端部まで明るくしつつ長尺方向D4の全体に亘って出射面25を光らせることができる。
【0036】
車両用灯具10は、各立壁面33を、隣接する2つの入射箇所23を架け渡して設けている。このため、車両用灯具10は、傾斜方向に並べて各入射箇所23を設けることで生じる隣接する2つの入射箇所23の間を利用して、拡散部34を有する各立壁面33を設けることができるので、小型化を可能としつつ、導光部24よりも大きな出射面25の全体を光らせることができる。
【0037】
車両用灯具10は、導光体22において、導光部24よりも段差を付けて上下方向D2(厚さ方向)に拡張させた拡張箇所35を導光部24の照射方向D1の前側に設け、その拡張箇所35の照射方向D1の前側の端部に出射面25を形成している。このため、車両用灯具10は、導光部24の厚さが大きくなることを防止しつつより確実に出射面25を大きな厚さとすることができるとともに、拡散部34での反射により出射面25の上下方向D2の両端部を光らせることができる。
【0038】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、導光部24の厚さを制限しつつ出射面25を大きくできる。
【0039】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0040】
実施例1では、
図1および
図2に示す数の光源21および入射箇所23を設けている。しかしながら、光源21および入射箇所23の数や位置や大きさは適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0041】
実施例1では、導光体22において、各入射箇所23が対応する光源21からの出射光Lを平行光として、照射方向D1の前側へと導くものとしている。しかしながら、各入射箇所23は、環状反射面29の少なくとも一部に、光源21からの出射光Lを立壁面33(その拡散部34)へ向けて反射させる調整反射箇所38(
図7参照)を設ける構成としてもよい。その調整反射箇所38は、光源21から出射されて凹所26の環状入射面28を経て自らに進行する出射光Lを、立壁面33へと反射することで、立壁面33へと進行する出射光Lの量(光量)を調節するものである。このような構成とされた変形例としての入射箇所23Aを
図7に示す。入射箇所23Aは、環状反射面29において、光源21に対して立壁面33側(車両1の内側)に位置する箇所を調整反射箇所38としている。このため、変形例の車両用灯具10は、出射光Lのうちの調整反射箇所38で反射した出射光L2を積極的に立壁面33へと進行させることができ、拡張箇所35の上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bへと出射光L2をより積極的に進行させることができる。これにより、変形例の車両用灯具10は、制御の対象とした光を立壁面33へと進行させることができるので、調整反射箇所38の位置や大きさを調整することで、出射面25における上下方向D2の両端部の明るさを調整することができ、より適切に出射面25の全体を光らせることができる。なお、変形例の入射箇所23Aでは、調整反射箇所38が、環状反射面29における光源21の立壁面33側に設けられていたが、環状入射面28を経た出射光Lの一部を立壁面33へと反射するように環状反射面29の一部に設けられていれば、形状や位置や大きさ等は適宜設定すればよく、
図7の例に限定されない。
【0042】
実施例1では、環状反射面29、立壁面33(拡散部34)および調整反射箇所38が全反射を利用して反射するものとしている。しかしながら、各面(29、33、34、38)は、上記した機能を有するように光源21からの出射光Lを反射するものであれば、蒸着や塗装等によりアルミや銀等を導光体22に接着させることで出射光Lを反射させるものとしてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0043】
実施例1では、出射面25および導光部24を
図2から
図7に示す形状としている。しかしながら、光源21からの出射光Lを導光部24が出射面25へと導いて、その出射面25から照射方向D1の前側へと出射させるものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0044】
実施例1では、拡散部34を立壁面33の全面に亘り設けている。しかしながら、拡散部34は、照射方向D1に延びる凹部および凸部の少なくとも一方が並列されて形成されたものであって、出射面25における上下方向D2の両端部からも積極的に出射させるように出射光Lを反射するものであれば、立壁面33の一部に設けられていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0045】
実施例1では、拡張箇所35を、導光部24よりも上下方向D2(厚さ方向)の両側に拡張させる構成、すなわち上側拡張部分35aおよび下側拡張部分35bを有する構成としている。しかしながら、拡張箇所35は、導光部24の照射方向D1の前側において導光部24よりも段差を付けて厚さ方向に拡張されて、照射方向D1の前側の端部に出射面25が形成されていれば、導光部24に対して厚さ方向の一方のみに拡張されていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用灯具 21 光源 22 導光体 23、23A 入射箇所 24 導光部 25 出射面 26 凹所 29 環状反射面 33 立壁面 34 拡散部 34a 凸部 35 拡張箇所 38 調整反射箇所 D1 照射方向 D2 上下方向(厚さ方向) D4 長尺方向(傾斜方向) L 出射光