(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/265 20180101AFI20230516BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20230516BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20230516BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20230516BHJP
F21S 41/36 20180101ALI20230516BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20230516BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20230516BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230516BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/663
F21S41/148
F21S41/151
F21S41/36
F21W102:13
F21W102:135
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019097517
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 洋弥
(72)【発明者】
【氏名】武藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226860(JP,A)
【文献】特開平06-020505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/265
F21S 41/663
F21S 41/148
F21S 41/151
F21S 41/36
F21W 102/13
F21W 102/135
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源から出射された光を投影してすれ違い用配光パターンを形成するとともに、第2光源から出射された光を投影して走行用配光パターンを形成する投影レンズを備え、
前記投影レンズでは、レンズ軸を中心として下側レンズ部と上側レンズ部とが設定され、
前記下側レンズ部では、前記レンズ軸上に下側焦点が設定され、
前記上側レンズ部では、前記レンズ軸上に前記下側焦点よりも焦点距離の短い上側焦点が設定され
、
前記投影レンズでは、前記下側レンズ部と前記上側レンズ部とを繋ぐ徐変レンズ部が設定され、
前記徐変レンズ部は、焦点距離を前記下側焦点から前記上側焦点へと連続して変化させていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記投影レンズは、
前記レンズ軸を含む鉛直面に関して面対称な構成とされ、前記徐変レンズ部が前記鉛直面に直交する幅方向で対を為して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記上側レンズ部は、前記レンズ軸からの半径方向における出射面または入射面の曲率が前記下側レンズ部よりも大きく設定されていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1光源から出射された光は、前記レンズ軸よりも上側から前記下側焦点を通り前記下側レンズ部に入射し、
前記第2光源から出射された光は、前記レンズ軸よりも下側から前記上側焦点を通り前記上側レンズ部に入射することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
さらに、前記第1光源から出射された光を前記下側焦点へと反射する第1リフレクタと、前記第2光源から出射された光を前記上側焦点へと反射する第2リフレクタと、を備え、
前記第1光源と前記第1リフレクタとは、前記レンズ軸上で前記レンズ軸に沿って設けられた平行設置部の上側に設けられ、
前記第2光源と前記第2リフレクタとは、前記平行設置部の下側に設けられていることを特徴とす
る車両用灯具。
【請求項6】
第1光源から出射された光を投影してすれ違い用配光パターンを形成するとともに、第2光源から出射された光を投影して走行用配光パターンを形成する投影レンズを備え、
前記投影レンズでは、レンズ軸を中心として下側レンズ部と上側レンズ部とが設定され、
前記下側レンズ部では、前記レンズ軸上に下側焦点が設定され、
前記上側レンズ部では、前記レンズ軸上に前記下側焦点よりも焦点距離の短い上側焦点が設定され、
さらに、前記第1光源から出射された光を前記下側焦点へと反射する第1リフレクタと、前記第2光源から出射された光を前記上側焦点へと反射する第2リフレクタと、を備え、
前記第1光源と前記第2光源とは、前記レンズ軸よりも下側で同一平面上に設けられ、
前記第2リフレクタは、前記レンズ軸よりも下側であって、前記第1光源よりも前記投影レンズ側に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
第1光源から出射された光を投影してすれ違い用配光パターンを形成するとともに、第2光源から出射された光を投影して走行用配光パターンを形成する投影レンズを備え、
前記投影レンズでは、レンズ軸を中心として下側レンズ部と上側レンズ部とが設定され、
前記下側レンズ部では、前記レンズ軸上に下側焦点が設定され、
前記上側レンズ部では、前記レンズ軸上に前記下側焦点よりも焦点距離の短い上側焦点が設定され、
さらに、前記第1光源から出射された光を前記下側焦点へと反射する第1リフレクタと、前記第2光源から出射された光を前記上側焦点へと反射する第2リフレクタと、を備え、
前記第1光源は、前記レンズ軸に直交して延びる直交設置部における前記レンズ軸よりも上側に設けられ、
前記第2光源は、前記直交設置部における前記レンズ軸よりも下側に設けられ、
前記第1リフレクタは、前記レンズ軸よりも上側に設けられ、
前記第2リフレクタは、前記レンズ軸よりも下側に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、第1光源からの光を投影レンズから出射させてすれ違い用配光パターンを形成し、第2光源からの光を投影レンズから出射させて走行用配光パターンを形成するものがある。
【0003】
このような車両用灯具は、走行用配光パターンの一部がすれ違い用配光パターンにおけるカットオフラインを跨ぐように、走行用配光パターンを形成できるものが考えられている(例えば、特許文献1等参照)。この車両用灯具は、投影レンズを取り囲むように付加投影レンズを設け、投影レンズの焦点と、付加投影レンズにおける上部レンズ部の焦点と、付加投影レンズにおける下部レンズ部の焦点と、を様々な位置に設定している。この車両用灯具は、各焦点に対応してリフレクタを設定し、第1光源および第2光源からの光を各リフレクタで反射して各焦点を通すことで、すれ違い用配光パターンとともに、そのカットオフラインを跨ぐように走行用配光パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の車両用灯具は、すれ違い用配光パターンの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンを形成するために、投影レンズと、付加投影レンズにおける上部レンズ部と、同じく下部レンズ部と、でそれぞれ異なる曲面としつつ、投影レンズの周りに付加投影レンズを設ける必要がある。このため、上記の車両用灯具は、複雑でかつ大きなレンズとなってしまう。また、上記の車両用灯具は、様々な位置に設定した各焦点を通る光の光路のために空間を確保する必要があるので、全体の大型化を招いてしまう。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、すれ違い用配光パターンの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンを形成しつつ、簡易な構成で小型化することのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用灯具は、第1光源から出射された光を投影してすれ違い用配光パターンを形成するとともに、第2光源から出射された光を投影して走行用配光パターンを形成する投影レンズを備え、前記投影レンズでは、レンズ軸を中心として下側レンズ部と上側レンズ部とが設定され、前記下側レンズ部では、前記レンズ軸上に下側焦点が設定され、前記上側レンズ部では、前記レンズ軸上に前記下側焦点よりも焦点距離の短い上側焦点が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、すれ違い用配光パターンの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンを形成しつつ、簡易な構成で小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る車両用灯具の実施例1の車両用灯具を示す説明図である。
【
図2】投影レンズにおいて、レンズ軸を中心とする回転方向を説明するために、光軸方向の前側から見た様子で示す説明図である。
【
図3】投影レンズにおける焦点距離と回転方向での位置との関係を示すグラフであり、縦軸で焦点距離を示し、横軸で回転方向での位置を示す。
【
図4】すれ違い用配光パターンを示す説明図である。
【
図6】走行用配光パターンとすれ違い用配光パターンとを同時に形成した様子を示す説明図である。
【
図7】比較例の車両用灯具で走行用配光パターンとすれ違い用配光パターンとを同時に形成した様子を示す説明図である。
【
図10】実施例1から実施例3までの変形例としての車両用灯具を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の各実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0011】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、
図1から
図7を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、自動車等の車両の灯具として用いられるもので、例えば、ヘッドランプやフォグランプ等に用いられる。車両用灯具10は、車両の前部の左右両側に配置され、ランプハウジングの開放された前端がアウターレンズで覆われて形成される灯室に、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して設けられる。以下の説明では、車両用灯具10において、車両の直進時の進行方向であって光を照射する方向を光軸方向(図面ではZとする)とし、車両に搭載された状態での上下方向を上下方向(図面ではYとする)とし、光軸方向および上下方向に直交する方向を幅方向(図面ではXとする)とする。
【0012】
車両用灯具10は、
図1に示すように、第1光源11と第2光源12と放熱部材13と第1リフレクタ14と第2リフレクタ15とシェード16と投影レンズ17とを備え、プロジェクタタイプの前照灯ユニットを構成する。
【0013】
第1光源11は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成され、基板18に実装される。その基板18は、放熱部材13の上面13aに固定される。第1光源11は、光の出射光軸(光軸方向)が略上下方向とされ、点灯制御回路から電力が供給されて適宜点灯される。
【0014】
第2光源12は、LED等の発光素子で構成され、基板18における第1光源11よりも光軸方向の前側に実装される。このため、第2光源12は、第1光源11と同一平面上に設けられている。第2光源12は、光の出射光軸(光軸方向)が略上下方向とされ、点灯制御回路から電力が供給されて適宜点灯される。実施例1の第2光源12は、基板18上で幅方向に複数の光源部12a(
図1では手前側の1つのみ図示している)が整列されて構成される。各光源部12aは、発光素子で構成されて点灯制御回路から電力が供給されることで、適宜一斉にまたは個別に点灯される。
【0015】
放熱部材13は、第1光源11および第2光源12で発生する熱を外部に逃がすヒートシンク部材であり、熱伝導性を有するアルミダイカストや樹脂で形成されて適宜複数の放熱フィンが設けられ、上面13aが上下方向に直交する平坦面とされる。この放熱部材13では、上面13aに基板18が設けられるとともに、そこの第1光源11に対応して第1リフレクタ14が、同じく第2光源12に対応して第2リフレクタ15が、それぞれ上面13aに設けられる。実施例1の放熱部材13は、上面13aが、投影レンズ17のレンズ軸Laよりも上下方向の下側に設けられている。
【0016】
第1リフレクタ14は、第1光源11および第2リフレクタ15を覆っており、その第1光源11に対向する第1反射面21を有する。第1反射面21は、第1光源11から出射した光を投影レンズ17へ向けて反射する。第1反射面21は、第1リフレクタ14において第1光源11と対向する内側面に、蒸着や塗装等によりアルミや銀等の反射部材を接着させることで形成される。実施例1の第1反射面21は、第1リフレクタ14の基部側の下部反射面部21aと、その上に連続する上部反射面部21bと、を有する。下部反射面部21aは、上下方向で第2リフレクタ15の上縁(レンズ軸La)よりも下側に設けられ、第1光源11を焦点とする楕円を基本とした自由曲面とされており、第1光源11から出射された光を投影レンズ17の上部に設定された上側レンズ部32へ向けて反射する。上部反射面部21bは、第1光源11を第1焦点とするとともにシェード16の前縁部16a(下側レンズ部31の下側焦点Fd)の近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面とされており、第1光源11から出射された光を下側焦点Fdへ向けて反射する。
【0017】
第2リフレクタ15は、光軸方向で第1光源11よりも前側であって第1反射面21の内側でかつ投影レンズ17の2つの焦点(下側焦点Fd、上側焦点Fu)よりも後側であって、上下方向でレンズ軸Laよりも下側に設けられている。第2リフレクタ15は、第2光源12を覆っており、その第2光源12に対向する第2反射面22を有する。第2反射面22は、第2光源12から出射した光を投影レンズ17の上部に設定された上側レンズ部32へ向けて反射する。第2反射面22は、第2リフレクタ15において第2光源12と対向する内側面に、蒸着や塗装等によりアルミや銀等の反射部材を接着させることで形成される。第2反射面22は、第2光源12を第1焦点とするとともにレンズ軸La上に設定される上側レンズ部32の上側焦点Fuの近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面とされており、第2光源12から出射された光を上側焦点Fuへ向けて反射する。なお、第2リフレクタ15は、第1反射面21よりも前側に設けられていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0018】
シェード16は、第1光源11から出射された光の一部を遮光してすれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCl(
図4等参照)を形成する。シェード16は、幅方向に延びる板状とされて、高さの異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた形状とされている。シェード16は、前縁部16aが投影レンズ17の下側焦点Fdまたはその近傍に位置するように配置される。シェード16は、第1光源11から出射されて第1リフレクタ14の第1反射面21で反射された光の一部を前縁部16aで遮ることで、すれ違い用配光パターンLPの上縁に2つの水平ラインを傾斜ラインで繋ぎ合わせたカットオフラインClを形成する。また、シェード16は、少なくとも下側焦点Fdと第2リフレクタ15(その前端)との間において、レンズ軸Laを含む水平面で光を遮る、すなわち水平面を上下方向に光が通過することを防止する。
【0019】
投影レンズ17は、第1光源11から出射されて第1リフレクタ14(その第1反射面21)で反射された光を車両の前方へ投影して、すれ違い用配光パターンLP(
図4等参照)を形成する。また、投影レンズ17は、第2光源12から出射されて第2リフレクタ15(その第2反射面22)で反射された光を車両の前方へ投影して、走行用配光パターンHP(
図5等参照)を形成する。投影レンズ17は、第1光源11や第2光源12や第1リフレクタ14や第2リフレクタ15やシェード16に対して位置決めされた状態で、レンズホルダを介して放熱部材13に組み付けられる。
【0020】
投影レンズ17は、光軸方向の前側から見て円形状の凸レンズとされており、実施例1では出射面17aが凸面とされるとともに入射面17bが平坦面とされている。なお、投影レンズ17は、全体として凸レンズとされていれば、出射面17aが平坦面でも凹面でもよく、入射面17bが凸面でもよく凹面でもよく、実施例1の構成に限定されない。投影レンズ17は、光軸方向に延びるレンズ軸Laを有する。そのレンズ軸Laは、投影レンズ17において光軸方向での厚さが最も大きい位置を通る光学的な軸線であり、レンズ軸Laの延びる方向が光軸方向と平行(一致)とされている。
【0021】
次に、投影レンズ17の詳細な構成について、
図1から
図6を用いて説明する。
図3の縦軸は、投影レンズ17において、主点から光軸方向の後側の焦点までの距離となる焦点距離Dfを示している。
図3の横軸は、レンズ軸Laを含む鉛直面においてレンズ軸Laの下側を基準面Brとして、レンズ軸Laを回転中心とする反時計回り側を正側、かつ時計回り側を負側とする回転方向での角度θ(基準面Brが0度)を示している。
【0022】
投影レンズ17では、
図2に示すように、レンズ軸Laを回転中心とする回転方向で区画されて、下側に位置する下側レンズ部31と、上側に位置する上側レンズ部32と、それらを繋ぐ2つの徐変レンズ部33と、が設定されている。投影レンズ17は、レンズ軸Laを含む鉛直面に関して面対称な構成とされ、基準面Br(鉛直面)に対する各レンズ部(31、32、33)の角度範囲(
図3の角度θの絶対値)が左右で等しくされており、両徐変レンズ部33が幅方向で対を為している。各レンズ部(31、32、33)は、レンズ軸Laから半径方向での断面における出射面17aの曲率がそれぞれ異なるものとされており、それぞれにおける焦点距離Dfが異なるものとされている。すなわち、投影レンズ17は、共通のレンズ軸Laを有するものとしつつ、レンズ軸Laを中心とする回転方向での角度範囲に応じて、異なる複数の焦点距離Dfが設定されている。
【0023】
下側レンズ部31は、第1光源11から出射されて第1リフレクタ14(その第1反射面21)で反射された光を車両の前方へ投影することで、
図4のすれ違い用配光パターンLP(少なくとも一部)を形成する。下側レンズ部31では、
図1、
図3に示すように、光軸方向の後側の焦点となる下側焦点Fdが、レンズ軸La上で焦点距離Df1とする位置に設定されており、シェード16の前縁部16aの近傍とされている。
【0024】
上側レンズ部32は、第2光源12から出射されて第2リフレクタ15(その第2反射面22)で反射された光を車両の前方へ投影することで、
図5の走行用配光パターンHPを形成する。上側レンズ部32では、光軸方向の後側の焦点となる上側焦点Fuが、レンズ軸La上で焦点距離Df2とする位置に設定されている。実施例1の上側レンズ部32は、出射面17aの曲率が、下側レンズ部31における出射面17aの曲率(
図1のレンズ軸Laよりも上側において二点鎖線で示す線)より大きく設定されることで、焦点距離Df1よりも短い焦点距離Df2としている。上側焦点Fu(焦点距離Df2)は、下側焦点Fdを基準として、適宜設定される。なお、上側焦点Fuを基準として下側焦点Fdを設定してもよい。
【0025】
各徐変レンズ部33は、互いに異なる焦点距離Dfとされた下側レンズ部31と上側レンズ部32とを繋ぐものであり、下側レンズ部31側の下側焦点Fdから上側レンズ部32側の上側焦点Fuへと焦点距離Dfを連続的に変化(所謂徐変)させる。すなわち、各徐変レンズ部33は、レンズ軸Laを回転中心とする角度位置において、下側レンズ部31と接する位置では焦点距離Df1とし、上側レンズ部32と接する位置では焦点距離Df2とするように、連続的に焦点距離Dfを変化させている(
図3参照)。このため、各徐変レンズ部33は、角度位置に応じて焦点距離Dfを変化させつつ、どの角度位置であってもレンズ軸La上に焦点(平行光を集光させる点)を有するものとされている。
【0026】
実施例1の投影レンズ17は、下側レンズ部31を絶対値で0度から90度までの角度範囲とし、上側レンズ部32を絶対値で135度から180度までの角度範囲とし、両徐変レンズ部33を絶対値で90度から135度までの角度範囲としている。そして、投影レンズ17では、絶対値において、基準面Brからの反時計回りの正側の角度と、基準面Brからの時計回りの負側の角度と、が等しい角度位置では互いに等しい焦点距離Dfとされつつ、焦点距離Df1と焦点距離Df2との間のいずれかの値とされている。なお、下側レンズ部31と上側レンズ部32と両徐変レンズ部33との角度範囲は適宜設定すればよく、左右で異なる角度範囲としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0027】
次に車両用灯具10の点灯について説明する。車両用灯具10は、灯室に設けられて、コネクタ接続部を介して基板18に外部コネクタが接続される。車両用灯具10は、外部コネクタおよびコネクタ接続部を介する点灯制御回路から基板18に実装された第1光源11および第2光源12へと電力を供給することで、第1光源11および第2光源12を適宜点灯および消灯することができる。
【0028】
車両用灯具10は、
図1に示すように、第1光源11を点灯させると、そこからの光を第1リフレクタ14の第1反射面21の上部反射面部21bで反射して、レンズ軸La上でシェード16の前縁部16aの近傍に設定した投影レンズ17の下側レンズ部31の下側焦点Fdの近傍へと進行させる。その光は、一部が前縁部16aで遮られて前縁部16aに沿った形状とされつつ下側レンズ部31へと進行することで、下側レンズ部31(投影レンズ17)により投影されて上縁にカットオフラインClを有する
図4のすれ違い用配光パターンLPを形成する。
【0029】
ここで、車両用灯具10は、少なくとも下側レンズ部31の下側焦点Fdと第2リフレクタ15の前端との間にシェード16を設けており、その間においてレンズ軸Laを含む水平面で光が遮られている。このため、車両用灯具10では、第1光源11から出射されて上部反射面部21bで反射された光を、下側焦点Fdを含む下側焦点面(像面)におけるシェード16の前縁部16aよりも上側を通らせて下側レンズ部31に入射させることができる。これにより、車両用灯具10では、上部反射面部21bで反射した光が、
図5の走行用配光パターンHPを形成する領域(投影面上でレンズ軸Laの位置(水平線)よりも上側)における不測の位置に投影されることを防止できる。
【0030】
また、車両用灯具10は、第1光源11を点灯させると、そこからの光を第1リフレクタ14の第1反射面21の下部反射面部21aで反射して、シェード16よりも上側を通して投影レンズ17の上側レンズ部32へと進行させる。その光は、上側レンズ部32(投影レンズ17)により投影されることで、
図4のすれ違い用配光パターンLPにおける任意の位置を照射して明るくする。
【0031】
ここで、車両用灯具10では、上下方向で第2リフレクタ15の上縁よりも下側に下部反射面部21aを設けていることから、第1光源11から出射されて下部反射面部21aで反射した光を、上側焦点Fuを含む上側焦点面(像面)におけるレンズ軸Laよりも上側を通らせて上側レンズ部32に入射させることができる。これにより、車両用灯具10では、下部反射面部21aで反射した光が、走行用配光パターンHPを形成する領域における不測の位置に投影されることを防止できる。これらのことから、車両用灯具10では、すれ違い用配光パターンLPを適切に形成できる。
【0032】
さらに、車両用灯具10は、第2光源12を点灯させると、そこからの光を第2リフレクタ15の第2反射面22で反射することで、レンズ軸La上に設定した投影レンズ17の上側レンズ部32の上側焦点Fuの近傍へと進行させる。その光は、上側レンズ部32へと進行することで、上側レンズ部32(投影レンズ17)により投影されて走行用配光パターンHP(
図5参照)を形成する。ここで、車両用灯具10では、レンズ軸La上において、シェード16の前縁部16aの近傍に設定した下側焦点Fdよりも投影レンズ17側(短い焦点距離Df)に上側焦点Fuを設定している。このため、車両用灯具10では、上側焦点Fuの近傍ではシェード16により光が遮られることがないので、上側焦点Fuを含む焦点面(像面)における上側焦点Fuよりも下側に加えて、同じ焦点面における上側焦点Fuよりも上側も通して、第2光源12からの光を上側レンズ部32へと進行させることができる。これにより、車両用灯具10は、
図5に示すように、第2光源12からの光の一部がシェード16の前縁部16aで遮られて、走行用配光パターンHPの下縁が前縁部16aに沿った形状とされたとしても、その下縁を投影面上でレンズ軸Laの位置(水平線)よりも下側に位置させることができる。よって、車両用灯具10は、
図6に示すように、第2光源12からの光で、すれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部が重なるように走行用配光パターンHPを形成できる。
【0033】
実施例1の車両用灯具10は、ADB(Adaptive Driving Beam(配光可変型前照灯))としてもよい。この場合の車両用灯具10は、第2光源12の各光源部12aを点灯すると、それぞれの光が走行用配光パターンHPを幅方向に分割した配光部分を形成する。この場合の車両用灯具10は、各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、複数の配光部分のうちの特定の方向の配光部分を消灯できる。これにより、この場合の車両用灯具10は、各第2光源12を個別に点灯および消灯することで、走行用配光パターンHPにおける任意の方向の部分的な消灯を可能としている。
【0034】
このため、車両用灯具10は、第1光源11を点灯することで、
図4に示すように、カットオフラインClを有するすれ違い用配光パターンLPを形成でき、すれ違い時の配光(所謂ロービーム)とすることができる。また、車両用灯具10は、第1光源11に加えて第2光源12を点灯することで、
図6に示すように、すれ違い用配光パターンLPに部分的に重ねて走行用配光パターンHPを形成でき、走行時の配光(所謂ハイビーム)とすることができる。そして、車両用灯具10は、上記したように、第2光源12の各光源部12aのうち、任意の向きに位置する光源部12aを消灯することで、対応する方向の配光部分のみを形成しないことができ、ADBの機能を実現させることもできる。
【0035】
次に、この車両用灯具10の作用について説明する。先ず、車両用灯具10との比較のために、従来の一般的な車両用灯具(以下では、従来車両用灯具とする)について説明する。従来車両用灯具は、投影レンズ17の光軸方向の後側の焦点が下側焦点Fdに相当するシェード16の前縁部16aの近傍の一箇所だけに設定されていることを除くと、実施例1の車両用灯具10と同様の構成とされている。このため、以下では、理解を容易とするために、車両用灯具10と同様の名称および符号を用いて説明する。
【0036】
従来車両用灯具は、第1光源11から第1リフレクタ14を経た光と、第2光源12から第2リフレクタ15を経た光と、を下側焦点Fdの近傍を通して投影レンズ17へと入射させる。このため、従来車両用灯具は、車両用灯具10と同様に、第1光源11からの光の一部をシェード16で遮ることで、上縁にカットオフラインClを有するすれ違い用配光パターンLPを形成できる。しかしながら、従来車両用灯具は、下側焦点Fdの近傍にシェード16の前縁部16aが位置されているので、下側焦点Fdを含む下側焦点面(像面)における下側焦点Fdよりも上側を通して、第2光源12からの光を投影レンズ17へと入射させることができない。このため、従来車両用灯具は、
図7に示すように、第2光源12からの光の一部がシェード16の前縁部16aで遮られて、走行用配光パターンHPの下縁が前縁部16aに沿った形状とされると、その下縁が投影面上でレンズ軸Laの位置(水平線)よりも上側に位置してしまう。よって、従来車両用灯具は、第1光源11からの光によるすれ違い用配光パターンLPの上端部と、第2光源12からの光による走行用配光パターンHPの下端部と、の間に前縁部16aに起因する隙間を形成してしまう。
【0037】
これに対して、実施例1の車両用灯具10は、投影レンズ17のレンズ軸La上で、シェード16の前縁部16aの近傍に下側レンズ部31の下側焦点Fdを設定するとともに、その下側焦点Fdよりも投影レンズ17側(短い焦点距離Df)に上側レンズ部32の上側焦点Fuを設定している。このため、車両用灯具10は、第1光源11から第1リフレクタ14を経た光の一部をシェード16で遮りつつ下側レンズ部31に進行させるとともに、第2光源12から第2リフレクタ15を経た光を上側焦点Fuの下側だけではなく上側焦点Fuの上側も通して上側レンズ部32に進行させることができる。これにより、車両用灯具10は、適切にすれ違い用配光パターンLPを形成できるとともに、そのすれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンHPを適切に形成できる。
【0038】
また、車両用灯具10は、投影レンズ17において、レンズ軸Laから半径方向での断面における出射面17aの曲率を変化させることで、下側に位置する下側レンズ部31の下側焦点Fdと、上側に位置する上側レンズ部32の上側焦点Fuと、をレンズ軸La上に設定している。このため、車両用灯具10は、投影レンズを取り囲むように付加投影レンズを設ける先行技術文献として記載の技術(以下では単に先行技術とする)と比較して、投影レンズ17を簡易な構成でかつ小さなものにできる。これにより、車両用灯具10は、先行技術と比較して、部品点数を削減でき、レンズを形成するための型枠のコストを抑制でき、製造コストを抑制できる。加えて、車両用灯具10は、第1光源11からの光と第2光源12からの光とを、レンズ軸La上の下側焦点Fdや上側焦点Fuの近傍を通して投影レンズ17に入射させることができる。これにより、車両用灯具10は、様々な位置に複数の焦点を設定する先行技術と比較して、第1光源11や第2光源12からの光を投影レンズ17へと導くための光路を設けるための空間を小さくできる。これらのことから、車両用灯具10は、先行技術と比較して簡易な構成で小型化することができる。
【0039】
さらに、車両用灯具10は、投影レンズ17において、下側レンズ部31と上側レンズ部32とに加えて、下側レンズ部31の下側焦点Fdから上側レンズ部32の上側焦点Fuへと焦点距離Dfを連続して変化させる徐変レンズ部33を設けている。このため、車両用灯具10は、投影レンズ17の出射面17aを滑らで段差のない一枚面とすることができるとともに、部分的に重ねてすれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを適切に形成できる。
【0040】
ここで、一般的に投影レンズでは、徐変レンズ部33を設けることなく下側レンズ部31と上側レンズ部32とを設けると、異なる焦点距離Dfの設定のために出射面17aの曲率が互いに異なるものとなる。このため、投影レンズでは、出射面17aにおいて下側レンズ部31と上側レンズ部32との境界位置に段差が形成される。この段差は、境界位置がレンズ軸La上に位置することから、すれ違い用配光パターンLPとは別に、投影面上でレンズ軸Laの位置の周辺(
図4の破線で囲む領域Aで示す位置を参照)に意図しない明るい領域を形成してしまう虞がある。このような明るい領域は、対向車の乗員を幻惑してしまうので、すれ違い用配光パターンLPを形成する場面としては適切ではないとともに、走行用配光パターンHPを形成する場面としても意図したものではなくなってしまう。
【0041】
これに対して、実施例1の車両用灯具10では、投影レンズ17において、角度位置に応じて焦点距離Dfを変化させる各徐変レンズ部33で下側レンズ部31と上側レンズ部32とを繋いでいる。このため、車両用灯具10の投影レンズ17では、出射面17aを段差のない滑らかな面にできるとともに、どの角度位置であってもレンズ光軸La上に焦点を有するものとしている。このため、各徐変レンズ部33は、段差のない滑らかなものとして出射面17aの見栄えを向上できるとともに、段差によって生じる投影面上の意図しない位置を照射することを防止でき、角度位置に拘わらず常に焦点を有することで投影面上の意図した位置を照射することができる。よって、車両用灯具10は、下側レンズ部31と上側レンズ部32とに加えて各徐変レンズ部33を設けることで、すれ違い用配光パターンLPや走行用配光パターンHPを意図した適切なものとすることができる。
【0042】
実施例1の車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12を、基板18を介して平坦な上面13aに取り付けており、同一平面上に配置している。ここで、一般的にヒートシンクでは、熱源から放射状に熱が伝達するので、熱源を中心とする同心球状に大きな体積となる箇所を確保することで冷却性能を高めることができる。実施例1の車両用灯具10は、放熱部材13の上面13aを平坦にしているので、上面13aに段差を設けることと比較して、段差に起因して部分的に欠けたりすることなく第1光源11および第2光源12のそれぞれの下方に大きな体積を有する同心球状の箇所の確保が容易となる。このため、車両用灯具10は、放熱部材13において第1光源11および第2光源12のそれぞれに対して熱伝達させるための体積を確保することができ、第1光源11や第2光源12を適切に冷却することができる。加えて、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12を平坦な上面13aに取り付けることから、両光源11、12を同一の基板18に設けることができ、部品コストや組付けコストを低減できる。
【0043】
実施例1の車両用灯具10は、第1光源11と第2光源12と第1リフレクタ14と第2リフレクタ15とシェード16と投影レンズ17とを上記した位置関係で設けることで、すれ違い時の配光(ロービーム)と走行時の配光(ハイビーム)との切り替えを可能としている。ここで、従来車両用灯具では、配光パターンを形成する光の一部を遮る姿勢と遮らない姿勢とでシェードを変位可能に設け、駆動部によりシェードを変位させることで、すれ違い時の配光と走行時の配光との切り替えを可能とするものが知られている。しかしながら、このような従来車両用灯具は、シェードを変位させる駆動部が複雑で比較的高価な部品となってしまうので、部品点数や組み立て工程の増加を招くとともに、全体のコストの上昇を招いてしまう。これに対して、実施例1の車両用灯具10は、第1光源11と第2光源12と第1リフレクタ14と第2リフレクタ15とシェード16と投影レンズ17とを上記した位置関係で設けるだけなので、従来車両用灯具と比較して、部品点数や組み立て工程を削減でき、全体のコストを低減することができる。
【0044】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0045】
車両用灯具10は、第1光源11から出射された光を投影してすれ違い用配光パターンLPを形成するとともに、第2光源12から出射された光を投影して走行用配光パターンHPを形成する投影レンズ17を備える。また、車両用灯具10は、投影レンズ17において、レンズ軸La上に下側焦点Fdを有する下側レンズ部31と、レンズ軸La上で下側焦点Fdよりも焦点距離Dfの短い上側焦点Fuを有する下側レンズ部31と、をレンズ軸Laを中心とする上下に設定している。このため、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPの上端部に走行用配光パターンHPの下端部を重ねるように両配光パターンを形成できるとともに、先行技術と比較して簡易な構成で小型化することができる。
【0046】
車両用灯具10は、投影レンズ17において、下側レンズ部31と上側レンズ部32とを繋ぎつつ焦点距離Dfを下側焦点Fdから上側焦点Fuへと連続して変化させる徐変レンズ部33を設定している。このため、車両用灯具10は、投影レンズ17の出射面17aを滑らで段差のない一枚面とすることができるとともに、部分的に重ねるすれ違い用配光パターンLPおよび走行用配光パターンHPを適切に形成できる。
【0047】
車両用灯具10は、投影レンズ17において、レンズ軸Laを含む鉛直面に関して面対称な構成とし、幅方向で対を為して徐変レンズ部33を設けている。このため、車両用灯具10は、投影レンズ17を簡易な構成とすることができ、投影レンズ17を製造したり組み付けたりすることを容易なものにできる。
【0048】
車両用灯具10は、レンズ軸Laからの半径方向における出射面17aの曲率を、下側レンズ部31よりも上側レンズ部32で大きく設定している。このため、車両用灯具10は、出射面17aの曲率を変化させるだけで投影レンズ17に下側レンズ部31と上側レンズ部32とを設定でき、簡易な構成にできる。また、車両用灯具10は、出射面17aの曲率の設定で下側レンズ部31と上側レンズ部32とを設定しているので、簡易な構成としつつ下側焦点Fdおよび上側焦点Fuをレンズ軸La上に設定できる。さらに、車両用灯具10は、出射面17aの曲率の設定することで各徐変レンズ部33を設定できるので、簡易な構成としつつ出射面17aを滑らかで段差のない一枚面にできる。
【0049】
車両用灯具10は、第1光源11から出射された光を、レンズ軸Laよりも上側から下側焦点Fdを通して下側レンズ部31に入射させ、第2光源12から出射された光を、レンズ軸Laよりも下側から上側焦点Fuを通して上側レンズ部32に入射させる。このため、車両用灯具10は、簡易な構成としつつ、部分的に重ねるように第1光源11からの光ですれ違い用配光パターンLPを形成するとともに第2光源12からの光で走行用配光パターンHPを形成できる。
【0050】
車両用灯具10は、第1光源11から出射された光を下側焦点Fdへと反射する第1リフレクタ14と、第2光源12から出射された光を上側焦点Fuへと反射する第2リフレクタ15と、を備える。そして、車両用灯具10は、第1光源11と第2光源12とをレンズ軸Laよりも下側で同一平面上に設け、レンズ軸Laよりも下側であって光軸方向で第1光源11よりも前側でかつ第1反射面21の内側に第2リフレクタ15を設けている。このため、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12を同一平面上に設けても、第1光源11から出射されて第1リフレクタ14で反射された光と、第2光源12から出射されて第2リフレクタ15で反射された光と、を投影レンズ17に入射させることができる。これにより、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12を設置する設置個所(実施例1では放熱部材13の上面13a)の形状を簡易にできるとともに、その第1光源11および第2光源12を同一の基板18に設けることができ、簡易な構成にできる。
【0051】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンHPを形成しつつ、簡易な構成で小型化することができる。
【実施例2】
【0052】
次に、本開示の一実施形態である実施例2の車両用灯具10Aについて、
図8を用いて説明する。車両用灯具10Aは、実施例1の車両用灯具10の第1光源11および第2光源12の設置の態様を変更したものである。車両用灯具10Aは、基本的な概念および構成が実施例1の車両用灯具10と同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
実施例2の車両用灯具10Aは、第1光源11および第2光源12を放熱部材13Aに設置している。その放熱部材13Aは、設置片部41と放熱部42とを有する。設置片部41は、第1光源11および第2光源12が設置される箇所であり、上下方向に直交しつつレンズ軸Laを含む平板状とされている。設置片部41では、上下方向の上側の上面41aに基板18aを介して第1光源11が設置されるとともに、上下方向の下側の下面41bに基板18bを介して第2光源12が設置される。
【0054】
放熱部42は、第1光源11および第2光源12を冷却する。放熱部42は、設置片部41の光軸方向の後側の端部に連続して形成され、設置片部41に対して上下方向および幅方向に延びるものとされており、適宜複数の放熱フィンが設けられる。放熱部42は、第1光源11および第2光源12で発生した熱が設置片部41を介して伝達され、その熱を外部に逃がす。
【0055】
車両用灯具10Aでは、第1光源11および第2光源12の設置の態様の変更に伴って、第1リフレクタ14Aが第1光源11を覆って上面41aに設けられ、第2リフレクタ15Aが第2光源12を覆って下面41bに設けられる。このため、放熱部材13Aの設置片部41は、レンズ軸La上でレンズ軸Laに沿って設けられ、第1光源11と第1リフレクタ14Aとが上側に設けられ、第2光源12と第2リフレクタ15Aとが下側に設けられた平行設置部として機能する。第1リフレクタ14Aおよび第2リフレクタ15Aは、設置される位置関係が変化することを除くと、実施例1の第1リフレクタ14および第2リフレクタ15と同様の構成とされており、各光源(11、12)と2つの焦点(下側焦点Fd、上側焦点Fu)とに対する位置関係が実施例1と同様とされている。
【0056】
車両用灯具10Aでは、上記したようにレンズ軸La上に設置片部41を設けていることに伴って、シェード16を設置片部41の前端に設けている。このため、車両用灯具10Aでは、シェード16が設置片部41と協働して、下側焦点Fdよりも光軸方向の後側において、レンズ軸Laを含む水平面で光を遮る。
【0057】
車両用灯具10Aは、第1光源11を点灯させると、そこからの光を第1リフレクタ14Aの第1反射面21で反射させ、下側レンズ部31の下側焦点Fdの近傍を通って下側レンズ部31へと進行させる。このように、車両用灯具10Aは、第1光源11からの光を設置片部41の上側で下側焦点Fdへと導いて、下側レンズ部31に入射させることで、すれ違い用配光パターンLPを形成する。
【0058】
また、車両用灯具10Aは、第2光源12を点灯させると、そこからの光を第2リフレクタ15Aの第2反射面22で反射させ、上側レンズ部32の上側焦点Fuの近傍を通って上側レンズ部32へと進行させる。このように、車両用灯具10は、第2光源12からの光を設置片部41の下側で上側焦点Fuへと導いて、上側レンズ部32に入射させて、走行用配光パターンHPを形成する。
【0059】
実施例2の車両用灯具10Aは、以下の各作用効果を得ることができる。この車両用灯具10Aは、基本的に実施例1の車両用灯具10と同様の構成であるので、実施例1と同様の効果を得られる。
【0060】
それに加えて、車両用灯具10Aは、第1光源11からの光を下側焦点Fdへと導くための光路と、第2光源12からの光を上側焦点Fuへと導くための光路と、を設置片部41により上下に分離している。このため、車両用灯具10Aは、実施例1の車両用灯具10とは異なり第1光源11および第1リフレクタ14Aと下側焦点Fdとの間に第2リフレクタ15Aを配置しないので、その車両用灯具10と比較して第1光源11から第1リフレクタ14Aを経て下側焦点Fdへと導く光路の自由度を高めることができる。
【0061】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例2の車両用灯具10Aは、すれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンHPを形成しつつ、簡易な構成で小型化することができる。
【実施例3】
【0062】
次に、本開示の一実施形態である実施例3の車両用灯具10Bについて、
図9を用いて説明する。車両用灯具10Bは、実施例1の車両用灯具10の第1光源11および第2光源12の設置の態様を変更したものである。車両用灯具10Bは、基本的な概念および構成が実施例1の車両用灯具10と同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0063】
実施例3の車両用灯具10Bは、第1光源11および第2光源12を放熱部材13Bに設置している。その放熱部材13Bは、光軸方向に直交する直交設置面13bを有し、直交設置面13bの光軸方向後側に適宜放熱フィン等が設けられて構成される。その直交設置面13bは、第1光源11および第2光源12が設置される箇所であり、レンズ軸Laを中心に上下方向および幅方向に延びている。直交設置面13bでは、上下方向および幅方向でレンズ軸Laを跨いで基板18Bが設けられる。その基板18Bには、レンズ軸Laよりも上側に第1光源11が実装されるとともに、レンズ軸Laよりも下側に第2光源12が実装される。この第1光源11および第2光源12は、光の出射光軸(光軸方向)が略光軸方向とされる。このため、放熱部材13Bは、レンズ軸Laに直交して延び、第1光源11がレンズ軸Laよりも上側に設けられ、第2光源12がレンズ軸Laよりも下側に設けられた直交設置部として機能する。
【0064】
これに伴い、車両用灯具10Bでは、第1リフレクタ14Bが、第1反射部14Baと第2反射部14Bbとを有する。第1反射部14Baは、第1光源11の光軸方向の前側に設けられ、第1光源11から出射された光を第2反射部14Bbへ向けて反射する。実施例3の第1反射部14Baは、一例として第1光源11を焦点とする放物面とされており、第1光源11から出射された光を略平行光として第2反射部14Bbへ向けて反射する。
【0065】
第2反射部14Bbは、第1反射部14Baの上下方向の上側に設けられ、第1反射部14Baで反射された光を投影レンズ17の下側レンズ部31の下側焦点Fdを経て下側レンズ部31に入射させるように反射する。実施例3の第2反射部14Bbは、一例として第1反射部14Baを経て第1光源11と下側焦点Fdの近傍とを共役とする湾曲面とされており、下側焦点Fdの近傍を焦点とする放物面とされている。このため、第2反射部14Bbは、第1反射部14Baで反射された第1光源11からの光を下側焦点Fdの近傍へと進行させる。
【0066】
また、車両用灯具10Bでは、第2リフレクタ15Bが、第1反射部15Baと第2反射部15Bbとを有する。第1反射部15Baは、第2光源12の光軸方向の前側に設けられ、第2光源12から出射された光を第2反射部15Bbへ向けて反射する。実施例3の第1反射部15Baは、一例として第2光源12を焦点とする放物面とされており、第2光源12から出射された光を略平行光として第2反射部15Bbへ向けて反射する。
【0067】
第2反射部15Bbは、第1反射部15Baの上下方向の下側に設けられ、第1反射部15Baで反射された光を投影レンズ17の上側レンズ部32の上側焦点Fuを経て上側レンズ部32に入射させるように反射する。実施例3の第2反射部15Bbは、一例として第1反射部15Baを経て第2光源12と上側焦点Fuの近傍とを共役とする湾曲面とされており、上側焦点Fuの近傍を焦点とする放物面としている。このため、第2反射部15Bbは、第1反射部15Baで反射された第2光源12からの光を上側焦点Fuの近傍へと進行させる。
【0068】
この第1リフレクタ14Bの第1反射部14Baと第2リフレクタ15Bの第1反射部15Baとは、シェード16Bと一体的に設けられている。そのシェード16Bは、光軸方向の後側へと直交設置面13bの近傍まで延びるものとされており、後端部に第1反射部14Baと第1反射部15Baとが設けられている。このシェード16Bは、幅方向の両端部が車両用灯具10Bの外形を形作るフレーム部材に支持されており、レンズ軸La上で光軸方向に延びるとともに前縁部16aが下側焦点Fdの近傍に位置されている。また、第1リフレクタ14Bの第2反射部14Bbと第2リフレクタ15Bの第2反射部15Bbとは、幅方向の両端部が上記のフレーム部材に支持されている。
【0069】
車両用灯具10Bは、第1光源11を点灯させると、そこからの光を第1リフレクタ14Bの第1反射部14Baで反射して第2反射部14Bbへと進行させる。その光は、第2反射部14Bbで反射されて下側レンズ部31の下側焦点Fdの近傍を通って下側レンズ部31へと進行し、すれ違い用配光パターンLPを形成する。このように、車両用灯具10Bは、第1光源11からの光をシェード16Bの上側で下側焦点Fdへと導いて、下側レンズ部31に入射させる。
【0070】
また、車両用灯具10Bは、第2光源12を点灯させると、そこからの光を第2リフレクタ15Bの第1反射部15Baで反射して第2反射部15Bbへと進行させる。その光は、第2反射部15Bbで反射されて上側レンズ部32の上側焦点Fuの近傍を通って上側レンズ部32へと進行し、走行用配光パターンHPを形成する。このように、車両用灯具10Bは、第2光源12からの光をシェード16Bの下側で上側焦点Fuへと導いて、上側レンズ部32に入射させる。
【0071】
実施例3の車両用灯具10Bは、以下の各作用効果を得ることができる。この車両用灯具10Bは、基本的に実施例1の車両用灯具10と同様の構成であるので、実施例1と同様の効果を得られる。
【0072】
それに加えて、車両用灯具10Bは、第1光源11からの光を下側焦点Fdへと導くための光路と、第2光源12からの光を下側焦点Fdへと導くための光路と、をシェード16Bにより上下に分離している。このため、車両用灯具10Bは、実施例1の車両用灯具10とは異なり第1リフレクタ14Bと下側焦点Fdとの間に第2リフレクタ15Bを配置していないので、その車両用灯具10と比較して第1光源11から下側焦点Fdへと導く光路の自由度を高めることができる。また、車両用灯具10Bは、実施例2の車両用灯具10Aとは異なり放熱部材13Bの直交設置面13bに単一の基板18Bを介して第1光源11および第2光源12を設けているので、その車両用灯具10Aと比較して全体の組み付け工程を簡易にできる。
【0073】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例3の車両用灯具10Bは、すれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンHPを形成しつつ、簡易な構成で小型化することができる。
【0074】
なお、実施例3では、第1リフレクタ14Bが第1反射部14Baと第2反射部14Bbとを有し、第2リフレクタ15Bが第1反射部15Baと第2反射部15Bbとを有するものとしている。しかしながら、
図9に二点鎖線で示すように、第1リフレクタ14Bとして第3反射部14Bcを加えて設けるとともに第2リフレクタ15Bとして第3反射部15Bcを加えて設けるものとしてもよく、実施例3の構成に限定されない。
【0075】
第3反射部14Bcは、第1光源11から出射されて第1反射部14Baに至ることなく第2反射部14Bbの前側へと進行する光を、下側レンズ部31へ向けて反射させるもので、第2反射部14Bbの前側に設けられる。この第3反射部14Bcは、第1光源11を第1焦点とするとともに下側焦点Fdの近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面としてもよく、他の構成でもよい。第3反射部14Bcは、
図9に示す例では、楕円を基本とした自由曲面としており、反射した第1光源11からの光を、下側焦点Fdを通ることなく下側レンズ部31へと進行させており、その光ですれ違い用配光パターンLPの少なくとも一部を形成する。なお、第3反射部14Bcは、反射した第1光源11からの光を下側焦点Fdを通るものとしてもよく、実施例3の構成に限定されない。
【0076】
第3反射部15Bcは、第2光源12から出射されて第1反射部15Baに至ることなく第2反射部15Bbの前側へと進行する光を、上側レンズ部32へ向けて反射させるもので、第2反射部15Bbの前側に設けられる。この第3反射部15Bcは、第2光源12を第1焦点とするとともに上側焦点Fuの近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面としてもよく、他の構成でもよい。第3反射部15Bcは、
図9に示す例では、前者の構成としており、反射した第2光源12からの光を、上側焦点Fuを通って上側レンズ部32へと進行させており、その光で走行用配光パターンHPの少なくとも一部を形成する。なお、第3反射部15Bcは、反射した第2光源12からの光を上側焦点Fuを通らないものとしてもよく、実施例3の構成に限定されない。このように第3反射部14Bcおよび第3反射部15Bcを設けると、第1光源11や第2光源12からの光をより有効に利用してすれ違い用配光パターンLPや走行用配光パターンHPを形成できる。
【0077】
また、実施例3では、第1リフレクタ14Bの第1反射部14Baおよび第2反射部14Bbと、第2リフレクタ15Bの第1反射部15Baおよび第2反射部15Bbと、を自由曲面としている。しかしながら、第1リフレクタ14Bは、第1光源11からの光を下側レンズ部31へと進行させてすれ違い用配光パターンLPを形成し、第2リフレクタ15Bは、第2光源12からの光を上側レンズ部32へと進行させて走行用配光パターンHPを形成すればよく、実施例3の構成に限定されない。この一例としての車両用灯具10Cを
図10に示す。車両用灯具10Cは、第1リフレクタ14Cの第1反射部14Caおよび第2リフレクタ15Cの第1反射部15Caを平坦な面としたもので、それに伴って第2反射部14Bbおよび第2反射部15Bbの湾曲度合い(焦点位置)を変更させている。車両用灯具10Cは、上記したことを除くと実施例3の車両用灯具10Bと同様の構成とされており、車両用灯具10Bと同様の効果を得ることができる。なお、車両用灯具10Cは、
図9に二点鎖線で示す例と同様に、第3反射部14Ccや第3反射部15Ccを設けるものとしてもよく、この場合には第1光源11や第2光源12からの光をより有効に利用してすれ違い用配光パターンLPや走行用配光パターンHPを形成できる。
【0078】
以上、本開示の車両用灯具を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0079】
なお、各実施例では、上記した各構成とされている。しかしながら、投影レンズ17が、第1光源11からの光ですれ違い用配光パターンLPを、第2光源12からの光で走行用配光パターンHPをそれぞれ形成し、レンズ軸La上に下側焦点Fdが設定された下側レンズ部31と、レンズ軸La上で下側焦点Fdよりも焦点距離Dfの短い上側焦点Fuが設定された上側レンズ部32と、を有するものであれば、他の構成でもよく、各実施例の構成に限定されない。すなわち、第1光源11、第2光源12、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15の位置関係は適宜設定すればよく、各実施例の位置関係に限定されない。
【0080】
また、各実施例では、投影レンズ17において、下側レンズ部31と上側レンズ部32と徐変レンズ部33とが設定されている。しかしながら、下側レンズ部31と上側レンズ部32とが設定されていれば、徐変レンズ部33が設定されていなくてもよく、各実施例の構成に限定されない。
【0081】
さらに、各実施例では、投影レンズ17において、入射面17bを平坦面としているので出射面17aの曲率を変化させることで、下側レンズ部31と上側レンズ部32と徐変レンズ部33と(それらの各焦点距離Df)を設定している。しかしながら、投影レンズ17は、下側レンズ部31および上側レンズ部32(適宜徐変レンズ部33も併せて)を設定するものであれば、出射面17aと入射面17bとの曲率を変化させるものでもよく、入射面17bのみの曲率を変化させるものでもよく、各実施例の構成に限定されない。この場合、出射面17aと入射面17bとの曲率または入射面17bのみの曲率は、下側レンズ部31よりも上側レンズ部32の方が大きく設定されることとなる。
【符号の説明】
【0082】
10、10A、10B、10C 車両用灯具 11 第1光源 12 第2光源 13B 放熱部材(直交設置部の一例としての) 14、14A、14B、14C 第1リフレクタ 15、15A、15B、15C 第2リフレクタ 17 投影レンズ 17a 出射面 17b 入射面 31 下側レンズ部 32 上側レンズ部 33 徐変レンズ部 41 (平行設置部の一例としての)設置片部 Df 焦点距離 Fd 下側焦点 Fu 上側焦点 HP 走行用配光パターン La レンズ軸 LP すれ違い用配光パターン