(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】計測装置及びその計測方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/72 20200101AFI20230516BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20230516BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20230516BHJP
H01F 29/10 20060101ALI20230516BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G01R31/72
G01R27/26 C
G01R27/26 L
H01F27/00 H
H01F29/10 Z
H01F41/00 E
(21)【出願番号】P 2019078363
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 真稔
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-020322(JP,A)
【文献】国際公開第2008/117869(WO,A1)
【文献】特開2014-017938(JP,A)
【文献】特開2013-061310(JP,A)
【文献】特開平11-251168(JP,A)
【文献】特表平04-502690(JP,A)
【文献】特開昭53-146671(JP,A)
【文献】特開2002-131347(JP,A)
【文献】特開2004-191282(JP,A)
【文献】特開2016-126007(JP,A)
【文献】特開2008-232953(JP,A)
【文献】特開2009-219210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/72
G01R 27/26
H01F 27/00
H01F 29/10
H01F 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気機器に入力される正弦波信号の周波数を第1測定周波数から前記第1測定周波数よりも高い第2測定周波数まで変化させたときに、前記第1電気機器から前記正弦波信号の周波数の変化に応じて出力される出力信号に基づいて、周波数応答波形生成装置が、前記第1測定周波数から前記第2測定周波数までの各測定周波数に対応する伝達関数を算出し、前記伝達関数から前記第1電気機器の周波数応答波形を生成するように、前記第1電気機器に前記正弦波信号を入力するとともに前記第1電気機器から出力される前記出力信号を前記周波数応答波形生成装置に入力するために用いられる計測装置であって、
前記第1電気機器に接続されている第2電気機器のキャパシタンス成分に対して並列に接続される可変インダクタと、
前記正弦波信号の前記第1測定周波数から前記第2測定周波数までの周波数の変化に応じて、前記可変インダクタが前記キャパシタンス成分と並列共振するように、前記可変インダクタの値を制御する制御装置と、
を備え
、
前記制御装置は、
前記正弦波信号の周波数を所定値に設定したときに前記キャパシタンス成分と並列共振する前記可変インダクタの値を求めることによって、前記キャパシタンス成分の値を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記キャパシタンス成分の値と、前記第1測定周波数から前記第2測定周波数まで変化する前記正弦波信号の周波数の値とに基づいて、前記可変インダクタが前記キャパシタンス成分と並列共振するように、前記可変インダクタの値を制御する制御部と、
を含む
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記可変インダクタは、円筒型のコイル巻線と、前記コイル巻線内に挿通される鉄心とを含み、
前記制御部は、前記可変インダクタの値が前記キャパシタンス成分と並列共振する値となるように、前記コイル巻線に対して前記鉄心を出し入れするアクチュエータを含む
ことを特徴とする請求項
1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記キャパシタンス成分の値を算出する際の前記正弦波信号の周波数は、前記第1測定周波数と前記第2測定周波数との間の1つの周波数である
ことを特徴とする請求項
1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第1電気機器は、電力用変圧器であり、
前記第2電気機器は、計器用変圧器又はサージアブソーバである
ことを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の計測装置。
【請求項5】
第1電気機器に入力される正弦波信号の周波数を第1測定周波数から前記第1測定周波数よりも高い第2測定周波数まで変化させたときに、前記第1電気機器から前記正弦波信号の周波数の変化に応じて出力される出力信号に基づいて、周波数応答波形生成装置が、前記第1測定周波数から前記第2測定周波数までの各測定周波数に対応する伝達関数を算出し、前記伝達関数から前記第1電気機器の周波数応答波形を生成するように、前記第1電気機器に前記正弦波信号を入力するとともに前記第1電気機器から出力される前記出力信号を前記周波数応答波形生成装置に入力するために用いられる計測装置の計測方法であって、
前記第1電気機器に接続されている第2電気機器のキャパシタンス成分に対して可変インダクタを並列に接続する第1ステップと、
前記正弦波信号の前記第1測定周波数から前記第2測定周波数までの周波数の変化に応じて、前記可変インダクタが前記キャパシタンス成分と並列共振するように、前記可変インダクタの値を制御する第2ステップと、を含
み、
前記第2ステップは、
前記正弦波信号の周波数を所定値に設定したときに前記キャパシタンス成分と並列共振する前記可変インダクタの値を求めることによって、前記キャパシタンス成分の値を算出する第3ステップと、
前記第3ステップによって算出された前記キャパシタンス成分の値と、前記第1測定周波数から前記第2測定周波数まで変化する前記正弦波信号の周波数の値とに基づいて、前記可変インダクタが前記キャパシタンス成分と並列共振するように、前記可変インダクタの値を制御する第4ステップと、
を含むことを特徴とする計測方法。
【請求項6】
前記可変インダクタは、円筒型のコイル巻線と、前記コイル巻線内に挿通される鉄心とを含み、
前記第4ステップは、前記可変インダクタの値が前記キャパシタンス成分と並列共振する値となるように、アクチュエータによって前記コイル巻線に対して前記鉄心を出し入れする第5ステップを含む
ことを特徴とする請求項
5に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及びその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の1つである電力用変圧器の巻線や鉄心の異常を診断する方法として、周波数応答解析(Frequency Response Analysis)を用いる方法が知られている。
【0003】
上記の方法は、電力用変圧器に入力される正弦波信号(例えば電圧)の周波数(測定周波数)を数十Hzから数MHzまで掃引させたときに変圧器から出力される出力信号(例えば電流)に基づいて、各測定周波数に対応する伝達関数(例えばインピーダンス)を算出した後、電力用変圧器が健全であることを示す予め用意されている伝達関数と比較することによって、電力用変圧器が健全であるか否かを診断する方法である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力系統において、電力用変圧器には計器用変圧器やサージアブソーバ等のキャパシタンス成分を有する付属設備(電気機器)が配線を介して接続されているため、このままでは、電力用変圧器の他に付属設備を含む周波数応答解析が一度に行われてしまい、電力用変圧器が単体で健全であるか否かを正確に診断することはできない。そこで、電力用変圧器の周波数応答解析を行う場合、電力用変圧器が単体で健全であるか否かを診断することができるように、電力用変圧器と付属設備との間の配線を取り外している。しかし、電力用変圧器と付属設備との間の配線をわざわざ取り外さなければならないため、周波数応答解析のための停電作業時間が長くなる虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、周波数応答解析のための停電作業時間を短縮することが可能な計測装置及びその計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明は、第1電気機器に入力される正弦波信号の周波数を第1測定周波数から前記第1測定周波数よりも高い第2測定周波数まで変化させたときに、前記第1電気機器から前記正弦波信号の周波数の変化に応じて出力される出力信号に基づいて、周波数応答波形生成装置が、前記第1測定周波数から前記第2測定周波数までの各測定周波数に対応する伝達関数を算出し、前記伝達関数から前記第1電気機器の周波数応答波形を生成するように、前記第1電気機器に前記正弦波信号を入力するとともに前記第1電気機器から出力される前記出力信号を前記周波数応答波形生成装置に入力するために用いられる計測装置であって、前記第1電気機器に接続されている第2電気機器のキャパシタンス成分に対して並列に接続される可変インダクタと、前記正弦波信号の前記第1測定周波数から前記第2測定周波数までの周波数の変化に応じて、前記可変インダクタが前記キャパシタンス成分と並列共振するように、前記可変インダクタの値を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記正弦波信号の周波数を所定値に設定したときに前記キャパシタンス成分と並列共振する前記可変インダクタの値を求めることによって、前記キャパシタンス成分の値を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記キャパシタンス成分の値と、前記第1測定周波数から前記第2測定周波数まで変化する前記正弦波信号の周波数の値とに基づいて、前記可変インダクタが前記キャパシタンス成分と並列共振するように、前記可変インダクタの値を制御する制御部と、を含む。
【0008】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周波数応答解析のための停電作業時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る計測装置の一例を示す回路ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る計測装置が用いられる周波数応答波形生成装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
===計測装置===
図1は、本実施形態に係る計測装置の一例を示す回路ブロック図である。尚、本実施形態において、計測装置には、配電系統で電圧を降圧した電力を需要家に供給するための常設型又は移動型の電力用変圧器(第1電気機器)が接続され、電力用変圧器には、計器用変圧器やサージアブソーバ等のキャパシタンス成分を有する付属設備(第2電気機器)が配線を介して接続されていることとする。
【0013】
計測装置100は、周波数応答波形生成装置200が電力用変圧器300単体に対する周波数応答波形を生成することができるように、正弦波信号の周波数を広範囲に亘って変化させながら当該正弦波信号を電力用変圧器300に入力するとともに、電力用変圧器300から正弦波信号の周波数の変化に応じて出力される出力信号を周波数応答波形生成装置200に入力する装置である。
【0014】
計測装置100は、上記の機能を実現するための手段として、入力電圧発生器110、抵抗120、交流回路用の電圧計130、140、スイッチ150、可変インダクタ160、制御装置170を含んで構成されている。
【0015】
入力電圧発生器110は、入力電圧Vin(jω)(正弦波信号)を発生する発生器であって、入力電圧Vin(jω)の周波数を第1測定周波数(例えば数十Hz)から第2測定周波数(例えば数MHz)まで変化させる掃引機能を有している。抵抗120は入力電圧発生器110に対して直列に接続され、その抵抗値は例えば50Ωに設定されている。入力電圧発生器110及び抵抗120からなる直列接続体は、電力用変圧器300の2次巻線320に対して並列に接続されている。電圧計130は、入力電圧発生器110に対して並列に接続され、第1測定周波数から第2測定周波数まで周波数が連続的に変化する入力電圧Vin(jω)を計測する。電圧計140は、抵抗120に対して並列に接続され、入力電圧Vin(jω)が2次巻線320に供給されたときに抵抗120の両端に発生する出力電圧Vout(jω)(出力信号)を計測する。尚、jは虚数単位、ωは角周波数を表している。
【0016】
スイッチ150は、電力用変圧器300の1次巻線310に対して並列に接続されている。電力用変圧器300の巻線の異常を診断する場合、スイッチ150を閉じて1次巻線310を短絡させた状態で、入力電圧Vin(jω)及び出力電圧Vout(jω)を計測する。一方、電力用変圧器300の鉄心の異常を診断する場合、スイッチ150を開いて1次巻線310を開放させた状態で、入力電圧Vin(jω)及び出力電圧Vout(jω)を計測する。
【0017】
付属設備に含まれるキャパシタンス成分500は、2次巻線320に対して並列に接続されることと等価である。そこで、可変インダクタ160は、キャパシタンス成分500と共振回路400を形成するように、キャパシタンス成分500に対して並列に接続されている。
【0018】
制御装置170は、入力電圧Vin(jω)の周波数が第1測定周波数から第2測定周波数まで変化している期間、共振回路400が常に並列共振するように、入力電圧Vin(jω)の周波数の変化に応じて可変インダクタ160の値を調整する装置である。
【0019】
制御装置170は、上記の機能を実現するための手段として、算出部170A、制御部170B、アクチュエータ170Cを含んで構成されている。尚、算出部170A及び制御部170Bの機能は、マイクロコンピュータのソフトウエア処理によって実現される。
【0020】
ここで、可変インダクタ160を流れる電流ILは、可変インダクタ160のインダクタンス値をL、2次巻線320に現れる電圧をEとすると、以下の式(1)で表される。
【0021】
【数1】
又、キャパシタンス成分500を流れる電流I
Cは、キャパシタンス成分500のキャパシタンス値をCとすると、以下の式(2)で表される。
【0022】
【数2】
ここで、“ωL=1/ωC”を満足するインダクタンス値Lを選択すると、“I
L=-I
C”となるため、計測装置100から共振回路400へ電流が流れなくなって、共振回路400は並列共振する。このとき、計測装置100と共振回路400との間には無限大のインピーダンスが存在することとなるため、キャパシタンス成分500が2次巻線320に接続された状態であっても、電力用変圧器300単体としての出力電圧Vout(jω)を得ることが可能となる。
【0023】
共振回路400が並列共振するときの可変インダクタ160のインダクタンス値Lは、入力電圧Vin(jω)の周波数をfとすると、式(3)から算出される。
【0024】
【数3】
キャパシタンス成分500の値は、付属設備の種類や仕様に応じて様々な値となり得るため、制御装置170が入力電圧Vin(jω)の周波数の変化に応じて可変インダクタ160の値を制御する前段の作業として、算出部170Aによってキャパシタンス成分500の値を予め算出しておく必要がある。例えば、キャパシタンス成分500の値を算出する際に、電圧計130と可変インダクタ160とを接続する配線180上に交流回路用の電流計190を一時的に接続し、入力電圧Vin(jω)が所定周波数であるときに電流計190の値がゼロとなる可変インダクタ160の値を求め、式(3)からキャパシタンス成分500の値を算出してもよい。尚、キャパシタンス成分500の値を算出する際に用いる入力電圧Vin(jω)の周波数は、キャパシタンス成分500の値の算出精度を高めるために、第1測定周波数と第2測定周波数との間の一の周波数(例えば100Hz)であることが望ましい。又、説明の便宜上、
図1には、配線180上に電流計190を接続したままの状態を記載することとする。
【0025】
制御部170Bは、入力電圧発生器110から入力電圧Vin(jω)の周波数を示す情報を取得し、入力電圧Vin(jω)の周波数の値(可変値)とキャパシタンス成分500の値(固定値)とを式(3)に代入することによって、共振回路400が並列共振するための可変インダクタ160の値を算出する。
【0026】
可変インダクタ160は、円筒型のコイル巻線160Aと、コイル巻線160A内に挿通される鉄心160Bとを含んで構成されている。アクチュエータ170Cは、鉄心160Bと機械的に連結され、制御部170Bによって算出された可変インダクタ160の値となるように(共振回路400が並列共振するように)、コイル巻線160Aの軸線方向に沿って鉄心160Bを出し入れして磁束密度を変化させることによって、可変インダクタ160の値を調整する。
【0027】
これによって、計測装置100は、電力用変圧器300にキャパシタンス成分500を含む付属設備を接続したままの状態で、電力用変圧器300単体としての出力電圧Vout(jω)を得ることが可能となる。
【0028】
===周波数応答波形生成装置===
図2は、本実施形態に係る計測装置が用いられる周波数応答波形生成装置の一例を示すブロック図である。
【0029】
周波数応答波形生成装置200は、電力用変圧器300が健全な状態で稼働しているか否かを診断するに際して、電力用変圧器300と接続された計測装置100によって測定された入力電圧Vin(jω)及び出力電圧Vout(jω)から伝達関数を算出し、伝達関数から周波数応答波形を生成する装置である。
【0030】
周波数応答波形生成装置200は、上記の機能を実現するための手段として、入力部210、伝達関数算出部220、周波数応答波形生成部230、記憶部240、出力部250を含んで構成されている。
【0031】
入力部210は、計測装置100から入力電圧Vin(jω)及び出力電圧Vout(jω)を示す情報が供給される、計測装置100と周波数応答波形生成装置200との間の信号路を接続するインターフェースである。
【0032】
伝達関数算出部220は、入力部210から入力電圧Vin(jω)及び出力電圧Vout(jω)を示す情報が供給されることによって、測定周波数ごとに、例えば以下に示す式(4)で定義される伝達関数H(jω)を算出する。尚、伝達関数H(jω)は、電圧レシオを示す関数として定義されているが、巻線インピーダンスやアドミタンスを示す関数として定義されてもよい。伝達関数H(jω)は、記憶部240の記憶領域240Aに記憶される。
【0033】
【数4】
周波数応答波形生成部230は、記憶部240の記憶領域240Aから読み出される伝達関数H(jω)を繋ぎ合わせて周波数応答波形を生成する。周波数応答波形を示す情報は、記憶部240の記憶領域240Bに記憶される。
【0034】
記憶部240は、上記の記憶領域240A、240Bを有する。尚、記憶部240は、1つの記憶領域を2つの記憶領域240A、240Bに分割する1つの記憶部であってもよいし、2つの記憶領域240A、240Bを個別に有する2つの記憶部であってもよい。
【0035】
出力部250は、記憶部240の記憶領域240Bから読み出された周波数応答波形を示す情報を後段の診断装置(不図示)に出力する。
【0036】
診断装置は、例えば、出力部250から供給された電力用変圧器300の現在の周波数応答波形を、電力用変圧器300が健全であることを示す予め用意されている周波数応答波形と比較し、両波形の乖離の度合に応じて、電力用変圧器300が健全な状態で稼働しているか否かを診断する。
【0037】
===計測装置の動作===
図3は、本実施形態に係る計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。尚、
図3における動作の主体は、制御部170Bである。
【0038】
先ず、制御部170Bは、入力電圧発生器110から発生する入力電圧Vin(jω)の周波数を第1測定周波数と第2測定周波数との間の一の周波数(例えば100Hz)に固定し、アクチュエータ170Cを制御することによって、鉄心160Bをコイル巻線160Aの軸線方向に沿って移動させて可変インダクタ160の値を調整する。そして、制御部170Bは、電流計190の値がゼロとなるときの、即ち共振回路400が並列共振するときの可変インダクタ160の値を取得し、式(3)からキャパシタンス成分500の値を算出する(ステップS1)。
【0039】
次に、制御部170Bは、入力電圧発生器110から発生する入力電圧Vin(jω)の周波数が第1測定周波数から第2測定周波数まで連続的に変化するように、入力電圧Vin(jω)の掃引を開始する(ステップS2)。
【0040】
次に、制御部170Bは、ステップS1で算出されたキャパシタンス成分500の値と入力電圧Vin(jω)の周波数の値とを式(3)に代入することによって、共振回路400が並列共振することとなる可変インダクタ160の値を算出する(ステップS3)。
【0041】
次に、制御部170Bは、アクチュエータ170Cを制御することによって、鉄心160Bをコイル巻線160Aの軸線方向に沿って移動させ、共振回路400が並列共振するように可変インダクタ160の値を調整する(ステップS4)。
【0042】
次に、制御部170Bは、入力電圧Vin(jω)の周波数が第2測定周波数であるか否かを判別する(ステップS5)。入力電圧Vin(jω)の周波数が第2測定周波数ではない場合(ステップS5:NO)、ステップS3以降の処理を再度実行する。一方、入力電圧Vin(jω)の周波数が第2測定周波数である場合(ステップS5:YES)、一連の処理を終了する。
【0043】
これによって、共振回路400を並列共振させることによって計測装置100とキャパシタンス成分500との間のインピーダンスを無限大とできるため、電力用変圧器300にキャパシタンス成分500を含む付属設備を接続したままの状態で、電力用変圧器300単体としての出力電圧Vout(jω)を得ることが可能となる。
【0044】
===まとめ===
以上説明したように、電力用変圧器300に入力される入力電圧Vin(jω)の周波数を第1測定周波数(数十Hz)から第2測定周波数(数MHz)まで変化させたときに、電力用変圧器300から入力電圧Vin(jω)の周波数の変化に応じて出力される出力電圧Vout(jω)に基づいて、周波数応答波形生成装置200が、第1測定周波数から第2測定周波数までの各測定周波数に対応する伝達関数H(jω)を算出し、伝達関数H(jω)から電力用変圧器300の周波数応答波形を生成するように、電力用変圧器300に入力電圧Vin(jω)を入力するとともに電力用変圧器300から出力される出力電圧Vout(jω)を周波数応答波形生成装置200に入力するために用いられる計測装置100であって、電力用変圧器300に接続されている付属設備(計器用変圧器やサージアブソーバ等)に含まれるキャパシタンス成分500に対して並列に接続される可変インダクタ160と、入力電圧Vin(jω)の第1測定周波数から第2測定周波数までの周波数の変化に応じて、可変インダクタ160がキャパシタンス成分500と並列共振するように、可変インダクタ160の値を制御する制御装置170と、を備える。これによって、計測装置100とキャパシタンス成分500との間のインピーダンスを無限大とできるため、電力用変圧器300にキャパシタンス成分500を含む付属設備を接続したままの状態で、電力用変圧器300単体としての出力電圧Vout(jω)を得ることが可能となる。つまり、電力用変圧器300の周波数応答解析を行う際の停電作業時間を短縮することが可能となる。
【0045】
又、制御装置170は、入力電圧Vin(jω)の周波数を所定値(例えば100Hz)に固定したときにキャパシタンス成分500と並列共振する可変インダクタ160の値を求めることによって、キャパシタンス成分500の値を算出する算出部170Aと、算出部170Aによって算出されたキャパシタンス成分500の値と、第1測定周波数から第2測定周波数まで変化する入力電圧Vin(jω)の周波数の値とに基づいて、可変インダクタ160がキャパシタンス成分500と並列共振するように、可変インダクタ160の値を制御する制御部170Bと、を含んで構成される。
【0046】
又、可変インダクタ160は、円筒型のコイル巻線160Aと、コイル巻線160内に挿通される鉄心160Bとを含み、制御部170Bは、可変インダクタ160の値がキャパシタンス成分500と並列共振する値となるように、コイル巻線160Aに対して鉄心160Bを出し入れするアクチュエータ170Cを含んで構成される。
【0047】
又、キャパシタンス成分500の値を算出する際の入力電圧Vin(jω)の周波数は、第1測定周波数と前記第2測定周波数との間の1つの周波数である。
【0048】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100 計測装置
110 入力電圧発生器
120 抵抗
130、140 電圧計
150 スイッチ
160 可変インダクタ
160A コイル巻線
160B 鉄心
170 制御装置
170A 算出部
170B 制御部
170C アクチュエータ
180 配線
190 電流計
200 周波数応答波形生成装置
210 入力部
220 伝達関数算出部
230 周波数応答波形生成部
240 記憶部
240A、240B 記憶領域
250 出力部
300 電力用変圧器
310 1次巻線
320 2次巻線
400 共振回路
500 キャパシタンス成分