(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】スロットロッドの検査装置、光ファイバケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20230516BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G01N27/82
G02B6/44 391
G02B6/44 366
(21)【出願番号】P 2019169035
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】石川 正彦
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-103415(JP,U)
【文献】特開昭62-259002(JP,A)
【文献】特開平01-245133(JP,A)
【文献】特開2004-021221(JP,A)
【文献】特開2007-034094(JP,A)
【文献】特開2003-043325(JP,A)
【文献】国際公開第2003/002931(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206020746(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から放射状に延びた複数本のスロットリブを有したスロットロッドを検査する検査装置であって、
前記スロットロッドを挿通可能な環状のセンサ部と、
該センサ部の内側を進行する前記スロットリブに接触するリブ検出部と、
前記センサ部と前記リブ検出部により検出した前記スロットリブの形成方向に基づいて、隣り合う前記スロットリブが形成するスロット溝の異常を判定する制御部と、
を備え
、
前記リブ検出部は、前記スロットリブを把持するクリップ部からなる、スロットロッドの検査装置。
【請求項2】
前記クリップ部が、前記スロットリブを把持する先端を有し、該先端が、前記スロットロッドの接触面に対する方向に先細りしたテーパ形状で形成される、請求項
1に記載のスロットロッドの検査装置。
【請求項3】
前記クリップ部が、前記センサ部に回動自在に支持される、請求項
1または請求項
2に記載のスロットロッドの検査装置。
【請求項4】
前記センサ部は、前記リブ検出部の動きに連動して回転し、前記スロットロッドの長手方向を軸線とする軸線回りに回転可能に構成される、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のスロットロッドの検査装置。
【請求項5】
中心から放射状に延びた複数本のスロットリブを有したスロットロッドを検査する検査装置を用いつつ光ファイバケーブルを製造する、光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記スロットロッドの供給工程と、
前記スロットロッドを前記検査装置内に通し、隣り合う前記スロットリブをそれぞれリブ検出部に接触させる工程と、
前記リブ検出部とセンサ部により、前記スロットリブの形成方向を検出する工程と、
検出した該スロットリブの形成方向に基づいて、隣り合う前記スロットリブが形成するスロット溝の角度を求める工程と、
求めた該スロット溝の角度が所定の範囲を外れた場合、前記スロットロッドの進行を停止する工程と、
を含
み、
前記リブ検出部は、前記スロットリブを把持するクリップ部からなる、光ファイバケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スロットロッドの検査装置、光ファイバケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルには、例えば中央にテンションメンバ(抗張力体ともいう)を配置し、その周囲に複数条のスロット溝が形成されたスロットロッド(スペーサともいう)を備えたタイプのものがある。各スロット溝には、複数本の光ファイバ心線を並列に配置した光ファイバテープ心線や単心の光ファイバ心線(以下、光ファイバと称する)などが収容される。スロットロッドの外側は、例えば上巻きテープで巻かれ、さらにケーブル外被(シースともいう)で覆われる。
【0003】
スロットロッドは、抗張力体の周囲に合成樹脂を押し出し、ボビンに巻き取られる。残留歪みがある抗張力体(鋼線)を使用してスロットロッドを製造すると、スロット溝のピッチや反転角度が変動することがある。このため、例えば、特許文献1には、抗張力体の残留歪みを除去し、スロット溝のピッチや反転角度の変動を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、スロットロッドをボビンに巻き取る際にも、スロットロッド同士が重なると、スロットリブが、大きな力を受けて変形することがある(リブ倒れともいう)。このようにスロット溝のピッチが変動したり、スロットリブが変形した場合、光ファイバをスロット溝に収容できないことや、光ファイバをスロット溝に収容できても、スロット溝に押されて光ファイバの断裂や伝送ロスの増加を招くことがある。
【0006】
このように、スロットリブの変形は、スロットロッド製造時に生じることが多いため、スロットリブの変形の有無を、ボビンに巻き取る前、つまり、スロットロッドの製造時に確認しても、あまり意味がない。また、上記特許文献1の技術は、スロット溝のピッチや反転角度を測定するのみであり、スロットリブが部分的に変形しているかを判定することができない。さらに、画像センサや三次元スキャナ等の非接触式センサを用いた画像処理では、スロットリブの変形を特定するのは難しく、人による確認では、スロットリブの変形を見落とすおそれがある。
【0007】
本開示は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、スロットリブの部分的な変形を確認可能なスロットロッドの検査装置、スロットリブの変形を確認しながら光ファイバケーブルを製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るスロットロッドの検査装置は、中心から放射状に延びた複数本のスロットリブを有したスロットロッドを検査する検査装置であって、前記スロットロッドを挿通可能な環状のセンサ部と、該センサ部の内側を進行する前記スロットリブに接触するリブ検出部と、前記センサ部と前記リブ検出部により検出した前記スロットリブの形成方向に基づいて、隣り合う前記スロットリブが形成するスロット溝の異常を判定する制御部と、を備え、前記リブ検出部は、前記スロットリブを把持するクリップ部からなる。
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、中心から放射状に延びた複数本のスロットリブを有したスロットロッドを検査する検査装置を用いつつ光ファイバケーブルを製造する、光ファイバケーブルの製造方法であって、前記スロットロッドの供給工程と、前記スロットロッドを前記検査装置内に通し、隣り合う前記スロットリブをそれぞれリブ検出部に接触させる工程と、前記リブ検出部とセンサ部により、前記スロットリブの形成方向を検出する工程と、検出した該スロットリブの形成方向に基づいて、隣り合う前記スロットリブが形成するスロット溝の角度を求める工程と、求めた該スロット溝の角度が所定の範囲を外れた場合、前記スロットロッドの進行を停止する工程と、を含み、前記リブ検出部は、前記スロットリブを把持するクリップ部からなる。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、スロットリブの部分的な変形を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示における光ファイバケーブルの集合工程の一例を説明する図である。
【
図4】(A)は
図3のリブ倒れ検出器の正面図、(B)は(A)のB-B線矢視断面図である。
【
図5】リブ倒れ検出器のクリップ部の先端を説明する図である。
【
図6】リブ倒れ検出器のクリップ部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示に係るスロットロッドの検査装置は、(1)中心から放射状に延びた複数本のスロットリブを有したスロットロッドを検査する検査装置であって、前記スロットロッドを挿通可能な環状のセンサ部と、該センサ部の内側を進行する前記スロットリブに接触するリブ検出部と、前記センサ部と前記リブ検出部により検出した前記スロットリブの形成方向に基づいて、隣り合う前記スロットリブが形成するスロット溝の異常を判定する制御部と、を備え、前記リブ検出部は、前記スロットリブを把持するクリップ部からなる。スロットリブに接触するリブ検出部を設けているので、スロットリブの部分的な変形を確認できる。また、スロットリブの形成方向を、スロットリブを把持するクリップ部を用いて連続的に求めているので、画像センサなどを用いた場合に比べてスロットリブの変形を確実に確認できる。
なお、スロットリブの形成方向とは、スロットロッドの中心からスロットロッドの径方向外側に向けて延びた方向である。
【0012】
(2)本開示のスロットロッドの検査装置の一態様では、前記クリップ部が、前記スロットリブを把持する先端を有し、該先端が、前記スロットロッドの接触面に対する方向に先細りしたテーパ形状で形成される。クリップ部の先端を鋭利化したので、接触面積が少なくなり、より狭い範囲のスロットリブの形成方向を正確に拾うことができ、例えばスロットリブ上端部などの、細かい形状の異常を検知できる。
(3)本開示のスロットロッドの検査装置の一態様では、前記クリップ部が、前記センサ部に回動自在に支持される。通常は、スロットリブの中心位置にクリップ部の向きは向いているが、スロットリブの芯が中心からずれた場合にも、その中心方向にクリップ部を向けることができるので、スロットリブの形成方向をより正確に拾うことができる。
【0013】
(4)本開示のスロットロッドの検査装置の一態様では、前記センサ部は、前記リブ検出部の動きに連動して回転し、前記スロットロッドの長手方向を軸線とする軸線回りに回転可能に構成される。センサ部がリブ検出部の動きに連動し、スロットロッドの進行に伴って回転するので、例えば螺旋状に形成されたスロットリブの形成方向も確実に検出できる。
【0014】
(5)本開示に係る光ファイバケーブルの製造方法は、中心から放射状に延びた複数本のスロットリブを有したスロットロッドを検査する検査装置を用いつつ光ファイバケーブルを製造する、光ファイバケーブルの製造方法であって、前記スロットロッドの供給工程と、前記スロットロッドを前記検査装置内に通し、隣り合う前記スロットリブをそれぞれリブ検出部に接触させる工程と、前記リブ検出部とセンサ部により、前記スロットリブの形成方向を検出する工程と、検出した該スロットリブの形成方向に基づいて、隣り合う前記スロットリブが形成するスロット溝の角度を求める工程と、求めた該スロット溝の角度が所定の範囲を外れた場合、前記スロットロッドの進行を停止する工程と、を含み、前記リブ検出部は、前記スロットリブを把持するクリップ部からなる。スロットリブに接触して形成方向を検出するリブ検出部を設けているので、スロットリブの部分的な変形を確認できる。また、スロットリブの変形を、光ファイバケーブルの製造中にオンラインで確認でき、スロットリブの変形があると判定した場合、スロットロッドを停止させるので、光ファイバをスロットロッドの溝内に確実に収容することができる。そして、スロットリブの形成方向を、スロットリブを把持するクリップ部を用いて連続的に求めているので、画像センサなどを用いた場合に比べてスロットリブの変形を確実に確認できる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本開示によるスロットロッドの検査装置、光ファイバケーブルの製造方法の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本開示における光ファイバケーブルの集合工程の一例を説明する図であり、
図2は、スロッドロッドの一例を説明する図である。
図1に示すように、集合ラインの最上流側(図の最も左側)では、スロットロッド2がスロットサプライ11から繰り出されて集合ダイス12に向かう。
【0016】
スロットロッド2は、
図2に示すように、その中心部にテンションメンバ3が埋設されている。テンションメンバ3は、引張りおよび圧縮に対する耐力を有する線材、例えば、鋼線やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などが用いられる。スロットロッド2の外周面には、ケーブル長手方向に沿って例えば螺旋状のスロット溝5が複数条(例えば8つ)形成されている。
【0017】
スロットロッド2は、テンションメンバ3の周囲から放射状に延びた例えば8つのスロットリブ4a~4hを有する。この場合、各スロットリブ4a~4hは45°の等間隔で設けられるように製造される。スロットリブ4aとスロットリブ4bとは、スロットロッド2の長手方向に対して交差する方向に隣り合っている。また、このスロットリブ4bはスロットリブ4cと隣り合っている。同様に、スロットリブ4cとスロットリブ4d、スロットリブ4dとスロットリブ4e、スロットリブ4eとスロットリブ4f、スロットリブ4fとスロットリブ4g、スロットリブ4gとスロットリブ4h、スロットリブ4hとスロットリブ4aがそれぞれ隣り合っており、それぞれスロット溝5を形成し、他のスロット溝5と区分している。なお、スロットリブ4a~4hの外周面に、スロット溝5の位置を識別するトレーサマークを設けることも可能である。
【0018】
各スロット溝5には、複数本の光ファイバ心線を並列に配置した光ファイバテープ心線や単心の光ファイバ心線(以下、光ファイバ6と称する)が収容されている。なお、螺旋状のスロット溝5の例を挙げて説明したが、SZ状のスロット溝であってもよい。
【0019】
図1に示すように、集合ダイス12は、光ファイバサプライ16から供給された光ファイバ6をスロットロッド2のスロット溝5に収容する。集合ダイス12の下流側には引き取りキャプスタン15が設けられており、引き取りキャプスタン15によりスロットロッド2に対して一定のテンションが付加される。
【0020】
集合ダイス12の下流側には、例えば、粗巻き装置17、上巻きテーピング装置18、巻取り機13が配置されている。光ファイバ6を収容したスロットロッド2は、粗巻き装置17で、光ファイバ6の脱落を防止するための粗巻き紐が巻回され、さらに上巻きテーピング装置18で、光ファイバ6を保護するための上巻きテープが巻回された後、巻取り機13に巻き取られる。
【0021】
一方、集合ダイス12の上流側には、スロットロッド検査装置20が配置される。スロットロッド検査装置20が本開示の検査装置に相当する。
スロットロッド検査装置20は、例えば9つのリブ倒れ検出器30a~30iと、制御部50とを有する。リブ倒れ検出器30a~30iに、本開示のセンサ部、リブ検出部が含まれる。リブ倒れ検出器30a~30iは、スロットサプライ11から集合ダイス12に向かうスロットロッド2を挿通できるように、スロットロッド2の長手方向に沿ってリブ倒れ検出器30a,30B,30C,30d,30e,30f,30g,30h,30iの順に所定間隔で配置される。リブ倒れ検出器30a~30iの検知結果は制御部50に入力される。
なお、本例では、全てのスロットリブ(スロット溝)の異常を判定する例を示しているが、一部のスロットリブの異常を判定するものであってもよい。例えば、一つのスロット溝を形成するスロットリブの異常を判定する場合は、リブ倒れ検出器は、2つあればよい。
【0022】
図3は、リブ倒れ検出器の一例を説明する図である。また、
図4(A)は
図3のリブ倒れ検出器の正面図であり、
図4(B)は(A)のB-B線矢視断面図である。
図3、4は、集合ラインの最上流側に配置されたリブ倒れ検出器30aを示しており、
図3では、下流側(リブ倒れ検出器30b側)からみた図を示している。スロットロッド検査装置20は装置台21を有し、リブ倒れ検出器30aの基台31を載置する。
【0023】
基台31には、壁部32が立設される。壁部32の中央には、壁部32をスロットロッド2の長手方向で貫通した貫通孔32aが形成されている。貫通孔32a内には、フランジ33が設置され、
図4(B)に示すように、このフランジ33の上流端には、スロットロッド2を挿通可能な筒状のガイド34が設置されている。
壁部32の下流側には、環状のセンサ部35が設けられている。センサ部35が本開示のセンサ部に相当する。センサ部35は、例えば磁気リングであり、軸受36を用いてフランジ33の外周面に回転自在に支持される。これにより、センサ部35は、スロットリブ4a~4hの形成方向(スロットロッド2の中心からスロットロッド2の径方向外側に向けて延びた方向)に応じて、スロットロッド2の長手方向に延びた軸線回りに回転できる。
【0024】
壁部32の下流側には、センサ本体37が設置される。
図4(A)に示すように、センサ本体37は、センサ部35の側方に配置され、センサ部35の回転量を検出可能に構成されている。
また、センサ部35には、スロットリブ4aの先端を把持可能なクリップ部38が設けられている。具体的には、例えば、クリップ部38は、静ハンドル39および動ハンドル40を有している。クリップ部38が、本開示のクリップ部(リブ検出部)に相当する。
【0025】
静ハンドル39の先端には、スロットリブ4aを把持するための把持部39aが形成されている。動ハンドル40は静ハンドル39の側方に配置され、動ハンドル40の先端にも、スロットリブ4aを把持するための把持部40aが形成されている。動ハンドル40と静ハンドル39とはバネ41を介して連結されており、バネ41が縮むように動ハンドル40を押すと、動ハンドル40の把持部40aが静ハンドル39の把持部39aから離間する。
【0026】
図5は、リブ倒れ検出器のクリップ部の先端を説明する図である。また、
図6は、リブ倒れ検出器のクリップ部の動作を説明する図である。
図5に示すように、静ハンドル39の把持部39aおよび動ハンドル40の把持部40aは、スロットリブ4aを把持する先端が、いずれも、スロットロッドの接触面に対する方向に先細りしたテーパ形状で形成されている。この鋭利に形成された把持部39a,40aは、スロットリブ4aを右側と左側から接触してスロットリブ4aの先端(上端部分)を把持する。このように、先端が鋭利に形成されているため、スロットリブ4aの、より狭い範囲の形成方向を正確に拾うことができる。
そして、
図6のようにスロットリブ4aが変形している箇所では、その変形に応じてクリップ部38が動き、クリップ部38の動きに連動してセンサ部35が回転する。これにより、変形部におけるスロットリブ4aの形成方向が検出できる。後述するように、スロットリブ4bの形成方向も同様に検出することで、スロットリブ4aとスロットリブ4bが形成するスロット溝の角度が算出されるが、変形部ではこの角度が変動することになる。
【0027】
また、静ハンドル39は、スロットロッド2の長手方向に延びた回転軸39bを有している。これにより、クリップ部38は、スロットリブ4aの形成方向に合わせて、センサ部35に対して回転軸39bの軸線回りに回転できる。このため、仮にスロットリブ4aの芯が、スロットロッド2の中心からみて大きくずれていた場合にも、センサ部35に対してクリップ部の向きを回転できることから、スロットリブ4aの形成方向をより正確に拾うことができる。
【0028】
なお、
図1に示したリブ倒れ検出器30b~30iは、リブ倒れ検出器30aと同一の構成であるので、リブ倒れ検出器30b~30iの詳細な説明は省略する。
また、
図1,3,4では、リブ倒れ検出器30aは、ガイド34を壁部32の上流側に配置し、センサ部35やクリップ部38を壁部32の下流側に配置した例で説明したが、センサ部35やクリップ部38を壁部32の上流側に配置し、ガイド34を壁部32の下流側に配置してもよい。
【0029】
図7は、
図1の制御部50の構成図である。制御部50は、例えば、入力部51、判定ユニット52、出力部55から構成される。制御部50は、例えば1個あるいは複数個のCPU(Central Processing Unit)等により、例えばROMに格納されている各種のプログラムやデータをRAMにロードし、このロードしたRAM内のプログラムを実行する。これにより、製造装置の動作を制御できる。
【0030】
入力部51では、所定の閾値などを予め入力可能である。上述したように8つのスロット溝5を形成した場合、各スロット溝5の角度は45°になると想定される。そこで、入力部51では、所定の閾値を45°と入力し、許容範囲を例えば±10°と入力する。
判定ユニット52は、比較部53、判定部54を有する。判定ユニット52では、まずリブ倒れ検出器30a~30iの検出結果に基づいて、各スロット溝5の角度を求める。そして、比較部53は、所定の閾値と、求めた各スロット溝5の角度とを比較する。判定部54は、求めたスロット溝5の角度が所定の閾値(45°±10°)の範囲を外れた場合、スロットリブ4a~4hが変形していると判定する。出力部55は、スロットリブが変形していると判定されたら、アラームなどの警報信号を出力する。
【0031】
上記の集合ラインにおけるスロットロッド2の検査について具体的に説明すると、まず、スロットロッド2を、最上流に位置するリブ倒れ検出器30aのガイド34内に通し、リブ倒れ検出器30aのクリップ部38でスロットリブ4aを把持する。次に、スロットロッド2をリブ倒れ検出器30bのガイド34内に通し、リブ倒れ検出器30bのクリップ部38で、スロットリブ4aにスロットロッド2の長手方向に交差する方向に隣り合うスロットリブ4bを把持する。同様に、スロットロッド2を残り7つのリブ倒れ検出器30c~30iの各ガイド34内に通し、そのうちリブ倒れ検出器30c~30hの各クリップ部38で、順にスロットリブ4c~4hを把持する。そして、最下流に位置するリブ倒れ検出器30iのクリップ部38で、リブ倒れ検出器30aのクリップ部38で既に把持しているスロットリブ4aを把持する。
【0032】
続いて、スロットロッド2を集合ダイス12に向けて前進させる。上記のように、スロットリブ4a~4hが螺旋状に形成され、各クリップ部38がスロットリブ4a~4hをそれぞれ把持している場合は、スロットロッド2が下流側に進むと、各リブ倒れ検出器30a~30iのセンサ部35がそれぞれスロットロッド2の軸線回りに回転する。各センサ本体37の検出結果が制御部50に入力される。
【0033】
例えばスロットリブ4aの、その位置での形成方向は、リブ倒れ検出器30aのセンサ部35の回転量(基準位置からの回転角度)で検出でき、スロットリブ4bの形成方向は、リブ倒れ検出器30bのセンサ部35の回転量で検出できる。
判定ユニット52では、リブ倒れ検出器30aのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30bのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4a,4bで形成されるスロット溝5の角度を求めることができる。
【0034】
同様に、リブ倒れ検出器30bのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30cのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4b,4cで形成されるスロット溝5の角度を求め、リブ倒れ検出器30cのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30dのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4c,4dで形成されるスロット溝5の角度を求める。また、リブ倒れ検出器30dのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30eのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4d,4eで形成されるスロット溝5の角度を求め、リブ倒れ検出器30eのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30fのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4e,4fで形成されるスロット溝5の角度を求め、リブ倒れ検出器30fのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30gのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4f,4gで形成されるスロット溝5の角度を求め、リブ倒れ検出器30gのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30hのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4g,4hで形成されるスロット溝5の角度を求める。また、リブ倒れ検出器30hのセンサ部35の回転量とリブ倒れ検出器30iのセンサ部35の回転量とから、スロットリブ4h,4aで形成されるスロット溝5の角度を求める。
【0035】
そして、比較部53が、求めたスロット溝5の角度と入力部51で設定した閾値とを比較する。求めたスロット溝5の角度が所定の閾値(45°±10°)の範囲を外れた場合、判定部54が、スロットリブ4a~4hが変形していると判定する。
スロットリブ4a~4hの変形が判定された場合、出力部55は、例えばランプの点灯やブザーの鳴動により、スロットリブ4a~4hが異常である旨を作業者に知らせる。なお、変形の可能性のあるスロットリブ4a~4hを表示してもよい。
【0036】
次いで、作業者は、スロットロッド2を停止させて、スロットリブ4a~4hの形状を確認し、例えば変形しているスロットリブ4a~4hを加熱して正規の形状に矯正する。作業者は、スロットリブ4a~4hの変形を矯正した後、スロットロッド2を集合ダイスに向けて再び前進させる。
このように、隣り合うスロットリブ4a~4hの形成方向からスロット溝5の角度を求めており、スロットリブ4a~4hの変形を、光ファイバケーブル製造中に、オンラインで確認できる。
【0037】
また、スロット溝5の角度を、スロットリブ4a~4hに接触し続けることにより求めているので、画像センサを用いた場合に比べて見落としが減り、スロットリブ4a~4hの変形を確実に確認できる。
さらに、スロットリブ4a~4hの変形があると判定した場合、例えばスロットロッド2を停止させてスロットリブを矯正し、矯正したスロットロッド2を光ファイバケーブルの製造ラインに供給するので、集合時の品質異常を未然に回避できるとともに、光ファイバ6をスロットロッド2に確実に収容させることができる。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
2…スロットロッド、3…テンションメンバ、4a~4h…スロットリブ、5…スロット溝、6…光ファイバ、11…スロットサプライ、12…集合ダイス、13…巻取り機、15…引き取りキャプスタン、16…光ファイバサプライ、17…粗巻き装置、18…上巻きテーピング装置、20…スロットロッド検査装置、21…装置台、30a~30i…リブ倒れ検出器、31…基台、32…壁部、32a…貫通孔、33…フランジ、34…ガイド、35…センサ部、36…軸受、37…センサ本体、38…クリップ部、39…静ハンドル、39a…把持部、39b…回転軸、40…動ハンドル、40a…把持部、41…バネ、50…制御部、51…入力部、52…判定ユニット、53…比較部、54…判定部、55…出力部。