(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20230516BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20230516BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20230516BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20230516BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/86 301M
H01L29/86 301P
H01L29/91 F
H01L29/91 K
H01L29/48 D
H01L29/48 F
(21)【出願番号】P 2019161880
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2018178966
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安西 孝太
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一也
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0048902(US,A1)
【文献】特開2013-102087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0261673(US,A1)
【文献】特表2003-526949(JP,A)
【文献】特開2003-318389(JP,A)
【文献】特開2010-182881(JP,A)
【文献】特許第6327378(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 21/329
H01L 29/861
H01L 29/47
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成することと、
前記n型半導体層の表面上に、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成することと、
前記p型半導体層の表面の一部からp型不純物をイオン注入することと、
熱処理によって、イオン注入された不純物を活性化させた注入領域を形成するとともに、前記注入領域の下方に位置する前記n型半導体層に対して前記p型半導体層に含まれるp型不純物を拡散させることによってp型不純物拡散領域を形成することと、
前記p型不純物拡散領域が形成された範囲とは異なる範囲の前記n型半導体層が少なくとも露出するように前記p型半導体層をエッチングすることと、
前記p型半導体層がエッチングされて露出した前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成することと、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体装置の製造方法であって、
n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成することと、
前記n型半導体層の表面上に、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成することと、
前記p型半導体層の表面の一部から不純物をイオン注入することと、
熱処理によって、イオン注入された不純物を活性化させた注入領域を形成するとともに、前記注入領域の下方に位置する前記n型半導体層に対して前記p型半導体層に含まれるp型不純物を拡散させることによってp型不純物拡散領域を形成することと、
前記p型不純物拡散領域が形成された範囲とは異なる範囲の前記n型半導体層が少なくとも露出するように前記p型半導体層をエッチングすることと、
前記p型半導体層がエッチングされて露出した前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成することと、を備え、
さらに、
前記熱処理と前記p型半導体層のエッチングとの間において、前記p型半導体層の表面から積層方向において少なくとも前記注入領域が形成されている部分を含んだ前記p型半導体層をエッチングすることを備える、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記p型半導体層のエッチングは、前記p型半導体層の表面のうち少なくとも一部にマスクを形成したのち、前記p型半導体層をエッチングする、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、pn接合ダイオードとショットキーバリアダイオードとが並列に設けられたジャンクションバリアショットキーダイオード構造を備えるものがある。このような半導体装置の製造方法には、n型不純物を含有するn型半導体層およびp型不純物を含有するp型半導体層を積層させたのちに、p型半導体層の一部をエッチングによりn型半導体層とp型半導体層との界面まで除去してn型半導体層を露出させる工程を含むものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製造方法において、n型半導体層とp型半導体層との界面まで精度良くエッチングすることは技術的に難しいために、界面よりn型半導体層の側にエッチングされることによって、p型半導体層が存在する位置より深い位置にn型半導体層の一部が窪んで角部が形成されることがある。このような場合、その角部に電界集中が発生して逆方向リーク電流を増加させる原因となる虞がある。このような課題を解決するために、ジャンクションバリアショットキーダイオード構造を備える半導体装置の製造方法において、p型半導体層より深い位置にn型半導体層の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
半導体装置の製造方法であって、
n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成することと、
前記n型半導体層の表面の一部に第1マスクを形成したのち前記第1マスクに覆われていない部分をエッチングして溝部を形成することと、
前記第1マスクを除去することと、
前記第1マスクを除去したのち、前記溝部を含む前記n型半導体層の表面上に、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成することと、
前記溝部が形成された範囲とは異なる範囲の前記n型半導体層が少なくとも露出するように前記p型半導体層を少なくとも前記溝部の端までエッチングすることと、
前記p型半導体層がエッチングされて露出した前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成することと、を備える、半導体装置の製造方法。
半導体装置の製造方法であって、
n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成することと、
前記n型半導体層の表面上に、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成することと、
前記p型半導体層の表面の一部からp型不純物をイオン注入することと、
熱処理によって、イオン注入された不純物を活性化させた注入領域を形成するとともに、前記注入領域の下方に位置する前記n型半導体層に対して前記p型半導体層に含まれるp型不純物を拡散させることによってp型不純物拡散領域を形成することと、
前記p型不純物拡散領域が形成された範囲とは異なる範囲の前記n型半導体層が少なくとも露出するように前記p型半導体層をエッチングすることと、
前記p型半導体層がエッチングされて露出した前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成することと、を備える、半導体装置の製造方法。
半導体装置の製造方法であって、
n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成することと、
前記n型半導体層の表面の一部に第1マスクを形成したのち前記第1マスクに覆われていない部分をエッチングして溝部を形成することと、
前記第1マスクに覆われていない部分において、前記溝部から少なくとも前記n型半導体層と前記第1マスクとの界面まで、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成することと、
前記第1マスクを除去することと、
前記第1マスクを除去したのち、前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成することと、を備える、半導体装置の製造方法。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この半導体装置の製造方法は、n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成するn型半導体層形成工程と、前記n型半導体層の表面の一部に第1マスクを形成したのち前記第1マスクに覆われていない部分をエッチングして溝部を形成する溝部形成工程と、前記第1マスクを除去する第1マスク除去工程と、前記第1マスクを除去したのち、前記溝部を含む前記n型半導体層の表面上に、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成するp型半導体層形成工程と、前記溝部が形成された範囲とは異なる範囲の前記n型半導体層が少なくとも露出するように前記p型半導体層をエッチングするn型半導体層露出工程と、前記p型半導体層がエッチングされて露出した前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成する金属電極形成工程と、を備える。このような形態とすれば、溝部が形成された位置とは異なる位置のn型半導体層が露出する位置より深くエッチングが行われたとしても、p型半導体層より深い位置にn型半導体層の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。
【0007】
(2)本発明の他の形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この半導体装置の製造方法は、n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成するn型半導体層形成工程と、前記n型半導体層の表面上に、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成するp型半導体層形成工程と、前記p型半導体層の表面の一部から不純物をイオン注入するイオン注入工程と、熱処理によって、イオン注入された不純物を活性化させた注入領域を形成するとともに、前記注入領域の下方に位置する前記n型半導体層に対して前記p型半導体層に含まれるp型不純物を拡散させることによってp型不純物拡散領域を形成する熱処理工程と、前記p型不純物拡散領域が形成された範囲とは異なる範囲の前記n型半導体層が少なくとも露出するように前記p型半導体層をエッチングするn型半導体層露出工程と、前記p型半導体層がエッチングされて露出した前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成する金属電極形成工程と、を備える。このような形態とすれば、p型不純物拡散領域が形成された範囲とは異なる範囲のn型半導体層が露出する位置より深くエッチングが行われたとしても、p型半導体層より深い位置にn型半導体層の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。
【0008】
(3)上記形態における半導体装置の製造方法において、さらに、前記熱処理工程と前記n型半導体層露出工程との間において、前記p型半導体層の表面から積層方向において少なくとも前記注入領域が形成されている部分を含んだ前記p型半導体層をエッチングする表面除去工程を備えてもよい。このような形態で製造された半導体装置では、p型半導体層のうちイオン注入によって注入領域の部分がダメージを受けていた場合、そのような部分を除去できることから、金属電極とp型半導体層との接触を良好にすることができる。
【0009】
(4)上記形態における半導体装置の製造方法において、イオン注入される前記不純物は、p型不純物であってもよい。
【0010】
(5)上記形態における半導体装置の製造方法において、前記n型半導体層露出工程は、前記p型半導体層の表面のうち少なくとも一部にマスクを形成したのち、前記p型半導体層をエッチングしてもよい。
【0011】
(6)本発明の他の形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この半導体装置の製造方法は、n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のn型半導体層を形成するn型半導体層形成工程と、前記n型半導体層の表面の一部に第1マスクを形成したのち前記第1マスクに覆われていない部分をエッチングして溝部を形成する溝部形成工程と、前記溝部から少なくとも前記n型半導体層と前記第1マスクとの界面まで、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系のp型半導体層を形成するp型半導体層形成工程と、前記第1マスクを除去する第1マスク除去工程と、前記第1マスクを除去したのち、前記n型半導体層および前記p型半導体層に接触する金属電極を形成する金属電極形成工程と、を備える。このような形態とすれば、p型半導体層より深い位置にn型半導体層の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。
【0012】
本発明の形態は、半導体装置の製造方法に限るものではなく、例えば、当該方法で製造された半導体装置や、その半導体装置を備える電力変換装置等の形態で実現することができる。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溝部が形成された位置とは異なる位置のn型半導体層が露出する位置より深くエッチングが行われたとしても、p型半導体層より深い位置にn型半導体層の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の製造方法を示す工程図である。
【
図3】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図4】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図5】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図6】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図7】比較例の半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態の製造方法を示す工程図である。
【
図10】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図11】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図12】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図13】第3実施形態の製造方法を示す工程図である。
【
図14】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図15】第4実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【
図16】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図17】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図18】第5実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【
図19】第6実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【
図20】製造途中にある半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図21】半導体装置のセル構造を示す模式図である。
【
図22】半導体装置のセル構造を示す模式図である。
【
図23】半導体装置のセル構造を示す模式図である。
【
図24】半導体装置のセル構造を示す模式図である。
【
図25】半導体装置のセル構造を示す模式図である。
【
図26】半導体装置のセル構造を示す模式図である。
【
図27】他の実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【
図28】他の実施形態の製造方法で製造される半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態:
A-1.半導体装置の構成
図1は、第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置10の構成を模式的に示す断面図である。
図1には、半導体装置10のうち-X軸方向側における終端部分が示されている。なお、
図1以降に示された模式図は、半導体装置10の技術的特徴をわかりやすく示すための図であり、各部の寸法を正確に示すものではない。
図1には、説明を容易にするために、相互に略直交するXYZ軸が図示されている。X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸である。Y軸は、
図1の紙面の手前から奥に延びる軸である。Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸である。他の図のXYZ軸は、
図1のXYZ軸に対応する。なお、本明細書において、Z軸の+方向を便宜的に「上」と呼ぶことがある。この「上」という呼称は、半導体装置10の配置(向き)を限定するものではない。すなわち、半導体装置10は、任意の向きに配置しうる。
【0016】
半導体装置10は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置10は、ジャンクションバリアショットキーダイオード構造を備える。
図1には、ショットキー領域SRと、pn領域PNと、が示されている。本実施形態では、半導体装置10は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。半導体装置10は、基板110と、n型半導体層120と、溝部125と、p型半導体層130と、金属電極140と、配線電極150と、表面保護膜160と、裏面電極170と、を備える。
【0017】
基板110およびn型半導体層120は、X軸及びY軸に沿って広がる板状の半導体である。本実施形態では、基板110およびn型半導体層120は、窒化ガリウム(GaN)系の半導体である。窒化ガリウム系の半導体(GaN)としては、窒化ガリウム(GaN)のほか、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)などが例示できる。なお、電力制御用の半導体装置に用いる観点から、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)が好ましい。本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)を用いる。なお、本実施形態の効果を奏する範囲において、窒化ガリウム(GaN)の一部をアルミニウム(Al)やインジウム(In)などの他のIII族元素に置換してもよく、他の不純物を含んでいてもよい。
【0018】
基板110は、n型不純物を含有する半導体である。基板110は、n型の特性を有するn型半導体である。基板110は、ケイ素(Si)をn型不純物として含有する。基板110に含まれるシリコン(Si)濃度は、1E18cm-3である。なお、1E18との記載は、1×1018を示す。他の実施形態では、基板110に含まれるシリコン(Si)濃度は、1E18cm-3から1E20cm-3までの範囲内の任意の値から選択されてもよい。また、他の実施形態では、基板110は、ゲルマニウム(Ge)、酸素(O)などの他のn型不純物を含有してもよい。
【0019】
n型半導体層120は、基板110の上に位置する。n型半導体層120は、n型不純物を含有する半導体である。n型半導体層120は、ケイ素(Si)をn型不純物として含有する。n型半導体層120に含まれるシリコン(Si)濃度は、1E16cm-3である。他の実施形態では、n型半導体層120に含まれるシリコン(Si)濃度は、1E15cm-3から1E17cm-3までの範囲内の任意の値から選択されてもよい。他の実施形態では、n型半導体層120は、ゲルマニウム(Ge)、酸素(O)などの他のn型不純物を含有してもよい。
【0020】
溝部125は、n型半導体層120内に底部が位置する溝部である。溝部125は、n型半導体層120に対するドライエッチングによって形成された構造である。溝部125の深さは、1.0μmである。他の実施形態では、溝部125の深さは、0.1μm以上3.0μm以下の範囲内の任意の値から選択されてもよい。
【0021】
p型半導体層130は、n型半導体層120のうち溝部125の上に位置する。p型半導体層130は、p型不純物を含有する半導体である。p型半導体層130は、マグネシウム(Mg)をp型不純物として含有する。p型半導体層130に含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、1E19cm-3である。他の実施形態では、p型半導体層130に含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、1E17cm-3から1E22cm-3までの範囲内の任意の値から選択されてもよい。他の実施形態では、p型半導体層130は、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)のうちいずれかをp型不純物として含有してもよい。
【0022】
金属電極140は、n型半導体層120およびp型半導体層130の上に配される。また、金属電極140は、半導体装置10の+X軸方向側および-X軸方向側における終端部分では、p型半導体層130の一部の上に配される。金属電極140は、n型半導体層120とショットキー接合する電極である。ここでいうショットキー接合する電極とは、n型半導体層120における電子親和力と金属電極140として用いる金属の仕事関数との差が0.5eV以上の電極のことをいう。金属電極140は、-Z軸方向側から順に、厚さ100nmのニッケル(Ni)、厚さ100nmのパラジウム(Pd)、を積層して構成される。ここでいう厚さは、Z軸方向における長さのことである。他の実施形態では、金属電極140は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)のうち少なくとも1種の単層から構成されてもよいし、これら金属の中から選択された金属を積層して構成されてもよい。
【0023】
配線電極150は、金属電極140およびp型半導体層130の一部の上に配される。配線電極150は、-Z軸方向側から順に、厚さ35nmの窒化チタン(TiN)、厚さ2000nmのAl-Si系合金、を積層して構成される。他の実施形態では、配線電極150は、アルミニウム(Al)、Al-Cu系合金、Al-Si-Cu系合金または、金(Au)、銅(Cu)のうち少なくとも一種を含んで構成されていてもよい。配線電極150は、金属電極140と電気的に接続されたアノード電極である。
【0024】
表面保護膜160は、半導体装置10の+X軸方向側および-X軸方向側における終端部分において、配線電極150の一部およびp型半導体層130の一部の上に配される。表面保護膜160は、電気絶縁性を有する膜である。表面保護膜160は、厚さ500nmの窒化シリコン(SiN)で構成される。他の実施形態では、表面保護膜160は、酸化シリコン(SiO2)などとの積層で構成されてもよいし、シリコン(Si)を含む酸窒化物やポリイミドから構成されてもよい。
【0025】
裏面電極170は、基板110の-Z軸方向側にオーミック接合された電極である。裏面電極170は、+Z軸方向側から順に、厚さ30nmのチタン(Ti)、厚さ300nmのAl-Si系合金、を積層した後に熱処理によって合金化した電極である。熱処理温度は、450℃である。他の実施形態では、熱処理温度は、350℃以上550℃以下の任意の値から選択されてもよい。熱処理時間は、30分である。他の実施形態では、熱処理時間は、5分以上60分以下の任意の値から選択されてもよい。他の実施形態では、裏面電極170の-Z軸方向側の表面は、銀(Ag)で成膜してもよいし、窒化チタン(TiN)で構成されるバリアメタル層が積層されてもよい。裏面電極170は、ジャンクションバリアショットキーダイオードとしての半導体装置10のカソード電極となる。
【0026】
A-2.半導体装置の製造方法
図2は、半導体装置10の製造方法を示す工程図である。
図3は、製造途中にある半導体装置10p1の構成を模式的に示す断面図である。
図3は、
図2の工程P110および工程P120を経てから、工程P130の途中において第1マスク510が形成された半導体装置10p1の構成を示している。まず、製造者は、基板110を準備する基板準備工程を行う(工程P110)。次に、製造者は、n型半導体層形成工程を行う(工程P120)。n型半導体層形成工程(工程P120)では、基板110の上に、n型半導体層120を形成する。製造者は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、n型半導体層形成工程(工程P120)を行う。n型半導体層形成工程(工程P120)の後、製造者は、溝部形成工程(工程P130)を行う。溝部形成工程(工程P130)において、製造者は、n型半導体層120の表面の一部に第1マスク510を形成したのち第1マスク510に覆われていない部分をドライエッチングして溝部125を形成する。本実施形態では、ドライエッチングは、Cl系のエッチングガスを用いて実行される。
【0027】
図3に示された半導体装置10p1には、工程P110および工程P120を経たことによって、基板110の上にn型半導体層120が形成される。また、半導体装置10p1のうちn型半導体層120の+Z軸方向側の表面には、工程P130においてドライエッチングを行う前処理として、第1マスク510が間隔をあけて形成されている。この間隔をあけた部分のn型半導体層120の位置に溝部125が形成される。ドライエッチングの後には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などのアルカリ性溶液でウェットエッチングを行ってもよい。
【0028】
図4は、製造途中にある半導体装置10p2の構成を模式的に示す断面図である。
図4は、工程P140を終えた後の半導体装置10p2の構成を示している。溝部125を形成した後(工程P130)、製造者は、第1マスク510を除去する第1マスク除去工程を行う(工程P135)。次に、製造者は、p型半導体層形成工程を行う(工程P140)。p型半導体層形成工程(工程P140)では、溝部125を含むn型半導体層120の表面上に、p型半導体層130pを形成する。
図4に示された半導体装置10p2において、n型半導体層120の上には、工程P140を経て、p型半導体層130pが形成されている。
【0029】
図5は、製造途中にある半導体装置10p3の構成を模式的に示す断面図である。
図5は、工程P150を終えた後の半導体装置10p3の構成を示している。p型半導体層130pを形成した後(工程P140)、製造者は、n型半導体層露出工程を行う(工程P150)。n型半導体層露出工程(工程P150)では、積層方向であるZ軸方向において溝部125が存在する範囲R1内のp型半導体層130pの表面の全体に第2マスク520を形成したのち、範囲R1とは異なる範囲R2のn型半導体層120が露出するように第2マスク520に覆われていない部分のp型半導体層130pをドライエッチングする。他の実施形態では、範囲R1内のp型半導体層130pの一部に第2マスク520を形成したのち、ドライエッチングを行ってもよい。
図5に示された半導体装置10p3では、工程P150を経て、範囲R2におけるn型半導体層120が+Z軸方向側に露出している。また、溝部125の上には、p型半導体層130が形成されている。n型半導体層露出工程(工程P150)では、溝部形成工程(工程P130)と同様に、ドライエッチングの後には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などのアルカリ性溶液でウェットエッチングを行ってもよい。
【0030】
図6は、製造途中にある半導体装置10p4の構成を模式的に示す断面図である。
図6は、工程P160を終えた後の半導体装置10p4の構成を示している。n型半導体層120を露出した後(工程P150)、製造者は、第2マスク520を除去する第2マスク除去工程を行う(工程P155)。次に、製造者は、金属電極形成工程を行う(工程P160)。金属電極形成工程(工程P160)では、露出したn型半導体層120およびp型半導体層130に接触する金属電極140が形成される。金属電極140は、レジストマスクを用いたリフトオフ法により形成される。他の実施形態では、金属電極140は、第2マスク除去工程(工程P155)を終えた半導体装置の+Z軸方向側の表面全体に対して金属電極を形成した後に、エッチングやイオンミリングなどで加工することによって形成されてもよい。
図6に示された半導体装置10p4には、工程P160を経て、露出したn型半導体層120およびp型半導体層130の上に、金属電極140が形成されている。
【0031】
金属電極140を形成した後(工程P160)、製造者は、配線電極形成工程を行う(工程P170)。配線電極形成工程(工程P170)では、金属電極140およびp型半導体層130の一部の上に配線電極150が形成される。次に、製造者は、表面保護膜形成工程を行う(工程P180)。表面保護膜形成工程(工程P180)では、工程P170を経た製造途中の半導体装置の+X軸方向側および-X軸方向側における終端部分において、配線電極150の一部およびp型半導体層130の一部の上に、表面保護膜160が形成される。次に、製造者は、裏面電極形成工程を行う(工程P190)。裏面電極形成工程(工程P190)では、基板110の-Z軸方向側に、裏面電極170が形成される。
図2に示された工程P110から工程P190を経て、
図1の半導体装置10が完成する。
【0032】
以上説明した第1実施形態の製造方法によれば、溝部125が形成された位置(範囲R1)とは異なる位置(範囲R2)のn型半導体層120が+Z軸方向側に露出する位置より深くエッチングが行われたとしても、p型半導体層130より深い位置にn型半導体層120の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。角部については、
図7において説明する。
【0033】
図7は、比較例の半導体装置10cpの構成を示す断面図である。
図7には、比較例の半導体装置10cpのうち-X軸方向側における終端部分が示されている。
図7に示された半導体装置10cpは、理解を容易にするために、n型半導体層120cpと、p型半導体層130と、のみに符号を付した。範囲RD内のn型半導体層120cpは、p型半導体層130より深い位置に窪んでいる。ここでいう深い位置とは、-Z軸方向側の位置ということである。角部AGは、p型半導体層130より深い位置にn型半導体層120cpの一部が窪んで形成された角部である。このような角部AGには電界集中が発生しやすいため、逆方向リーク電流を増加させる原因となる虞がある。これに対して、第1実施形態の製造方法で製造された半導体装置10では、角部AGが形成されることを抑制できる。したがって、角部AGが形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。
【0034】
B.第2実施形態:
B-1.半導体装置の構成
図8は、第2実施形態の製造方法で製造される半導体装置20の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置20は、第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置10と比べて、p型半導体層130aの構造がp型半導体層130とは異なる点を除き、他の構造は半導体装置10と同じである。なお、半導体装置10と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0035】
p型半導体層130aは、p型半導体層130と同様に、マグネシウム(Mg)をp型不純物として含有する半導体である。p型半導体層130aは、下層132と、上層134とを有する。p型不純物として上層134に含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、下層132のマグネシウム(Mg)濃度より高い。
【0036】
B-2.半導体装置の製造方法
図9は、半導体装置20の製造方法を示す工程図である。
図10は、製造途中にある半導体装置20p1の構成を模式的に示す断面図である。
図10は、工程P210、工程P220および工程P230を経て、工程P235を終えた後の半導体装置20p1の構成を示している。第2実施形態の製造方法を構成する基板準備工程(工程P210)およびn型半導体層形成工程(工程P220)は、第1実施形態の製造方法を構成する基板準備工程(工程P110)およびn型半導体層形成工程(工程P120)と同じである。
【0037】
n型半導体層120が形成された後(工程P220)、製造者は、p型半導体層形成工程を行う(工程P230)。p型半導体層形成工程(工程P230)では、n型半導体層120の上に、p型半導体層132pを形成する。p型半導体層132pが形成された後(工程P230)、製造者は、イオン注入工程を行う(工程P235)。イオン注入工程(工程P235)では、p型半導体層132pの上からp型不純物がイオン注入される。イオン注入されるp型不純物は、マグネシウム(Mg)である。製造者は、工程P235を行う際に、p型半導体層132pの上にマスク530を形成してから、p型半導体層132pにp型不純物をイオン注入する。このとき、p型半導体層132pの上に、スルー膜として酸化アルミニウム(Al
2O
3)や窒化アルミニウム(AlN)などの膜を形成してから、そのスルー膜の上にマスク530を形成してもよい。
図10に示された半導体装置20p1には、工程P235を経て、マスク530に覆われていない部分のp型半導体層132pの表面からp型不純物がイオン注入されて、イオン注入領域134pが形成されている。イオン注入がされた後、マスク530は除去される。
【0038】
p型半導体層132pのZ軸方向における厚さのうち半分の位置(Z軸方向における真ん中の位置)からp型半導体層132pの表面までの間に、イオン注入の注入プロファイルのピークが配されるようにする。このような位置にピークを配することで、イオン注入により注入された不純物が、n型半導体層120に達することを抑制できる。また、イオン注入の注入プロファイルのピークが配される位置は、p型半導体層132pのZ軸方向における厚さのうち3分の1の位置からp型半導体層132pの表面までの間に配されることが望ましく、4分の1の位置からp型半導体層132pの表面までの間に配されることがさらに望ましい。
【0039】
本実施形態では、イオン注入時の注入エネルギーは、250keVである。他の実施形態では、イオン注入時の注入エネルギーは、10keV~500keVから任意に選択されてもよい。また、本実施形態では、イオン注入温度は、300℃である。他の実施形態では、イオン注入温度は、25℃以上600℃以下の任意の値から選択されてもよい。また、本実施形態では、イオン注入時のドーズ量は、1.0×1015cm-2である。他の実施形態では、イオン注入時のドーズ量は、1.0×1013cm-2以上1.0×1017cm-2以下の任意の値から選択されてもよい。
【0040】
図11は、製造途中にある半導体装置20p2の構成を模式的に示す断面図である。
図11は、工程P240を終えた後の半導体装置20p2の構成を示している。イオン注入された後(工程P235)、製造者は、熱処理工程を行う(工程P240)。熱処理工程(工程P240)では、熱処理によってイオン注入領域134pに含まれるp型不純物を活性化させるとともに、イオン注入領域134pの下方、すなわち-Z軸方向側に位置するn型半導体層120に対してp型半導体層132pに含まれるp型不純物を拡散させることによってp型不純物拡散領域132sを形成する。熱処理温度は、1100℃である。他の実施形態では、熱処理温度は、900℃以上1300℃以下の任意の値から選択されてもよい。また、熱処理時間は、60分である。他の実施形態では、熱処理時間は、0.5分以上120分以下の任意の値から選択されてもよい。
図11に示された半導体装置20p2には、工程P240を経て、イオン注入領域134pの-Z軸方向側にp型不純物拡散領域132sが形成されている。
【0041】
図12は、製造途中にある半導体装置20p3の構成を模式的に示す断面図である。
図12は、工程P250を終えた後の半導体装置20p3の構成を示している。熱処理が行われた後(工程P240)、製造者は、n型半導体層露出工程を行う(工程P250)。n型半導体層露出工程(工程P250)では、イオン注入された範囲R3内のイオン注入領域134pのうち一部にマスク540を形成したのち、p型不純物拡散領域132sが形成された範囲R3とは異なる範囲R4のn型半導体層120が露出するようにマスク540に覆われていない部分のイオン注入領域134p、p型半導体層132pおよびn型半導体層120の一部に形成されたp型不純物拡散領域132sをドライエッチングする。
図12に示された半導体装置20p3には、工程P250を経て、範囲R4におけるn型半導体層120は+Z軸方向側に露出している。また、工程P250を経て、半導体装置20p3には、
図8に示された下層132および上層134が形成されている。n型半導体層露出工程(工程P250)では、第1実施形態のn型半導体層露出工程(工程P150)と同様に、ドライエッチングの後には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などのアルカリ性溶液でウェットエッチングを行ってもよい。
【0042】
n型半導体層120を露出した後(工程P250)、製造者は、マスク540を除去するマスク除去工程を行う(工程P255)。マスク除去工程(工程P255)以降の、金属電極形成工程(工程P260)から裏面電極形成工程(工程P290)までの工程は、
図2に示された第1実施形態の製造方法における金属電極形成工程(工程P160)から裏面電極形成工程(工程P190)までの工程と同じである。
図9に示された工程P210から工程P290を経て、
図8の半導体装置20が完成する。
【0043】
以上説明した第2実施形態の製造方法によれば、下層132が形成された範囲R3とは異なる範囲R4のn型半導体層120が露出する位置より深くエッチングが行われたとしても、p型半導体層130aより深い位置にn型半導体層120の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。また、第2実施形態の製造方法により製造される半導体装置20では、p型半導体層130a全体が下層132のみから構成される半導体装置と比べて、金属電極140と上層134との界面における接触抵抗が低いことから、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際にpn領域に電流を流れやすくできる。また、第2実施形態の製造方法により製造される半導体装置20では、金属電極140の角部AGS(
図8)の-Z軸方向側にp型半導体層130aが配置されていることから、角部AGS周辺での電界集中の発生を抑制することができる。
【0044】
C.第3実施形態:
C-1.半導体装置の構成
第3実施形態の製造方法で製造される半導体装置は、第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置10と比べて同じ構造である。
【0045】
C-2.半導体装置の製造方法
図13は、第3実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程図である。
図14は、製造途中にある半導体装置10p5の構成を模式的に示す断面図である。
図14は、工程P310、工程P320および工程P330を経て、工程P340を終えた後の半導体装置10p5の構成を示している。第3実施形態の製造方法を構成する基板準備工程(工程P310)、n型半導体層形成工程(工程P320)および溝部形成工程(工程P330)は、第1実施形態の製造方法を構成する基板準備工程(工程P110)、n型半導体層形成工程(工程P120)および溝部形成工程(工程P130)と同じである。
【0046】
図2に示された第1実施形態の製造方法では、溝部形成工程(工程P130)の後に、第1マスク除去工程(工程P135)を行ってから、p型半導体層形成工程(工程P140)を行っていたが、第3実施形態の製造方法では、溝部形成工程(工程P330)の後に、第1マスク510を除去することなくp型半導体層形成工程を行う(工程P340)。p型半導体層形成工程(工程P340)では、溝部125から第1マスク510とn型半導体層120との界面より+Z軸方向側までp型半導体層130を形成する。換言すれば、溝部125を埋めつつ、第1マスク510とn型半導体層120との界面より+Z軸方向側まで伸びるp型半導体層130を形成する。
図14に示された半導体装置10p5には、工程P340を経て、p型半導体層130が形成されている。
【0047】
p型半導体層130が形成された後(工程P340)、製造者は、第1マスク510を除去する第1マスク除去工程を行う(工程P350)。第1マスク除去工程(工程P350)以降の、金属電極形成工程(工程P360)から裏面電極形成工程(工程P390)までの工程は、
図2に示された第1実施形態の製造方法における金属電極形成工程(工程P160)から裏面電極形成工程(工程P190)までの工程と同じである。
図13に示された工程P310から工程P390を経て、
図1に示した半導体装置10が完成する。
【0048】
以上説明した第3実施形態の製造方法によれば、p型半導体層130より深い位置にn型半導体層120の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。
【0049】
D.第4実施形態:
D-1.半導体装置の構成
図15は、第4実施形態の製造方法で製造される半導体装置40の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置40は、第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置10(
図1)と比べて、p型半導体層130bの構造がp型半導体層130とは異なる点を除き、他の構造は半導体装置10と同じである。なお、半導体装置10と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0050】
D-2.半導体装置の製造方法
第4実施形態の製造方法は、
図2に示された第1実施形態の製造方法と比べて、工程P140の内容および工程P150の内容が異なる点を除き、他の工程は第1実施形態の製造方法と同じである。p型半導体層130bの形状は、図面が模式的であることから、第2実施形態の製造方法で製造される半導体装置20(
図8)が備えるp型半導体層130aの形状と似ているように示されているが、p型半導体層130aが形成される過程と、p型半導体層130bが形成される過程と、は異なる。
【0051】
p型半導体層130bは、下層136と、上層138とを有する。p型不純物として上層138に含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、下層136のマグネシウム(Mg)濃度より高い。
【0052】
図16は、製造途中にある半導体装置40p2の構成を模式的に示す断面図である。
図16は、第4実施形態の工程P140を終えた後の半導体装置40p2の構成を示している。第4実施形態のp型半導体層形成工程(工程P140)では、溝部125を含むn型半導体層120の表面上に、p型半導体層136pを形成するとともに、p型半導体層136pの表面上にp型半導体層138pを形成する。p型不純物としてp型半導体層138pに含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、p型半導体層136pのマグネシウム(Mg)濃度より高い。
【0053】
図17は、製造途中にある半導体装置40p3の構成を模式的に示す断面図である。
図17は、第4実施形態の工程P150を終えた後の半導体装置40p3の構成を示している。第4実施形態のn型半導体層露出工程(工程P150)では、積層方向であるZ軸方向において溝部125が存在する範囲R5内のp型半導体層138pの表面のうち一部に第2マスク550を形成したのち、範囲R5とは異なる範囲R6のn型半導体層120が露出するように第2マスク550に覆われていない部分のp型半導体層136pおよびp型半導体層138p、n型半導体層120をドライエッチングする。
図17に示された半導体装置40p3には、第4実施形態の工程P150を経て、範囲R6におけるn型半導体層120が+Z軸方向側に露出している。また、溝部125の上には、p型半導体層130bが形成されている。
図2に示された工程P110から工程P130、上述した第4実施形態の工程P140および工程P150、
図2に示された工程P155から工程P190を経て、
図15の半導体装置40が完成する。
【0054】
以上説明した第4実施形態の製造方法によれば、溝部125が形成された位置(範囲R5)とは異なる位置(範囲R6)のn型半導体層120が露出する位置より深くエッチングが行われたとしても、p型半導体層130bより深い位置にn型半導体層120の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。また、第4実施形態の製造方法により製造される半導体装置40では、p型半導体層130b全体が下層136のみから構成される半導体装置と比べて、金属電極140と上層138との界面における接触抵抗が低いことから、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際にpn領域に電流を流れやすくできる。また、第4実施形態の製造方法により製造される半導体装置40では、金属電極140の角部の-Z軸方向側にp型半導体層130bが配置されていることから、角部周辺での電界集中の発生を抑制することができる。
【0055】
E.第5実施形態:
E-1.半導体装置の構成
図18は、第5実施形態の製造方法で製造される半導体装置50の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置50は、
図15に示された半導体装置40と比べて、金属電極140aの構造が金属電極140とは異なる点および絶縁膜180を備える点を除き、他の構造は半導体装置40と同じである。なお、半導体装置40と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0056】
E-2.半導体装置の製造方法
第5実施形態の製造方法は、第4実施形態の製造方法と比べて、工程P160の内容が異なる点および絶縁膜180が形成される工程が追加される点を除き、他の工程は第4実施形態の製造方法と同じである。
【0057】
金属電極140aは、n型半導体層120およびp型半導体層130bの上に配される。また、金属電極140aは、半導体装置50の+X軸方向側および-X軸方向側における終端部分では、p型半導体層130bの一部および絶縁膜180の一部の上に配される。金属電極140aは、第1層142と、第2層144と、を有する。
【0058】
第1層142は、金属電極140aのうち上層138と接触する位置に設けられる。第1層142は、第1層142と接触する上層138の電子親和力より高い仕事関数を有する。第1層142の仕事関数は、上層138の電子親和力より大きい値であることが好ましい。そのような値を第1層142の仕事関数がとることによって、第1層142と上層138との界面における抵抗を小さくすることができるため、該界面において電流を流れやすくすることができる。
【0059】
第2層144の一部は、金属電極140aのうちn型半導体層120と接触する位置に設けられる。第2層144は、n型半導体層120の電子親和力より高い仕事関数を有する。第2層144の仕事関数は、n型半導体層120の電子親和力より大きい値であることが好ましい。第2層144の仕事関数は、第1層142の仕事関数より低い値であることが好ましい。そのような値を第2層144の仕事関数がとることによって、ショットキー接合部分でのオン電圧を低くすることができ、順方向電流(-Z軸方向に向けて流れる電流)が流れ始める時間を短くすることができる。なお、第1層142の仕事関数および第2層144の仕事関数は、いずれもn型半導体層120の電子親和力より0.5eV以上大きい。
【0060】
第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置10(
図1)が有する金属電極140では、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際に、pn領域PNでは電流が流れやすいが、ショットキー領域SRでは電流が流れにくい。しかし、第5実施形態の製造方法で製造される半導体装置50が有する金属電極140aでは、pn領域での第1層142の仕事関数を高くするとともに、ショットキー領域での第2層144の仕事関数を低くする(かつ、第1層142の仕事関数および第2層144の仕事関数のいずれもn型半導体層120の電子親和力より大きい)ことによって、pn領域およびショットキー領域のいずれにおいても、電流を流れやすくできる。また、金属電極140aのように、複数の層が積層された金属電極を設けることによって半導体装置の設計の幅を広げることができる。
【0061】
第5実施形態の金属電極形成工程(工程P160)では、第1層142および第2層144を有する金属電極140aが、露出したn型半導体層120およびp型半導体層130bに対して形成される。金属電極140aは、第1層142、第2層144の順に形成される。また、第1層142を形成した後であって第2層144を形成する前に、熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことによって、第1層142と上層138との界面における接触抵抗を下げることができる。このときの熱処理温度は、400℃以上700℃以下の任意の値から選択される。また、熱処理時間は、30秒以上120分以下の任意の値から選択される。第1実施形態の製造方法で製造される半導体装置10(
図1)では、金属電極140が形成された後に熱処理を行うと、pn領域PNでは順方向電流が流れやすくなるが、ショットキー領域SRでは逆方向リークが増加してしまう。しかし、第5実施形態の製造方法で製造される半導体装置50が有する金属電極140aでは、第1層142を形成してから熱処理をしたのち第2層144を形成できることから、ショットキー領域での逆方向リークを増加させることなく、pn領域での順方向電流を流れやすくできる。
【0062】
絶縁膜180は、半導体装置50の+X軸方向側および-X軸方向側における終端部分において、上層138と第2層144との間に挟まれる位置に配される。第5実施形態の製造方法では、第2マスク除去工程(工程P155)と金属電極形成工程(工程P160)との間において、絶縁膜が形成される工程が行われる。
【0063】
電界集中の緩和効果および順方向電流の流れやすさといった電気的特性やプロセスの制約上、半導体装置50の寸法は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、距離W1および距離W2は、距離W1が距離W2よりも大きく、且つ、共に1μm以上10μm以下の任意の値から選択されることが好ましい。また、距離W3についても、1μm以上10μm以下の任意の値から選択されることが好ましい。また、距離d1および距離d2は、距離d1が距離d2よりも大きい方が好ましい。また、距離d1は、0.5μm以上10μm以下の任意の値から選択されることが好ましく、距離d2は、0.1μm以上5μm以下の任意の値から選択されることが好ましい。また、他の実施形態では、半導体装置50は、用途に応じて、上層138および第1層142を省いて、その部分を下層136および第2層144で埋めた構造であってもよい。
【0064】
以上説明した第5実施形態の製造方法で製造された半導体装置50においても、p型半導体層130bより深い位置にn型半導体層120の一部が窪んで角部が形成されることを抑制できる。したがって、角部が形成されたことによる電界集中の発生を抑制できる。また、絶縁膜180が形成されていることにより、半導体装置50の+X軸方向側および-X軸方向側における終端部分での電界集中の発生をより緩和することができる。第5実施形態の製造方法で製造された半導体装置50が備える第1層142および第2層144を有する金属電極140aと絶縁膜180とは、本明細書に説明されている他の実施形態の製造方法で製造される半導体装置に備えられていてもよい。
【0065】
F.第6実施形態:
F-1.半導体装置の構成
図19は、第6実施形態の製造方法で製造される半導体装置60の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置60は、第2実施形態の製造方法で製造される半導体装置20(
図8)と比べて、p型半導体層130cの構造がp型半導体層130aとは異なる点を除き、他の構造は半導体装置20と同じである。なお、半導体装置20と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0066】
F-2.半導体装置の製造方法
第6実施形態の製造方法は、
図9に示された第2実施形態の製造方法と比べて、工程P240と工程P250との間において、表面除去工程を備える点を除き、他の工程は第2実施形態の製造方法と同じである。
【0067】
図20は、製造途中にある半導体装置60p2の構成を模式的に示す断面図である。
図20は、第6実施形態の工程P240を経て表面除去工程を終えた後の半導体装置60p2の構成を示している。第6実施形態の表面除去工程では、工程P240を経た製造途中の半導体装置(
図11に示された半導体装置20p2)において、p型半導体層132pの表面から積層方向であるZ軸方向において、イオン注入領域134pが形成されている部分を含んだp型半導体層132pをエッチングする。このとき、p型半導体層132pは、X軸及びY軸に沿って全体にエッチングされる。
図20に示された半導体装置60p2には、工程P240および表面除去工程を経て、イオン注入領域134pが含まれている部分が除去されたp型半導体層132pが示されている。表面除去工程以降の工程は、第2実施形態の製造方法における工程P250以降の工程と同じである。
図9に示された工程P210から工程P240、表面除去工程、
図9に示された工程P250から工程P290を経て、
図19の半導体装置60が完成する。
【0068】
以上説明した第6実施形態の製造方法で製造された半導体装置60では、p型半導体層132pのうちイオン注入によってイオン注入領域134pがダメージを受けていた場合、そのような部分を除去できることから、金属電極140とp型半導体層130cとの接触を良好にすることができる。
【0069】
G.他の実施形態:
図21は、第1実施形態の製造方法で製造された半導体装置10を+Z軸方向から見た模式図である。
図21に示された半導体装置10は、+Z軸方向から見て正六角形を成す複数のセルCL1がX軸方向およびY軸方向へと規則的に並ぶ構造を有する。
図21には、ショットキー領域SRと、pn領域PNと、が示されている。上述の各実施形態の製造方法で製造される半導体装置のセルの形状は、
図21に示された形状に限られず、
図22および
図23に示された半導体装置10aおよび10bが有するセルCL2もしくはセルCL3のような形状であってもよい。
【0070】
図24から
図26は、
図21から
図23に図示された半導体装置の構造とは異なるセル構造を有する半導体装置の模式図である。
図24から
図26に示された半導体装置10c、10d、10eは、それぞれ異なる形状のセルCL4、セルCL5およびセルCL6を有する。
図24から
図26に示されたワイヤーWRは、セルCL4、セルCL5およびセルCL6が備えるpn領域PNに接合している。
図24から
図26に示したように、半導体装置においてワイヤーWRが接合するpn領域PNは、用途や実装条件などにより形状を変更してもよい。このような形態にすることで、大きな順方向電流が流れた際に、pn領域がオンしやすくなるため、順方向サージ耐量を向上することができる。
【0071】
上述した第2実施形態の製造方法では、n型半導体層露出工程(工程P250)において、イオン注入された範囲R3内のp型半導体層132pの表面のうち一部にマスク540を形成してからドライエッチングを行っていたが、本発明はこれに限られない。例えば、n型半導体層露出工程(工程P250)において、イオン注入された範囲R3内のp型半導体層132pの表面のうち全体にマスク540を形成してからドライエッチングを行ってもよい。
【0072】
上述した第1実施形態の製造方法では、金属電極形成工程(工程P160)において、金属電極140は、レジストマスクを用いたリフトオフ法により形成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、金属電極140は、XY平面全体に金属電極を形成した後に、フォトレジストによるマスクパタンを形成し、不要な部分をドライエッチングやウェットエッチングやイオンミリングなどの方法を用いて除去する方法を用いてもよい。また、金属電極140は、EB蒸着法、抵抗加熱蒸着法およびスパッタ法により形成されてもよい。
【0073】
図28は、他の実施形態の製造方法で製造される半導体装置70の構成を模式的に示す断面図である。上述した第1実施形態の製造方法(
図2)および第2実施形態の製造方法(
図9)などでは、n型半導体層露出工程(P150、P250)において、第2マスク520もしくはマスク540を形成したのち、p型半導体層130pもしくはp型半導体層132pをドライエッチングしていたが、本発明はこれに限られない。例えば、n型半導体層露出工程において、マスクを形成することなく範囲R2のn型半導体層120(
図5に図示)もしくは範囲R4のn型半導体層120(
図12に図示)が露出するようにp型半導体層130p全体もしくはp型半導体層132p全体をドライエッチングしてもよい。たとえば、
図2のn型半導体層露出工程P150に代えて、マスクを形成することなく範囲R2のn型半導体層120(
図5に図示)が露出するようにp型半導体層130p全体をドライエッチングすることにより、
図28に示す半導体装置70が製造される。このような製造方法では、マスクを形成しないため、製造工程を簡略化できる。
また、このような製造方法で製造された半導体装置70では、Z軸方向においてn型半導体層120から突出していないp型半導体層130dが形成されることになる。このため、その後の工程で、p型半導体層の段差のために微細加工が困難になることがない。また、加工形状のばらつきも低減される。その結果、たとえば、金属電極の被覆性不具合などが発生するリスクを回避できる。
第5実施形態において説明したように、電界集中を緩和するため、n型半導体層120中のp型半導体層130bの下層136の幅W1は、p型半導体層130bの上層138の幅W2より大きいことが好ましい(
図18に図示)。このため、p型半導体層130bの幅W1の大きさは、p型半導体層130bの上層138を形成する際の第2マスク550(
図17に図示)の幅W2の大きさの制約を受ける。すなわち、p型半導体層130bの幅W1の大きさは、フォトリソグラフィ精度やエッチング精度の制約を受ける。しかし、
図28の実施形態においては、製造において第2マスク550を使用しない。このため、p型半導体層130dの幅は、フォトリソグラフィ精度やエッチング精度の制約を受けずに、設定されることができる。その結果、たとえば、p型半導体層130dの幅をより小さく設定し、半導体装置70の構成をより微細にすることができる。
【0074】
上述した第2実施形態の製造方法(
図9)では、イオン注入工程(工程P235)において、p型不純物であるマグネシウム(Mg)がイオン注入されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、イオン注入工程(工程P235)において、イオン注入される不純物は、窒素(N)、ケイ素(Si)もしくは炭素(C)などであってもよい。また、これらの不純物がイオン注入された領域が含まれている部分は、第6実施形態で説明した表面除去工程によって除去されたのち、n型半導体層露出工程(工程P250)が実行されてもよい。
【0075】
上述した第2実施形態の製造方法(
図9)では、p型半導体層形成工程(工程P230)において、p型半導体層132pが形成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、p型半導体層形成工程(工程P230)において形成されるp型半導体層は、下層および上層を有するp型半導体層であってもよい。ここでいう上層に含まれるp型不純物濃度は、下層のp型不純物濃度より高い。このような製造方法で製造された半導体装置では、第2実施形態の製造方法で製造された半導体装置と比べて、金属電極と上層(p型半導体層)との界面における接触抵抗が低いことから、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際にpn領域に電流を流れやすくできる。また、このとき、イオン注入工程(工程P235)において、イオン注入される不純物は、窒素(N)、ケイ素(Si)もしくは炭素(C)などであってもよい。
【0076】
また、第2実施形態の製造方法(
図9)において、p型半導体層形成工程(工程P230)で上述した下層および上層を有するp型半導体層を形成してから、イオン注入工程(工程P235)を経て熱処理工程(工程P240)を行ったのち、n型半導体層露出工程(工程P250)を行う前に、表面除去工程を行ってもよい。ここでいう表面除去工程では、p型半導体層の表面から積層方向であるZ軸方向において、イオン注入領域が形成されている部分を除去しつつ、上層が残るようp型半導体層をエッチングする。このような製造方法で製造された半導体装置では、金属電極と上層(p型半導体層)との界面における接触抵抗が低いことから、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際にpn領域に電流を流れやすくできる。また、p型半導体層のうちイオン注入領域がダメージを受けていた場合、そのような部分を除去できることから、金属電極とp型半導体層との接触を良好にすることができる。
【0077】
上述した第3実施形態(
図13)では、p型半導体層形成工程(工程P340)において、溝部125から第1マスク510とn型半導体層120との界面より+Z軸方向側までp型半導体層130を形成していたが、本発明はこれに限られない。例えば、p型半導体層形成工程(工程P340)において形成されるp型半導体層は、下層および上層を有するp型半導体層であってもよい。ここでいう上層に含まれるp型不純物濃度は、下層のp型不純物濃度より高い。下層は、第1マスク510とn型半導体層120との界面より+Z軸方向側に形成されることが好ましい。このような製造方法で製造された半導体装置では、金属電極と上層(p型半導体層)との界面における接触抵抗が低いことから、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際にpn領域に電流を流れやすくできる。
【0078】
図27は、他の実施形態の製造方法で製造される半導体装置50bの構成を模式的に示す断面図である。上述した第5実施形態の製造方法で製造される半導体装置50(
図18)と比べて、半導体装置50bは、金属電極140aの代わりに金属電極140bを備える。金属電極140bは、第1層142bと、第2層144bと、を有する。第1層142bおよび第2層144bは、第1層142および第2層144と形状が異なる点を除き、同じ構成である。このような半導体装置50bでは、第5実施形態の製造方法で製造される半導体装置50(
図18)と比べて、金属電極140b(第1層142b)とp型半導体層130bとの接触面積が大きくなることから、金属電極140b(第1層142b)とp型半導体層130bとの界面における接触抵抗が低くなる。その結果、順方向(-Z軸方向)に電圧を印加した際にpn領域に電流を流れやすくできる。
【0079】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
10,20,40,50,60…半導体装置、110…基板、120…n型半導体層、125…溝部、130…p型半導体層、132…下層、134…上層、140…金属電極、142…第1層、144…第2層、150…配線電極、160…表面保護膜、170…裏面電極、180…絶縁膜、510…第1マスク、520…第2マスク、530,540…マスク、550…第2マスク、PN…pn領域、SR…ショットキー領域、WR…ワイヤー