(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】細胞培養不織布モジュール
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230516BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20230516BHJP
D04H 1/4291 20120101ALI20230516BHJP
【FI】
C12M3/00 A
D04H1/541
D04H1/4291
(21)【出願番号】P 2019009745
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018010111
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】大矢 修生
(72)【発明者】
【氏名】松林 昭博
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 あすみ
(72)【発明者】
【氏名】原田 崇司
(72)【発明者】
【氏名】矢代 弘文
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-506019(JP,A)
【文献】特開2005-006704(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121773(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/012415(WO,A1)
【文献】特開2014-074250(JP,A)
【文献】特開2014-061458(JP,A)
【文献】特開2007-007575(JP,A)
【文献】特開平04-063584(JP,A)
【文献】特開2009-297023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
D04H
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水化処理された不織布細胞培養部材と、
2以上の培地流出入口を有し、該細胞培養部材が収容されたケーシングと
を備えた細胞培養モジュールであって、ここで、
前記不織布は、20
重量%以上の芯鞘型複合繊維により構成される不織布であって、
不織布の目付は、1~50g/m
2であり、
芯鞘型複合繊維の芯部及び鞘部はポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点は芯部の重合体の融点よりも低く、及び鞘芯比率は90:10~10:90であり、
不織布は、細孔を有し;
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記細胞培養部材は、集約されて、
(ii)細胞培養部材は、折り畳まれて、
(iii)細胞培養部材は、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)細胞培養部材は、縄状に結ばれて、
収容されてい
て、
前記不織布が、芯鞘型複合繊維の繊度及び/又は鞘芯比率が異なる2種以上の芯鞘型複合繊維を含む、上記細胞培養モジュール。
【請求項2】
芯鞘型複合繊維の繊度が0.05~2.2デシテックス(dTex)である、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項3】
芯鞘型複合繊維同士は、熱融着により接触交点において結着部を形成する、請求項1又は2に記載の細胞培養モジュール。
【請求項4】
培地流出入口の径が、細胞の径よりも大きく、かつ、不織布が流出する径よりも小さい、請求項1~
3のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
【請求項5】
親水化処理が、フッ素ガス処理、常圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、コロナ処理、親水性単量体のグラフト重合処理、スルホン化処理、及び界面活性剤付与処理からなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
【請求項6】
不織布の平均
流量細孔
径が、0.01~100μmである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
【請求項7】
不織布の総膜厚が、5~500μmである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化処理された不織布細胞培養部材を有する細胞培養モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、治療やワクチンに用いられる酵素、ホルモン、抗体、サイトカイン、ウイルス(ウイルスタンパク質)等のタンパク質が培養細胞を用いて工業的に産生されている。しかし、こうしたタンパク質の生産技術は効率面に課題を抱えており、それが持続的かつ広範な供給が必須不可欠であるべきバイオ医薬品について、タイムリーな安定供給等に影響を及ぼす状況が生じていた。そのため、効率的かつ安定で迅速な生産方法の確立に向けて、高密度に細胞を培養する技術や、高効率連続生産法等のタンパク質の産生量を増大させるような革新的な技術が求められていた。
【0003】
タンパク質を産生させる細胞として、培養基材に接着する足場依存性の接着細胞が用いられることがある。こうした細胞は、足場依存的に増殖するため、シャーレ、プレート又はチャンバーの表面に接着させて培養する必要がある。従来、こうした接着細胞を大量に培養するためには、接着するための表面積を大きくする必要があった。ところが、培養面積を大きくするには、空間を必然的に増大させる必要があり、それが培養効率を低下させ、設備の煩雑化や膨大化を招く要因となっていた。
【0004】
培養空間を小さくしつつ、接着細胞を大量に培養する方法として、微小多孔を有する担体、特に、マイクロキャリアを用いた培養法が開発されている(例えば、特許文献1)。マイクロキャリアを用いた細胞培養系は、マイクロキャリアが互いに凝集しないようにするために十分に攪拌・拡散される必要がある。そのため、マイクロキャリアを分散させた培養液を十分に攪拌・拡散することができるだけの容積が必要となるため、培養できる細胞の密度には上限がある。また、マイクロキャリアと培養液とを分離するためには、細かな粒子を分別できるフィルターで分離させる必要があり、それがバイオ医薬品等のタンパク質やワクチン等の生産性を低下させる原因ともなっていた。こうした状況から、高密度の細胞を培養する革新的な細胞培養の方法論が希求されていた。
【0005】
従来、付着性培養細胞の培養において、高密度培養を目的としてポリエステル繊維からなる繊維集積体を用いる培養方法(特許文献2、皮膚や歯周組織、顎骨などの組織再生・修復用の足場やテンプレートとしての不織布シートを用いる方法(特許文献3)、繊維束を構成する繊維間の配向と平均繊維径の両方を制御することによって、細胞の接着性と増殖性の両方の効率を向上させる方法(特許文献4)、さらに、骨補填材を含有する不織布を細胞足場材として使用する骨芽細胞を増殖させる方法(特許文献5)が知られている。また、哺乳動物や昆虫細胞の培養用支持体として、ポリエステル不織布で構成されるマクロ多孔性担体であるBioNOC II(商標)担体)が市販されている。一方で、不織布(ポリフッ化ビニリデン繊維)を足場として用いる細胞移植を目的とした3次元培養において、間葉系間質細胞の増殖における該繊維の断面形状の影響を検討した報告もある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2003/054174号
【文献】特開平8-33473号公報
【文献】特開2015-158026号公報
【文献】国際公開第2016/068279号
【文献】特開2012-192105号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Schellengber, A., et al., PLOS One, vol. 9, e94353 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、(親水化処理されたものを含む)不織布細胞培養部材を備えた細胞培養モジュール、及び該細胞培養モジュールを用いた細胞の培養方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、所定の構造を有する(親水化処理されたものを含む)不織布細胞培養部材が、細胞培養に適し、該細胞培養により細胞からの有用なタンパク質産生を促進し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち、限定されるわけではないが、本発明は好ましくは以下の態様を含む。
【0010】
[1] 親水化処理された不織布細胞培養部材と、
2以上の培地流出入口を有し、該細胞培養部材が収容されたケーシングと
を備えた細胞培養モジュールであって、ここで、
前記不織布は、20%重量以上の芯鞘型複合繊維により構成される不織布であって、
不織布の目付は、1~50g/m2であり、
芯鞘型複合繊維の芯部及び鞘部はポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点は芯部の重合体の融点よりも低く、及び鞘芯比率は90:10~10:90であり、
不織布は、細孔を有し;
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記細胞培養部材は、集約されて、
(ii)細胞培養部材は、折り畳まれて、
(iii)細胞培養部材は、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)細胞培養部材は、縄状に結ばれて、
収容されている、上記細胞培養モジュール。
[2] 芯鞘型複合繊維の繊度が0.05~2.2デシテックス(dTex)である、[1]に記載の細胞培養モジュール。
[3] 芯鞘型複合繊維同士は、熱融着により接触交点において結着部を形成する、[1]又は[2]に記載の細胞培養モジュール。
[4] 不織布が、芯鞘型複合繊維の繊度及び/又は鞘芯比率が異なる2種以上の芯鞘型複合繊維を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[5] 培地流出入口の径が、細胞の径よりも大きく、かつ、不織布が流出する径よりも小さい、[1]~[4]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[6] 親水化処理が、フッ素ガス処理、常圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、コロナ処理、親水性単量体のグラフト重合処理、スルホン化処理、及び界面活性剤付与処理からなる群から選択される、[1]~[5]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[7] 不織布の平均細孔が、0.01~100μmである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[8] 不織布の総膜厚が、5~500μmである、[1]~[7]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[9] 芯鞘型複合繊維同士によって形成された結着部の面積率が5~30%である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[10] ケーシングが、メッシュ状の構造を有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
[11] ケーシングが、非可撓性素材からなる、[1]~[10]のいずれか1項に記載の細胞培養モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、懸濁された細胞を効率的に吸着し、従来の浮遊培養容器を用いて、安定的に培養可能となる。また、本発明によって、従来のようなフィルター膜を用いることなく、簡便に細胞を除去することが可能となる。さらに、ケーシングに収容され、モジュール化された細胞培養部材を用いることで、懸濁された細胞が簡単に吸着され、簡便かつ安定的に細胞を培養することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、細胞培養装置の一実施態様を示す。(A)細胞培養装置の構成を示す図である。(B)(A)における、細胞培養デバイスを載置する細胞培養部を示す図である。
【
図3】
図3は、細胞培養装置の一実施態様を示す。基本的な構成は
図2と共通であるが、各段の培地排出口が30度ずつ反時計回りにずれており、培地が排出されやすい構造となっている。
【
図5】
図5は、一実施形態における細胞培養装置を示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の細胞培養装置における、液滴化培地供給手段から滴下される培地の様式を示す概念図である。(A)ドロップ型、(B)メッシュ型、(C)シャワー型を示す。(D)ドロップ型及びメッシュ型の液滴を供給するために使用される、一実施形態の細胞培養装置に適用される蓋体を示す図である。蓋体の培地供給口には、ステンレス鋼製のメッシュを巻いて形成したメッシュ束が挿入される。
【
図7】
図7は、一実施形態におけるサイフォン式細胞培養装置を示す図である。
【
図8】
図8は、細胞培養モジュールのタイプ別構造を示す図である。
【
図9】
図9は、バッグ型バイオリアクターの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.細胞培養モジュール
本発明の一態様は、
親水化処理された不織布細胞培養部材と、
2以上の培地流出入口を有し、該細胞培養部材が収容されたケーシングと
を備えた細胞培養モジュールであって、ここで、
前記不織布は、20%重量以上の芯鞘型複合繊維により構成される不織布であって、
不織布の目付は、1~50g/m2であり、
芯鞘型複合繊維の芯部及び鞘部はポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点は芯部の重合体の融点よりも低く、及び鞘芯比率は90:10~10:90であり、
不織布は、細孔を有し:
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記細胞培養部材は、集約されて、
(ii)細胞培養部材は、折り畳まれて、
(iii)細胞培養部材は、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)細胞培養部材は、縄状に結ばれて、
収容されている細胞培養モジュールに関する。該細胞培養モジュールを、以下で、「本発明の細胞培養モジュール」とも呼ぶ。なお、本明細書において、「細胞培養モジュール」との記載は、単に「モジュール」と記載することができ、相互に変更しても同一のことを意味する。
【0014】
本明細書において、「細胞培養モジュール」とは、細胞培養容器、細胞培養装置及び細胞培養システムに適用可能な、細胞培養基材をいう。本発明の細胞培養モジュールは、
図1~5、7、及び9のような実施態様によって使用することができる。また、後述する実施例に示す態様によっても使用することができる。
【0015】
本発明の細胞培養モジュールが備えるケーシングは、2以上の培地流出入口を有することで、細胞培地がケーシングの内部へ供給及び外部へ排出される。該ケーシングの培地流出入口の径は、ケーシングの内部へ細胞が流入可能であるように、前記細胞の径よりも大きいことが好ましい。また、培地流出入口の径が、該培地流出入口より不織布が流出する径よりも小さいことが好ましい。不織布が流出する径よりも小さい径は、ケーシングに収容された不織布の形状、大きさによって適宜選択可能である。例えば、不織布がひも状である場合、該不織布の短辺の幅より小さく、該不織布が流出しない適度の径であれば特に限定されない。該培地流出入口の数は、細胞培地がケーシング内外へ供給及び/又は排出されやすいように、出来るだけ多く設けられていることが好ましい。好ましくは、5以上、好ましくは10以上、好ましくは20以上、好ましくは50以上、好ましくは100以上である。培地流出入口は、ケーシングの一部又は全部が、メッシュ状の構造を有していてもよい。また、該ケーシング自体がメッシュ状であってもよい。本発明において、メッシュ形状の構造とは、例えば、縦、横、及び/又は斜めの格子状の構造を有するものであって、各目開きが、流体が通過出来る程度に培地流出入口を形成するものであるが、これに限定されない。
【0016】
本発明の細胞培養モジュールが備えるケーシングは、通常の培養条件、例えば、攪拌培養、振とう培養条件における培地の動きによって変形しない程度に強度を有することが好ましく、非可撓性素材から形成されていることが好ましい。また、ケーシングは、細胞培養において、細胞の生育に影響を与えない素材によって形成されていることが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリマー、ステンレス綱、チタンなどの金属が挙げられるが、これに限定されない。本明細書において、「ケーシングが変形しない」とは、通常の培養環境下で受ける負荷において変形しないことを意味するものであり、絶対的に変形しないことを意味するものではない。
【0017】
本発明の細胞培養モジュールは、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した細胞培養部材が、集約されて、
(ii)細胞培養部材が、折り畳まれて、
(iii)細胞培養部材が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)細胞培養部材が、縄状に結ばれて、
収容されている。
【0018】
本明細書において、「ケーシング内に2以上の独立した細胞培養部材が集約されて収容されている」とは、互いに独立した2以上のポリマー多孔性膜が、ケーシングで囲まれた一定空間内に集約されて収容されている状態を指す。本発明において、2以上の独立した該細胞培養部材は、該細胞培養部材の少なくとも1カ所と該ケーシング内の少なくとも1カ所とを任意の方法によって固定され、該細胞培養部材がケーシング内で動かない状態に固定されたものであってもよい。また、2以上の独立した細胞培養部材は、小片であってもよい。小片の形状は、例えば、円、楕円形、四角、三角、多角形、ひも状など、任意の形をとりうるが、好ましくは、略正方形が好ましい。本発明において、小片の大きさは、任意の大きさをとりうるが、略正方形である場合、長さは任意の長さでよいが、例えば、80mm以下がよく、好ましくは50mm以下がよく、より好ましくは30mm以下がよく、さらにより好ましくは20mm以下がよく、10mm以下であってもよい。なお、ひも状の細胞培養部材の場合、後述するように、(ii)細胞培養部材が、折り畳まれて、(iii)細胞培養部材が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、(iv)細胞培養部材が、縄状に結ばれて、該ケーシングに収容されてもよい。また、ケーシング内に2以上の独立した細胞培養部材を集約して収容するために、任意の枚数の細胞培養部材を積層させてもよい。この場合、細胞培養部材と細胞培養部材の間には間仕切り(又は中敷き)が設けられてもよい(
図8参照)。間仕切りが設けられることにより、積層された細胞培養部材の間に効率的に培地を供給させることができる。間仕切りは、積層された細胞培養部材の間に任意の空間を形成し、効率的に培地を供給させる機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、メッシュ構造を有する平面構造体を用いることができる。間仕切りの材質は、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ステンレス鋼製のメッシュを用いることができるが、これに限定されない。メッシュ構造を有する間仕切りを有する場合、積層された細胞培養部材の間に培地を供給できる程度の目開きを有していればよく、適宜選択することができる。
【0019】
本明細書において、「折り畳まれた細胞培養部材」とは、該ケーシング内にて折り畳まれていることで、細胞培養部材の各面及び/又はケーシング内の表面との摩擦力によってケーシング内で動かない状態となった細胞培養部材である。本明細書において、「折り畳まれた」とは、細胞培養部材に折り目がついた状態であってもよく、折り目がついていない状態であってもよい。
【0020】
本明細書において、「ロール状に巻き込まれた細胞培養部材」とは、細胞培養部材が、ロール状に巻き込まれて、細胞培養部材の各面及び/又はケーシング内の表面との摩擦力によってケーシング内で動かない状態となった細胞培養部材をいう。また、本発明おいて、縄状に編み込まれた細胞培養部材とは、例えば短冊状の複数の細胞培養部材を、任意の方法によって縄状に編み込み、細胞培養部材同士の摩擦力によって互いに動かない状態の細胞培養部材をいう。(i)2以上の独立した細胞培養部材が集約された細胞培養部材、(ii)折り畳まれた細胞培養部材、(iii)ロール状に巻き込まれた細胞培養部材、及び(iv)縄状に結ばれた細胞培養部材、が、組み合わせられてケーシング内に収容されていてもよい。
【0021】
本発明の細胞培養モジュールは、細胞を培養する培養装置及びシステム等であれば、市販のものを適用することが可能である。例えば、培養容器が可撓性のバッグからなる培養装置にも適用可能であり、当該培養容器内に浮遊させた状態で使用することが可能である。また、本発明の細胞培養モジュールは、例えば、スピナーフラスコ等の攪拌培養型容器に適用し、培養することが可能である。その他、培養容器としては、開放容器にも適用可能であり、閉鎖容器にも適用可能である。例えば、細胞培養用のシャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。
【0022】
2.細胞培養装置への細胞培養モジュールの適用
本明細書において、「細胞培養装置」とは、一般に、細胞培養システム、バイオリアクター、又はリアクターと同義に扱われる用語であって、相互に入れ替えても同一の意味を有する。本発明の細胞培養モジュールは、以下に例示する細胞培養装置に適用することができる。また、以下に例示する装置以外の市販の装置においても適用可能である。
【0023】
(1)サイフォン式培養装置
本発明の細胞培養モジュールは、
図1及び
図7に示す、サイフォン式培養装置において適用可能である。サイフォン式培養装置とは、細胞培養部材(好ましくは、該細胞培養部材を含む細胞培養モジュール)と、該細胞培養部材が収容された細胞培養部と、該細胞培養部を内部に格納した液溜め部と、該液溜め部の上部に配置された培地供給手段と、該液溜め部の底部で連通された逆U字管と、該逆U字管の他端の下部に設置された培地回収手段と、該培地回収手段に配置された培地排出手段とを備える。ここで、前記培地供給手段から前記液溜め部に供給された培地の液面が前記逆U字管の頂上部に達したとき、サイフォンの原理により培地が前記培地回収手段に間歇的に吐出されることを特徴とする、細胞培養装置である。
【0024】
(2)筒型気相培養装置
本発明の細胞培養モジュールは、
図2~5に示す、筒型気相培養装置において適用可能である。一実施形態において、筒型気相培養装置とは、細胞培養部材(好ましくは、該細胞培養部材を含む細胞培養モジュール)と、細胞培養部材が収容された細胞培養部と、該細胞培養部の上部に配置された培地供給手段と、該細胞培養部の下部に配置された培地回収手段とを備える。ここで、前記細胞培養部が、1以上の培地排出口を有する底部と、前記底部に略垂直に配置された側部とを備えた、細胞培養装置である。また、一実施形態において、筒型気相培養装置とは、細胞培養部材(好ましくは、該細胞培養部材を含む細胞培養モジュール)と、該細胞培養部材が収容された細胞培養部と、該細胞培養部の上部に配置された培地供給手段と、該細胞培養部の下部に配置された培地回収手段とを備える。ここで、前記培地回収手段が、前記細胞培養部を収容する外筒の一部である、細胞培養装置である。
【0025】
(3)ミスト及びシャワー型培養装置
本発明の細胞培養モジュールは、
図4に示す、ミスト及びシャワー型培養装置において適用可能である。ミスト及びシャワー型培養装置とは、
細胞培養部材(好ましくは、該細胞培養部材を含む細胞培養モジュール)と、該細胞培養部材が載置された細胞培養部材載置部と、該細胞培養部材載置部が収容された筐体と、該筐体の内部に配置された液滴化培地供給部と、該液滴化培地供給部と連通した培地供給ラインと、該培地供給ラインに連通した培地貯留部と、該培地供給ラインの一部に設けられたポンプと、
を備え、ここで、前記細胞培養部材載置部が、スリット状又はメッシュ状の複数の培地排出口を備えた、細胞培養装置である。
【0026】
(4)気相露出型回転培養装置
本発明の細胞培養モジュールは、気相露出型回転培養装置において適用可能である。気相露出型回転培養装置とは、
細胞培養部材(好ましくは、該細胞培養部材を含む細胞培養モジュール)と、該細胞培養部材を有する細胞培養部と、該細胞培養部を貫通した軸と、該軸を回転するための回転モータと、該細胞培養部の少なくとも一部を浸漬する培地槽と、を備え、
前記軸を中心として前記細胞培養部が回転し、前記細胞培養部材に担持された細胞が気相及び液相において交互に培養されることを特徴とする、細胞培養装置である。
【0027】
3.不織布
本発明で使用される不織布は、不織布の重量に対して、1種又は複数種の芯鞘型複合繊維により構成される。相互融着させて不織布とさせる場合、芯鞘型複合繊維は不織布に対して20重量%以上であることが好ましい。なお、芯鞘型複合繊維の含量は、30重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上であってもよい。
【0028】
芯鞘型複合繊維の芯部及び鞘部は、ポリオレフィン系重合体であることが好ましい。芯部及び鞘部を構成するポリオレフィン系重合体としては、炭素原子数が2~16の脂肪族α-モノオレフイン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-オクタデセンのホモポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンなどが挙げられる。脂肪族α-モノオレフインは、他のオレフィン及び、又は少量(重合体重量の約10重量%まで)の他のエチレン系不飽和モノマー、例えばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン-1,3、スチレン、α-メチルスチレンのような類似のエチレン系不飽和モノマーと共重合されてもよい。
【0029】
芯部を構成する重合体と鞘部を構成する重合体の組合せとしては、鞘部の重合体の融点が芯部の重合体の融点よりも低くなるように組み合わせることが好ましい。例えば、上記の重合体から、融点差が20~50℃であるものを選択する。後述するように、芯部を構成するポリエステル系重合体の融点よりも鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点が、例えば、40℃以上低いものを選択することがより好ましい。上記のような性質を有する芯鞘型複合繊維としては、限定されないが、鞘部の重合体がポリエチレンであり、芯部の重合体がポリプロピレンであるような組み合わせを有するものが挙げられる。
【0030】
後述するような繊度、及び芯鞘複合比率を有する、本発明において使用される芯鞘型複合繊維は、一般的な芯鞘型複合繊維(不織布)を製造する方法を用いて製造することが可能である。典型的には、このような製造方法は、限定されないが、以下の工程を含んでもよい。
1)一軸押出機2台と複合紡糸用ノズルを備えた複合紡糸装置により、高融点成分(例えば、ポリプロピレン):低融点成分(例えば、ポリエチレン)の質量比を所望の割合で、紡糸温度280℃で紡糸し、未延伸繊維を作製し;
2)未延伸繊維を集束し、加熱可能な延伸ローラーで延伸処理して、例えば、延伸倍率4倍以上で所望の単糸繊度となるように延伸繊維を作製し;
3)ロータリーカッターで所望の繊維長(例えば、数mm)である短繊維を作製し;及び
4)上記短繊維を用いて一般的な湿式製法又は乾式製法を用いて不織布を作製する。
【0031】
上記工程4)の湿式製法では、より具体的には、短繊維を粘度調整剤を加えた水中に均一に分散させて、分散液を調製し、次に、この分散液をメッシュ上に抄紙し、湿ったウエブを作製後、得られた湿ったウエブを、ゴム製の2枚の加熱板間に挟み、汎用の加熱加圧機を用いて、温度140℃の条件で1分間プレスして乾燥させることにより、短繊維の低融点成分が溶融して短繊維間が接合し、不織布を得る事ができる。なお、本発明においては、例えば、限定されないが、宇部エクシモ株式会社製の複合繊維「エアリモ」を使用することができる。
【0032】
不織布を構成する繊維同士は、熱融着部(本明細書中、「結着部」とも称する)を有することにより一体化して不織布として形態を保持している。熱融着部は、鞘成分の融点以上かつ芯成分の融点以下に加熱することにより形成されるものであるが、熱融着部においては、鞘成分は溶融又は軟化して接着に寄与するが、芯成分は熱の影響を完全に受けて溶融するのではなく、繊維形態を維持させて、不織布の引裂強力を向上に寄与する。したがって、このように熱融着部において、鞘成分は溶融又は軟化し、一方、芯成分は繊維形態を維持させるために、両者の融点に、例えば30℃以上の差を設けることにより、熱融着加工の際に、芯成分を熱の影響を受けさせずに、かつ鞘成分を確実に溶融させて熱融着部で溶融固着により熱接着固定することができる。
【0033】
不織布を構成する芯鞘型複合繊維の「繊度」は、繊維の太さを表すものとして一般的に使用され、繊維の1万メートルあたりの重量(g)(すなわち、デシテックス(dTex))として表される。本発明において使用される芯鞘型複合繊維の繊度は、細胞培養に適した繊度であればよく、限定されないが、0.05~2.2デシテックスであることが好ましい。
【0034】
また、芯鞘複合比率(質量比)は、鞘部/芯部=20/80~50/50が好ましい。鞘部よりも芯部の比率を同等以上にすることにより、機械的物性に優れ、実用的な強度が維持できる。なお、芯部の比率が80質量%を超えると、接着成分となる鞘部の比率が小さくなるため、熱融着部での接着強力が低下する傾向となるため、芯部の比率の上限は80質量%が好ましい。
【0035】
芯鞘型複合繊維の繊維径は、細胞培養に適した直径であればよく、複合繊維の繊度及び比重により決定されるが、例えば、1~20μmであることが好ましい。より好ましくは2~10μm、さらに好ましくは3~8μmである。
【0036】
不織布の目付は、1~50g/m2であればよく、例えば、3~50g/m2であることが好ましい。
【0037】
本発明に使用される不織布は、芯鞘型複合繊維の繊度、鞘芯比率、及び/又は繊維径が異なる2種以上の芯鞘型複合繊維によって構成されてもよい。異なる繊度については、例えば、繊度が1~2.2デシテックスの太繊度繊維と、繊度が0.05~0.5デシテックスの細繊度繊維とによって構成されてもよい。また、本発明においては、太繊度繊維と細繊度繊維の質量比は、太繊度繊維/細繊度繊維=20/80~80/20が好ましい。太繊度繊維と細繊度繊維は、不織布中に混繊状態で混在されてもよく、あるいは、一方の面に太繊度繊維が堆積してなるウエブとし、他方の面に細繊度繊維が堆積してなるウエブとする積層状態により両者が存在しているものであってもよい。
【0038】
上記の通り、不織布を構成する繊維同士は、熱融着部により熱接着固定され一体化している。熱融着部では、芯鞘型複合繊維の鞘成分が溶融固化して接着成分として機能している熱接着部を形成している。また、熱融着部を形成する方法として、熱エンボス加工あるいは超音波融着加工によって散点状の多数の熱圧着部を形成することもできる。個々の熱圧着部の形状は円形、楕円形、菱形、三角形、織目形、井形、格子形など任意の形状であってよい。なお、不織布の柔軟性や細胞の足場形成を考慮して、散点状に存在していることが好ましい。個々の熱圧着部の面積は0.2~3mm2程度が好ましい。また、不織布の面積に対する熱圧着部の面積比率は、10%以上30%以下であることが好ましい。10%未満では、本発明の目的である優れた機械物性と剛性を両立し難い。
【0039】
本願発明において使用される不織布は、親水化処理された不織布であってもよい。不織布の親水化は、限定されないが、フッ素ガス処理、常圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、コロナ処理、親水性単量体のグラフト重合処理、スルホン化処理、又は界面活性剤付与処理によって施すことができ、フッ素ガス処理、常圧プラズマ処理が好ましい。
【0040】
本発明で使用される不織布の総膜厚は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上、20μm以上又は25μm以上であってもよく、500μm以下、300μm以下、100μm以下、75μm以下又は50μm以下であってもよい。好ましくは、5~500μmであり、より好ましくは25~75μmである。
【0041】
本発明において用いられる不織布は、滅菌されていることが好ましい。滅菌処理としては、特に限定されないが、ガス滅菌、エタノール等消毒剤による滅菌、紫外線やガンマ線等の電磁波滅菌等任意の滅菌処理などが挙げられる。
【0042】
4.細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法
本発明の一態様は、
(1)懸濁された細胞を含む第1培地に、細胞培養モジュールに適用する工程、
(2)細胞培養可能な温度に維持し、前記細胞培養モジュールへ前記細胞を吸着させる工程、及び、
(3)前記細胞を吸着させた前記細胞培養モジュールを、培養容器中で、第2培地にて培養する工程、
を含み、
ここで、細胞培養モジュールが、
親水化処理された不織布を含む細胞培養部材と、
2以上の培地流出入口を有し、該細胞培養部材が収容されたケーシングと
を備えた細胞培養モジュールであって、ここで、
前記不織布は、20%重量以上の芯鞘型複合繊維により構成される不織布であって、
不織布の目付は、1~50g/m2であり、
芯鞘型複合繊維の芯部及び鞘部はポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点は芯部の重合体の融点よりも低く、及び鞘芯比率は90:10~10:90であり、
不織布は、細孔を有し;そして
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記細胞培養部材は、集約されて、
(ii)細胞培養部材は、折り畳まれて、
(iii)細胞培養部材は、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)細胞培養部材は、縄状に結ばれて、
収容されていて、
ここで、前記第2培地が、界面活性剤を含まない、細胞の培養方法に関する。本発明の細胞の培養方法を、以下で、「本発明の細胞の培養方法」とも呼ぶ。
【0043】
本発明に利用し得る細胞の種類は、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌及び細菌からなる群から選択される。動物細胞は、脊椎動物門に属する動物由来の細胞と無脊椎動物(脊椎動物門に属する動物以外の動物)由来の細胞とに大別される。本明細書における、動物細胞の由来は特に限定されない。好ましくは、脊椎動物門に属する動物由来の細胞を意味する。脊椎動物門は、無顎上綱と顎口上綱を含み、顎口上綱は、哺乳綱、鳥綱、両生綱、爬虫綱などを含む。好ましくは、一般に、哺乳動物と言われる哺乳綱に属する動物由来の細胞である。哺乳動物は、特に限定されないが、好ましくは、マウス、ラット、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ヒツジ、ヤギなどを含む。
【0044】
本発明に利用しうる動物細胞の種類は、限定されるわけではないが、好ましくは、多能性幹細胞、組織幹細胞、体細胞、及び生殖細胞からなる群から選択される。
【0045】
本明細書において「多能性幹細胞」とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞の総称することを意図する。限定されるわけではないが、多能性幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)等を含む。好ましくは、ES細胞又はiPS細胞である。iPS細胞は倫理的な問題もない等の理由により特に好ましい。多能性幹細胞としては公知の任意のものを使用可能であるが、例えば、国際公開第2009/123349号(PCT/JP2009/057041)に記載の多能性幹細胞を使用可能である。
【0046】
「組織幹細胞」とは、分化可能な細胞系列が特定の組織に限定されているが、多様な細胞種へ分化可能な能力(分化多能性)を有する幹細胞を意味する。例えば骨髄中の造血幹細胞は血球のもととなり、神経幹細胞は神経細胞へと分化する。このほかにも肝臓をつくる肝幹細胞、皮膚組織になる皮膚幹細胞などさまざまな種類がある。好ましくは、組織幹細胞は、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、又は造血幹細胞から選択される。
【0047】
「体細胞」とは、多細胞生物を構成する細胞のうち生殖細胞以外の細胞のことを言う。有性生殖においては次世代へは受け継がれない。好ましくは、体細胞は、肝細胞、膵細胞、筋細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、膵細胞、腎細胞、肺細胞、又は、リンパ球、赤血球、白血球、単球、マクロファージ若しくは巨核球の血球細胞から選択される。
【0048】
「生殖細胞」は、生殖において遺伝情報を次世代へ伝える役割を持つ細胞を意味する。例えば、有性生殖のための配偶子、即ち卵子、卵細胞、精子、精細胞、無性生殖のための胞子などを含む。
【0049】
細胞は、肉腫細胞、株化細胞及び形質転換細胞からなる群から選択してもよい。「肉腫」とは、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血液等の非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生する癌で、軟部肉腫、悪性骨腫瘍などを含む。肉腫細胞は、肉腫に由来する細胞である。「株化細胞」とは、長期間にわたって体外で維持され、一定の安定した性質をもつに至り、半永久的な継代培養が可能になった培養細胞を意味する。PC12細胞(ラット副腎髄質由来)、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)、HEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来)、HL-60細胞(ヒト白血球細胞由来)、HeLa細胞(ヒト子宮頸癌由来)、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮細胞由来)、MDCK細胞(イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来)、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)、BHK細胞(新生児ハムスター腎臓細胞)、NIH3T3細胞(マウス胎児線維芽細胞由来)などヒトを含む様々な生物種の様々な組織に由来する細胞株が存在する。「形質転換細胞」は、細胞外部から核酸(DNA等)を導入し、遺伝的性質を変化させた細胞を意味する。
【0050】
本明細書において、「接着細胞」とは、一般に、増殖のために適切な表面に自身を接着させる必要がある細胞であって、付着細胞又は足場依存性細胞ともいわれる。本発明のいくつかの実施形態では、使用する細胞は接着細胞である。本発明に用いられる細胞は、接着細胞であって、より好ましくは、培地中に懸濁した状態でも培養可能な細胞である。懸濁培養可能な接着細胞とは、公知の方法によって、接着細胞を懸濁培養に適した状態へ馴化させることによって得ることが可能であり、例えば、CHO細胞、HEK293細胞、Vero細胞、NIH3T3細胞などや、これらの細胞から派生して得られた細胞株が挙げられる。ここに挙げられないものであっても、本発明に用いられる細胞は、接着細胞であって、馴化によって懸濁培養可能な細胞であれば、特に限定されない。
【0051】
本発明の方法を用いることにより、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含む細胞培養部材体積の総和の10000倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することが可能となる。また、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含む細胞培養部材体積の総和の1000倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することができる。さらに、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含む細胞培養部材体積の総和の100倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することができる。そして、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含む細胞培養部材体積の総和の10倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することができる。
【0052】
つまり、本発明によれば、細胞培養する空間(容器)を従来の二次元培養を行う細胞培養装置に比べて極限まで小型化可能となる。また、培養する細胞の数を増やしたい場合は、積層する細胞培養部材の枚数を増やす等の簡便な操作により、柔軟に細胞培養する体積を増やすことが可能となる。本発明に用いられる細胞培養部材を備えた細胞培養装置であれば、細胞を培養する空間(容器)と細胞培養培地を貯蔵する空間(容器)とを分離することが可能となり、培養する細胞数に応じて、必要となる量の細胞培養培地を準備することが可能となる。細胞培養培地を貯蔵する空間(容器)は、目的に応じて大型化又は小型化してもよく、あるいは取り替え可能な容器であってもよく、特に限定されない。
【0053】
本発明の細胞の培養方法における細胞の大量培養とは、例えば、細胞培養部材を用いた培養後に細胞培養容器中に含まれる細胞の数が、細胞がすべて細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地に均一に分散しているものとして、培地1ミリリットルあたり1.0×105個以上、1.0×106個以上、2.0×106個以上、5.0×106個以上、1.0×107個以上、2.0×107個以上、5.0×107個以上、1.0×108個以上、2.0×108個以上、5.0×108個以上、1.0×109個以上、2.0×109個以上、又は5.0×109個以上となるまで培養することをいう。
【0054】
なお、培養中又は培養後の細胞数を計測する方法としては、種々の公知の方法を用いることができる。例えば、細胞培養部材を用いた培養後に細胞培養容器中に含まれる細胞の数を、細胞がすべて細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地に均一に分散しているものとして計測する方法としては、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、CCK8(次文参照)を用いた細胞数計測法を好適に用いることができる。具体的には、Cell Countinig Kit8;同仁化学研究所製溶液試薬(以下、「CCK8」と記載する。)を用いて、細胞培養部材を用いない通常の培養における細胞数を計測し、吸光度と実際の細胞数との相関係数を求める。その後、細胞を適用し、培養した細胞培養部材を、CCK8を含む培地に移し、1~3時間インキュベーター内で保存し、上清を抜き出して480nmの波長にて吸光度を測定して、先に求めた相関係数から細胞数を計算する。
【0055】
また、別の観点からは、細胞の大量培養とは、例えば、細胞培養部材を用いた培養後に不織布1平方センチメートルあたりに含まれる細胞数が1.0×105個以上、2.0×105個以上、1.0×106個以上、2.0×106個以上、5.0×106個以上、1.0×107個以上、2.0×107個以上、5.0×107個以上、1.0×108個以上、2.0×108個以上、又は5.0×108個以上となるまで培養することをいう。不織布1平方センチメートルあたりに含まれる細胞数は、セルカウンター等の公知の方法を用いて適宜計測することが可能である。
【0056】
本明細書において、「懸濁された細胞」とは、例えば、トリプシン等のタンパク質分解酵素によって、接着細胞を強制的に浮遊させて培地中に懸濁して得られた細胞や、上述の馴化工程によって培地中に浮遊培養可能となった細胞などを含んでいる。
【0057】
本明細書において、「培地」とは、細胞、特に動物細胞を培養するための細胞培養培地のことを指す。培地は、細胞培養液と同義の意味として用いられる。そのため、本発明において用いられる培地とは、液体培地のことを指す。培地の種類は、通常使用される培地を使用することが可能であり、培養する細胞の種類によって適宜決定される。
【0058】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(1)で用いられる第1培地は、細胞を培養できる培地であれば特に限定されないが、例えば、CHO細胞を培養する場合であれば、JXエネルギー製BalanCD(商標) CHO GROWTH Aを用いることができる。
【0059】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(2)の細胞培養可能な温度とは、細胞が細胞培養モジュールに吸着可能な温度であればよく、10℃~45℃、好ましくは、15℃~42℃、より好ましくは20℃~40℃、さらに好ましくは25℃~39℃である。また、本発明の細胞の培養方法において、該工程(2)の細胞を吸着させる時間は、例えば、5分~24時間、好ましくは10分~12時間、より好ましくは15分~500分である。
【0060】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(2)は、振盪及び/又は攪拌しながら、該細胞培養モジュールの該細胞培養部材へ細胞を吸着させてもよく、静置して該細胞培養モジュールの該細胞培養部材へ細胞を吸着させてもよい。振盪する方法は特に限定されないが、例えば、市販の振盪装置上に、本発明の細胞培養モジュールと細胞とを含む培養容器を載置し、振盪してもよい。振盪は、継続的又は断続的に行ってもよく、例えば、振盪と静置を交互に繰り返してもよく、適宜調整すればよい。攪拌する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の細胞培養モジュールと細胞とを市販のスピナーフラスコ内に入れ、スターラーを回転させることで攪拌してもよい。攪拌は、継続的又は断続的に行ってもよく、例えば、攪拌と静置を交互に繰り返してもよく、適宜調整すればよい。
【0061】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(3)で用いられる第2培地は、接着細胞の培養に用いられる培地が選択され、例えば、D-MEM、E-MEM、IMDM、Ham’s F-12などを用いることができるが、これに限定されない。第2培地は、細胞が基材へ接着するのを阻害する成分、例えば、界面活性剤が含まれない培地が好ましい。使用される第2培地は、細胞の種類によって適宜選択される。該工程(3)において、第2培地で培養することで、該工程(2)で細胞培養部材に吸着された細胞が、該細胞培養部材内に接着することを促進する。これによって、細胞が該細胞培養部材から脱落することなく安定的に培養可能である。また、本発明の細胞の培養方法は、前述の細胞培養部材を備えた細胞培養モジュールを使用する。
【0062】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(3)は、細胞を培養する培養装置及びシステム等であれば、市販のものを適用することが可能である。例えば、培養容器が可撓性バッグ型培養容器であってもよく、また、攪拌型培養容器、例えばスピナーフラスコ等の培養容器で培養することも可能である。その他、培養容器としては、開放容器にも適用可能であり、閉鎖容器にも適用可能である。例えば、細胞培養用のシャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。また、上記の細胞の培養方法において、細胞培養モジュールを用いることにより、生来、浮遊培養に適さない接着性の細胞であっても、細胞培養モジュールを用いることにより、細胞培養モジュールに吸着させた状態では細胞培養培地中に浮遊した状態で培養することが可能であるといえる。浮遊培養用の装置としては、例えば、コーニング社製のスピナーフラスコや回転培養等が使用可能である。また、該工程(3)は、本明細書に記載の細胞培養装置で実施してもよい。
【0063】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(3)は、該細胞培養モジュールを含む培養容器に連続的に培地を添加し回収するような連続循環型の装置を用いて実行することも可能である。
【0064】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(3)は、該細胞培養モジュールを含む培養容器の外に設置された細胞培養培地供給手段から連続的又は間歇的に細胞培養培地が細胞培養容器中に供給される系であってもよい。その際、細胞培養培地が細胞培養培地供給手段と細胞培養容器との間を循環する系とすることができる。
【0065】
5.懸濁された細胞の除去方法
本発明の一態様は、
(1)懸濁された細胞を含む第1培地に、細胞培養部材を適用する工程、
(2)細胞培養可能な温度に維持し、前記細胞培養部材へ前記細胞を吸着させる工程、
を含む、懸濁された細胞の除去方法に関する。本発明の細胞の除去方法を、以下で、「本発明の細胞の除去方法」とも呼ぶ。
【0066】
本発明の細胞の除去方法において使用される細胞培養部材は、前述の細胞培養部材を使用することができる。該細胞培養部材は、前述の細胞培養モジュールであってもよく、ケーシングに収容されていない細胞培養部材であってもよい。
【0067】
本発明の細胞の培養方法において、該工程(1)で用いられる第1培地は、細胞を培養できる培地であれば特に限定されないが、例えば、CHO細胞を培養する場合であれば、JXエネルギー製BalanCD(商標) CHO GROWTH Aを用いることができる。
【0068】
本発明の細胞の除去方法において、該工程(2)の細胞培養可能な温度とは、細胞が細胞培養モジュールに吸着可能な温度であればよく、10℃~45℃、好ましくは、15℃~42℃、より好ましくは20℃~40℃、さらに好ましくは25℃~39℃である。また、本発明の細胞の培養方法において、該工程(2)の細胞を吸着させる時間は、例えば、5分~24時間、好ましくは10分~12時間、より好ましくは15分~500分である。
【0069】
本発明の細胞の除去方法において、該工程(2)は、振盪及び/又は攪拌しながら、該細胞培養モジュールの該不織布へ細胞を吸着させてもよく、静置して該細胞培養モジュールの該不織布へ細胞を吸着させてもよい。振盪する方法は特に限定されないが、例えば、市販の振盪装置上に、本発明の細胞培養モジュールと細胞とを含む培養容器を載置し、振盪してもよい。振盪は、継続的又は断続的に行ってもよく、例えば、振盪と静置を交互に繰り返してもよく、適宜調整すればよい。攪拌する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の細胞培養モジュールと細胞とを市販のスピナーフラスコ内に入れ、スターラーを回転させることで攪拌してもよい。攪拌は、継続的又は断続的に行ってもよく、例えば、攪拌と静置を交互に繰り返してもよく、適宜調整すればよい。
【0070】
本発明の細胞の除去方法によって、従来は、細胞を含む培地から細胞を除去するためには、遠心分離処理やフィルターによる処理を行うなどの操作が必要であった。本発明の方法によれば、フィルター等を用いることなく、培地から細胞を除去可能することが可能となる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
実施例に使用された不織布は、宇部エクシモ社製原綿を用いて以下表1に示す構成で不織布を作製し、更に、処理等を行った。
【表1】
【0073】
実施例1:細胞培養モジュールを用いるシャーレ型旋回バイオリアクター実験結果
抗ヒトIL-8抗体産生CHO-DP12細胞(ATCC CRL-12445)を馴化・浮遊化した細胞を、培地(BalanCD(商標)CHO Growth A)を用いて浮遊培養し、1mlあたりの生細胞数が3.20×10
6cells/ml(総細胞数3.40×10
6cells/ml、生細胞率96%)になるまで培養を継続した。
図8に示す様な組み合わせで培養モジュールを3種の不織布に対しそれぞれ用意し、希釈したミルトン、超純水、70%エタノール含有水にて洗浄した後、滅菌的に乾燥し、準備を完了した。各実験の構成を表2に示す。尚、各モジュールで使用した不織布のサイズは、1.0×1.0cmである。
【0074】
【0075】
直径10cmの細胞培養用ディッシュに、表2の滅菌済3種モジュールを滅菌的に各4個ずつ入れ、そこにコージンバイオ株式会社製CHO細胞単層培養用培地KBM270を8ml、及び浮遊細胞用培地BalanCD(商標) CHO Growth A3mlの混合液を添加してCO2インキュベーター内でケニス社製プログラムシェーカーを用いて35rpmの振盪速度で5分間浸漬させた。振盪停止後、CHO DP-12浮遊細胞培養液(総細胞数3.40×106cells/ml、生細胞数3.20×106cells/ml、死細胞数1.30×105cells/ml、生細胞率96%)1.0mlをml添加し、手で緩やかに攪拌後ケニス社製プログラムシェーカーを用いて35rpmの振盪速度で約19時間、CO2インキュベーター内で細胞を吸着させた。19時間後に液部を廃し、液中から回収された培地内の細胞数を測定して、細胞吸着率を計算した。モジュールAでは、回収培地から生細胞数2.93×104cells/mlの細胞が観察され、回収細胞数から計算した細胞吸着率は89%であった。モジュールB及びCの実験では、生細胞は観察されず、吸着率は100%であった。
【0076】
空になったシャーレに、コージンバイオ株式会社製CHO細胞単層培養用培地KBM270を12ml添加し、プログラムシェーカーを35rpmの振盪速度で運転して培養を開始した。培地交換は毎日行い(旧培地をサンプリング後廃棄し、新規培地12mlを添加)、培地中の一日当たりのグルコール消費量、乳酸産生量、乳酸脱水素酵素量および抗体の産生量をロシュ・ダイアグノスティックス社製Cedex Bioを用いて測定した。不織布の種類に依存して、経時的にグルコースが消費され、抗体及び乳酸が持続的に産生される事を見出した。産生された抗体量を表3に示す。B及びCに於いては、連続的な抗体産生が有効に達成される事を見出した。
【0077】
【0078】
実施例2:細胞培養モジュールを用いる小型バッグバイオリアクター実験結果
実施例1と同様に、抗ヒトIL-8抗体産生CHO-DP12細胞(ATCC CRL-12445)を馴化・浮遊化した細胞を、培地(BalanCD(商標)CHO Growth A)を用いて浮遊培養し、1mlあたりの生細胞数が3.20×10
6cells/ml、(総細胞数3.40×10
6cells/ml、生細胞率96%)になるまで培養を継続した。
図8に示す様な組み合わせで培養モジュールを3種の不織布に対して、表2に示されたモジュール形態にて用意し、希釈したミルトン、超純水、70%エタノール含有水にて洗浄した後、滅菌的に乾燥し、準備を完了した。尚、各モジュールで使用した不織布のサイズは、1.0×1.0cmである。
【0079】
ニプロ製ガス透過型カルチャーバッグ(A350-NL)を
図9に示す点線に沿って滅菌的に切断し、チューブ状のバッグを作成して滅菌済各種モジュール3~4個を加え、シーラーを用いて滅菌的に融着させる事で、バッグ型バイオリアクターを作成した。コージンバイオ株式会社製CHO細胞単層培養用培地KBM270を8mlと浮遊細胞用培地BalanCD(商標) CHO Growth A)3mlの混合液をバッグ内に添加してCO
2インキュベーター内でロッキングミキサーを用いて5分間浸漬させた。ミキサーを停止後、CHO DP-12浮遊細胞培養液(総細胞数3.40×10
6cells/ml、生細胞数3.20×10
6cells/ml、死細胞数1.30×10
5cells/ml、生細胞率96%)1.0mlmlを添加し、手で緩やかに攪拌後ロッキングミキサーを用いて約19時間CO
2インキュベーター内で振盪し、細胞を吸着させた。吸着工程終了後、バッグ内の細胞液を回収し、培地内の細胞数を測定して細胞吸着率を計算した。回収細胞数から計算した細胞吸着率を表4に示す。
【0080】
【0081】
空になったバッグに、コージンバイオ株式会社製CHO細胞単層培養用培地KBM270を12ml添加し、ロッキングミキサーでバッグを振盪して培養を開始した。培地交換は毎日行い(旧培地をサンプリング後廃棄し、新規培地12mlを添加)、培地中の一日当たりのグルコール消費量、乳酸産生量、乳酸脱水素酵素量および抗体の産生量をロシュ・ダイアグノスティックス社製Cedex Bioを用いて測定した。不織布の種類に依存して、経時的にグルコースが消費され、抗体及び乳酸が持続的に産生される事を見出した。産生された抗体量を表5に示す。B及びCに於いては、連続的に有効な抗体産生が達成される事を見出した。
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