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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】検出器、測定器
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
G01R29/08 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019019087
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020126005
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶山 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】松山 真稔
(72)【発明者】
【氏名】神光 勝男
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-116855(JP,A)
【文献】特開2000-55960(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第23504(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08-29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の電極にアンテナが接続され、前記アンテナが電磁波を受信したときに、絶縁状態から短絡状態に移行するコヒーラと、
前記コヒーラが短絡状態であるときに第1電源から電力が供給され、前記コヒーラを短絡状態から絶縁状態に移行させるデコヒーラと、
前記デコヒーラが前記コヒーラを短絡状態から絶縁状態に移行させる前に、前記コヒーラの前記一方の電極を、前記アンテナに接続された状態から、前記コヒーラの他方の電極に短絡された状態に切り替える第1切替スイッチと、
を備えることを特徴とする検出器。
【請求項2】
前記第1切替スイッチが前記コヒーラの前記一方の電極を前記他方の電極に短絡させるように切り替えるのと同時に、前記他方の電極を接地させるように切り替わる第2切替スイッチ
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記コヒーラの状態に応じて前記第1電源から前記デコヒーラに電力を供給するか否かを選択的に切り替える電源スイッチ
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の検出器。
【請求項4】
コヒーラが絶縁状態から短絡状態に移行すると、第2電源から電力が供給される第1切替駆動部と、
前記第1電源から電力が供給されると、前記電源スイッチを、前記第1電源から前記デコヒーラに電力を供給するように動作させる第2切替駆動部と、
をさらに備え、
前記第1切替駆動部は、前記第2電源から供給される電力に基づいて前記第1電源から前記第2切替駆動部に電力を供給するように動作する
ことを特徴とする請求項3に記載の検出器。
【請求項5】
前記第2切替スイッチは、前記第1切替スイッチが前記コヒーラの前記一方の電極を前記他方の電極に短絡させるように切り替えるのと同時に、前記第2電源から前記第1切替駆動部に対する電力の供給を遮断する
ことを特徴とする請求項4に記載の検出器。
【請求項6】
前記第2切替駆動部と並列に接続され、前記コヒーラが短絡状態であるときに前記第1電源で充電されるコンデンサ
をさらに備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の検出器。
【請求項7】
前記コヒーラが絶縁状態から短絡状態に移行すると前記第1切替駆動部に電力を供給する第2電源
をさらに備えることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載の検出器。
【請求項8】
前記コヒーラが絶縁状態から短絡状態に移行すると前記デコヒーラに電力を供給する第1電源
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の検出器。
【請求項9】
前記コヒーラに接続され、電磁波を受信するアンテナ
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の検出器。
【請求項10】
一方の電極にアンテナが接続され、前記アンテナが電磁波を受信したときに、絶縁状態から短絡状態に移行するコヒーラと、
出力する直流電力のレベルを変更可能な第3電源と、
前記コヒーラが短絡状態であるときに前記第3電源から電力が供給され、前記コヒーラを短絡状態から絶縁状態に移行するデコヒーラと、
前記デコヒーラが前記コヒーラを短絡状態から絶縁状態に移行させる前に、前記コヒーラの前記一方の電極を、前記アンテナに接続された状態から、前記コヒーラの他方の電極に短絡させるように切り替わる第1切替スイッチと、
を備え、
前記第3電源は、前記コヒーラの動作に応じて前記デコヒーラに電力を供給する
ことを特徴とする測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器、測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、アンテナ、デコヒーラ付コヒーラ、電源を備えた雷検知器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-294020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雷は様々な周波数の電磁波を放出し、それぞれの周波数の電界強度が時間とともに急激に変化する。このため、雷により放出される電磁波の電界強度の変化も急激なものとなる。特許文献1に開示されている雷検知器は、このような電磁波をとらえるために、急激で大きな電界強度の変化に反応するコヒーラを有している。しかし、該雷検知器では、電磁波を検知し、その後コヒーラをデコヒーアして次の電磁波の検出に備えるが、デコヒーア後におけるコヒーアの残留電荷やその周辺の静電気などがコヒーラに影響し、次の電磁波を正確に検出できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、一方の電極にアンテナが接続され、前記アンテナが電磁波を受信したときに、絶縁状態から短絡状態に移行するコヒーラと、前記コヒーラが短絡状態であるときに第1電源から電力が供給され、前記コヒーラを短絡状態から絶縁状態に移行させるデコヒーラと、前記デコヒーラが前記コヒーラを短絡状態から絶縁状態に移行させる前に、前記コヒーラの前記一方の電極を、前記アンテナに接続された状態から、前記コヒーラの他方の電極に短絡された状態に切り替える第1切替スイッチと、を備える。
本発明の他の特徴については、添付図面および本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、毎回同一の条件で電磁波を検出することができるため電磁波の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】アンテナが電磁波を受信していない状態の検出器の一例を示す図である。
図2】アンテナが電磁波を受信したときの電流の流れの一例を示す図である。
図3】コヒーラがデコヒーアされたときの電流の流れの一例を示す図である。
図4】コンデンサが第2切替駆動部を保持している状態の一例を示す図である。
図5】検出器の動作の一例を示すタイムチャートである。
図6】測定器の一例を示す図である。
図7】測定器の測定手順の一例を示すタイムチャートである。
図8】測定器がハンチングするときの電流の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下の説明において、同一符号を付した部分は同一の要素を表し、その基本的な構成および動作は同様であるものとする。
【0009】
===検出器1===
図1は、アンテナ19が電磁波を受信していない状態の検出器1を示す図である。図2は、アンテナ19が電磁波を受信した状態の検出器1を示す図である。図1図2を参照しつつ、検出器1の構成について説明する。
【0010】
本実施形態に係る検出器1は、電磁波を受信する度に、後述するコヒーラ10の電極K1,K2を短絡する(つまり、コヒーラ10の電極K1,K2を同電位にする)ことによりコヒーラ10の周辺の静電気の影響や残留電荷を排除する。これにより、検出器1は、毎回同一条件で電磁波を検出することが可能となる。以下、検出器1の構成について説明する。なお、検出器1は、一例として雷を検出することとして説明するがこれに限定されず、急激な変化を示す電磁波を検出する場合に適用可能である。
【0011】
図1は、検出器1の一例を示す構成図である。図1に示すように、検出器1は、コヒーラ10、デコヒーラ11、第1切替スイッチ12、第2切替スイッチ13、閉路電源14、リセット電源15、第1切替駆動部16a、第2切替駆動部16b、電源スイッチ17、コンデンサ18、アンテナ19を含んで構成されている。
【0012】
まず、コヒーラ10について説明する。
【0013】
コヒーラ10は、アンテナ19で受信した電磁波を検出する装置である。コヒーラ10は、例えば、一対の電極間にニッケル等の金属粉末を挟み込み、それらを絶縁体で被覆する構造である。通常状態のコヒーラ10は、電極間の電気抵抗は高くほぼ絶縁状態である。しかし、落雷による急激で大きな電界強度の変化(雷サージ)に反応して、電気抵抗が減少し最終的には短絡状態(コヒーア)になる。なお、コヒーラ10は緩やかな電界強度の変化に対しては感度が低く殆ど反応しない。
【0014】
ここで、コヒーラ10の構造の一例について詳細に説明する。コヒーラ10は、例えばNiとAgの混合粉体(Ni95Wt%、Ag5Wt%、粒子直径約100~1500μm)をAgの電極で挟み、ガラス管中に乾燥空気とともに封入したものである。コヒーラ10は、例えば、Ni,Co,Fe,Mn,Zn,Cu,Ag,Au,Pd,Al,Pt等の金属単体粒子もしくは混合粒子をエボナイト、ガラス、プラスチック等の絶縁管中に流動可能に詰めたものであり、絶縁管の両端部には1対の電極を備えている。
【0015】
次に、コヒーラ10が絶縁状態から短絡状態に移行するときの過程について説明する。コヒーラ10は、絶縁状態から、印加電圧の上昇により、電極と金属粉末との間や金属粉末同士で点接触が形成される点接触形成期を経て、定電圧ダイオードを並列に逆接続したものやバリスタなどに近似した電圧制限特性動作期に移行する。さらに、印加電圧が破壊電圧に至ったときに、コヒーラ10は短絡動作期に移行する。ただし、コヒーラ10は一度導通状態になると電流を切っても元の絶縁状態には戻らない。コヒーラ10を、短絡状態から絶縁状態に移行させるには、後述するデコヒーラ11で振動を与える。
【0016】
なお、図示していないが、コヒーラ10には、電圧の高い静電気帯電または商用電源電圧などを検出できるようプローブを接続してもよい。また、コヒーラ10が安定した抵抗値を示すよう、数百ミクロン以下の粒度を持つ球状金属粉をコヒーラ管の中に封入してもよい。また、衝撃性の入力電圧を付属回路に通さずに有効にコヒーラ10だけに印加させるために高周波チョークを挿入してもよい。
【0017】
次に、コヒーラ10と他の装置との接続関係およびその作用について、図1図4を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
コヒーラ10は、図1に示すように、一方の電極K1が第1切替スイッチ12および閉路電源14の一方の端子に接続され、他方の電極K2が第2切替スイッチ13に接続されている。ここで、閉路電源14は例えば電池などの直流電源である。
【0019】
ここで、第1切替スイッチ12は、後述する第2切替駆動部16bに電流が流れたときに、コヒーラ10の一方の電極K1の接続先を第1経路から第2経路に切り替えるスイッチである。ここで、第1経路とはコヒーラ10の一方の電極K1をアンテナ19に接続する経路であり、第2経路とはコヒーラ10の一方の電極K1を他方の電極K2と短絡する経路である。
【0020】
また、第2切替スイッチ13は、第2切替駆動部16bに電流が流れたときに、コヒーラ10の他方の電極K2の接続先を第3経路から第4経路に切り替えるスイッチである。ここで、第3経路とは第1切替駆動部16aを介してコヒーラ10の他方の電極K2を閉路電源14に接続する経路であり、第4経路とはコヒーラ10の他方の電極K2を接地する経路である。
【0021】
なお、図1図3では、第1切替スイッチ12、第2切替スイッチ13、第2切替駆動部16bのそれぞれは別体で形成されているように示したが、これらは一体的に形成されていてもよい。例えば、第1切替スイッチ12と第2切替駆動部16bとは一体の5極リレーでもよく、第2切替スイッチ13と第2切替駆動部16bとは一体の4極リレーでもよいし、これらリレーが更に一体に集合したリレーでもよい。このようにリレーを用いた場合、第2切替駆動部16bがリレーの入力側(一次側)のコイルであり、第1切替スイッチ12、第2切替スイッチ13がリレーの出力側(二次側)の接点である。
【0022】
上記の通り、コヒーラ10は、第2切替駆動部16bに電流が流れていない状態、すなわちアンテナ19が電磁波を受信していない状態では、図1に示すように、一方の電極K1がアンテナ19に接続され、他方の電極K2が第1切替駆動部16aを介して閉路電源14に接続されている。この状態では、コヒーラ10は絶縁状態であるため、第1切替駆動部16aに電流は流れない。一方、アンテナ19が急激で大きな電界変化を伴う電磁波を受信すると、これに反応して、図2に示すようにコヒーラ10が短絡状態に移行して、後述するように第2切替駆動部16bに電流が流れる。これにより、図3に示すように、第1切替スイッチ12の接点が接点Aから接点Bに切り替わり、第2切替スイッチ13の接点が接点Cから接点Dに切り替わることで、一方の電極K1が他方の電極K2と短絡されるとともに、他方の電極K2が接地される。この状態で、検出器1は、デコヒーラ11によりコヒーラ10に振動を与え、コヒーラ10を短絡状態から絶縁状態に移行させて、次の電界検出に備える。このため、コヒーラ10の両方の電極K1,K2が同電位となり、次回も同一条件で雷に伴う電界を検出することが可能となる。
【0023】
次に、第2切替駆動部16bの動作について詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、コヒーラ10の一方の電極K1は、閉路電源14、抵抗Rを介して第1切替駆動部16aの端子T1に接続されている。抵抗Rは、路電源14から第1切替駆動部16aに印加される電圧を調整するためのものである。コヒーラ10の他方の電極K2は第1切替駆動部16aの端子T2に接続されている。この状態において、アンテナ19が電磁波を受信するとコヒーラ10が絶縁状態から短絡状態に移行するため、図2に示すようにコヒーラ10、閉路電源14、第1切替駆動部16aで閉回路が形成される。
【0025】
第1切替駆動部16aは、例えばフォトモスリレーであり、一方側の端子T1,T2に閉路電源14から電力が供給されると、他方側の端子T3,T4が導通する。図1に示すように、第1切替駆動部16aの端子T3にはリセット電源15が接続され、端子T4には第2切替駆動部16bが接続されている。第2切替駆動部16bは、端子T4とリセット電源15の間に設けられている。このため、図2に示すように、アンテナ19が電磁波を受信すると、第1切替駆動部16aの端子T1,T2に電流が流れ、端子T3,T4間が導通し、第1切替駆動部16a、リセット電源15、第2切替駆動部16bで閉回路が形成される。これにより第2切替駆動部16bに電流が流れる。なお、リセット電源14は例えば電池などの直流電源である。
【0026】
なお、この第1切替駆動部16aは、後段の回路を電気的に絶縁し保護するために設けるものであり、また後段の回路を誤動作させる電気的ノイズを除去する役割も果たす。
【0027】
次に、デコヒーラ11について説明する。なお、以下において、コヒーラ10が絶縁状態から短絡状態に移行することを「コヒーア」といい、短絡状態から絶縁状態に移行することを「デコヒーア」という。
【0028】
デコヒーラ11は、コヒーアしたコヒーラ10の絶縁性を回復するための装置である。デコヒーラ11は、圧電素子や電磁石より超音波(例えば20kHz以上)を発生するようなものや、機械的振動を発生するようなものであり、例えば、モータ、ブザー、超音波振動子、リレーの可動部分などである。デコヒーラ11の動作により、コヒーラ10の絶縁体が振動し、コヒーラ10が短絡状態から元の絶縁状態に復帰する。
【0029】
ここで、デコヒーラ11と他の装置との接続関係およびその作用について、以下詳細に説明する。
【0030】
デコヒーラ11は、図1に示すように、一方の端子D1が電源スイッチ17を介してリセット電源15の一方の端子に接続され、他方の端子D2がリセット電源15の他方の端子に接続されている。このため、デコヒーラ11は、電源スイッチ17の動作に応じて起動・停止する。電源スイッチ17は、例えば、a接点であり、第2切替駆動部16bに電流が流れると、その金属部分を物理的に接触させる。このため、a接点の金属部分の物理的な接触・非接触を切り替えることによりデコヒーラ11のON・OFFを制御する。
【0031】
なお、電源スイッチ17と第2切替駆動部16bとは一の4極リレーとして形成されていてもよい。この場合、第2切替駆動部16bが入力側(一次側)のコイルであり、電源スイッチ17が出力側(二次側)の接点である。
【0032】
次に、コンデンサ18について説明する。
【0033】
コンデンサ18は、第2切替駆動部16bの状態を一定時間保持する。コンデンサ18は、第2切替駆動部16bと並列に接続されている。このため、アンテナ19が電磁波を受信して第2切替駆動部16bに電流が流れる際に、コンデンサ18が充電される。第2切替駆動部16bの動作に応じて第1切替スイッチ12、第2切替スイッチ13が動作し、リセット電源15から第2切替駆動部16bに対する電力の供給が遮断されるが、このとき、図4に示すように、コンデンサ18が第2切替駆動部16bに電力を供給する。このため、第2切替駆動部16b(電源スイッチ17)を保持し、デコヒーラ11を起動できる。
【0034】
なお、検出器1は、アンテナ19とコヒーラ10との間にフィルタトランス(不図示)を備えていてもよい。これにより、アンテナ19で受信する電磁波の周波数成分を選択することができるとともに、誘導雷からコヒーラ10を保護することができる。
【0035】
また、検出器1は、閉路電源14、リセット電源15、アンテナ19を含んで構成されているとして説明したが、これらの構成要素は必須ではない。閉路電源14、リセット電源15、アンテナ19は、検出器1とは別体として付帯するものでもよい。
【0036】
===検出器1の動作手順===
図1図5を参照して、アンテナ19が電磁波を受信してからコヒーラ10をデコヒーアするまでの一連の動作手順を説明する。
【0037】
検出器1は、時刻t11にアンテナ19が電磁波を受信すると、コヒーラ10が絶縁状態から短絡状態に移行する(コヒーア)。これにより、図2に示すように、閉路電源14から第1切替駆動部16aに電流が流れ、第1切替駆動部16aの他方側の端子T3,T4間が導通する。
【0038】
そして、リセット電源15から第1切替駆動部16aを介して第2切替駆動部16bに電流が流れ、時刻t12に第2切替駆動部16bに所定の電圧(閉路電源14の定格電圧)が印加されると、図3に示すように電源スイッチ17がONする。電源スイッチ17がONすると同時に、第1切替スイッチ12の接点が接点Aから接点Bに切り替わり、第2切替スイッチ13の接点が接点Cから接点Dに切り替わる。これにより、コヒーラ10の両方の電極K1,K2が短絡され同電位になるとともに、第1切替駆動部16aにおける端子T3と端子T4の間の導通が遮断される。端子T3と端子T4の間の導通が遮断されると、リセット電源15から第2切替駆動部16bへの電力が遮断される。しかし、この状態において、図4に示すように、充電されたコンデンサ18から第2切替駆動部16bに電力を供給し、第2切替駆動部16b(電源スイッチ17)が保持される。
【0039】
そして、リセット電源15から電源スイッチ17を介してデコヒーラ11に電流が流れデコヒーラ11が起動する。コヒーラ10は、デコヒーラ11から振動を受けると、時刻t12から所定の時間遅い時刻t13にデコヒーアする。ここで、時刻t12と時刻t13の時間差は、コヒーラ10の特性で決まるものである。このため、コヒーラ10の両方の電極K1,K2が短絡されている状態でデコヒーアできる。
【0040】
その後、時刻t14において、コンデンサ18から第2切替駆動部16bに印加される電圧が第2切替駆動部16bの最低保持電圧を下回ると、第2切替駆動部16bの保持が解けて電源スイッチ17がOFFする。電源スイッチ17がOFFすると同時に、第1切替スイッチ12の接点が接点Bから接点Aに切り替わり、第2切替スイッチ13の接点が接点Dから接点Cに切り替わる。このため、検出器1は、図1に示すようにアンテナ19が電磁波を受信する前の状態に戻り、次の電磁波の受信に備える。
【0041】
===測定器2===
図6は、測定器2の一例を示す構成図である。図6に示すように、測定器2は、コヒーラ10、デコヒーラ11、第1切替スイッチ12、第2切替スイッチ13、閉路電源14、第1切替駆動部16a、第2切替駆動部16b、電源スイッチ17、コンデンサ18、アンテナ19、可変電源21を含んで構成されている。
【0042】
測定器2は、検出器1の構成要素のうちリセット電源15を可変電源21に変更したものである。よって、検出器1と同じ構成要素についてはその説明を省略する。
【0043】
可変電源21は、出力する直流電圧のレベルを調整する。可変電源21は、一方の端子が電源スイッチ17を介してデコヒーラ11の一方の端子に接続され、他方の端子がデコヒーラ11の他方の端子D2に接続されている。可変電源21を設けることにより、デコヒーラ11に印加するべき電圧レベルを測定できるため、電源設計が可能になる。
【0044】
デコヒーラ11に印加するべき電圧レベルを測定するに際し、デコヒーアの前に、コヒーラ10の両方の電極K1,K2を短絡することで、残留電荷や周辺の静電気の影響を排除することができるため、デコヒーラ11の最低動作電圧を正確に測定できる。
【0045】
==測定器2の測定手順==
図6図7図8を参照して、測定器2がデコヒーラ11の最低動作電圧を測定する測定手順を説明する。
【0046】
測定器2におけるt21,t22までの動作は検出器1のt11,t12までの動作と同じであるため、その説明を省略する。
【0047】
図7は、測定器2の測定手順の一例を示すタイムチャートである。図7に示すように、時刻t23において、デコヒーラ11はコヒーラ10をデコヒーアするべくコヒーラ10に振動を与える。しかし、可変電源21からデコヒーラ11に印加される可変電圧が、デコヒーラ11の最低動作電圧を下回るため、コヒーラ10がコヒーアされない。最低動作電圧とは、デコヒーラ11がコヒーラ10をデコヒーアするために必要な最も低い電圧である。
【0048】
その後、第2切替駆動部16bに電流を流すコンデンサ18の充電量が減少し、コンデンサ18から第2切替駆動部16bに印加される電圧が第2切替駆動部16bの最低保持電圧を下回ると、電源スイッチ17がOFFし、第1切替スイッチ12の接点が接点Bから接点Aに切り替わり、第2切替スイッチ13の接点が接点Dから接点Cに切り替わる。しかし、コヒーラ10は未だ短絡状態であるため、可変電源21から第2切替駆動部16bに電力が供給される。このため、図8に示すように、デコヒーラ11がコヒーラ10をデコヒーアするための動作を繰り返す(ハンチング)。これにより、ハンチング発生時の電圧よりも高い電圧がデコヒーラ11の最低動作電圧であることがわかる。
【0049】
===まとめ===
以上説明したように、本実施形態に係る検出器1は、一方の電極K1にアンテナ19が接続され、アンテナ19が電磁波を受信したときにリセット電源15(第2電源)から電力が供給され、コヒーラ10を短絡状態から絶縁状態に移行させるデコヒーラ11と、デコヒーラ11がコヒーラ10を短絡状態から絶縁状態に移行させる前に、コヒーラ10の一方の電極K1を、アンテナ19に接続させた状態から、コヒーラ10の他方の電極K2に短絡させるように切り替える第1切替スイッチ12と、を備える。これにより、検出器1は毎回同一の条件で電磁波を検出することができるため電磁波の検出精度を向上できる。
【0050】
又、本実施形態に係る検出器1は、第1切替スイッチ12がコヒーラ10の一方の電極K1を他方の電極K2に短絡させるように切り替えるのと同時に、他方の電極K2を接地に接続するように切り替える第2切替スイッチ13をさらに備える。これにより、コヒーラ10の両方の電極K1,K2を同電位(0V)にすることができる。
【0051】
又、本実施形態に係る検出器1は、コヒーラ10の状態に応じてリセット電源15からデコヒーラ11に電力を供給するか否かを選択的に切り替える電源スイッチ17をさらに備える。これにより、確実にコヒーラ10の両方の電極K1,K2を短絡した後にデコヒーアできる。
【0052】
又、本実施形態に係る検出器1の第2切替スイッチ13は、第1切替スイッチ12がコヒーラ10の両方の電極K1,K2を短絡するように切り替えるのと同時に、閉路電源14から第1切替駆動部16aに対する電力の供給を遮断する。これにより、第1切替スイッチ12と同時に動作するスイッチにより第1切替駆動部16aへの電力供給を遮断できるため、効率的な装置設計が可能となる。
【0053】
又、本実施形態に係る検出器1は、第2切替駆動部16bと並列に接続され、コヒーラ10が短絡状態であるときにリセット電源15(第1電源)で充電されるコンデンサ18をさらに備える。これにより、簡易な装置構成で、コヒーラ10の両方の電極K1,K2を短絡した後に、コヒーラ10をデコヒーアできる。
【0054】
又、本実施形態に係る検出器1は、閉路電源14(第2電源)、リセット電源15(第1電源)、アンテナ19をさらに備える。これにより、検出器1に電力を供給する電源設備やアンテナの準備が不要となる。
【0055】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 検出器
10 コヒーラ
11 デコヒーラ
12 第1切替スイッチ
13 第2切替スイッチ
14 閉路電源
15 リセット電源
16a 第1切替駆動部
16b 第2切替駆動部
17 電源スイッチ
18 コンデンサ
19 アンテナ
2 測定器
21 可変電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8