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特許7279364センサ異常検出装置及び方法、分散型電源ユニット、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】センサ異常検出装置及び方法、分散型電源ユニット、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20230516BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G01R31/00
H02H7/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019001747
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020112386
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 結
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089144(JP,A)
【文献】特開2018-113732(JP,A)
【文献】特開2011-160562(JP,A)
【文献】特開2015-122819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
H02H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電力と負荷とが接続された電路であって交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常を検出するためのセンサ異常検出装置であって、前記電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、前記センサは、前記系統電力と、前記電路への前記負荷の接続点との間であって、さらに前記分散型電源ユニットと前記電路との接続点と前記系統電力との間において前記電路に接続され、
前記センサの出力の電流実効値を繰り返し測定する測定回路と、
前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力がその直前の供給電力より所定量だけ減少するよう、前記分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路と、
前記測定回路により測定された、前記センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下となる状態が継続して第1所定時間が経過したことに応答して、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示し、かつ所定のカウント変数の値を初期化する第1制限指示回路と、
前記第1制限指示回路からの指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから第2所定時間が経過するまで、前記測定回路により測定された電流実効値が前記しきい値以下ではなくなったことに応答して、前記センサが正常と判定する正常判定回路と、
前記第1制限指示回路からの指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから前記第2所定時間が経過するまで前記測定回路により測定された電流実効値が継続して前記しきい値以下であることに応答して、前記カウント変数の値をカウントアップし、前記カウント変数の値が所定範囲内であれば、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示する第2制限指示回路と、
前記カウント変数の値が前記所定範囲外であることに応答して、前記センサ異常判定する異常判定回路とを含む、センサ異常検出装置。
【請求項2】
さらに、前記センサに異常があると前記異常判定回路が判定したことに応答して、前記分散型電源ユニットを停止するための停止装置を含む、請求項に記載のセンサ異常検出装置。
【請求項3】
さらに、前記センサが正常であると前記正常判定回路が判定したことに応答して、前記制限回路による前記分散型電源ユニットの出力の制限を解除して前記分散型電源ユニットを通常の状態に復帰させるための解除装置を含む、請求項に記載のセンサ異常検出装置。
【請求項4】
さらに、前記解除装置による前記分散型電源ユニットの出力の制限の解除後、前記制限回路の動作を第4所定時間だけ禁止する禁止回路を含む、請求項に記載のセンサ異常検出装置。
【請求項5】
系統電力と負荷とに接続された単相3線式の交流電路に接続された分散型電源ユニットであって、前記単相3線式の交流電路は、中性線と、第1の電路及び第2の電路とを含み、前記第1の電路には、当該第1の電路に流れる交流電流の大きさに応じた電流を出力するセンサが取付けられ、前記センサは前記第1の電路の、前記系統電力と、前記第1の電路への前記負荷の接続点との間であって、さらに前記分散型電源ユニットと前記交流電路との接続点と前記系統電力との間の前記第1の電路に取り付けられ、
直流電源と、
前記直流電源と前記交流電路との間に設けられた電力変換装置と、
前記センサの出力に基づいて、前記センサにセンサ異常が発生したか否かを判定するセンサ異常検出装置と、
前記センサ異常検出装置がセンサ異常の発生を検知していないときに、前記センサの出力に基づいて前記電力変換装置を制御し、前記直流電源と前記交流電路上の交流電力との間で電力変換を行わせるための制御回路と、
前記センサ異常検出装置がセンサ異常の発生を検知したことに応答し、センサ異常時の処理を実行するための異常処理回路とを含み、
前記センサ異常検出装置は、
前記センサの出力の電流実効値を繰り返し測定する測定回路と、
前記分散型電源ユニットから前記交流電路への供給電力がその直前の供給電力より所定量だけ減少するよう、前記分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路と、
前記測定回路により測定された、前記センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下となる状態が継続して第1所定時間が経過したことに応答して、前記分散型電源ユニットから前記交流電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示し、かつ所定のカウント変数の値を初期化する第1制限指示回路と、
前記第1制限指示回路からの指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから第2所定時間が経過するまで、前記測定回路により測定された電流実効値が前記しきい値以下ではなくなったことに応答して、前記センサが正常と判定する正常判定回路と、
前記第1制限指示回路からの指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから前記第2所定時間が経過するまで前記測定回路により測定された電流実効値が継続して前記しきい値以下であることに応答して、前記カウント変数の値をカウントアップし、前記カウント変数の値が所定範囲内であれば、前記分散型電源ユニットから前記交流電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示する第2制限指示回路と、
前記カウント変数の値が前記所定範囲外であることに応答して、前記センサ異常判定する異常判定回路とを含む、分散型電源ユニット。
【請求項6】
前記所定量は、前記分散型電源ユニットから前記交流電路への供給電力に対する一定割合の電力量である、請求項に記載の分散型電源ユニット。
【請求項7】
系統電力と負荷とに接続された交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常を検出するためのセンサ異常検出方法であって、前記電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、前記センサは、前記系統電力と、前記電路への前記負荷の接続点との間であって、さらに前記分散型電源ユニットと前記電路との接続点と前記系統電力との間において前記電路に装着され、さらに、前記分散型電源ユニットには、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力がその直前の供給電力より所定量だけ減少するよう、前記分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路が設けられ、
前記センサの出力の電流実効値を繰り返し測定するステップと、
記測定するステップにおいて測定された前記センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下となる状態が継続して第1所定時間が経過したことに応答して、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示し、かつ所定のカウント変数の値を初期化する第1制指示ステップと、
前記第1制限指示ステップにおける指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから第2所定時間が経過するまで、前記測定するステップにおいて測定された電流実効値が前記しきい値以下ではなくなったことに応答して、前記センサが正常と判定する正常判定ステップと、
前記第1制限指示ステップにおける指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから前記第2所定時間が経過するまで前記測定するステップにおいて測定された電流実効値が継続して前記しきい値以下であることに応答して、前記カウント変数の値をカウントアップし、前記カウント変数の値が所定範囲内であれば、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示する第2制限指示ステップと、
前記カウント変数の値が前記所定範囲外であることに応答して、前記センサ異常判定する異常判定ステップとを含む、センサ異常検出方法。
【請求項8】
系統電力と負荷とに接続された交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常をコンピュータにより検出するためのセンサ異常検出方法であって、前記電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、前記センサは、前記系統電力と、前記電路への前記負荷の接続点との間であって、さらに前記分散型電源ユニットと前記電路との接続点と前記系統電力との間において前記電路に装着され、前記分散型電源ユニットには、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力がその直前の供給電力より所定量だけ減少するよう、前記分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路が設けられ、
コンピュータが、前記センサの出力の電流実効値を繰り返し測定するステップと、
コンピュータが、前記測定するステップにおいて測定された前記センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下となる状態が継続して第1所定時間が経過したことに応答して、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力がその直前の供給電力より前記所定量だけ減少するように前記制限回路に指示し、かつ所定のカウント変数の値を初期化する第1制限指示ステップと、
コンピュータが、前記第1制限指示ステップにおける指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから第2所定時間が経過するまで、前記測定するステップにおいて測定された電流実効値が前記しきい値以下ではなくなったことに応答して、前記センサが正常と判定する正常判定ステップと、
コンピュータが、前記第1制限指示ステップにおける指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから前記第2所定時間が経過するまで前記測定するステップにおいて測定された電流実効値が継続して前記しきい値以下であることに応答して、前記カウント変数の値をカウントアップし、前記カウント変数の値が所定範囲内であれば、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示する第2制限指示ステップと、
コンピュータが、前記カウント変数の値が前記所定範囲外であることに応答して、前記センサ異常判定する異常判定ステップとを含む、センサ異常検出方法。
【請求項9】
コンピュータに、
系統電力と負荷とに接続された交流電流が流れる電路に装着されたセンサの出力の電流実効値を繰り返し測定する測定ステップを実行させるコンピュータプログラムであって、前記電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、前記センサは、前記系統電力と、前記電路への前記負荷の接続点との間であって、さらに前記分散型電源ユニットと前記電路との接続点と前記系統電力との間において前記電路に装着され、さらに、前記分散型電源ユニットには、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力がその直前の供給電力より所定量だけ減少するよう、前記分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路が設けられ、
前記コンピュータプログラムはさらに、
前記測定ステップにおいて測定された前記センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下となる状態が継続して第1所定時間が経過したことに応答して、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示し、かつ所定のカウント変数の値を初期化する第制限指示ステップと、
前記第1制限指示ステップにおける指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから第2所定時間が経過するまで、前記測定ステップにおいて測定された電流実効値が前記しきい値以下ではなくなったことに応答して、前記センサが正常と判定する正常判定ステップと、
前記第1制限指示ステップにおける指示により前記分散型電源ユニットの出力が制限されてから前記第2所定時間が経過するまで前記測定するステップにおいて測定された電流実効値が継続して前記しきい値以下であることに応答して、前記カウント変数の値をカウントアップし、前記カウント変数の値が所定範囲内であれば、前記分散型電源ユニットから前記電路への供給電力をその直前の供給電力より前記所定量だけ減少させるように前記制限回路に指示する第2制限指示ステップと、
前記カウント変数の値が前記所定範囲外であることに応答して、前記センサ異常判定する異常判定ステップとを実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサ異常検出装置及び方法、分散型電源ユニット、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、太陽光発電装置、蓄電池等からなる分散型電源ユニットが普及しつつある。分散型電源ユニットは、系統から負荷への電路(ケーブル)に接続され、系統から負荷に供給される電力と負荷の大きさに応じて負荷に電力を供給する。分散型電源ユニットのこのような機能により、系統による送電ロスを削減できる。また系統からの電力供給低下時に分散型電源ユニットから負荷に電力を供給することにより、負荷に相当する機器の動作を正常に保つことができる。このように分散型電源ユニットを設置することにより利便性が向上するため、分散型電源ユニットの設置台数が増加している。
【0003】
このような分散型電源ユニットの発電電力が多くなり、負荷での消費電力を超えると余剰電力が生じる。この余剰電力は何もしないと系統に逆潮流することになる。しかし、系統の電力品質を確保するために、このような逆潮流は認められてないことが多い。そのため、逆潮流が生じるのを防止することが必要である。
【0004】
そのために、系統から負荷への電路に電流センサを設けることがよく行われる。この電流センサにより系統と負荷との間の電流を監視し、逆潮流が生じないように分散型電源ユニットを制御する。
【0005】
こうした電流センサとして、クランプ式電流センサが多く用いられている。クランプ式電流センサは巻線からなる計測線を有し、クランプにより巻線が電路を囲むようにクランプ式電流センサを電路に取付けることにより、その電路を流れる交流電流と計測線との相互インダクタンスによる結合で計測線に生じる電流を出力する。この電流の大きさを知ることにより、電路を流れる電流の大きさを知ることができる。
【0006】
こうしたクランプ式電流センサは、クランプにより電路に取付けるだけで電路に流れる電流の大きさを測定できる。そのため、一方では電流センサの設置及びメンテナンスが簡便に行える。他方、クランプ式電流センサは電路から脱落したり、取付けが不完全になったり、接続方向を誤ったりする危険性がある。こうした事態が発生すると、電路を流れる電流を正しく検出できない。電流を正しく検出できないと逆潮流等が生じる危険性が高まる。そのため、こうした問題は直ちに検出し適切な対応を行う必要がある。
【0007】
こうした問題を解決するための提案が後掲の特許文献1によりされている。特許文献1に開示された分散型電源ユニットは、分散型電源と、第1の電圧線に接続されるべき第1の電流センサと、第2の電圧線に接続されるべき第2の電流センサと、判定部とを含む。判定部は、第1及び第2の電流センサの接続予定位置と分散型電源の間の第1及び第2の電圧線に接続された電力負荷に、系統電源から所定の時間の電力供給を複数回行わせ、その結果に基づいて第1及び第2の電流センサの接続の有無、接続位置、及び接続方向の正誤を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-122819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示の技術は、分散型電源ユニットの内部電力負荷に通電を行い、通電前後の電流センサによる電流測定値の変化量によって電流センサの接続有無等を判定している。そのため、分散型電源ユニットに内部電力負荷とスイッチとを設けなければならない。分散型電源ユニットの部品が多くなるため、コストが高くなるという問題がある。
【0010】
したがってこの発明の目的は、より低いコストで電流センサの動作が正常か異常かを高精度に判定できるセンサ異常検出装置及び方法、分散型電源ユニット、並びにコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の第1の局面に係るセンサ異常検出装置は、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常を検出するためのセンサ異常検出装置であって、電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、センサの出力の電流実効値を測定する測定回路と、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路と、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する判定回路とを含む。
【0012】
この発明の第2の局面に係る分散型電源ユニットは、単相3線式の交流電路に接続された分散型電源ユニットであって、単相3線式の交流電路は、中性線と、第1の電路及び第2の電路とを含み、第1の電路には、当該第1の電路に流れる交流電流の大きさに応じた電流を出力するセンサが取付けられ、直流電源と、直流電源と交流電路との間に設けられた電力変換装置と、センサの出力に基づいて、センサにセンサ異常が発生したか否かを判定するセンサ異常検出装置と、センサ異常検出装置がセンサ異常の発生を検知していないときに、センサの出力に基づいて電力変換装置を制御し、直流電力と交流電力との間で電力変換を行わせるための制御回路と、センサ異常検出装置がセンサ異常の発生を検知したことに応答し、センサ異常時の処理を実行するための異常処理回路とを含み、センサ異常検出装置は、センサの出力の電流実効値を測定する測定回路と、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路と、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する判定回路とを含む。
【0013】
この発明の第3の局面に係るセンサ異常検出方法は、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常を検出するためのセンサ異常検出方法であって、電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、センサの出力の電流実効値を測定するステップと、測定ステップにおいて測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限するステップと、制限するステップによる分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定するステップとを含む。
【0014】
この発明の第4の局面に係るセンサ異常検出方法は、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常をコンピュータにより検出するためのセンサ異常検出方法であって、電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、コンピュータが、センサの出力の電流実効値を測定するステップと、コンピュータが、測定ステップにおいて測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限するステップと、コンピュータが、制限するステップによる分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定するステップとを含む。
【0015】
この発明の第5の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの出力の電流実効値を測定する測定ステップと、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する制限ステップと、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する判定ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、より低いコストで電流センサの動作が正常か異常かを高精度に判定できるセンサ異常検出装置及び方法、分散型電源ユニット、並びにコンピュータプログラムを提供できる。
【0017】
この発明のその他の目的、構成及びその効果は、添付の図面と以下の発明の詳細な説明とにより明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、CTセンサがどのように電路を流れる電流を検知するかを示す概略構成図である。
図2図2は、CTセンサを電路に取り付ける第1の手順を説明する図である。
図3図3は、CTセンサを電路に取り付ける第2の手順を説明する図である。
図4図4は、CTセンサを電路に取り付ける第3の手順を説明する図である。
図5図5は、分散型電源ユニットの1例である蓄電システムとCTセンサを単相3線の電路に接続した状態を示す模式図である。
図6図6は、CTセンサが電路から脱落するという異常が発生した場合のCTセンサの出力電流の一例を示すグラフである。
図7図7は、CTセンサが電路から脱落していないにもかかわらず異常が誤って検出される条件を説明するグラフである。
図8図8は、図7の条件におけるCTセンサの出力例を示すグラフである。
図9図9は、この発明の実施の形態に係る分散型電源ユニットである蓄電システムの構成を示すブロック図である。
図10図10は、この発明の実施の形態に係るCTセンサの異常検出方法をコンピュータで実現するためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図11図11は、図9に示す蓄電システムの通常の動作を説明するための模式図である。
図12図12は、図9に示す蓄電システムの動作を説明するための模式図である。
図13図13は、図9に示す蓄電システムにおいてCTセンサの異常の誤検出を防止する方法を示すグラフである。
図14図14は、図9に示す蓄電システムの動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組合せても良い。
【0020】
[この発明の実施の形態の説明]
この発明の第1の局面に係るセンサ異常検出装置は、系統からの交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常を検出するためのセンサ異常検出装置であって、電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、センサの出力の電流実効値を測定する測定回路と、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路と、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する判定回路とを含む。
【0021】
分散型電源ユニットの出力を制限することにより、負荷に系統から買電する電力が増加し、電路に流れる電流が増加する。この電流の増加をセンサが検出できるか否かによってセンサの異常を検出する。センサの異常を検出するための固有の負荷を設けたり、供給電力を外部負荷から内部負荷に切替えるためのスイッチを設けたりする必要はない。そのため、シンプルな構成で余計なコストをかけずに誤判定のおそれの小さなセンサの異常検出が行える。
【0022】
好ましくは、制限回路は、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が、第1の所定時間以上継続的にしきい値以下になったことを検出する検出回路と、センサの出力の電流実効値が、第1の所定時間以上継続的にしきい値以下になったことが検出回路により検出されたことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する回路とを含む。
【0023】
分散型電源ユニットから電路への供給電力が減少すると、負荷の消費電力を補うために、系統から電力が供給される。そのため、その直前に電路に流れる電流がゼロでありセンサ出力が検出できなかった場合には、電路に電流が流れることになる。この電流をセンサが検知できるか否かでセンサに異常があるか否かを判定できる。
【0024】
より好ましくは、判定回路は、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第2の所定時間が経過した後に、測定回路により測定された電流実効値が継続的にしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する継続判定回路を含む。
【0025】
第2の所定時間が経過しても電路を流れる電流をセンサが検知できなければセンサに異常があったと判定できる。逆に電流をセンサが検知できればセンサは正常であると判定できる。
【0026】
さらに好ましくは、センサ異常検出装置は、さらに、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第2の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下であると判定回路が判定したことに応答して、分散型電源ユニットを停止するための停止装置を含む。
【0027】
センサの異常が検出されたときには分散型電源ユニットを停止できるので、逆潮流等が発生することを防止できる。
【0028】
好ましくは、センサ異常検出装置は、さらに、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第2の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値を超えたと判定回路が判定したことに応答して、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限を解除して分散型電源ユニットを通常の状態に復帰させるための解除装置を含む。
【0029】
第2の所定時間後に、電流実効値がしきい値を超えた場合にはセンサには異常がないと判定できる。したがって分散型電源ユニットを通常の状態に復帰させることができる。
【0030】
より好ましくは、センサ異常検出装置は、さらに、解除装置による分散型電源ユニットの出力の制限の解除後、制限回路の動作を第3の所定時間だけ禁止する禁止回路を含む。
【0031】
分散型電源ユニットを通常の状態に復帰させた直後から、センサ異常の検出のための処理を開始すると、条件によっては分散型電源ユニットの出力が不安定となる恐れがある。そこで、分散型電源ユニットが通常の状態に復帰した後、第3の所定時間だけ、分散型電源ユニットの出力の制限を行わないようにする。その結果、分散型電源ユニットの出力が不安定になることが防止できる。
【0032】
この発明の第2の局面に係る分散型電源ユニットは、単相3線式の交流電路に接続された分散型電源ユニットであって、単相3線式の交流電路は、中性線と、第1の電路及び第2の電路とを含み、第1の電路には、当該第1の電路に流れる交流電流の大きさに応じた電流を出力するセンサが取付けられ、直流電源と、直流電源と交流電路との間に設けられた電力変換装置と、センサの出力に基づいて、センサにセンサ異常が発生したか否かを判定するセンサ異常検出装置と、センサ異常検出装置がセンサ異常の発生を検知していないときに、センサの出力に基づいて電力変換装置を制御し、直流電源と交流電路上の交流電力との間で電力変換を行わせるための制御回路と、センサ異常検出装置がセンサ異常の発生を検知したことに応答し、センサ異常時の処理を実行するための異常処理回路とを含み、センサ異常検出装置は、センサの出力の電流実効値を測定する測定回路と、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する制限回路と、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する判定回路とを含む。
【0033】
分散型電源ユニットの出力を制限することにより、負荷に系統から買電する電力が増加し、電路に流れる電流が増加する。この電流の増加をセンサが検出できるか否かによってセンサの異常を検出する。センサの異常を検出するための固有の負荷を設けたり、供給電力を外部負荷から内部負荷に切替えるためのスイッチを設けたりする必要はない。そのため、シンプルな構成で余計なコストをかけずに誤判定のおそれの小さなセンサの異常検出が行える。
【0034】
好ましくは、所定量は、分散型電源ユニットから電路への供給電力に対する一定割合の電力量である。
【0035】
一定割合の電力量を削減することで、電力量の減少量を簡単に決定できる。
【0036】
この発明の第3の局面に係るセンサ異常検出方法は、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常を検出するためのセンサ異常検出方法であって、電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、センサの出力の電流実効値を測定するステップと、測定ステップにおいて測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限するステップと、制限するステップによる分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定するステップとを含む。
【0037】
分散型電源ユニットの出力を制限することにより、負荷に系統から買電する電力が増加し、電路に流れる電流が増加する。この電流の増加をセンサが検出できるか否かによってセンサの異常を検出する。センサの異常を検出するための固有の負荷を設けたり、供給電力を外部負荷から内部負荷に切替えるためのスイッチを設けたりする必要はない。そのため、シンプルな構成で余計なコストをかけずに誤判定のおそれの小さなセンサの異常検出が行える。
【0038】
好ましくは、センサ異常検出方法は、判定するステップにおける判定が肯定であることに応答して、制限するステップと判定するステップとを少なくとも1回繰返すステップをさらに含む。
【0039】
電力を所定量だけ減少させたときに、同時に負荷が減少するとセンサ異常を誤検出する危険性がある。制限するステップと判定するステップとを少なくとも1回繰返すことで、誤検出の危険性を小さくできる。
【0040】
この発明の第4の局面に係るセンサ異常検出方法は、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの異常をコンピュータにより検出するためのセンサ異常検出方法であって、電路に接続される所定の分散型電源ユニットの制御に用いられ、コンピュータが、センサの出力の電流実効値を測定するステップと、コンピュータが、測定ステップにおいて測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限するステップと、コンピュータが、制限するステップによる分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定するステップとを含む。
【0041】
分散型電源ユニットの出力を制限することにより、負荷に系統から買電する電力が増加し、電路に流れる電流が増加する。この電流の増加をセンサが検出できるか否かによってセンサの異常を検出する。センサの異常を検出するための固有の負荷を設けたり、供給電力を外部負荷から内部負荷に切替えるためのスイッチを設けたりする必要はない。そのため、シンプルな構成で余計なコストをかけずに誤判定のおそれの小さなセンサの異常検出が行える。
【0042】
この発明の第5の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、交流電流が流れる電路に装着されたセンサの出力の電流実効値を測定する測定ステップと、測定回路により測定された、センサの出力の電流実効値が所定のしきい値以下になったことに応答して、分散型電源ユニットから電路への供給電力が所定量だけ減少するよう、分散型電源ユニットの出力を制限する制限ステップと、制限回路による分散型電源ユニットの出力の制限から第1の所定時間が経過した後に測定回路により測定された電流実効値がしきい値以下か否かによりセンサの異常の有無を判定する判定ステップとを実行させる。
【0043】
分散型電源ユニットの出力を制限することにより、負荷に系統から買電する電力が増加し、電路に流れる電流が増加する。この電流の増加をセンサが検出できるか否かによってセンサの異常を検出する。センサの異常を検出するための固有の負荷を設けたり、供給電力を外部負荷から内部負荷に切替えるためのスイッチを設けたりする必要はない。そのため、シンプルな構成で余計なコストをかけずに誤判定のおそれの小さなセンサの異常検出が行える。
【0044】
〔この発明の実施の形態の詳細〕
<構成>
以下に説明する実施の形態は、単相三線式の分散型電源ユニットを例としたものである。またこの例では、センサの1例としてCTセンサを用いる。
【0045】
図1を参照して、CTセンサ50は、ドーナツ型のコア54と、コア54の周りに巻回された巻線56とを含む。交流電流が流れる電路52がコア54の中央を通るようにCTセンサ50を電路52に取付けると、電路52を流れる電流の大きさに応じた磁束が発生し、巻線56に巻数比に応じた大きさの交流電流が流れる。この電流をシャント抵抗58に流すと、その両端に電圧Voutが発生する。系統連携型の蓄電システム及び太陽光パワーコンディショナ等の、電力変換を行う分散型電源ユニットは、この電圧Voutを計装回路に入力することで、系統に流れる交流電流値を測定する。
【0046】
シャント抵抗58の両端の間に発生する電圧Voutは、以下の式で求められる。
【0047】
Vout=結合係数×2次電流×シャント抵抗÷巻数
結合係数は励磁電流、漏れ磁束、透磁率の変化等のCTセンサの結合度に関する要素で、理想のCTセンサでは結合係数は1となる。
【0048】
図2を参照して、より具体的には、CTセンサ50は、上部にコア54の下半分となるコア部品82が埋込まれた樹脂筐体84と、樹脂筐体84の上面の一辺に取付けられた軸86と、樹脂筐体84の上面を塞ぐ位置と、開放する位置との間で軸86の周りを限定された角度で回転可能となるように軸86に取付けられた樹脂製の上部筐体88とを含む。上部筐体88の下面には、コア54の上半分となるコア部品80が埋込まれている。
【0049】
図2に示すように上部筐体88を樹脂筐体84から離した状態で電路52がコア部品82内に位置するようにCTセンサ50を電路52に取付け、図3に示すように上部筐体88が樹脂筐体84の上面を覆うようにする。さらに図4に示すように上部筐体88の上部に設けられたバネ90及び92を用いた付勢力によりコア部品80とコア部品82とを密着させると、CTセンサ50が電路52にしっかりと取付けられ、コア部品80とコア部品82とにより図1に示すコア54が形成される。
【0050】
図5を参照して、蓄電システムを含む例示的な構成では、中性線134と、L1線132及びL2線136とを持つ単相三線式の系統130に対して蓄電システム138が電力供給を行う。中性線134とL1線132との間には電路154及び電路156によりL1側負荷140が接続され、中性線134とL2線136との間には電路158及び電路160によりL2側負荷142が接続されている。従来の蓄電システム138は、電路148によりL1線132に接続され、電路150により中性線134に接続され、電路152によりL2線136に接続されている。蓄電システム138はさらに、L1線132に取付けられたL1側CTセンサ144と、L2線136に取付けられたL2側CTセンサ146とに接続されている。蓄電システム138は、L1側CTセンサ144及びL2側CTセンサ146の出力によりL1線132及びL2線136を流れる交流電流の大きさを測定し、その値がシステム全体の目指す目標値に合致するように蓄電システム138の内部を制御する。
【0051】
ところで、例えばL2側CTセンサ146の出力が図6に示すように変化したものとする。すなわち、時刻tまではL1線132を流れる電流実効値200が所定のしきい値より高い値となっていた(図6に示す領域202)ものとする。この後、時刻tでこの電流実効値がしきい値以下となり、その後CTセンサの異常判定を行う判定期間が経過した時刻tまでの間(図6の領域204)、継続してしきい値を下回ったものとする。すると、蓄電システム138は、時刻tにおいてCTセンサに何らかの異常(例えばCTセンサの電路からの脱落、又はCTセンサの巻線の断線)が発生したものと判定する。
【0052】
しかし、図6に示す電流実効値200の変化はCTセンサの異常のときだけではなく、他の特定の条件が成立したときにも生ずる。そのような場合にCTセンサに異常が発生したと判定すると、CTセンサに関する異常の判定の誤りとなる。
【0053】
図7は、図5に示す構成において、従来の蓄電システム138に代えてこの発明の実施の形態に係る分散型電源ユニットの1例としての蓄電システム280を採用した図を示す。図7を参照して、例えばL1側負荷140の大きさが3000W、L2側負荷142の大きさが2000Wとする。また蓄電システム280の最大出力定格が4000Wであるものとする。すると、蓄電システム280は、L1側負荷140とL2側負荷142との双方に対して最大出力を供給する。この実施の形態のように二線で制御する蓄電システム280の場合、L1線132及びL2線136への出力を別々に制御することはできないので、電路148を介してL1側負荷140に20A、電路152を介してL2側負荷142に20Aを、それぞれ供給する。L1側負荷140は30Aを必要とするので、10Aだけ不足する。この10Aは系統130から購入することになる。一方、L2側負荷142においては、必要な20Aが全て蓄電システム280から供給されるため、系統130から購入する電力は0となり、L2線136を流れる電流は0となる。
【0054】
このとき、L2側CTセンサ146の出力により蓄電システム280がL2線136を流れる電流実効値を計算すると、その電流実効値240は、図8に示すように、図6に示す電流実効値200と同様の変化を示すであろう。つまり、時刻tまでの領域242ではしきい値より大きかった電流実効値が、時刻tでしきい値を下回る。そのままこの状態が領域244により示されるように判定期間だけ継続すると、従来の技術では時刻tでL2側CTセンサ146に何らかの異常が生じたと誤って判定することになる。しかし、この実施の形態の蓄電システム280では以下のような構成及び動作によりそうした判定の誤りを防止する。
【0055】
図9に、蓄電システム280の概略構成を示す。図9を参照して、蓄電システム280は、蓄電池300と、蓄電池300の両端子の間に接続されたコンデンサ302と、蓄電池300のプラス端子に一端が接続された直流リアクトル304と、直流リアクトル304の他端と蓄電池300のマイナス側端子とに接続されたDCDCコンバータ306と、DCDCコンバータ306の他方の高圧側端子及び低圧側端子が接続されたDCバス308と、DCバス308の間に接続された中間コンデンサ330とを含む。
【0056】
蓄電システム280はさらに、DCバス308に直流側が接続されたインバータ307と、インバータ307の交流側に接続された交流リアクトル328と、交流リアクトル328の系統側に接続された交流側コンデンサ332と、交流側コンデンサ332のさらに交流側で交流リアクトル328に接続されたコモンモードチョークコイル334と、コモンモードチョークコイル334の交流側に接続されたコンデンサ336と、コモンモードチョークコイル334の交流側を系統側から遮断するための遮断スイッチ310とを含む。
【0057】
蓄電システム280はさらに、遮断スイッチ310の一端と系統側との間に設けられたヒューズ312と、ヒューズ312の他端と遮断スイッチ310の他の一端との間に直列に接続されたヒューズ314及びバリスタ316とを含む。ヒューズ314及びヒューズ312の接点は系統のL1線に接続される。バリスタ316の他端は系統のL2線に接続される。
【0058】
蓄電システム280はさらに、この回路の各部の電流及び電圧を測定し、測定信号を出力するセンサ350、352、354、356、358、360と、これら測定信号に基づき、DCDCコンバータ306及びインバータ307に含まれる複数のトランジスタのオン・オフを制御するゲート制御信号と、遮断スイッチ310を制御するスイッチ制御信号とを出力するための制御回路320とを含む。
【0059】
DCDCコンバータ306は、互いに接続された高圧側トランジスタQ1及び低圧側トランジスタQ2と、高圧側トランジスタQ1及び低圧側トランジスタQ2に対してそれぞれ逆並列接続された2つのダイオードとを含む。高圧側トランジスタQ1及び低圧側トランジスタQ2の接点には直流リアクトル304の一方端が接続される。
【0060】
インバータ307は、4つのフルブリッジ接続されたトランジスタQ3、Q4、Q5、及びQ6と、これらトランジスタに対してそれぞれ逆並列接続された4つのダイオードとを含む。
【0061】
トランジスタQ3及びQ4の接点は交流リアクトル328の直流側の一端に接続され、トランジスタQ5及びQ6の接点は交流リアクトル328の直流側の他端に接続されている。
【0062】
制御回路320はマイクロコンピュータ及び図示しない記憶装置を含み、図示しないA/D変換回路及びD/A変換回路を搭載している。制御回路320が実行する制御用プログラムはこの記憶装置に記憶されている。このプログラムは、各種センサの測定信号をA/D変換して所定の演算処理を実行し、その結果得られたデータに基づいて各トランジスタQ1~Q6のオン・オフを決定するデジタル信号を出力する。その信号は図示しないD/A変換回路でゲート制御用のアナログ信号に変換され、各トランジスタに与えられる。
【0063】
以下、制御回路320が実行するプログラムの制御構造について説明する。以下の説明は、図5に示すL2線136の電流値を測定するためのL2側CTセンサ146の異常の有無を判定するためのものである。L1線132の電流値を測定するためのL1側CTセンサ144の異常の有無の判定プログラムも同様に構成され、このプログラムと並列に実行される。
【0064】
図10を参照して、制御回路320が実行するプログラムは、プログラムの実行開始後、メモリ上の記憶領域の確保、入出力バッファのクリア、自己診断、及び必要な設定データの読出等の初期設定を行うステップ450と、前述したとおり、各種センサの測定信号と、目標値とにしたがって各トランジスタのオン及びオフを制御して充放電動作を行うステップ452とを含む。
【0065】
なお、以下の制御では第1、第2、第3及び第4の変数を使用する。第1の変数はL2線136の電流実効値がしきい値以下となってからの時間を計測するためのものである。この時間が所定のしきい値以上となった場合、この実施の形態では蓄電システム280からの出力を所定量だけ減少させる。第2の変数は、蓄電システム280の放電電力を減少させてからの経過時間を計測するためのものである。所定の経過時間が過ぎてもL2側CTセンサ146の出力に変化が見られないときにはCTセンサが脱落したものと一応の判定をし、所定の経過時間が過ぎるまでにL2側CTセンサ146の出力がしきい値を超えればCTセンサの脱落はなかったものとみなし、蓄電システム280の放電電力の減少を中止する。第3の変数は、放電電力の中止からの経過時間を計測するためのものである。放電電力の減少の中止後、すぐに通常の処理を開始すると、蓄電システム280の出力が不安定となる危険性がある。そこで、蓄電システム280の放電電力の減少の中止後、一定時間が経過するまでは上に記載したようなL2側CTセンサ146の異常判定のための蓄電システム280の電力の減少等は禁止される。第4の変数は、第2の変数を用いてCTセンサが脱落したものという一応の判定が何回行われたかを計数するためのものである。この第4の変数が所定の上限以上となったときに、CTセンサの脱落があったとの最終判定が行われる。
【0066】
このプログラムはさらに、ステップ452の後、第3の変数の値が0か否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ454と、ステップ454の判定が否定のときに、第3の変数の値を1だけカウントダウンして制御をステップ452に戻すステップ456と、ステップ454の判定が肯定のときに、L2側CTセンサ146のCTセンサ電流が所定のしきい値以下か否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ458と、ステップ458の判定が否定のときに、第1の変数の値を0にリセットして制御をステップ452に戻すステップ460とを含む。ステップ456における判定が否定となるのは、通常状態に復帰した後所定時間が経過するまでとなる。すなわち、この間はL2側CTセンサ146に関する異常判定は禁止される。所定時間が経過するとステップ456における判定が肯定となり、異常判定の禁止が解除される。
【0067】
このプログラムはさらに、ステップ458の判定が肯定のときに、第1の変数の値を1だけカウントアップするステップ462と、ステップ462に続き、第1の変数のカウント値が一定値以上か否かにしたがって制御の流れを分岐させるステップ464とを含む。ステップ464の判定が否定のときには制御はステップ452に戻る。
【0068】
このプログラムはさらに、ステップ464の判定が肯定のときに、第4の変数を0にリセットするステップ465と、蓄電システム280の放電電力Pを制限し、予め定めたΔP[W](例えばΔP=0.1×P)だけ減少させるステップ466と、ステップ466に続き、L2側CTセンサ146の電流実効値がしきい値以下か否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ468と、ステップ468での判定が否定であるときに、第1及び第2の変数の値をいずれもリセットし、放電電力を元の値に戻すステップ470と、ステップ470に続き、第3の変数に所定の値を代入し、制御をステップ452に戻すステップ472とを含む。ステップ470の処理により、放電電力の制限が解除される。なお、L2側CTセンサ146に異常が発生しているか否かを判定するためには、原理的には蓄電システム280の出力を増加させてもよい。しかしその場合には蓄電システム280から出力された電力が系統に逆潮流する可能性が生じ、好ましくない。そこで、少なくとも系統に接続されている蓄電システム280でこの実施の形態と同様の処理を実施するためには、蓄電システム280の出力を一時的に制限する方法を取る方が好ましい。
【0069】
このプログラムはさらに、ステップ468の判定が肯定のときに、蓄電システム280の放電電力がほぼ0となっているか否かを判定し、制御の流れを分岐させるステップ473と、ステップ473の判定が否定のときに、第2の変数の値を1だけカウントアップするステップ474と、ステップ472に続き、第2の変数のカウント値が一定値以上となったか否かを判定し、判定が否定のときに制御をステップ468に戻すステップ476と、ステップ476における判定が肯定のときに、第4の変数をカウントアップするステップ477と、ステップ477でカウントアップした第4の変数値が上限以上のときに制御をステップ466に戻すステップ478とを含む。ステップ478の判定が肯定のときには制御はステップ480に進み、L2側CTセンサ146がL2線136から脱落したと最終判定し、CTセンサの異常検出時の処理(蓄電システム280の運転停止。異常を報知)を行う。なお、ステップ473の判定が肯定のときには、ステップ47の処理をせず制御はステップ476に直接進む。
【0070】
なお、このプログラムの実行の停止は、蓄電システム280に設けられた図示しない運転停止ボタンの操作により発生した割込に応答して実行する割込処理、何らかの制御の停止を伴う異常の発生、及び停電の発生等に応答して行われる。また、ステップ465からステップ478の処理を、放電電力をΔP[W]だけ減少させながら繰返すのは、ステップ466の処理を行ったときにたまたま負荷の大きさが同じ大きさだけ減少したときに、CTセンサの異常を誤検出する可能性があるためである。ステップ465からステップ478の処理を(ステップ468の判定が肯定である限り)第4の変数のカウント値が上限回数に達するまで繰返すことにより、そうした誤検出を行う危険性を小さくできる。これらステップを1回繰返すだけでも誤検出の危険性を大きく減ずることができる。なお、第4の変数のカウント値の上限は任意の値とすることができる。さらに、稀な例だと考えられるが、ステップ473で放電電力がほぼ0となったときには、第2の変数のカウントアップを停止する必要があるため、ステップ474の処理をスキップする。
【0071】
<動作>
上記した蓄電システム280は以下のように動作する。なお、以下の説明はL2側CTセンサ146に関するものだけに関するが、L1側CTセンサ144に関しても同じ処理が並列して実行される。
【0072】
図11を参照して、通常の状態ではL1側CTセンサ144及びL2側CTセンサ146は、それぞれL1線132及びL2線136に流れる電流に応じたCTセンサ電流を蓄電システム280に入力する。この電流(アナログ信号)は蓄電システム280内で図示しないA/D変換回路によりA/D変換され、図9に示す制御回路320に入力される。制御回路320にはこれ以外にも、各種センサ350、352、354、356、358、及び360からの入力がA/D変換して入力される。
【0073】
制御回路320は、これらの値と予め設定された目標買電電力値に応じて、買電電力が目標値を上回らないように、かつ蓄電システム280からの出力電力でL1側負荷140及びL2側負荷142の消費電力を賄うように、かつ逆潮流が発生しないように、図9に示すDCDCコンバータ306及びインバータ307を制御する。
【0074】
例えば、図11に示す例では、蓄電システム280が最大出力定格4000Wの出力を行っているものとする。この場合、蓄電システム280からL1線132及びL2線136の双方に20Aが出力されそれぞれL1側負荷140及びL2側負荷142に供給される。L1側負荷140及びL2側負荷142の大きさはいずれも3000Wであるものとすれば、20Aでは不足する。不足した電力を補うために、系統から20Aが買電され、L1線132を介してL1側負荷140に10Aが、L2線136を介してL2側負荷142に10Aが、それぞれ供給される。
【0075】
この場合、センサ異常の検出のためのプログラムは、図10のフローチャートを参照して、異常が発生していない状態ではステップ452→454→458→460→452という動作を繰返している。なお、制御回路320によるDCDCコンバータ306及びインバータ307の制御はステップ452で行われる。この制御の内容はこの発明と直接は関係しないのでここでは詳細は説明しない。
【0076】
一方、例えば図7に示したように、L1側負荷140の負荷が3000W、L2側負荷142の負荷が2000Wとなったものとする。この場合も蓄電システム280は最大出力定格の4000Wを出力する。すなわち、蓄電システム280はL1線132を介して20Aの電流をL1側負荷140に与え、L2線136を介して同じく20Aの電流をL2側負荷142に与える。すると、前述したとおり、L1線132にはL1側負荷140への電力不足分を補うために買電電力により系統から10Aが流れる。一方、L2側負荷142が必要とする電力は蓄電システム280からの20Aにより全て賄われるため、L2線136に系統から流れる電力は0Aとなる。
【0077】
この実施の形態に係る蓄電システム280では、この場合に以下のような制御が実行される。こうした状況ではL2側CTセンサ146の出力電流の実効値が小さくなり、しきい値を下回る。図10を参照して、この場合にはステップ458の判定が肯定となり、ステップ462で第1の変数がカウントアップされる。第1の変数はステップ450で0に初期設定されるので、最初に上に述べた状況が生じたときには第1の変数の値は1となる。続くステップ464で第1の変数のカウント値が一定値以上か否かが判定される。この一定値としては、0.1秒から0.5秒程度の経過時間に相当する値が用いられる。第1の変数の値がこの値と比較して小さい間、制御はステップ464→452→454→458→462→464という経路を繰返して通る。途中でL2側CTセンサ146の出力電流の実効値がしきい値を上回ればステップ458の判定が否定となり、ステップ460で第1の変数がリセットされ、蓄電システム280は通常の動作に戻る。一定時間の間、L2側CTセンサ146の出力電流の実効値が継続的にしきい値以下という状況が続くと、ステップ464の判定が肯定となり、ステップ465から後の処理が実行される。
【0078】
ステップ465で第4の変数が0にリセットされる。続くステップ466で蓄電システム280からの放電電力がΔP[W]だけ減少される。例えばΔPとして最大出力定格4000Wの1/10、すなわち400Wを採用したものとする。すると、蓄電システム280からは合計で3600Wが出力される。すなわち、蓄電システム280からL1線132を介してL1側負荷140に18A(1800W)が供給され、L2線136を介してL2側負荷142にも18A(1800W)が供給される。その結果、L1側負荷140への電力の不足分は1200Wとなり、系統から12A(1200W)だけの電力が買電される。L1線132には12Aの電流が流れる。一方、L2側負荷142に供給される電力には200Wの不足が生じる。不足分を補うため、系統から2A(200W)だけの電力が買電される。L2線136には2Aの電流が流れる。
【0079】
L2側CTセンサ146が正常であれば、この電流(2A)を検出するはずである。すなわち、図13を参照して、領域402(時刻tより前)ではL2側CTセンサ146の検出電流400がしきい値を超えていたものとし、時刻tにおいてL2側負荷142の負荷が減少したものとする。その結果、L2側CTセンサ146が出力する検出電流400がしきい値以下となる。その時点を時刻tとする。蓄電システム280からの放電電力を減少する前の期間A(図13の領域404)では検出電流400はしきい値以下となっていたものとして、一定期間が経過した後に蓄電システム280からの放電電力を減少させると、L2線136に流れる電流が増加し、もしもL2側CTセンサ146が正常であれば、その出力する検出電流400の実効値はある時点でしきい値を超えるはずである。逆にL2側CTセンサ146の出力する検出電流400が変化せず、しきい値以下であればL2側CTセンサ146に何らかの異常が起こったものと判定できる。
【0080】
再び図10を参照して、L2側CTセンサ146が正常であれば、ステップ466の後、制御はステップ468→473→474→476→468の処理を何回か繰返した後、ステップ468での判定が肯定となり、ステップ470に進む。以下、ステップ470で第1及び第2の変数がリセットされ、放電電力が元に戻され、制御はステップ452に戻り、通常の動作に戻る。ただし、ステップ472で第3の変数に所定値がセットされ、ステップ452→454→ステップ456の処理が所定回繰返されるまではステップ458以下の処理が開始されない。これは、動作が通常モードに戻った後、直ちに既に述べたようなセンサ異常の検出処理を開始すると、蓄電システム280の出力が不安定になる可能性があるためである。そのため、図13の期間B(領域406)の間はセンサ異常の検出処理を行わないようにしている。期間Bが経過すれば、蓄電システム280は完全に通常の動作モードに戻る。
【0081】
図10を参照して、一定期間が経過してもL2側CTセンサ146の検出電流400が継続してしきい値以下であれば、L2側CTセンサ146には何らかの異常が発生したと一応の判定がされ、ステップ476の判定が肯定となる。制御はステップ477に進み、第4の変数がカウントアップされる。続くステップ478で第4の変数のカウント値が所定の上限以上か否かが判定される。第4の変数の値が上限以上でなければ(ステップ478の判定が否定なら)、制御はステップ466に戻り、蓄電システム280の放電電力をさらにΔP[W]だけ減少させ、上記した処理が繰返される。こうした処理が繰返された結果、ステップ478の判定が肯定なら、ステップ480のCT脱落の検出時の処理が実行される。
【0082】
CTセンサに異常がなく、負荷の値にも変動がなければ、ステップ466~476の処理が何回か繰返された後にステップ468の判定が否定になり、通常の処理に戻る。負荷の値が、ステップ466と同じタイミングで減少した場合には、ステップ466~476の処理が一定回数繰返されてもステップ468の判定が肯定とならず、ステップ476の判定が最終的に肯定となってCTセンサが異常であるという一応の判定がされる危険性がある。この実施の形態では、この危険性に対処するために、第4の変数を用いて、ステップ466~ステップ478の処理を所定の上限回数まで繰返すことにしている。CTセンサに異常がなければ、蓄電システム280の放電電力を何回か減少させたとき、途中でステップ468の判定が否定となる確率が高い。したがってこの場合には正常の動作に戻る。CTセンサに異常があれば、上記した処理を繰返してもステップ468の判定が肯定のままである確率が非常に高い。そこで、ステップ478の判定が肯定となったときには最終的にCTセンサに異常が発生したと判定できる。
【0083】
こうした異常の典型的なものは、図14に示すような、L2側CTセンサ146がL2線136からの脱落である。L2側CTセンサ146がL2線136から脱落していると、L2側CTセンサ146はL2線136を流れる電流(例えば2A)を検出できない。そのためL2側CTセンサ146の出力する検出電流400の実効値はしきい値以下となり、蓄電システム280は動作を停止する。
【0084】
なお、図10のステップ466において蓄電システム280の出力を減少させる処理は、例えばリミッタにより行えばよい。また、蓄電システム280のように系統電力に接続されたシステムの場合には、目標買電電力値を高く設定することによっても同様の効果が得られる。
【0085】
図13の期間Aにおいて負荷の値が大きく変動したときには、L2側CTセンサ146が正常であればその検出電流400も変化し、ステップ468の判定が否定になって、所定時間が経過する前に通常の動作に戻ることができる。
【0086】
以上のようにこの発明によれば、蓄電システムのような分散型電源ユニットの出力と負荷の消費電力とに一定の関係が成立したときに、誤ってCTセンサが異常であると判定することが防止できる。分散型電源ユニットの稼働状態を適切に判断し、好ましい状態での稼働を維持することが可能になる。このとき、分散型電源ユニット内にCTセンサ異常を検出するための固有の負荷を設けたり、供給電力を外部負荷から内部負荷に切替えるためのスイッチを設けたりする必要はない。そのため、シンプルな構成で余計なコストをかけずに誤判定のおそれの小さなCTセンサの異常検出を行うことができる。
【0087】
なお図10のステップ466で蓄電システムの出力を減少させる際の減少量ΔP[W]は、定まった大きさとしてもよいが、現在の放電電力に対する所定割合とすることが一般的だと考えられる。例えば現在の放電電力の10%、20%、30%、50%等の値を採用することができる。これらの値は設計時の考慮事項であって、CTセンサの誤検出が間違いなく検出できるような大きさであればよい。また、その場合でも、割合を一定とする必要はなく、減少割合が漸減するようにしてもよい。不都合がなければΔPの値が逆に漸増するようにしてもよい。典型的には、例えばステップ466を実行するときの蓄電システムの放電電力の一定割合(例えば10%)をΔPとすることができる。こうすれば、ステップ473の判定を行う場合の計算も簡単に行える。
【0088】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0089】
Q1 高圧側トランジスタ
Q2 低圧側トランジスタ
Q3、Q4、Q5、Q6 トランジスタ
50 CTセンサ
52、148、150、152、154、156、158、160 電路
54 コア
56 巻線
58 シャント抵抗
80、82 コア部品
84 樹脂筐体
86 軸
88 上部筐体
90、92 バネ
130 系統
132 L1線
134 中性線
136 L2線
138、280 蓄電システム
140 L1側負荷
142 L2側負荷
144 L1側CTセンサ
146 L2側CTセンサ
200、240、400 電流実効値
202、204、242、244、402、404、406 領域
300 蓄電池
302、336 コンデンサ
304 直流リアクトル
306 DCDCコンバータ
307 インバータ
308 DCバス
310 遮断スイッチ
312、314 ヒューズ
316 バリスタ
320 制御回路
328 交流リアクトル
330 中間コンデンサ
332 交流側コンデンサ
334 コモンモードチョークコイル
350、352、354、356、358、360 センサ
400 検出電流
450、452、454、456、458、460、462、464、465、466、468、470、472、473、474、476、477、478、480 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
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図14