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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電子基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230516BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/46 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019062292
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020161756
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 峰信
(72)【発明者】
【氏名】佐々 恭大
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-103405(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208081(WO,A1)
【文献】特開2005-039217(JP,A)
【文献】米国特許第06459039(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面においてアレイ状に配置された複数の表面端子を介して半導体部品と接続し、裏面においてアレイ状に配置された複数の裏面端子を介して主基板と接続する電子基板であって、
前記電子基板内において前記表面端子と前記裏面端子とを電気的に接続し、かつ、前記裏面端子を介して前記主基板から電源が供給される第1配線と、
前記電子基板内において前記表面端子と前記裏面端子とを電気的に接続し、前記裏面端子を介して前記主基板から前記第1配線と同一電位の電源が供給され、かつ、前記電子基板内において前記第1配線と電気的に接続しない第2配線と、を備え、
前記第1配線に接続する前記表面端子同士の間の距離、および、前記第2配線に接続する前記表面端子同士の間の距離は、前記第1配線に接続する前記表面端子と前記第2配線に接続する前記表面端子との間の距離よりも短い、
電子基板。
【請求項2】
前記電子基板の面方向において、前記第1配線に接続する前記裏面端子は、前記第1配線に接続する前記表面端子が分布する第1領域の内側に存在する、
請求項1に記載の電子基板。
【請求項3】
前記電子基板の面方向において、前記第1配線に接続する前記裏面端子は、前記第1配線に接続する前記表面端子が分布する第1領域の外側に存在する、
請求項1に記載の電子基板。
【請求項4】
表面においてアレイ状に配置された複数の表面端子を介して半導体部品と接続し、裏面においてアレイ状に配置された複数の裏面端子を介して主基板と接続する電子基板であって、
前記電子基板内において前記表面端子と前記裏面端子とを電気的に接続し、かつ、前記裏面端子を介して前記主基板から電源が供給される第1配線と、
前記電子基板内において前記表面端子と前記裏面端子とを電気的に接続し、前記裏面端子を介して前記主基板から前記第1配線と同一電位の電源が供給され、かつ、前記電子基板内において前記第1配線と電気的に接続しない第2配線と、を備え、
前記電子基板の面方向において、前記第1配線に接続する前記裏面端子は、前記第1配線に接続する前記表面端子が分布する第1領域の内側に存在する、
電子基板。
【請求項5】
前記電子基板の面方向において、前記第1配線に接続する前記表面端子が分布する第1領域と、前記第2配線に接続する前記表面端子が分布する第2領域とを分断する1本の直線が定義可能である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子基板。
【請求項6】
前記第1配線に接続する前記表面端子同士の間の距離、および、前記第2配線に接続する前記表面端子同士の間の距離は、前記第1配線に接続する前記表面端子と前記第2配線に接続する前記表面端子との間の距離よりも短い、
請求項4または5に記載の電子基板。
【請求項7】
第1の前記半導体部品と第2の前記半導体部品とが前記電子基板に実装され、前記第1配線は、第1の前記半導体部品と接続する前記表面端子と第2の前記半導体部品と接続する前記表面端子の双方に接続している、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体部品(MCU-CHIP、DDR2-SDRAM)が実装されたマルチチップモジュール基板が知られている(特許文献1、参照)。特許文献1において、マルチチップモジュール基板に電源プレーンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-96268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、電源プレーンは、半導体部品のすべての電源供給用のボール電極と接続するため、導体層において広い範囲を占有することとなる。このような電源プレーンは、信号線等の他の配線パターンの妨げとなるため、電源プレーンのための専用の導体層を設けなければならない。従って、基板の層数が多くなるという問題があった。特に、特許文献1においては、複数の半導体部品のボール電極にまたがって電源プレーンが設けられているため、導体層において電源プレーンがより広い範囲を占有することとなる。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、電子基板の層数を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明の電子基板は、表面においてアレイ状に配置された複数の表面端子を介して半導体部品と接続し、裏面においてアレイ状に配置された複数の裏面端子を介して主基板と接続する電子基板であって、電子基板内において表面端子と裏面端子とを電気的に接続し、かつ、裏面端子を介して主基板から電源が供給される第1配線と、電子基板内において表面端子と裏面端子とを電気的に接続し、裏面端子を介して主基板から第1配線と同一電位の電源が供給され、かつ、電子基板内において第1配線と電気的に接続しない第2配線と、を備え、前記第1配線に接続する前記表面端子同士の間の距離、および、前記第2配線に接続する前記表面端子同士の間の距離は、前記第1配線に接続する前記表面端子と前記第2配線に接続する前記表面端子との間の距離よりも短い。
また、本発明の電子基板は、表面においてアレイ状に配置された複数の表面端子を介して半導体部品と接続し、裏面においてアレイ状に配置された複数の裏面端子を介して主基板と接続する電子基板であって、前記電子基板内において前記表面端子と前記裏面端子とを電気的に接続し、かつ、前記裏面端子を介して前記主基板から電源が供給される第1配線と、前記電子基板内において前記表面端子と前記裏面端子とを電気的に接続し、前記裏面端子を介して前記主基板から前記第1配線と同一電位の電源が供給され、かつ、前記電子基板内において前記第1配線と電気的に接続しない第2配線と、を備え、前記電子基板の面方向において、前記第1配線に接続する前記裏面端子は、前記第1配線に接続する前記表面端子が分布する第1領域の内側に存在する。
【0006】
前記のように構成した本発明において、第1配線と接続する表面端子と、第2配線と接続する表面端子の双方によって半導体部品に同一電位の電源を供給できる。ここで、第1配線と第2配線は電子基板内において電気的に接続しないため、第1配線と接続する表面端子と第2配線と接続する表面端子を電子基板内において電気的に接続する配線パターンを形成しなくても済む。つまり、電源の配線パターンを電子基板内において低減することでき、信号線等の他の配線パターンの自由度を向上させることができる。その結果、電源の配線パターンのための専用の導体層を省略することができ、電子基板の層数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電子基板の断面模式図である。
図2図2Aは電子基板の表面透視図、図2Bは電子基板の裏面透視図である。
図3図3Aは電子基板の表面透視図、図3Bは電子基板の裏面透視図である。
図4】電子基板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態:
(2)第2実施形態:
(3)第3実施形態:
(4)他の実施形態:
【0009】
(1)第1実施形態:
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子基板10の断面模式図である。電子基板10は、矩形板状の他層基板であり、厚み方向Zにおいて複数の層が積層されている。電子基板10の厚み方向Zの一方(紙面上方)を表面と定義し、厚み方向Zの他方(紙面下方)を表面と定義する。電子基板10は、6層の導体層PF1,PF2,PF3,PB1,PB2,PB3と7層の絶縁層CC,IF1,IF2,SRF,IB1,IB2,SRBとを備えている。本実施形態の電子基板10は、コア基板である絶縁層CC上に各層が積層された両面ビルドアップ基板である。ただし、電子基板10は、片面基板であってもよく、コア基板を有さない基板であってもよい。電子基板10の層数は図1に例示したものに限られない。
【0010】
導体層PF1,PF2,PF3,PB1,PB2,PB3には面方向XY(厚さ方向Zの直交方向)の配線パターンが形成されている。配線パターンの形成手法は特に限定されず、例えばアディティブ法やセミアディティブ法やサブトラクティブ法によって形成されてもよい。絶縁層CCにはスルーホールが形成されており、スルーホールに形成されたスルーホール導体を介して導体層PF1,PB1が電気的に接続している。スルーホール導体は、スルーホールの壁面を被覆してもよいし、スルーホールの内部を充填してもよい。
【0011】
絶縁層IF1にはビアが形成されており、絶縁層IF1のビアを介して導体層PF1,PF2が電気的に接続している。同様に、絶縁層IF2のビアを介して導体層PF2,PF3が電気的に接続し、絶縁層IB1のビアを介して導体層PB1,PB2が電気的に接続し、絶縁層IB2のビアを介して導体層PB2,PB3が電気的に接続している。ビアの形成手法は特に限定されず、例えばビアはフォトビアであってもよいし、レーザビアであってもよい。
【0012】
表面側の絶縁層SRFはソルダーレジストであり、最も表面側の導体層PF3上に形成されている。絶縁層SRFには複数の開口部が形成されており、複数の開口部のそれぞれに表面端子TFが形成されている。表面端子TFは半田等によって形成されたバンプであり、半導体部品100を電子基板10上にフリップチップ実装するために使用される。
【0013】
裏面側の絶縁層SRBもソルダーレジストであり、最も裏面側の導体層PB3上に形成されている。絶縁層SRBには複数の開口部が形成されており、複数の開口部のそれぞれに裏面端子TBが形成されている。裏面端子TBは半田等によって形成されたボールであり、電子基板10を主基板200に対して表面実装するために使用される。なお、半導体部品100が実装された状態で電子基板10が主基板200に実装される。
【0014】
図2Aは、電子基板10の表面を示す。図2Aにおいて、表面端子TFを白丸または黒丸で示している。図2Aに示すように、複数の表面端子TFは電子基板10の表面においてアレイ状に配置されている。表面端子TFは、面方向XYのそれぞれにおいて一定のバンプピッチdを隔てるように配置されている。
【0015】
図2Bは、電子基板10の裏面を示す。図2Bは、図2Aの状態から電子基板10をY軸まわりに裏返した状態を示す。図2Bにおいて、裏面端子TBを白丸または黒丸で示している。図2Bに示すように、複数の裏面端子TBは電子基板10の裏面においてアレイ状に配置されている。なお、図1は、図2A図2Bの矢視線A-A,B-B(一点鎖線)における矢視断面図である。
【0016】
以上説明したように、電子基板10は、表面においてアレイ状に配置された複数の表面端子TFを介して半導体部品100と接続している。また、電子基板10は、裏面においてアレイ状に配置された複数の裏面端子TBを介して主基板200と接続している。
【0017】
主基板200には、半導体部品100に供給する電源Vを生成する電源回路(不図示)が形成されている。図1においては、電源Vを電子基板10に供給するための回路の回路図を仮想的に示している。電源Vは、図1図2Bにおいて黒色で示す4個の裏面端子TBのそれぞれに供給されている。
【0018】
電子基板10は、電源Vと接続する配線として第1配線C1と第2配線C2と第3配線C3と第4配線C4とを備えている。第1~4配線C1~C4は、それぞれ電子基板10内において表面端子TFと裏面端子TBとを電気的に接続し、かつ、裏面端子TBを介して主基板200から電源が供給される一体の導体である。第1~4配線C1~C4は、電子基板10内において互いに電気的に接続していない。
【0019】
なお、第1~4配線C1~C4は、面方向XYにおいて中心点Gに関して回転対称の構造を有しており、矢視線A-A,B-Bにおける断面を共通の断面図(図1)で図示できる。図1において第1~4配線C1~C4をグレーと黒色で示している。図1に示すように、第1~4配線C1~C4は、それぞれ導体層PF1,PF2,PF3,PB1,PB2,PB3において面方向XYに形成された配線パターンと、絶縁層IF1,IF2,IB1,IB2に形成されたビアと、絶縁層CCに形成されたスルーホール導体と、表面端子TFと、裏面端子TBとによって構成される。なお、図1において第1~4配線C1~C4以外の配線の図示を省略している。
【0020】
図2A図2Bにおいて、最も表面側の導体層PF3において第1~4配線C1~C4を構成する配線パターンが形成された領域である第1~4領域R1~R4(透視像)をグレーで図示している。導体層PF3の配線パターンのうち表面側の絶縁層SRF(ソルダーレジスト)の開口部にバンプを形成したものが表面端子TFとなる。第1~4配線C1~C4はそれぞれ黒色で示す5個の表面端子TFと電気的に接続している。半導体部品100に電源Vを供給するための表面端子TFは全部で20個存在する。
【0021】
ここで、電子基板10の面方向XYにおいて、第1配線C1に接続する表面端子TFが分布する第1領域R1と、第2,4配線C2,C4に接続する表面端子TFが分布する第2,4領域R2,R4とを分断する1本の直線L1が定義可能である。また、第1配線C1に接続する表面端子TFが分布する第1領域R1と、第3,4配線C3,C4に接続する表面端子TFが分布する第3,4領域R3,R4とを分断する1本の直線L2が定義可能である。
【0022】
このように、第1領域R1と第2領域R2とが1本の直線L1によって分断可能となるようにすることにより、第1配線C1に接続する表面端子TFと、第2配線C2に接続する表面端子TFとが、電子基板10の表面において入り組んで存在しないようにすることができる。これにより、導体層における第1配線C1の配線パターンと、第2配線C2の配線パターンとを複雑な形状としなくても済み、信号線等の他の配線パターンの自由度を向上させることができる。
【0023】
第1配線C1に接続する表面端子TF同士の距離のうちの最大値はd2+(2d)2の平方根であり、約2.24dとなる。第2~4配線C2~C4のそれぞれに接続する表面端子TF同士の距離のうちの最大値も約2.24dとなる。
【0024】
一方、第1配線C1に接続する表面端子TFと第2配線C2に接続する表面端子TFとの間の距離のうちの最小値は7dとなる。同様に、第1配線C1に接続する表面端子TFと第3配線C3に接続する表面端子TFとの間の距離のうちの最小値も7dとなり、第2配線C2に接続する表面端子TFと第4配線C4に接続する表面端子TFとの間の距離のうちの最小値も7dとなり、第3配線C3に接続する表面端子TFと第4配線C4に接続する表面端子TFとの間の距離のうちの最小値も7dとなる。また、第1配線C1に接続する表面端子TFと第4配線C4に接続する表面端子TFとの間の距離のうちの最小値は(7d)2+(7d)2の平方根であり、約9.90dとなる。同様に、第2配線C2に接続する表面端子TFと第3配線C3に接続する表面端子TFとの間の距離のうちの最小値も約9.90dとなる。
【0025】
以上のように、第1配線C1に接続する表面端子TF同士の間の距離、および、第2配線C2に接続する表面端子TF同士の間の距離は、第1配線C1に接続する表面端子TFと第2配線C2に接続する表面端子TFとの間の距離よりも短くなっている。同様に、第1配線C1に接続する表面端子TF同士の間の距離、および、第3配線C3に接続する表面端子TF同士の間の距離は、第1配線C1に接続する表面端子TFと第3配線C3に接続する表面端子TFとの間の距離よりも短くなっている。第1配線C1に接続する表面端子TF同士の間の距離、および、第4配線C4に接続する表面端子TF同士の間の距離は、第1配線C1に接続する表面端子TFと第4配線C4に接続する表面端子TFとの間の距離よりも短くなっている。
【0026】
さらに、第2配線C2に接続する表面端子TF同士の間の距離、および、第3配線C3に接続する表面端子TF同士の間の距離は、第2配線C2に接続する表面端子TFと第3配線C3に接続する表面端子TFとの間の距離よりも短くなっている。第2配線C2に接続する表面端子TF同士の間の距離、および、第4配線C4に接続する表面端子TF同士の間の距離は、第2配線C2に接続する表面端子TFと第4配線C4に接続する表面端子TFとの間の距離よりも短くなっている。第3配線C3に接続する表面端子TF同士の間の距離、および、第4配線C4に接続する表面端子TF同士の間の距離は、第3配線C3に接続する表面端子TFと第4配線C4に接続する表面端子TFとの間の距離よりも短くなっている。
【0027】
このように、互いに近い表面端子TF同士を第1配線C1に接続するようにすることにより、第1配線C1のための配線パターン(第1領域R1)の面積を低減することができ、信号線等の他の配線パターンの自由度を向上させることができる。同様に、互いに近い表面端子TF同士を第2~4配線C2~C4のそれぞれに接続するようにすることにより、第2~4配線C2~C4のための配線パターン(第2~4領域R2~R4)の面積を低減することができる。
【0028】
さらに、電子基板10の面方向XYにおいて、第1配線C1に接続する裏面端子TBは、第1配線C1に接続する表面端子TFが分布する第1領域R1の内側に存在する。図1図2Bに示すように、最も表面側の導体層PF3において第1配線C1を構成する配線パターンが形成された第1領域R1の直下に、第1配線C1と接続する裏面端子TBが存在する。第1配線C1は、最も表面側の導体層PF3以外の層においては、ほぼ厚み方向Zにおいてのみ導体を接続する配線となっているからである。同様に、電子基板10の面方向XYにおいて、第2~4配線C2~C4に接続する裏面端子TBは、最も表面側の導体層PF3において第2~4配線C2~C4に接続する表面端子TFが分布する第2~4領域R2~R4のそれぞれの内側に存在している。
【0029】
これにより、第1~4配線C1~C4に接続する表面端子TFが分布する第1~4領域R1~R4の直下に、第1~4配線C1~C4に接続する裏面端子TBを配置することができる。その結果、第1~4配線C1~C4の配線長を短くすることができ、第1~4配線C1~C4の抵抗を低減できる。
【0030】
以上説明した本実施形態において、第1配線C1と接続する表面端子TFと、第2配線C2と接続する表面端子TFの双方によって半導体部品100に同一電位の電源Vを供給できる。ここで、第1配線C1と第2配線C2は電子基板10内において電気的に接続しないため、第1配線C1と接続する表面端子TFと第2配線C2と接続する表面端子TFを電子基板10内において電気的に接続する配線パターンを形成しなくても済む。つまり、電源Vの配線パターンを電子基板10内において低減することでき、信号線等の他の配線パターンの自由度を向上させることができる。その結果、電源の配線パターンのための専用の導体層を省略することができ、電子基板10の層数を低減できる。
【0031】
なお、電子基板10内においては、信号線等の第1~4配線C1~C4以外の配線パターン(不図示)が設けられている。最も表面側の導体層PF3においては、これらの信号線等の他の配線パターンが第1~4領域R1~R4を避けるように形成しなければならない。信号線等の他の配線パターンの多くは中心点Gからの放射方向に引き回されるが、第1~4領域R1~R4は放射方向に細長い形状(放射方向の長さが放射方向の直交方向の長さよりも長い形状)となっているため、第1~4領域R1~R4が信号線等の他の配線パターンの妨げとなる可能性を低減できる。また、上述したように、第1~4配線C1~C4は、最も表面側の導体層PF3以外の層においては、ほぼ厚み方向Zにおいてのみ導体を接続する配線となっているため、導体層PF3以外の導体層PF2,PF1,PB1,PB2,PB3において信号線等の他の配線パターンを自由に引き回すことができる。
【0032】
また、第1~4配線C1~C4は、面方向XYにおいて中心点Gに関して回転対称の構造を有しているため、第1~4配線C1~C4の電気的な特性(抵抗等)をほぼ一致させることができ、半導体部品100に対して均一に電源を供給することができる。
【0033】
(2)第2実施形態:
図3A図3Bは、第2実施形態にかかる電子基板1010の表面と裏面とを示す。本実施形態においても、最も表面側の導体層PF3において第1~2配線C1~C2を構成する配線パターンが形成されている。導体層PF3の配線パターンのうち、電源Vが供給される表面端子TF(黒丸)が存在する部位に形成された部分を第1~2基本領域R1~R2と表し、当該第1~2基本領域R1~R2(透視像)を濃いグレーで図示している。また、導体層PF3の配線パターンのうち、電源Vが供給される表面端子TFが存在しない部位に形成された部分を第1~2拡張領域K1~K2と表し、当該第1~2拡張領域K1~K2(透視像)を薄いグレーで図示している。
【0034】
第1基本領域R1と第1拡張領域K1は一体の配線パターンを構成し、第2基本領域R2と第2拡張領域K2も一体の配線パターンを構成する。第1~2拡張領域K1~K2のうち、第1~2拡張領域K1~K2と接続しない側の端部と裏面端子TB(黒丸)とが、ビアやスルーホール導体を介して厚み方向Zに接続している。
【0035】
本実施形態では、電子基板1010の面方向XYにおいて、第1配線C1に接続する裏面端子TBは、第1配線C1に接続する表面端子TFが分布する第1基本領域R1の外側に存在する。同様に、第2配線C2に接続する裏面端子TBも、第2配線C2に接続する表面端子TFが分布する第2基本領域R2の外側に存在する。これにより、電子基板1010の外縁付近に第1~2配線C1~C2に接続する裏面端子TBを配置できる。その代わりに、信号線等に接続する裏面端子TBを電子基板1010の中央付近に配置できる。なお、第1~2拡張領域K1~K2は、第1~2基本領域R1~R2と同一の導体層PF3に形成されなくてもよく、第1~2基本領域R1~R2とは別の導体層PF2,PF1,PB1,PB2,PB3に形成されてもよい。
【0036】
(3)第3実施形態:
図4は、第3実施形態にかかる電子基板2010の断面模式図である。電子基板2010は、MCM(Multi-Chip Module)基板であり、表面において第1の半導体部品100Aと第2の半導体部品100Bとが電子基板2010に実装されている。そして、第1配線C1は、第1の半導体部品100Aと接続する表面端子TFと第2の半導体部品100Bと接続する表面端子TFの双方に接続している。これにより、第1配線C1を介して第1の半導体部品100Aと第2の半導体部品100Bの双方に電源Vを供給できる。
【0037】
(4)他の実施形態:
以上においては、電源Vに接続する配線の個数が4個と2個の電子基板10,1010,2010を例示したが、電源Vを供給する配線の個数は2個以上であればよい。また、電源Vを供給する配線の形状は互いに対称な形状でなくてもよい。また、電源Vを供給する配線に接続する表面端子TFの個数は必ずしも等しくなくてもよい。さらに、電源Vを供給する配線に接続する裏面端子TBの個数は2個以上であってもよい。
【0038】
本発明の電子基板は、厚み方向の一方側に表面を有し、厚み方向の他方側に裏面を有する基板であり、表面において半導体部品がフリップチップ実装される基板である。表面端子は面方向においてアレイ状に配置されればよく、半導体部品とバンプを介して接続されてもよい。バンプは導電性を有していればよく、材料は限定されない。一方、裏面端子も面方向においてアレイ状に配置されればよく、ボール(BGA)が形成されてもよいし、ピン(PGA)が形成されてもよいし、ランド(LGA)であってもよい。
【0039】
電子基板は、導体層と絶縁層とを備えた基板であればよく、導体層と絶縁層の形成手法は特に限定されない。第1配線と第2配線は、それぞれ電子基板内において表面端子と裏面端子とを電気的に接続する一体の導体であり、導体層における面内配線と、絶縁層における層間配線とによって構成される。面内配線は面方向の配線パターンであり、層間配線は厚み方向の配線(ビア、スルーホール等)である。
【0040】
第1配線と第2配線は、主基板から同一電位の電源が供給さればよく、第1配線と第2配線と接続する裏面端子のそれぞれに対して、主基板が同一電位の電源が供給するように構成されていればよい。第1配線と第2配線とは、電子基板内において電気的に接続しなければよく、当然、半導体部品内の配線や主基板内の配線を介して電気的に接続してもよい。また、第1配線と第2配線とがそれぞれ接続する表面端子の個数は特に限定されない。同様に、第1配線と第2配線とがそれぞれ接続する裏面端子の個数は特に限定されない。
【0041】
第1配線と第2配線以外に、第1配線と第2配線と同様の構成を有する第N配線(Nは3以上の整数)が設けられてもよい。そして、第N配線は、電子基板内において表面端子と裏面端子とを電気的に接続し、裏面端子を介して主基板から第1配線と同一電位の電源が供給され、かつ、電子基板内において第1~(N-1)配線のいずれとも電気的に接続しないように構成されてもよい。
【0042】
また、電子基板の面方向において、第1配線に接続する表面端子が分布する第1領域と、第2配線に接続する表面端子が分布する第2領域とを分断する1本の直線が定義可能であってもよい。このように、第1領域と第2領域とが1本の直線によって分断可能となるようにすることにより、第1配線に接続する表面端子と、第2配線に接続する表面端子とが、電子基板の表面において入り組んで存在しないようにすることができる。これにより、導体層における第1配線の配線パターンと、第2配線の配線パターンとを複雑な形状としなくても済み、信号線等の他の配線パターンの自由度を向上させることができる。
【0043】
さらに、第1配線に接続する表面端子同士の間の距離、および、第2配線に接続する表面端子同士の間の距離は、第1配線に接続する表面端子と第2配線に接続する表面端子との間の距離よりも短くてもよい。このように、互いに近い表面端子を第1配線に接続する表面端子とすることにより、第1配線のための配線パターンの面積を低減することができ、信号線等の他の配線パターンの自由度を向上させることができる。同様に、互いに近い表面端子を第2配線に接続する表面端子とすることにより、第2配線のための配線パターンの面積を低減することができる。
【0044】
また、第1の半導体部品と第2の半導体部品とが電子基板に実装され、第1配線は、第1の半導体部品と接続する表面端子と第2の半導体部品と接続する表面端子の双方に接続してもよい。これにより、第1配線を介して第1の半導体部品と第2の半導体部品の双方に電源を供給できる。むろん、第1配線だけでなく第2配線も、第1の半導体部品と接続する表面端子と第2の半導体部品と接続する表面端子の双方に接続してもよい。
【0045】
さらに、電子基板の面方向において、第1配線に接続する裏面端子は、第1配線に接続する表面端子が分布する第1領域の内側に存在してもよい。これにより、第1配線に接続する表面端子が分布する第1領域の直下に、第1配線に接続する裏面端子を配置することができる。その結果、第1配線の配線長を短くすることができ、第1配線の抵抗を低減できる。
【0046】
また、電子基板の面方向において、第1配線に接続する裏面端子は、第1配線に接続する表面端子が分布する第1領域の外側に存在してもよい。これにより、例えば電子基板の外縁付近に第1配線に接続する裏面端子を配置できる。その代わりに、信号線等に接続する裏面端子を電子基板の中央付近に配置できる。
【符号の説明】
【0047】
10,1010,2010…電子基板、100,100A,100B…半導体部品、200…主基板、C1~C4…第1~第4配線、G…中心点、SRB,IB1~IB2,CC,IF1~IF2,SRF…絶縁層、PB1~PB3,PF1~PF3…導体層、R1~R4…第1~4領域、TB…裏面端子、TF…表面端子、V…電源、d…バンプピッチ
図1
図2
図3
図4