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  • 特許-タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230516BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230516BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230516BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08L15/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019050627
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2019167531
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018052930
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】三原 諭
(72)【発明者】
【氏名】芦浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】餝矢 理起
(72)【発明者】
【氏名】上西 和也
(72)【発明者】
【氏名】新家 雄
(72)【発明者】
【氏名】川添 真幸
【審査官】長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231575(JP,A)
【文献】特開2016-199709(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039006(WO,A1)
【文献】特開2016-006139(JP,A)
【文献】特開2016-183268(JP,A)
【文献】特開2011-094010(JP,A)
【文献】特開2018-188598(JP,A)
【文献】特開2013-82794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
C08K 3/00- 3/40
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が100,000以上であるジエン系ゴムと、CTAB吸着比表面積が100~300m/gであるシリカと、数平均分子量が100,000未満である液状ゴムとを含有し、
前記シリカの細孔サイズAに対する前記液状ゴムの回転径Bの比B/Aが、0.10~1.0であり、
前記液状ゴムが、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有し、分子量分布が2.0以下であり、回転径Bが10nm以下である、変性ブタジエンポリマーであり、
前記液状ゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5~20質量部である、タイヤ用ゴム組成物。
ここで、前記回転径Bは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に多角度光散乱検出器(MALS)を組み合わせたGPC-MALSを用いて、下記条件で測定した値をいう。
条件
・濃度:1mg/mLとなるよう試料をテトラヒドロフランに溶解させる
・測定温度:40℃
・注入量:100μL
・流速:1ml/分
【請求項2】
前記回転径Bが、16nm以下である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記変性ブタジエンポリマーが、前記窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有する、請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両走行時の低燃費性の面から、タイヤの発熱性(ヒステリシスロス)を低減することが求められている。これに対し、タイヤのトレッド部を構成するゴム成分に、シリカを配合して、タイヤの発熱性を低減する方法が知られている。
しかし、シリカはゴム成分との親和性が低く、また、シリカ同士の凝集性が高いため、ゴム成分に単にシリカを配合してもシリカが分散せず、発熱性(転がり抵抗)を低減する効果が十分に得られないという問題があった。
【0003】
シリカを含有するタイヤ用ゴム組成物としては、例えば特許文献1に、ジエン系ゴムとシリカと液状ブタジエンポリマーとを含有するタイヤ用ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-047888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、環境問題および資源問題などから、転がり抵抗のさらなる低減が求められている。また、求められる安全レベルの向上に伴い、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性性能の向上も求められている。
このようななか、本発明者らが特許文献1の実施例を参考にタイヤ用ゴム組成物を調製したところ、将来のさらなる特性向上の要求まで考慮すると、全ての特性についてそのような高いレベルの要求に応えられるものが必ずしも得られないことが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、タイヤにしたときに、優れた低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示すタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、CTAB吸着比表面積が特定の範囲にあるシリカと、液状ゴムとを併用するとともに、上記シリカの細孔サイズと上記液状ゴムの回転径とを特定の関係にすることで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
(1) 数平均分子量が100,000以上であるジエン系ゴムと、CTAB吸着比表面積が100~300m/gであるシリカと、数平均分子量が100,000未満である液状ゴムとを含有し、
上記シリカの細孔サイズAに対する上記液状ゴムの回転径Bの比B/Aが、0.10~1.0である、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記回転径Bが、16nm以下である、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記液状ゴムが、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有し、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーであり、
上記液状ゴムの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5~20質量部である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記変性ブタジエンポリマーが、上記窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有する、上記(3)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) 上記(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、タイヤにしたときに、優れた低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示すタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物及び上記タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有される各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0012】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、ジエン系ゴムと、CTAB吸着比表面積が100~300m/gであるシリカと、液状ゴムとを含有し、上記シリカの細孔サイズAに対する上記液状ゴムの回転径Bの比B/Aが、0.10~1.0である。
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えらえる。
【0013】
上述のとおり、本発明の組成物において、シリカの細孔サイズAに対する液状ゴムの回転径Bの比B/Aが特定の範囲にある。そのため、液状ゴムはシリカの細孔に入り込んで細孔内部に極めて良好に定着するものと考えられる。そして、シリカの細孔に定着した液状ゴムはジエン系ゴムと相互作用し、シリカ同士の凝集を防ぐものと考えられる。結果として、本発明の組成物は、タイヤにしたときに、優れた低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示すものと推測される。
【0014】
以下、本発明の組成物に含有される各成分等について詳述する。
【0015】
〔ジエン系ゴム〕
本発明の組成物は、数平均分子量が100,000以上であるジエン系ゴムを含有する。
上記ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)及びクロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
上記ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はブタジエンゴム(BR)を含むのが好ましく、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)を含むのがより好ましい。
【0016】
<分子量>
上述のとおり、本発明の組成物は、数平均分子量(Mn)が100,000以上であるジエン系ゴムを含有する。
上記ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、200,000~1,000,000であることがより好ましい。
また、上記ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、200,000~10,000,000であることが好ましく、400,000~2,000,000であることがより好ましい。
なお、上記ジエン系ゴムに含まれる少なくとも1種のジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることが好ましく、ジエン系ゴムに含まれるすべてのジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることがより好ましい。
【0017】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0018】
<好適な態様>
上述のとおり、上記ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)を含むのが好ましい。
この場合、ジエン系ゴム中のSBRの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、20~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
また、ジエン系ゴム中のブタジエンゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、10~80質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましい。
【0019】
〔シリカ〕
上述のとおり、本発明の組成物は、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積(以下、単に「CTAB」とも言う)が100~300m/gであるシリカを含有する。
上記シリカはCTAB吸着比表面積が100~300m/gのシリカであれば特に制限されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0020】
<CTAB吸着比表面積>
上述のとおり、上記シリカのCTAB吸着比表面積は、100~300m/gである。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、115~280m/gであることが好ましく、150~270m/gであることがより好ましく、165~260m/gであることがさらに好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値とする。
【0021】
<細孔サイズA>
上記シリカの細孔サイズ(細孔サイズA)は、後述する比B/Aが特定の範囲であれば特に制限されないが、1~100nmであることが好ましく、3~80nmであることがより好ましく、5~60nmであることがさらに好ましく、25~40nmであることが特に好ましい。
【0022】
なお、本明細書において、上記細孔サイズAは以下のとおり求めるものとする。
すなわち、JIS K1150に準拠し、水銀圧入法にてシリカの細孔分布を測定し、最頻値を細孔サイズAとする。
【0023】
上記細孔サイズAを制御する方法は特に制限されないが、例えば、シリカを製造する際のpH、温度、反応時間等を調節する方法などが挙げられる。なお、市販されているシリカについて細孔サイズAを測定し、適宜選択してもよい。
【0024】
なお、上記シリカが2種以上のシリカからなる場合、上記シリカの細孔サイズAは、各シリカの細孔サイズに各シリカの質量分率を乗じた合計(細孔サイズAの加重平均値)とする。
【0025】
<含有量>
本発明の組成物において、シリカの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、10~300質量部であることが好ましく、20~200質量部であることがより好ましく、30~150質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
〔液状ゴム〕
本発明の組成物は、数平均分子量が100,000未満である液状ゴムを含有する。
上記液状ゴムの具体例としては、液状ブタジエンポリマー(液状ポリブタジエン)(液状(液状BR)、液状イソプレンポリマー(液状ポリイソプレン)(液状IR)、及び、液状スチレンブタジエンポリマー(液状スチレンブタジエン共重合体)(液状SBR)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、液状ブタジエンポリマーが好ましい。
【0027】
<数平均分子量>
上述のとおり、本発明の組成物は、数平均分子量が100,000未満である液状ゴムを含有する。
上記液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、5,000~50,000であることが好ましく、8,000~30,000であることがより好ましい。
【0028】
<重量平均分子量>
上記液状ゴムの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、5,000~75,000であることが好ましく、8,000~45,000であることがより好ましい。
【0029】
<分子量分布>
上記液状ゴムの分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
【0030】
なお、上記液状ゴムの少なくとも1種の液状ゴムのMw、Mn及びMw/Mnが上記範囲に含まれることが好ましく、液状ゴムに含まれるすべての液状ゴムのMw、Mn及びMw/Mnが上記範囲に含まれることがより好ましい。
【0031】
<回転径B>
上記液状ゴムの回転径(回転径B)は、後述する比B/Aを満たせば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1.0~20.0nmであることが好ましく、1.5~15.0nmであることがより好ましく、2.0~10.0nmであることがさらに好ましく、3.0~8.0nmであることが特に好ましい。回転径Bは、本発明の効果がより優れる理由から、30nm以下であることが好ましく、16nm以下であることがより好ましい。
【0032】
本明細書において、上記回転径BはGPCに多角度光散乱検出器(MALS)を組み合わせたGPC-MALSを用いて測定したものとする。なお、濃度が1mg/mLとなるよう試料をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、測定温度:40℃、注入量:100μL、流速:1ml/分の条件で測定する。カラムは排除限界に合わせて適宜選択する。
【0033】
回転径Bを制御する方法は特に制限されないが、液状ゴムの分子量、分岐度、結合様式を変更する方法等が挙げられる。
【0034】
なお、上記液状ゴムが2種以上の液状ゴムからなる場合、上記液状ゴムの回転径Bは、各液状ゴムの回転径Bに各液状ゴムの質量分率を乗じた合計(回転径Bの加重平均値)とする。
【0035】
<特定変性ブタジエンポリマー>
上記液状ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有し、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマー(以下、「特定変性ブタジエンポリマー」とも言う)であることが好ましい。
【0036】
(特定官能基)
上述のとおり、特定変性ブタジエンポリマーは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(特定官能基)を有する。特定変性ブタジエンポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、特定官能基を末端に有するのが好ましい。なお、上記特定官能基を末端に有する場合、特定官能基は少なくとも1つの末端に有すればよい。
【0037】
特定官能基は窒素原子及びケイ素原子を含む官能基であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0038】
特定官能基は、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(M)で表される基であることが好ましい。
【0039】
【化1】
【0040】
上記式(M)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
上記式(M)中、Lは、2価の有機基を表す。
【0041】
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0042】
上記式(M)中、Rは、本発明の効果がより優れる理由から、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
複数あるRは同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
は、本発明の効果がより優れる理由から、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
【0044】
上述のとおり、上記式(M)中、Lは、単結合又は2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6~18)、-O-、-S-、-SO-、-N(R)-(R:アルキル基)、-CO-、-NH-、-COO-、-CONH-、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(-C2mO-:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1~10)であることが好ましい。
【0045】
上記式(M)中、nは、0~2の整数を表す。
nは、本発明の効果がより優れる理由から、2であることが好ましい。
【0046】
上記式(M)中、mは、1~3の整数を表す。
mは、本発明の効果がより優れる理由から、1であることが好ましい。
【0047】
上記式(M)中、n及びmは、n+m=3の関係式を満たす。
【0048】
上記式(M)中、*は、結合位置を表す。
【0049】
(分子量)
(1)数平均分子量
特定変性ブタジエンポリマーの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000以上18,000未満であることが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5,000以上10,000未満であることが好ましい。
【0050】
(2)重量平均分子量
特定変性ブタジエンポリマーの重量平均分子量は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000以上20,000未満であることが好ましく、5,000以上10,000未満であることがより好ましい。
【0051】
(3)分子量分布
上述のとおり、特定変性ブタジエンポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以下である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
【0052】
(ミクロ構造)
(1)ビニル構造
特定変性ブタジエンポリマーにおいて、ビニル構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~50モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。
ここで、ビニル構造の割合とは、ブタジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0053】
(2)1,4-トランス構造
特定変性ブタジエンポリマーにおいて、1,4-トランス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~70モル%であることが好ましく、30~50モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-トランス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0054】
(3)1,4-シス構造
特定変性ブタジエンポリマーにおいて、1,4-シス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~50モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-シス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0055】
なお、以下、「ビニル構造の割合(モル%)、1,4-トランス構造の割合(モル%)、1,4-シス構造の割合(モル%)」を「ビニル/トランス/シス」とも表す。
【0056】
(ガラス転移温度)
特定変性ブタジエンポリマーのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、-100~-60℃であることが好ましく、-90~-70℃であることがより好ましく、-85~-75℃であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0057】
(粘度)
特定変性ブタジエンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~10,000mPa・sであることが好ましく、3,000~6,000mPa・sであることがより好ましい。
また、特定変性ブタジエンポリマーを変性する前のブタジエンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、500~5,000mPa・sであることが好ましく、1,500~3,000mPa・sであることがより好ましい。
また、特定変性ブタジエンポリマーの粘度は、本発明の効果がより優れる理由から、変性前のブタジエンポリマーの粘度に対して、150~240%であることが好ましい。以下、変性前の特定変性ブタジエンポリマーに対する変性後の特性変性BRの粘度を「粘度(変性後/変性前)」とも言う。
なお、本明細書において、粘度は、JIS K5600-2-3に準じて、コーンプレート型粘度計を用いて測定したものとする。
【0058】
(特定変性ブタジエンポリマーの製造方法)
特定変性ブタジエンポリマーを製造する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。分子量分布を特定の範囲する方法は特に制限されないが、開始剤とモノマーと停止剤との量比、反応温度、及び、開始剤を添加する速度などを調整する方法などが挙げられる。
【0059】
特定変性ブタジエンポリマーが特定官能基を末端に有する場合、特定変性ブタジエンポリマーを製造する方法の好適な態様としては、例えば、有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合し、その後、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤を用いて重合を停止する方法(以下、「本発明の方法」とも言う)が挙げられる。本発明の方法を用いた場合、得られる特定変性ブタジエンポリマーは、補強用充填剤を含有するゴム組成物に用いたときに、より優れた分散性、加工性、靭性、低発熱性及び耐摩耗性を示す。
【0060】
(1)有機リチウム化合物
上記有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0061】
有機リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエンに対して、0.001~10モル%であることが好ましい。
【0062】
(2)ブタジエンの共重合
有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合する方法は特定に制限されないが、ブタジエンを含有する有機溶媒溶液に上述した有機リチウム化合物を加え、0~120℃(好ましくは30~100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0063】
(3)特定求電子剤
本発明の方法では、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤(以下、「特定求電子剤」とも言う)を用いてブタジエンの重合を停止する。特定求電子剤を用いて重合を停止することで、上述した特定官能基を末端に有する変性ブタジエンポリマーが得られる。
特定求電子剤は窒素原子及びケイ素原子を含む化合物であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0064】
特定求電子剤は、本発明の効果がより優れる理由から、シラザンであることが好ましく、環状シラザンであることがより好ましい。ここで、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si-N結合を有する化合物)を意図する。
【0065】
上記環状シラザンは、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(S)で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化2】
【0067】
上記式(S)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例及び好適な態様は上述した式(M)中のR及びRと同じである。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。2価の有機基の具体例及び好適な態様は、上述した式(M)中のLと同じである。
【0068】
上記式(S)中、Rは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、アルキルシリル基であることがより好ましい。
【0069】
上記式(S)中、R及びRは、本発明の効果がより優れる理由から、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
【0070】
上記式(S)中、Lは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは3~5)であることが好ましい。
【0071】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N-n-ブチル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-フェニル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-トリメチルシリル-1,1-ジエトキシ-2-アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
【0072】
有機リチウム化合物に対する特定求電子剤の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、モル比で、0.1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0073】
<含有量>
本発明の組成物において、上記液状ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
また、本発明の組成物において、上記液状ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1.0~10.0質量%であることがより好ましい。
【0074】
〔比B/A〕
上述のとおり、本発明の組成物において、上述したシリカの細孔サイズAに対する上述した液状ゴムの回転径Bの比B/Aは、0.10~1.0である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.11~0.90であることが好ましく、0.12~0.80であることがより好ましく、0.13~0.30であることがさらに好ましい。
【0075】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、CTABが100~300m/g以外であるシリカ、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0076】
<シランカップリング剤>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシ基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0077】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0079】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
また、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0081】
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m/gであることが好ましく、70~150m/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0082】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴムと上述した特定変性ブタジエンポリマーと上述した特定未変性ポリマーとの合計100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましい。
【0083】
<特定エステル化合物>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸エステル、および、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル硫酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物(以下、「特定エステル化合物」とも言う)を含有するのが好ましい。
【0084】
特定エステル化合物は、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルであることが好ましい。
【0085】
【化3】
【0086】
ここで、上記式(1)中、Rは炭素数3~21のアルキル基を表し、nは1~10の整数を表し、mは1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、mが1である場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mが2である場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
が示す炭素数3~21のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても分岐鎖状のアルキル基であってもよい。また、アルキル基の炭素数は、5~15であることが好ましく、7~13であることがより好ましく、9~13であることが更に好ましい。
このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基などが挙げられる。
【0088】
nは、1~10の整数を表し、2~8の整数であることが好ましく、3~6の整数であることが好ましい。なお、nは、エチレンオキシ基(O-CH-CH)の付加モル数とも言えるため、平均値(平均付加モル数)で表すと、3~10程度の数であることが好ましい。
【0089】
が示す炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても分岐鎖状のアルキル基であってもよい。
このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0090】
上記式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンデシルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルのリン酸ジエステルなどが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
本発明の組成物において、特定エステル化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
また、本発明の組成物において、特定エステル化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、2~12質量%であることがさらに好ましい。
【0092】
<ピペラジン化合物>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(2)で表されるピペラジン化合物を含有することが好ましい。
【0093】
【化4】
【0094】
ここで、上記式(2)中、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、AおよびAは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、炭素数3~30の1価の炭化水素基を表す。
【0095】
上記式(2)中、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、本発明の効果がより優れる理由から、水素原子であることが好ましい。
上記置換基としては、1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、ナフチル基などが挙げられる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数6~18のアリール基などが挙げられる。
【0096】
上記式(2)中、AおよびAは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基;酸素原子を含む、2価の酸素原子含有連結基;置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と2価の酸素原子含有連結基との組み合わせ;等が挙げられる。
ここで、2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基などの2価の脂肪族炭化水素基;アリーレン基、アラルキレン基などの2価の芳香族炭化水素基;が挙げられる。なかでも、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がさらに好ましい。
また、2価の酸素原子含有連結基は、酸素原子以外のヘテロ原子(例えば、炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子など)を有していてもよく、具体的には、例えば、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)、イミド結合(-C(=O)-N(Q)-C(=O)-)等が挙げられる。なお、イミド結合中のQは、1価の炭化水素基を示し、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基などの1価の脂肪族炭化水素基;アリール基、アラルキル基などの1価の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
また、2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、上記式(2)中のX、X、XおよびXにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ヒドロキシ基が好ましい。
【0097】
上記式(2)、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、炭素数3~30の1価の炭化水素基を表す。
上記置換基としては、例えば、上記式(2)中のX、X、XおよびXにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ヒドロキシ基が好ましい。
また、炭素数3~30の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基などが挙げられ、なかでも、炭素数3~18のアルキル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、なかでも、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基としては、例えば、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数3~18のアルケニル基が好ましい。
【0098】
上記式(2)で表されるピペラジン化合物としては、具体的には、例えば、下記式(2-1)~(2-6)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(2-5)中、rは、1~10の整数を表し、本発明の効果がより優れる理由から、1~5の整数であることが好ましい。
【0099】
【化5】
【0100】
本発明の組成物において、上記ピペラジン化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましい。
また、本発明の組成物において、上記ピペラジン化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
また、本発明の組成物において、上記ピペラジン化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述した特定エステル化合物の含有量に対して、5.5~60質量%であることが好ましく、10~55質量%であることがより好ましい。
【0101】
〔タイヤ用ゴム組成物の調製方法〕
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0102】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す空気入りタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0103】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0104】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例
【0105】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
〔特定変性ブタジエンポリマーの製造〕
n-BuLi(n-ブチルリチウム)を、1,3-ブタジエン及び2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンのシクロヘキサン混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(以下構造)を投入し、重合を停止した。
【0107】
【化6】
【0108】
得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノールに流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、下記式(m1)(ここで、*は結合位置を表す)で表される官能基を末端に有する変性ブタジエンポリマー(特定変性ブタジエンポリマー)(199g,Mw/Mn=1.1)を97%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=24/40/36と見積もられた。また、Tgは-80℃であった。また、粘度(変性後/変性前)は204%であった。
【0109】
【化7】
【0110】
〔ピペラジン化合物の合成〕
1-ブロモオクタデカン(東京化成工業(株)製)33.3gと、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(日本乳化剤(株)製ヒドロキシエチルピペラジン)13.0gとを、テトラヒドロフラン及びジクロロメタン中、室温(23℃)で1時間反応させた。
次いで、反応溶液を炭酸カリウム水溶液で水洗した後、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。
次いで、無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで、下記式で表されるピペラジン化合物を得た。得られたピペラジン化合物は、上述した式(2)で表されるピペラジン化合物に該当する。
【0111】
【化8】
【0112】
〔タイヤ用ゴム組成物の調製〕
下記表1に示される成分を、下記表1に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、150℃のバンバリーミキサーで2分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄及び加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
【0113】
〔評価〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で、170℃で10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作製した。そして、得られた加硫ゴム試験片について、以下の評価を行った。
【0114】
<凝集塊半径Rss
得られた加硫ゴム試験片について、100℃で超小角X線散乱法(USAXS)の測定を行った。超小角X線散乱法(USAXS)の測定条件は、波数qが0.006~0.4nm-1(q=4π/λsinθ;θは散乱角、λは0.62オングストローム(X線エネルギー:20keV)、露光時間が488msec、カメラ長が7.6m)とした。得られた散乱像について、-90~180°の円環平均を行い一次元化し、散乱プロファイルについて、国際公開2015/186781号に記載の一般式(I)を用いてフィッティングを行い、凝集塊半径Rss(nm)を求めた。
結果を表1に示す。凝集塊半径Rssが小さいほど、シリカの分散性が高いことを意味する。
【0115】
<tanδ(60℃)>
得られた加硫ゴム試験片について、JISK6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件でtanδ(60℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は標準例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど低転がり抵抗性に優れることを意味し、100未満であることが好ましい。
【0116】
<WETスキッド>
得られた加硫ゴム試験片について、ブリティッシュスタンダードポータブルスキッドテスター(スタンレイ・ロンドン社製)を用いて、湿潤路面(水温8℃)の条件下で、ASTM E-303-83の方法に準拠してすべり抵抗値を測定した。
結果を表1に示す。結果は標準例1を100とする指数で表した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを意味し、100超であることが好ましい。
【0117】
<耐摩耗性能>
得られた加硫ゴム試験片について、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を用いて、JIS K6264-2:2005に準拠し、付加力4.0kg/cm3(=39N)、スリップ率30%、摩耗試験時間4分、試験温度を室温の条件で摩耗試験を行い、摩耗質量を測定した。そして、下記のとおり指数を算出した。
結果を表1に示す。指数が大きいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性能に優れることを意味し、100超であることが好ましい。
指数=(標準例1の試験片の摩耗質量/各例の摩耗質量)×100
【0118】
【表1】
【0119】
上記表1に示される各成分の詳細は以下のとおりである。なお、SBR(E580)及びBR(Nipol BR1220)のMnはいずれも100,000以上である。また、液状ゴム1~5のMnはいずれも100,000未満である。また、液状ゴム1(特定変性ブタジエンポリマー)は、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有し、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーであるため、上述した「特定変性ブタジエンポリマー」に該当する。
・SBR:E580(末端変性溶液重合SBR、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量):35.5質量%、ビニル単位含有量:40モル%、末端にヒドロキシ基を有する、Mw:136万、油展品(油展量:37.5質量%)、旭化成社製)
・BR:Nipol BR1220(BR、Mw:49万、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製、窒素吸着比比表面積(NSA)=90m/g)
・シリカ1:湿式シリカ(CTAB吸着比表面積:155m/g、細孔サイズ:30nm)
・シリカ2:湿式シリカ(CTAB吸着比表面積:230m/g、細孔サイズ:20nm)
・シリカ3:湿式シリカ(Zeosil 1115MP、CTAB吸着比表面積:115m/g、細孔サイズ:50nm、Rhodia社製)
・シリカ4:湿式シリカ(CTAB吸着比表面積:155m/g、細孔サイズ:100nm)
・シランカップリング剤:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・ZnO:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・老化防止剤:Santoflex 6PPD(Solutia Europe社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・液状ゴム1:上述のとおり製造された特定変性ブタジエンポリマー
・液状ゴム2:液状ブタジエンポリマー
・液状ゴム3:液状ブタジエンポリマー
・液状ゴム4:液状ブタジエンポリマー
・液状ゴム5:液状ブタジエンポリマー(Ricon130、Mn:2,500、CRAY VALLEY社製)
・ピペラジン化合物:上述のとおり合成されたピペラジン化合物
・特定エステル化合物:ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル(プライサーフA215C、第一工業製薬株式会社製、上述した式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル)
・加硫促進剤1:ノクセラーCZ(大内新興化学社製)
・加硫促進剤2:ノクセラーD(大内新興化学社製)
・硫黄:油処理イオウ(軽井沢精錬所社製)
【0120】
表1中、「液状ゴムの回転径B」、「シリカの細孔サイズA」及び「比B/A」は、それぞれ上述した「液状ゴムの回転径B」、「シリカの細孔サイズA」及び「比B/A」を表す。
【0121】
表1から分かるように、比B/Aが特定の範囲(0.10~1.0)にある実施例1~5は、優れた低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示した。
また、実施例1と実施例3と実施例5との対比(ピペラジン化合物及び特定エステル化合物を含有しない態様同士の対比)から、比B/Aが0.29以上である実施例1及び3は、より優れた低転がり抵抗性を示した。なかでも、比B/Aが0.70以下(特に、0.40以下)である実施例1は、より優れたウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示した。
また、実施例1と実施例2と実施例4との対比(シリカとしてシリカ1を含有し、液状ゴムとして液状ゴム1を含有する態様同士の対比)から、ピペラジン化合物を含有する実施例2及び4は、より優れた低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示した。なかでも、特定エステル化合物を含有する実施例4は、より優れた低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能を示した。
【0122】
一方、比B/Aが特定の範囲から外れる比較例1~3は、低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能のうち少なくとも1つが不十分であった。
【符号の説明】
【0123】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1